説明

電源制御装置

【課題】電気機器のコネクターに電源ケーブルが接続される前の電力消費を抑えつつ簡易な構成により電源ケーブルの接続を検出する。
【解決手段】プリンターPに電源ケーブル22が接続されないときには、磁気スイッチ82は端子A,B間を導通しトランジスターT2がオンされる。このため、フォトカプラー75のフォトトランジスター75bのコレクター電流が増加し制御IC90のFB電圧が低下して閾値を下回るから、制御IC90は素子Q1を間欠発振制御して2次側に低電圧を出力する。そして、電源ケーブル22が接続されると、磁気スイッチ82が磁石102の磁力の作用により端子A,B間の導通を遮断しトランジスターT2がオフされる。このため、フォトトランジスター75bのコレクター電流が減少しFB電圧が増加して閾値を上回るから、制御IC90は正規発振制御に切り替えて素子Q1を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器のコネクターに接続される2芯の電源ケーブルを介して該電気機器に電源電圧を供給する電源制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の電源制御装置としては、電源ケーブルを介して電気機器に接続され、交流電圧から整流した直流電圧を制御回路により駆動されるスイッチング回路のスイッチングにより交流電圧に変換してトランスの1次側に印加し、トランスの2次側に変圧して誘起された交流電圧を直流電圧に整流して電気機器に供給する装置が提案されている。(例えば、特許文献1参照)。この装置では、電源ケーブルとして3つの接続端子を有する3芯のケーブルを使用しており、3つの接続端子のうち電流検出回路に接続される2つの端子が電源ケーブルの電気機器への接続に伴って導通されて電流検出回路に電流を流し、接続の解除に伴ってその導通が遮断されて電流検出回路への電流の流れが停止されるよう構成している。そして、電流検出回路が流れる電流の有無を検出することで電源ケーブルの電気機器への接続の有無を検出している。また、電源ケーブルが電気機器に接続されていないことが検出される場合には電流検出回路の作動を確保できる程度の低電圧を2次側に出力するよう制御回路がスイッチング回路をスイッチングしている。これにより、電源ケーブルが電気機器に接続される前の電力消費を抑えつつ、電源ケーブルが電気機器に接続されたことを検出できるものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−299355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した電源制御装置では、電源ケーブルの電気機器への接続を検出するために3つの接続端子からなる3芯の電源ケーブルを用いる必要があるため、2つの接続端子からなる2芯の電源ケーブルを用いるものに比して、回路構成が複雑化したり装置が大型化したりする場合が生じる。
【0005】
本発明の電源制御装置は、電気機器のコネクターに電源ケーブルが接続される前の電力消費を抑えつつ簡易な構成により電源ケーブルの接続を検出することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電源制御装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の電源制御装置は、
電気機器のコネクターに接続される2芯の電源ケーブルを介して該電気機器に電源電圧を供給する電源制御装置であって、
電源からの直流電圧をスイッチング素子のスイッチングにより交流電圧に変換する直流交流変換手段と、
該変換された交流電圧を変圧する変圧手段と、
該変圧された交流電圧を直流電圧に整流し前記電源電圧として前記電源ケーブルに出力する出力手段と、
前記変圧手段に対して1次側に交流電圧が出力されるよう前記スイッチング素子に制御信号を出力可能で、起動信号が入力される場合には前記スイッチング素子が連続的な発振動作をもってスイッチングされるよう前記制御信号を出力し、前記起動信号が入力されない場合には前記スイッチング素子が間欠的な発振動作をもってスイッチングされるよう前記制御信号を出力する集積回路と、
前記変圧手段に対して2次側に接続され、該2次側から供給される電流に応じて信号を生成し該生成した信号を前記集積回路側に伝送する信号伝送手段と、
前記電源ケーブルの前記コネクターへの接続または該接続の解除に伴う物理的な作用を受けてオンオフするスイッチを有し、該スイッチがオンした場合に前記信号伝送手段により前記起動信号が生成されるよう該信号伝送手段への電流の供給状態を切り替える切替手段と
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明の電源制御装置では、集積回路が、起動信号が入力される場合にはスイッチング素子が連続的な発振動作をもってスイッチングされるよう制御信号を出力し、起動信号が入力されない場合にはスイッチング素子が間欠的な発振動作をもってスイッチングされるよう制御信号を出力する。また、電源ケーブルのコネクターへの接続または接続の解除に伴う物理的な作用を受けてオンオフするスイッチを有し、スイッチがオンした場合に、2次側から供給される電流に応じて生成した信号を集積回路側に伝送する信号伝送手段により起動信号が生成されるよう信号伝送手段への電流の供給状態を切り替える。これにより、電源ケーブルが電気機器のコネクターに接続されていない場合には、スイッチング素子の間欠的な発振動作をもって2次側に電圧を出力するから無駄な電力消費を抑えることができる。また、電源ケーブルがコネクターに接続された場合には、間欠的な発振動作をもって2次側に出力された電圧を用いて信号伝送手段から集積回路側に起動信号を伝送させるから、電源ケーブルの接続を検出することができる。そして、このような電源ケーブルの接続の検出を、物理的な作用により行ない2芯の電源ケーブルの使用を可能とするから、3芯の電源ケーブルを用いて接続を検出するものに比して回路構成が複雑化するのを防止することができる。この結果、電気機器のコネクターに電源ケーブルが接続される前の電力消費を抑えつつ簡易な構成により電源ケーブルの接続を検出することができる。
【0009】
また、前記電気機器として前記コネクターに磁石部材が設けられてなる機器に電源電圧を供給する上述した態様の本発明の電源制御装置において、前記スイッチは、前記物理的な作用として、前記電源ケーブルの前記コネクターへの接続に伴って前記磁石部材に近接することによる該磁石部材からの磁力の作用と、前記接続の解除に伴って前記磁石部材から離間することによる該磁石部材からの磁力の作用の解除とを受ける磁気スイッチであるものとすることもできる。あるいは、前記電気機器として前記コネクターに遮光板が設けられてなる機器に電源電圧を供給する上述した態様の本発明の電源制御装置において、前記スイッチは、前記2次側に供給される電流を受けて発光する発光素子と、受光の有無に基づいて前記信号伝送手段への電流の供給状態を切り替える受光素子とを有し、前記物理的な作用として、前記電源ケーブルの前記コネクターへの接続に伴って前記遮光板が前記受発光素子の間に位置することによる該発光素子から該受光素子への光路の遮断と、前記接続の解除に伴って前記遮光板が前記受発光素子の間の位置から外れることによる前記光路の開放とを受けるスイッチであるものとすることもできる。
【0010】
そして、本発明の電源制御装置において、前記集積回路は、前記信号伝送手段から伝送される信号の電圧が所定の範囲内にある場合に該電圧と目標電圧との偏差に応じた電圧が前記2次側に出力されるようフィードバック制御を伴うと共に前記スイッチング素子が前記連続的な発振動作をもってスイッチングされるよう前記制御信号を生成し、前記信号伝送手段から伝送される信号の電圧が前記所定の範囲外にある場合に前記スイッチング素子が前記間欠的な発振動作をもってスイッチングされるよう前記制御信号を生成する回路であり、前記起動信号は、前記所定の範囲外から該所定の範囲内に電圧が切り替わる信号であるものとすることもできる。こうすれば、信号伝送手段にフィードバック用の信号の伝送と起動信号の伝送とを兼用させることができるから、フィードバック用の信号の伝送と起動信号の伝送とを行なう手段を別個に備えるものに比して、より簡易な構成で電源ケーブルの接続を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ACアダプター10の回路構成を示す回路図。
【図2】電源ケーブル22とプリンターPのコネクター100の構成を示す構成図。
【図3】磁気スイッチ82の作動の様子を示す説明図。
【図4】変形例のACアダプター10Aの回路構成を示す回路図。
【図5】変形例の電源ケーブル22Aとコネクター100Aの構成を示す構成図。
【図6】フォトカプラー85の光路の変化の様子を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施形態であるACアダプター10の回路構成を示す回路図である。本実施形態のACアダプター10は、図示するように、プリンターPのコネクター100(図2参照)に接続される電源ケーブル22と、商用電源(AC100Vなど)を所定の直流電圧(DC20Vや42Vなど)に変換して電源ケーブル22とコネクター100との接続を介してプリンターPに供給する電源回路20とを備える。なお、プリンターPは、給紙された用紙にインクを吐出して印刷を行なう周知のインクジェット方式のプリンターとして構成されており、電力が供給されることにより駆動する各種駆動モーターや印刷ヘッドなどからなる負荷Lを備える。
【0013】
電源回路20は、主要な構成要素として、商用電源を整流して直流電圧を出力する第1の整流回路30と、第1の整流回路30から出力された直流電圧をスイッチングにより交流電圧に変換するスイッチング回路40と、スイッチング回路40により変換された交流電圧を変圧するトランス50と、トランス50により変圧された交流電圧を整流して直流電圧を出力する第2の整流回路60と、第2の整流回路60から出力された直流電圧に応じてフォトカプラー75(発光素子である発光ダイオード75aと受光素子であるフォトトランジスター75bとに分けて図示)の出力を制御する定電圧制御用回路70と、電源ケーブル22がプリンターPのコネクター100に接続されているか否かを検出するケーブル接続検出部80と、フォトカプラー75からの出力に応じてスイッチング回路40へのスイッチング制御用の信号を生成して出力する制御IC90とを備える。なお、トランス50を挟んで、第1の整流回路30やスイッチング回路40,制御IC90が配置された側を1次側と称し、第2の整流回路60や定電圧制御用回路70が配置された側を2次側と称する。
【0014】
第1の整流回路30は、商用電源に接続される4つのダイオードが組み合わされたダイオードブリッジ32と、ダイオードブリッジ32に接続された平滑コンデンサーC1とにより構成されている。この第1の整流回路30では、商用電源をダイオードブリッジ32により全波整流して平滑コンデンサーC1により平滑化した直流電圧を出力する。
【0015】
スイッチング回路40は、抵抗R2を介してゲートが制御IC90に接続されると共にドレインがトランス50に接続されるMOS型FETなどのスイッチング素子Q1と、スイッチング素子Q1のソースに接続された電流検出用の抵抗R3とにより構成されている。このスイッチング回路40では、整流回路30から出力される直流電圧をスイッチング素子Q1のスイッチング動作により交流電圧に変換する。
【0016】
トランス50は、第1の整流回路30の出力側とスイッチング回路40のスイッチング素子Q1のドレインとに接続された1次巻線52と、第2の整流回路60に接続された2次巻線54と、ダイオードD2を介して平滑コンデンサーC2に接続された補助巻線56とにより構成されている。このトランス50では、スイッチング素子Q1のスイッチング動作により変換された交流電圧が1次巻線52に印加されることにより、各巻線の巻線数比に応じた交流電圧が2次巻線54や補助巻線56に誘起される。
【0017】
第2の整流回路60は、トランス50の2次巻線54に接続されたダイオードD3と、ダイオードD3に接続された平滑コンデンサーC3とにより構成されている。この第2の整流回路60では、トランス50の2次巻線54に誘起された交流電圧を半波整流して平滑化した直流電圧を電源ケーブル22のVout端子とGND端子間に出力電圧として出力する。
【0018】
ここで、図2は、電源ケーブル22とプリンターPのコネクター100の構成を示す構成図である。図2(a)は電源ケーブル22とコネクター100との接続の様子を示し、図2(b)は電源ケーブル22のコネクター100に接続される接続面を示し、図2(c)はコネクター100の電源ケーブル22に接続される接続面を示す。電源ケーブル22は、その接続面の両端近傍にそれぞれ配置された2つの接続用磁石94と、電力供給用の端子(Vout端子,GND端子)である2つの端子穴96とにより構成されている。また、電源ケーブル22の接続面から、ケーブル接続検出部80の磁気スイッチ82の一部が露出している。一方、プリンターPのコネクター100は、電源ケーブル22が接続された接続状態で接続用磁石94に対向する位置となるよう接続面の両端近傍にそれぞれ配置された2つの鉄板104と、接続状態で2つの端子穴96にそれぞれ対向する位置に設けられプリンターPの図示しない電源制御回路に繋がる2つの端子ピン106と、一部が露出した磁気スイッチ82に接続状態で対向する位置となるよう設けられた作動用磁石102とにより構成されている。この電源ケーブル22は、接続用磁石94と鉄板104とが磁力によって互いに吸引されることでコネクター100に接続される、いわゆるマグネットプラグとして構成されている。また、磁気スイッチ82の露出面と、作動用磁石102における磁気スイッチ82の露出面に対向する対向面とは、磁極がそれぞれ異なる極となるよう構成されている。このため、電源ケーブル22のコネクター100への接続に伴って磁気スイッチ82と作動用磁石102とは磁力により互いに吸引力を作用させることになる。また、電源ケーブル22のコネクター100からの取り外しに伴って、磁力による吸引力の作用は解消される。このように、作動用磁石102は、磁力による吸引力の作用で磁気スイッチ82を作動させるための磁石として機能するものである。
【0019】
定電圧制御用回路70は、抵抗R4を介してアノード側がVout端子に接続され2次側の電流の供給を受けて発光する発光ダイオード75aとコレクターが1次側の制御IC90の後述するFB端子に接続されエミッターがグランドに接地されて発光ダイオード75aからの発光を受けてコレクター電流が流れるフォトカプラー75bとからなるフォトダイオード75と、Vout端子とグランド(GND端子)との間に接続された分圧抵抗R5,R6と、アノード側がグランドに接地されたツェナーダイオードTD1と、発光ダイオード75aのカソード側にコレクターが接続されエミッターがツェナーダイオードTD1のカソード側に接続されベースが分圧抵抗R5,R6との接続点に接続されたトランジスターT1と、トランジスターT1のベース−コレクター間に接続されたコンデンサーC4とにより構成されている。この定電圧制御用回路70では、分圧抵抗R5,R6により分圧された2次側の出力電圧がトランジスターT1のベースに入力されてトランジスターT1がオンされて、ツェナーダイオードTD1に所定のツェナー電圧(降伏電圧)を上回る電圧がかかる場合に、発光ダイオード75aに電流が流れる。なお、この場合以外にも発光ダイオード75aに電流が流れる場合があるが、詳細は後述する。そして、2次側の出力電圧の変化により発光ダイオード75aに流れる電流が変化すると、フォトトランジスター75bの受光量が変化してコレクター電流が変化するから、制御IC90のFB端子にかかる電圧が変化することになる。このため、制御IC90のFB端子に2次側の出力電圧に応じた信号(電圧)が入力されることになる。
【0020】
ケーブル接続検出部80は、発光ダイオード75aとトランジスターT1のコレクターとの接続点にコレクターが接続されエミッターがグランドに接地されたトランジスターT2と、抵抗R7を介してVout端子に接続されたA端子とトランジスターT2のベースに接続されたB端子との導通と導通の遮断とを切り替える磁気スイッチ82とにより構成されている。ここで、図3は、磁気スイッチ82の作動の様子を示す説明図である。図3(a)は、電源ケーブル22がコネクター100から取り外されている場合の磁気スイッチ82の様子を示す。この場合、磁気スイッチ82は、スプリング82aの付勢力により初期位置に位置してA端子とB端子とを導通する。このため、トランジスターT2のベースには、抵抗R7とA端子とB端子とを介してVout端子に出力される電圧に応じた電流が流れてトランジスターT2がオンされる。一方、図3(b)は、電源ケーブル22がコネクター100に接続されている場合の磁気スイッチ82の様子を示す。この場合、上述したように、電源ケーブル22のコネクター100への接続に伴って磁気スイッチ82と作動用磁石102とは磁力により互いに吸引力を作用させるから、スプリング82aの付勢力に抗して磁気スイッチ82が作動用磁石102側(図中上側)に引き寄せられてA端子とB端子との導通を遮断する。このため、トランジスターT2のベースに流れる電流が遮断されてトランジスターT2がオフされる。
【0021】
制御IC90は、スイッチング素子Q1をスイッチング制御するためのICチップとして構成され、フォトトランジスター75bのコレクターに接続されるFB端子と、スイッチング素子Q1の電流値を検出するためにスイッチング素子Q1と電流検出用の抵抗R3との接続点の電位が入力されるIS端子と、グランドに接続されるGND端子と、スイッチング素子Q1のゲートにスイッチング用の制御信号を出力するOUT端子と、抵抗R1とダイオードD1とを介して第1の整流回路30のダイオードブリッジ32に接続されて制御IC90の起動用の電圧が入力されるVH端子と、トランス50の補助巻線56により誘起されてダイオードD2と平滑コンデンサーC2とにより整流と平滑とがなされた直流電圧が入力されるVCC端子とを備える。この制御IC90は、スイッチング制御をしていない間はVH端子から入力される電圧により駆動し、スイッチング制御をしている間はトランス50の補助巻線56に誘起されてVCC端子から入力される電圧により駆動する。
【0022】
この制御IC90では、VH端子やVCC端子から入力された電圧を用いてFB端子に所定の電圧を印加(プルアップ)するよう構成されている。また、上述したように、FB端子はフォトトランジスター75bのコレクターに接続されている。このため、プリンターPの負荷Lに流れる電流が減少するなどにより発光ダイオード75aに流れる電流が増加した場合、フォトトランジスター75bのコレクター電流が増加するため、FB端子にかかる電圧(以下、FB電圧)は所定の電圧よりも小さくなる。この場合、制御IC90では、スイッチング素子Q1のオン時間が短くなるようデューティ比を調整してスイッチング用の制御信号を生成し、生成した制御信号をOUT端子から出力する。これにより、トランス50の2次側の出力電圧を低下させることができる。一方、プリンターPの負荷Lに流れる電流が増加するなどにより発光ダイオード75aに流れる電流が減少した場合、フォトトランジスター75bのコレクター電流が減少するため、FB電圧は大きくなって所定の電圧に近付くことになる。この場合、制御IC90では、スイッチング素子Q1のオン時間が長くなるようデューティ比を調整してスイッチング用の制御信号を生成し、生成した制御信号をOUT端子から出力する。これにより、トランス50の2次側の出力電圧を上昇させることができる。このように、制御IC90では、フォトトランジスター75bのコレクター電流をFB端子に作用するフィードバック信号として用いて、2次側の出力電圧が所望の電圧となるようスイッチング素子Q1のフィードバック制御を行なっている。また、この制御IC90では、FB電圧が閾値Vrefを超える所定範囲内にある場合には、このようなフィードバック制御を伴って正規の発振周波数でスイッチング素子Q1がスイッチングされるよう制御信号を生成する(以下、正規発振制御という)。一方、FB電圧が閾値Vref未満となって所定範囲外にある場合には、間欠発振(バーストモード)での発振周波数をもってスイッチング素子Q1がスイッチングされるよう制御信号を生成する(以下、間欠発振制御という)。
【0023】
次に、こうして構成された本実施形態のACアダプター10の動作、特に、電源ケーブル22がプリンターPのコネクター100に接続される際の動作について説明する。まず、電源ケーブル20がコネクター100に接続されていない状態について説明する。ここで、本実施形態では、電源ケーブル20が接続されていない状態でも制御IC90によりスイッチング素子Q1がスイッチングされており、このため、2次側に電圧が出力されている。このとき、ケーブル接続検出部80では、磁石スイッチ82がコネクター100の作動用磁石102から磁力による吸引力の作用を受けないため(図3(a)参照)、端子A,B間を導通してトランジスターT2がオンとされる。このため、出力端子Voutから抵抗R4,発光ダイオード75a,トランジスターT2のコレクター−エミッター間を通って電流が流れることになる。これにより、フォトトランジスター75bのコレクター電流が流れて、制御IC90のFB端子のFB電圧が低下する。本実施形態では、この場合のFB電圧が上述した閾値Vrefを下回るよう構成するものとした。したがって、電源ケーブル20がコネクター100に接続されていない状態では、制御IC90は、間欠発振制御を行なうため、2次側の出力電圧としては比較的低い電圧が出力されることになる。そして、この出力電圧によりトランジスターT2がオンされ続けて、制御IC90のFB端子のFB電圧は閾値Vrefを下回る状態を維持して間欠発振制御が継続されるから、2次側の出力電圧も低電圧の状態が継続されることになる。
【0024】
続いて、電源ケーブル22がプリンターPのコネクター100に接続される場合について説明する。電源ケーブル20がコネクター100に接続されると、ケーブル接続検出部80では、磁石スイッチ82がコネクター100の作動用磁石102から磁力による吸引力の作用を受けるため(図3(b)参照)、端子A,B間の導通を遮断してトランジスターT2がオフとされる。これにより、トランジスターT2のコレクター−エミッター間が遮断されるため、発光ダイオード75aを流れる電流が徐々に減少することになる。なお、トランジスターT2がオフとされた直後は、2次側の出力電圧は低電圧の状態にあるため、発光ダイオード75aからトランジスターT1のコレクター−エミッター間を介してツェナーダイオードTD1へ電流が流れる状態にはなっていない。このため、フォトトランジスター75bのコレクター電流が徐々に減少して、制御IC90のFB端子のFB電圧が徐々に増加していく。そして、FB電圧が閾値Vrefを超えると、制御IC90は、間欠発振制御から正規発振制御に切り替えて、フィードバック制御を伴ってプリンターPの負荷Lの稼働に必要な電圧が2次側に出力されるようスイッチング素子Q1の制御を行なう。このように、電源ケーブル20のコネクター100への接続を検出して、間欠発振制御から正規発振制御に切り替えることができる。このため、FB電圧が閾値Vrefを超える状態になること即ちフォトトランジスター75bのコレクター電流によりFB端子に入力される信号が閾値Vref未満から閾値Vref以上となることは、間欠発振制御から正規発振制御に切り替えるための起動信号として機能するものといえる。こうした電源ケーブル20の接続の検出を、間欠発振制御により2次側に出力された低電圧を用いて行なうから、消費電力を抑えることができる。また、ケーブル接続検出部80の磁気スイッチ82を作動させる作動用磁石102をコネクター100に設けて2芯の電源ケーブル22を使用するものとしたから、3芯の電源ケーブルを使用するものに比して簡易な回路構成とすることができる。さらに、フィードバック制御を行なう所定範囲の下限を閾値Vrefとして定め、閾値Vrefを境に間欠発振制御と正規発振制御とを切り替えるものとしたため、電源ケーブル22の接続を検出した場合の信号と定電圧制御用のフィードバック信号とを区別することなく入力して制御を切り替えることができる。これにより、電源ケーブル22の接続を検出した信号を出力する回路を個別に設けるものに比してより簡易な構成とすることができる。なお、電源ケーブル20がコネクター100から取り外されると、作動用磁石102から磁気スイッチ82に作用している磁力による吸引力が解消して、スプリング82aの付勢力により磁気スイッチ82が初期状態に戻る。このため、端子A,Bが導通されてトランジスターT2がオンとされ、再び間欠発振制御を行なう状態に切り替わる。
【0025】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態のスイッチング回路40が本発明の「直流交流変換手段」に相当し、トランス50が「変圧手段」に相当し、第2の整流回路60が「出力手段」に相当し、制御IC90が「集積回路」に相当し、フォトカプラー75を含む定電圧制御用回路70が「信号伝送手段」に相当し、ケーブル接続検出部80が「切替手段」に相当する。また、磁気スイッチ82が「スイッチ」に相当する。
【0026】
以上詳述した本実施形態のACアダプター10によれば、プリンターPのコネクター100に電源ケーブル22が接続されないときには、コネクター100に設けられた作動用磁石102からの磁力の作用を受けない磁気スイッチ82が端子A,B間を導通してトランジスターT2がオンされるため、フォトカプラー75のフォトトランジスター75bのコレクター電流が増加し制御IC90のFB電圧が低下して閾値Vrefを下回り、制御IC90は素子Q1を間欠発振制御して2次側に低電圧を出力する。そして、電源ケーブル22が接続されると、磁気スイッチ82が作動用磁石102からの磁力の作用による吸引力を受けて作動し端子A,B間の導通を遮断してトランジスターT2がオフされるため、フォトトランジスター75bのコレクター電流が減少しFB電圧が増加して閾値Vrefを上回り、制御IC90は正規発振制御に切り替えて素子Q1を制御する。これにより、電源ケーブル22が接続されていない場合には、スイッチング素子Q1を間欠発振制御して2次側に低電圧を出力するから、電源ケーブル22の接続前の無駄な電力消費を抑えることができる。また、間欠発振制御により2次側に出力された低電圧を用いて、電源ケーブル22が接続されたことを検出して正規発振制御に切り替えることができる。そして、ケーブル接続検出部80の磁気スイッチ82を作動させる作動用磁石102をコネクター100に設けることで、2芯の電源ケーブル22を使用しても接続の検出を可能としたから、3芯の電源ケーブルを使用して接続を検出するものに比して簡易な回路構成とすることができる。さらに、電源ケーブル22の接続を検出した信号を定電圧制御用回路70から出力するものとしたから、接続の検出信号を出力する回路を個別に設けるものに比してより簡易な構成とすることができる。
【0027】
なお、本発明は上述した実施態様に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0028】
上述した実施形態では、ケーブル接続検出部80において磁力の吸引力により磁気スイッチ82を作動させるものとしたが、これに限られず、磁力の反発力により磁気スイッチ82を作動させるものとしてもよい。
【0029】
上述した実施形態では、電源ケーブル22の接続を検出した場合の信号と定電圧制御用のフィードバック信号とをいずれも定電圧制御用回路70から出力するものとしたが、これに限られず、電源ケーブル22の接続を検出した場合の信号と定電圧制御用のフィードバック信号とを別個の回路から出力するものとしてもよい。ただし、簡易な構成とするためには、本実施形態のように構成するものが好ましい。
【0030】
上述した実施形態では、ケーブル接続検出部80を、コネクター100に設けられた作動用磁石102からの磁力の作用に作動する磁気スイッチ82を用いて構成したが、これに限られず、電源ケーブル22のコネクター100への接続を検出することができるものであれば如何なる構成としてもよい。例えば、コネクター100に設けられた遮断板により光路が切り替えられるフォトカプラーを用いて構成するものとしてもよい。その場合の変形例について説明する。図4は、変形例のACアダプター10Aの回路構成を示す回路図であり、図5は、変形例の電源ケーブル22Aとコネクター100Aの構成を示す構成図であり、図6は、フォトカプラー85の光路の変化の様子を示す説明図である。なお、図4〜6では、図1〜3と同じ構成については同一の符号を付してその説明を省略する。図4に示すように、電源回路20Aのケーブル接続検出部80Aは、本実施形態と同じ構成のトランジスターT2と、アノード側が出力端子Voutに接続されカソード側がGND端子に接続された発光ダイオード85aと、抵抗R7を介して出力端子Voutにコレクターが接続されトランジスターT2のベースにエミッターが接続されたフォトトランジスター85bとからなるフォトカプラー85(図番の図示は省略)とにより構成されている。また、図5に示すように、コネクター100Aには、遮光板107が設けられている。一方、電源コネクター22Aには、コネクター100Aに接続された状態で遮光板107がはまり込むよう受け溝85cが形成されている。また、この受け溝85cは、図4に示すように、発光ダイオード85aとフォトトランジスター85bとの間に形成されている。このため、電源ケーブル22Aがコネクター100Aから取り外されている場合には、図6(a)に示すように、発光ダイオード85aからフォトトランジスター85bへの光路が開放される。このとき、フォトトランジスター85bにはコレクター電流が流れるため、トランジスターT2をオンとすることができる。したがって、本実施形態と同様に、電源ケーブル22Aがコネクター100Aから取り外されている場合には、発光ダイオード75aに流れる電流が大きくなりフォトトランジスター75bのコレクター電流が大きくなる。このため、FB端子の電圧が閾値Vrefを下回り間欠発振制御が行なわれることになる。また、電源ケーブル22Aがコネクター100Aに接続されている場合には、図6(b)に示すように、遮光板107が受け溝85cにはまり込む。このため、遮光板107により発光ダイオード85aからフォトトランジスター85bへの光路が遮断される。したがって、本実施形態と同様に、トランジスターT2がオフとされるから、発光ダイオード75aに流れる電流が小さくなりフォトトランジスター75bのコレクター電流が小さくなる。このため、FB端子の電圧が徐々に大きくなって閾値Vrefを上回り、間欠発振制御から正規発振制御に切り替わることになる。このように、本実施形態と同様に、電源ケーブル22AがプリンターPのコネクター100Aに接続されたことを検出することができ、本実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0031】
本実施形態では、本発明をプリンターPへの電力供給を制御するACアダプター10に適用して説明したが、これに限られず、ACアダプターからの電力により作動する機器であれば、携帯型のパーソナルコンピューターやビデオカメラ,音楽再生機,携帯情報端末などの他の如何なる電気機器に適用するものとしても構わない。
【符号の説明】
【0032】
10,10A ACアダプター、20,20A 電源回路、22,22A 電源ケーブル、30 第1の整流回路、32 ダイオードブリッジ、40 スイッチング回路、50 トランス、52 1次巻線、54 2次巻線、56 補助巻線、60 第2の整流回路、70 定電圧制御用回路、75 フォトカプラー、75a 発光ダイオード、75b フォトトランジスター、80,80A ケーブル接続検出部、82 磁気スイッチ、82a スプリング、85 フォトカプラー、85a 発光ダイオード、85b フォトトランジスター、85c 受け溝、90 制御IC、94 接続用磁石、96 端子穴、100,100A コネクター、102 作動用磁石、104 鉄板、106 端子ピン、107 遮光板、A,B 端子、C1,C2,C3,C4 コンデンサー、D1,D2,D3 ダイオード、L 負荷、P プリンター、Q1 スイッチング素子(MOS型FET)、R1,R2,R3,R4,R5,R6,R7 抵抗、T1,T2 トランジスター、TD1 ツェナーダイオード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器のコネクターに接続される2芯の電源ケーブルを介して該電気機器に電源電圧を供給する電源制御装置であって、
電源からの直流電圧をスイッチング素子のスイッチングにより交流電圧に変換する直流交流変換手段と、
該変換された交流電圧を変圧する変圧手段と、
該変圧された交流電圧を直流電圧に整流し前記電源電圧として前記電源ケーブルに出力する出力手段と、
前記変圧手段に対して1次側に交流電圧が出力されるよう前記スイッチング素子に制御信号を出力可能で、起動信号が入力される場合には前記スイッチング素子が連続的な発振動作をもってスイッチングされるよう前記制御信号を出力し、前記起動信号が入力されない場合には前記スイッチング素子が間欠的な発振動作をもってスイッチングされるよう前記制御信号を出力する集積回路と、
前記変圧手段に対して2次側に接続され、該2次側から供給される電流に応じて信号を生成し該生成した信号を前記集積回路側に伝送する信号伝送手段と、
前記電源ケーブルの前記コネクターへの接続または該接続の解除に伴う物理的な作用を受けてオンオフするスイッチを有し、該スイッチがオンした場合に前記信号伝送手段により前記起動信号が生成されるよう該信号伝送手段への電流の供給状態を切り替える切替手段と
を備える電源制御装置。
【請求項2】
前記電気機器として前記コネクターに磁石部材が設けられてなる機器に電源電圧を供給する請求項1記載の電源制御装置であって、
前記スイッチは、前記物理的な作用として、前記電源ケーブルの前記コネクターへの接続に伴って前記磁石部材に近接することによる該磁石部材からの磁力の作用と、前記接続の解除に伴って前記磁石部材から離間することによる該磁石部材からの磁力の作用の解除とを受ける磁気スイッチである
電源制御装置。
【請求項3】
前記電気機器として前記コネクターに遮光板が設けられてなる機器に電源電圧を供給する請求項1記載の電源制御装置であって、
前記スイッチは、前記2次側に供給される電流を受けて発光する発光素子と、受光の有無に基づいて前記信号伝送手段への電流の供給状態を切り替える受光素子とを有し、前記物理的な作用として、前記電源ケーブルの前記コネクターへの接続に伴って前記遮光板が前記受発光素子の間に位置することによる該発光素子から該受光素子への光路の遮断と、前記接続の解除に伴って前記遮光板が前記受発光素子の間の位置から外れることによる前記光路の開放とを受けるスイッチである
電源制御装置。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか1項に記載の電源制御装置であって、
前記集積回路は、前記信号伝送手段から伝送される信号の電圧が所定の範囲内にある場合に該電圧と目標電圧との偏差に応じた電圧が前記2次側に出力されるようフィードバック制御を伴うと共に前記スイッチング素子が前記連続的な発振動作をもってスイッチングされるよう前記制御信号を生成し、前記信号伝送手段から伝送される信号の電圧が前記所定の範囲外にある場合に前記スイッチング素子が前記間欠的な発振動作をもってスイッチングされるよう前記制御信号を生成する回路であり、
前記起動信号は、前記所定の範囲外から該所定の範囲内に電圧が切り替わる信号である
電源制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−39759(P2012−39759A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177719(P2010−177719)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】