電源装置及び電気化学素子の膨張検知方法
【課題】 電気化学素子の膨張検知をより確実におこなうことができる電源装置を提供する。
【解決手段】 本発明に係る電源装置1は、電気化学素子10の下面10aの周縁領域11に、第1の回路部60が形成されており、保持基板48の搭載面48aに第2の回路部62が形成されている。そして、この第2の回路部62は第1の回路部60と接している。すなわち、電気化学素子10の膨張前は第1の回路部60と第2の回路部62とは導通状態にあり、電気化学素子10が膨張した際に第1の回路部60と第2の回路部62とは互いに断線される。そして、第1の回路部60と第2の回路部62との間の断線を検知回路38により検知することで、電気化学素子10の膨張が検知される。従って、この電源装置1においては、簡易な構成で電気化学素子10の膨張を検知することができる。
【解決手段】 本発明に係る電源装置1は、電気化学素子10の下面10aの周縁領域11に、第1の回路部60が形成されており、保持基板48の搭載面48aに第2の回路部62が形成されている。そして、この第2の回路部62は第1の回路部60と接している。すなわち、電気化学素子10の膨張前は第1の回路部60と第2の回路部62とは導通状態にあり、電気化学素子10が膨張した際に第1の回路部60と第2の回路部62とは互いに断線される。そして、第1の回路部60と第2の回路部62との間の断線を検知回路38により検知することで、電気化学素子10の膨張が検知される。従って、この電源装置1においては、簡易な構成で電気化学素子10の膨張を検知することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学素子を備える電源装置及び電気化学素子の膨張検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二次電池を内蔵する電源装置においては、電解液の分解等に起因して内圧が上昇することがあり、それにより二次電池が危険な状態となる場合がある。そこで、その内圧上昇を検知する技術が、例えば、下記特許文献1等に開示されている。
【0003】
この公報に開示された二次電池は、圧力センサ等のセンサを有する構成とすることで、二次電池の内圧の上昇を検知することができる。
【特許文献1】特開平2003−197268号公報
【特許文献2】特開平11−162527号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者らは、鋭意研究の末、簡易な構成により二次電池等の電気化学素子の内圧上昇の検知をおこなうことができる新たな技術を見い出した。
【0005】
本発明は、簡易な構成の電源装置及び電気化学素子の膨張検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電源装置は、素体と、素体を封入する封入体とを有する電気化学素子と、電気化学素子が固定される固定面を有する取付部と、電気化学素子の取付部側の面の可動領域、及び、電気化学素子の可動領域に対向する取付部の固定面の領域のうちの少なくとも一方に形成され、電気化学素子が膨張した際に断線する回路部と、回路部に接続され、回路部の断線を検知する検知部とを備える。
【0007】
この電源装置においては、電気化学素子及び取付部のうちの少なくとも一方に回路部が形成されている。この回路部は、電気化学素子の取付部側の面の可動領域、若しくは、電気化学素子の可動領域に対向する取付部の固定面の領域に形成されており、電気化学素子が膨張した際に断線する。すなわち、電気化学素子の膨張前に導通状態にある回路部が、電気化学素子が膨張した際に断線される。そして、回路部の断線を検知部により検知することで、電気化学素子の膨張が検知される。従って、この電源装置においては、簡易な構成で電気化学素子の膨張を検知することができる。
【0008】
本発明に係る電源装置は、素体と、素体を封入する封入体とを有する電気化学素子と、電気化学素子が固定される固定面を有する取付部と、電気化学素子の取付部側の面の可動領域に形成された第1の回路部と、取付部の固定面に形成され、第1の回路部と接する第2の回路部と、第1の回路部と第2の回路部との間の断線を検知する検知部とを備える。
【0009】
この電源装置においては、電気化学素子の取付部側の面の可動領域に第1の回路部が形成されており、取付部の固定面に第2の回路部が形成されている。そして、この第2の回路部は第1の回路部と接している。すなわち、電気化学素子の膨張前は第1の回路部と第2の回路部とは導通状態にあり、電気化学素子が膨張した際に互いに断線される。そして、第1の回路部と第2の回路部との間の断線を検知部により検知することで、電気化学素子の膨張が検知される。従って、この電源装置においては、簡易な構成で電気化学素子の膨張を検知することができる。
【0010】
本発明に係る電源装置は、素体と、素体を封入する封入体とを有する電気化学素子と、電気化学素子が固定される固定面を有する取付部と、電気化学素子の取付部側の面の可動領域、及び、電気化学素子の可動領域に対向する取付部の固定面の領域のうちの一方に形成された第1の回路部と、電気化学素子の取付部側の面の可動領域、及び、電気化学素子の可動領域に対向する取付部の固定面の領域のうちの他方に形成され、部分的に断線された断線区間が第1の回路部によって通電される第2の回路部と、第2の回路部に接続され、第2の回路部の断線を検知する検知部とを備える。
【0011】
この電源装置においては、電気化学素子の取付部側の面の可動領域、及び、電気化学素子の可動領域に対向する取付部の固定面の領域のうちの一方に第1の回路部が形成されており、他方に第2の回路部が形成されている。そして、この第2の回路部は部分的に断線された断線区間を有し、この断線区間は第1の回路部によって通電されている。すなわち、電気化学素子の膨張前は第2の回路部は導通状態にあり、電気化学素子が膨張した際に、第1の回路部が第2の回路部から離れて、第2の回路部が断線される。そして、第2の回路部の断線を検知部により検知することで、電気化学素子の膨張が検知される。従って、この電源装置においては、簡易な構成で電気化学素子の膨張を検知することができる。なお、電気化学素子の可動領域に対向する固定面の領域は、その可動領域に完全に重なる領域だけでなく、部分的に重なった領域も含まれるものとする。
【0012】
本発明に係る電源装置は、素体と、素体を封入する封入体とを有する電気化学素子と、電気化学素子が固定される固定面を有する取付部と、電気化学素子の取付部側の面の可動領域、及び、電気化学素子の可動領域に対向する取付部の固定面の領域のうちの少なくとも一方に形成され、電気化学素子が膨張した際に断線する回路部とを備え、回路部が電気化学素子の電極に接続されている。
【0013】
この電源装置においては、電気化学素子及び取付部のうちの少なくとも一方に回路部が形成されている。この回路部は、電気化学素子の取付部側の面の可動領域、若しくは、電気化学素子の可動領域に対向する取付部の固定面の領域に形成されており、電気化学素子が膨張した際に断線する。すなわち、電気化学素子の膨張前に導通状態にある回路部が、電気化学素子が膨張した際に断線される。そして、回路部は電気化学素子の電極に接続されているので、回路部の断線により、電気化学素子の充放電が停止されると共に、電気化学素子の膨張を検知することができる。従って、この電源装置においては、簡易な構成で電気化学素子の膨張を検知することができる。
【0014】
また、電気化学素子の取付部側の面の可動領域は、電気化学素子の取付部側の面の周縁領域である。周縁領域は、電気化学素子の膨張に応じて固定面から離れるように移動するため、周縁領域は可動領域として機能しうる。
【0015】
本発明に係る電気化学素子の膨張検知方法は、素体と、素体を封入する封入体とを有する電気化学素子が膨張したときに、電気化学素子が固定される固定面、及び、電気化学素子の固定面側の面のうちの少なくとも一方に形成された回路部が断線して、電気化学素子の膨張が検知される。
【0016】
この電気化学素子の膨張検知方法においては、電気化学素子及びその固定面のうちの少なくとも一方に形成された回路部が、電気化学素子が膨張した際に断線する。すなわち、電気化学素子の膨張前に導通状態にある回路部が、電気化学素子が膨張した際に断線される。従って、この電気化学素子の検知方法においては、簡易な構成で電気化学素子の膨張を検知することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、簡易な構成の電源装置及び電気化学素子の膨張検知方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するにあたり最良と思われる形態について詳細に説明する。なお、同一又は同等の要素については同一の符号を付し、説明が重複する場合にはその説明を省略する。
(第1実施形態)
【0019】
本願発明の第1実施形態に係る電源装置1について、図1〜図3を参照しつつ説明する。図1に示すように、電源装置1は、電気化学素子10と、電気化学素子10に取り付けられた制御基板30と、電気化学素子10及び制御基板30を保持する保持基板48とを備えている。
【0020】
電気化学素子10は、長方形薄板状のラミネート型リチウムイオン二次電池であり、図1及び図2に示すように、素体12と、素体12を封入した封入フィルム14(封入体)とを有している。素体12は、略平板状であり、負極16と正極18との間にセパレータ20が介在して構成されている。また、負極16には負極用リード22(例えば、銅製又はニッケル製)が接続されており、その負極用リード22の一端部が封入フィルム14から露出して、電気化学素子10の第1の電極(22)が形成されている。さらに、正極18には正極用リード24(例えば、アルミニウム製)が接続されており、その正極用リード24の一端部が封入フィルム14から露出して、電気化学素子10の第2の電極(24)が形成されている。
【0021】
封入フィルム14は、単層又は複数層の1枚のフィルムを素体12を包むように折り曲げて形成されており、重なり合う縁部同士は接着剤やヒートシールによって接合されている。この封入フィルム14としては、内側の層にAl箔、外側の層にポリプロピレン(PP)からなる層を採用した複合膜を利用することができる。この封入フィルム14には、リチウムイオンを含む電解質溶液26が充填されており、素体12は、電解質溶液26で満たされた封入フィルム14内に密閉状態で封入されている。そして、電気化学素子10の上下面は、素体12の表面形状と同様に、平坦な面となっている。
【0022】
制御基板30は、上述した電気化学素子10の負極22及び正極24が、一対の接続コード32,34を介して接続される基板である。また、制御基板30は、外部装置との入出力に用いられる入出力コネクタ36に接続されている。さらに、制御基板30上には、後述する検知回路(検知部)38を含む各種回路が形成されている。
【0023】
保持基板48は、本発明における取付部であり、四角形状の板状部材である。そして、上述した電気化学素子10は、この保持基板48の平坦な主面48aに、直接接するように固定されており、この面52aが電気化学素子10の搭載面(固定面)となっている。なお、この保持基板48は、必ずしも板状である必要はなく、平坦な面を有する部材であれば、厚みのある物体(例えば、ロボットや電気機器等)に適宜変更してもよい。
【0024】
そして、上述した電源装置1においては、図1〜図3に示すように、電気化学素子10の下面10aの周縁領域(可動領域)11であって電気化学素子10の短辺側の一方の周辺領域11に、第1の回路部60が形成されている。この第1の回路部60は、一本の等幅帯状の銅箔であり、電気化学素子10の封入フィルム14の表面に粘着材で貼り付けられている。そして、第1の回路部60の一端部は、接続ケーブル40を介して制御基板30の検知回路38に接続されている。さらに、第1の回路部60は、上記周縁部11において、電気化学素子10の短手方向に沿って真っ直ぐに延びる直線部分60aを有している。ここで、本発明における可動領域とは、後述する電気化学素子10の膨張に応じて固定面48aから離れるように移動する領域をいい、上記周辺領域11のように保持基板48に固着された領域以外の領域のことをいう。
【0025】
また、図1〜図3に示すように、保持基板48には、その保持基板48の主面48aに、上記周縁領域11に対応する領域に、第2の回路部62が形成されている。この第2の回路部62も、第1の回路部60同様、一本の等幅帯状の銅箔であり、保持基板48の主面48aに粘着材で貼り付けられている。そして、第2の回路部62の一端部は、接続ケーブル42を介して制御基板30の検知回路38に接続されている。さらに、第2の回路部62は、第1の回路部60の直線部分60aと略同一形状の直線部分62aは、第1の回路部60の直線部分60aと重なる位置に、第1の回路部60の直線部分60aと平行に形成されている。
【0026】
すなわち、保持基板48の主面48aに電気化学素子10が搭載された状態では、電気化学素子10と保持基板48との間において、第1の回路部60の直線部分60aと第2の回路部62の直線部分62aとが互いに接触している。なお、電気化学素子10は、所定の粘着材や両面テープにより保持基板48に貼り付けられる。電気化学素子10における粘着材の塗布領域や両面テープの貼付箇所は、保持基板48に固着される領域となるため、第1の回路部60が形成された上記周縁領域を可動領域とするために、その周縁領域を避ける必要がある。そして、この周縁領域以外の領域であれば、特に制限されず、例えば、電気化学素子10の下面10aの中央付近であってもよい。
【0027】
次に、電源装置1の配線状態について、図4を参照しつつ説明する。制御基板30に形成された検知回路38は、例えば図4に示す構成を有し、第1の回路部60と第2の回路部62とが導通状態のときには、入出力コネクタ36を介した電気化学素子10の充放電を可能な状態とし、第1の回路部60と第2の回路部62とが断線状態のときには、電気化学素子10の充放電を不可能な状態とする機能を有する。
【0028】
続いて、第1実施形態において電気化学素子10が膨張した状態について、図5及び図6を参照しつつ説明する。
【0029】
電気化学素子10は、過充電状態になると、その電圧が上昇して素子内の電解液が分解されて、内圧が上昇する。それにより、電気化学素子10は、図5及び図6に示すように、膨張してしまう。このとき、電気化学素子10は、その構造上、最大膨張位置が中央位置Cとなり、電気化学素子10の周縁部付近は保持基板48の搭載面48aから浮き上がる。
【0030】
このとき、電気化学素子10の膨張に伴って、電気化学素子10の下面10aに形成された第1の回路部60が、保持基板48から次第に離れていく。それにより、図5及び図6に示すように、第1の回路部60の直線部分60aと第2の回路部62の直線部分62aとが接触しない状態となり、第1の回路部60と第2の回路部62とが断線状態となる。すると、検知回路38が、第1の回路部60と第2の回路部62との断線を検知して、電気化学素子10を充放電できない状態にする。
【0031】
この電源装置1においては、電気化学素子10の下面10aの周縁領域11に、第1の回路部60が形成されており、保持基板48の搭載面48aに第2の回路部62が形成されている。そして、この第2の回路部62は第1の回路部60と接している。すなわち、電気化学素子10の膨張前は第1の回路部60と第2の回路部62とは導通状態にあり、電気化学素子10が膨張した際に第1の回路部60と第2の回路部62とは互いに断線される。そして、第1の回路部60と第2の回路部62との間の断線を検知回路38により検知することで、電気化学素子10の膨張が検知される。
【0032】
そして、電気化学素子10の膨張を検知した検知回路38が、電気化学素子10を充放電できない状態にすることで、電気化学素子10に異常が生じて膨張したときに電気化学素子10の充放電が停止されることとなる。
【0033】
従って、上述した電源装置1及び電気化学素子10の膨張検知方法においては、以上のような簡易な構成を有するものの、確かに電気化学素子10の膨張を検知することができる。
【0034】
また、従来の電気化学素子の膨張検知として、電気化学素子が膨張したときに、筐体の天井面に設けられた接触子に接触して、その接触を検知することによって電気化学素子の膨張を検知するものがある。ところが、このような場合には、電気化学素子と接触子との接点不良によって、接触子が機能せず、高い確実性で膨張検知をおこなうことが困難であった。例えば、接触子の位置や姿勢が変わって電気化学素子が接触できない状態になったり、接触子の表面に絶縁酸化膜が形成されて接触子が機能しない状態になったりすることが考えられる。
【0035】
上述した第1実施形態では、電気化学素子10の膨張前には第1及び第2の回路部60,62は導通状態にあり、電気化学素子10の膨張時には第1及び第2の回路部60,62が断線状態になるため、上記接点不良の問題が効果的に回避されている。従って、上述した電源装置1及び電気化学素子10の膨張検知方法においては、高い確実性で電気化学素子10の膨張検知をおこなうことができる。その上、上記従来の膨張検出においては筐体が必須の構成要素であるが、第1実施形態では、筐体がない電源装置1で膨張検出ができる構成となっている。そのため、電気化学素子10の厚さ方向に関して、設置スペースとして電気化学素子10の厚さのスペースがあれば十分であり、従来に比べて省スペース化を図ることができる。
【0036】
上述した態様では、第1の回路部60の直線部分60aと第2の回路部62の直線部分62とが、電気化学素子10の膨張を検知するセンシング部分となっている。このセンシング部分は、電気化学素子10の最大膨張位置(すなわち、中央位置C)からの距離に応じて膨張検知の感度が変わる。そのため、上記センシング部分の位置を、電気化学素子10の最大膨張位置からの距離が変わるように変更することで、所望の検知感度を得ることができる。
【0037】
また、電気化学素子10が膨張していない通常の状態において、第1及び第2の回路部60,62が導通されているため、電源装置1の検品時等に、第1及び第2の回路部60,62の通電を検査することで、電源装置1の膨張検知の機能がきちんと作動することを確認することができる。加えて、製品の中から組立不良等の不良品を容易に検出することができる。
【0038】
なお、複数の電気化学素子10を直列に接続して利用する場合には、図7に示すような配線状態にすればよい。すなわち、電気化学素子10の電極同士を接続して直列接続するとと共に、第1及び第2の回路60,62も直列に接続し、いずれかの第1及び第2の回路部60,62の対が断線したときに、検知回路38によって全ての電気化学素子10の充放電を停止させる態様も可能である。
【0039】
また、第1及び第2の回路部60,62の配線状態を、図8のように変更することもできる。すなわち、図8に示すように、第1及び第2の回路部60,62を、電気化学素子10の第1及び第2の電極22,24の一方に直列に接続した場合には、電気化学素子10が膨張して第1の回路部60と第2の回路部62とが断線すると、電気化学素子10の充放電が停止される。そのため、この充放電の停止により、電気化学素子10の膨張を検知することができる。従って、このような態様によれば、上述した電源装置1の効果に加えて、検出回路38を省略することができるという効果も得ることができる。その結果、電源装置1の構成の簡素化や小型化、コスト低減等を実現することができる。
(第2実施形態)
【0040】
本願発明の第2実施形態に係る電源装置1Aについて、図9〜図11を参照しつつ説明する。図9に示すように、電源装置1Aは、電気化学素子10と、電気化学素子10に取り付けられた制御基板30と、電気化学素子10及び制御基板30を収容する筐体50とを備えており、上述した保持基板48が筐体50となっている点でのみ、第1実施形態に係る電源装置1と異なる。
【0041】
筐体50は、電気化学素子10を上下方向から挟む平板状の底板部52及び天板部54と、底板部52の周縁部と天板部54の周縁部とを連結する側板部56とで構成される四角形状の樹脂ケースである。なお、この筐体50は、その形状及び構成材料と適宜変更することができ、例えば、円板状のアルミニウム缶等であってもよい。
【0042】
そして、電気化学素子10は、本発明における取付部である筐体50の底板部52の平坦な内面(上面)52aに、直接接するように固定されており、この面52aが電気化学素子10の搭載面(固定面)となっている。そして、図9〜図11に示すように、筐体50には、その底板部52の内面52aに、電気化学素子10の周縁領域11に対応する領域に、第2の回路部62が形成されている。
【0043】
すなわち、筐体50の搭載面52aに電気化学素子10が搭載された状態では、電気化学素子10と筐体50底板部52との間において、第1の回路部60の直線部分60aと第2の回路部62の直線部分62aとが互いに接触している。
【0044】
この第2実施形態においても、第1実施形態同様、電気化学素子10は膨張したときには、図12及び図13に示すように、その構造上、最大膨張位置が中央位置Cとなり、電気化学素子10の周縁部付近は筐体50の底板部52の搭載面52aから浮き上がる。また、電気化学素子10の中央位置C付近は、筐体50の天板部54の天井面に接触する。
【0045】
このとき、電気化学素子10の膨張に伴って、電気化学素子10の下面10aに形成された第1の回路部60が、筐体部50の底板部52から次第に離れていく。それにより、図12及び図13に示すように、第1の回路部60の直線部分60aと第2の回路部62の直線部分62aとが接触しない状態となり、第1の回路部60と第2の回路部62とが断線状態となる。すると、検知回路38が、第1の回路部60と第2の回路部62との断線を検知して、電気化学素子10を充放電できない状態にする。
【0046】
この電源装置1Aにおいては、電気化学素子10の下面10aの周縁領域11に、第1の回路部60が形成されており、筐体部50の底板部52の搭載面52aに第2の回路部62が形成されている。そして、この第2の回路部62は第1の回路部60と接している。すなわち、電気化学素子10の膨張前は第1の回路部60と第2の回路部62とは導通状態にあり、電気化学素子10が膨張した際に第1の回路部60と第2の回路部62とは互いに断線される。そして、第1の回路部60と第2の回路部62との間の断線を検知回路38により検知することで、電気化学素子10の膨張が検知される。
【0047】
そして、電気化学素子10の膨張を検知した検知回路38が、電気化学素子10を充放電できない状態にすることで、電気化学素子10に異常が生じて膨張したときに電気化学素子10の充放電が停止されることとなる。
【0048】
従って、上述した電源装置1Aにおいては、以上のような簡易な構成を有するものの、第1実施形態に係る電源装置1同様、確かに電気化学素子10の膨張を検知することができる。
【0049】
また、上述した第2実施形態でも、電気化学素子10の膨張前には第1及び第2の回路部60,62は導通状態にあり、電気化学素子10の膨張時には第1及び第2の回路部60,62が断線状態になるため、上記接点不良の問題が効果的に回避されている。従って、上述した電源装置1Aにおいても、高い確実性で電気化学素子10の膨張検知をおこなうことができる。
【0050】
また、電気化学素子10が膨張していない通常の状態において、第1及び第2の回路部60,62が導通されているため、電源装置1Aの検品時等に、第1及び第2の回路部60,62の通電を検査することで、電源装置1Aの膨張検知の機能がきちんと作動することを確認することができる。加えて、製品の中から組立不良等の不良品を容易に検出することができる。
【0051】
さらに、電気化学素子10が搭載される取付部として、電気化学素子10自体が取付部となる態様もあり得る。すなわち、図14に示すように、筐体50内に複数の電気化学素子10を重ねて収容する電源装置1Bの場合、互いの対向面10a,10aに、上述した第1及び第2の回路部60,62を形成する。この場合、第1の回路部60を取り付ける電気化学素子10及び第2の回路部62を取り付ける電気化学素子10は、適宜置換可能である。図14に示す複数の電気化学素子10の態様であっても、少なくとも1つの電気化学素子10が膨張すると、第1の回路部60と第2の回路部62とが断線するため、検知回路38によって断線を検知することができる。
【0052】
また、電気化学素子10が搭載される取付部として、2つの電気化学素子10の間に介在するプレートが取付部となる態様もあり得る。すなわち、図15に示す電源装置1Cのように、筐体50内に複数の電気化学素子10を重ねて収容する場合に、それらの間にプレート58を介在させて、このプレート58に第2の回路部62を形成する態様であってもよい。このプレート58は、筐体50に固定することで、プレート58の両面58a,58bにおいて電気化学素子10を保持することができるため、両側に配置された電気化学素子10それぞれに十分な膨張スペースを設けることができる。図15に示す態様であっても、電気化学素子10が膨張すると、第1の回路部60と第2の回路部62とが断線するため、検知回路38によって断線を検知することができる。
(第3実施形態)
【0053】
次に、本発明の第3実施形態に係る電源装置1Dについて、図16〜図18を参照しつつ説明する。この第3実施形態に係る電源装置1Dは、形成される回路の形状の点でのみ上述した第2実施形態に係る電源装置1Aと異なっており、その他の点については電源装置1Aと同様又は同等である。
【0054】
すなわち、第3実施形態に係る電源装置1Dには、上述した電源装置1Aの第1及び第2の回路部60,62の代わりに、第1及び第2の回路部64,66が形成されている。
【0055】
第1の回路部64は、四角形状の銅箔であり、電気化学素子10の下面10aの周縁領域11であって電気化学素子10の短辺側の一方の周辺領域11に粘着材で貼り付けられている。一方、第2の回路部66は、二本の等幅帯状の銅箔であり、底板部52の内面52aに粘着材で貼り付けられている。なお、二本の銅箔のそれぞれの一端部は、接続ケーブル40,42を介して制御基板30の検知回路38に接続されている。また、二本の銅箔のそれぞれの他端部は、上記周縁領域11に対応する領域において互いに近接配置されて、断線区間66a(図17参照)を形成している。そして、図16及び図17に示すように、上述した第1の回路部64は、第2の回路部66の断線区間66aに掛架される位置に配置されている。そのため、筐体50の搭載面52aに電気化学素子10が搭載された状態では、図17(a)に示すように、電気化学素子10と筐体50底板部52との間において、第2の回路部66に第1の回路部64が接触して、第2の回路部64の導通が図られている。
【0056】
なお、電源装置1Dの配線状態は図18に示すとおりとなっており、制御基板30に形成された検知回路38は、第2の回路部66が導通状態のときには電気化学素子10の充放電を可能な状態とし、第2の回路部66が断線状態のときには、電気化学素子10の充放電を不可能な状態とする機能を有する。
【0057】
続いて、第3実施形態において電気化学素子10が膨張した状態について、図17を参照しつつ説明する。
【0058】
電気化学素子10は、過充電状態になると、その電圧が上昇して素子内の電解液が分解されて、内圧が上昇する。それにより、電気化学素子10は、図17(a)及び(b)に示すように膨張し、その膨張に伴って、電気化学素子10の下面10aに形成された第1の回路部64が、筐体部50の底板部52から次第に離れていく。それにより、第2の回路部66の断線区間66aを、第1の回路部64が繋がない状態となり、第2の回路部66が断線状態となる。すると、検知回路38が、第2の回路部66の断線を検知して、電気化学素子10を充放電できない状態にする。
【0059】
この電源装置1Dにおいても、第2実施形態に係る電源装置1A同様、電気化学素子10の下面10aの周縁領域11に形成された第1の回路部64が、電気化学素子10の膨張に伴って、筐体部50の底板部52の搭載面52aに形成された第2の回路部66から離れる。すなわち、電気化学素子10の膨張前は第1の回路部64と第2の回路部66とが接して第2の回路部66が導通状態にあり、電気化学素子10が膨張した際に第1の回路部64と第2の回路部66とが離れて第2の回路部66が断線される。そして、第2の回路部66の断線を検知回路38により検知することで、電気化学素子10の膨張が検知される。
【0060】
従って、上述した電源装置1Dにおいては、以上のような簡易な構成を有するものの、第1及び第2実施形態に係る電源装置1,1A同様、確かに電気化学素子10の膨張を検知することができる。
【0061】
また、第3実施形態でも、第1及び第2実施形態同様、電気化学素子10の膨張前には第1及び第2の回路部60,62は導通状態にあり、電気化学素子10の膨張時には第1及び第2の回路部60,62が断線状態になるため、上記接点不良の問題が効果的に回避されている。従って、上述した電源装置1Dにおいても、高い確実性で電気化学素子10の膨張検知をおこなうことができる。
【0062】
なお、第1及び第2の回路部64,66の配線状態は、図19のように変更することもできる。すなわち、図19に示すように、第2の回路部66を、電気化学素子10の第1及び第2の電極22,24の一方に直列に接続した場合には、電気化学素子10が膨張して第2の回路部66が断線すると、電気化学素子10の充放電が停止される。そのため、この充放電の停止により、電気化学素子10の膨張を検知することができる。従って、このような態様によれば、上述した電源装置1Dの効果に加えて、検出回路38を省略することができるという効果も得ることができる。その結果、電源装置1Dの構成の簡素化や小型化、コスト低減等を実現することができる。
(第4実施形態)
【0063】
次に、本発明の第4実施形態に係る電源装置1Eについて、図20〜図22を参照しつつ説明する。この第4実施形態に係る電源装置1Eは、形成される回路の形状の点でのみ上述した第2実施形態及び第3実施形態に係る電源装置1A,1Dと異なっており、その他の点については電源装置1A,1Dと同様又は同等である。
【0064】
すなわち、第4実施形態に係る電源装置1Eには、上述した第3実施形態に係る電源装置1Dの第1及び第2の回路部64,66の代わりに、回路部68が形成されている。
【0065】
この回路部68は、二本の等幅帯状の銅箔であり、底板部52の内面52aに粘着材で貼り付けられている。この回路部68の二本の銅箔のそれぞれの一端部は、接続ケーブル40,42を介して制御基板30の検知回路38に接続されている。また、二本の銅箔のそれぞれの他端部は、電気化学素子10の下面10aの周縁領域11であって電気化学素子10の短辺側の一方の周辺領域11に対応する領域において互いに近接配置されて、断線区間68a(図21参照)を形成している。そして、図20及び図21に示すように、回路部68の断線区間68aには、バネ性を有する接点スイッチ70が設けられている。そのため、筐体50の搭載面52aに電気化学素子10が搭載された状態では、図21(a)に示すように、電気化学素子10と筐体50底板部52との間において、接点スイッチ70が回路部68を繋いで、回路部68の導通が図られている。
【0066】
なお、電源装置1Eの配線状態は図22に示すとおりとなっており、制御基板30に形成された検知回路38は、回路部68が導通状態のときには電気化学素子10の充放電を可能な状態とし、回路部68が断線状態のときには、電気化学素子10の充放電を不可能な状態とする機能を有する。
【0067】
続いて、第4実施形態において電気化学素子10が膨張した状態について、図21を参照しつつ説明する。
【0068】
電気化学素子10は、過充電状態になると、その電圧が上昇して素子内の電解液が分解されて、内圧が上昇する。それにより、電気化学素子10は、図21(a)及び(b)に示すように膨張し、その膨張に伴って、接点スイッチ70に対する電気化学素子10の下面10aからの押圧力が低下し、接点スイッチ70が切れる。それにより、回路部68の断線区間68aを、接点スイッチ70が繋がない状態となり、回路部68が断線状態となる。すると、検知回路38が、回路部68の断線を検知して、電気化学素子10を充放電できない状態にする。
【0069】
この電源装置1Eにおいても、第1〜3実施形態に係る電源装置1,1A,1D同様、電気化学素子10の膨張に伴って、筐体部50の底板部52の搭載面52aに形成された回路部68の、電気化学素子10の下面10aの周縁領域11に対応する位置の接点スイッチ70が回路部68を断線させる。すなわち、電気化学素子10の膨張前は接点スイッチ70による通電で回路部68が導通状態にあり、電気化学素子10が膨張した際に接点スイッチ70が切れて回路部68が断線される。そして、第2の回路部68の断線を検知回路38により検知することで、電気化学素子10の膨張が検知される。
【0070】
従って、上述した電源装置1Eにおいては、以上のような簡易な構成を有するものの、第1〜3実施形態に係る電源装置1,1A,1D同様、確かに電気化学素子10の膨張を検知することができる。
【0071】
また、第4実施形態でも、第1〜第3実施形態同様、電気化学素子10の膨張前には回路部68は導通状態にあり、電気化学素子10の膨張時には回路部68が断線状態になるため、上記接点不良の問題が効果的に回避されている。従って、上述した電源装置1Eにおいても、高い確実性で電気化学素子10の膨張検知をおこなうことができる。
【0072】
なお、回路部68の配線状態は、図23のように変更することもできる。すなわち、図23に示すように、回路部68を、電気化学素子10の第1及び第2の電極22,24の一方に直列に接続した場合には、電気化学素子10が膨張して回路部68が断線すると、電気化学素子10の充放電が停止される。そのため、この充放電の停止により、電気化学素子10の膨張を検知することができる。従って、このような態様によれば、上述した電源装置1Eの効果に加えて、検出回路38を省略することができるという効果も得ることができる。その結果、電源装置1Eの構成の簡素化や小型化、コスト低減等を実現することができる。
【0073】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、電気化学素子として、リチウムイオン二次電池についてのみ説明したが、その他の二次電池や、電気二重層キャパシタ等の素子にも適用可能である。また、検知回路(検知部)が回路の断線を検知する場合に、検知回路が、電気化学素子の充放電を停止させる制御でなく、充放電のレベルを低減させる制御をおこなうようにしてもよい。なお、上述した実施形態においては、封入体として封入フィルムを例に説明したが、例えば、素体を封入した封入フィルムを金属ケース(例えば、アルミニウム缶)に収容して、このケースと封入フィルムとによって封入体を構成する態様も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電源装置の概略構成を示した図である。
【図2】図1に示した電源装置のII−II線断面図である。
【図3】図1に示した電源装置のIII−III線断面図である。
【図4】図1に示した電源装置の配線図である。
【図5】図2の断面において膨張時における電気化学素子の状態を示した図である。
【図6】図3の断面において膨張時における電気化学素子の状態を示した図である。
【図7】複数の電気化学素子が直列接続された状態を示した配線図である。
【図8】図1に示した電源装置の異なる配線状態を示した図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る電源装置の概略構成を示した図である。
【図10】図9に示した電源装置のX−X線断面図である。
【図11】図9に示した電源装置のXI−XI線断面図である。
【図12】図10の断面において膨張時における電気化学素子の状態を示した図である。
【図13】図11の断面において膨張時における電気化学素子の状態を示した図である。
【図14】図9に示した電源装置の異なる態様を示した図である。
【図15】図9に示した電源装置の異なる態様を示した図である。
【図16】本発明の第3実施形態に係る電源装置1の概略構成を示した図である。
【図17】図16に示した電源装置のXVII−XVII線断面図であり、(a)は膨張前の電気化学素子の状態を示した図、(b)は膨張時における電気化学素子の状態を示した図である。
【図18】図16に示した電源装置の配線図である。
【図19】図16に示した電源装置の異なる配線状態を示した図である。
【図20】本発明の第4実施形態に係る電源装置の概略構成を示した図である。
【図21】図20に示した電源装置のXXI−XXI線断面図であり、(a)は膨張前の電気化学素子の状態を示した図、(b)は膨張時における電気化学素子の状態を示した図である。
【図22】図20に示した電源装置の配線図である。
【図23】図20に示した電源装置の異なる配線状態を示した図である。
【符号の説明】
【0075】
1,1A,1B,1C,1D,1E…電源装置、10…電気化学素子、10a…下面、11…周縁領域、12…素体、14…封入フィルム、22,24…電極、30…制御基板、38…検知回路、48…保持基板、48a…主面、50…筐体、52…底板部、52a…内面、60,62,64,66,68…回路部、66a,68a…断線区間。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学素子を備える電源装置及び電気化学素子の膨張検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二次電池を内蔵する電源装置においては、電解液の分解等に起因して内圧が上昇することがあり、それにより二次電池が危険な状態となる場合がある。そこで、その内圧上昇を検知する技術が、例えば、下記特許文献1等に開示されている。
【0003】
この公報に開示された二次電池は、圧力センサ等のセンサを有する構成とすることで、二次電池の内圧の上昇を検知することができる。
【特許文献1】特開平2003−197268号公報
【特許文献2】特開平11−162527号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者らは、鋭意研究の末、簡易な構成により二次電池等の電気化学素子の内圧上昇の検知をおこなうことができる新たな技術を見い出した。
【0005】
本発明は、簡易な構成の電源装置及び電気化学素子の膨張検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電源装置は、素体と、素体を封入する封入体とを有する電気化学素子と、電気化学素子が固定される固定面を有する取付部と、電気化学素子の取付部側の面の可動領域、及び、電気化学素子の可動領域に対向する取付部の固定面の領域のうちの少なくとも一方に形成され、電気化学素子が膨張した際に断線する回路部と、回路部に接続され、回路部の断線を検知する検知部とを備える。
【0007】
この電源装置においては、電気化学素子及び取付部のうちの少なくとも一方に回路部が形成されている。この回路部は、電気化学素子の取付部側の面の可動領域、若しくは、電気化学素子の可動領域に対向する取付部の固定面の領域に形成されており、電気化学素子が膨張した際に断線する。すなわち、電気化学素子の膨張前に導通状態にある回路部が、電気化学素子が膨張した際に断線される。そして、回路部の断線を検知部により検知することで、電気化学素子の膨張が検知される。従って、この電源装置においては、簡易な構成で電気化学素子の膨張を検知することができる。
【0008】
本発明に係る電源装置は、素体と、素体を封入する封入体とを有する電気化学素子と、電気化学素子が固定される固定面を有する取付部と、電気化学素子の取付部側の面の可動領域に形成された第1の回路部と、取付部の固定面に形成され、第1の回路部と接する第2の回路部と、第1の回路部と第2の回路部との間の断線を検知する検知部とを備える。
【0009】
この電源装置においては、電気化学素子の取付部側の面の可動領域に第1の回路部が形成されており、取付部の固定面に第2の回路部が形成されている。そして、この第2の回路部は第1の回路部と接している。すなわち、電気化学素子の膨張前は第1の回路部と第2の回路部とは導通状態にあり、電気化学素子が膨張した際に互いに断線される。そして、第1の回路部と第2の回路部との間の断線を検知部により検知することで、電気化学素子の膨張が検知される。従って、この電源装置においては、簡易な構成で電気化学素子の膨張を検知することができる。
【0010】
本発明に係る電源装置は、素体と、素体を封入する封入体とを有する電気化学素子と、電気化学素子が固定される固定面を有する取付部と、電気化学素子の取付部側の面の可動領域、及び、電気化学素子の可動領域に対向する取付部の固定面の領域のうちの一方に形成された第1の回路部と、電気化学素子の取付部側の面の可動領域、及び、電気化学素子の可動領域に対向する取付部の固定面の領域のうちの他方に形成され、部分的に断線された断線区間が第1の回路部によって通電される第2の回路部と、第2の回路部に接続され、第2の回路部の断線を検知する検知部とを備える。
【0011】
この電源装置においては、電気化学素子の取付部側の面の可動領域、及び、電気化学素子の可動領域に対向する取付部の固定面の領域のうちの一方に第1の回路部が形成されており、他方に第2の回路部が形成されている。そして、この第2の回路部は部分的に断線された断線区間を有し、この断線区間は第1の回路部によって通電されている。すなわち、電気化学素子の膨張前は第2の回路部は導通状態にあり、電気化学素子が膨張した際に、第1の回路部が第2の回路部から離れて、第2の回路部が断線される。そして、第2の回路部の断線を検知部により検知することで、電気化学素子の膨張が検知される。従って、この電源装置においては、簡易な構成で電気化学素子の膨張を検知することができる。なお、電気化学素子の可動領域に対向する固定面の領域は、その可動領域に完全に重なる領域だけでなく、部分的に重なった領域も含まれるものとする。
【0012】
本発明に係る電源装置は、素体と、素体を封入する封入体とを有する電気化学素子と、電気化学素子が固定される固定面を有する取付部と、電気化学素子の取付部側の面の可動領域、及び、電気化学素子の可動領域に対向する取付部の固定面の領域のうちの少なくとも一方に形成され、電気化学素子が膨張した際に断線する回路部とを備え、回路部が電気化学素子の電極に接続されている。
【0013】
この電源装置においては、電気化学素子及び取付部のうちの少なくとも一方に回路部が形成されている。この回路部は、電気化学素子の取付部側の面の可動領域、若しくは、電気化学素子の可動領域に対向する取付部の固定面の領域に形成されており、電気化学素子が膨張した際に断線する。すなわち、電気化学素子の膨張前に導通状態にある回路部が、電気化学素子が膨張した際に断線される。そして、回路部は電気化学素子の電極に接続されているので、回路部の断線により、電気化学素子の充放電が停止されると共に、電気化学素子の膨張を検知することができる。従って、この電源装置においては、簡易な構成で電気化学素子の膨張を検知することができる。
【0014】
また、電気化学素子の取付部側の面の可動領域は、電気化学素子の取付部側の面の周縁領域である。周縁領域は、電気化学素子の膨張に応じて固定面から離れるように移動するため、周縁領域は可動領域として機能しうる。
【0015】
本発明に係る電気化学素子の膨張検知方法は、素体と、素体を封入する封入体とを有する電気化学素子が膨張したときに、電気化学素子が固定される固定面、及び、電気化学素子の固定面側の面のうちの少なくとも一方に形成された回路部が断線して、電気化学素子の膨張が検知される。
【0016】
この電気化学素子の膨張検知方法においては、電気化学素子及びその固定面のうちの少なくとも一方に形成された回路部が、電気化学素子が膨張した際に断線する。すなわち、電気化学素子の膨張前に導通状態にある回路部が、電気化学素子が膨張した際に断線される。従って、この電気化学素子の検知方法においては、簡易な構成で電気化学素子の膨張を検知することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、簡易な構成の電源装置及び電気化学素子の膨張検知方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するにあたり最良と思われる形態について詳細に説明する。なお、同一又は同等の要素については同一の符号を付し、説明が重複する場合にはその説明を省略する。
(第1実施形態)
【0019】
本願発明の第1実施形態に係る電源装置1について、図1〜図3を参照しつつ説明する。図1に示すように、電源装置1は、電気化学素子10と、電気化学素子10に取り付けられた制御基板30と、電気化学素子10及び制御基板30を保持する保持基板48とを備えている。
【0020】
電気化学素子10は、長方形薄板状のラミネート型リチウムイオン二次電池であり、図1及び図2に示すように、素体12と、素体12を封入した封入フィルム14(封入体)とを有している。素体12は、略平板状であり、負極16と正極18との間にセパレータ20が介在して構成されている。また、負極16には負極用リード22(例えば、銅製又はニッケル製)が接続されており、その負極用リード22の一端部が封入フィルム14から露出して、電気化学素子10の第1の電極(22)が形成されている。さらに、正極18には正極用リード24(例えば、アルミニウム製)が接続されており、その正極用リード24の一端部が封入フィルム14から露出して、電気化学素子10の第2の電極(24)が形成されている。
【0021】
封入フィルム14は、単層又は複数層の1枚のフィルムを素体12を包むように折り曲げて形成されており、重なり合う縁部同士は接着剤やヒートシールによって接合されている。この封入フィルム14としては、内側の層にAl箔、外側の層にポリプロピレン(PP)からなる層を採用した複合膜を利用することができる。この封入フィルム14には、リチウムイオンを含む電解質溶液26が充填されており、素体12は、電解質溶液26で満たされた封入フィルム14内に密閉状態で封入されている。そして、電気化学素子10の上下面は、素体12の表面形状と同様に、平坦な面となっている。
【0022】
制御基板30は、上述した電気化学素子10の負極22及び正極24が、一対の接続コード32,34を介して接続される基板である。また、制御基板30は、外部装置との入出力に用いられる入出力コネクタ36に接続されている。さらに、制御基板30上には、後述する検知回路(検知部)38を含む各種回路が形成されている。
【0023】
保持基板48は、本発明における取付部であり、四角形状の板状部材である。そして、上述した電気化学素子10は、この保持基板48の平坦な主面48aに、直接接するように固定されており、この面52aが電気化学素子10の搭載面(固定面)となっている。なお、この保持基板48は、必ずしも板状である必要はなく、平坦な面を有する部材であれば、厚みのある物体(例えば、ロボットや電気機器等)に適宜変更してもよい。
【0024】
そして、上述した電源装置1においては、図1〜図3に示すように、電気化学素子10の下面10aの周縁領域(可動領域)11であって電気化学素子10の短辺側の一方の周辺領域11に、第1の回路部60が形成されている。この第1の回路部60は、一本の等幅帯状の銅箔であり、電気化学素子10の封入フィルム14の表面に粘着材で貼り付けられている。そして、第1の回路部60の一端部は、接続ケーブル40を介して制御基板30の検知回路38に接続されている。さらに、第1の回路部60は、上記周縁部11において、電気化学素子10の短手方向に沿って真っ直ぐに延びる直線部分60aを有している。ここで、本発明における可動領域とは、後述する電気化学素子10の膨張に応じて固定面48aから離れるように移動する領域をいい、上記周辺領域11のように保持基板48に固着された領域以外の領域のことをいう。
【0025】
また、図1〜図3に示すように、保持基板48には、その保持基板48の主面48aに、上記周縁領域11に対応する領域に、第2の回路部62が形成されている。この第2の回路部62も、第1の回路部60同様、一本の等幅帯状の銅箔であり、保持基板48の主面48aに粘着材で貼り付けられている。そして、第2の回路部62の一端部は、接続ケーブル42を介して制御基板30の検知回路38に接続されている。さらに、第2の回路部62は、第1の回路部60の直線部分60aと略同一形状の直線部分62aは、第1の回路部60の直線部分60aと重なる位置に、第1の回路部60の直線部分60aと平行に形成されている。
【0026】
すなわち、保持基板48の主面48aに電気化学素子10が搭載された状態では、電気化学素子10と保持基板48との間において、第1の回路部60の直線部分60aと第2の回路部62の直線部分62aとが互いに接触している。なお、電気化学素子10は、所定の粘着材や両面テープにより保持基板48に貼り付けられる。電気化学素子10における粘着材の塗布領域や両面テープの貼付箇所は、保持基板48に固着される領域となるため、第1の回路部60が形成された上記周縁領域を可動領域とするために、その周縁領域を避ける必要がある。そして、この周縁領域以外の領域であれば、特に制限されず、例えば、電気化学素子10の下面10aの中央付近であってもよい。
【0027】
次に、電源装置1の配線状態について、図4を参照しつつ説明する。制御基板30に形成された検知回路38は、例えば図4に示す構成を有し、第1の回路部60と第2の回路部62とが導通状態のときには、入出力コネクタ36を介した電気化学素子10の充放電を可能な状態とし、第1の回路部60と第2の回路部62とが断線状態のときには、電気化学素子10の充放電を不可能な状態とする機能を有する。
【0028】
続いて、第1実施形態において電気化学素子10が膨張した状態について、図5及び図6を参照しつつ説明する。
【0029】
電気化学素子10は、過充電状態になると、その電圧が上昇して素子内の電解液が分解されて、内圧が上昇する。それにより、電気化学素子10は、図5及び図6に示すように、膨張してしまう。このとき、電気化学素子10は、その構造上、最大膨張位置が中央位置Cとなり、電気化学素子10の周縁部付近は保持基板48の搭載面48aから浮き上がる。
【0030】
このとき、電気化学素子10の膨張に伴って、電気化学素子10の下面10aに形成された第1の回路部60が、保持基板48から次第に離れていく。それにより、図5及び図6に示すように、第1の回路部60の直線部分60aと第2の回路部62の直線部分62aとが接触しない状態となり、第1の回路部60と第2の回路部62とが断線状態となる。すると、検知回路38が、第1の回路部60と第2の回路部62との断線を検知して、電気化学素子10を充放電できない状態にする。
【0031】
この電源装置1においては、電気化学素子10の下面10aの周縁領域11に、第1の回路部60が形成されており、保持基板48の搭載面48aに第2の回路部62が形成されている。そして、この第2の回路部62は第1の回路部60と接している。すなわち、電気化学素子10の膨張前は第1の回路部60と第2の回路部62とは導通状態にあり、電気化学素子10が膨張した際に第1の回路部60と第2の回路部62とは互いに断線される。そして、第1の回路部60と第2の回路部62との間の断線を検知回路38により検知することで、電気化学素子10の膨張が検知される。
【0032】
そして、電気化学素子10の膨張を検知した検知回路38が、電気化学素子10を充放電できない状態にすることで、電気化学素子10に異常が生じて膨張したときに電気化学素子10の充放電が停止されることとなる。
【0033】
従って、上述した電源装置1及び電気化学素子10の膨張検知方法においては、以上のような簡易な構成を有するものの、確かに電気化学素子10の膨張を検知することができる。
【0034】
また、従来の電気化学素子の膨張検知として、電気化学素子が膨張したときに、筐体の天井面に設けられた接触子に接触して、その接触を検知することによって電気化学素子の膨張を検知するものがある。ところが、このような場合には、電気化学素子と接触子との接点不良によって、接触子が機能せず、高い確実性で膨張検知をおこなうことが困難であった。例えば、接触子の位置や姿勢が変わって電気化学素子が接触できない状態になったり、接触子の表面に絶縁酸化膜が形成されて接触子が機能しない状態になったりすることが考えられる。
【0035】
上述した第1実施形態では、電気化学素子10の膨張前には第1及び第2の回路部60,62は導通状態にあり、電気化学素子10の膨張時には第1及び第2の回路部60,62が断線状態になるため、上記接点不良の問題が効果的に回避されている。従って、上述した電源装置1及び電気化学素子10の膨張検知方法においては、高い確実性で電気化学素子10の膨張検知をおこなうことができる。その上、上記従来の膨張検出においては筐体が必須の構成要素であるが、第1実施形態では、筐体がない電源装置1で膨張検出ができる構成となっている。そのため、電気化学素子10の厚さ方向に関して、設置スペースとして電気化学素子10の厚さのスペースがあれば十分であり、従来に比べて省スペース化を図ることができる。
【0036】
上述した態様では、第1の回路部60の直線部分60aと第2の回路部62の直線部分62とが、電気化学素子10の膨張を検知するセンシング部分となっている。このセンシング部分は、電気化学素子10の最大膨張位置(すなわち、中央位置C)からの距離に応じて膨張検知の感度が変わる。そのため、上記センシング部分の位置を、電気化学素子10の最大膨張位置からの距離が変わるように変更することで、所望の検知感度を得ることができる。
【0037】
また、電気化学素子10が膨張していない通常の状態において、第1及び第2の回路部60,62が導通されているため、電源装置1の検品時等に、第1及び第2の回路部60,62の通電を検査することで、電源装置1の膨張検知の機能がきちんと作動することを確認することができる。加えて、製品の中から組立不良等の不良品を容易に検出することができる。
【0038】
なお、複数の電気化学素子10を直列に接続して利用する場合には、図7に示すような配線状態にすればよい。すなわち、電気化学素子10の電極同士を接続して直列接続するとと共に、第1及び第2の回路60,62も直列に接続し、いずれかの第1及び第2の回路部60,62の対が断線したときに、検知回路38によって全ての電気化学素子10の充放電を停止させる態様も可能である。
【0039】
また、第1及び第2の回路部60,62の配線状態を、図8のように変更することもできる。すなわち、図8に示すように、第1及び第2の回路部60,62を、電気化学素子10の第1及び第2の電極22,24の一方に直列に接続した場合には、電気化学素子10が膨張して第1の回路部60と第2の回路部62とが断線すると、電気化学素子10の充放電が停止される。そのため、この充放電の停止により、電気化学素子10の膨張を検知することができる。従って、このような態様によれば、上述した電源装置1の効果に加えて、検出回路38を省略することができるという効果も得ることができる。その結果、電源装置1の構成の簡素化や小型化、コスト低減等を実現することができる。
(第2実施形態)
【0040】
本願発明の第2実施形態に係る電源装置1Aについて、図9〜図11を参照しつつ説明する。図9に示すように、電源装置1Aは、電気化学素子10と、電気化学素子10に取り付けられた制御基板30と、電気化学素子10及び制御基板30を収容する筐体50とを備えており、上述した保持基板48が筐体50となっている点でのみ、第1実施形態に係る電源装置1と異なる。
【0041】
筐体50は、電気化学素子10を上下方向から挟む平板状の底板部52及び天板部54と、底板部52の周縁部と天板部54の周縁部とを連結する側板部56とで構成される四角形状の樹脂ケースである。なお、この筐体50は、その形状及び構成材料と適宜変更することができ、例えば、円板状のアルミニウム缶等であってもよい。
【0042】
そして、電気化学素子10は、本発明における取付部である筐体50の底板部52の平坦な内面(上面)52aに、直接接するように固定されており、この面52aが電気化学素子10の搭載面(固定面)となっている。そして、図9〜図11に示すように、筐体50には、その底板部52の内面52aに、電気化学素子10の周縁領域11に対応する領域に、第2の回路部62が形成されている。
【0043】
すなわち、筐体50の搭載面52aに電気化学素子10が搭載された状態では、電気化学素子10と筐体50底板部52との間において、第1の回路部60の直線部分60aと第2の回路部62の直線部分62aとが互いに接触している。
【0044】
この第2実施形態においても、第1実施形態同様、電気化学素子10は膨張したときには、図12及び図13に示すように、その構造上、最大膨張位置が中央位置Cとなり、電気化学素子10の周縁部付近は筐体50の底板部52の搭載面52aから浮き上がる。また、電気化学素子10の中央位置C付近は、筐体50の天板部54の天井面に接触する。
【0045】
このとき、電気化学素子10の膨張に伴って、電気化学素子10の下面10aに形成された第1の回路部60が、筐体部50の底板部52から次第に離れていく。それにより、図12及び図13に示すように、第1の回路部60の直線部分60aと第2の回路部62の直線部分62aとが接触しない状態となり、第1の回路部60と第2の回路部62とが断線状態となる。すると、検知回路38が、第1の回路部60と第2の回路部62との断線を検知して、電気化学素子10を充放電できない状態にする。
【0046】
この電源装置1Aにおいては、電気化学素子10の下面10aの周縁領域11に、第1の回路部60が形成されており、筐体部50の底板部52の搭載面52aに第2の回路部62が形成されている。そして、この第2の回路部62は第1の回路部60と接している。すなわち、電気化学素子10の膨張前は第1の回路部60と第2の回路部62とは導通状態にあり、電気化学素子10が膨張した際に第1の回路部60と第2の回路部62とは互いに断線される。そして、第1の回路部60と第2の回路部62との間の断線を検知回路38により検知することで、電気化学素子10の膨張が検知される。
【0047】
そして、電気化学素子10の膨張を検知した検知回路38が、電気化学素子10を充放電できない状態にすることで、電気化学素子10に異常が生じて膨張したときに電気化学素子10の充放電が停止されることとなる。
【0048】
従って、上述した電源装置1Aにおいては、以上のような簡易な構成を有するものの、第1実施形態に係る電源装置1同様、確かに電気化学素子10の膨張を検知することができる。
【0049】
また、上述した第2実施形態でも、電気化学素子10の膨張前には第1及び第2の回路部60,62は導通状態にあり、電気化学素子10の膨張時には第1及び第2の回路部60,62が断線状態になるため、上記接点不良の問題が効果的に回避されている。従って、上述した電源装置1Aにおいても、高い確実性で電気化学素子10の膨張検知をおこなうことができる。
【0050】
また、電気化学素子10が膨張していない通常の状態において、第1及び第2の回路部60,62が導通されているため、電源装置1Aの検品時等に、第1及び第2の回路部60,62の通電を検査することで、電源装置1Aの膨張検知の機能がきちんと作動することを確認することができる。加えて、製品の中から組立不良等の不良品を容易に検出することができる。
【0051】
さらに、電気化学素子10が搭載される取付部として、電気化学素子10自体が取付部となる態様もあり得る。すなわち、図14に示すように、筐体50内に複数の電気化学素子10を重ねて収容する電源装置1Bの場合、互いの対向面10a,10aに、上述した第1及び第2の回路部60,62を形成する。この場合、第1の回路部60を取り付ける電気化学素子10及び第2の回路部62を取り付ける電気化学素子10は、適宜置換可能である。図14に示す複数の電気化学素子10の態様であっても、少なくとも1つの電気化学素子10が膨張すると、第1の回路部60と第2の回路部62とが断線するため、検知回路38によって断線を検知することができる。
【0052】
また、電気化学素子10が搭載される取付部として、2つの電気化学素子10の間に介在するプレートが取付部となる態様もあり得る。すなわち、図15に示す電源装置1Cのように、筐体50内に複数の電気化学素子10を重ねて収容する場合に、それらの間にプレート58を介在させて、このプレート58に第2の回路部62を形成する態様であってもよい。このプレート58は、筐体50に固定することで、プレート58の両面58a,58bにおいて電気化学素子10を保持することができるため、両側に配置された電気化学素子10それぞれに十分な膨張スペースを設けることができる。図15に示す態様であっても、電気化学素子10が膨張すると、第1の回路部60と第2の回路部62とが断線するため、検知回路38によって断線を検知することができる。
(第3実施形態)
【0053】
次に、本発明の第3実施形態に係る電源装置1Dについて、図16〜図18を参照しつつ説明する。この第3実施形態に係る電源装置1Dは、形成される回路の形状の点でのみ上述した第2実施形態に係る電源装置1Aと異なっており、その他の点については電源装置1Aと同様又は同等である。
【0054】
すなわち、第3実施形態に係る電源装置1Dには、上述した電源装置1Aの第1及び第2の回路部60,62の代わりに、第1及び第2の回路部64,66が形成されている。
【0055】
第1の回路部64は、四角形状の銅箔であり、電気化学素子10の下面10aの周縁領域11であって電気化学素子10の短辺側の一方の周辺領域11に粘着材で貼り付けられている。一方、第2の回路部66は、二本の等幅帯状の銅箔であり、底板部52の内面52aに粘着材で貼り付けられている。なお、二本の銅箔のそれぞれの一端部は、接続ケーブル40,42を介して制御基板30の検知回路38に接続されている。また、二本の銅箔のそれぞれの他端部は、上記周縁領域11に対応する領域において互いに近接配置されて、断線区間66a(図17参照)を形成している。そして、図16及び図17に示すように、上述した第1の回路部64は、第2の回路部66の断線区間66aに掛架される位置に配置されている。そのため、筐体50の搭載面52aに電気化学素子10が搭載された状態では、図17(a)に示すように、電気化学素子10と筐体50底板部52との間において、第2の回路部66に第1の回路部64が接触して、第2の回路部64の導通が図られている。
【0056】
なお、電源装置1Dの配線状態は図18に示すとおりとなっており、制御基板30に形成された検知回路38は、第2の回路部66が導通状態のときには電気化学素子10の充放電を可能な状態とし、第2の回路部66が断線状態のときには、電気化学素子10の充放電を不可能な状態とする機能を有する。
【0057】
続いて、第3実施形態において電気化学素子10が膨張した状態について、図17を参照しつつ説明する。
【0058】
電気化学素子10は、過充電状態になると、その電圧が上昇して素子内の電解液が分解されて、内圧が上昇する。それにより、電気化学素子10は、図17(a)及び(b)に示すように膨張し、その膨張に伴って、電気化学素子10の下面10aに形成された第1の回路部64が、筐体部50の底板部52から次第に離れていく。それにより、第2の回路部66の断線区間66aを、第1の回路部64が繋がない状態となり、第2の回路部66が断線状態となる。すると、検知回路38が、第2の回路部66の断線を検知して、電気化学素子10を充放電できない状態にする。
【0059】
この電源装置1Dにおいても、第2実施形態に係る電源装置1A同様、電気化学素子10の下面10aの周縁領域11に形成された第1の回路部64が、電気化学素子10の膨張に伴って、筐体部50の底板部52の搭載面52aに形成された第2の回路部66から離れる。すなわち、電気化学素子10の膨張前は第1の回路部64と第2の回路部66とが接して第2の回路部66が導通状態にあり、電気化学素子10が膨張した際に第1の回路部64と第2の回路部66とが離れて第2の回路部66が断線される。そして、第2の回路部66の断線を検知回路38により検知することで、電気化学素子10の膨張が検知される。
【0060】
従って、上述した電源装置1Dにおいては、以上のような簡易な構成を有するものの、第1及び第2実施形態に係る電源装置1,1A同様、確かに電気化学素子10の膨張を検知することができる。
【0061】
また、第3実施形態でも、第1及び第2実施形態同様、電気化学素子10の膨張前には第1及び第2の回路部60,62は導通状態にあり、電気化学素子10の膨張時には第1及び第2の回路部60,62が断線状態になるため、上記接点不良の問題が効果的に回避されている。従って、上述した電源装置1Dにおいても、高い確実性で電気化学素子10の膨張検知をおこなうことができる。
【0062】
なお、第1及び第2の回路部64,66の配線状態は、図19のように変更することもできる。すなわち、図19に示すように、第2の回路部66を、電気化学素子10の第1及び第2の電極22,24の一方に直列に接続した場合には、電気化学素子10が膨張して第2の回路部66が断線すると、電気化学素子10の充放電が停止される。そのため、この充放電の停止により、電気化学素子10の膨張を検知することができる。従って、このような態様によれば、上述した電源装置1Dの効果に加えて、検出回路38を省略することができるという効果も得ることができる。その結果、電源装置1Dの構成の簡素化や小型化、コスト低減等を実現することができる。
(第4実施形態)
【0063】
次に、本発明の第4実施形態に係る電源装置1Eについて、図20〜図22を参照しつつ説明する。この第4実施形態に係る電源装置1Eは、形成される回路の形状の点でのみ上述した第2実施形態及び第3実施形態に係る電源装置1A,1Dと異なっており、その他の点については電源装置1A,1Dと同様又は同等である。
【0064】
すなわち、第4実施形態に係る電源装置1Eには、上述した第3実施形態に係る電源装置1Dの第1及び第2の回路部64,66の代わりに、回路部68が形成されている。
【0065】
この回路部68は、二本の等幅帯状の銅箔であり、底板部52の内面52aに粘着材で貼り付けられている。この回路部68の二本の銅箔のそれぞれの一端部は、接続ケーブル40,42を介して制御基板30の検知回路38に接続されている。また、二本の銅箔のそれぞれの他端部は、電気化学素子10の下面10aの周縁領域11であって電気化学素子10の短辺側の一方の周辺領域11に対応する領域において互いに近接配置されて、断線区間68a(図21参照)を形成している。そして、図20及び図21に示すように、回路部68の断線区間68aには、バネ性を有する接点スイッチ70が設けられている。そのため、筐体50の搭載面52aに電気化学素子10が搭載された状態では、図21(a)に示すように、電気化学素子10と筐体50底板部52との間において、接点スイッチ70が回路部68を繋いで、回路部68の導通が図られている。
【0066】
なお、電源装置1Eの配線状態は図22に示すとおりとなっており、制御基板30に形成された検知回路38は、回路部68が導通状態のときには電気化学素子10の充放電を可能な状態とし、回路部68が断線状態のときには、電気化学素子10の充放電を不可能な状態とする機能を有する。
【0067】
続いて、第4実施形態において電気化学素子10が膨張した状態について、図21を参照しつつ説明する。
【0068】
電気化学素子10は、過充電状態になると、その電圧が上昇して素子内の電解液が分解されて、内圧が上昇する。それにより、電気化学素子10は、図21(a)及び(b)に示すように膨張し、その膨張に伴って、接点スイッチ70に対する電気化学素子10の下面10aからの押圧力が低下し、接点スイッチ70が切れる。それにより、回路部68の断線区間68aを、接点スイッチ70が繋がない状態となり、回路部68が断線状態となる。すると、検知回路38が、回路部68の断線を検知して、電気化学素子10を充放電できない状態にする。
【0069】
この電源装置1Eにおいても、第1〜3実施形態に係る電源装置1,1A,1D同様、電気化学素子10の膨張に伴って、筐体部50の底板部52の搭載面52aに形成された回路部68の、電気化学素子10の下面10aの周縁領域11に対応する位置の接点スイッチ70が回路部68を断線させる。すなわち、電気化学素子10の膨張前は接点スイッチ70による通電で回路部68が導通状態にあり、電気化学素子10が膨張した際に接点スイッチ70が切れて回路部68が断線される。そして、第2の回路部68の断線を検知回路38により検知することで、電気化学素子10の膨張が検知される。
【0070】
従って、上述した電源装置1Eにおいては、以上のような簡易な構成を有するものの、第1〜3実施形態に係る電源装置1,1A,1D同様、確かに電気化学素子10の膨張を検知することができる。
【0071】
また、第4実施形態でも、第1〜第3実施形態同様、電気化学素子10の膨張前には回路部68は導通状態にあり、電気化学素子10の膨張時には回路部68が断線状態になるため、上記接点不良の問題が効果的に回避されている。従って、上述した電源装置1Eにおいても、高い確実性で電気化学素子10の膨張検知をおこなうことができる。
【0072】
なお、回路部68の配線状態は、図23のように変更することもできる。すなわち、図23に示すように、回路部68を、電気化学素子10の第1及び第2の電極22,24の一方に直列に接続した場合には、電気化学素子10が膨張して回路部68が断線すると、電気化学素子10の充放電が停止される。そのため、この充放電の停止により、電気化学素子10の膨張を検知することができる。従って、このような態様によれば、上述した電源装置1Eの効果に加えて、検出回路38を省略することができるという効果も得ることができる。その結果、電源装置1Eの構成の簡素化や小型化、コスト低減等を実現することができる。
【0073】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、電気化学素子として、リチウムイオン二次電池についてのみ説明したが、その他の二次電池や、電気二重層キャパシタ等の素子にも適用可能である。また、検知回路(検知部)が回路の断線を検知する場合に、検知回路が、電気化学素子の充放電を停止させる制御でなく、充放電のレベルを低減させる制御をおこなうようにしてもよい。なお、上述した実施形態においては、封入体として封入フィルムを例に説明したが、例えば、素体を封入した封入フィルムを金属ケース(例えば、アルミニウム缶)に収容して、このケースと封入フィルムとによって封入体を構成する態様も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電源装置の概略構成を示した図である。
【図2】図1に示した電源装置のII−II線断面図である。
【図3】図1に示した電源装置のIII−III線断面図である。
【図4】図1に示した電源装置の配線図である。
【図5】図2の断面において膨張時における電気化学素子の状態を示した図である。
【図6】図3の断面において膨張時における電気化学素子の状態を示した図である。
【図7】複数の電気化学素子が直列接続された状態を示した配線図である。
【図8】図1に示した電源装置の異なる配線状態を示した図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る電源装置の概略構成を示した図である。
【図10】図9に示した電源装置のX−X線断面図である。
【図11】図9に示した電源装置のXI−XI線断面図である。
【図12】図10の断面において膨張時における電気化学素子の状態を示した図である。
【図13】図11の断面において膨張時における電気化学素子の状態を示した図である。
【図14】図9に示した電源装置の異なる態様を示した図である。
【図15】図9に示した電源装置の異なる態様を示した図である。
【図16】本発明の第3実施形態に係る電源装置1の概略構成を示した図である。
【図17】図16に示した電源装置のXVII−XVII線断面図であり、(a)は膨張前の電気化学素子の状態を示した図、(b)は膨張時における電気化学素子の状態を示した図である。
【図18】図16に示した電源装置の配線図である。
【図19】図16に示した電源装置の異なる配線状態を示した図である。
【図20】本発明の第4実施形態に係る電源装置の概略構成を示した図である。
【図21】図20に示した電源装置のXXI−XXI線断面図であり、(a)は膨張前の電気化学素子の状態を示した図、(b)は膨張時における電気化学素子の状態を示した図である。
【図22】図20に示した電源装置の配線図である。
【図23】図20に示した電源装置の異なる配線状態を示した図である。
【符号の説明】
【0075】
1,1A,1B,1C,1D,1E…電源装置、10…電気化学素子、10a…下面、11…周縁領域、12…素体、14…封入フィルム、22,24…電極、30…制御基板、38…検知回路、48…保持基板、48a…主面、50…筐体、52…底板部、52a…内面、60,62,64,66,68…回路部、66a,68a…断線区間。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素体と、前記素体を封入する封入体とを有する電気化学素子と、
前記電気化学素子が固定される固定面を有する取付部と、
前記電気化学素子の前記取付部側の面の可動領域、及び、前記前記電気化学素子の前記可動領域に対向する前記取付部の前記固定面の領域のうちの少なくとも一方に形成され、前記電気化学素子が膨張した際に断線する回路部と、
前記回路部に接続され、前記回路部の断線を検知する検知部と
を備える、電源装置。
【請求項2】
素体と、前記素体を封入する封入体とを有する電気化学素子と、
前記電気化学素子が固定される固定面を有する取付部と、
前記電気化学素子の前記取付部側の面の可動領域に形成された第1の回路部と、
前記取付部の前記固定面に形成され、前記第1の回路部と接する第2の回路部と、
前記第1の回路部と前記第2の回路部との間の断線を検知する検知部と
を備える、電源装置。
【請求項3】
素体と、前記素体を封入する封入体とを有する電気化学素子と、
前記電気化学素子が固定される固定面を有する取付部と、
前記電気化学素子の前記取付部側の面の可動領域、及び、前記電気化学素子の前記可動領域に対向する前記取付部の前記固定面の領域のうちの一方に形成された第1の回路部と、
前記電気化学素子の前記取付部側の面の可動領域、及び、前記電気化学素子の前記可動領域に対向する前記取付部の前記固定面の領域のうちの他方に形成され、部分的に断線された断線区間が前記第1の回路部によって通電される第2の回路部と、
前記第2の回路部に接続され、前記第2の回路部の断線を検知する検知部と
を備える、電源装置。
【請求項4】
素体と、前記素体を封入する封入体とを有する電気化学素子と、
前記電気化学素子が固定される固定面を有する取付部と、
前記電気化学素子の前記取付部側の面の可動領域、及び、前記前記電気化学素子の前記可動領域に対向する前記取付部の前記固定面の領域のうちの少なくとも一方に形成され、前記電気化学素子が膨張した際に断線する回路部とを備え、
前記回路部が前記電気化学素子の電極に接続されている、電源装置。
【請求項5】
前記電気化学素子の前記取付部側の面の前記可動領域は、前記電気化学素子の前記取付部側の面の周縁領域である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電源装置。
【請求項6】
素体と、前記素体を封入する封入体とを有する電気化学素子が膨張したときに、前記電気化学素子が固定される固定面、及び、前記電気化学素子の前記固定面側の面のうちの少なくとも一方に形成された回路部が断線して、前記電気化学素子の膨張が検知される、電気化学素子の膨張検知方法。
【請求項1】
素体と、前記素体を封入する封入体とを有する電気化学素子と、
前記電気化学素子が固定される固定面を有する取付部と、
前記電気化学素子の前記取付部側の面の可動領域、及び、前記前記電気化学素子の前記可動領域に対向する前記取付部の前記固定面の領域のうちの少なくとも一方に形成され、前記電気化学素子が膨張した際に断線する回路部と、
前記回路部に接続され、前記回路部の断線を検知する検知部と
を備える、電源装置。
【請求項2】
素体と、前記素体を封入する封入体とを有する電気化学素子と、
前記電気化学素子が固定される固定面を有する取付部と、
前記電気化学素子の前記取付部側の面の可動領域に形成された第1の回路部と、
前記取付部の前記固定面に形成され、前記第1の回路部と接する第2の回路部と、
前記第1の回路部と前記第2の回路部との間の断線を検知する検知部と
を備える、電源装置。
【請求項3】
素体と、前記素体を封入する封入体とを有する電気化学素子と、
前記電気化学素子が固定される固定面を有する取付部と、
前記電気化学素子の前記取付部側の面の可動領域、及び、前記電気化学素子の前記可動領域に対向する前記取付部の前記固定面の領域のうちの一方に形成された第1の回路部と、
前記電気化学素子の前記取付部側の面の可動領域、及び、前記電気化学素子の前記可動領域に対向する前記取付部の前記固定面の領域のうちの他方に形成され、部分的に断線された断線区間が前記第1の回路部によって通電される第2の回路部と、
前記第2の回路部に接続され、前記第2の回路部の断線を検知する検知部と
を備える、電源装置。
【請求項4】
素体と、前記素体を封入する封入体とを有する電気化学素子と、
前記電気化学素子が固定される固定面を有する取付部と、
前記電気化学素子の前記取付部側の面の可動領域、及び、前記前記電気化学素子の前記可動領域に対向する前記取付部の前記固定面の領域のうちの少なくとも一方に形成され、前記電気化学素子が膨張した際に断線する回路部とを備え、
前記回路部が前記電気化学素子の電極に接続されている、電源装置。
【請求項5】
前記電気化学素子の前記取付部側の面の前記可動領域は、前記電気化学素子の前記取付部側の面の周縁領域である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電源装置。
【請求項6】
素体と、前記素体を封入する封入体とを有する電気化学素子が膨張したときに、前記電気化学素子が固定される固定面、及び、前記電気化学素子の前記固定面側の面のうちの少なくとも一方に形成された回路部が断線して、前記電気化学素子の膨張が検知される、電気化学素子の膨張検知方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図14】
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【図20】
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【公開番号】特開2008−251437(P2008−251437A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−93478(P2007−93478)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
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