説明

電源装置

【課題】 高効率を維持しつつ、安定した回路動作が実現可能なスイッチングレギュレータを提供する。
【解決手段】 電源装置100は、スイッチングレギュレータ10、リニアレギュレータ16、タイマ回路18、制御回路20、インバータ22、スイッチSW1を含む。この電源装置100は、入力端子102に入力された入力電圧Vinを降圧して出力端子104に出力電圧Voutを降圧して出力する降圧型DC/DCコンバータである。タイマ回路18は、制御信号Vcntにより電源装置の起動が指示された時刻からの経過時間をカウントし、予め決められた一定時間Tpが経過するとその出力信号Vtimeをハイレベルとする。出力信号Vtimeがハイレベルとなると、スイッチSW1がオンして制御回路20の電源端子30には、出力電圧Voutが供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置に関し、特にスイッチングレギュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な電子機器において、内部に使用される電子回路に適切な電圧を供給するため、降圧型のスイッチングレギュレータ等のDC/DCコンバータが広く用いられている。例えば、電子機器において20Vの電圧のみが用意され、内部の電子回路が5Vの電圧を必要とする場合、降圧型のスイッチングレギュレータによって20Vを5Vに降圧して電子回路を駆動する。
このようなスイッチングレギュレータは、スイッチングトランジスタのオンオフ動作を制御するための制御回路を有しているが、スイッチングレギュレータが安定して動作するためには、当然のことながら、制御回路を動作させるための電源電圧が安定して供給されている必要がある。いま、制御回路の動作に必要とされる電源電圧が5Vである場合には、電子機器により用意された20Vを直接使用することはできないため、リニアレギュレータによってその5Vを生成する方法が考えられる。ところが、一般的にリニアレギュレータは効率が悪いため、スイッチングレギュレータ全体としての効率が悪化してしまうという問題があった。
【0003】
このような問題を解決するために、スイッチングレギュレータにより降圧した電圧を、制御回路を駆動するための電源電圧として用いる技術が提案されている(特許文献1)。この技術では、制御回路を駆動可能な電圧をしきい値として、スイッチングレギュレータの出力電圧がしきい値電圧より高いときには、出力電圧により制御回路を駆動し、スイッチングレギュレータの出力電圧がしきい値電圧より低いときには、リニアレギュレータにより制御回路を駆動するように切り替える。この技術によれば、スイッチングレギュレータの電力変換効率はリニアレギュレータよりも高いため、制御回路の電源電圧をスイッチングレギュレータの出力電圧から供給する期間において高効率化を図ることができる。
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,528,132号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記文献に記載の技術では、スイッチングレギュレータの出力電圧が、しきい値電圧付近で変動すると、制御回路の電源電圧がリニアレギュレータの電圧または出力電圧のいずれから供給されるかが安定しないという問題があった。また、スイッチングレギュレータの起動時には出力電圧のオーバーシュートやアンダーシュートが発生することがあるが、一定電圧以上の出力電圧を制御回路の電源電圧として使用した場合、回路の誤動作の原因となってしまうという問題もある。
【0006】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、高効率を維持しつつ、安定した回路動作が実現可能なスイッチングレギュレータの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、電源装置に関する。この電源装置は、スイッチングトランジスタのスイッチング動作により入力電圧を所望の出力電圧に変換して出力するスイッチングレギュレータと、スイッチングトランジスタのスイッチング動作を制御する制御部と、制御部を駆動するために、制御部に対し電源電圧を供給する電圧生成回路と、スイッチングトランジスタのスイッチング動作開始からの経過時間を測定し、所定時間が経過するとその出力を変化させるタイマ回路と、を備える。制御部は、タイマ回路の出力が変化する前の期間は、電圧生成回路により供給される電源電圧により駆動され、タイマ回路の出力が変化した後の期間はスイッチングレギュレータの出力電圧により駆動される。
【0008】
この態様によれば、所定時間の経過前においては電圧生成回路により供給される安定した電源電圧により制御回路を駆動することにより、電源装置を安定に動作させることができる。また、所定時間の経過後においては、スイッチングレギュレータの出力電圧を制御回路の駆動電圧として使用するため、高効率化を図ることができる。
【0009】
タイマ回路により測定される所定時間は、スイッチングレギュレータの出力電圧が安定するのに要する期間との関係で定められてもよい。
スイッチングレギュレータの起動時において、出力電圧が不安定な期間は電圧生成回路により制御回路を駆動し、スイッチングレギュレータの出力電圧が十分安定した後に、その出力電圧により制御回路を駆動することにより、電源装置をより安定に動作させることができる。
【0010】
電圧生成回路は、入力電圧を降圧して出力するリニアレギュレータであってもよい。リニアレギュレータは簡易に構成できるため、コスト、面積の点で有利である。
【0011】
電源装置は、回路動作の異常を検知する異常検出回路をさらに備えてもよい。異常検出回路により異常が検出されたとき、制御部は前記電圧生成回路から供給される電源電圧により駆動されてもよい。
「回路動作の異常」とは、出力電圧の過電圧、出力電流の過電流、発熱異常など、電源装置が安定動作から逸脱した状態をいう。
スイッチングレギュレータの起動後、所定時間が経過して制御回路がスイッチングレギュレータの出力電圧により駆動されている期間中に、電源装置に異常が発生した場合は、電圧生成回路による駆動に再度切り替えることにより、スイッチングレギュレータをより安定に動作させることができる。
【0012】
本発明の別の態様もまた、電源装置である。この電源装置は、安定化された出力電圧を生成する電源装置であって、該電源装置を駆動するための電圧は、該電源装置の出力電圧が定常状態にあると想定される第1モードおいては該電源装置自身の出力電圧から供給され、該電源装置の出力電圧が遷移状態にあると想定される第2モードにおいては電圧生成回路から供給される。第1モードと第2モードは、該電源装置の起動開始から所定時間経過したことにより切り替えられる。
出力電圧を電源装置自身を駆動するための電圧として使用するためには、出力電圧が安定でなければならない。そこで、出力電圧が不安定である過渡状態では、電圧生成回路から供給される安定電圧を使用する。過渡状態と定常状態は、電源装置の起動開始から所定時間経過したかどうかにより判定し、所定時間経過前を第1モードに対応させ、所定時間経過後が第2モードに対応させて、電源装置の駆動電圧の供給源を切り替えてもよい。
【0013】
なお、以上の構成要素の任意の組合せや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る電源装置によれば、制御回路を駆動するための電圧を出力電圧から供給することにより、効率を上げることができるとともに、電源装置の起動時に発生する出力電圧変動による制御回路の誤動作を防止しやすくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明の実施の形態に係る電源装置100の構成を示す。以降の図において、同一の構成要素には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0016】
本実施の形態にかかる電源装置100は、スイッチングレギュレータ10、リニアレギュレータ16、タイマ回路18、制御回路20、インバータ22、スイッチSW1を含む。また、電源装置100は、入力端子102、出力端子104、制御端子106を備え、それぞれの端子に印加され、または現れる電圧をそれぞれ入力電圧Vin、出力電圧Vout、制御電圧Vcntという。
この電源装置100は、入力端子102に入力された入力電圧Vinを降圧して出力端子104に出力電圧Voutを出力する降圧型DC/DCコンバータである。
【0017】
スイッチングレギュレータ10は、スイッチングトランジスタ12、インダクタL1、キャパシタC1、整流用ダイオード14を含む。スイッチングトランジスタ12はMOSFETであり、そのゲート端子の電圧によりオンオフ動作が制御される。スイッチングレギュレータ10において、スイッチングトランジスタ12のオンオフ動作によって、インダクタL1にはスイッチングトランジスタ12または整流用ダイオード14から電流が交互に供給され、入力電圧Vinが降圧される。また、インダクタL1およびキャパシタC1はローパスフィルタを構成し、出力電圧Voutが平滑化される。
【0018】
制御回路20は、スイッチングトランジスタ12のゲート端子にスイッチング動作のオンオフを制御するパルス幅変調信号Vpwm(以下、PWM信号という)を出力する。PWM変調信号Vpwmは、ハイレベルとローレベルが交互に繰り返される信号であり、ハイレベルの期間とローレベルの期間を変化させてスイッチングトランジスタ12のオン、オフの時間を制御することにより、出力電圧Voutを所望の電圧に近づける。
【0019】
また、制御回路20の端子32には、制御信号Vcntが入力されており、制御信号Vcntがハイレベルのとき、PWM信号Vpwmを生成してスイッチングトランジスタ12のスイッチングを制御し、制御信号Vcntがローレベルの時はPWM信号Vpwmの生成を停止し、スイッチングトランジスタ12のスイッチング動作を停止する。
さらに、制御回路20はフィードバック端子34を備えており、このフィードバック端子34には、スイッチングレギュレータ10の出力電圧Voutがフィードバックされている。制御回路20はフィードバックされた出力電圧Voutが所定の電圧値に近づくようにPWM信号Vpwmのデューティ比を制御する。
【0020】
制御回路20は、電源端子30に印加される電圧Vccによって駆動される。この制御回路20の電源端子30に印加される電源電圧Vccは、2つの経路より供給される。第1の供給路は、リニアレギュレータ16からであり、第2の供給路は出力電圧Voutである。
【0021】
リニアレギュレータ16は、入力端子102と制御回路20の電源端子30との間に設けられている。このリニアレギュレータ16は、入力端子102に印加された入力電圧Vinを降圧して、制御回路20を駆動するために適切な安定した電圧Vregを電源端子30に出力し、電源電圧Vcc=Vregとなる。
リニアレギュレータ16にはイネーブル端子ENが設けられており、ハイレベルが入力されると制御回路20の駆動電圧Vregを出力し、ローレベルが入力されているときにはその動作を停止する。
【0022】
スイッチSW1は、出力端子104と制御回路20の電源端子30との間に設けられている。このスイッチSW1がオンすると、制御回路20の電源端子30には出力電圧Voutが印加され、電源電圧Vcc=Voutとなる。スイッチSW1がオフすると、出力端子104は切り離される。
【0023】
タイマ回路18には、制御信号Vcntが入力されている。タイマ回路18は、制御信号Vcntがハイレベルになった時刻からの経過時間をカウントし、予め決められた一定時間Tpが経過するとその出力信号Vtimeをハイレベルにする。この一定時間Tpは、電源装置の起動、すなわちスイッチングトランジスタ12のスイッチング動作開始から出力電圧Voutが安定化するまでの時間よりも長く設定しておくことが望ましい。
【0024】
インバータ22は、タイマ回路18とリニアレギュレータ16のイネーブル端子ENとの間に設けられており、タイマ回路18の出力信号Vtimeを反転して、イネーブル端子ENに入力する。
【0025】
従って、制御回路20の電源端子30には、タイマ回路18の出力に応じて、リニアレギュレータ16により生成される電圧Vregまたはスイッチングレギュレータ10により降圧された出力電圧Voutのいずれかが印加される。
【0026】
以下、このように構成された電源装置100の動作について説明する。
はじめに、本発明の効果を明確にするために、タイマ回路18を使用せずに、出力電圧Voutが所定のしきい値電圧Vthより高いときには制御回路20の電源端子30に出力電圧Voutを印加し、しきい値電圧Vthより低いときには、リニアレギュレータ16により生成される電圧Vregを印加する場合について説明する。
図2(a)はこのときの電源装置の起動時におけるリニアレギュレータ16の出力Vregと、スイッチングレギュレータ10の出力電圧Voutの時間波形を示す。リニアレギュレータ16の出力Vregは安定化されているのに対して、スイッチングレギュレータ10の出力電圧Voutは起動時にオーバーシュートし、その後リンギングを伴って所定の電圧に近づいていく。
図2(b)は、制御回路20の電源端子30に印加される電源電圧Vccの時間波形を示す。電源電圧Vccは、上述のように、出力電圧Voutと所定のしきい値電圧Vthとの比較によって切り替えられる。すなわち、出力電圧Vout>Vthの期間はVcc=Voutとなり、Vout<Vthの期間はVcc=Vregとなっている。
【0027】
しきい値電圧によって制御回路20の電源電圧Vccを切り替えた場合、切り替えが発生する瞬間に、制御回路20の電源電圧Vccが不連続となる。特に、起動時において、出力電圧Voutにオーバーシュートやリンギングが発生した場合には、電源電圧Vccが2つの供給電圧で頻繁に切り替えられることになり回路動作が不安定となるおそれがある。また、2つの電圧源の切り替えによる電源電圧Vccの不連続を小さくするために、しきい値電圧Vthをリニアレギュレータ16の出力Vregに近づけた場合、切り替えによる電圧の不連続は小さくなるが、出力電圧Voutのわずかな変動に伴い、2つの電圧VregとVoutが頻繁に切り替えられることになるため、回路の安定動作の観点からは好ましくない場合がある。
【0028】
次に、本実施の形態に係る電源装置100において、タイマ回路18の出力に応じて制御回路20の電源電圧Vccを切り替えた場合の動作について、図3(a)〜(d)をもとに説明する。図3(a)〜(d)は、電源装置100の各端子の電圧の時間波形を示す。
時刻T0〜T1において、制御信号Vcntはローレベルであり、制御回路20は停止しているため、出力電圧Voutは0Vとなっている。また、タイマ回路18の出力信号Vtimeもローレベルとなっている。
タイマ回路18の出力信号Vtimeがローレベルのとき、スイッチSW1はオフしている。また、リニアレギュレータ16のイネーブル端子ENには、出力信号Vtimeがインバータ22で反転されてハイレベルとして入力されるため、リニアレギュレータ16からは一定電圧Vregが出力されている。従って、時刻T0〜T1の期間には、制御回路20の電源端子30には、リニアレギュレータ16から供給される定電圧Vregが印加されることになる。
【0029】
時刻T1に、電源装置100を起動し、出力電圧Voutを立ち上げるために、制御信号Vcntがローレベルからハイレベルに切り替えられる。制御信号Vcntがハイレベルになると、制御回路20はPWM信号Vpwmの生成を開始し、スイッチングトランジスタ12のスイッチング動作が開始される。
スイッチングトランジスタ12のスイッチング動作によりスイッチングレギュレータ10の出力電圧Voutは上昇し始める。出力電圧Voutは図2(a)と同様にオーバーシュートし、リンギングを伴いながら所定の電圧に近づいていく。
【0030】
また、制御信号Vcntがハイレベルになると、タイマ回路18は時間の測定を開始する。タイマ回路18は、図3(b)に示すように、時刻T1から予め決められた一定時間Tpが経過するまでの間、ローレベルを出力する。この間は、時刻T0〜T1と同様に制御回路20の電源端子30には、リニアレギュレータ16から定電圧Vregが供給される。
【0031】
時刻T1から一定時間Tpが経過した時刻T2において、タイマ回路18の出力信号Vtimeがハイレベルとなる。タイマ回路18の出力信号Vtimeがハイレベルとなると、スイッチSW1がオンすると同時に、リニアレギュレータ16のイネーブル端子ENにはローレベルが入力され、その動作が停止される。
その結果、制御回路20の電源端子30には出力電圧Voutが印加され、図3(d)に示すように時刻T2以降においてVcc=Voutとなる。
【0032】
このように、本実施の形態にかかる電源装置100では、オーバーシュートおよびリンギングの発生するおそれのある起動時には、リニアレギュレータ16により安定した電圧Vregを生成し、これを制御回路20の電源電圧Vccとする。その後、スイッチングレギュレータ10の出力電圧Voutが安定した後に、制御回路20の電源電圧Vccを出力電圧に切り替える。その結果、図3(d)に示すように、制御回路20の電源電圧Vccは一定値を取ることになり、起動時の出力電圧Voutの変動に伴う電源電圧Vccの急峻な変化を抑制することができ、回路を安定に動作させることができる。
【0033】
制御回路20の電源端子30と接地間には、図示しない平滑化用のキャパシタが設けられていてもよい。この平滑化用のキャパシタにより、制御回路20の電源電圧Vccを切り替える際の電圧の変化をなだらかにすることができる。
【0034】
また、スイッチングレギュレータ10により入力電圧Vinから出力電圧Voutを生成する電力変換効率は、リニアレギュレータ16により入力電圧Vinから電圧Vregを生成したときよりも高効率である。従って、制御回路20の電源電圧Vccとして、出力電圧Voutが供給される期間においては、電源装置100全体としての効率を向上することができる。
【0035】
なお、図2および図3において、電圧Vregと安定後の出力電圧Voutは、図の見やすさのために、異なる電圧値として描かれているが、実際にはより近い電圧値であってもよい。
【0036】
出力電圧Voutは、フィードバックにより安定化されている。従って、一度出力電圧Voutが安定化された後は、その電圧値が変動したとしても、その変動幅は、起動時に発生するようなオーバーシュートやリンギングよりも小さいため、制御回路20の電源電圧Vccはそれほど変動せず、回路動作に及ぼす影響は小さい。
【0037】
(第2の実施の形態)
図4は、第2の実施の形態に係る電源装置200を示す。電源装置200は、電源装置の異常動作の検出を行う異常検出回路40を備える。以下、第2の実施の形態に係る電源装置200について、第1の実施の形態に係る電源装置100との相違点を中心に説明する。
【0038】
電源装置200は、スイッチングレギュレータ10、スイッチSW1、リニアレギュレータ16、制御回路20、タイマ回路18、異常検出回路40、AND回路42、インバータ22を含む。
異常検出回路40は、例えば過電圧などの出力電圧異常、過電流などの出力電流異常、あるいは発熱異常等を検出する回路であり、その出力であるエラー信号Verrは、正常時にはハイレベルとなり、異常が検出されるとローレベルとなる。
【0039】
AND回路42の2つの入力端子には、タイマ回路18の出力と異常検出回路40の出力が接続されている。AND回路42の出力信号は、タイマ回路18の出力信号Vtimeと異常検出回路40のエラー信号Verrが、いずれもハイレベルのときにハイレベルとなる。従って、AND回路42は、起動から一定時間Tpが経過しており、かつ異常検出回路40により異常が検出されない正常時にハイレベルを出力する。
【0040】
AND回路42からハイレベルが出力されるとスイッチSW1がオンし、リニアレギュレータ16の動作は停止するため、制御回路20の電源端子30には出力電圧Voutが供給される。逆に、AND回路42からローレベルが出力されている期間は制御回路20の電源端子30にはリニアレギュレータ16から生成される電圧Vregが供給される。
【0041】
図3(c)に示す時刻T2以降の出力電圧Voutが安定化した後においても、出力電流が急激に増加、または減少することにより、出力電圧Voutが変動してしまう場合がある。そのとき、以上のように構成した第2の実施の形態に係る電源装置200によれば、異常検出回路40によって、出力電流をモニタし、異常検出回路40がエラー信号Verrをローレベルにすることにより、制御回路20の電源電圧Vccはリニアレギュレータ16から供給されるため、回路の安定性を保つことができる。異常検出回路40は、出力電流の他、発熱異常や出力電圧をモニタしてもよい。
【0042】
さらに、異常検出回路40は異常が検出されている期間のみエラー信号Verrをローレベルとするのではなく、ラッチ機能を持たせることにより、検出された瞬間から予め決められた一定期間、エラー信号Verrをローレベルとするように設計してもよい。この一定期間は、異常が発生してから、回路が十分に安定するまでの期間とすることが望ましい。
【0043】
異常検出回路40によって出力電圧Voutをモニタした場合には、過電圧が発生した際に制御回路20の電源電圧Vccを、リニアレギュレータ16から生成される電圧Vregとすることにより、制御回路20の電源端子30に過電圧が印加されるのを防止することができ、回路の誤動作や信頼性への影響を軽減できる。
【0044】
本実施の形態においても、AND回路42の出力がハイレベルとなり制御回路20の電源電圧Vccとして出力電圧Voutが供給される期間においては、電源装置200全体としての効率を向上することができる。
【0045】
これら実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0046】
本実施の形態において、各回路の動作を決定するVtime、Verr、Vcntなどのロジック信号のハイレベル、ローレベルは、必要に応じて適宜に変更することができる。例えば、スイッチSW1にP型MOSFETを用いた場合には、スイッチをオフするためにはゲート電圧としてハイレベルが入力されていなければならないため、ハイ・ローを反転したロジックにより制御する必要がある。また、その他のタイマ回路18や異常検出回路40の出力も、それぞれ反転していてもよく、ロジック回路の組み合わせによって、同様の動作が行われるように設計すればよい。
【0047】
また、実施の形態において、スイッチングレギュレータ10として整流用ダイオード14を用いたタイプのスイッチングレギュレータについて説明したが、これは整流用トランジスタに置換してもよい。また、スイッチングレギュレータ10は、スイッチドキャパシタを用いた昇圧、降圧コンバータであってもよい。
【0048】
本実施の形態において、スイッチSW1はリニアレギュレータとしてもよい。スイッチSW1をリニアレギュレータとすることにより、制御回路20の電源電圧Vccとしてスイッチングレギュレータ10の出力電圧Voutが選択されている間に、出力電圧Voutが変動しても、電源電圧Vccは一定値に保たれるため、より回路を安定に動作させることができる。
【0049】
本実施の形態において、電源装置100、または電源装置200を構成する素子はすべて一体集積化されていてもよく、その一部がディスクリート部品で構成されていてもよい。どの部分を集積化するかは、コストや占有面積などによって決めればよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】第1の実施の形態に係る電源装置の構成を示す図である。
【図2】図2(a)、(b)は、図1の電源装置においてタイマ回路を使用しない場合の各端子の電圧の時間波形を示す図である。
【図3】図3(a)〜(d)は、図1の電源装置においてタイマ回路を使用した場合の各端子の電圧の時間波形を示す図である。
【図4】第2の実施の形態に係る電源装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
L1 インダクタ、 C1 キャパシタ、 SW1 スイッチ、 10 スイッチングレギュレータ、 12 スイッチングトランジスタ、 14 整流用ダイオード、 16 リニアレギュレータ、 18 タイマ回路、 20 制御回路、 22 インバータ、 30 電源端子、 100 電源装置、 102 入力端子、 104 出力端子、 106 制御端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチングトランジスタを含み、該スイッチングトランジスタのスイッチング動作により入力電圧を所望の出力電圧に変換して出力するスイッチングレギュレータと、
前記スイッチングトランジスタのスイッチング動作を制御する制御部と、
前記制御部を駆動するために、前記制御部に対し電源電圧を供給する電圧生成回路と、
前記スイッチングトランジスタのスイッチング動作開始からの経過時間を測定し、所定時間が経過するとその出力を変化させるタイマ回路と、
を備え、前記制御部は、前記タイマ回路の出力が変化する前の期間は、前記電圧生成回路により供給される電源電圧により駆動され、前記タイマ回路の出力が変化した後の期間は前記スイッチングレギュレータの出力電圧により駆動されることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記タイマ回路により測定される所定時間は、前記スイッチングレギュレータの出力電圧が安定するのに要する期間との関係で定められていることを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記電圧生成回路は、前記入力電圧を降圧して出力するリニアレギュレータであることを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項4】
回路動作の異常を検知する異常検出回路をさらに備え、
前記異常検出回路により異常が検出されたとき、前記制御部は前記電圧生成回路から供給される電源電圧により駆動されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電源装置。
【請求項5】
安定化された出力電圧を生成する電源装置であって、
該電源装置を駆動するための電圧は、該電源装置の出力電圧が定常状態にあると想定される第1モードおいては該電源装置自身の出力電圧から供給され、該電源装置の出力電圧が遷移状態にあると想定される第2モードにおいては電圧生成回路から供給され、
第1モードと第2モードは、該電源装置の起動開始から所定時間経過したことにより切り替えられることを特徴とする電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−54955(P2006−54955A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−234109(P2004−234109)
【出願日】平成16年8月11日(2004.8.11)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】