電源回路
【課題】複数のトランスを有する電源装置において、各トランスの出力電圧差を低減することのできる電源装置を提供する。
【解決手段】絶縁電源回路14は、複数のトランス4と、各トランス4を駆動させるスイッチングPWMパルスを出力する制御IC42とを備えてトランス毎に複数の出力を得る電源回路であって、トランス毎に設けられてトランスの一次側のインダクタに接続されて当該トランスへの入力電圧が印加されると共に、ゲート端子が制御IC42に接続されてゲート端子に供給されるスイッチングPWMパルスに応じて当該トランスへの入力電圧のスイッチングを行う電界効果トランジスタTR40,TR41を備え、制御IC42は、電界効果トランジスタTR40,TR41を介して各トランス4の一次側および二次側のインダクタに流れる電流がスイッチング周期内で電流値0とはならない状態を示す連続電流モードとなるように各トランス4を駆動させる。
【解決手段】絶縁電源回路14は、複数のトランス4と、各トランス4を駆動させるスイッチングPWMパルスを出力する制御IC42とを備えてトランス毎に複数の出力を得る電源回路であって、トランス毎に設けられてトランスの一次側のインダクタに接続されて当該トランスへの入力電圧が印加されると共に、ゲート端子が制御IC42に接続されてゲート端子に供給されるスイッチングPWMパルスに応じて当該トランスへの入力電圧のスイッチングを行う電界効果トランジスタTR40,TR41を備え、制御IC42は、電界効果トランジスタTR40,TR41を介して各トランス4の一次側および二次側のインダクタに流れる電流がスイッチング周期内で電流値0とはならない状態を示す連続電流モードとなるように各トランス4を駆動させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源回路に関し、特に、複数のトランスを備える電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一次側と二次側が絶縁され、二次側に設けられたゲート駆動回路に対して一次側から電力を供給する方式の電源回路(絶縁電源回路)がインバータ制御モータに利用されている。このようなモータを駆動するインバータ部が3相インバータの場合、電源回路のトランスの二次側出力が、例えば6個のゲート駆動回路と、高電圧側回路とに接続されることになる。
【0003】
例えば図15(a)に示す基板181上に、トランス182を搭載し、隙間183と隙間183との間に、各ゲート駆動回路等を配置する。3相インバータの場合、図15(b)に示すように、トランス182は、一次側電源IGを受け、U相、V相、W相のそれぞれの上アーム(H)や下アーム(L)のための二次側出力(UH,UL,VH,VL,WH,WL)や高電圧側回路のための二次側出力(HVCC)を供給したり、出力電圧を制御するフィードバック電圧(FB)を生成したりする。
【0004】
このように電源回路において1つの入力に対して多数の出力を有する多出力型のトランスを利用した構成をとる場合、トランスの部品点数は1つで済むが、各出力ピンの間には、絶縁を確保する為の沿面距離が必要となるため、装置の小型化を図ることができない。例えば、基板181を小さくしていくと、図15(a)にバツ印で示すようにトランス182が隙間183等に接触してしまう。また、例えば図15(c)に示すように、トランス182から各ゲート駆動回路への配線において符号184で示す破線領域のように配線が併走する領域が生じてしまう。
【0005】
そこで、小型化をするための1つの方策として電源回路において複数のトランスを利用して個々のトランスを小型化する構成をとることが考えられる。例えば図15(d)に示す基板181上に、2つの小型のトランス191,192を搭載する方法も考えられる。このようにしても二次側回路の数は変わらないので、必要なピン数は同じである。3相インバータの場合、図15(e)に示すように、トランス191,192は、図15(b)に示すトランス182の機能を分担することができる。また、2つの小型のトランス191,192を搭載する方法では、図15(f)に示すように、配線の併走する領域が少なくなるので、沿面の確保に消費される基板面積を減らすことができる。ただし、トランスを複数にした場合、図15(e)に示すように、一次側電源IGを接続するための駆動回路も複数必要となり、コストアップの要因となる。
【0006】
1つの駆動回路で複数のトランスを駆動する技術は特許文献1に開示されている。
特許文献1には、複数の変圧器を備えたDC−DCコンバータを構成するスイッチング電源装置が記載されている。特許文献1に記載のスイッチング電源装置は、2つの変圧器を直列に接続して構成されている。また、特許文献1には、2つの変圧器を並列に接続して構成された電源装置も記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−215825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、1つの入力に対して多数の出力を有する多出力型のトランスを備えた電源回路のトランスを複数に分けて装置全体を小型化しようとする場合、各トランスには、異なる負荷を接続することが必須である。一方、特許文献1に記載された従来のスイッチング電源装置は、直列接続または並列接続された2つのトランスの出力が同一の負荷に接続されている。仮に、従来のスイッチング電源装置が備える2つのトランスに対して、異なる負荷をそれぞれ接続すると、各トランスの出力電圧に大きなバラツキが生じてしまう。また、トランスなどの構成部品の個体差による出力差も大きくなってしまう。
【0009】
そこで、本発明では、前記した問題を解決し、複数のトランスを有する電源装置において、各トランスの出力電圧差を低減することのできる電源装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本願発明者らは、1つの制御系で複数のトランスを駆動させる電源装置において種々検討を行った。その結果、各トランスの出力電圧の誤差の主要因は不連続電流モードで動作する際に生じ、各トランスの動作モードが連続電流モードとなるようにすれば出力電圧誤差が小さくできることを見出した。
【0011】
そこで、本発明に係る電源回路は、複数のトランスと、各トランスを駆動させるスイッチングPWMパルスを出力するスイッチング制御ICとを備えてトランス毎に複数の出力を得る電源回路であって、トランス毎に設けられて前記トランスの一次側のインダクタに接続されて当該トランスへの入力電圧が印加されると共に、ゲート端子が前記スイッチング制御ICに接続されて前記ゲート端子に供給される前記スイッチングPWMパルスに応じて当該トランスへの前記入力電圧のスイッチングを行う複数のスイッチング用トランジスタを備え、前記スイッチング制御ICは、前記各スイッチング用トランジスタを介して前記各トランスの一次側および二次側のインダクタに流れる電流がスイッチング周期内で電流値0とはならない状態を示す連続電流モードとなるように前記各トランスを駆動させることを特徴とする。
【0012】
かかる構成によれば、電源回路は、スイッチング制御ICによって、各スイッチング用トランジスタを介して各トランスの一次側および二次側のインダクタに流れる電流が連続電流モードとなるように各トランスを駆動させる。したがって、電源回路は、各トランスの出力電圧の誤差を、不連続電流モードで動作する場合に比べて格段に低減させることができる。
【0013】
また、本発明に係る電源回路は、前記スイッチング制御ICが、前記トランスの前記インダクタに流れる電流の状態を不連続電流モードと連続電流モードとの間の状態を示す臨界モードとして駆動させる場合のスイッチング周波数を基準周波数としたときに、前記トランスを駆動させる駆動周期を前記トランスへの入力電圧に応じて変化させるか、または、前記駆動周期を前記入力電圧によらず固定させて、前記基準周波数よりも高いスイッチング周波数で前記スイッチングPWMパルスを前記スイッチング用トランジスタに出力することで、前記トランスの前記インダクタに流れる電流の状態を前記連続電流モードとなるように前記各トランスを駆動させることが好ましい。
【0014】
かかる構成によれば、電源回路では、スイッチング制御ICが、臨界モードとして駆動させる場合のスイッチング周波数よりも高いスイッチング周波数でスイッチングPWMパルスをスイッチング用トランジスタに出力する。このようなスイッチング周波数であれば、臨界モードにおけるスイッチング周波数の公知の関係式から、トランスのインダクタに流れる電流の状態を連続電流モードとすることができる。
【0015】
また、本発明に係る電源回路は、前記スイッチング制御ICが、前記トランスの前記インダクタに流れる電流の状態を不連続電流モードと連続電流モードとの間の状態を示す臨界モードとして駆動させる場合に前記トランスを駆動させる所定の駆動周期に応じた当該トランスへの入力電圧を基準電圧としたときに、前記スイッチングPWMパルスを前記スイッチング用トランジスタに出力して当該スイッチング用トランジスタを介して当該トランスに前記基準電圧よりも低い入力電圧を印加して前記所定の駆動周期で駆動させることで、前記トランスの前記インダクタに流れる電流の状態を前記連続電流モードとなるように前記各トランスを駆動させることが好ましい。
【0016】
かかる構成によれば、電源回路では、スイッチング制御ICが、臨界モードとして駆動させる場合の入力電圧よりも低い入力電圧をトランスに印加する。このような入力電圧であれば、臨界モードにおけるスイッチング周波数の公知の関係式から、トランスのインダクタに流れる電流の状態を連続電流モードとすることができる。
【0017】
また、本発明に係る電源回路は、前記各トランスの二次側の出力端子間にブリーダ抵抗をそれぞれ備え、前記スイッチング制御ICは、前記トランスの前記インダクタに流れる電流の状態を不連続電流モードと連続電流モードとの間の状態を示す臨界モードとして駆動させる場合において前記トランスにより所定の二次側負荷を作動させているときに当該二次側負荷を基準負荷としたときに、前記スイッチングPWMパルスを前記スイッチング用トランジスタに出力して当該スイッチング用トランジスタを介して当該トランスにより前記基準負荷と前記ブリーダ抵抗による負荷とを合わせた負荷全体を作動させることで、前記トランスの前記インダクタに流れる電流の状態を前記連続電流モードとなるように前記各トランスを駆動させることが好ましい。
【0018】
かかる構成によれば、電源回路では、スイッチング制御ICが、臨界モードとして駆動させる場合の二次側負荷よりも高い負荷をトランスにより作動させるために所定の抵抗値のブリーダ抵抗を予め備える。このようなブリーダ抵抗を備えることにより、臨界モードにおけるスイッチング周波数の公知の関係式から、トランスのインダクタに流れる電流の状態を連続電流モードとすることができる。
【0019】
また、本発明に係る電源回路は、前記各トランスにおいて、インダクタンス値が、前記スイッチング制御ICが予め規定された最小負荷および最大入力電圧の条件で当該トランスの前記インダクタに流れる電流の状態を前記連続電流モードとして駆動させる場合の最小スイッチング・オン時間を基準オン時間としたときに、前記最小負荷および最大入力電圧の条件において当該トランスを駆動して前記基準オン時間よりも長いスイッチング・オン時間となるときのインダクタンス値として予め選定されており、かつ、当該トランスにおける一次巻線と二次巻線との巻線比が、予め、前記スイッチング制御ICが前記最小負荷および最大入力電圧の条件で前記臨界動作モードとして当該トランスを駆動させる駆動周期を基準周期としたときに、前記最小負荷および最大入力電圧の条件で当該トランスを前記基準周期よりも長い駆動周期で駆動させるときの巻線比として選定されており、前記スイッチング制御ICが、スイッチングPWMパルスを出力することで、前記スイッチング用トランジスタを介して前記トランスを前記基準周期よりも長い駆動周期で駆動し、かつ、前記トランスを前記基準オン時間よりも長いスイッチング・オン時間にさせることで、前記各トランスの前記インダクタに流れる電流の状態を前記連続電流モードとなるように前記各トランスを駆動させることが好ましい。
【0020】
かかる構成によれば、電源回路は、トランスのインダクタンス値と巻線比が所定の条件を満たすように予め選定されたトランスを備える。このうち、インダクタンス値は、最小負荷および最大入力電圧の条件で臨界モードとして駆動させる場合の最小スイッチング・オン時間よりも長いスイッチング・オン時間となるときのインダクタンス値という条件を満たす。また、巻線比は、最小負荷および最大入力電圧の条件で臨界動作モードとしてトランスを駆動させる駆動周期よりも長い駆動周期で駆動させるときの巻線比という条件を満たす。このようなインダクタンス値および巻線比であれば、臨界モードにおけるスイッチング周波数の公知の関係式から、トランスのインダクタに流れる電流の状態を連続電流モードとすることができる。
【0021】
また、本発明に係る電源回路は、前記複数のトランスが、前記スイッチング制御ICによってフィードバックに利用されるトランスを少なくとも1つ含み、前記スイッチング制御ICが、前記各トランスに流れるインダクタ電流の状態を前記連続電流モードとなるように制御しているときに、前記フィードバックに利用されるトランスのスイッチング区間内における一次側のインダクタ電流の期間と二次側のインダクタ電流の期間との重なり期間の値は、前記フィードバックに利用されていないトランスの前記重なり期間の値よりも小さくなるように前記各トランスを駆動させることが好ましい。
【0022】
かかる構成によれば、電源回路では、フィードバックに利用される側のトランスは、利用されていない側のトランスに比べて、連続電流モード時のスイッチング区間内における重なり期間が小さくなるように各トランスを駆動される。すなわち、フィードバックに利用されない側のトランスは、連続電流モード時のスイッチング区間内における波形のマージンがより深くなるように各トランスを駆動される。これにより、利用されている側のトランスが連続電流モードになっているのにも関わらず、利用されていない側のトランスが不連続電流モードとなってしまうといった事態を未然に防止することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の電源回路によれば、各トランスの出力電圧の誤差を、不連続電流モードで動作する場合に比べて格段に低減させることができる。したがって、本発明の電源回路によれば、各トランスの出力電圧誤差の小さな1入力多出力の電源回路を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態に係る絶縁電源回路を含むモータ駆動システムの回路図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る絶縁電源回路を含むインバータ回路の回路図(その1)である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る絶縁電源回路を含むインバータ回路の回路図(その2)である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る絶縁電源回路が搭載されるプリドライブ基板を模式的に示す構成図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る絶縁電源回路に一部が含まれるゲートドライブ回路を模式的に示す構成図である。
【図6】本発明の実施形態に係る絶縁電源回路の制御による効果を説明するためのグラフである。
【図7】本発明の実施形態に係る絶縁電源回路による連続電流モードの第1制御方法の説明図であって、(a)は臨界動作時の動作周期の一例を示すグラフ、(b)は(a)の場合の制御による駆動周期の一例を示すグラフをそれぞれ示している。
【図8】図7に示す臨界動作時の動作周期の説明図であって、(a)は臨界動作時の動作周期の一例、(b)は臨界モードの波形、(c)は断続モードの波形、(d)は連続電流モードの波形をそれぞれ示している。
【図9】図8に示す波形の説明図であって、(a)は臨界動作時のトランス一次側の波形、(b)は臨界動作時のトランス二次側の波形、(c)は臨界動作モードの波形、(d)は連続電流モード動作時のトランス一次側の波形、(e)は連続電流モード動作時のトランス二次側の波形、(f)は連続電流モードの波形をそれぞれ示している。
【図10】本発明の実施形態に係る絶縁電源回路による連続電流モードの第2制御方法の説明図であって、(a)は臨界動作時の動作周期の一例を示すグラフ、(b)は(a)の場合の制御による駆動周期の一例を示すグラフをそれぞれ示している。
【図11】本発明の実施形態に係る絶縁電源回路による連続電流モードの第3制御方法の説明図であって、(a)は臨界動作時の動作周期の一例を示すグラフ、(b)は(a)の場合の制御による駆動周期の一例を示すグラフをそれぞれ示している。
【図12】本発明の実施形態に係る絶縁電源回路による連続電流モードの第4制御方法の説明図であって、(a)は臨界動作時の動作周期の一例を示すグラフ、(b)は(a)の場合の制御による駆動周期の一例を示すグラフをそれぞれ示している。
【図13】図12に示す駆動周期の説明図であって、(a)〜(c)は巻線比の設定を変更したときの動作周期の変化を示すグラフ、(d)〜(f)はインダクタンス値の設定を変更したときのスイッチング・オン時間の変化を示すグラフをそれぞれ示している。
【図14】本発明の実施形態に係る絶縁電源回路で行うフィードバック制御を説明するための臨界動作時の動作周期の一例を示すグラフである。
【図15】トランスの模式図であって、(a)〜(c)は1つのトランスを備える電源回路、(d)〜(f)は2つのトランスを備える電源回路をそれぞれ示している。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態(実施形態という)について図面を参照して詳細に説明する。
[モータ駆動システムの構成]
図1に示すモータ駆動システム1は、本発明の第1実施形態に係る絶縁電源回路14(図2および図4参照)を含むインバータ回路10を備える。インバータ回路10には、モータECU(Electronic Control Unit)100と、モータ110と、電源部12とが接続されている。インバータ回路10は、低出力電圧(低圧)側に配置されたモータECU100の駆動信号によって、モータ110を回転駆動する。
【0026】
(モータ)
モータ110は、負荷としての電力機器であり、例えば、ハイブリッド車両、燃料電池車両、または、電動車両などの車両に駆動源として搭載される三相ブラシレスモータなどである。このモータ110は、U相、V相、W相の各コイル端子を備え、各相のコイルに流れる三相の交流電流によって回転駆動する。また、モータ駆動システム1には、モータ110のU相、V相、W相の相電流に対応するアナログ信号をモータECU100に出力するために、電流センサ13(=13−1〜13−3)が設けられている。
【0027】
(モータECU)
モータECU100は、モータ110の駆動動作および回生動作を制御する。
モータECU100は、駆動信号であるPWM(Pulse Width Modulation)信号を出力して、インバータ回路10に設けられたパワーモジュール11のIGBT素子11−1〜11−6を駆動する機能を有している。
モータECU100の出力側は、インバータ回路10に設けられたゲートドライブ回路20にフォトカプラPC21−n(nは1〜6の自然数)を介して接続されている(図5(a)参照)。
モータECU100には、インバータ回路10に設けられた高圧側マイコン回路30の高圧側マイコン31の出力側がフォトカプラPC30を介して接続されている(図4参照)。
モータECU100には、インバータ回路10に設けられたゲートドライブ回路20の各ゲートドライブ回路20−n(nは1〜6の自然数)の出力側がフォトカプラPC22−nを介して接続されている(図5(a)参照)。
モータECU100は、例えばECU基板101上に設けられており(図4参照)、外部の1次側の主電源(イグニッション電源VIG)が供給される。
【0028】
(電源部)
電源部12は、例えば600ボルト程度の高出力の直流電圧を供給するための蓄電装置であり、複数のバッテリブロックが直列接続されている。ここで、バッテリブロックは、複数のリチウムイオン電池やニッケル水素電池などがモジュール化されて構成されている。しかし、これに限られず、電源部12は、キャパシタで構成してもよい。この電源部12の正極側端子PN+と負極側端子PN−との間には、平滑コンデンサC12が接続され、電源部12の出力電圧を平滑化している。
【0029】
(電流センサ)
電流センサ13(=13−1〜13−3)は、モータ110の相電流を検出するセンサであり、それぞれU相、V相、W相の相電流に対応するアナログ信号をモータECU100に出力する。
電流センサ13−1は、後記するパワーモジュール11のU相のアームとモータ110のU相との間に直列接続され、さらに、図示しないフォトカプラを介してモータECU100に接続されている。
同様に、電流センサ13−2は、後記するパワーモジュール11のV相のアームと、モータ110のV相との間に直列接続され、さらに、図示しないフォトカプラを介してモータECU100に接続されている。
電流センサ13−3は、後記するパワーモジュール11のW相のアームと、モータ110のW相との間に直列接続され、さらに、図示しないフォトカプラを介してモータECU100に接続されている。
【0030】
(インバータ回路)
インバータ回路10は、電源部12からの高出力電圧(高圧)をモータ110に供給するパワーモジュール11と、パワーモジュール11を作動させるゲートドライブ回路20と、高圧側マイコン回路30と、前記平滑コンデンサC12と、を有している。
【0031】
<パワーモジュール>
パワーモジュール11は、電源部12の正極側端子PN+と負極側端子PN−との間に接続された三相インバータ回路である。
パワーモジュール11は、バッテリなどの電源部12からの直流電力を、三相ブラシレスであるモータ110を駆動するための交流電力に変換する機能と、モータ110より回生される交流電力を直流電力に変換する機能とを有している。
【0032】
パワーモジュール11は、スイッチング素子であるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)素子11−1〜11−6と、フライホイールダイオードD11−1〜D11−6とを具備している。
パワーモジュール11において、IGBT素子11−1およびフライホイールダイオードD11−1は、U相の上アームを構成している。また、IGBT素子11−3およびフライホイールダイオードD11−3は、V相の上アームを構成し、IGBT素子11−5およびフライホイールダイオードD11−5は、W相の上アームを構成している。
【0033】
IGBT素子11−2及びフライホイールダイオードD11−2は、U相の下アームを構成している。また、IGBT素子11−4及びフライホイールダイオードD11−4は、V相の下アームを構成し、IGBT素子11−6及びフライホイールダイオードD11−6は、W相の下アームを構成している。
【0034】
IGBT素子11−1,11−3,11−5のコレクタ端子は、電源部12の正極側端子PN+に接続されている。
IGBT素子11−2,11−4,11−6のエミッタ端子は、電源部12の負極側端子PN−に接続されている。
各IGBT素子11−1〜11−6のコレクタ端子−エミッタ端子間は、コレクタ端子からエミッタ端子への方向と逆方向にフライホイールダイオードD11−1〜D11−6が並列接続されている。
【0035】
IGBT素子11−1〜11−6をパルス幅変調によりON/OFFするPWM信号(ゲート信号)がモータECU100よりIGBT素子11−1〜11−6のゲート端子に入力される。このPWM信号は、外部であるモータECU100から入力される駆動信号である。
IGBT素子11−1のエミッタ端子と、IGBT素子11−2のコレクタ端子とは、モータ110のU相のコイル端子に接続されている。
IGBT素子11−3のエミッタ端子と、IGBT素子11−4のコレクタ端子とは、モータ110のV相のコイル端子に接続されている。
IGBT素子11−5のエミッタ端子と、IGBT素子11−6のコレクタ端子とは、モータ110のW相のコイル端子に接続されている。
【0036】
[絶縁電源回路]
次に、絶縁電源回路の構成について図2を参照(適宜図1および図3参照)して説明する。図2および図3は、本発明の第1実施形態に係る絶縁電源回路を含むインバータ回路の回路図である。
図2に示す絶縁電源回路14は、一次側と二次側が絶縁され、一次側から二次側に電力を供給する電源回路である。絶縁電源回路14は、複数のトランス4(4a,4b)と、各トランス4(4a,4b)を駆動させるスイッチングPWMパルスを出力する制御IC42とを備えてトランス毎に複数の出力を得る。絶縁電源回路14は、外部の1次側の主電源(イグニッション電源VIG)からなる低出力電圧(低圧)系統と、2次側の電源部12等の高圧系統とを絶縁する機能を有したスイッチング電源である。この絶縁電源回路14は、イグニッション電源VIGを2次側直流電圧に変換し、変換した電圧を電源電圧として、ゲートドライブ回路20と、高圧側を制御する高圧側マイコン回路30と、図示しないロジック回路や温度センサ回路や電圧検出回路などとに供給している。ここで、主電源であるイグニッション電源VIGは、例えばイグニッションキーをオンしたときに図示しないバッテリから供給される電源である。
【0037】
絶縁電源回路14は、図2に示すように、2つのトランス4a,4bを備えている。ここで、トランスの個数は、複数であれば特に限定されない。なお、トランスを特に区別しない場合には単にトランス4と表記する。
【0038】
トランス4aは、絶縁を挟んで1次側に、一次巻線(一次側のインダクタ)および三次巻線(フィードバック巻線)を備え、絶縁を挟んで2次側に二次巻線(二次側のインダクタ)を備える。なお、ここでは、算用数字により絶縁の両側を区別し、漢数字により巻線を区別することとした。
トランス4aの一次巻線の一端には、イグニッション電源VIGの電源供給ラインが接続されて、他端には電界効果トランジスタTR40のドレイン端子が接続されている。
トランス4aの二次巻線は、ゲートドライブ回路20−1、20−3および20−5のそれぞれの一部を構成している(図2、4参照)。すなわち、トランス4aは、ゲートドライブ回路20−1、20−3および20−5に接続されている3個の二次巻線を備える。トランス4aの三次巻線(フィードバック巻線)は、トランス4aの絶縁を挟んで1次側において負荷Z40に接続されている。この三次巻線は、トランス4aの絶縁を挟んで1次側のフィードバック電圧Vfbを生成する。
【0039】
トランス4bは、絶縁を挟んで1次側に一次巻線(一次側のインダクタ)を備え、絶縁を挟んで2次側に二次巻線(二次側のインダクタ)を備える。なお、ここでは、算用数字により絶縁の両側を区別し、漢数字により巻線を区別することとした。
トランス4bの一次巻線の一端には、イグニッション電源VIGの電源供給ラインが接続されて、他端には電界効果トランジスタTR41のドレイン端子が接続されている。
トランス4bの二次巻線は、ゲートドライブ回路20−2、20−4および20−6のそれぞれの一部と、高圧側マイコン回路30の一部とを構成している(図2、4参照)。すなわち、トランス4bは、ゲート駆動回路21−2、21−4および21−6に接続されている3個の二次巻線と、高圧側マイコン31に接続されている1個の二次巻線とを備える。
【0040】
絶縁電源回路14は、トランス4aの絶縁の一次側に、スイッチング素子である電界効果トランジスタTR40と、制御IC42と、整流ダイオードD40と、平滑コンデンサC40と、負荷Z40とを備え、トランス4aの絶縁を挟んで2次側に、ゲートドライブ回路20−1、20−3および20−5の一部を備えている。
絶縁電源回路14は、トランス4bの絶縁の一次側に、スイッチング素子である電界効果トランジスタTR41を備え、トランス4bの絶縁を挟んで2次側に、ゲートドライブ回路20−2、20−4および20−6の一部と、高圧側マイコン回路30の一部とを備えている。すなわち、絶縁電源回路14は、絶縁を挟んで1次側には、トランス毎に、スイッチング素子である電界効果トランジスタTR40,TR41を備えている。
【0041】
(絶縁の1次側構成)
スイッチング用トランジスタである電界効果トランジスタTR40のゲート端子は、制御IC42の出力および電界効果トランジスタTR41のゲート端子に接続されている。電界効果トランジスタTR40のドレイン端子は、トランス4aの一次巻線を介してイグニッション電源VIGに接続されている。電界効果トランジスタTR40のソース端子は、グランドに接続されている。
【0042】
スイッチング用トランジスタである電界効果トランジスタTR41のゲート端子は、制御IC42の出力および電界効果トランジスタTR40のゲート端子に接続されている。電界効果トランジスタTR41のドレイン端子は、トランス4bの一次巻線を介してイグニッション電源VIGに接続されている。電界効果トランジスタTR41のソース端子は、グランドに接続されている。
【0043】
スイッチング制御回路である制御IC42は、電界効果トランジスタTR40のゲート端子に制御パルスとしてスイッチングPWMパルスを出力することで、電界効果トランジスタTR40によって生成されたスイッチング信号を、トランス4aの一次巻線に入力して、トランス4aを駆動する。これにより、電界効果トランジスタTR40は、トランス4aへの入力電圧として、一次側の主電源であるイグニッション電源VIG(直流電源)が印加される。電界効果トランジスタTR40は、ゲート端子に供給されるスイッチングPWMパルスに応じてトランス4aへの入力電圧をスイッチングする。
【0044】
同様に、制御IC42は、電界効果トランジスタTR41のゲート端子に制御パルスとしてスイッチングPWMパルスを出力することで、電界効果トランジスタTR41によって生成されたスイッチング信号を、トランス4bの一次巻線に入力して、トランス4bを駆動する。これにより、電界効果トランジスタTR41は、トランス4bへの入力電圧として、一次側の主電源であるイグニッション電源VIG(直流電源)が印加される。電界効果トランジスタTR41は、ゲート端子に供給されるスイッチングPWMパルスに応じてトランス4bへの入力電圧をスイッチングする。
【0045】
制御IC42は、電界効果トランジスタTR40を介してトランス4aの一次巻線および二次巻線に流れる電流が連続電流モードとなるようにトランス4aを駆動させる。
また、制御IC42は、電界効果トランジスタTR41を介してトランス4bの一次巻線および二次巻線に流れる電流が連続電流モードとなるようにトランス4bを駆動させる。ここで、連続電流モードは、トランスの一次巻線および二次巻線に流れる電流がスイッチング周期内で電流値0とはならない状態を示す。なお、連続電流モードとなるようにトランス4を駆動させる制御方法については後記する。
【0046】
トランス4aの三次巻線は、順方向に接続された整流ダイオードD40を介して、平滑コンデンサC40と負荷Z40に並列に接続されている。この整流ダイオードD40のカソード端子は、さらに、制御IC42を介して電界効果トランジスタTR40のゲート端子に接続されている。
【0047】
(絶縁の2次側構成の概略)
絶縁電源回路14は、図2に示すように、2次側に、ゲートドライブ回路20の一部と、高圧側マイコン回路30の一部とを備えている。
ゲートドライブ回路20は、図2および図3に示すように、U相上アームのIGBT素子11−1を駆動するゲートドライブ回路20−1と、U相下アームのIGBT素子11−2を駆動するゲートドライブ回路20−2と、V相上アームのIGBT素子11−3を駆動するゲートドライブ回路20−3と、V相下アームのIGBT素子11−4を駆動するゲートドライブ回路20−4と、W相上アームのIGBT素子11−5を駆動するゲートドライブ回路20−5と、W相下アームのIGBT素子11−6を駆動するゲートドライブ回路20−6とを具備している。
【0048】
各ゲートドライブ回路20−n(nは1〜6の自然数)と、絶縁電源回路14と、を同じ基板(プリドライブ基板2)に搭載した場合の一例を図4に示す。各ゲートドライブ回路20−nの詳細については、後記する。図4では、各ゲートドライブ回路20−nにおいて主要な構成として、ゲート駆動回路21−1〜6を図示した。各ゲートドライブ回路20−nの一部の構成は絶縁電源回路14に含まれている。図4では、高圧側マイコン回路30において主要な構成として、高圧側マイコン31を図示した。
【0049】
[高圧側マイコン回路の構成]
高圧側マイコン回路30は、図2および図3に示すように、整流ダイオードD30と、平滑コンデンサC30と、高圧側マイコン31と、フォトカプラPC30(図4参照)とを有し、トランス4bの二次巻線に接続されている。ここで、整流ダイオードD30と、平滑コンデンサC30とは、絶縁電源回路14の二次側の構成要素である。整流素子である整流ダイオードD30は、トランス4bの二次巻線と、高圧側マイコン31との間に接続され、高圧側マイコン31に向けて電流を流す。
【0050】
高圧側マイコン回路30のトランス4bの二次巻線は、順接続の整流ダイオードD30を介して、平滑コンデンサC30に接続され、絶縁電源回路14の二次側出力を構成している。この絶縁電源回路14の二次側出力は、高圧側マイコン31に接続されている。
【0051】
高圧側マイコン31には、図示しない温度センサが接続され、パワーモジュール11のIGBT素子11−1〜11−6(図3参照)の温度を測定可能に構成されている。
高圧側マイコン31には、ゲートドライブ回路20−4の整流ダイオードD20−4のカソード端子が接続され、ゲートドライブ回路20−4の電圧Vx−4(図5(a)参照)を測定可能に構成されている。
さらに、高圧側マイコン31には、他のゲートドライブ回路20−1〜20−3,20−5,20−6の整流ダイオードD20−1〜D20−3,D20−5,D20−6のカソード端子が接続され(不図示)、ゲートドライブ回路20−1〜20−3,20−5,20−6の電圧Vx−1〜〜Vx−3,Vx−5,Vx−6(図5(a)参照)も測定可能に構成されている。
【0052】
高圧側マイコン31の出力端子は、フォトカプラPC30(図4参照)の入力端子に接続されている。フォトカプラPC30の出力端子は、モータECU100に接続され、ゲートドライブ回路20に発生している電圧(電圧Vx−n(図5(a)参照))等の2次側状態を表すステータス信号をモータECU100に送信する。このステータス信号を送信する通信のことをここではIPUA通信(Intelligent Power Unitからの信号Aによる通信)と呼ぶ。IPUA通信には、例えば、IGBT素子11−n(図3参照)近傍にそれぞれ設けられた図示しない温度センサの出力、電源部12の電圧など、二次側回路に係る様々な情報を含む。
【0053】
[各ゲートドライブ回路の構成]
図5(a)に示すように、各ゲートドライブ回路20−n(nは1〜6の自然数)は、整流ダイオードD20−nと、平滑コンデンサC20−nと、ゲート駆動回路21−nとを有し、それぞれトランス4の二次巻線に接続されている。ここで、整流ダイオードD20−nと、平滑コンデンサC20−nとは、絶縁電源回路14(図2参照)の二次側に含まれている。
【0054】
各ゲートドライブ回路20−nのトランス4の二次巻線は、順方向の整流ダイオードD20−nを介して、平滑コンデンサC20−nに接続され、絶縁電源回路14の二次側出力を構成している。平滑コンデンサC20−nの両端子間に発生する電圧は、電圧Vx−nである。この絶縁電源回路14の二次側出力は、ゲート駆動回路21−nに接続されている。
【0055】
ゲート駆動回路21−nは、モータECU100からのPWM信号によって駆動される駆動回路である。ゲート駆動回路21−nの出力側は、スイッチング素子であるIGBT素子11−n(図1参照)のゲート端子に接続されている。モータECU100のPWM信号端子は、フォトカプラPC21−nを介して、ゲート駆動回路21−nに接続され、ゲート駆動回路21−nにPWM信号を出力するように構成されている。
【0056】
ゲート駆動回路21−nのフェール信号端子は、フォトカプラPC22−nを介してモータECU100に接続されて、異常発生時に、モータECU100にフェール信号を出力するように構成されている。フェール信号は、シリアル通信で情報が送信される。モータECU100は、フェール信号に基づいた二次側回路の情報を取得し、過熱や短絡(過電流)や過電圧などを検知したとき、種々の制御素子の破壊を防止するためにモータ110を駆動停止する保護機能を有している。
【0057】
ゲート駆動回路21−nの出力側は、IGBT素子11−nのゲート端子と第1のエミッタ端子とに接続され、モータ110のU相、V相、W相それぞれの駆動信号を発生する。IGBT素子11−nの第1のエミッタ端子は、抵抗R11−nを介してグランドに接続され、第2のエミッタ端子は、直接にグランドに接続されている。IGBT素子11−nのコレクタ端子と第2のエミッタ端子との間には、フライホイールダイオードD11−nが逆方向に接続されている。なお、図5(b)に示すゲートドライブ回路20−nについては後記する。
【0058】
[連続電流モードの制御方法]
以下、本実施形態の絶縁電源回路14における連続電流モードの効果および制御方法の原理について説明した後、制御方法のバリエーション(制御方法1〜制御方法5)について説明する。
【0059】
(連続電流モードの効果)
ここでは、本実施形態の絶縁電源回路14においてトランス4のインダクタに流れる電流を連続電流モードとする制御を行う効果を示す実験について図6を参照して説明する。図6は、1つの制御系で2つのトランスを駆動させる電源装置において出力電圧誤差を調べる実験を行った結果を示している。なお、図6のグラフの横軸はトランスへの入力電圧IGを示し、縦軸はトランスからの出力電圧Vxを示す。
【0060】
図6に示すライン111は、規定のトランスの特性を示す。この規定のトランスは、入力電圧IGが6〜24Vの範囲では、規定のスイッチング・オン時間dutyで駆動したときに出力電圧Vxが一定値となるように設計されたものであり、所定の一次側インダクタンス値Lおよび巻線比を有している。ライン111の特性が実現するときの条件を規定値の条件と呼ぶ。
【0061】
ライン112は、規定値の条件と比較して、前記インダクタンス値Lを15%減少させたトランスを、スイッチング・オン時間dutyを0.5%増加させて不連続電流モードで駆動したときの実験結果の特性を示す。
ライン113は、規定値の条件と比較して、前記インダクタンス値Lを15%増加させたトランスを、スイッチング・オン時間dutyを0.5%減少させて不連続電流モードで駆動したときの実験結果の特性を示す。
ライン114は、規定値の条件と比較して、前記トランスを、スイッチング・オン時間dutyを0.5%増加させて連続電流モードで駆動したときの実験結果の特性を示す。
ライン115は、規定値の条件と比較して、前記トランスを、スイッチング・オン時間dutyを0.5%減少させて連続電流モードで駆動したときの実験結果の特性を示す。
【0062】
本実験において、入力電圧IGを6〜24Vの範囲で1Vずつ増加させていくと、ライン112は出力電圧Vxが線形に増加していることを示し、ライン113は出力電圧Vxが線形に減少することを示す。つまり、不連続電流モードで駆動した場合、ライン112の特性を有するトランスの出力電圧と、ライン113の特性を有するトランスの出力電圧には、それぞれ大きなバラツキが生じてしまう。
【0063】
一方、ライン114,115は、入力電圧IGを増加させても、出力電圧Vxがほぼ一定の値であることを示している。つまり、連続電流モードで駆動した場合、ライン114の特性を有するトランスの出力電圧と、ライン115の特性を有するトランスの出力電圧には、それぞれバラツキがほとんど生じない。よって、1つの制御系で複数のトランスを駆動させる電源装置において、各トランスの出力電圧の誤差の主要因は不連続電流モードで動作する際に生じ、各トランスの動作モードが連続電流モードとなるようにすれば出力電圧誤差が小さくできることが分かる。
【0064】
(制御方法の原理)
本実施形態の絶縁電源回路14において連続電流モードとする制御方法の条件は、以下の式(1)に示す臨界動作時のスイッチング周波数の公式に基づいて予め定められている。式(1)は、連続電流モードと、不連続電流モード(以下、断続モードともいう)との切り替わる臨界周波数を示す。
【0065】
【数1】
【0066】
式(1)において、fは臨界周波数[Hz]、Tは臨界周波数のときのスイッチング周期[s]、Vinは一次側入力電圧[V]、Voは二次側出力電圧[V]、Lpは一次側インダクタンス[H]、Pinは臨界時に一次巻線(インダクタ)に流れる電流ΔIL1が流れたときの電力[W]、npは一次巻線の巻数、nsは二次巻線の巻数(トランス巻線比ns/np)をそれぞれ示す。
【0067】
ここで、臨界動作時の動作周期の一例を図7(a)のグラフに実線で示す。臨界動作とは、スイッチング電源が例えば断続モードから連続電流モードに切り替わる臨界の状態で動作することを示す。このときの状態を臨界モードと呼ぶ。なお、図7(a)のグラフの横軸は、トランスを駆動させるための駆動電源電圧(トランスへの入力電圧)を示し、縦軸は、トランスの動作周期を示す。
【0068】
以下では、トランスが駆動する負荷が高い場合(駆動負荷=Hi)と、トランスが駆動する負荷が低い場合(駆動負荷=Lo)とを1つのグラフに図示するが、説明の都合上、一方のトランスを示す実線だけがある場合を想定して説明する。なお、駆動負荷=Hiのトランスと、駆動負荷=Loのトランスとを同時に考えても差し支えない。
【0069】
例えば、駆動負荷=Hiの一定値であれば、図7(a)においてライン121で示すように、駆動電源電圧が10Vのときには、臨界動作時の動作周期は約6μ秒、駆動電源電圧が20Vのときには、臨界動作時の動作周期は約4μ秒となることが読み取れる。
また、駆動負荷=Loの一定値であれば、図7(a)においてライン122で示すように、駆動電源電圧が10Vのときには、臨界動作時の動作周期は約1.5μ秒、駆動電源電圧が20Vのときには、臨界動作時の動作周期は約1μ秒となることが読み取れる。
【0070】
なお、図7(a)に示す臨界動作時の動作周期のグラフは、連続電流モードの制御方法の説明のために導入したものであって、連続電流モードそのものを直接表すものではない。臨界動作時の動作周期のグラフと、連続電流モードの波形との関係を図8に示す。
【0071】
図8(a)は臨界動作時の動作周期の一例を示している。ここでは、動作周期を例えば4μ秒に固定した場合を想定する。この動作周期で臨界動作を行い臨界モードになったと仮定すると、図8(b)に示す波形が得られる。図8(b)に示す符号130は、スイッチング区間を示し、この場合には4μ秒の時間幅を示す。
【0072】
図8(b)にて符号131で示す波形から見ると、図8(a)にて破線で示す4μ秒の動作周期の直線にのっている場合には、臨界モードで動作することになる(なお、動作周期を4μ秒と仮定したので図8(a)の実線を無視する)。
図8(b)の波形131は、臨界モードで動作するトランスのインダクタに流れる電流ILのタイミングチャートを示す典型的な波形である。波形131は、図9(a)に示すようなトランスの一次側インダクタに流れる電流IL1のタイミングチャートを示す波形134と、図9(b)に示すようなトランスの二次側インダクタに流れる電流IL2のタイミングチャートを示す波形135とを時刻を合わせて合成して作成した、図9(c)に示す波形136と同様な波形である。
図8(b)に示す波形131は、トランスの一次側および二次側のインダクタに流れる電流がスイッチング周期内で瞬間的に電流値が0になる。
【0073】
また、図8(b)において、例えば4μ秒の動作周期に固定した条件で、この波形の周期(電流値0から電流値0になるまでの期間)を短くすると、図8(c)に示すように断続モードで動作することになる。
図8(c)にて符号132で示す波形は、断続モードで動作するトランスのインダクタに流れる電流ILのタイミングチャートを示す典型的な波形である。詳細な説明は省略するが、波形132も一次側インダクタに流れる電流のタイミングチャートを示す波形と、二次側インダクタに流れる電流のタイミングチャートを示す波形とを時刻を合わせて合成して作成した波形である。波形132は、トランスの一次側および二次側のインダクタに流れる電流がスイッチング周期内で電流値0となっている期間が長くなる。
【0074】
また、図8(b)のグラフにおいて、例えば4μ秒の動作周期に固定した条件で、この波形の周期(電流値0から電流値0になるまでの期間)を長くすると、隣の区間の周期と重なってしまい、その結果、図8(d)に示すように連続電流モードで動作することになる。例えば、図9(f)において、実線の三角波の動作周期は、時刻t1〜t3までの期間と等しいが、インダクタに流れる電流ILが電流値0となる周期(スイッチング周期)は、時刻t1〜t3までの期間よりも長くなる。
【0075】
図8(d)にて符号133で示す波形は、連続電流モードで動作するトランスのインダクタに流れる電流ILのタイミングチャートを示す典型的な波形である。波形133は、図9(d)に示すようなトランスの一次側インダクタに流れる電流IL1のタイミングチャートを示す波形137と、図9(e)に示すようなトランスの二次側インダクタに流れる電流IL2のタイミングチャートを示す波形138とを時刻を合わせて合成して作成した、図9(f)に示す波形139と同様な波形である。
【0076】
図8(d)に示す波形133は、トランスの一次側および二次側のインダクタに流れる電流がスイッチング周期内で電流値0となることはない。図8(d)にΔで示すように波形の正方向の傾きは、一次側インダクタ値によって決まる。
また、図9(f)に示すように、トランスのスイッチング区間内における一次側のインダクタ電流の期間と二次側のインダクタ電流の期間との重なり期間の値は、駆動負荷が大きいほど大きくなる傾向がある。なお、図8(c)の波形132と図8(d)の波形133は、動作周期を固定(ここでは4μ秒に固定)したときの波形である。
【0077】
(制御方法1)
図7に戻って、連続電流モードとする制御の条件について説明を続ける。前記した式(1)によれば、図7(a)の例では、駆動負荷=Hiの一定値であれば、ライン121の位置は、臨界動作モードで動作した時のスイッチング周期を表している。よって、この周期よりも短い周期で駆動すれば、連続電流モードとなる。例えば、図8(b)において、波形131の形状を維持して符号130で示す動作周期を表す破線を左右から中心に移動させて動作周期自体を短くし、その上で同様に短くした4周期分の波形をつなぎ合わせると、傾きは異なるが図8(d)の波形133と同様に、電流値が0とはならない波形となる。
【0078】
また、図7(a)において、駆動負荷=Loの一定値であれば、ライン122の位置は、臨界動作モードで動作した時のスイッチング周期を表している。よって、この周期よりも短い周期で駆動すれば、同様に連続電流モードとなる。
【0079】
そこで、本実施形態において制御方法1では、制御IC42は、臨界モードのスイッチング周波数を基準周波数としたときに、トランス4を駆動させる駆動周期を、例えばトランス4への入力電圧に応じて変化させる場合、基準周波数よりも高いスイッチング周波数でスイッチングPWMパルスを電界効果トランジスタTR40,TR41に出力することで、各トランス4のインダクタに流れる電流の状態を連続電流モードとなるように各トランス4を駆動させることとした。図7(b)の例では、駆動負荷=Hiであれば、ライン121の位置が基準周波数となる。そのため、トランス4への入力電圧に応じて変化させる場合、つまり、ライン121に沿ってスイッチング周波数を変化させる場合、例えば、ライン123のように、駆動電源電圧の増加に合わせて、スイッチング周期が減少するように、スイッチング周波数を増加させる。
【0080】
また、本実施形態において制御方法1では、制御IC42は、臨界モードのスイッチング周波数を基準周波数としたときに、トランス4を駆動させる駆動周期を、例えばトランス4への入力電圧によらず固定させる場合、基準周波数よりも高いスイッチング周波数でスイッチングPWMパルスを電界効果トランジスタTR40,TR41に出力することで、各トランス4のインダクタに流れる電流の状態を連続電流モードとなるように各トランス4を駆動させてもよい。図7(b)の例では、駆動負荷=Loであれば、ライン122の位置が基準周波数となる。そのため、トランス4への入力電圧によらずスイッチング周波数を固定させる場合、例えば、ライン124のように、駆動電源電圧の増加にかかわらず、ライン122の最小値よりも小さな一定値のスイッチング周期とする。
【0081】
(制御方法2)
前記した式(1)によれば、負荷(電力Pin)が変化したり、駆動電源電圧(一次側入力電圧Vin)が変化したりすると、臨界点の周期(スイッチング周期T)が変化することが分かる。ただし、臨界動作モード(主に自励式=RCC(Ringing Choke Converter)方式)では、周波数が変動するため、他励式のように周波数を固定することとした。
【0082】
本実施形態において制御方法2では、制御IC42は、臨界モードでトランス4を駆動させる所定の駆動周期に応じた当該トランス4への入力電圧を基準電圧としたときに、スイッチングPWMパルスを電界効果トランジスタTR40,TR41に出力して電界効果トランジスタTR40,TR41を介して各トランス4に前記基準電圧よりも低い入力電圧を印加して前記所定の駆動周期で駆動させることで、各トランス4のインダクタに流れる電流の状態を連続電流モードとなるように各トランス4を駆動させることとした。具体的な制御方法について図10を参照して説明する。
【0083】
図10(a)の例では、駆動負荷=Hiのときにライン141で動作周期が表され、駆動負荷=Loのときにライン142で動作周期が表されている。駆動負荷=Hiのときにトランス4を駆動させるスイッチング周波数が例えば200KHz(駆動周期=5μ秒)であると仮定する。スイッチング周波数を固定すると、周波数の設定によっては、図10(a)に示すように、臨界モードを示すライン141と、設定周波数(1/設定動作周期)を示すライン143とが交差する領域が発生する。他励式においては、この交点が、連続電流モードと断続モードとのモード切り替わり点となる。図10(a)に示す例では、ライン143上において、駆動電源電圧(入力電圧)を示す縦ライン144よりも低電圧側では連続電流モードとなり、縦ライン144よりも高電圧側では断続モードとなる。
【0084】
同様に、図10(a)の例では、駆動負荷=Loのときにトランス4を駆動させるスイッチング周波数が例えば500KHz(駆動周期=2μ秒)であると仮定したとき、ライン145上において、ライン142とライン145とが交差する駆動電源電圧(入力電圧)を示す縦ライン146よりも低電圧側では連続電流モードとなり、縦ライン146よりも高電圧側では、断続モードとなる。
【0085】
そのため、図10(a)の例では、駆動負荷=Hiのときにトランス4を駆動させるスイッチング周波数が例えば200KHz(駆動周期=5μ秒)を前提としたときに、ライン141とライン143とが交差する駆動電源電圧(入力電圧)を示す縦ライン144で示される入力電圧を基準電圧とした場合を想定する。この場合、この基準電圧よりも低い入力電圧の範囲として、図10(b)において符号147で示すハッチングの領域の条件となるように、所定の入力電圧を印加し、かつ、駆動周期=5μ秒以下の駆動周期で駆動させることで、連続電流モードとなる。
【0086】
(制御方法3)
前記した式(1)によれば、負荷(電力Pin)が変化すると、臨界点の周期(スイッチング周期T)が変化することが分かる。ただし、臨界動作モード(主に自励式=RCC方式)では、周波数が変動するため、他励式のように周波数を固定することとした。
本実施形態において制御方法3では、絶縁電源回路14において、各トランス4の二次側の出力端子間にブリーダ抵抗をそれぞれ備えることとした。具体的には、絶縁電源回路14の2次側構成であるゲートドライブ回路20−nにおいて、図5(b)に示すように、トランス4の二次巻線の出力端子間にブリーダ抵抗R20−nを接続した。図5(b)に示す例では、ブリーダ抵抗R20−nの両端は、平滑コンデンサC20−nの両端に接続されている。
【0087】
また、制御方法3では、制御IC42は、トランス4を臨界モードとして駆動させて所定の二次側負荷を作動させているときに当該二次側負荷を基準負荷としたときに、スイッチングPWMパルスを電界効果トランジスタTR40,TR41に出力して当該電界効果トランジスタTR40,TR41を介して当該トランス4により前記基準負荷とブリーダ抵抗R20−nによる負荷とを合わせた負荷全体を作動させることで、各トランス4のインダクタに流れる電流の状態を連続電流モードとなるように各トランス4を駆動させることとした。具体的な制御方法について図11を参照して説明する。
【0088】
図11(a)の例では、駆動負荷=Hiのときにライン151で動作周期が表され、駆動負荷=Loのときにライン152で動作周期が表されている。
この制御方法3も制御方法2と同様にして、駆動負荷=Hiのときにトランス4を駆動させるスイッチング周波数が例えば200KHz(駆動周期=5μ秒)であると仮定する。スイッチング周波数を固定すると、周波数の設定によっては、図11(a)に示すように、臨界モードを示すライン151と、設定周波数(1/設定動作周期)を示すライン153とが交差する領域が発生する。他励式においては、この交点が、連続電流モードと断続モードとのモード切り替わり点となる。図11(a)に示す例では、ライン153上において、駆動電源電圧(入力電圧)を示す縦ライン154よりも低電圧側では連続電流モードとなり、縦ライン154よりも高電圧側では断続モードとなる。
【0089】
また、図11(a)の例では、駆動負荷=Loのときにトランス4を駆動させるスイッチング周波数が例えば200KHz(駆動周期=5μ秒)であると仮定したときには、ライン152とライン153とは交差することはない。ただし、この図11(a)の例(Hi,Loあるいはその中間)によれば、負荷が大きくなると連続電流モードとなる領域が増えることが分かる。そこで、駆動負荷=Loのときにトランス4を駆動させたい設定スイッチング周波数(例えば200KHz)であっても連続電流モードとなるように二次側にブリーダ抵抗を接続してグラフ上でライン152を嵩上げすることで、予め規定されている最低負荷状態(駆動負荷=Lo)であっても、臨界周期が駆動周期以上となるようにした。
【0090】
例えばトランス4b(図2参照)が駆動負荷=Loの二次側負荷としてゲート駆動回路21−2を駆動する場合を想定する。駆動負荷=Loを基準負荷としたときに、電界効果トランジスタTR41を介してトランス4bにより、ゲート駆動回路21−2(基準負荷)とブリーダ抵抗R20−2による負荷とを合わせた負荷全体を作動させることで、トランス4bのインダクタ(ここではゲートドライブ回路20−2に対応するインダクタ)に流れる電流の状態を連続電流モードとすることができる。
【0091】
そのため、図11(a)の例では、駆動負荷=Loのときにトランス4bを駆動させるスイッチング周波数が例えば200KHz(駆動周期=5μ秒)であることを前提としたときに、ライン152とライン153とが交差するように、ブリーダ抵抗R20−2の抵抗値を選定し、図11(b)において符号154で示す白抜き矢印のようになるように、ライン152全体を押し上げる。これにより、ライン152とライン153とが交差したときに、その交差点から低電圧側の駆動電源電圧を入力することでトランス4bが連続電流モードとなる。ここで、ゲートドライブ回路20−2以外の二次側回路を基準負荷としても同様に制御することができる。さらに、トランス4a(図2参照)に対しても同様に制御することができる。
【0092】
(制御方法4)
前記した式(1)によれば、インダクタンスを大きくすることによりスイッチング周期が長くなることが分かる。つまり、インダクタンスを大きくすることにより、グラフ上で臨界点を上げることが可能となる。この場合、具体的には、トランスで対応する場合は、インダクタンス値と巻線比が変更できるので、本実施形態において制御方法4では、各トランス4において、次の(a)、(b)を設定することとした。
【0093】
(a)各トランス4は、インダクタンス値が、制御IC42が予め規定された最小負荷および最大入力電圧の条件でトランス4のインダクタに流れる電流の状態を連続電流モードとして駆動させる場合の最小スイッチング・オン時間を基準オン時間としたときに、最小負荷および最大入力電圧の条件においてトランス4を駆動して基準オン時間よりも長いスイッチング・オン時間となるときのインダクタンス値として予め選定されている。
【0094】
(b)各トランス4は、臨界点の周期が駆動周期よりも長くなるように巻線比が設定されている。つまり、各トランス4は、トランス4における一次巻線と二次巻線との巻線比が、予め、制御IC42が最小負荷および最大入力電圧の条件で臨界動作モードとしてトランス4を駆動させる駆動周期を基準周期としたときに、最小負荷および最大入力電圧の条件でトランス4を基準周期よりも長い駆動周期で駆動させるときの巻線比として選定されている。
【0095】
また、制御方法4では、制御IC42は、スイッチングPWMパルスを出力することで、電界効果トランジスタTR40,TR41を介してトランス4を基準周期よりも長い駆動周期で駆動し、かつ、トランス4を基準オン時間よりも長いスイッチング・オン時間にさせることで、各トランス4のインダクタに流れる電流の状態を連続電流モードとなるように各トランス4を駆動させる。具体的な制御方法について図12および図13を参照して説明する。
【0096】
図12(a)の例では、駆動負荷=Hiのときにライン161aで動作周期が表され、駆動負荷=Loのときにライン162aで動作周期が表されている。また、スイッチング周波数が例えば200KHz(駆動周期=5μ秒)であると仮定する。この、設定周波数(1/設定動作周期)を示すライン163aは、ライン161aと交差するが、ライン162aとは交差していない。
【0097】
ここで、駆動負荷=Hiを駆動するトランス4のインダクタンス値を変更して大きくした場合、図12(a)のライン161aは、グラフ上で全体に嵩上げされて、図12(b)のライン161bの位置に移動する。図12(b)のライン163bは、設定周波数(1/設定動作周期)を示す。図12(b)において、ライン161bは、ライン163bと交差していないが、ライン161bの最小値がライン163bの値より大きいので、インダクタンス値を大きくした後には、グラフ上の駆動電源電圧の全範囲で連続電流モードとなるようにすることが可能である。
【0098】
また、駆動負荷=Loを駆動するトランス4のインダクタンス値を変更して大きくした場合、図12(a)のライン162aは、グラフ上で全体に嵩上げされて、図12(b)のライン162bの位置に移動する。図12(b)において、ライン162bは、駆動電源電圧6Vのときにライン163bと交差する。
【0099】
図13(a)の例では、駆動負荷=Hiのときにライン164aで動作周期が表され、駆動負荷=Loのときにライン165aで動作周期が表されている。このときに、駆動負荷=Hi,Loを駆動する各トランス4の巻線比を変更してある程度大きくした場合、図13(a)のライン164a,165aは、グラフ上で全体に嵩上げされる。遷移した後の状態を図13(b)に示す。図13(b)のライン166bは、仮定されたスイッチング周波数(例えば200KHz)を示す。図13(b)において、ライン165bは、図13(a)のライン165aがグラフ上で上方に移動した後の位置を示す。なお、図13(a)のライン164aは、図13(b)においてグラフの枠からはみ出ているので図示していない。
【0100】
このときに、駆動負荷=Loを駆動するトランス4の巻線比を変更してさらに大きくした場合、図13(b)のライン165bがグラフ上でさらに上方に移動し、図13(c)に示すように、ライン165cの位置に移動する。なお、図13(c)のライン166cは、仮定されたスイッチング周波数(例えば200KHz)を示す。
図13(c)のライン165cによれば、図13(b)のライン165bの状態のときよりも、連続電流モードとなる領域が広がっていることが分かる。
また、図13(c)のライン165cおよびライン166cによれば、臨界点の周期が駆動周期よりも長くなるように巻線比が設定されていることが分かる。
【0101】
図13(d)〜図13(f)はスイッチング時間を示すグラフであって、各グラフの横軸は、トランスを駆動させるための駆動電源電圧(トランスへの入力電圧)を示し、縦軸は、スイッチング・オン時間を示す。この例の場合、制御IC42の予め規定された最小負荷および最大入力電圧の条件とは、最小負荷が、駆動負荷=Loの負荷を示し、最大入力電圧が24Vを示す。また、図13(d)〜図13(f)では、連続電流モードで駆動するときのスイッチング時間をライン167で示す。したがって、最小負荷および最大入力電圧の条件で、トランス4のインダクタに流れる電流の状態を連続電流モードとして駆動させる場合の最小スイッチング・オン時間(基準オン時間)とは、この場合、図示するように1μ秒となる。
【0102】
図13(d)に示す例では、駆動負荷=Hiの負荷を断続モードで駆動するときのスイッチング時間をライン168aで示し、駆動負荷=Loの負荷を断続モードで駆動するときのスイッチング時間をライン169aで示す。このときに、断続モードで駆動する各トランス4のインダクタ値を変更してある程度大きくした場合、図13(d)のライン168a,169aは、グラフ上で全体に嵩上げされる。遷移した後の状態を図13(e)に示す。図13(e)において、ライン168bは、図13(d)のライン168aが移動した位置を示す。これによると、全駆動電源電圧範囲で、連続電流モードで駆動するときの最小スイッチング・オン時間(1μ秒)よりも長い(大きい)。
また、図13(e)において、ライン169bは、図13(d)のライン169aが移動した位置を示す。これによると、ライン169bは、最大入力電圧(24V)のときには、連続電流モードで駆動するときの最小スイッチング・オン時間(1μ秒)よりも、若干短い(小さい)。
【0103】
このときに、駆動負荷=Hi,Loを駆動する各トランス4のインダクタ値を変更してさらに大きくした場合、図13(e)のライン168b,169bがグラフ上でさらに上方に移動し、図13(f)に示すように、ライン168c,169cの位置に移動する。
これによると、ライン169cは、最大入力電圧(24V)のときには、連続電流モードで駆動するときの最小スイッチング・オン時間(1μ秒)よりも、若干長い(大きい)。
したがって、ライン169cによれば、駆動負荷=Loを駆動するトランス4のインダクタ値は、基準オン時間よりも長いスイッチング・オン時間となるときのインダクタンス値として選定されていることが分かる。
【0104】
(制御方法5)
本実施形態において制御方法5は、制御方法1〜制御方法4のいずれかにおいて、制御IC42は、各トランスに流れるインダクタ電流の状態を連続電流モードとなるように制御しているときに、さらに、複数のトランスのうち少なくとも1つは、制御IC42によってフィードバックに利用されるトランスであることを条件とする制御方法である。
そして、制御方法5では、フィードバックに利用されるトランスのスイッチング区間内における一次側のインダクタ電流の期間と二次側のインダクタ電流の期間との重なり期間の値は、フィードバックに利用されていないトランスの重なり期間の値よりも小さくなるように各トランスを駆動させることとした。
【0105】
上記のように制御する理由をここで補足する。例えば2つのトランスを1つの制御回路で駆動する場合、本実施形態のように、一方のトランスはフィードバック制御に利用されるが、他方のトランスは制御がきかない状態となる。これまで説明してきたように、双方のトランスの2つの出力が揃うには、連続電流モードの動作となっていることが望ましい。ただし、トランスなどには製造上のバラツキが存在するので、連続電流モードの状態がマージンの少ない設定の場合(図9(f)にて波形139の時刻t1のときの電流値等の大きさが少ない設定の場合)、制御側が連続電流モードであっても、制御されない側が断続モードとなる可能性がある。
【0106】
そのため、制御されない側は、制御側より深い連続電流モードである必要がある。逆に言えば、制御される側は、制御されない側より浅い連続電流モードである必要がある。
ここで、連続電流モードが深いとは、トランスのスイッチング区間内における一次側のインダクタ電流の期間と二次側のインダクタ電流の期間との重なり期間の値が大きいことを意味する(図9(f)参照)。逆に言えば、連続電流モードが浅いとは、前記重なり期間の値が小さいことを意味する(図9(f)参照)。
【0107】
以下に、具体的な制御方法について図14を参照して説明する。図14の例では、駆動負荷=Hiのときにライン171で動作周期が表され、駆動負荷=Loのときにライン172で動作周期が表されている。この例では、簡易的な方法として、同じ仕様のトランスを利用する場合を想定した。この場合、制御されない側の負荷を大きくすることで対応できる。つまり、制御されない側の負荷として、駆動負荷=Loの負荷を駆動するトランスの二次側出力に、ブリーダ抵抗を設ける。このようにすることで、ライン172をライン173の位置に嵩上げすることが可能である。
【0108】
以上説明したように、本実施形態の絶縁電源回路14は、各トランス4の一次側および二次側のインダクタに流れる電流が連続電流モードとなるように各トランス4を駆動させるので、各トランス4の出力電圧の誤差を、断続モードで動作する場合に比べて格段に低減させることができる。したがって、本実施形態の絶縁電源回路14によれば、各トランス4の出力電圧誤差の小さな1入力多出力の電源回路を小型化することができる。
【0109】
以上、本発明の電源回路の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではない。例えば、モータ制御インバータに用いる絶縁電源回路14として説明したが、他の用途にも用いることができる。
【0110】
また、本実施形態では、モータECU100は、PWM信号を出力してモータ110を駆動させている。しかし、これに限られず、PAM(Pulse Amplitude Modulation:パルス振幅変調方式)信号、PFM(Pulse Frequency Modulation:パルス周波数変調)信号、PDM(Pulse Density Modulation:パルス密度変調)信号、PPM(Pulse Position Modulation:パルス位置変調)信号、PCM(Pulse Code Modulation:パルス符号変調)信号のいずれによって、モータ110を駆動してもよい。
【0111】
また、本実施形態では、パワーモジュール11は、スイッチング素子としてIGBT素子11−1〜11−6を用いている。しかし、これに限られず、大出力用途としてGTO(Gate Turn-Off thyristor:ゲートターンオフサイリスタ)をスイッチング素子として用いてもよい。また、小出力用途としてパワーバイポーラトランジスタ、パワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)などをスイッチング素子として用いてもよい。
【符号の説明】
【0112】
1 モータ駆動システム
2 プリドライブ基板
4(4a,4b) トランス
10 インバータ回路
11 パワーモジュール
11−1〜11−6 IGBT素子
12 電源部
13(13−1〜13−3) 電流センサ
14 絶縁電源回路(電源回路)
20 ゲートドライブ回路
20−1〜20−6(20−n) ゲートドライブ回路
21−1〜21−6(21−n) ゲート駆動回路
30 高圧側マイコン回路
31 高圧側マイコン
42 制御IC(スイッチング制御回路)
100 モータECU
101 ECU基板
110 モータ(二次側負荷)
C12 平滑コンデンサ
C20−n,C30,C40 コンデンサ
D11−1〜D11−6 フライホイールダイオード
D11−n,D20−n,D30,D40 ダイオード
PC21−n,PC22−n,PC30 フォトカプラ
R11−n 抵抗
TR40,TR41 電界効果トランジスタ(スイッチング用トランジスタ)
Z40 負荷
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源回路に関し、特に、複数のトランスを備える電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一次側と二次側が絶縁され、二次側に設けられたゲート駆動回路に対して一次側から電力を供給する方式の電源回路(絶縁電源回路)がインバータ制御モータに利用されている。このようなモータを駆動するインバータ部が3相インバータの場合、電源回路のトランスの二次側出力が、例えば6個のゲート駆動回路と、高電圧側回路とに接続されることになる。
【0003】
例えば図15(a)に示す基板181上に、トランス182を搭載し、隙間183と隙間183との間に、各ゲート駆動回路等を配置する。3相インバータの場合、図15(b)に示すように、トランス182は、一次側電源IGを受け、U相、V相、W相のそれぞれの上アーム(H)や下アーム(L)のための二次側出力(UH,UL,VH,VL,WH,WL)や高電圧側回路のための二次側出力(HVCC)を供給したり、出力電圧を制御するフィードバック電圧(FB)を生成したりする。
【0004】
このように電源回路において1つの入力に対して多数の出力を有する多出力型のトランスを利用した構成をとる場合、トランスの部品点数は1つで済むが、各出力ピンの間には、絶縁を確保する為の沿面距離が必要となるため、装置の小型化を図ることができない。例えば、基板181を小さくしていくと、図15(a)にバツ印で示すようにトランス182が隙間183等に接触してしまう。また、例えば図15(c)に示すように、トランス182から各ゲート駆動回路への配線において符号184で示す破線領域のように配線が併走する領域が生じてしまう。
【0005】
そこで、小型化をするための1つの方策として電源回路において複数のトランスを利用して個々のトランスを小型化する構成をとることが考えられる。例えば図15(d)に示す基板181上に、2つの小型のトランス191,192を搭載する方法も考えられる。このようにしても二次側回路の数は変わらないので、必要なピン数は同じである。3相インバータの場合、図15(e)に示すように、トランス191,192は、図15(b)に示すトランス182の機能を分担することができる。また、2つの小型のトランス191,192を搭載する方法では、図15(f)に示すように、配線の併走する領域が少なくなるので、沿面の確保に消費される基板面積を減らすことができる。ただし、トランスを複数にした場合、図15(e)に示すように、一次側電源IGを接続するための駆動回路も複数必要となり、コストアップの要因となる。
【0006】
1つの駆動回路で複数のトランスを駆動する技術は特許文献1に開示されている。
特許文献1には、複数の変圧器を備えたDC−DCコンバータを構成するスイッチング電源装置が記載されている。特許文献1に記載のスイッチング電源装置は、2つの変圧器を直列に接続して構成されている。また、特許文献1には、2つの変圧器を並列に接続して構成された電源装置も記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−215825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、1つの入力に対して多数の出力を有する多出力型のトランスを備えた電源回路のトランスを複数に分けて装置全体を小型化しようとする場合、各トランスには、異なる負荷を接続することが必須である。一方、特許文献1に記載された従来のスイッチング電源装置は、直列接続または並列接続された2つのトランスの出力が同一の負荷に接続されている。仮に、従来のスイッチング電源装置が備える2つのトランスに対して、異なる負荷をそれぞれ接続すると、各トランスの出力電圧に大きなバラツキが生じてしまう。また、トランスなどの構成部品の個体差による出力差も大きくなってしまう。
【0009】
そこで、本発明では、前記した問題を解決し、複数のトランスを有する電源装置において、各トランスの出力電圧差を低減することのできる電源装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本願発明者らは、1つの制御系で複数のトランスを駆動させる電源装置において種々検討を行った。その結果、各トランスの出力電圧の誤差の主要因は不連続電流モードで動作する際に生じ、各トランスの動作モードが連続電流モードとなるようにすれば出力電圧誤差が小さくできることを見出した。
【0011】
そこで、本発明に係る電源回路は、複数のトランスと、各トランスを駆動させるスイッチングPWMパルスを出力するスイッチング制御ICとを備えてトランス毎に複数の出力を得る電源回路であって、トランス毎に設けられて前記トランスの一次側のインダクタに接続されて当該トランスへの入力電圧が印加されると共に、ゲート端子が前記スイッチング制御ICに接続されて前記ゲート端子に供給される前記スイッチングPWMパルスに応じて当該トランスへの前記入力電圧のスイッチングを行う複数のスイッチング用トランジスタを備え、前記スイッチング制御ICは、前記各スイッチング用トランジスタを介して前記各トランスの一次側および二次側のインダクタに流れる電流がスイッチング周期内で電流値0とはならない状態を示す連続電流モードとなるように前記各トランスを駆動させることを特徴とする。
【0012】
かかる構成によれば、電源回路は、スイッチング制御ICによって、各スイッチング用トランジスタを介して各トランスの一次側および二次側のインダクタに流れる電流が連続電流モードとなるように各トランスを駆動させる。したがって、電源回路は、各トランスの出力電圧の誤差を、不連続電流モードで動作する場合に比べて格段に低減させることができる。
【0013】
また、本発明に係る電源回路は、前記スイッチング制御ICが、前記トランスの前記インダクタに流れる電流の状態を不連続電流モードと連続電流モードとの間の状態を示す臨界モードとして駆動させる場合のスイッチング周波数を基準周波数としたときに、前記トランスを駆動させる駆動周期を前記トランスへの入力電圧に応じて変化させるか、または、前記駆動周期を前記入力電圧によらず固定させて、前記基準周波数よりも高いスイッチング周波数で前記スイッチングPWMパルスを前記スイッチング用トランジスタに出力することで、前記トランスの前記インダクタに流れる電流の状態を前記連続電流モードとなるように前記各トランスを駆動させることが好ましい。
【0014】
かかる構成によれば、電源回路では、スイッチング制御ICが、臨界モードとして駆動させる場合のスイッチング周波数よりも高いスイッチング周波数でスイッチングPWMパルスをスイッチング用トランジスタに出力する。このようなスイッチング周波数であれば、臨界モードにおけるスイッチング周波数の公知の関係式から、トランスのインダクタに流れる電流の状態を連続電流モードとすることができる。
【0015】
また、本発明に係る電源回路は、前記スイッチング制御ICが、前記トランスの前記インダクタに流れる電流の状態を不連続電流モードと連続電流モードとの間の状態を示す臨界モードとして駆動させる場合に前記トランスを駆動させる所定の駆動周期に応じた当該トランスへの入力電圧を基準電圧としたときに、前記スイッチングPWMパルスを前記スイッチング用トランジスタに出力して当該スイッチング用トランジスタを介して当該トランスに前記基準電圧よりも低い入力電圧を印加して前記所定の駆動周期で駆動させることで、前記トランスの前記インダクタに流れる電流の状態を前記連続電流モードとなるように前記各トランスを駆動させることが好ましい。
【0016】
かかる構成によれば、電源回路では、スイッチング制御ICが、臨界モードとして駆動させる場合の入力電圧よりも低い入力電圧をトランスに印加する。このような入力電圧であれば、臨界モードにおけるスイッチング周波数の公知の関係式から、トランスのインダクタに流れる電流の状態を連続電流モードとすることができる。
【0017】
また、本発明に係る電源回路は、前記各トランスの二次側の出力端子間にブリーダ抵抗をそれぞれ備え、前記スイッチング制御ICは、前記トランスの前記インダクタに流れる電流の状態を不連続電流モードと連続電流モードとの間の状態を示す臨界モードとして駆動させる場合において前記トランスにより所定の二次側負荷を作動させているときに当該二次側負荷を基準負荷としたときに、前記スイッチングPWMパルスを前記スイッチング用トランジスタに出力して当該スイッチング用トランジスタを介して当該トランスにより前記基準負荷と前記ブリーダ抵抗による負荷とを合わせた負荷全体を作動させることで、前記トランスの前記インダクタに流れる電流の状態を前記連続電流モードとなるように前記各トランスを駆動させることが好ましい。
【0018】
かかる構成によれば、電源回路では、スイッチング制御ICが、臨界モードとして駆動させる場合の二次側負荷よりも高い負荷をトランスにより作動させるために所定の抵抗値のブリーダ抵抗を予め備える。このようなブリーダ抵抗を備えることにより、臨界モードにおけるスイッチング周波数の公知の関係式から、トランスのインダクタに流れる電流の状態を連続電流モードとすることができる。
【0019】
また、本発明に係る電源回路は、前記各トランスにおいて、インダクタンス値が、前記スイッチング制御ICが予め規定された最小負荷および最大入力電圧の条件で当該トランスの前記インダクタに流れる電流の状態を前記連続電流モードとして駆動させる場合の最小スイッチング・オン時間を基準オン時間としたときに、前記最小負荷および最大入力電圧の条件において当該トランスを駆動して前記基準オン時間よりも長いスイッチング・オン時間となるときのインダクタンス値として予め選定されており、かつ、当該トランスにおける一次巻線と二次巻線との巻線比が、予め、前記スイッチング制御ICが前記最小負荷および最大入力電圧の条件で前記臨界動作モードとして当該トランスを駆動させる駆動周期を基準周期としたときに、前記最小負荷および最大入力電圧の条件で当該トランスを前記基準周期よりも長い駆動周期で駆動させるときの巻線比として選定されており、前記スイッチング制御ICが、スイッチングPWMパルスを出力することで、前記スイッチング用トランジスタを介して前記トランスを前記基準周期よりも長い駆動周期で駆動し、かつ、前記トランスを前記基準オン時間よりも長いスイッチング・オン時間にさせることで、前記各トランスの前記インダクタに流れる電流の状態を前記連続電流モードとなるように前記各トランスを駆動させることが好ましい。
【0020】
かかる構成によれば、電源回路は、トランスのインダクタンス値と巻線比が所定の条件を満たすように予め選定されたトランスを備える。このうち、インダクタンス値は、最小負荷および最大入力電圧の条件で臨界モードとして駆動させる場合の最小スイッチング・オン時間よりも長いスイッチング・オン時間となるときのインダクタンス値という条件を満たす。また、巻線比は、最小負荷および最大入力電圧の条件で臨界動作モードとしてトランスを駆動させる駆動周期よりも長い駆動周期で駆動させるときの巻線比という条件を満たす。このようなインダクタンス値および巻線比であれば、臨界モードにおけるスイッチング周波数の公知の関係式から、トランスのインダクタに流れる電流の状態を連続電流モードとすることができる。
【0021】
また、本発明に係る電源回路は、前記複数のトランスが、前記スイッチング制御ICによってフィードバックに利用されるトランスを少なくとも1つ含み、前記スイッチング制御ICが、前記各トランスに流れるインダクタ電流の状態を前記連続電流モードとなるように制御しているときに、前記フィードバックに利用されるトランスのスイッチング区間内における一次側のインダクタ電流の期間と二次側のインダクタ電流の期間との重なり期間の値は、前記フィードバックに利用されていないトランスの前記重なり期間の値よりも小さくなるように前記各トランスを駆動させることが好ましい。
【0022】
かかる構成によれば、電源回路では、フィードバックに利用される側のトランスは、利用されていない側のトランスに比べて、連続電流モード時のスイッチング区間内における重なり期間が小さくなるように各トランスを駆動される。すなわち、フィードバックに利用されない側のトランスは、連続電流モード時のスイッチング区間内における波形のマージンがより深くなるように各トランスを駆動される。これにより、利用されている側のトランスが連続電流モードになっているのにも関わらず、利用されていない側のトランスが不連続電流モードとなってしまうといった事態を未然に防止することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の電源回路によれば、各トランスの出力電圧の誤差を、不連続電流モードで動作する場合に比べて格段に低減させることができる。したがって、本発明の電源回路によれば、各トランスの出力電圧誤差の小さな1入力多出力の電源回路を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態に係る絶縁電源回路を含むモータ駆動システムの回路図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る絶縁電源回路を含むインバータ回路の回路図(その1)である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る絶縁電源回路を含むインバータ回路の回路図(その2)である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る絶縁電源回路が搭載されるプリドライブ基板を模式的に示す構成図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る絶縁電源回路に一部が含まれるゲートドライブ回路を模式的に示す構成図である。
【図6】本発明の実施形態に係る絶縁電源回路の制御による効果を説明するためのグラフである。
【図7】本発明の実施形態に係る絶縁電源回路による連続電流モードの第1制御方法の説明図であって、(a)は臨界動作時の動作周期の一例を示すグラフ、(b)は(a)の場合の制御による駆動周期の一例を示すグラフをそれぞれ示している。
【図8】図7に示す臨界動作時の動作周期の説明図であって、(a)は臨界動作時の動作周期の一例、(b)は臨界モードの波形、(c)は断続モードの波形、(d)は連続電流モードの波形をそれぞれ示している。
【図9】図8に示す波形の説明図であって、(a)は臨界動作時のトランス一次側の波形、(b)は臨界動作時のトランス二次側の波形、(c)は臨界動作モードの波形、(d)は連続電流モード動作時のトランス一次側の波形、(e)は連続電流モード動作時のトランス二次側の波形、(f)は連続電流モードの波形をそれぞれ示している。
【図10】本発明の実施形態に係る絶縁電源回路による連続電流モードの第2制御方法の説明図であって、(a)は臨界動作時の動作周期の一例を示すグラフ、(b)は(a)の場合の制御による駆動周期の一例を示すグラフをそれぞれ示している。
【図11】本発明の実施形態に係る絶縁電源回路による連続電流モードの第3制御方法の説明図であって、(a)は臨界動作時の動作周期の一例を示すグラフ、(b)は(a)の場合の制御による駆動周期の一例を示すグラフをそれぞれ示している。
【図12】本発明の実施形態に係る絶縁電源回路による連続電流モードの第4制御方法の説明図であって、(a)は臨界動作時の動作周期の一例を示すグラフ、(b)は(a)の場合の制御による駆動周期の一例を示すグラフをそれぞれ示している。
【図13】図12に示す駆動周期の説明図であって、(a)〜(c)は巻線比の設定を変更したときの動作周期の変化を示すグラフ、(d)〜(f)はインダクタンス値の設定を変更したときのスイッチング・オン時間の変化を示すグラフをそれぞれ示している。
【図14】本発明の実施形態に係る絶縁電源回路で行うフィードバック制御を説明するための臨界動作時の動作周期の一例を示すグラフである。
【図15】トランスの模式図であって、(a)〜(c)は1つのトランスを備える電源回路、(d)〜(f)は2つのトランスを備える電源回路をそれぞれ示している。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態(実施形態という)について図面を参照して詳細に説明する。
[モータ駆動システムの構成]
図1に示すモータ駆動システム1は、本発明の第1実施形態に係る絶縁電源回路14(図2および図4参照)を含むインバータ回路10を備える。インバータ回路10には、モータECU(Electronic Control Unit)100と、モータ110と、電源部12とが接続されている。インバータ回路10は、低出力電圧(低圧)側に配置されたモータECU100の駆動信号によって、モータ110を回転駆動する。
【0026】
(モータ)
モータ110は、負荷としての電力機器であり、例えば、ハイブリッド車両、燃料電池車両、または、電動車両などの車両に駆動源として搭載される三相ブラシレスモータなどである。このモータ110は、U相、V相、W相の各コイル端子を備え、各相のコイルに流れる三相の交流電流によって回転駆動する。また、モータ駆動システム1には、モータ110のU相、V相、W相の相電流に対応するアナログ信号をモータECU100に出力するために、電流センサ13(=13−1〜13−3)が設けられている。
【0027】
(モータECU)
モータECU100は、モータ110の駆動動作および回生動作を制御する。
モータECU100は、駆動信号であるPWM(Pulse Width Modulation)信号を出力して、インバータ回路10に設けられたパワーモジュール11のIGBT素子11−1〜11−6を駆動する機能を有している。
モータECU100の出力側は、インバータ回路10に設けられたゲートドライブ回路20にフォトカプラPC21−n(nは1〜6の自然数)を介して接続されている(図5(a)参照)。
モータECU100には、インバータ回路10に設けられた高圧側マイコン回路30の高圧側マイコン31の出力側がフォトカプラPC30を介して接続されている(図4参照)。
モータECU100には、インバータ回路10に設けられたゲートドライブ回路20の各ゲートドライブ回路20−n(nは1〜6の自然数)の出力側がフォトカプラPC22−nを介して接続されている(図5(a)参照)。
モータECU100は、例えばECU基板101上に設けられており(図4参照)、外部の1次側の主電源(イグニッション電源VIG)が供給される。
【0028】
(電源部)
電源部12は、例えば600ボルト程度の高出力の直流電圧を供給するための蓄電装置であり、複数のバッテリブロックが直列接続されている。ここで、バッテリブロックは、複数のリチウムイオン電池やニッケル水素電池などがモジュール化されて構成されている。しかし、これに限られず、電源部12は、キャパシタで構成してもよい。この電源部12の正極側端子PN+と負極側端子PN−との間には、平滑コンデンサC12が接続され、電源部12の出力電圧を平滑化している。
【0029】
(電流センサ)
電流センサ13(=13−1〜13−3)は、モータ110の相電流を検出するセンサであり、それぞれU相、V相、W相の相電流に対応するアナログ信号をモータECU100に出力する。
電流センサ13−1は、後記するパワーモジュール11のU相のアームとモータ110のU相との間に直列接続され、さらに、図示しないフォトカプラを介してモータECU100に接続されている。
同様に、電流センサ13−2は、後記するパワーモジュール11のV相のアームと、モータ110のV相との間に直列接続され、さらに、図示しないフォトカプラを介してモータECU100に接続されている。
電流センサ13−3は、後記するパワーモジュール11のW相のアームと、モータ110のW相との間に直列接続され、さらに、図示しないフォトカプラを介してモータECU100に接続されている。
【0030】
(インバータ回路)
インバータ回路10は、電源部12からの高出力電圧(高圧)をモータ110に供給するパワーモジュール11と、パワーモジュール11を作動させるゲートドライブ回路20と、高圧側マイコン回路30と、前記平滑コンデンサC12と、を有している。
【0031】
<パワーモジュール>
パワーモジュール11は、電源部12の正極側端子PN+と負極側端子PN−との間に接続された三相インバータ回路である。
パワーモジュール11は、バッテリなどの電源部12からの直流電力を、三相ブラシレスであるモータ110を駆動するための交流電力に変換する機能と、モータ110より回生される交流電力を直流電力に変換する機能とを有している。
【0032】
パワーモジュール11は、スイッチング素子であるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)素子11−1〜11−6と、フライホイールダイオードD11−1〜D11−6とを具備している。
パワーモジュール11において、IGBT素子11−1およびフライホイールダイオードD11−1は、U相の上アームを構成している。また、IGBT素子11−3およびフライホイールダイオードD11−3は、V相の上アームを構成し、IGBT素子11−5およびフライホイールダイオードD11−5は、W相の上アームを構成している。
【0033】
IGBT素子11−2及びフライホイールダイオードD11−2は、U相の下アームを構成している。また、IGBT素子11−4及びフライホイールダイオードD11−4は、V相の下アームを構成し、IGBT素子11−6及びフライホイールダイオードD11−6は、W相の下アームを構成している。
【0034】
IGBT素子11−1,11−3,11−5のコレクタ端子は、電源部12の正極側端子PN+に接続されている。
IGBT素子11−2,11−4,11−6のエミッタ端子は、電源部12の負極側端子PN−に接続されている。
各IGBT素子11−1〜11−6のコレクタ端子−エミッタ端子間は、コレクタ端子からエミッタ端子への方向と逆方向にフライホイールダイオードD11−1〜D11−6が並列接続されている。
【0035】
IGBT素子11−1〜11−6をパルス幅変調によりON/OFFするPWM信号(ゲート信号)がモータECU100よりIGBT素子11−1〜11−6のゲート端子に入力される。このPWM信号は、外部であるモータECU100から入力される駆動信号である。
IGBT素子11−1のエミッタ端子と、IGBT素子11−2のコレクタ端子とは、モータ110のU相のコイル端子に接続されている。
IGBT素子11−3のエミッタ端子と、IGBT素子11−4のコレクタ端子とは、モータ110のV相のコイル端子に接続されている。
IGBT素子11−5のエミッタ端子と、IGBT素子11−6のコレクタ端子とは、モータ110のW相のコイル端子に接続されている。
【0036】
[絶縁電源回路]
次に、絶縁電源回路の構成について図2を参照(適宜図1および図3参照)して説明する。図2および図3は、本発明の第1実施形態に係る絶縁電源回路を含むインバータ回路の回路図である。
図2に示す絶縁電源回路14は、一次側と二次側が絶縁され、一次側から二次側に電力を供給する電源回路である。絶縁電源回路14は、複数のトランス4(4a,4b)と、各トランス4(4a,4b)を駆動させるスイッチングPWMパルスを出力する制御IC42とを備えてトランス毎に複数の出力を得る。絶縁電源回路14は、外部の1次側の主電源(イグニッション電源VIG)からなる低出力電圧(低圧)系統と、2次側の電源部12等の高圧系統とを絶縁する機能を有したスイッチング電源である。この絶縁電源回路14は、イグニッション電源VIGを2次側直流電圧に変換し、変換した電圧を電源電圧として、ゲートドライブ回路20と、高圧側を制御する高圧側マイコン回路30と、図示しないロジック回路や温度センサ回路や電圧検出回路などとに供給している。ここで、主電源であるイグニッション電源VIGは、例えばイグニッションキーをオンしたときに図示しないバッテリから供給される電源である。
【0037】
絶縁電源回路14は、図2に示すように、2つのトランス4a,4bを備えている。ここで、トランスの個数は、複数であれば特に限定されない。なお、トランスを特に区別しない場合には単にトランス4と表記する。
【0038】
トランス4aは、絶縁を挟んで1次側に、一次巻線(一次側のインダクタ)および三次巻線(フィードバック巻線)を備え、絶縁を挟んで2次側に二次巻線(二次側のインダクタ)を備える。なお、ここでは、算用数字により絶縁の両側を区別し、漢数字により巻線を区別することとした。
トランス4aの一次巻線の一端には、イグニッション電源VIGの電源供給ラインが接続されて、他端には電界効果トランジスタTR40のドレイン端子が接続されている。
トランス4aの二次巻線は、ゲートドライブ回路20−1、20−3および20−5のそれぞれの一部を構成している(図2、4参照)。すなわち、トランス4aは、ゲートドライブ回路20−1、20−3および20−5に接続されている3個の二次巻線を備える。トランス4aの三次巻線(フィードバック巻線)は、トランス4aの絶縁を挟んで1次側において負荷Z40に接続されている。この三次巻線は、トランス4aの絶縁を挟んで1次側のフィードバック電圧Vfbを生成する。
【0039】
トランス4bは、絶縁を挟んで1次側に一次巻線(一次側のインダクタ)を備え、絶縁を挟んで2次側に二次巻線(二次側のインダクタ)を備える。なお、ここでは、算用数字により絶縁の両側を区別し、漢数字により巻線を区別することとした。
トランス4bの一次巻線の一端には、イグニッション電源VIGの電源供給ラインが接続されて、他端には電界効果トランジスタTR41のドレイン端子が接続されている。
トランス4bの二次巻線は、ゲートドライブ回路20−2、20−4および20−6のそれぞれの一部と、高圧側マイコン回路30の一部とを構成している(図2、4参照)。すなわち、トランス4bは、ゲート駆動回路21−2、21−4および21−6に接続されている3個の二次巻線と、高圧側マイコン31に接続されている1個の二次巻線とを備える。
【0040】
絶縁電源回路14は、トランス4aの絶縁の一次側に、スイッチング素子である電界効果トランジスタTR40と、制御IC42と、整流ダイオードD40と、平滑コンデンサC40と、負荷Z40とを備え、トランス4aの絶縁を挟んで2次側に、ゲートドライブ回路20−1、20−3および20−5の一部を備えている。
絶縁電源回路14は、トランス4bの絶縁の一次側に、スイッチング素子である電界効果トランジスタTR41を備え、トランス4bの絶縁を挟んで2次側に、ゲートドライブ回路20−2、20−4および20−6の一部と、高圧側マイコン回路30の一部とを備えている。すなわち、絶縁電源回路14は、絶縁を挟んで1次側には、トランス毎に、スイッチング素子である電界効果トランジスタTR40,TR41を備えている。
【0041】
(絶縁の1次側構成)
スイッチング用トランジスタである電界効果トランジスタTR40のゲート端子は、制御IC42の出力および電界効果トランジスタTR41のゲート端子に接続されている。電界効果トランジスタTR40のドレイン端子は、トランス4aの一次巻線を介してイグニッション電源VIGに接続されている。電界効果トランジスタTR40のソース端子は、グランドに接続されている。
【0042】
スイッチング用トランジスタである電界効果トランジスタTR41のゲート端子は、制御IC42の出力および電界効果トランジスタTR40のゲート端子に接続されている。電界効果トランジスタTR41のドレイン端子は、トランス4bの一次巻線を介してイグニッション電源VIGに接続されている。電界効果トランジスタTR41のソース端子は、グランドに接続されている。
【0043】
スイッチング制御回路である制御IC42は、電界効果トランジスタTR40のゲート端子に制御パルスとしてスイッチングPWMパルスを出力することで、電界効果トランジスタTR40によって生成されたスイッチング信号を、トランス4aの一次巻線に入力して、トランス4aを駆動する。これにより、電界効果トランジスタTR40は、トランス4aへの入力電圧として、一次側の主電源であるイグニッション電源VIG(直流電源)が印加される。電界効果トランジスタTR40は、ゲート端子に供給されるスイッチングPWMパルスに応じてトランス4aへの入力電圧をスイッチングする。
【0044】
同様に、制御IC42は、電界効果トランジスタTR41のゲート端子に制御パルスとしてスイッチングPWMパルスを出力することで、電界効果トランジスタTR41によって生成されたスイッチング信号を、トランス4bの一次巻線に入力して、トランス4bを駆動する。これにより、電界効果トランジスタTR41は、トランス4bへの入力電圧として、一次側の主電源であるイグニッション電源VIG(直流電源)が印加される。電界効果トランジスタTR41は、ゲート端子に供給されるスイッチングPWMパルスに応じてトランス4bへの入力電圧をスイッチングする。
【0045】
制御IC42は、電界効果トランジスタTR40を介してトランス4aの一次巻線および二次巻線に流れる電流が連続電流モードとなるようにトランス4aを駆動させる。
また、制御IC42は、電界効果トランジスタTR41を介してトランス4bの一次巻線および二次巻線に流れる電流が連続電流モードとなるようにトランス4bを駆動させる。ここで、連続電流モードは、トランスの一次巻線および二次巻線に流れる電流がスイッチング周期内で電流値0とはならない状態を示す。なお、連続電流モードとなるようにトランス4を駆動させる制御方法については後記する。
【0046】
トランス4aの三次巻線は、順方向に接続された整流ダイオードD40を介して、平滑コンデンサC40と負荷Z40に並列に接続されている。この整流ダイオードD40のカソード端子は、さらに、制御IC42を介して電界効果トランジスタTR40のゲート端子に接続されている。
【0047】
(絶縁の2次側構成の概略)
絶縁電源回路14は、図2に示すように、2次側に、ゲートドライブ回路20の一部と、高圧側マイコン回路30の一部とを備えている。
ゲートドライブ回路20は、図2および図3に示すように、U相上アームのIGBT素子11−1を駆動するゲートドライブ回路20−1と、U相下アームのIGBT素子11−2を駆動するゲートドライブ回路20−2と、V相上アームのIGBT素子11−3を駆動するゲートドライブ回路20−3と、V相下アームのIGBT素子11−4を駆動するゲートドライブ回路20−4と、W相上アームのIGBT素子11−5を駆動するゲートドライブ回路20−5と、W相下アームのIGBT素子11−6を駆動するゲートドライブ回路20−6とを具備している。
【0048】
各ゲートドライブ回路20−n(nは1〜6の自然数)と、絶縁電源回路14と、を同じ基板(プリドライブ基板2)に搭載した場合の一例を図4に示す。各ゲートドライブ回路20−nの詳細については、後記する。図4では、各ゲートドライブ回路20−nにおいて主要な構成として、ゲート駆動回路21−1〜6を図示した。各ゲートドライブ回路20−nの一部の構成は絶縁電源回路14に含まれている。図4では、高圧側マイコン回路30において主要な構成として、高圧側マイコン31を図示した。
【0049】
[高圧側マイコン回路の構成]
高圧側マイコン回路30は、図2および図3に示すように、整流ダイオードD30と、平滑コンデンサC30と、高圧側マイコン31と、フォトカプラPC30(図4参照)とを有し、トランス4bの二次巻線に接続されている。ここで、整流ダイオードD30と、平滑コンデンサC30とは、絶縁電源回路14の二次側の構成要素である。整流素子である整流ダイオードD30は、トランス4bの二次巻線と、高圧側マイコン31との間に接続され、高圧側マイコン31に向けて電流を流す。
【0050】
高圧側マイコン回路30のトランス4bの二次巻線は、順接続の整流ダイオードD30を介して、平滑コンデンサC30に接続され、絶縁電源回路14の二次側出力を構成している。この絶縁電源回路14の二次側出力は、高圧側マイコン31に接続されている。
【0051】
高圧側マイコン31には、図示しない温度センサが接続され、パワーモジュール11のIGBT素子11−1〜11−6(図3参照)の温度を測定可能に構成されている。
高圧側マイコン31には、ゲートドライブ回路20−4の整流ダイオードD20−4のカソード端子が接続され、ゲートドライブ回路20−4の電圧Vx−4(図5(a)参照)を測定可能に構成されている。
さらに、高圧側マイコン31には、他のゲートドライブ回路20−1〜20−3,20−5,20−6の整流ダイオードD20−1〜D20−3,D20−5,D20−6のカソード端子が接続され(不図示)、ゲートドライブ回路20−1〜20−3,20−5,20−6の電圧Vx−1〜〜Vx−3,Vx−5,Vx−6(図5(a)参照)も測定可能に構成されている。
【0052】
高圧側マイコン31の出力端子は、フォトカプラPC30(図4参照)の入力端子に接続されている。フォトカプラPC30の出力端子は、モータECU100に接続され、ゲートドライブ回路20に発生している電圧(電圧Vx−n(図5(a)参照))等の2次側状態を表すステータス信号をモータECU100に送信する。このステータス信号を送信する通信のことをここではIPUA通信(Intelligent Power Unitからの信号Aによる通信)と呼ぶ。IPUA通信には、例えば、IGBT素子11−n(図3参照)近傍にそれぞれ設けられた図示しない温度センサの出力、電源部12の電圧など、二次側回路に係る様々な情報を含む。
【0053】
[各ゲートドライブ回路の構成]
図5(a)に示すように、各ゲートドライブ回路20−n(nは1〜6の自然数)は、整流ダイオードD20−nと、平滑コンデンサC20−nと、ゲート駆動回路21−nとを有し、それぞれトランス4の二次巻線に接続されている。ここで、整流ダイオードD20−nと、平滑コンデンサC20−nとは、絶縁電源回路14(図2参照)の二次側に含まれている。
【0054】
各ゲートドライブ回路20−nのトランス4の二次巻線は、順方向の整流ダイオードD20−nを介して、平滑コンデンサC20−nに接続され、絶縁電源回路14の二次側出力を構成している。平滑コンデンサC20−nの両端子間に発生する電圧は、電圧Vx−nである。この絶縁電源回路14の二次側出力は、ゲート駆動回路21−nに接続されている。
【0055】
ゲート駆動回路21−nは、モータECU100からのPWM信号によって駆動される駆動回路である。ゲート駆動回路21−nの出力側は、スイッチング素子であるIGBT素子11−n(図1参照)のゲート端子に接続されている。モータECU100のPWM信号端子は、フォトカプラPC21−nを介して、ゲート駆動回路21−nに接続され、ゲート駆動回路21−nにPWM信号を出力するように構成されている。
【0056】
ゲート駆動回路21−nのフェール信号端子は、フォトカプラPC22−nを介してモータECU100に接続されて、異常発生時に、モータECU100にフェール信号を出力するように構成されている。フェール信号は、シリアル通信で情報が送信される。モータECU100は、フェール信号に基づいた二次側回路の情報を取得し、過熱や短絡(過電流)や過電圧などを検知したとき、種々の制御素子の破壊を防止するためにモータ110を駆動停止する保護機能を有している。
【0057】
ゲート駆動回路21−nの出力側は、IGBT素子11−nのゲート端子と第1のエミッタ端子とに接続され、モータ110のU相、V相、W相それぞれの駆動信号を発生する。IGBT素子11−nの第1のエミッタ端子は、抵抗R11−nを介してグランドに接続され、第2のエミッタ端子は、直接にグランドに接続されている。IGBT素子11−nのコレクタ端子と第2のエミッタ端子との間には、フライホイールダイオードD11−nが逆方向に接続されている。なお、図5(b)に示すゲートドライブ回路20−nについては後記する。
【0058】
[連続電流モードの制御方法]
以下、本実施形態の絶縁電源回路14における連続電流モードの効果および制御方法の原理について説明した後、制御方法のバリエーション(制御方法1〜制御方法5)について説明する。
【0059】
(連続電流モードの効果)
ここでは、本実施形態の絶縁電源回路14においてトランス4のインダクタに流れる電流を連続電流モードとする制御を行う効果を示す実験について図6を参照して説明する。図6は、1つの制御系で2つのトランスを駆動させる電源装置において出力電圧誤差を調べる実験を行った結果を示している。なお、図6のグラフの横軸はトランスへの入力電圧IGを示し、縦軸はトランスからの出力電圧Vxを示す。
【0060】
図6に示すライン111は、規定のトランスの特性を示す。この規定のトランスは、入力電圧IGが6〜24Vの範囲では、規定のスイッチング・オン時間dutyで駆動したときに出力電圧Vxが一定値となるように設計されたものであり、所定の一次側インダクタンス値Lおよび巻線比を有している。ライン111の特性が実現するときの条件を規定値の条件と呼ぶ。
【0061】
ライン112は、規定値の条件と比較して、前記インダクタンス値Lを15%減少させたトランスを、スイッチング・オン時間dutyを0.5%増加させて不連続電流モードで駆動したときの実験結果の特性を示す。
ライン113は、規定値の条件と比較して、前記インダクタンス値Lを15%増加させたトランスを、スイッチング・オン時間dutyを0.5%減少させて不連続電流モードで駆動したときの実験結果の特性を示す。
ライン114は、規定値の条件と比較して、前記トランスを、スイッチング・オン時間dutyを0.5%増加させて連続電流モードで駆動したときの実験結果の特性を示す。
ライン115は、規定値の条件と比較して、前記トランスを、スイッチング・オン時間dutyを0.5%減少させて連続電流モードで駆動したときの実験結果の特性を示す。
【0062】
本実験において、入力電圧IGを6〜24Vの範囲で1Vずつ増加させていくと、ライン112は出力電圧Vxが線形に増加していることを示し、ライン113は出力電圧Vxが線形に減少することを示す。つまり、不連続電流モードで駆動した場合、ライン112の特性を有するトランスの出力電圧と、ライン113の特性を有するトランスの出力電圧には、それぞれ大きなバラツキが生じてしまう。
【0063】
一方、ライン114,115は、入力電圧IGを増加させても、出力電圧Vxがほぼ一定の値であることを示している。つまり、連続電流モードで駆動した場合、ライン114の特性を有するトランスの出力電圧と、ライン115の特性を有するトランスの出力電圧には、それぞれバラツキがほとんど生じない。よって、1つの制御系で複数のトランスを駆動させる電源装置において、各トランスの出力電圧の誤差の主要因は不連続電流モードで動作する際に生じ、各トランスの動作モードが連続電流モードとなるようにすれば出力電圧誤差が小さくできることが分かる。
【0064】
(制御方法の原理)
本実施形態の絶縁電源回路14において連続電流モードとする制御方法の条件は、以下の式(1)に示す臨界動作時のスイッチング周波数の公式に基づいて予め定められている。式(1)は、連続電流モードと、不連続電流モード(以下、断続モードともいう)との切り替わる臨界周波数を示す。
【0065】
【数1】
【0066】
式(1)において、fは臨界周波数[Hz]、Tは臨界周波数のときのスイッチング周期[s]、Vinは一次側入力電圧[V]、Voは二次側出力電圧[V]、Lpは一次側インダクタンス[H]、Pinは臨界時に一次巻線(インダクタ)に流れる電流ΔIL1が流れたときの電力[W]、npは一次巻線の巻数、nsは二次巻線の巻数(トランス巻線比ns/np)をそれぞれ示す。
【0067】
ここで、臨界動作時の動作周期の一例を図7(a)のグラフに実線で示す。臨界動作とは、スイッチング電源が例えば断続モードから連続電流モードに切り替わる臨界の状態で動作することを示す。このときの状態を臨界モードと呼ぶ。なお、図7(a)のグラフの横軸は、トランスを駆動させるための駆動電源電圧(トランスへの入力電圧)を示し、縦軸は、トランスの動作周期を示す。
【0068】
以下では、トランスが駆動する負荷が高い場合(駆動負荷=Hi)と、トランスが駆動する負荷が低い場合(駆動負荷=Lo)とを1つのグラフに図示するが、説明の都合上、一方のトランスを示す実線だけがある場合を想定して説明する。なお、駆動負荷=Hiのトランスと、駆動負荷=Loのトランスとを同時に考えても差し支えない。
【0069】
例えば、駆動負荷=Hiの一定値であれば、図7(a)においてライン121で示すように、駆動電源電圧が10Vのときには、臨界動作時の動作周期は約6μ秒、駆動電源電圧が20Vのときには、臨界動作時の動作周期は約4μ秒となることが読み取れる。
また、駆動負荷=Loの一定値であれば、図7(a)においてライン122で示すように、駆動電源電圧が10Vのときには、臨界動作時の動作周期は約1.5μ秒、駆動電源電圧が20Vのときには、臨界動作時の動作周期は約1μ秒となることが読み取れる。
【0070】
なお、図7(a)に示す臨界動作時の動作周期のグラフは、連続電流モードの制御方法の説明のために導入したものであって、連続電流モードそのものを直接表すものではない。臨界動作時の動作周期のグラフと、連続電流モードの波形との関係を図8に示す。
【0071】
図8(a)は臨界動作時の動作周期の一例を示している。ここでは、動作周期を例えば4μ秒に固定した場合を想定する。この動作周期で臨界動作を行い臨界モードになったと仮定すると、図8(b)に示す波形が得られる。図8(b)に示す符号130は、スイッチング区間を示し、この場合には4μ秒の時間幅を示す。
【0072】
図8(b)にて符号131で示す波形から見ると、図8(a)にて破線で示す4μ秒の動作周期の直線にのっている場合には、臨界モードで動作することになる(なお、動作周期を4μ秒と仮定したので図8(a)の実線を無視する)。
図8(b)の波形131は、臨界モードで動作するトランスのインダクタに流れる電流ILのタイミングチャートを示す典型的な波形である。波形131は、図9(a)に示すようなトランスの一次側インダクタに流れる電流IL1のタイミングチャートを示す波形134と、図9(b)に示すようなトランスの二次側インダクタに流れる電流IL2のタイミングチャートを示す波形135とを時刻を合わせて合成して作成した、図9(c)に示す波形136と同様な波形である。
図8(b)に示す波形131は、トランスの一次側および二次側のインダクタに流れる電流がスイッチング周期内で瞬間的に電流値が0になる。
【0073】
また、図8(b)において、例えば4μ秒の動作周期に固定した条件で、この波形の周期(電流値0から電流値0になるまでの期間)を短くすると、図8(c)に示すように断続モードで動作することになる。
図8(c)にて符号132で示す波形は、断続モードで動作するトランスのインダクタに流れる電流ILのタイミングチャートを示す典型的な波形である。詳細な説明は省略するが、波形132も一次側インダクタに流れる電流のタイミングチャートを示す波形と、二次側インダクタに流れる電流のタイミングチャートを示す波形とを時刻を合わせて合成して作成した波形である。波形132は、トランスの一次側および二次側のインダクタに流れる電流がスイッチング周期内で電流値0となっている期間が長くなる。
【0074】
また、図8(b)のグラフにおいて、例えば4μ秒の動作周期に固定した条件で、この波形の周期(電流値0から電流値0になるまでの期間)を長くすると、隣の区間の周期と重なってしまい、その結果、図8(d)に示すように連続電流モードで動作することになる。例えば、図9(f)において、実線の三角波の動作周期は、時刻t1〜t3までの期間と等しいが、インダクタに流れる電流ILが電流値0となる周期(スイッチング周期)は、時刻t1〜t3までの期間よりも長くなる。
【0075】
図8(d)にて符号133で示す波形は、連続電流モードで動作するトランスのインダクタに流れる電流ILのタイミングチャートを示す典型的な波形である。波形133は、図9(d)に示すようなトランスの一次側インダクタに流れる電流IL1のタイミングチャートを示す波形137と、図9(e)に示すようなトランスの二次側インダクタに流れる電流IL2のタイミングチャートを示す波形138とを時刻を合わせて合成して作成した、図9(f)に示す波形139と同様な波形である。
【0076】
図8(d)に示す波形133は、トランスの一次側および二次側のインダクタに流れる電流がスイッチング周期内で電流値0となることはない。図8(d)にΔで示すように波形の正方向の傾きは、一次側インダクタ値によって決まる。
また、図9(f)に示すように、トランスのスイッチング区間内における一次側のインダクタ電流の期間と二次側のインダクタ電流の期間との重なり期間の値は、駆動負荷が大きいほど大きくなる傾向がある。なお、図8(c)の波形132と図8(d)の波形133は、動作周期を固定(ここでは4μ秒に固定)したときの波形である。
【0077】
(制御方法1)
図7に戻って、連続電流モードとする制御の条件について説明を続ける。前記した式(1)によれば、図7(a)の例では、駆動負荷=Hiの一定値であれば、ライン121の位置は、臨界動作モードで動作した時のスイッチング周期を表している。よって、この周期よりも短い周期で駆動すれば、連続電流モードとなる。例えば、図8(b)において、波形131の形状を維持して符号130で示す動作周期を表す破線を左右から中心に移動させて動作周期自体を短くし、その上で同様に短くした4周期分の波形をつなぎ合わせると、傾きは異なるが図8(d)の波形133と同様に、電流値が0とはならない波形となる。
【0078】
また、図7(a)において、駆動負荷=Loの一定値であれば、ライン122の位置は、臨界動作モードで動作した時のスイッチング周期を表している。よって、この周期よりも短い周期で駆動すれば、同様に連続電流モードとなる。
【0079】
そこで、本実施形態において制御方法1では、制御IC42は、臨界モードのスイッチング周波数を基準周波数としたときに、トランス4を駆動させる駆動周期を、例えばトランス4への入力電圧に応じて変化させる場合、基準周波数よりも高いスイッチング周波数でスイッチングPWMパルスを電界効果トランジスタTR40,TR41に出力することで、各トランス4のインダクタに流れる電流の状態を連続電流モードとなるように各トランス4を駆動させることとした。図7(b)の例では、駆動負荷=Hiであれば、ライン121の位置が基準周波数となる。そのため、トランス4への入力電圧に応じて変化させる場合、つまり、ライン121に沿ってスイッチング周波数を変化させる場合、例えば、ライン123のように、駆動電源電圧の増加に合わせて、スイッチング周期が減少するように、スイッチング周波数を増加させる。
【0080】
また、本実施形態において制御方法1では、制御IC42は、臨界モードのスイッチング周波数を基準周波数としたときに、トランス4を駆動させる駆動周期を、例えばトランス4への入力電圧によらず固定させる場合、基準周波数よりも高いスイッチング周波数でスイッチングPWMパルスを電界効果トランジスタTR40,TR41に出力することで、各トランス4のインダクタに流れる電流の状態を連続電流モードとなるように各トランス4を駆動させてもよい。図7(b)の例では、駆動負荷=Loであれば、ライン122の位置が基準周波数となる。そのため、トランス4への入力電圧によらずスイッチング周波数を固定させる場合、例えば、ライン124のように、駆動電源電圧の増加にかかわらず、ライン122の最小値よりも小さな一定値のスイッチング周期とする。
【0081】
(制御方法2)
前記した式(1)によれば、負荷(電力Pin)が変化したり、駆動電源電圧(一次側入力電圧Vin)が変化したりすると、臨界点の周期(スイッチング周期T)が変化することが分かる。ただし、臨界動作モード(主に自励式=RCC(Ringing Choke Converter)方式)では、周波数が変動するため、他励式のように周波数を固定することとした。
【0082】
本実施形態において制御方法2では、制御IC42は、臨界モードでトランス4を駆動させる所定の駆動周期に応じた当該トランス4への入力電圧を基準電圧としたときに、スイッチングPWMパルスを電界効果トランジスタTR40,TR41に出力して電界効果トランジスタTR40,TR41を介して各トランス4に前記基準電圧よりも低い入力電圧を印加して前記所定の駆動周期で駆動させることで、各トランス4のインダクタに流れる電流の状態を連続電流モードとなるように各トランス4を駆動させることとした。具体的な制御方法について図10を参照して説明する。
【0083】
図10(a)の例では、駆動負荷=Hiのときにライン141で動作周期が表され、駆動負荷=Loのときにライン142で動作周期が表されている。駆動負荷=Hiのときにトランス4を駆動させるスイッチング周波数が例えば200KHz(駆動周期=5μ秒)であると仮定する。スイッチング周波数を固定すると、周波数の設定によっては、図10(a)に示すように、臨界モードを示すライン141と、設定周波数(1/設定動作周期)を示すライン143とが交差する領域が発生する。他励式においては、この交点が、連続電流モードと断続モードとのモード切り替わり点となる。図10(a)に示す例では、ライン143上において、駆動電源電圧(入力電圧)を示す縦ライン144よりも低電圧側では連続電流モードとなり、縦ライン144よりも高電圧側では断続モードとなる。
【0084】
同様に、図10(a)の例では、駆動負荷=Loのときにトランス4を駆動させるスイッチング周波数が例えば500KHz(駆動周期=2μ秒)であると仮定したとき、ライン145上において、ライン142とライン145とが交差する駆動電源電圧(入力電圧)を示す縦ライン146よりも低電圧側では連続電流モードとなり、縦ライン146よりも高電圧側では、断続モードとなる。
【0085】
そのため、図10(a)の例では、駆動負荷=Hiのときにトランス4を駆動させるスイッチング周波数が例えば200KHz(駆動周期=5μ秒)を前提としたときに、ライン141とライン143とが交差する駆動電源電圧(入力電圧)を示す縦ライン144で示される入力電圧を基準電圧とした場合を想定する。この場合、この基準電圧よりも低い入力電圧の範囲として、図10(b)において符号147で示すハッチングの領域の条件となるように、所定の入力電圧を印加し、かつ、駆動周期=5μ秒以下の駆動周期で駆動させることで、連続電流モードとなる。
【0086】
(制御方法3)
前記した式(1)によれば、負荷(電力Pin)が変化すると、臨界点の周期(スイッチング周期T)が変化することが分かる。ただし、臨界動作モード(主に自励式=RCC方式)では、周波数が変動するため、他励式のように周波数を固定することとした。
本実施形態において制御方法3では、絶縁電源回路14において、各トランス4の二次側の出力端子間にブリーダ抵抗をそれぞれ備えることとした。具体的には、絶縁電源回路14の2次側構成であるゲートドライブ回路20−nにおいて、図5(b)に示すように、トランス4の二次巻線の出力端子間にブリーダ抵抗R20−nを接続した。図5(b)に示す例では、ブリーダ抵抗R20−nの両端は、平滑コンデンサC20−nの両端に接続されている。
【0087】
また、制御方法3では、制御IC42は、トランス4を臨界モードとして駆動させて所定の二次側負荷を作動させているときに当該二次側負荷を基準負荷としたときに、スイッチングPWMパルスを電界効果トランジスタTR40,TR41に出力して当該電界効果トランジスタTR40,TR41を介して当該トランス4により前記基準負荷とブリーダ抵抗R20−nによる負荷とを合わせた負荷全体を作動させることで、各トランス4のインダクタに流れる電流の状態を連続電流モードとなるように各トランス4を駆動させることとした。具体的な制御方法について図11を参照して説明する。
【0088】
図11(a)の例では、駆動負荷=Hiのときにライン151で動作周期が表され、駆動負荷=Loのときにライン152で動作周期が表されている。
この制御方法3も制御方法2と同様にして、駆動負荷=Hiのときにトランス4を駆動させるスイッチング周波数が例えば200KHz(駆動周期=5μ秒)であると仮定する。スイッチング周波数を固定すると、周波数の設定によっては、図11(a)に示すように、臨界モードを示すライン151と、設定周波数(1/設定動作周期)を示すライン153とが交差する領域が発生する。他励式においては、この交点が、連続電流モードと断続モードとのモード切り替わり点となる。図11(a)に示す例では、ライン153上において、駆動電源電圧(入力電圧)を示す縦ライン154よりも低電圧側では連続電流モードとなり、縦ライン154よりも高電圧側では断続モードとなる。
【0089】
また、図11(a)の例では、駆動負荷=Loのときにトランス4を駆動させるスイッチング周波数が例えば200KHz(駆動周期=5μ秒)であると仮定したときには、ライン152とライン153とは交差することはない。ただし、この図11(a)の例(Hi,Loあるいはその中間)によれば、負荷が大きくなると連続電流モードとなる領域が増えることが分かる。そこで、駆動負荷=Loのときにトランス4を駆動させたい設定スイッチング周波数(例えば200KHz)であっても連続電流モードとなるように二次側にブリーダ抵抗を接続してグラフ上でライン152を嵩上げすることで、予め規定されている最低負荷状態(駆動負荷=Lo)であっても、臨界周期が駆動周期以上となるようにした。
【0090】
例えばトランス4b(図2参照)が駆動負荷=Loの二次側負荷としてゲート駆動回路21−2を駆動する場合を想定する。駆動負荷=Loを基準負荷としたときに、電界効果トランジスタTR41を介してトランス4bにより、ゲート駆動回路21−2(基準負荷)とブリーダ抵抗R20−2による負荷とを合わせた負荷全体を作動させることで、トランス4bのインダクタ(ここではゲートドライブ回路20−2に対応するインダクタ)に流れる電流の状態を連続電流モードとすることができる。
【0091】
そのため、図11(a)の例では、駆動負荷=Loのときにトランス4bを駆動させるスイッチング周波数が例えば200KHz(駆動周期=5μ秒)であることを前提としたときに、ライン152とライン153とが交差するように、ブリーダ抵抗R20−2の抵抗値を選定し、図11(b)において符号154で示す白抜き矢印のようになるように、ライン152全体を押し上げる。これにより、ライン152とライン153とが交差したときに、その交差点から低電圧側の駆動電源電圧を入力することでトランス4bが連続電流モードとなる。ここで、ゲートドライブ回路20−2以外の二次側回路を基準負荷としても同様に制御することができる。さらに、トランス4a(図2参照)に対しても同様に制御することができる。
【0092】
(制御方法4)
前記した式(1)によれば、インダクタンスを大きくすることによりスイッチング周期が長くなることが分かる。つまり、インダクタンスを大きくすることにより、グラフ上で臨界点を上げることが可能となる。この場合、具体的には、トランスで対応する場合は、インダクタンス値と巻線比が変更できるので、本実施形態において制御方法4では、各トランス4において、次の(a)、(b)を設定することとした。
【0093】
(a)各トランス4は、インダクタンス値が、制御IC42が予め規定された最小負荷および最大入力電圧の条件でトランス4のインダクタに流れる電流の状態を連続電流モードとして駆動させる場合の最小スイッチング・オン時間を基準オン時間としたときに、最小負荷および最大入力電圧の条件においてトランス4を駆動して基準オン時間よりも長いスイッチング・オン時間となるときのインダクタンス値として予め選定されている。
【0094】
(b)各トランス4は、臨界点の周期が駆動周期よりも長くなるように巻線比が設定されている。つまり、各トランス4は、トランス4における一次巻線と二次巻線との巻線比が、予め、制御IC42が最小負荷および最大入力電圧の条件で臨界動作モードとしてトランス4を駆動させる駆動周期を基準周期としたときに、最小負荷および最大入力電圧の条件でトランス4を基準周期よりも長い駆動周期で駆動させるときの巻線比として選定されている。
【0095】
また、制御方法4では、制御IC42は、スイッチングPWMパルスを出力することで、電界効果トランジスタTR40,TR41を介してトランス4を基準周期よりも長い駆動周期で駆動し、かつ、トランス4を基準オン時間よりも長いスイッチング・オン時間にさせることで、各トランス4のインダクタに流れる電流の状態を連続電流モードとなるように各トランス4を駆動させる。具体的な制御方法について図12および図13を参照して説明する。
【0096】
図12(a)の例では、駆動負荷=Hiのときにライン161aで動作周期が表され、駆動負荷=Loのときにライン162aで動作周期が表されている。また、スイッチング周波数が例えば200KHz(駆動周期=5μ秒)であると仮定する。この、設定周波数(1/設定動作周期)を示すライン163aは、ライン161aと交差するが、ライン162aとは交差していない。
【0097】
ここで、駆動負荷=Hiを駆動するトランス4のインダクタンス値を変更して大きくした場合、図12(a)のライン161aは、グラフ上で全体に嵩上げされて、図12(b)のライン161bの位置に移動する。図12(b)のライン163bは、設定周波数(1/設定動作周期)を示す。図12(b)において、ライン161bは、ライン163bと交差していないが、ライン161bの最小値がライン163bの値より大きいので、インダクタンス値を大きくした後には、グラフ上の駆動電源電圧の全範囲で連続電流モードとなるようにすることが可能である。
【0098】
また、駆動負荷=Loを駆動するトランス4のインダクタンス値を変更して大きくした場合、図12(a)のライン162aは、グラフ上で全体に嵩上げされて、図12(b)のライン162bの位置に移動する。図12(b)において、ライン162bは、駆動電源電圧6Vのときにライン163bと交差する。
【0099】
図13(a)の例では、駆動負荷=Hiのときにライン164aで動作周期が表され、駆動負荷=Loのときにライン165aで動作周期が表されている。このときに、駆動負荷=Hi,Loを駆動する各トランス4の巻線比を変更してある程度大きくした場合、図13(a)のライン164a,165aは、グラフ上で全体に嵩上げされる。遷移した後の状態を図13(b)に示す。図13(b)のライン166bは、仮定されたスイッチング周波数(例えば200KHz)を示す。図13(b)において、ライン165bは、図13(a)のライン165aがグラフ上で上方に移動した後の位置を示す。なお、図13(a)のライン164aは、図13(b)においてグラフの枠からはみ出ているので図示していない。
【0100】
このときに、駆動負荷=Loを駆動するトランス4の巻線比を変更してさらに大きくした場合、図13(b)のライン165bがグラフ上でさらに上方に移動し、図13(c)に示すように、ライン165cの位置に移動する。なお、図13(c)のライン166cは、仮定されたスイッチング周波数(例えば200KHz)を示す。
図13(c)のライン165cによれば、図13(b)のライン165bの状態のときよりも、連続電流モードとなる領域が広がっていることが分かる。
また、図13(c)のライン165cおよびライン166cによれば、臨界点の周期が駆動周期よりも長くなるように巻線比が設定されていることが分かる。
【0101】
図13(d)〜図13(f)はスイッチング時間を示すグラフであって、各グラフの横軸は、トランスを駆動させるための駆動電源電圧(トランスへの入力電圧)を示し、縦軸は、スイッチング・オン時間を示す。この例の場合、制御IC42の予め規定された最小負荷および最大入力電圧の条件とは、最小負荷が、駆動負荷=Loの負荷を示し、最大入力電圧が24Vを示す。また、図13(d)〜図13(f)では、連続電流モードで駆動するときのスイッチング時間をライン167で示す。したがって、最小負荷および最大入力電圧の条件で、トランス4のインダクタに流れる電流の状態を連続電流モードとして駆動させる場合の最小スイッチング・オン時間(基準オン時間)とは、この場合、図示するように1μ秒となる。
【0102】
図13(d)に示す例では、駆動負荷=Hiの負荷を断続モードで駆動するときのスイッチング時間をライン168aで示し、駆動負荷=Loの負荷を断続モードで駆動するときのスイッチング時間をライン169aで示す。このときに、断続モードで駆動する各トランス4のインダクタ値を変更してある程度大きくした場合、図13(d)のライン168a,169aは、グラフ上で全体に嵩上げされる。遷移した後の状態を図13(e)に示す。図13(e)において、ライン168bは、図13(d)のライン168aが移動した位置を示す。これによると、全駆動電源電圧範囲で、連続電流モードで駆動するときの最小スイッチング・オン時間(1μ秒)よりも長い(大きい)。
また、図13(e)において、ライン169bは、図13(d)のライン169aが移動した位置を示す。これによると、ライン169bは、最大入力電圧(24V)のときには、連続電流モードで駆動するときの最小スイッチング・オン時間(1μ秒)よりも、若干短い(小さい)。
【0103】
このときに、駆動負荷=Hi,Loを駆動する各トランス4のインダクタ値を変更してさらに大きくした場合、図13(e)のライン168b,169bがグラフ上でさらに上方に移動し、図13(f)に示すように、ライン168c,169cの位置に移動する。
これによると、ライン169cは、最大入力電圧(24V)のときには、連続電流モードで駆動するときの最小スイッチング・オン時間(1μ秒)よりも、若干長い(大きい)。
したがって、ライン169cによれば、駆動負荷=Loを駆動するトランス4のインダクタ値は、基準オン時間よりも長いスイッチング・オン時間となるときのインダクタンス値として選定されていることが分かる。
【0104】
(制御方法5)
本実施形態において制御方法5は、制御方法1〜制御方法4のいずれかにおいて、制御IC42は、各トランスに流れるインダクタ電流の状態を連続電流モードとなるように制御しているときに、さらに、複数のトランスのうち少なくとも1つは、制御IC42によってフィードバックに利用されるトランスであることを条件とする制御方法である。
そして、制御方法5では、フィードバックに利用されるトランスのスイッチング区間内における一次側のインダクタ電流の期間と二次側のインダクタ電流の期間との重なり期間の値は、フィードバックに利用されていないトランスの重なり期間の値よりも小さくなるように各トランスを駆動させることとした。
【0105】
上記のように制御する理由をここで補足する。例えば2つのトランスを1つの制御回路で駆動する場合、本実施形態のように、一方のトランスはフィードバック制御に利用されるが、他方のトランスは制御がきかない状態となる。これまで説明してきたように、双方のトランスの2つの出力が揃うには、連続電流モードの動作となっていることが望ましい。ただし、トランスなどには製造上のバラツキが存在するので、連続電流モードの状態がマージンの少ない設定の場合(図9(f)にて波形139の時刻t1のときの電流値等の大きさが少ない設定の場合)、制御側が連続電流モードであっても、制御されない側が断続モードとなる可能性がある。
【0106】
そのため、制御されない側は、制御側より深い連続電流モードである必要がある。逆に言えば、制御される側は、制御されない側より浅い連続電流モードである必要がある。
ここで、連続電流モードが深いとは、トランスのスイッチング区間内における一次側のインダクタ電流の期間と二次側のインダクタ電流の期間との重なり期間の値が大きいことを意味する(図9(f)参照)。逆に言えば、連続電流モードが浅いとは、前記重なり期間の値が小さいことを意味する(図9(f)参照)。
【0107】
以下に、具体的な制御方法について図14を参照して説明する。図14の例では、駆動負荷=Hiのときにライン171で動作周期が表され、駆動負荷=Loのときにライン172で動作周期が表されている。この例では、簡易的な方法として、同じ仕様のトランスを利用する場合を想定した。この場合、制御されない側の負荷を大きくすることで対応できる。つまり、制御されない側の負荷として、駆動負荷=Loの負荷を駆動するトランスの二次側出力に、ブリーダ抵抗を設ける。このようにすることで、ライン172をライン173の位置に嵩上げすることが可能である。
【0108】
以上説明したように、本実施形態の絶縁電源回路14は、各トランス4の一次側および二次側のインダクタに流れる電流が連続電流モードとなるように各トランス4を駆動させるので、各トランス4の出力電圧の誤差を、断続モードで動作する場合に比べて格段に低減させることができる。したがって、本実施形態の絶縁電源回路14によれば、各トランス4の出力電圧誤差の小さな1入力多出力の電源回路を小型化することができる。
【0109】
以上、本発明の電源回路の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではない。例えば、モータ制御インバータに用いる絶縁電源回路14として説明したが、他の用途にも用いることができる。
【0110】
また、本実施形態では、モータECU100は、PWM信号を出力してモータ110を駆動させている。しかし、これに限られず、PAM(Pulse Amplitude Modulation:パルス振幅変調方式)信号、PFM(Pulse Frequency Modulation:パルス周波数変調)信号、PDM(Pulse Density Modulation:パルス密度変調)信号、PPM(Pulse Position Modulation:パルス位置変調)信号、PCM(Pulse Code Modulation:パルス符号変調)信号のいずれによって、モータ110を駆動してもよい。
【0111】
また、本実施形態では、パワーモジュール11は、スイッチング素子としてIGBT素子11−1〜11−6を用いている。しかし、これに限られず、大出力用途としてGTO(Gate Turn-Off thyristor:ゲートターンオフサイリスタ)をスイッチング素子として用いてもよい。また、小出力用途としてパワーバイポーラトランジスタ、パワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)などをスイッチング素子として用いてもよい。
【符号の説明】
【0112】
1 モータ駆動システム
2 プリドライブ基板
4(4a,4b) トランス
10 インバータ回路
11 パワーモジュール
11−1〜11−6 IGBT素子
12 電源部
13(13−1〜13−3) 電流センサ
14 絶縁電源回路(電源回路)
20 ゲートドライブ回路
20−1〜20−6(20−n) ゲートドライブ回路
21−1〜21−6(21−n) ゲート駆動回路
30 高圧側マイコン回路
31 高圧側マイコン
42 制御IC(スイッチング制御回路)
100 モータECU
101 ECU基板
110 モータ(二次側負荷)
C12 平滑コンデンサ
C20−n,C30,C40 コンデンサ
D11−1〜D11−6 フライホイールダイオード
D11−n,D20−n,D30,D40 ダイオード
PC21−n,PC22−n,PC30 フォトカプラ
R11−n 抵抗
TR40,TR41 電界効果トランジスタ(スイッチング用トランジスタ)
Z40 負荷
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のトランスと、各トランスを駆動させるスイッチングPWMパルスを出力するスイッチング制御ICとを備えてトランス毎に複数の出力を得る電源回路であって、
トランス毎に設けられて前記トランスの一次側のインダクタに接続されて当該トランスへの入力電圧が印加されると共に、ゲート端子が前記スイッチング制御ICに接続されて前記ゲート端子に供給される前記スイッチングPWMパルスに応じて当該トランスへの前記入力電圧のスイッチングを行う複数のスイッチング用トランジスタを備え、
前記スイッチング制御ICは、前記各スイッチング用トランジスタを介して前記各トランスの一次側および二次側のインダクタに流れる電流がスイッチング周期内で電流値0とはならない状態を示す連続電流モードとなるように前記各トランスを駆動させることを特徴とする電源回路。
【請求項2】
前記スイッチング制御ICは、前記トランスの前記インダクタに流れる電流の状態を不連続電流モードと連続電流モードとの間の状態を示す臨界モードとして駆動させる場合のスイッチング周波数を基準周波数としたときに、前記トランスを駆動させる駆動周期を前記トランスへの入力電圧に応じて変化させるか、または、前記駆動周期を前記入力電圧によらず固定させて、前記基準周波数よりも高いスイッチング周波数で前記スイッチングPWMパルスを前記スイッチング用トランジスタに出力することで、前記トランスの前記インダクタに流れる電流の状態を前記連続電流モードとなるように前記各トランスを駆動させることを特徴とする請求項1に記載の電源回路。
【請求項3】
前記スイッチング制御ICは、前記トランスの前記インダクタに流れる電流の状態を不連続電流モードと連続電流モードとの間の状態を示す臨界モードとして駆動させる場合に前記トランスを駆動させる所定の駆動周期に応じた当該トランスへの入力電圧を基準電圧としたときに、前記スイッチングPWMパルスを前記スイッチング用トランジスタに出力して当該スイッチング用トランジスタを介して当該トランスに前記基準電圧よりも低い入力電圧を印加して前記所定の駆動周期で駆動させることで、前記トランスの前記インダクタに流れる電流の状態を前記連続電流モードとなるように前記各トランスを駆動させることを特徴とする請求項1に記載の電源回路。
【請求項4】
前記各トランスの二次側の出力端子間にブリーダ抵抗をそれぞれ備え、
前記スイッチング制御ICは、前記トランスの前記インダクタに流れる電流の状態を不連続電流モードと連続電流モードとの間の状態を示す臨界モードとして駆動させる場合において前記トランスにより所定の二次側負荷を作動させているときに当該二次側負荷を基準負荷としたときに、前記スイッチングPWMパルスを前記スイッチング用トランジスタに出力して当該スイッチング用トランジスタを介して当該トランスにより前記基準負荷と前記ブリーダ抵抗による負荷とを合わせた負荷全体を作動させることで、前記トランスの前記インダクタに流れる電流の状態を前記連続電流モードとなるように前記各トランスを駆動させることを特徴とする請求項1に記載の電源回路。
【請求項5】
前記各トランスは、
インダクタンス値が、前記スイッチング制御ICが予め規定された最小負荷および最大入力電圧の条件で当該トランスの前記インダクタに流れる電流の状態を前記連続電流モードとして駆動させる場合の最小スイッチング・オン時間を基準オン時間としたときに、前記最小負荷および最大入力電圧の条件において当該トランスを駆動して前記基準オン時間よりも長いスイッチング・オン時間となるときのインダクタンス値として予め選定されており、かつ、
当該トランスにおける一次巻線と二次巻線との巻線比が、予め、前記スイッチング制御ICが前記最小負荷および最大入力電圧の条件で前記臨界動作モードとして当該トランスを駆動させる駆動周期を基準周期としたときに、前記最小負荷および最大入力電圧の条件で当該トランスを前記基準周期よりも長い駆動周期で駆動させるときの巻線比として選定されており、
前記スイッチング制御ICは、スイッチングPWMパルスを出力することで、前記スイッチング用トランジスタを介して前記トランスを前記基準周期よりも長い駆動周期で駆動し、かつ、前記トランスを前記基準オン時間よりも長いスイッチング・オン時間にさせることで、前記各トランスの前記インダクタに流れる電流の状態を前記連続電流モードとなるように前記各トランスを駆動させることを特徴とする請求項1に記載の電源回路。
【請求項6】
前記複数のトランスは、前記スイッチング制御ICによってフィードバックに利用されるトランスを少なくとも1つ含み、
前記スイッチング制御ICは、前記各トランスに流れるインダクタ電流の状態を前記連続電流モードとなるように制御しているときに、前記フィードバックに利用されるトランスのスイッチング区間内における一次側のインダクタ電流の期間と二次側のインダクタ電流の期間との重なり期間の値は、前記フィードバックに利用されていないトランスの前記重なり期間の値よりも小さくなるように前記各トランスを駆動させることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の電源回路。
【請求項1】
複数のトランスと、各トランスを駆動させるスイッチングPWMパルスを出力するスイッチング制御ICとを備えてトランス毎に複数の出力を得る電源回路であって、
トランス毎に設けられて前記トランスの一次側のインダクタに接続されて当該トランスへの入力電圧が印加されると共に、ゲート端子が前記スイッチング制御ICに接続されて前記ゲート端子に供給される前記スイッチングPWMパルスに応じて当該トランスへの前記入力電圧のスイッチングを行う複数のスイッチング用トランジスタを備え、
前記スイッチング制御ICは、前記各スイッチング用トランジスタを介して前記各トランスの一次側および二次側のインダクタに流れる電流がスイッチング周期内で電流値0とはならない状態を示す連続電流モードとなるように前記各トランスを駆動させることを特徴とする電源回路。
【請求項2】
前記スイッチング制御ICは、前記トランスの前記インダクタに流れる電流の状態を不連続電流モードと連続電流モードとの間の状態を示す臨界モードとして駆動させる場合のスイッチング周波数を基準周波数としたときに、前記トランスを駆動させる駆動周期を前記トランスへの入力電圧に応じて変化させるか、または、前記駆動周期を前記入力電圧によらず固定させて、前記基準周波数よりも高いスイッチング周波数で前記スイッチングPWMパルスを前記スイッチング用トランジスタに出力することで、前記トランスの前記インダクタに流れる電流の状態を前記連続電流モードとなるように前記各トランスを駆動させることを特徴とする請求項1に記載の電源回路。
【請求項3】
前記スイッチング制御ICは、前記トランスの前記インダクタに流れる電流の状態を不連続電流モードと連続電流モードとの間の状態を示す臨界モードとして駆動させる場合に前記トランスを駆動させる所定の駆動周期に応じた当該トランスへの入力電圧を基準電圧としたときに、前記スイッチングPWMパルスを前記スイッチング用トランジスタに出力して当該スイッチング用トランジスタを介して当該トランスに前記基準電圧よりも低い入力電圧を印加して前記所定の駆動周期で駆動させることで、前記トランスの前記インダクタに流れる電流の状態を前記連続電流モードとなるように前記各トランスを駆動させることを特徴とする請求項1に記載の電源回路。
【請求項4】
前記各トランスの二次側の出力端子間にブリーダ抵抗をそれぞれ備え、
前記スイッチング制御ICは、前記トランスの前記インダクタに流れる電流の状態を不連続電流モードと連続電流モードとの間の状態を示す臨界モードとして駆動させる場合において前記トランスにより所定の二次側負荷を作動させているときに当該二次側負荷を基準負荷としたときに、前記スイッチングPWMパルスを前記スイッチング用トランジスタに出力して当該スイッチング用トランジスタを介して当該トランスにより前記基準負荷と前記ブリーダ抵抗による負荷とを合わせた負荷全体を作動させることで、前記トランスの前記インダクタに流れる電流の状態を前記連続電流モードとなるように前記各トランスを駆動させることを特徴とする請求項1に記載の電源回路。
【請求項5】
前記各トランスは、
インダクタンス値が、前記スイッチング制御ICが予め規定された最小負荷および最大入力電圧の条件で当該トランスの前記インダクタに流れる電流の状態を前記連続電流モードとして駆動させる場合の最小スイッチング・オン時間を基準オン時間としたときに、前記最小負荷および最大入力電圧の条件において当該トランスを駆動して前記基準オン時間よりも長いスイッチング・オン時間となるときのインダクタンス値として予め選定されており、かつ、
当該トランスにおける一次巻線と二次巻線との巻線比が、予め、前記スイッチング制御ICが前記最小負荷および最大入力電圧の条件で前記臨界動作モードとして当該トランスを駆動させる駆動周期を基準周期としたときに、前記最小負荷および最大入力電圧の条件で当該トランスを前記基準周期よりも長い駆動周期で駆動させるときの巻線比として選定されており、
前記スイッチング制御ICは、スイッチングPWMパルスを出力することで、前記スイッチング用トランジスタを介して前記トランスを前記基準周期よりも長い駆動周期で駆動し、かつ、前記トランスを前記基準オン時間よりも長いスイッチング・オン時間にさせることで、前記各トランスの前記インダクタに流れる電流の状態を前記連続電流モードとなるように前記各トランスを駆動させることを特徴とする請求項1に記載の電源回路。
【請求項6】
前記複数のトランスは、前記スイッチング制御ICによってフィードバックに利用されるトランスを少なくとも1つ含み、
前記スイッチング制御ICは、前記各トランスに流れるインダクタ電流の状態を前記連続電流モードとなるように制御しているときに、前記フィードバックに利用されるトランスのスイッチング区間内における一次側のインダクタ電流の期間と二次側のインダクタ電流の期間との重なり期間の値は、前記フィードバックに利用されていないトランスの前記重なり期間の値よりも小さくなるように前記各トランスを駆動させることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の電源回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−5461(P2013−5461A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130476(P2011−130476)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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