説明

電源制御装置

【課題】トーイングを行っているか否かに応じた効率の良い電力供給が可能な電源制御装置を提供する。
【解決手段】電源制御装置3は車両1に搭載される。電源制御装置3は、検出部5と、電力制御部6とを備える。検出部5は、車両1に接続されるトレーラ10に対して電源電力の供給が行われる供給可能状態であることを検出する。電力制御部6は、供給可能状態であることが検出部5によって検出された場合、検出されない場合に比べて、車両1に搭載される装置(車両側負荷8a〜8c)に対する電源電力の供給を制限する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される電源制御装置に関し、より特定的には、車両およびそれに接続されるトレーラに対する電源電力の供給を制御する電源制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両によってトレーラを牽引する(トーイングを行う)場合に、車両からトレーラへ電力を供給する技術がある。特許文献1には、トレーラ側への電力供給にエラーがあった場合にエラーを車両側に警告するための技術が開示されている。
【特許文献1】特開平10−24767号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一方、車両に設置される電装品は増加傾向にあり、車両において各部に効率良く電源電力を供給する電源設計が重要になっている。トーイングが可能な車両においては、車両自体に搭載される電装品のみならず、トレーラ側に搭載される電装品への電力供給をも考慮して電源設計を行う必要がある。しかしながら、上記特許文献1に開示の技術では、車両がトーイングを行う場合において、トレーラ側への電力供給によって(非トーイング時に比べて)消費電力が増加することは考慮されていない。そのため、上記特許文献1に開示の技術では、トーイングを行う場合を想定せずに電源設計を行ったとすれば、トーイング時に電力が不足するおそれがある。また、トーイングを行う場合を想定して電源設計を行ったとすれば、トーイングを行っていない場合には無駄に電力を抑えて車両側への電力供給を行うこととなり、効率良く電源を使用することができない。以上のように、従来の技術では、トーイングを行っているか否かに応じた適切な電源設計を行うことができず、効率良く電源を使用することができなかった。
【0004】
それ故、本発明の目的は、トーイングを行っているか否かに応じた効率の良い電力供給が可能な電源制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明は、車両に搭載される電源制御装置である。電源制御装置は、検出部と、電力制御部とを備える。検出部は、車両に接続されるトレーラに対して電源電力の供給が行われる供給可能状態であることを検出する。電力制御部は、供給可能状態であることが検出部によって検出された場合、検出されない場合に比べて、車両に搭載される装置に対する電源電力の供給を制限する。
【0006】
第2の発明においては、検出部は、トレーラに供給される電力量を検出してもよい。このとき、電力制御部は、検出部によって検出された電力量に応じて制限の内容を変更する。
【0007】
第3の発明においては、電力制御部は、検出部によって検出された電力量に基づいて、制限の対象となる装置を決定してもよい。
【0008】
第4の発明においては、電力制御部は、検出部によって検出された電力量に基づいて、制限の対象となる装置に対して供給すべき電力量を決定してもよい。
【0009】
第5の発明においては、電源制御装置が有するメモリには、供給可能状態において制限すべき電力量を表す制限量データが記憶されていてもよい。このとき、電力制御部は、制限量データに基づいて制限の内容を決定するとともに、検出部による検出結果に基づいて制限量データの値を更新する。
【0010】
第6の発明においては、電力制御部は、予め定められた装置に対する電力供給を制限してもよい。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明によれば、供給可能状態か否かに応じて、車両に搭載される装置に対する電力供給が変更される。すなわち、供給可能状態においては、供給可能状態でない場合に比べて、車両に搭載される装置に対して供給される電力が制限される。これによれば、トーイング時において電源の電力が不足することを防止することができるとともに、非トーイング時においては電源を効率良く使用することができる。したがって、第1の発明によれば、電源制御装置は、トーイングを行っているか否かに応じて効率良く電力を供給することができる。
【0012】
第2〜第4の発明によれば、トレーラに実際に供給される電力量を検出部が検出し、電力制御部は、検出部によって検出された電力量に応じて制限の内容を変更する。これによれば、電源制御装置は、トレーラ側の実際の必要電力量に応じて、車両側の制限量を決定することができる。したがって、トレーラで実際に必要となる電力量がいくらであっても、効率良く電源電力を使用することができる。
【0013】
第5の発明によれば、制限量データは、検出部による検出結果に基づいて更新されるので、トレーラ側の実際の必要電力量を反映した値に設定することができる。したがって、第5の発明においても第2〜第4の発明と同様、電源制御装置は、トレーラ側の実際の必要電力量に応じて、車両側の制限量を決定することができる。また、第5の発明によれば、制限量データを保存しておき、保存しておいた制限量データを次のトリップ期間において用いることも可能であり、前回のトリップ期間における検出結果を次のトリップ期間において反映させることができる。
【0014】
第6の発明によれば、電力供給を制限する対象となる装置を予め定めておくことにより、電力制御部は、電力供給の制限を容易に実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第1の実施形態)
以下、図1および図2を参照して、本発明の第1の実施形態に係る電源制御装置について説明する。図1は、第1の実施形態に係る電源制御装置が搭載された車両およびトレーラのブロック図である。図1においては、牽引車両である車両1に対して、牽引されるトレーラ10が電力供給可能に接続された状態である。車両1は、電源2、電源制御装置3、車両側コネクタ4、複数(図1では3つ)の負荷制御部7a〜7c、ならびに、複数(図1では3つ)の車両側負荷8a〜8cを備えている。一方、トレーラ10は、トレーラ側コネクタ11およびトレーラ側負荷12を備えている。本実施形態に係る電源制御装置3は、各車両側負荷8a〜8cおよびトレーラ側負荷12に供給すべき電力(電流)を制御するものである。以下、図1を参照して、図1に示す構成について説明する。
【0016】
車両1において、電源2は、第1車両側負荷8a、第2車両側負荷8b、および第3車両側負荷8cに接続される。各車両側負荷8a〜8cは、車両1の電源電力が供給される各種の装置であって、車両1に搭載されるものである。実際の車両では車両側負荷に相当する装置が多数存在するが、本実施形態では、説明をわかりやすくするため、車両側負荷を3つとして説明を行う。なお、各車両側負荷8a〜8cには、トーイング時(車両1がトレーラ10を牽引する場合)には電力供給が制限される負荷も含まれている。
【0017】
また、車両1において、電源2は、電源制御装置3(検出部5)を介して車両側コネクタ4に接続される。一方、トレーラ10においては、トレーラ側コネクタ11とトレーラ側負荷12aとが接続される。車両側コネクタ4とトレーラ側コネクタ11との間は、各コネクタ4および11に対して着脱可能である接続線によって接続可能である。トーイング時には、車両側コネクタ4とトレーラ側コネクタ11との間は当該接続線によって接続される。車両側コネクタ4とトレーラ側コネクタ11との間が接続されることによって、車両1の電源2とトレーラ側負荷12とが電気的に接続されたこととなり、電源2の電力をトレーラ側負荷12に供給することができる。
【0018】
トレーラ側負荷12は、車両1の電源電力が供給される各種の装置であって、トレーラ10に搭載されるものである。トレーラ側負荷は、例えば、ブレーキランプ、テールランプ、および電磁ブレーキ等である。トレーラ側負荷は、基本的には、電力供給を制限することができない負荷である。なお、本実施形態では、説明をわかりやすくするため、トレーラ側負荷を1つとして説明を行うが、トレーラ側負荷の数はいくつであってもよい。
【0019】
また、電源制御装置3は、検出部5および電力制御部6を備えている。検出部5は、電源2からトレーラ側負荷12までの電力供給ライン上において、電源2と車両側コネクタ4との間に設けられる。また、検出部5は、電力制御部6と接続される。検出部5は、車両1に接続されるトレーラ10に対して電力供給が行われる状態(供給可能状態と呼ぶ)であることを検出する。具体的には、検出部5は、電力供給ラインに電流が流れていることを検出する。検出部5は、供給可能状態であることを検出した場合、検出を通知するための信号(トーイングモード信号と呼ぶ)を電力制御部6に出力する。
【0020】
なお、トレーラ10が、ブレーキランプおよびテールランプを兼用する兼用ランプを備えるタイプである場合には、車両側のブレーキランプの電源線およびテールランプの電源線から当該兼用ランプに電流を正しく分配するための回路(トーイングコンバータと呼ぶ)が必要となる。トーイングコンバータは、検出部5は、電源2からトレーラ側負荷12までの電力供給ライン上において電源2と車両側コネクタ4との間に設けられる。したがって、検出部5は、このトーイングコンバータの一部として実現されてもよい。すなわち、トーイングコンバータに電流が通じたことを検出し、検出したことを電力制御部6に通知する機能をトーイングコンバータに付与することで検出部5を実現してもよい。なお、検出部5は、車両1からトレーラ10への電力供給ライン上に電流が通じたことを検出するものであればどのようなものであってもよく、当該電力供給ライン上に設けられた電流センサによって実現されてもよい。
【0021】
電力制御部6は、各車両側負荷8a〜8cに対する電力供給を制御する。詳細は後述するが、本実施形態では、電力制御部6は、上記供給可能状態であることが検出部5によって検出された場合、検出されない場合に比べて、各車両側負荷8a〜8cに対する電力供給を制限するように制御する。電力制御部6は、各負荷制御部7a〜7cに接続される。電力制御部6から各負荷制御部7a〜7cへは、必要に応じて、車両側負荷8a〜8cに対する電力供給を制限する指示(制限指示と呼ぶ)が出力される。
【0022】
各負荷制御部7a〜7cは、電力制御部6から出力される制限指示に従って、それに接続される各車両側負荷8a〜8cの動作を制御する。図1では、第1負荷制御部7aは第1車両側負荷8aに接続され、第2負荷制御部7bは第2車両側負荷8bに接続され、第3負荷制御部7cは第3車両側負荷8cに接続される。なお、本実施形態では、説明をわかりやすくするために、1つの負荷制御部によって制御される負荷を1つとしているが、実際には、1つの負荷制御部が複数の負荷の動作を制御するようにしてもよい。
【0023】
本実施形態では、各負荷制御部7a〜7cは、システム毎(例えば空調系、ボデー制御系、パワートレイン制御系、およびシャシー制御系等)のマスターECUによって実現される。また、電力制御部6は、各システムのマスターECUに対して指示(制限指示)を行う電力制御ECUとして実現される。なお、他の実施形態では、1つのマスターECUによって制御される車両側負荷のみについて制限指示を行う場合、当該1つのマスターECUが電力制御部6として機能してもよく、この場合、電力制御ECUを設けない構成としてもよい。
【0024】
次に、図2を参照して、電源制御装置3の動作について説明する。図2は、第1の実施形態における電源制御装置3の動作の流れを示すフローチャートである。図2に示すフローチャートは、車両1のイグニッションスイッチがオンにされることによって開始される。
【0025】
まずステップS1において、検出部5は、車両1にトレーラ10が接続され、トレーラ10に電源2の電力が供給可能な状態(すなわち供給可能状態)であるか否かを判定する。ステップS1の判定は、電源2と車両側コネクタ4との間の電源供給ラインに電流が流れているか否か、換言すれば、トーイングコンバータに電流が流れているか否かによって行うことができる。ステップS1の判定結果が肯定である場合(電流が流れている場合)、供給可能状態であると判定され、ステップS2の処理が実行される。一方、ステップS1の判定結果が否定である場合(電流が流れていない場合)、供給可能状態でないと判定される。この場合、検出部5は、所定時間に1回の割合でステップS1の判定処理を実行する。以上のように、検出部5は、供給可能状態となったことを検出し、供給可能状態が検出された場合、ステップS2以降の処理が実行される。
【0026】
ステップS2において、検出部5は、供給可能状態を検出したことを通知するためのトーイングモード信号を電力制御部6に出力する。続くステップS3において、トーイングモード信号を受け取った電力制御部6は、予め定められた所定の車両側負荷に対する電力供給を制限する。具体的には、当該所定の車両側負荷の作動を停止する制限指示を負荷制御部に出力する。なお、当該制限指示の出力先は、当該所定の車両側負荷の動作を制御する負荷制御部である。例えば、上記所定の車両側負荷が第1車両側負荷8aである場合、電力制御部6は、第1車両側負荷8aの作動を停止する旨の制限指示を第1負荷制御部7aに出力する。
【0027】
なお、第1の実施形態では、上記所定の車両側負荷は、予め定められているものとする。ここで、上記所定の車両側負荷としては、作動していることがユーザにとって意識されにくいものであることが好ましく、例えば、ミラーヒータ、デフォッガ、ワイパデアイサ、シートヒータ、空調シート、ステアリングヒータ、エアピュリファイヤ等が考えられる。なお、所定の車両側負荷として作動が停止される車両側負荷の数はいくつであってもよい。また、上記所定の車両側負荷は、トレーラ側負荷12によって消費される電力(トレーラ側に供給される電流)と同等(またはそれ以上)の電力だけ、車両側に供給される電力が低減されるように、予め設定されることが好ましい。
【0028】
ステップS3の次のステップS4において、電源制御装置3は、車両1のイグニッションスイッチ(図ではIGと記載)がオフにされたか否かを判定する。ステップS4の判定結果が否定となる場合(イグニッションスイッチがオンの場合)、電源制御装置3は、所定時間に1回の割合でステップS4の判定処理を再度実行する。一方、ステップS4の判定結果が肯定となる場合(イグニッションスイッチがオフの場合)、電源制御装置3は動作を終了する。
【0029】
図2に示す以上の動作によれば、供給可能状態が検出された場合、電力制御部6は、予め定められた車両側負荷の作動を停止させる。これによって、各車両側負荷に対して供給される電力(電流)が制限されることとなる。したがって、トーイング時(供給可能状態)において、電源2の電力が不足することを防止することができる。一方、供給可能状態が検出されない場合には、車両側負荷の作動は停止されず、車両側負荷への電力供給に制限が加えられることはない。したがって、非トーイング時(非供給可能状態)においては、電源2の電力を効率良く使用することができる。
【0030】
なお、第1の実施形態においては、電力制御部6は、車両側に供給される電力を制限するために、予め定められた車両側負荷の作動を停止することとした。ここで、他の実施形態においては、電力制御部6は、予め定められた車両側負荷の動作を、(停止するのではなく)消費電力が低減するように制限するようにしてもよい。例えば、電力制御部6は、予め定められた車両側負荷に対して供給される電力(電流)を所定割合だけ(非トーイング時に比べて)減少させるようにしてもよい。このとき、電力制御部6は、制限指示として、負荷制御部に対して、車両側負荷が使用可能な電力を通知してもよいし、車両側負荷の動作内容を通知してもよい。
【0031】
以上のように、第1の実施形態によれば、電源制御装置3は、車両1にトレーラ10が接続されているか否か(供給可能状態か否か)に応じて、各車両側負荷に対して供給される電力を変更する。具体的には、供給可能状態においては、供給可能状態でない場合に比べて、各車両側負荷に対して供給される電力を制限する。これによれば、トーイング時において電源の電力が不足することを防止することができるとともに、非トーイング時においても電源を効率良く使用することができる。
【0032】
なお、車両が牽引可能なトレーラには多くの種類があり、必要となる電力量はトレーラによって異なる。そのため、第1の実施形態のように、トーイング時に制限する電力量をトレーラによらず一定とすると、牽引されるトレーラによっては車両側への供給電力を必要以上に制限してしまい、効率良く電源を使用することができない可能性がある。そこで、以下に説明する第2の実施形態では、牽引されるトレーラの種類によらず、車両の電源をより効率良く使用することを可能とする。
【0033】
(第2の実施形態)
以下、図3および図4を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。上記第1の実施形態においては、電源制御装置は、供給可能状態であるか否かのみを検出し、その検出結果に応じて所定の車両側負荷の動作を停止させるか否かを決定するのみであった。これに対して、第2の実施形態においては、電源制御装置は、トレーラに供給される電力量を検出し、検出された電力量に応じて各車両側負荷に対する制限の内容を変更する。これによれば、車両の電源をより効率良く使用することができる。以下、第1の実施形態との相違点を中心に第2の実施形態に係る電源制御装置について説明する。
【0034】
第2の実施形態に係る電源制御装置の構成、ならびに、それが搭載される車両およびトレーラの構成は、図1と同様である。ただし、第2の実施形態においては、検出部5および電力制御部6の機能および動作が以下の点で第1の実施形態とは異なる。すなわち、第2の実施形態においては、検出部5は、供給可能状態であることを検出することに加え、トレーラ10に供給される電力(電流)量を検出する。具体的には、検出部5は、電源2と車両側コネクタ4との間の電源供給ラインに流れている電流量を検出する。検出された電流量の情報は、電力制御部6に出力される。また、第2の実施形態においては、電力制御部6は、検出された電力量に応じて、車両側負荷に対する制限の内容を変更する(詳細は後述する)。
【0035】
次に、図3を参照して、第1の実施形態との相違点を中心に、第2の実施形態における電源制御装置3の動作を説明する。図3は、第2の実施形態における電源制御装置3の動作の流れを示すフローチャートである。なお、図3において、図2と同様の処理については、図2と同じステップ番号を付している。第2の実施形態においても第1の実施形態と同様、ステップS1およびS2の処理が実行される。
【0036】
第2の実施形態においては、ステップS2の次にステップS11の処理が実行される。すなわち、ステップS11において、検出部5は、トレーラ10側に供給される電力(電流)量を検出する。具体的には、検出部5は、電源2と車両側コネクタ4との間の電源供給ラインに流れている電流量を検出する。なお、本実施形態では、検出部5は、上記電源供給ラインに流れている電流を予め定められた所定時間の間検出し、そのときの最大値を上記電流量とする(当該所定時間当たりの平均電流値を上記電流量としてもよい)。ステップS11の次にステップS12の処理が実行される。
【0037】
ステップS12において、電力制御部6は、ステップS11の検出結果に基づいて、制限を加える対象となる車両側負荷を決定する。本実施形態では、各車両側負荷8a〜8cに優先度を付しておき、優先度の低いものから順に制限対象となるように決定される。以下、ステップS12の詳細を説明する。
【0038】
まず、電力制御部6は、検出された電流量のレベルと、制限を加える対象となる車両側負荷との対応を示す情報を予め記憶しておく。そして、ステップS12においては、当該情報を参照して、制限を加える対象となる車両側負荷を決定する。図4は、検出された電流量のレベルと、制限を加える対象となる車両側負荷との対応の一例を示す図である。図4において、レベル1は、電流量が比較的小さいレベルであり、レベル2はレベル1より電流量が大きいレベルであり、レベル3はレベル2より電流量が大きいレベルである。図4においては、ステップS11で検出された電流量の値が例えばレベル1に属する大きさである場合、電力制御部6は、制限対象を第1車両側負荷8aに決定する。また、検出された電流量の値が例えばレベル2に属する大きさである場合、電力制御部6は、制限対象を第1車両側負荷8aおよび第2車両側負荷8bに決定する。また、検出された電流量の値が例えばレベル3に属する大きさである場合、電力制御部6は、制限対象を第1〜第3車両側負荷8a〜8cに決定する。なお、図4では、第1車両側負荷8a、第2車両側負荷8b、第3車両側負荷8cの順に優先度が高くしているが、優先度の付け方はどのようなものであってもよい。
【0039】
以上のようにステップS12においては、検出された電流量の値が大きくなるにつれて、車両側に供給する電力が小さくなるように、当該電流値の値が大きくなるに応じて、制限対象となる車両側負荷の数は多くなるように決定される。ステップS12の次にステップS13の処理が実行される。
【0040】
ステップS13において、電力制御部6は、制限対象である車両側負荷に対する電力供給を制限する。具体的には、ステップS12で制限対象として決定された車両側負荷の作動を停止する制限指示を、当該車両側負荷の動作を制御する負荷制御部に出力する。
【0041】
上記ステップS13の次に、第1の実施形態と同様のステップS4の処理が実行される。第2の実施形態では、ステップS4の判定結果が否定である場合、ステップS11の処理が再度実行される。したがって、第2の実施形態では、トーイング時におけるトリップ期間(イグニッションスイッチがオンにされてからオフにされるまでの期間)においては、ステップS11〜S13の処理ループが繰り返し実行される。一方、ステップS4の判定結果が肯定となる場合、電源制御装置3は動作を終了する。
【0042】
以上のように、第2の実施形態においては、供給可能状態が検出された場合、トレーラ10側に供給される電流量が検出され(ステップS11)、検出された電流量に応じて、電力供給を制限する車両側負荷が決定される(ステップS12)。これによれば、トレーラ10側へ実際に供給されている電力量に応じて、車両1側へ供給する電力量を制限することができるので、車両1側への電力量を不必要に制限することなく、最適な制限量で電力制御を行うことができる。すなわち、車両1の電源2をより効率良く使用することができる。なお、第2の実施形態においても第1の実施形態と同様、供給可能状態が検出されない場合には、車両側負荷の作動は停止されず、車両側負荷への電力供給に制限が加えられることはない。
【0043】
なお、第2の実施形態においては、電力制御部6は、車両側に供給される電力を制限するために、上記ステップS12で決定された車両側負荷の作動を停止することとした。ここで、上記ステップS12において、電力制御部6は、予め定められた車両側負荷の動作を、レベルに応じた消費電力となるように制限するようにしてもよい。すなわち、電力制御部6は、検出部5によって検出された電力量に基づいて、制限の対象となる車両側に対して供給すべき(供給可能な)電力量を決定するようにしてもよい。以下、具体例を説明する。
【0044】
例えば、電力制御部6は、ステップS11で検出された電流量のレベルと、車両側負荷に供給する電流量との対応を示す情報を予め記憶しておく。そして、ステップS12では、当該情報を参照して、車両側負荷に供給される電流量を決定する。図5は、トレーラ10側に供給される電流量のレベルと、車両側負荷に供給する電流量(制限内容)との対応の一例を示す図である。なお、図5においては、制限を加える対象となる車両側負荷を、第1および第2の車両側負荷8aおよび8bとしている。図5においては、ステップS11で検出された電流量の値が例えばレベル1に属する大きさである場合、電力制御部6は、第1車両側負荷8aに供給される電流量をX1以下に決定するとともに、第2車両側負荷8bに供給される電流量をY1以下に決定する。また、検出された電流量の値が例えばレベル2に属する大きさである場合、電力制御部6は、第1車両側負荷8aに供給される電流量をX2(<X1)以下に決定するとともに、第2車両側負荷8bに供給される電流量をY2(<Y1)以下に決定する。さらに、検出された電流量の値が例えばレベル3に属する大きさである場合、電力制御部6は、第1車両側負荷8aに供給される電流量をX3(<X2)以下に決定するとともに、第2車両側負荷8bに供給される電流量をY3(<Y2)以下に決定する。
【0045】
また、上記の場合、ステップS13において、電力制御部6は、供給される電流量が、ステップS12で決定された値以下となるように各車両側負荷8aおよび8bを制御する制限指示を各負荷制御部7aおよび7bに出力する。例えば、ステップS11で検出された電流量の値が例えばレベル1に属する大きさである場合、電力制御部6は、供給される電流量がX1以下となるように第1車両側負荷8aを制御する制限指示を第1負荷制御部7aに出力するとともに、供給される電流量がY1以下となるように第2車両側負荷8bを制御する制限指示を第2負荷制御部7bに出力する。
【0046】
(第2の実施形態の変形例)
また、第2の実施形態においては、電源制御装置3が、車両側に供給される電力を制限する量(制限量)を学習する機能を備えるようにしてもよい。具体的には、電力制御部6は、制限量を示す制限量データを電力制御部6の内部または外部のメモリに記憶しておく。なお、初期設定時においては、制限量データの値は、設計計算上の最悪値を想定して、トレーラ10側で必要となると予想される電力量よりも高めに設定される。電源制御装置3の学習動作(制限量の更新動作)は、図3に示したステップS11で検出された電流量を用いて行われる。具体的には、上記制限量から上記検出された電流量を減算した差が予め定められた所定値よりも小さい場合、制限量データの値を更新する。更新後の制限量データは、予め定められた所定量だけ減算された値に設定されてもよいし、電流量に基づいて決められた値に設定されてもよい。また、上記の場合、ステップS12の処理は、ステップS11で検出された電流量に代えて、更新後の制限量データを用いて行われる。以上によれば、初期設定時に設定された制限量データの値が、トレーラ10側へ実際に供給される電流量に応じて適宜更新されていく結果、適切な値に設定されることになる。なお、メモリに記憶されている制限量データは、前回のトリップ期間が終了して次のトリップ期間が開始する際に初期設定時の値にリセットされてもよいし、前回のトリップ期間における値が保存され、次のトリップ期間の開始時においては、保存された値が用いられてもよい。
【0047】
(その他の変形例)
なお、上記第1および第2の実施形態においては、電力制御部6が車両側負荷を指定し、負荷制御部7a〜7cは、指定された車両側負荷の電力使用を制限するように制御した。ここで、他の実施形態において、1つの負荷制御部が制御可能な車両側負荷が複数ある場合には、負荷制御部は、電力使用を制限する負荷を、各車両側負荷の作動の必要性に応じて決定するようにしてもよい。例えば、負荷制御部が車両側負荷として空調シートの動作を制御する場合、負荷制御部は、後席に人が乗っていなければ後席の空調シートの作動を停止し、後席に人が乗っていれば後席の空調シートの作動を停止せず、他の車両側負荷の作動を停止するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上のように、本発明は、トーイングを行っているか否かに応じて効率良く電力を供給すること等を目的として、例えば車両に搭載される電源制御装置として利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】第1の実施形態に係る電源制御装置が搭載された車両およびトレーラのブロック図
【図2】第1の実施形態における電源制御装置3の動作の流れを示すフローチャート
【図3】第2の実施形態における電源制御装置3の動作の流れを示すフローチャート
【図4】検出された電流量のレベルと、制限を加える対象となる車両側負荷との対応の一例を示す図
【図5】トレーラ側に供給される電流量のレベルと、車両側負荷に供給する電流量との対応の一例を示す図
【符号の説明】
【0050】
1 車両
2 電源
3 電源制御装置
4 車両側コネクタ
5 検出部
6 電力制御部
7a〜7c 負荷制御部
8a〜8c 車両側負荷
10 トレーラ
11 トレーラ側コネクタ
12 トレーラ側負荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される電源制御装置であって、
前記車両に接続されるトレーラに対して電源電力の供給が行われる供給可能状態であることを検出する検出部と、
前記供給可能状態であることが前記検出部によって検出された場合、検出されない場合に比べて、車両に搭載される装置に対する電源電力の供給を制限する電力制御部とを備える、電源制御装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記トレーラに供給される電力量を検出し、
前記電力制御部は、前記検出部によって検出された電力量に応じて制限の内容を変更する、請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項3】
前記電力制御部は、前記検出部によって検出された電力量に基づいて、制限の対象となる装置を決定する、請求項2に記載の電源制御装置。
【請求項4】
前記電力制御部は、前記検出部によって検出された電力量に基づいて、制限の対象となる装置に対して供給すべき電力量を決定する、請求項2に記載の電源制御装置。
【請求項5】
前記電源制御装置が有するメモリには、前記供給可能状態において制限すべき電力量を表す制限量データが記憶されており、
前記電力制御部は、前記制限量データに基づいて制限の内容を決定するとともに、前記検出部による検出結果に基づいて前記制限量データの値を更新する、請求項2に記載の電源制御装置。
【請求項6】
前記電力制御部は、予め定められた装置に対する電力供給を制限する、請求項1に記載の電源制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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