説明

電源装置

【課題】低コスト化を図りつつ冷却性を向上させることが可能な電源装置を提供する。
【解決手段】ベースプレート8における配線基板7の支持面上に、風洞面Sw側への開口部810,820付きの段差加工部81,82を設ける。風洞面Sw側(風洞100内)を流れる冷却風の一部(冷却風W14,W15等)が、段差加工部81,82(開口部810,820)を介して筐体9内(配線基板7側)へも流入するようになる。また、段差加工部81,82がそれぞれ、配線基板7と熱的に接続されているようにする。配線基板7上の高発熱の電気部品等により発生した熱(熱量Q1,Q2等)が、配線基板7から段差加工部81,82を介して放熱される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基体としてのベースプレートを用いて構成された電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、DC−DCコンバータ等の電源装置に対する空冷による冷却手法としては、ベースプレート上に空冷フィンを設けると共にこのフィンが風洞内に収まるように配置し、風洞内の冷却風によってフィンを介してベースプレート全体を冷却するようにする手法が一般的である。ただし、この手法では、電源部品全体を覆う筐体内の空気と、風洞内の冷却風とは完全に分離されている。そのため、ベースプレート自体は冷却風によって常時冷却されるものの、筐体内部では、電源部品での発熱に起因して熱がこもってしまい、相当な温度上昇が生じていた。
【0003】
そこで、筐体の外部に冷却風を供給するためのファンを設け、このファンからの冷却風をフィン側(風洞内側)および筐体内部側(電源部品側)の両方へ分散させて供給するようにした冷却手法も提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−261352号公報
【特許文献2】特開2008−221927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記特許文献1,2の手法では、ファンの配置に制限があったり、筐体の側面に冷却風を流入させるための開口を設ける必要があるため、冷却のための構造全体が複雑化し、コストアップになってしまうという問題があった。また、この手法では、筐体内部の温度上昇を十分には低減できない場合も生じていた。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、低コスト化を図りつつ冷却性を向上させることが可能なことが可能な電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電源装置は、1または複数の高温部品を含む部品群を用いて構成された電源部と、上記部品群を搭載する回路基板と、この回路基板を支持するベースプレートとを備えると共に、このベースプレートが、上記回路基板を支持する支持面と、この支持面の反対側において外部部材としての風洞に面する風洞面と、上記支持面上において回路基板と熱的に接続されるように形成され、上記支持面側と上記風洞面側とを連通させるための開口部もしくは切欠き部を有する段差加工部とを有するものである。なお、このような段差加工部としては、例えば、Z曲げ部、切り起こし部または絞り部などを用いて構成することが可能である。
【0008】
本発明の電源装置では、ベースプレートにおける回路基板の支持面上に、この支持面側と風洞面側とを連通させるための開口部もしくは切欠き部を有する段差加工部が設けられていることにより、風洞面側(風洞内)を流れる冷却風の一部が、この段差加工部(具体的には、開口部もしくは切欠き部)を介して上記支持面側(回路基板側)へも流入するようになる。したがって、この流入した冷却風によって、従来と比べて簡易な構造で、電源部において発生した熱による温度上昇が抑えられる。また、上記段差加工部が回路基板と熱的に接続されていることにより、電源部において発生した熱が、回路基板から段差加工部を介して放熱される。すなわち、段差加工部を介した冷却風の流入と放熱経路とにより、従来と比べて効果的な温度上昇抑制(冷却)が簡易な構造で実現される。
【0009】
本発明の電源装置では、上記段差加工部を、上記高温部品の搭載位置に対応して配置するようにするのが好ましい。このように構成した場合、高温部品での温度上昇が効率的に放熱されるため、より効果的な温度上昇抑制(冷却)が実現される。
【0010】
本発明の電源装置では、上記風洞面上にフィンを設けるようにするのが好ましい。このように構成した場合、このフィンに対して風洞面上(風洞内)の冷却風が供給されることにより、フィンを介してベースプレート全体が冷却されるようになる。したがって、より効果的な温度上昇抑制(冷却)が実現される。また、この場合において、上記風洞面上におけるフィンの延在方向に沿って、複数の段差加工部を設けるようにするのが更に好ましい。あるいは、上記風洞面上における冷却風の流れる経路に沿って、複数の段差加工部を設けるようにしてもよい。このように構成した場合、冷却風の流入口と流出口とが設けられることになるため、段差加工部が1つだけ設けられている場合と比べて冷却風の流れが良くなり、更に効果的な温度上昇抑制(冷却)が実現される。
【0011】
本発明の電源装置では、上記高温部品を、高発熱の電気部品およびそれと熱的に接続された接続部品とすることが可能である。また、この場合における高発熱の電気部品としては、表面実装型の部品および表面実装型以外の部品のいずれをも用いることが可能である。
【0012】
本発明の電源装置では、上記ベースプレートを、板金加工部材を用いて構成することが可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電源装置によれば、ベースプレートにおける回路基板の支持面上に、この支持面側と風洞面側とを連通させるための開口部もしくは切欠き部を有する段差加工部を設けると共に、この段差加工部が回路基板と熱的に接続されているようにしたので、この段差加工部を介した冷却風の流入と放熱経路とにより、従来と比べて効果的な放熱を簡易な構造で実現することができる。よって、低コスト化を図りつつ放熱性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態に係る電源装置の構成を表す回路図である。
【図2】図1に示した電源装置の主要部の外観構成例を表す斜視図である。
【図3】図1に示した電源装置の主要部の外観構成例を表す平面図である。
【図4】図1に示した電源装置の主要部の外観構成例を表す分解斜視図である。
【図5】実施の形態に係る電源装置の主要部等の構成例を表す模式断面図である。
【図6】実施の形態に係る電源装置の主要部等の他の構成例を表す模式断面図である。
【図7】図1に示した電源装置における基本動作を説明するための回路図である。
【図8】図7に続く基本動作を説明するための回路図である。
【図9】比較例に係る電源装置の主要部等の構成を表す模式断面図である。
【図10】本発明の変形例に係る電源装置の主要部等の構成を表す模式断面図である。
【図11】本発明の変形例に係るベースプレートの外観構成を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
[実施の形態]
(電源装置の回路構成)
図1は、本発明の一実施の形態に係る電源装置(スイッチング電源装置)の回路構成を表すものである。このスイッチング電源装置は、高圧バッテリ10から入力端子T1,T2を介して供給される直流入力電圧Vinに対して電圧変換を行うことによって直流出力電圧Voutを生成し、図示しない低圧バッテリに供給して負荷6を駆動するものである。すなわち、このスイッチング電源装置は、高圧の直流入力電圧Vinをより低圧の直流出力電圧Voutに変換するDC−DCコンバータとして機能するようになっている。
【0017】
このスイッチング電源装置は、1次側高圧ラインL1Hと1次側低圧ラインL1Lとの間に設けられたスイッチング回路1および入力平滑コンデンサ2と、トランス3と、このトランス3の2次側に設けられた整流回路4と、この整流回路4に接続された平滑回路5とを備えている。すなわち、このスイッチング電源装置は、後述する1または複数の高温部品(高発熱の電気部品およびそれと熱的に接続された接続部品)を含む部品群(電気部品群および接続部品群)を用いて構成されている。
【0018】
入力平滑コンデンサ2は、入力端子T1,T2から入力された直流入力電圧Vinを平滑化するためのものである。
【0019】
スイッチング回路1は、4つのスイッチング素子S1〜S4により構成されたフルブリッジ型の回路構成となっている。具体的には、スイッチング素子S1,S2の一端同士が互いに接続されると共にスイッチング素子S3,S4の一端同士が互いに接続され、これらの一端同士は、トランス3の1次側巻線(後述する1次側巻線31)を介して互いに接続されている。スイッチング素子S1,S3の他端同士は1次側高圧ラインL1H上で互いに接続され、スイッチング素子S2,S4の他端同士は1次側低圧ラインL1L上で互いに接続されている。このような構成によりスイッチング回路1では、図示しない駆動回路から供給される駆動信号に従って、直流入力電圧Vinを交流電圧に変換して出力するようになっている。なお、これらのスイッチング素子S1〜S4としては、例えば電界効果型トランジスタ(MOS−FET;Metal Oxide Semiconductor-Field Effect Transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などのスイッチ素子が用いられる。
【0020】
トランス3は、磁芯30と、1次側巻線31および2次側巻線32A,32Bとを有している。1次側巻線31の両端はそれぞれ、上記したようにスイッチング回路1に接続されている。2次側巻線32Aの一端は後述する整流ダイオード4Aのカソードに接続され、2次側巻線32Bの一端は後述する整流ダイオード4Bのカソードに接続され、これら2次側巻線32A,32Bの他端同士は、互いに出力ラインLO上の接続点C(センタタップ)に接続されている。このトランス3は、スイッチング回路1によって生成された交流電圧(トランス3の1次側に入力される交流電圧)を変圧し、一対の2次側巻線32A,32Bの各端部A,Bから、互いに180度位相が異なる変圧された交流電圧を出力するようになっている。なお、この場合の変圧の度合いは、1次側巻線31と2次側巻線32A,32Bとの巻数比によって定まる。
【0021】
整流回路4は、一対の整流ダイオード4A,4Bを用いて構成された単相全波整流型のものである。整流ダイオード4Aのカソードは2次側巻線32Aの他端Aに接続され、整流ダイオード4Bのカソードは2次側巻線32Bの他端Bに接続されている。また、これら整流ダイオード4A,4Bのアノード同士は接続点D1において互いに接続され、接地ラインLGに接続されている。つまり、この整流回路4はセンタタップ型のアノードコモン接続の構成となっており、トランス3の2次側から出力される変圧された交流電圧の各半波期間を、それぞれ整流ダイオード4A,4Bによって個別に整流して出力するようになっている。
【0022】
平滑回路5は、チョークコイル51および出力平滑コンデンサ52により構成されている。チョークコイル51は出力ラインLOに挿入配置されており、一端がセンタタップCに接続され、他端が出力ラインLO上の出力端子T3に接続されている。平滑コンデンサ52は、出力ラインLO(具体的には、チョークコイル51の他端)と接地ラインLGとの間に接続されている。また、接地ラインLGの端部には出力端子T4が設けられている。このような構成により平滑回路5では、整流回路4において整流された電圧を平滑化して直流出力電圧Voutを生成し、これを出力端子T3,T4から低圧バッテリ(図示せず)に出力して給電するようになっている。
【0023】
(電源装置の外観構成)
次に、図2〜図6を参照して、このような回路構成からなる電源装置(スイッチング電源装置)の外観構成について説明する。図2〜図6は、このスイッチング電源装置の主要部の外観構成をそれぞれ、斜視図,平面図(X−Y平面図),分解斜視図,断面図(Y−Z断面図)で表したものである。なお、これらの図のうち、図5および図6は、断面図を模式的に表したものである。
【0024】
図2〜図5に示したように、このスイッチング電源装置では、多層配線を有する配線基板(回路基板)7上に、上述した種々の電気部品群(回路部品群)を含む部品群が搭載されている。具体的には、この配線基板7上には主に、スイッチング回路1を構成するスイッチング素子S1〜S4と、入力平滑コンデンサ2と、トランス3を構成する磁芯30等と、整流回路4を構成する整流ダイオード4A,4Bと、平滑回路5を構成するチョークコイル51および出力平滑コンデンサ52とが配置されている。これらの回路部品は、配線基板7の裏面や内層(図示せず)等において、図1で示したような態様で互いに接続されている。なお、このような回路部品(電気部品)同士の接続は、例えばネジ等の接続部品(図示せず)によりなされるようになっている。
【0025】
これらの部品群および配線基板7は、図5に示したように、以下説明するベースプレート8上において、筐体カバー90によって全体が覆われている(ほぼ隙間なく覆われている)。これは、ベースプレート8とこの筐体カバー90とからなる筐体9によって、外気に含まれる塵や埃等に対して電気部品群を保護するためである。
【0026】
このスイッチング電源装置ではまた、配線基板7が、この配線基板7に対する基体としてのベースプレート8により支持(固定)されている。すなわち、ベースプレート8は、配線基板7における上記電気部品群に対して対向配置されている。このベースプレート8は、例えばアルミニウム合金(具体的には、JIS規格におけるA5052等)などからなると共に、板金加工により作製された板金加工部材(板状部材)により構成されており、配線基板7に接続されて固定されている(一体化されている)。なお、このようなベースプレート8において、図示しない側壁面が設けられているようにしてもよい。
【0027】
このベースプレート8はまた、上記した電気部品群を含む部品群に対する放熱材としての役割も果たすようになっている。具体的には、まず、図5に示したように、ベースプレート8における配線基板7に対する支持面の反対側(対向側)には、このベースプレート8全体を冷却するためのフィン(平板フィン)80が、Z軸方向へ向かって立設されている。また、このフィン80は、スイッチング電源装置の外部部材としての風洞100内に配置されるようになっている。すなわち、フィン80は、ベースプレート8における風洞100に面する風洞面Sw上に設けられている。この風洞100は、例えば図5中に示した冷却風W11,W12,W13のように、その中を冷却風が通る(流入および流出する)ように構成されているものである。
【0028】
また、図4および図5に示したように、ベースプレート8における上記支持面上には、風洞面Sw側への開口部810,820付きの段差加工部81,82が(板金加工)形成されている。具体的には、ここでこれらの段差加工部81,82はそれぞれ、ベースプレート8の一部をZ軸方向に折り曲げ加工されてなるZ曲げ部により構成されている。このZ曲げ部は、配線基板7とベースプレート8との間をネジ等の接続部品によって固定(接続)するための領域としても機能し、所定の高さを伴ってこれらの間を固定するための最も安価な手法となっている。また、ここでは図5に示したように、これら2つの段差加工部81,82は、風洞面Sw上におけるフィン80の延在方向(Y軸方向;冷却風の流れる方向(流れる経路))に沿って設けられている。すなわち、段差加工部82が風洞100内の冷却風の上流側(流入側)に設けられることにより、この段差加工部82における開口部820が、後述する冷却風の流入口として機能している。一方、段差加工部81が風洞100内の冷却風の下流側(流出側)に設けられることにより、この段差加工部81における開口部810が、後述する冷却風の流出口として機能している。なお、これらの流入口(開口部820)と流出口(開口部810)とのZ軸上の間隔は、冷却風の流れる方向(Z軸方向)の装置長さよりも短くなっていることが望ましい。これにより、冷却風が筐体9内へ流入および流出し易くなるからである。
【0029】
このような段差加工部81,82はそれぞれ、図4および図5に示したように、上記支持面上において配線基板7と熱的に接続されるように配置されている。また、ここでは、これらの段差加工部81,82はそれぞれ、配線基板7上の部品群のうちの少なくとも1つの高温部品の搭載位置に対応して配置されている。なお、これらの段差加工部81,82と配線基板7または高温部品とは、例えばシリコーン樹脂等からなる熱伝導部材を介して熱的に接続されているようにしてもよい。ここで、この高温部品とは、高発熱の電気部品およびそれと熱的に接続された接続部品(例えば、高発熱の電気部品における電気端子に接続する接続バスバー、あるいは、高発熱の電気部品における電気端子やこの接続バスバーを段差加工部81,82等に固定するネジなど)のことである。また、ここで言う高発熱の電気部品とは、例えばスイッチング素子等に用いられるトランジスタや、整流素子等に用いられるダイオードなどの、いわゆるパワー半導体(電力用半導体としてのパワー半導体デバイス、パワー半導体素子等、あるいはそれらを含むモジュール)を用いた電子部品や、トランスやコイル等の部品のことである。なお、図中に示されるように、これらの高発熱の電気部品は、表面実装型の部品であっても、あるいは表面実装型以外の部品であってもよく、実装方法にはよらない。具体的には、図4および図5に示した例では、段差加工部81は、配線基板7上におけるスイッチング素子S1〜S4の搭載位置に対応して選択的に配置され、段差加工部82は、配線基板7上における整流ダイオード4A,4Bの搭載位置に対応して選択的に配置されている。また、段差加工部82は、配線基板7上におけるチョークコイル51の接続端子510と、この段差加工部82との間のネジ(金属ネジ)70によるネジ留め位置にも対応して配置されている。このようにして、端子やバスバーを段差加工部82にネジ留めしているため、配線基板7をベースプレート8に固定するためのボス機能を、この段差加工部82に持たせるようにすることができる。これにより、ベースプレート8上に設けるボスの個数を削減して低コスト化を図ることが可能となる。また、高温部品の端子やバスバーから、金属ネジをも介して放熱することが可能となるため、他の部品へ熱が伝わるのを抑えることができ、放熱性が更に向上するという効果も得られる。
【0030】
なお、図4および図5では、段差加工部81,82が、配線基板7上におけるスイッチング素子S1〜S4および整流ダイオード4A,4Bの搭載位置に対応して選択的に配置されているが、この場合には限られない。すなわち、例えば図6に示したように、段差加工部81,82が、配線基板7上におけるスイッチング素子S1〜S4および整流ダイオード4A,4Bの搭載位置以外の領域に対応して配置されているようにしてもよい。このように配置した場合であっても、後述する配線基板7および段差加工部81,82を介した放熱経路は確保されるため、上記した高温部品での温度上昇もある程度抑えられるからである。
【0031】
続いて、本実施の形態の電源装置の作用および効果について説明する。
【0032】
(電源装置の基本動作)
最初に、図7および図8を参照して、電源装置(スイッチング電源装置)の基本動作について説明する。
【0033】
このスイッチング電源装置では、スイッチング回路1において、入力端子T1,T2から供給される直流入力電圧Vinがスイッチングされて交流電圧が生成され、この交流電圧がトランス3の1次側巻線31へ供給される。そしてトランス3ではこの交流電圧が変圧され、2次側巻線32A,32Bから、変圧された交流電圧が出力される。
【0034】
次に、整流回路4では、この変圧された交流電圧が整流ダイオード4A,4Bによって整流される。これにより、センタタップC(出力ラインLO)と整流ダイオード4A,4Bの接続点D1との間に、整流出力が発生する。この整流出力は平滑回路5において平滑化され、出力端子T3,T4から直流出力電圧Voutとして出力される。そしてこの直流出力電圧Voutは、図示しない低圧バッテリに給電されてその充電に供されると共に、負荷6が駆動される。
【0035】
ここで、このスイッチング電源装置では、スイッチング回路1において、スイッチング素子S1,S4がオン状態になる期間と、スイッチング素子S2,S3がオン状態になる期間とが、交互に繰り返される。したがって、このスイッチング電源装置の動作をより詳細に説明すると、以下のようになる。
【0036】
まず、図7に示したように、スイッチング回路1のスイッチング素子S2,S3がそれぞれオフ状態になると共にスイッチング素子S1,S4がオン状態になると、トランス3の1次側には、高圧バッテリ10から、スイッチング素子S1、1次側巻線31およびスイッチング素子S4を順に流れる電流(1次側ループ電流)Ia1が流れる。すると、トランス3の2次側巻線32A,32Bにそれぞれ現れる電圧VOA,VOBは、整流ダイオード4Bに対して逆方向となる一方、整流ダイオード4Aに対して順方向となる。このため、トランス3の2次側には、整流ダイオード4Aから2次側巻線32A、そして出力ラインLOへ、出力電流Ixが流れる。これにより、直流出力電圧Voutが図示しない低圧バッテリに給電されると共に、負荷6が駆動される。
【0037】
また、このときトランス3の2次側には、整流ダイオード4A、2次側巻線32A、チョークコイル51および出力平滑コンデンサ52を順に通る電流(2次側ループ電流)Ia2も流れる。これにより、出力平滑コンデンサ52への充電(エネルギーの蓄積)が行われる。
【0038】
一方、図8に示したように、スイッチング回路1のスイッチング素子S1,S4がオフ状態になると共にスイッチング素子S2,S3がオン状態になると、トランス3の1次側には、高圧バッテリ10から、スイッチング素子S3、1次側巻線31およびスイッチング素子S2を順に流れる電流(1次側ループ電流)Ib1が流れる。すると、トランス3の2次側巻線32A,32Bにそれぞれ現れる電圧VOA,VOBは、整流ダイオード4Aに対して逆方向となる一方、整流ダイオード4Bに対して順方向となる。このため、トランス3の2次側には、整流ダイオード4Bから2次側巻線32B、そして出力ラインLOへ、出力電流Ixが流れる。これにより、直流出力電圧Voutが図示しない低圧バッテリに給電されると共に、負荷6が駆動される。
【0039】
また、このときトランス3の2次側には、整流ダイオード4B、2次側巻線32B、チョークコイル51および出力平滑コンデンサ52を順に通る電流(2次側ループ電流)Ib2も流れる。これにより、出力平滑コンデンサ52への充電(エネルギーの蓄積)が行われる。
【0040】
(特徴的部分の作用)
次に、図2〜図6に加えて図9を参照して、本実施の形態の電源装置における特徴的部分の作用について、比較例と比較しつつ詳細に説明する。図9は、比較例に係る従来の電源装置の主要部等の外観構成を模式断面図で表したものである。
【0041】
(比較例)
まず、図9に示した比較例の電源装置では、本実施の形態と同様に、配線基板107上に、スイッチング素子S1〜S4および整流ダイオード4A,4B等の電気部品群を含む部品群が搭載されている。この配線基板107は、基体としてのベースレプレート108により支持(固定)されている。配線基板107および上記部品群はそれぞれ、筐体109により覆われている。ただし、本実施の形態の筐体9(筐体カバー90)とは異なり、この筐体109の側面には開口部109A,109Bが設けられている。また、上記したベースプレート108における基板107の搭載面とは反対側には、冷却用のフィン108Aが設けられている。
【0042】
このフィン108Aは、図中の冷却風W101,W102,W103等が通る風洞100内に配置され、これによりベースプレート108全体が冷却されるようになっている。このような風洞100内での冷却風は、図示しないファンによって供給されている。また、上記した筐体109内にも、このファンから供給される冷却風(図中の冷却風W201,W202等)から、開口部109A,109Bを介して流入する。これにより、筐体109内部での電気部品群における発熱による温度上昇が抑えられるようになっている。すなわち、この比較例の冷却手法では、筐体109の外部に冷却風を供給するためのファンを設け、このファンからの冷却風をフィン108A側(風洞100内側)および筐体109内部側(部品群側)の両方へ分散させて供給するようにしている。
【0043】
ところが、この比較例の冷却手法では、ファンの配置に制限があったり、冷却風をフィン108A側と筐体109内部との両方へ分散させる手段を設けたり、筐体109の側面に冷却風を流入させるための開口109A,109Bを設けたりする必要がある。そのため、冷却のための構造全体が複雑化し、コストアップになってしまう。また、この冷却手法では、開口部109A,109Bの形成位置や、配線基板107上における電気部品群の搭載位置によって、筐体109内部の温度上昇を十分には低減できない場合も生じ得る。
【0044】
(本実施の形態の作用)
これに対して、本実施の形態の電源装置(スイッチング電源装置)では、図4〜図6に示したように、ベースプレート8における配線基板7の支持面上に、風洞面Sw側への開口部810,820付きの段差加工部81,82が設けられている。これにより、風洞面Sw側(風洞100内)を流れる冷却風の一部(例えば、図5中の冷却風W14,W15)が、これらの段差加工部81,82(具体的には、開口部810,820)を介して、筐体9内(配線基板7側)へも流入するようになる。したがって、この流入した冷却風W14,W15等によって、上記比較例と比べて簡易な構造で、配線基板7上の温度上昇(高発熱の電気部品等において発生した熱による温度上昇)が抑えられる。
【0045】
また、本実施の形態では、このような段差加工部81,82がそれぞれ、配線基板7と熱的に接続されている。これにより、例えば図5に示した熱量Q1,Q2のように、配線基板7上の高発熱の電気部品等により発生した熱が、この配線基板7から段差加工部81,82を介して放熱される。このようにして、段差加工部81,82を介した冷却風W14,W15等の流入と、上記した熱量Q1,Q2等の放熱経路とにより、上記比較例と比べて効果的な温度上昇抑制(冷却)が簡易な構造で実現される。
【0046】
以上のように本実施の形態では、ベースプレート8における配線基板7の支持面上に、風洞面Sw側への開口部810,820付きの段差加工部81,82を設けると共に、これらの段差加工部81,82がそれぞれ、配線基板7と熱的に接続されているようにしたので、段差加工部81,82を介した冷却風W14,W15等の流入と、上記した熱量Q1,Q2等の放熱経路とにより、従来と比べて効果的な温度上昇抑制(冷却)を簡易な構造で実現することができる。よって、低コスト化を図りつつ冷却性を向上させることが可能となる。
【0047】
また、段差加工部81,82をそれぞれ、配線基板7上の部品群のうちの少なくとも1つの高温部品(例えば、スイッチング素子S1〜S4や整流ダイオード4A,4B等)の搭載位置に対応して配置するようにした場合には、高温部品での温度上昇が効率的に放熱されるため、より効果的な放熱を実現することができる。
【0048】
更に、ベースプレート8における風洞面Sw上にフィン80を設けるようにしたので、このフィン80に対して風洞面Sw上(風洞100内)の冷却風W11〜W13等が供給され、フィン80を介してベースプレート8全体が冷却されるようになる。よって、より効果的な温度上昇抑制(冷却)を実現することができる。ただし、場合によっては、このようなフィン80をベースプレート8上に設けないようにしてもよい。
【0049】
加えて、風洞面Sw上におけるフィン80の延在方向(Z軸方向)に沿って、複数(2つ)の段差加工部81,82を設けるようにしたので、筐体9内への冷却風の流入口と流出口とが設けられることになり、段差加工部が1つだけ設けられている場合(例えば、後述する図10に示した場合)と比べ、冷却風の流れが良くなる。よって、更に効果的な温度上昇抑制(冷却)を実現することができる。
【0050】
[変形例]
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0051】
例えば、上記実施の形態では、図5,図6に示したように、ベースプレート8上に複数(2つ)の段差加工部81,82を設けるようにした場合について説明したが、段差加工部の数はこれには限られない。すなわち、例えば図10(A),(B)に模式的に示したベースプレート(板金加工部材)8Aのように、ベースプレート8における風洞面Sw上に単一(1つ)の段差加工部82を設けるようにしてもよい。ただし、上記実施の形態のように、冷却風の上流側および下流側のそれぞれについて、少なくとも1つずつ設けるようにするほうが望ましい。
【0052】
また、上記実施の形態では、段差加工部81,82がそれぞれ、開口部810,820付きのZ曲げ部である場合について説明したが、段差加工部の形状はこれには限られず、他の形状としてもよい。すなわち、例えば図11(A)に示したベースプレート(板金加工部材)8Bのように、段差加工部83が、一対の開口部830A,830B付きの切り起こし部であるようにしてもよい。あるいは、例えば図11(B)に示したベースプレート(板金加工部材)8Cのように、段差加工部84が、1または複数の開口部840付きの絞り部であるようにしてもよい。また、これまでは、段差加工部81〜84がそれぞれ、開口部付きの段差加工部である場合について説明したが、このような開口部の代わりに(開口部に加えて)、切欠き部付きの段差加工部としてもよい。
【0053】
更に、上記実施の形態では、主に、段差加工部81,82に対して、部品群における高温部品の全てを対応して配置させる場合について説明したが、全ての高温部品を対応して配置させるのではなく、高温部品のうちの少なくとも1つを対応して配置させるようにすればよい。
【0054】
加えて、上記実施の形態では、配線基板7の表面(一方側の面)上にのみ部品群が搭載されている場合について説明したが、この場合には限られない。すなわち、例えば、配線基板7の表面上だけでなく、裏面(他方側の面)上にも部品群の一部が搭載されていてもよく、あるいは、部品群の一部が配線基板7に内蔵して搭載されていてもよい。そして、これらの場合においても、高温部品に対応する位置やそれ以外の領域に、段差加工部が配置されていてもよい。また、これらの場合において、配線基板7の裏面側の高温部品に対して、段差加工部を直接に熱的に接続するようにしてもよい。
【0055】
また、これまで説明した各種の段差加工部に、ベースプレート8と配線基板7との接続位置の高さを調整するためのボス機能を併せて持たせるようにしてもよい。
【0056】
更に、上記実施の形態では、ベースプレート8として板金加工部材を用いる場合について説明したが、このようなベースプレートとして、他のものを用いるようにしてもよい。
【0057】
加えて、上記実施の形態では、フィン80が平板フィン(平行平板フィン)である場合について説明したが、この場合には限られず、例えばフィン80をピンフィンにより構成してもよい。
【0058】
また、上記実施の形態では、スイッチング回路1がフルブリッジ型のスイッチング回路である場合について説明したが、スイッチング回路の構成はこれには限られず、例えば、ハーフブリッジ型やプッシュプル型、フォワード型などの構成でもよい。
【0059】
更に、上記実施の形態では、整流回路4が、センタタップ型アノードコモン接続の整流回路である場合について説明したが、整流回路の構成はこれには限られない。具体的には、例えば、アノードコモン接続ではなくカソードコモン接続のセンタタップ型でもよく、また、センタタップ型以外(例えば、ハーフブリッジ型やフォワード型、フライバック型など)の構成でもよい。また、全波整流型の整流回路ではなく、半波整流型の整流回路でもよい。
【0060】
加えて、上記実施の形態では、直流入力電圧Vinを降圧することにより直流出力電圧Voutを生成する降圧型のDC−DCコンバータについて説明したが、本発明は、逆に、直流入力電圧Vinを昇圧することにより直流出力電圧Voutを生成する昇圧型のDC−DCコンバータにも適用することが可能である。また、これらのような一方向へ出力電圧を出力するものには限られず、双方向へ出力電圧を出力可能な双方向コンバータや、多出力型のコンバータにも適用することが可能である。
【0061】
また、上記実施の形態では、電源装置の一例としてDC−DCコンバータを挙げて説明したが、本発明は、DC−DCコンバータ以外の電源装置(例えば、AC−DCコンバータやDC−ACインバータなど)にも適用することが可能である。
【0062】
更に、これまで説明した変形例等を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0063】
10…高圧バッテリ、100…風洞、1…スイッチング回路、2…入力平滑コンデンサ、3…トランス、30…磁芯、31…1次側巻線、32A,32B…2次側巻線、4…整流回路、4A,4B…整流ダイオード、5…平滑回路、51…チョークコイル、510…接続端子、52…出力平滑コンデンサ、6…負荷、7…配線基板(回路基板)、70…ネジ、8,8A〜8C…ベースプレート(板金加工部材)、80…フィン(平板フィン)、81〜84…段差加工部、810,820,830A,830B,840…開口部、90…筐体カバー、9…筐体、T1,T2…入力端子、T3,T4…出力端子、L1H…1次側高圧ライン、L1L…1次側低圧ライン、LO…出力ライン、LG…接地ライン、A,B…端部、C…接続点(センタタップ)、D1…接続点、S1〜S4…スイッチング素子、Vin…直流入力電圧、Vout…直流出力電圧、VOA,VOB…電圧、Ia1,Ib1…1次側ループ電流、Ia2,Ib2…2次側ループ電流、Ix…出力電流、Sw…風洞面、W11〜W15…冷却風、Q1,Q2…熱量。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1または複数の高温部品を含む部品群を用いて構成された電源部と、
前記部品群を搭載する回路基板と、
前記回路基板を支持するベースプレートと
を備え、
前記ベースプレートは、
前記回路基板を支持する支持面と、
前記支持面の反対側において、外部部材としての風洞に面する風洞面と、
前記支持面上において前記回路基板と熱的に接続されるように形成され、前記支持面側と前記風洞面側とを連通させるための開口部もしくは切欠き部を有する段差加工部と
を有する電源装置。
【請求項2】
前記段差加工部が、前記高温部品の搭載位置に対応して配置されている
請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記風洞面上に、フィンが設けられている
請求項1または請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記風洞面上における前記フィンの延在方向に沿って、複数の段差加工部が設けられている
請求項3に記載の電源装置。
【請求項5】
前記風洞面上における冷却風の流れる経路に沿って、複数の段差加工部が設けられている
請求項1または請求項2に記載の電源装置。
【請求項6】
前記高温部品が、高発熱の電気部品およびそれと熱的に接続された接続部品である
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−139601(P2011−139601A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298128(P2009−298128)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】