説明

電源回路

【課題】外部から与えられる電磁波を整流して内部回路用の電源を生成するときに、受信電力が小さくても比較的高い電源電圧が得られる電源回路を提供する。
【解決手段】コイル1とコンデンサ2による共振回路の一端のノードN1と接地電位GNDとの間に、ダイオード接続したDMOS5とNMOS6を直列に接続し、このNMOS6のゲートを電源電圧VCLが出力されるノードN2に接続する。これにより、コンデンサ3に蓄積された電源電圧VCLがNMOS6の閾値電圧VTNを越えると、このNMOS6が常にオン状態となり、ダイオード接続されたDMOS5による半波整流が行われる。DMOS5は、閾値電圧の絶対値が小さいので導通時の電圧降下が小さく、より高い電源電圧VCLを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池を持たないスマートキーや非接触型のICカードのように、外部から与えられる電磁波を電源として動作する携帯機器における電源回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図2は、従来の電源回路の構成図である。
この電源回路は、例えば電池を持たないスマートキーに搭載され、外部から与えられる電磁波を受信して内部回路10に供給するための電源電圧VCLを生成するものである。
【0003】
この電源回路は、ノードN1,N2間に接続されたコイル1と、これに並列に接続されたコンデンサ2からなる共振回路を有している。ノードN2には電源電圧を保持するためのコンデンサ3の一端が接続され、このコンデンサ3の他端は接地電位GNDに接続されている。また、ノードN1と接地電位GNDの間には、ダイオード接続されたNチャネルMOSトランジスタ(以下、「NMOS」という)4が接続されている。即ち、NMOS4のソース電極(以下、単に「ソース」という)がノードN1に、ゲート電極(以下、単に「ゲート」という)とドレイン電極(以下、単に「ドレイン」という)は接地電位GNDに接続され、ノードN1側がカソード(陰極)、接地電位GND側がアノード(陽極)となっている。そして、ノードN2に電源電圧VCLが生成され、内部回路10に供給されるようになっている。また、ノードN1の信号は、入力信号RFとして内部回路10に与えられている。
【0004】
なお、内部回路10は、電源回路から供給される電源電圧VCLによって動作し、自動車に搭載された車載器から受信した入力信号RFを復調して、解錠等の操作を無線信号によって行うものである。
【0005】
図3は、シミュレーションによる図2の動作を示す信号波形図である。なお、このシミュレーションでは、共振回路の共振周波数を125kHz、コンデンサ3の容量を2.5nF、NMOS4の閾値電圧VTNを0.7Vとしている。
【0006】
この電源回路が自動車に近づいて図示しない車載器から125kHz程度の長波帯の搬送波を変調した電波を受信すると、この搬送波に同調するように設定されたコイル1とコンデンサ2による共振回路に高周波信号が誘起される。高周波信号は、ダイオード接続されたNMOS4によって半波整流され、ノードN1の入力信号RFは、下限がこのNMOS4の閾値電圧VTN(この場合、0.7V)で制限された振幅波形入力となる。また、ノードN2には、コンデンサ3に充電された振幅波形入力の中間レベルが電源電圧VCLとして出力される。電源電圧VCLは内部回路10に供給され、この内部回路10による所定の動作が開始される。
【0007】
【特許文献1】特開2003−88005号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記電源回路では、ノードN1に生ずる入力信号RFの下限がNMOS4の閾値電圧VTN(0.7V)となるため、この入力信号RFのビーク値が2.0Vであっても、ノードN2に生成される電源電圧VCLは最大でも0.65Vとなる。このため、内部回路10が安定した動作をするのに十分な電源電圧VCLを得るためには、車載器側の送信電力を大きくする必要があった。また、車載器側の送信電力が小さい場合には、この車載機側に十分に近づかなければ、正常な動作ができないという課題があった。
【0009】
本発明は、受信電力が小さくても、比較的高い電源電圧を得ることができる電源回路を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、外部から与えられる電磁波を受信して内部の回路に供給する電源電圧を生成する電源回路を、第1ノードと第2ノードの間に接続されて前記電磁波を受信するコイルと、前記コイルに並列に接続される第1のコンデンサと、前記第2ノードと共通電位の間に接続される第2のコンデンサと、ソースが前記第1ノードに接続され、ゲートが前記共通電位に接続されたデプレッション型の第1のNMOSと、ソースが前記第1のNMOSのドレインに接続され、ゲートが前記第2ノードに接続され、ドレインが前記共通電位に接続されたエンハンスメント型の第2のNMOSで構成している。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、共振回路の一端の第1ノードと共通電位との間に、ダイオード接続したデプレッション型の第1のNMOSとエンハンスメント型の第2のNMOSを直列に接続し、この第2のNMOSのゲートを電源電圧が出力される第2ノードに接続している。これにより、第2のコンデンサに蓄積された電源電圧が第2のNMOSの閾値電圧よりも高くなると、この第2のNMOSが常にオン状態となり、ダイオード接続されたデプレッション型の第1のNMOSによる半波整流が行われる。デプレッション型の第1のNMOSは、閾値電圧の絶対値が小さいので導通時の電圧降下が小さく、より高い電源電圧を得ることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は、次の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、より完全に明らかになるであろう。但し、図面は、もっぱら解説のためのものであって、この発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の実施例1を示す電源回路の構成図であり、図2中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0014】
この電源回路は、図2と同様に、電池を持たないスマートキーに搭載され、外部から与えられる電磁波を受信して内部回路10に供給するための電源電圧VCLを生成するものである。
【0015】
この電源回路は、ノードN1,N2間に接続されたコイル1と、これに並列に接続されたコンデンサ2からなる共振回路を有している。ノードN2には電源電圧を保持するためのコンデンサ3の一端が接続され、このコンデンサ3の他端は共通電位(例えば、接地電位GND)に接続されている。また、ノードN1と接地電位GNDの間には、デプレッション型のNMOS(以下、「DMOS」という)5と通常(エンハンスメント型)のNMOS6が直列に接続されている。即ち、ノードN1にはDMOS5の一方の電極であるソースが接続され、このDMOS5の他方の電極であるドレインはNMOS6の一方の電極であるソースに接続されている。また、NMOS6の他方の電極であるドレインは、DMOS5のゲートと共に、接地電位GNDに接続されている。更に、NMOS6のゲートはノードN2に接続されている。
【0016】
そして、ノードN2に電源電圧VCLが生成され、内部回路10に供給されるようになっている。また、ノードN1の信号は、入力信号RFとして内部回路10に与えられている。なお、内部回路10は、電源回路から供給される電源電圧VCLによって動作し、自動車に搭載された車載器から受信した、例えば搬送周波数125kHzの入力信号RFを復調して受信処理し、その処理結果に応じて、例えば数100MHz帯の無線信号を使用して自動車のドアの解錠等の操作を行うものである。
【0017】
図4は、シミュレーションによる図1の動作を示す信号波形図である。なお、このシミュレーションでは、共振回路の共振周波数を125kHz、コンデンサ3の容量を2.5nF、NMOS4の閾値電圧VTNを0.7Vとしている。
【0018】
この電源回路を備えたスマートキーが自動車に近づいて、図示しない車載器から125kHz程度の長波帯の搬送波を変調した電波を受信すると、この搬送波に同調するように設定されたコイル1とコンデンサ2による共振回路に高周波信号が誘起される。誘起された高周波信号は、DMOS5、NMOS6及びコンデンサ3による直列回路に与えられる。
【0019】
ノードN1,N2間に誘起された高周波信号によって、ノードN1側の電位がノードN2側の電位よりも高いときには、NMOS6はオフ状態となるので、DMOS5の状態に拘らず直列回路に電流は流れない。
【0020】
一方、ノードN2側の電位がノードN1側の電位よりも高いとき、DMOS5はオン状態となるが、NMOS6はゲートがノードN2に接続されているので、コンデンサ3に蓄積された電位、即ち電源電圧VCLに応じてオン・オフ状態が変化する。電源電圧VCLがNMOS6の閾値電圧VTN以下のときには、ノードN2,N1間の電圧が閾値電圧VTN−電源電圧VCLを越えた時点で、NMOS6がオン状態となってコンデンサ3に電荷が蓄積され、電源電圧VCLは次第に上昇する。
【0021】
電源電圧VCLが閾値電圧VTN以上に上昇すると、NMOS6は常時オン状態となり、DMOS5による半波整流が行われる。DMOS5は、閾値電圧の絶対値が小さく、ゲートに印加されるバイアス電圧が0でもオン状態となるので、ノードN1の入力信号RFの下限は接地電位GND付近まで引き上げられ、0.8V程度の電源電圧VCLが得られる。
【0022】
以上のように、この実施例1の電源回路は、電源電圧VCLによって動作状態が制御されるNMOS6とダイオード接続されたDMOS5を直列接続した半波整流回路を設けているので、電源電圧VCLがこのNMOS6の閾値電圧VTNを越えると、NMOS6の閾値電圧VTNの影響がなくなってくるので、閾値電圧の絶対値が小さいDMOS5による半波整流が行われ、比較的高い電源電圧VCLを得ることができるという利点がある。
【実施例2】
【0023】
図5は、本発明の実施例2を示す電源回路の構成図であり、図1中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0024】
この電源回路は、図1中のノードN2とNMOS6のゲートの間に、ダイオード接続したPチャネルMOSトランジスタ(以下、「PMOS」という)7を挿入すると共に、このNMOS6のゲートと接地電位GNDの間に抵抗手段としての抵抗素子8を接続したものである。
【0025】
即ち、PMOS7のソースはノードN2に接続され、このPMOS7のゲートとドレインがノードN3に接続されている。そして、ノードN3にはNMOS6のゲートと抵抗素子8の一端が接続され、この抵抗素子8の他端が接地電位GNDに接続されている。これにより、PMOS7は、アノードがノードN2に接続され、カソードがN3に接続されたダイオードとして動作する。その他の構成は、図1と同様である。
【0026】
図6は、シミュレーションによる図5の動作を示す信号波形図である。なお、このシミュレーションでは、PMOS7の閾値電圧VTPを1.0V、抵抗素子8の抵抗値を10MΩとし、その他の条件は実施例1と同様である。
【0027】
この電源回路では、ノードN2とNMOS6のゲートの間に挿入されたダイオード接続されたPMOS7の効果により、電源電圧VCLがこのPMOS7の閾値電圧VTPを越えてから抵抗素子8に電流が流れ、ノードN3の電位が0から徐々に上昇する。従って、電源電圧VCLが閾値電圧VTPを越えたとき、ノードN2の電位はノードN3の電位よりも常に閾値電圧VTPだけ高くなる。その後の動作は、実施例1と同様である。
【0028】
これにより、この実施例2の電源回路で生成される電源電圧VCLは、実施例1の電源回路に比べて、PMOS7の閾値電圧VTP分だけ高くなる。
【0029】
以上のように、この実施例2の電源回路は、実施例1の電源回路に対して、電源電圧VCLが出力されるノードN2とNMOS6のゲートとの間に、ダイオード接続されたPMOS7を挿入しているので、実施例1よりもこのPMOS7の閾値電圧VTPだけ高い電源電圧VCLを得ることができるという利点がある。
【0030】
なお、本発明は、上記実施例に限定されず、種々の変形が可能である。この変形例としては、例えば、次のようなものがある。
(a) スマートキーに適用した電源回路について説明したが、この電源回路の適用範囲はスマートキーに限定するものではない。非接触型のICカード等の、外部から与えられる電磁波を電源として動作する携帯機器における電源回路として広く使用することができる。その場合、外部から与えられる電波の周波数に応じて、コイル1とコンデンサ2による共振回路の共振周波数を設定する必要がある。
(b) コンデンサ3や抵抗素子8の値は一例であり、これらの値に限定するものではない。また、必要な容量値や抵抗値が得られるのであれば、各コンデンサや抵抗素子をMOSトランジスタで構成されるMOSキャパシタやMOS抵抗としても良い。
(c) 実施例2のダイオード接続されたPMOS7は1個に限定するものではない。複数個直列に接続することにより、更に高い電源電圧VCLを得ることができる。
(d) 各実施例に示した電源回路と内部回路は、1つのICチップ内に集積した構成としても良いし、電源回路と内部回路をそれぞれ別のICチップとして構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施例1を示す電源回路の構成図である。
【図2】従来の電源回路の構成図である。
【図3】図2の動作を示す信号波形図である。
【図4】図1の動作を示す信号波形図である。
【図5】本発明の実施例2を示す電源回路の構成図である。
【図6】図5の動作を示す信号波形図である。
【符号の説明】
【0032】
1 コイル
2,3 コンデンサ
5 DMOS
6 NMOS
7 PMOS
8 抵抗素子
10 内部回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から与えられる電磁波を受信して内部の回路に供給する電源電圧を生成する電源回路であって、
第1ノードと第2ノードの間に接続されて前記電磁波を受信するコイルと、
前記コイルに並列に接続される第1のコンデンサと、
前記第2ノードと共通電位の間に接続される第2のコンデンサと、
ソース電極が前記第1ノードに接続され、ゲート電極が前記共通電位に接続されたデプレッション型の第1のNチャネルMOSトランジスタと、
ソース電極が前記第1のNチャネルMOSトランジスタのドレイン電極に接続され、ゲート電極が前記第2ノードに接続され、ドレイン電極が前記共通電位に接続されたエンハンスメント型の第2のNチャネルMOSトランジスタとを、
備えたことを特徴とする電源回路。
【請求項2】
外部から与えられる電磁波を受信して内部の回路に供給する電源電圧を生成する電源回路であって、
第1ノードと第2ノードの間に接続されて前記電磁波を受信するコイルと、
前記コイルに並列に接続される第1のコンデンサと、
前記第2ノードと共通電位の間に接続される第2のコンデンサと、
ソース電極が前記第2ノードに接続され、ゲート電極とドレイン電極が第3ノードに接続されたPチャネルMOSトランジスタと、
一端が前記第3ノードに接続され、他端が前記共通電位に接続された抵抗手段と、
ソース電極が前記第1ノードに接続され、ゲート電極が前記共通電位に接続されたデプレッション型の第1のNチャネルMOSトランジスタと、
ソース電極が前記第1のNチャネルMOSトランジスタのドレイン電極に接続され、ゲート電極が前記第3ノードに接続され、ドレイン電極が前記共通電位に接続されたエンハンスメント型の第2のNチャネルMOSトランジスタとを、
備えたことを特徴とする電源回路。
【請求項3】
前記第2ノードと前記第3ノードの間に接続されたPチャネルMOSトランジスタは、直列にダイオード接続された複数のトランジスタで構成されていることを特徴とする請求項2記載の電源回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−271695(P2009−271695A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−121012(P2008−121012)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【出願人】(308033711)OKIセミコンダクタ株式会社 (898)
【出願人】(591049893)株式会社 沖マイクロデザイン (127)
【Fターム(参考)】