説明

電源装置およびこれを備えた空気調和機

【課題】高負荷時の電流検出手段での損失を低減することにより電流検出手段の小型化が行なえ、かつ、低負荷時の制御を安定させる電源装置を提供する。
【解決手段】電源装置に備えられた昇圧コイル12とダイオード13との間には2個のスイッチング素子が整流回路11の出力側に対して並列接続されている。また、スイッチング動作時に常にオンオフ動作を行う第1スイッチング素子16にシャント抵抗18が直列接続されている。電源装置の負荷の大きさに応じて駆動するスイッチング素子数を決定するので、高負荷時のシャント抵抗18での損失を低減することによりシャント抵抗18の小型化が行なえる。また、高負荷時のシャント抵抗18での損失を低減することができるので、シャント抵抗18の抵抗値を大きくして低負荷時のシャント抵抗18での検出レベルを上げることができ低負荷時の制御を安定させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置およびこれを備えた空気調和機に関わり、より詳細には、高負荷時の電流検出手段での損失を低減することにより電流検出手段の小型化が行なえ、かつ、低負荷時の制御を安定させる電源装置およびこれを備えた空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、力率改善を目的としたスイッチングコンバータを備え、各種の電気機器に搭載される電源装置では、スイッチング素子の駆動を電源装置の入力側に流れる電流が擬似的に入力電圧の相似形となるよう制御し、入力電圧と電源装置の入力側に流れる電流との位相差を少なくすることによって力率改善を行っているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の電源装置は、交流電源電圧を脈流電圧に整流する整流素子と、昇圧用チョークコイルと、スイッチング素子と、整流素子の出力側に並列接続され入力電圧を検出する入力電圧検出回路と、整流素子と負荷(スイッチング電源回路の出力端子に接続されるモータ等)との間に直列接続され昇圧用チョークコイルに流れる電流を検出する入力電流検出回路と、入力電圧検出回路や入力電流検出回路で検出した信号を入力しスイッチング素子をオンオフ制御する制御手段とを備えている。
【0004】
制御手段は、昇圧用チョークコイルを流れる電流を検出し、これが擬似的に入力電圧の相似形となるようスイッチング素子の駆動を行う。そして、制御手段は、入力電流検出回路で検出した現在の電流値と目標電流値とを比較し、現在の電流値が目標電流値より低い場合は、スイッチング素子をオンとして現在の電流値が目標電流値となるよう制御する。これにより、負荷に応じた大きさの入力電流を供給するとともに、入力電圧と入力電流との位相差を低減して力率改善を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−84355号公報(第4〜6頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記説明したスイッチング電源回路において、例えば、入力電流検出手段にシャント抵抗を使用する際、負荷が小さい場合はスイッチング素子をオンする時間が短く制御される。この時に流れるスイッチング電流値が小さくなるため、入力電流検出手段での検出レベルが小さくなって電流を正確に検出できず、制御が不安定となる虞がある。従って、低負荷時において安定した制御をおこなうためには、シャント抵抗の抵抗値を大きくして入力電流検出手段での検出レベルを上げる必要がある。しかしながら、シャント抵抗の抵抗値を大きくすると、大電流時のシャント抵抗での消費電力が大きくなって損失が増大するという問題があった。
【0007】
本発明は以上述べた問題点を解決し、高負荷時の電流検出手段での損失を低減することにより電流検出手段の小型化が行なえ、かつ、低負荷時の制御を安定させる電源装置およびこれを備えた空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するために、本発明の電源装置は、整流回路と出力端との間にインダクタとダイオードとが直列接続され、インダクタとダイオードとの間には少なくとも2個のスイッチング素子が整流回路の出力側に対して並列接続されている。また、スイッチング動作時に常にオンオフ動作を行う1個のスイッチング素子に電流検出手段が直列接続されている。そして、電源装置の負荷の大きさに応じて駆動するスイッチング素子数を決定し、高負荷時のスイッチング電流を分散させる。
【発明の効果】
【0009】
上記のように構成した電源装置では、電源装置の負荷の大きさに応じて駆動するスイッチング素子数を決定するので、高負荷時でスイッチング電流が大きい場合は、複数のスイッチング素子を同時にオンすることでスイッチング電流を分散させることができる。従って、低負荷時の電流検出手段での検出レベルを上げて低負荷時の制御を安定させるために電流検出手段の抵抗値を大きくしても、スイッチング電流の分散により高負荷時には電流検出手段での損失を低減することができる。さらには、電流検出手段での損失を低減することにより電流検出手段の小型化が行なえる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例である空気調和機の要部ブロック図である。
【図2】本発明の実施例における、スイッチング素子の駆動原理説明図である。
【図3】本発明の実施例における、室外機制御手段での処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいて詳細に説明する。実施例としては、室外機と室内機とを有する空気調和機において、室外機に備えられた電源装置を例に挙げて説明する。尚、本発明は以下の実施形態に限定されることはなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
【実施例】
【0012】
図1に示すように、本発明の空気調和機100は、室外機1と室内機3とで構成されている。室外機1は、整流回路11と、インダクタである昇圧コイル12と、ダイオード13と、インバータ14と、圧縮機15と、主スイッチング素子である第1スイッチング素子16と、副スイッチング素子である第2スイッチング素子17と、シャント抵抗18と、平滑コンデンサ19と、室外機制御手段20と、コンバータ制御手段25と、AND回路26と、乗算器27とを備えている。尚、コンバータ制御手段25は、乗算器27から後述する入力電流算出信号と空気調和機100の負荷の大きさとを入力し、昇圧および力率改善を行う従来の回路で構成される。
【0013】
尚、室外機1には、上記以外に熱交換器、アキュムレータ、四方弁や膨張弁等の弁類、排気ファン、冷媒配管、各種センサ等、室外機1の動作に必要な各種装置や部品が備えられているが、本発明に直接関係がないため詳細な説明は省略する。また、上述した構成のうち、インバータ14および圧縮機15(以下、個別に言及する必要がある場合を除き、これらを負荷と記載する)と室外機制御手段20とを除いたもので室外機1の電源装置が構成される。また、インバータ14には、インバータ14の動作を制御する図示しないインバータ制御手段が備えられており、圧縮機15(能力可変型圧縮機)に備えられた図示しない3相ブラシレスモータをPWM駆動している。インバータ制御手段は、例えば、PWMの駆動パルス幅で負荷の大きさ(高負荷/低負荷)を把握し、これを室外機制御手段20に出力している。
【0014】
整流回路11は、交流電源2から供給される交流電源電圧を整流し脈流電圧を得る回路であり、ブリッジダイオード等で構成されている。図1に示すように、整流回路12の入力側には第1ライン4および第2ライン5のそれぞれ一端が接続されている。また、第1ライン4および第2ライン5のそれぞれ他端は、室内機3内で交流電源2に接続されており、室内機3に備えられたスイッチ30をオンすると、上述したように整流回路11に交流電力が供給される。
【0015】
整流回路11の出力側の一端とインバータ14の入力側の一端との間には、昇圧コイル12とダイオード13とが直列接続されている。また、第1スイッチング素子16と第2スイッチング素子17のコレクタ端子は昇圧コイル12とダイオード13との間に接続されている。第1スイッチング素子16のエミッタ端子と整流回路11の出力側の他端とインバータ14の入力側の他端との間には、シャント抵抗18が直列接続されている。第2スイッチング素子17のエミッタ端子は整流回路11の出力側の他端とインバータ14の入力側の他端との間に接続されている。尚、インバータ14の入力側の一端および他端とは、電源装置の出力端に対応する。
【0016】
平滑コンデンサ19は、一端がダイオード13のカソード側とインバータ14の入力側の一端との間に、他端が整流回路11の出力側の他端とインバータ14の入力側の他端との間に、それぞれ接続されている。
【0017】
整流回路11から出力された脈流電圧は、ダイオード13を通過し平滑コンデンサ19で平滑化される。一方、第1スイッチング素子16がオンとなって昇圧コイル12が短絡されることにより昇圧コイル12に蓄えられたエネルギーは、第1スイッチング素子16がオフとなって開放となった際にダイオード13を通過して平滑コンデンサ19の電圧に上乗せされることによって昇圧が行われる。インバータ14は、入力した直流電圧を交流電圧に変換して圧縮機15の図示しない3相ブラシレスモータを駆動する。
【0018】
第1スイッチング素子16および第2スイッチング素子17は、同じ特性を有する絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor、以下IGBT。と記載する)である。尚、本実施例では、第1スイッチング素子16および第2スイッチング素子17は同じ特性を有するIGBTを使用しているが、同じ特性を有するMOS−FET等、別のスイッチング素子であってもよく、また、特性が異なる2種類のスイッチング素子であってもよい。
図1に示すように、第1スイッチング素子16のゲートはコンバータ制御手段25に接続されている。また、第2スイッチング素子17のゲートはAND回路26の出力端子に接続されている。
【0019】
室外機制御手段20は、室外機1の図示しない制御基板に設けられている。図1に示すように、室外機制御手段20は、マイコン21と、記憶部22と、通信部23と、センサ入力部24とを備えている。マイコン21には、室外機1の各センサからの検出信号がセンサ入力部24を介して入力されるとともに、室内機3から送信される室外機1の制御内容を含んだ通信データが通信部23を介して入力される。マイコン21は、これら入力された各種情報に基づいてインバータ14を制御する。
【0020】
記憶部22は、ROMやRAMで構成されており、室外機1の制御プログラムや各センサからの検出信号に対応した検出値、現在の室外機1の設定情報等を記憶する。通信部23は、室内機3との通信を行うインターフェイスである。センサ入力部24は、各センサでの検出信号が入力される。
【0021】
コンバータ制御手段25には、図示しない入力電圧検出手段で検出した入力電圧が入力されるとともに、シャント抵抗18で検出した電圧値Vfが乗算器27を介して入力される。また、コンバータ制御手段25は室外機制御手段20から、室外機制御手段20が取り込んだ負荷の大きさに対応する電圧を入力する。コンバータ制御手段25は、これら入力した信号により、電源装置の入力側を流れる電流が擬似的に入力電圧の相似形となるよう、スイッチング信号を出力する。
【0022】
AND回路26は、入力端子の一端が室外機制御手段20に、他端が第1スイッチング素子16のゲートとコンバータ制御手段25とに、それぞれ接続されている。また、AND回路26の出力端子は上述したように第2スイッチング素子17のゲートに接続されている。AND回路26は、コンバータ制御手段25から出力されるスイッチング信号が入力され、室外機制御手段20が出力するスイッチング素子の個数信号がHi信号の場合、第2スイッチング素子17のゲートにスイッチング信号を出力する。これにより第2スイッチング素子17も第1スイッチング素子16と同時にスイッチング駆動される。
【0023】
乗算器27は、入力端子の一端が第1スイッチング素子16とシャント抵抗18との間に接続され、他端がAND回路26と室外機制御手段20との間に接続されている。また、乗算器27の出力端子はコンバータ制御手段25に接続されている。乗算器27には、シャント抵抗18で検出した検出電圧が入力される。また、乗算器27には、室外機制御手段20が出力した個数信号、つまり駆動するスイッチング素子数に対応した電圧(例えば、駆動するスイッチング素子数が1個であれば0V(Lo信号)と、2個であれば5V(Hi信号))が入力される。乗算器27は、入力された駆動するスイッチング素子数に対応した電圧が0Vの場合は入力された検出電圧をそのまま、5Vの場合は入力された検出電圧を2倍とした電圧を、入力電流算出信号としてコンバータ制御手段25に出力する。
【0024】
室内機3は、上述したスイッチ30以外に、熱交換器、送風ファン、冷媒配管、各種センサ、室内機制御手段等、室内機3の動作に必要な各種装置や部品を備えているが、本発明に直接関係がないため詳細な説明は省略する。
【0025】
次に、図1および図2を用いて、本実施例による電源装置を備えた空気調和機100において、空気調和機100の負荷に対応しかつ電源装置の入力側を流れる電流が入力電圧の相似形となるよう、各スイッチング素子を駆動する際の原理、動作およびその効果について説明する。尚、シャント抵抗18が本発明の電流検出手段である。
【0026】
図2は、スイッチング素子の駆動原理を説明する図である。図2では、縦軸をシャント抵抗18で検出した検出電圧値Vf、横軸をスイッチング素子がオンした際にスイッチング素子を流れるスイッチング電流値Isとしている。縦軸のVyは、シャント抵抗18に加えることができる設計上の上限値を示している。横軸のIxは、昇圧コイル12に流すことができる電流の設計上の上限値であり、この時、電源装置の負荷が最大となる。尚、横軸には、上述したスイッチング電流値Isと対応づけて電源装置の負荷の大きさLを記載しており、負荷の最大値Lxはスイッチング電流値Isの上限値Ixに対応している。
【0027】
図2に示すように、スイッチング電流値IsがIx/2より小さい時、つまり、負荷の大きさLがLx/2より小さい時は、駆動するスイッチング素子は第1スイッチング素子16のみとしている。この時、スイッチング電流値Isは、第1スイッチング素子16をオンした際に第1スイッチング素子16に流れる電流値Iaと等しくなる。
【0028】
また、スイッチング電流値IsがIx/2以上、つまり、つまり、負荷の大きさLがLx/2以上である時は、第1スイッチング素子16と第2スイッチング素子17とを同時に駆動する。この時、スイッチング電流値Isは、第1スイッチング素子16をオンした際に第1スイッチング素子16に流れる電流値Iaと第2スイッチング素子17をオンした際に第2スイッチング素子17に流れる電流値Ibとを加えたものに等しくなる。
【0029】
シャント抵抗18の抵抗値は、昇圧コイル12に流せる電流の設計上の上限値に基づいて決定される。背景技術で説明したように、一般的にシャント抵抗18が第1スイッチング素子16のエミッタ端子あるいはコレクタ端子と整流回路11の出力側との間に接続されている場合は、シャント抵抗18に加えることができる電圧が設計上の上限値となった時に、昇圧コイル12に流すことができる電流が設計上の上限値となるよう、シャント抵抗18の抵抗値が設定される。
【0030】
昇圧コイル12に流すことができる電流の設計上の上限値は、電源装置の仕様から決定される昇圧コイル12により決まる。また、シャント抵抗18での電圧検出レベルは、シャント抵抗18の抵抗値の大きさで決まる。シャント抵抗18の抵抗値が大きい場合は、昇圧コイル12に流れる電流が大きくなるほどシャント抵抗18での消費電力が大きくなる、つまりはシャント抵抗18での損失が大きくなるので、損失を抑えるためにはシャント抵抗18の抵抗値をできるだけ小さくする必要がある。しかし、シャント抵抗18の抵抗値を小さくすると、電源装置の負荷が低くなる、つまり、昇圧コイル12に流れる電流が小さくなるほどシャント抵抗18での検出レベル(検出電圧値Vfのレベル)が小さくなって、シャント抵抗18で電圧を正確に検出できなくなる。
【0031】
電源装置では、入力電圧検出手段で検出した入力電圧と昇圧コイルを流れる電流を検出して取り込み、電源装置の入力側を流れる電流が擬似的に入力電圧の相似形となるようスイッチング素子をスイッチングする。従って、昇圧コイル12を流れる電流が正確に検出できないと、制御が不安定となる虞がある。
以上のことから、電源装置では、低負荷時つまり昇圧コイル12に流れる電流が小さい時はシャント抵抗18の抵抗値を高くして電圧検出レベルを上げるとともに、高負荷時つまり昇圧コイル12に流れる電流が大きい時はシャント抵抗に流れる電流を小さくして消費電力を小さく(損失を小さく)することが望まれる。
【0032】
そこで本実施例では、常にスイッチング動作を行う第1スイッチング素子16にシャント抵抗18を直列接続し、シャント抵抗18に加わる検出電圧値Vfを検出する。また、シャント抵抗18の抵抗値は、スイッチング電流値Isが上限値Ixの半値であるIx/2の時に検出電圧値VfがVyとなる抵抗値とする。
【0033】
上記のように構成し、シャント抵抗18を流れる電流ではなく負荷の大きさLに応じて駆動するスイッチング素子数を決定する。具体的には、図2に示すように、スイッチング電流値IsがIx/2(負荷の大きさLがLx/2)となるまでは第1スイッチング素子16のみ駆動し、スイッチング電流値IsがIx/2(負荷の大きさLがLx/2)以上となれば第1スイッチング素子16と第2スイッチング素子17とを同時に駆動し、スイッチング電流値Isを第1スイッチング素子16に流れる電流Iaと第2スイッチング素子17に流れる電流Ibとに分散する。尚、第1スイッチング素子16および第2スイッチング素子17が、本実施例のIGBTである場合は、それぞれに流れる電流がバランスするよう各スイッチング素子が動作するので、一方のスイッチング素子に電流が集中して流れることはない。
【0034】
負荷の大きさが所定の値以上(本実施例ではLx/2以上)となれば、第2スイッチング素子17も駆動するので、図2に示すように、負荷が高くなりスイッチング電流値Isが大きくなってもシャント抵抗18に加わる検出電圧値Vfは最大でVyまでしか上昇しない。シャント抵抗18が第1スイッチング素子16のエミッタ端子あるいはコレクタ端子と整流回路11の出力側との間に接続されている場合、本発明と同じ低負荷時の検出レベルを得ようとすれば電流検出手段での消費電力が大きくなって損失が増大するが、本発明ではシャント抵抗18の抵抗値を大きくしても高負荷時の損失を低減できるのでシャント抵抗18を小型化することができ、かつ、低負荷時の検出レベルを上げて安定した電源装置の制御を行うことができる。
【0035】
次に、図3に示すフローチャートを用い、本発明における電源装置を備えた空気調和機100の具体的な動作について、室外機制御手段20での処理を交えて説明する。図3に示すフローチャートは、室外機制御手段20のマイコン21での処理の流れを説明するものであり、STはステップを表しこれに続く数字はステップの番号を表している。尚、図3では本発明に関わる処理を中心に説明しており、室外機1における四方弁の切り替えや、使用者の指示した設定温度に対応した圧縮機15の回転数や各膨張弁の開度調整等、その他の処理の説明は省略している。
【0036】
使用者がリモコンを操作して室内機3に運転開始指示を行って、あるいは、予約運転開始時間となって空気調和機100の運転を開始すると、室内機3のスイッチ30がオンして室外機1に電源が投入される。電源が投入されて起動したマイコン21は、室外機1のコンバータ制御手段25を起動する(ST1)。起動したコンバータ制御手段25は、図示しない入力電圧検出手段で入力電圧を検出してこれを記憶する。また、コンバータ制御手段25は、検出電圧値Vfを検出して記憶する。尚、室外機制御手段20が出力する個数信号は、初期値がLo信号(0V)であるため、乗算器27の乗数は「1」となっている。
【0037】
次に、マイコン21は、インバータ14から現在の空気調和機100の負荷の大きさを取り込む(ST2)。尚、マイコン21は、取り込んだ負荷の大きさを記憶部22に記憶する。次に、マイコン21は、記憶した負荷の大きさに応じたスイッチング素子の駆動個数を決定する(ST3)。具体的には、マイコン21は、取り込んだ負荷の大きさと、記憶部22に記憶している負荷の閾値(負荷の大きさL:Lx/2)とを比べ、取り込んだ負荷が閾値より小さければ第1スイッチング素子16のみ、閾値以上であれば第1スイッチング素子16と第2スイッチング素子17とを、スイッチングするように個数信号を出力する。
【0038】
次に、マイコン21は、決定した駆動スイッチング素子数に応じた個数信号をAND回路26および乗算器27に出力する(ST4)。個数信号は、例えば、第1スイッチング素子16のみ駆動する場合はLo信号、第1スイッチング素子16と第2スイッチング素子17とを同時に駆動する場合はHi信号とする。
ST4の処理を行ったマイコン21は、ST2に処理を戻す。
【0039】
個数信号が入力された乗算器27は、シャント抵抗18で検出した検出電圧Vfに個数信号を乗じた入力電流算出信号をコンバータ制御手段25に出力する。コンバータ制御手段25は、入力電流算出信号を用いて昇圧コイル12を流れる入力電流を算出する。コンバータ制御手段25は、入力電流が擬似的に入力電圧と相似形となるよう、スイッチング信号を第1スイッチング素子16とAND回路26とに出力する。
【0040】
具体的には、コンバータ制御手段25は、第1スイッチング素子16およびAND回路26にHiのスイッチング信号を所定時間出力する。Hiの信号が入力された第1スイッチング素子16は所定時間オンする。また、AND回路26は、室外機制御手段20からHi信号とコンバータ制御手段25からのHi信号とが入力されていれば、第2スイッチング素子17にHi信号を出力し、第1スイッチング素子16は第1スイッチング素子16と同じ時間オンする。
【0041】
以上説明したように、本発明の電源装置では、電源装置の負荷の大きさに応じて駆動するスイッチング素子数を決定するので、スイッチング素子をオンした際に昇圧コイル12を流れる電流が大きい場合は、第1スイッチング素子16と第2スイッチング素子17とを同時にオンすることでシャント抵抗18に流れる電流Ifを低減することができる。従って、低負荷時の電流検出手段での検出レベルを上げて低負荷時の制御を安定させるために電流検出手段の抵抗値を大きくしても、スイッチング電流の分散により高負荷時には電流検出手段での損失を低減することができる。さらには、電流検出手段での損失を低減することにより電流検出手段の小型化が行なえる。
【0042】
また、本発明の電源装置を、本実施例で説明したような空気調和機に搭載すれば、空気調和機の負荷の大きさに応じて電源装置に備えられたスイッチング素子の駆動数を決定するので、高負荷時の電流検出手段での損失を低減することにより電流検出手段の小型化が行なえ、空気調和機の小型化が行える。また、高負荷時の電流検出手段での損失を低減することができるので、低負荷時の電流検出手段での検出レベルを上げることができ低負荷時の空調制御を安定させることができる。
【0043】
尚、以上説明した実施例では、主スイッチング素子1個と副スイッチング素子1個とを備えた電源装置を例に挙げて説明したが、要求される負荷に対応したスイッチング電流値の最大値や電流検出手段に加わる電圧の上限値に応じて副スイッチング素子を2個以上としてもよい。また、電流検出手段としてシャント抵抗を備えた場合について説明したが、シャント抵抗に代えてカレントトランス等別の検出手段を使用してもよい。
【0044】
また、駆動するスイッチング素子数の決定は室外機制御手段で行いこれに対応する個数信号をAND回路26および乗算器27に出力する場合について説明したが、室外機1の電源装置にコンパレータを設け、一方の入力端子に電源装置の負荷に対応した信号が、他方の入力端子に駆動するスイッチング素子の個数を決定する閾値に対応した信号が、それぞれ入力されるようにし、比較結果をAND回路26および乗算器27に出力することで、駆動するスイッチング素子の個数決定を室外機制御手段でソフトウェアを用いて実現するのではなくハードウェアを用いて実現してもよい。これにより、より高速な駆動スイッチング素子数切替えが可能になる。
【符号の説明】
【0045】
1 室外機
2 交流電源
3 室内機
4 第1ライン
5 第2ライン
11 整流回路
12 昇圧コイル
13 ダイオード
14 インバータ
15 圧縮機
16 第1スイッチング素子
17 第2スイッチング素子
18 シャント抵抗
19 平滑コンデンサ
20 室外機制御手段
21 マイコン
22 記憶部
23 通信部
24 センサ入力部
25 コンバータ制御手段
26 AND回路
27 乗算器
30 スイッチ
100 空気調和機
Ia 第1スイッチング素子オン時に流れる電流値
Ib 第2スイッチング素子オン時に流れる電流値
1s スイッチング電流値
Vf 検出電圧値
Ix 電源装置に流せる電流の設計上の上限値
Vy シャント抵抗に加わる電圧の設計上の上限値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
整流回路と、インダクタと、ダイオードと、平滑コンデンサと、前記インダクタをスイッチングする複数のスイッチング素子と、電流検出手段とを備えた電源装置であって、
複数の前記スイッチング素子は、スイッチング動作時に常にスイッチングする主スイッチング素子と、複数の副スイッチング素子とで構成され、
前記インダクタおよび前記ダイオードは、前記整流回路の出力側の一端と前記電源装置の一方の出力端との間に直列接続され、
前記主スイッチング素子と前記電流検出手段とは各々の一端が接続されるとともに、前記主スイッチング素子の他端は前記インダクタと前記ダイオードとの間に、前記電流検出手段の他端は前記整流回路の出力側の他端に、それぞれ接続され、
複数の前記副スイッチング素子は、一端が前記インダクタと前記ダイオードとの間に、他端が前記整流回路の出力側の他端に、それぞれ接続され、
前記平滑コンデンサは、一端が前記ダイオードのカソード側に、他端が他端が前記整流回路の出力側の他端に、それぞれ接続され、
前記電源装置に接続される負荷の大きさに対応してスイッチングする前記副スイッチング素子の個数を決定することを特徴とする電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電源装置を備えたことを特徴とする空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−151953(P2012−151953A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7639(P2011−7639)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)
【Fターム(参考)】