説明

電源装置

【課題】ノイズの発生や発熱などを抑制し、サイズを小型化できる電源装置を提供する。
【解決手段】偏差量判定手段23において目標値とDC/DCコンバータ1の出力端子へ出力されている現在のDC/DCコンバータ出力電圧との偏差が上限値と下限値とであらかじめ規定された範囲を超えたと判定された場合に、目標値設定手段21に設定されている前記目標値を、電装機器を含む負荷のリセットが発生しない範囲で所定のレベル幅で段階的に低くし、前記出力端子へ出力されている現在のDC/DCコンバータ出力電圧と前記所定のレベル幅で段階的に低くした目標値との偏差が小さくなるように昇圧部26のチョークコイルの制御を行う目標値制御手段29を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイドルストップシステムを適用した車両に用いて好適な電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エンジン停止による燃料節約と排ガス削減の効果が期待されているアイドルストップシステムを適用した車両が増えている。
このようなアイドルストップシステムにおいては、車載バッテリに接続されている電装機器の負荷が大きいほどエンジン再始動時の車載バッテリの出力電圧の電位が大きく降下する。すなわち、クランキング電位の降下量が大きくなる。
また、エンジン再始動時のクランキング電位の降下量は、車載バッテリの経年変化によっても大きくなる傾向にある。
このエンジン再始動時のクランキング電位が車両の電装機器のリセット電位を下回ると、電装機器はリセット状態となる。
このようなエンジン再始動時のクランキング電位の降下量の増大に伴う電装機器のリセット状態を回避するためには、DC/DCコンバータが電源補助装置として用いられる。
このDC/DCコンバータは、自身の出力をフィードバックしてモニターしており、負荷の大小に応じてコンデンサーへのエネルギー蓄積量を変化させ、常に出力が一定となるように昇圧素子の制御を行い、前記出力の補正を行う。
その補正能力は、クランキング時に発生するクランキング電位のもっとも大きな降下量を補正できる能力が求められる。
このようなDC/DCコンバータを用いた電源装置として特許文献1に示すようなものが提案されている。
すなわち、この電源装置は次の段階を含む制御を行う。
次のキーオフ入力時、現在の運転モードを判断する段階。
現在の運転モードが燃料電池モードの場合、補助バッテリに連結された低電圧DC/DCコンバータを昇圧モードに転換させる段階。
補助バッテリから供給されて低電圧DC/DCコンバータにより昇圧された電圧が高電圧単品に供給されて高電圧単品の駆動状態が維持される段階。
スタックPDUをオフにさせて燃料電池スタックのパワーを遮断する段階。
燃料電池の作動を終了するための停止命令を燃料電池制御装置に伝達して高電圧単品をオフにさせると同時に燃料電池の作動を終了させる段階。
低電圧DC/DCコンバータをオフにさせる段階。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−148541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、従来の電源装置では、負荷が大きくなるほど、より大きな出力が求められる。
また、車載バッテリについても経年変化により劣化し、クランキング時の電圧降下の変動要素となる。
このため、電源装置に用いられるDC/DCコンバータに対しては、これら負荷の増大と車載バッテリの経年変化に伴う劣化に対応するため、より大きな出力、性能が要求されることになる。
DC/DCコンバータの出力の増大については、DC/DCコンバータの回路の特性上、特にチョークコイルを使用する昇圧型DC/DCコンバータの場合には大きなコイル、コンデンサが必要となり、サイズ的に大型化してしまうという課題があった。
また、DC/DCコンバータの性能の向上についても、スイッチング速度の高速化が求められることから、ノイズの発生や発熱などの弊害が生じるという課題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ノイズの発生や発熱などを抑制し、サイズを小型化できる電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、バッテリと負荷との間に介在し、前記負荷へ印加される出力電圧の変動を補正する電源装置であって、前記負荷へ印加される出力電圧の目標値が設定される目標値設定手段と、前記負荷へ印加されている出力電圧を現在値として検出する現在値検出手段と、前記設定された目標値と、前記検出された現在値との偏差量を演算する演算手段と、前記演算手段により演算された前記偏差量が、予め定められた範囲内であるか否かを判定する偏差量判定手段と、前記偏差量判定手段により前記偏差量が前記予め定められた範囲を超えていると判定されると、前記偏差量が前記予め定められた範囲に入るように、前記目標値設定手段に設定されている前記出力電圧の目標値を、前記負荷のリセット電位を下回らない範囲で変更する目標値制御手段と、前記演算手段より演算された前記偏差量をもとに、前記負荷へ印加される出力電圧と前記出力電圧の目標値との差が小さくなるように前記出力電圧を制御する出力電圧制御手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、負荷へ印加される出力電圧の目標値を下げることが可能になるから、前記電源装置自体のノイズや発熱などの発生を抑制できるとともにサイズ的に小型化できる。
したがって、取り付ける場所として確保しなければならないスペースなどの機械的な制約、ノイズや発熱などが他の電気機器へ悪影響を及ぼさないようにする実装上の制限を緩和できる電源装置を提供できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態である電源装置の構成を示す回路図である。
【図2】本発明の実施の形態の電源装置に使用されるDC/DCコンバータの構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態の電源装置に用いられるDC/DCコンバータの動作を示すフローチャートである。
【図4】アイドルストップシステムを適用した車両に本発明の実施の形態の電源装置を用いたときのクランキング電位の電圧降下量とDC/DCコンバータの出力端子の電位Voutを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1は、この実施の形態の電源装置の構成を示す回路図である。
この実施の形態では、アイドルストップシステムを適用した車両にこの電源装置を用いた場合において、クランキング電位の電圧降下量が増大するエンジン再始動時を例に説明する。
この電源装置は、DC/DCコンバータ1とバッテリ2とを備えており、バッテリ2から出力される直流電力をDC/DCコンバータ1を介して負荷10へ供給する。
DC/DCコンバータ1は、チョークコイル3、ダイオード4、NチャネルMOSトランジスタ5、出力コンデンサ6、制御回路7、入力端子8および出力端子9を備えている。
バッテリ2の正極側端子は、DC/DCコンバータ1の入力端子8と接続されている。
DC/DCコンバータ1の入力端子8はチョークコイル3の一端と接続されている。
チョークコイル3の他端はダイオード4のアノード端子およびNチャネルMOSトランジスタ5のドレーン端子と接続されている。
NチャネルMOSトランジスタ5のソース端子は接地され、またゲート端子は制御回路7の制御信号出力端子と接続されている。
ダイオード4のカソード端子は出力コンデンサ6の正極端子と接続されるとともに、DC/DCコンバータ1の出力端子9と接続されている。
DC/DCコンバータ1の出力端子9は負荷10の電源ラインと接続される。
制御回路7は、たとえばA/Dコンバータ、D/Aコンバータを含むアナログ回路、論理回路、マイクロコンピュータあるいはDSP(Digital Signal Processor)などにより構成されている。
また、DC/DCコンバータ1の出力端子9は制御回路7のフィードバック入力端子と接続されており、DC/DCコンバータ1の出力端子9の電位が制御回路7へフィードバックされるように構成されている。
【0010】
図2は、この実施の形態の電源装置に使用されるDC/DCコンバータ1の構成を示すブロック図である。
DC/DCコンバータ1は、目標値設定手段21、演算部22、偏差量判定手段23、操作量算出手段24、操作量出力手段25、昇圧部26、DC/DCコンバータ出力手段27、現在値検出手段28および目標値制御手段29を備えている。
目標値設定手段21、演算部22、偏差量判定手段23、操作量算出手段24、操作量出力手段25、現在値検出手段28および目標値制御手段29の各機能ブロックは制御回路7によって構成されている。
【0011】
また、昇圧部26は、図1に示すDC/DCコンバータ1のチョークコイル3およびNチャネルMOSトランジスタ5に相当する。
DC/DCコンバータ出力手段27は図1に示すDC/DCコンバータ1のダイオード4および出力コンデンサ6に相当する。
【0012】
DC/DCコンバータ1は目標とする出力端子9の電位が可変できるように構成されており、この目標とする出力端子9の電位は目標値として目標値設定手段21に設定される。
DC/DCコンバータ1は出力端子9の電位をフィードバックして昇圧部26の昇圧素子、チョークコイル3の制御を行う。つまり、現在の出力端子9の電位と、目標とする出力端子9の電位である目標値との偏差を常に監視し、前記現在の出力端子9の電位と前記目標値との偏差がなくなるようにチョークコイル3の制御を行う。
この実施の形態では、DC/DCコンバータ1は、クランキング電位の電圧降下量が増大するエンジン再始動時、電装機器を含む負荷10の影響が大きく、チョークコイル3の制御が間に合わず、出力端子9の電圧降下が大きくなり目標値との偏差量が一定の範囲を超えると、電装機器を含む負荷10のリセットが発生しない範囲で前記目標値を低くして、前記現在の出力端子9の電位と前記目標値との偏差がなくなるようにチョークコイル3の制御を行う。
【0013】
目標値設定手段21には、DC/DCコンバータ1の目標とする出力端子9の電位が目標値として設定される。この目標値の設定は、たとえば所定のレジスタにディジタルデータとして設定し、あるいは抵抗回路の分圧値として設定することが可能である。
【0014】
演算部22は、目標値設定手段21に設定された前記目標値と現在値検出手段28により現在値として検出されフィードバックされた現在の出力端子9の電位との偏差を演算する。
【0015】
偏差量判定手段23は、前記演算部22で演算された前記目標値と前記現在値であるフィードバックされた現在の出力端子9の電位との偏差が上限値と下限値とで規定される予め定められた範囲内であるか否かを判定する。
【0016】
操作量算出手段24は、前記目標値と前記フィードバックされた現在の出力端子9の電位との偏差が前記上限値と下限値とで規定される予め定められた範囲内である場合、現在の出力端子9の電位を前記目標値へ一致させるための操作量を算出する。
【0017】
操作量出力手段25は、操作量算出手段24で算出した操作量を昇圧部のNチャネルMOSトランジスタ5へ出力する。
この操作量は、制御回路7の制御信号出力端子からNチャネルMOSトランジスタ5のゲート端子へ出力される制御信号のデューティ比として規定され、NチャネルMOSトランジスタ5のスイッチング周波数を変化させる。
【0018】
昇圧部26では、NチャネルMOSトランジスタ5が前記スイッチング周波数でオン/オフされる。
そして、NチャネルMOSトランジスタ5がオンになっている期間、チョークコイル3に流れる電流によりチョークコイル3にエネルギーが蓄積され、NチャネルMOSトランジスタ5がオフになると前記蓄積されたエネルギーが放出される。
この放出されたエネルギーはバッテリ2から入力端子8へ入力されている直流電圧Vinに加算されてダイオード4を経由して出力コンデンサ6へ充電される。
【0019】
DC/DCコンバータ出力手段27は、ダイオード4を経由して出力コンデンサ6へ充電されたエネルギーをDC/DCコンバータ出力として出力端子9から負荷10へ供給する。
【0020】
現在値検出手段28は、出力端子9へ出力されている現在のDC/DCコンバータ出力電圧を現在値として検出し、制御回路7の演算部22へフィードバックする。
【0021】
目標値制御手段29は、偏差量判定手段23において前記目標値と現在値検出手段28により検出された前記現在値、つまり前記出力端子9へ出力されている現在のDC/DCコンバータ出力電圧との偏差量が前記上限値と下限値とで規定される予め定められた範囲を超えたと判定された場合に、目標値設定手段21に設定されている目標値を、前記偏差量が前記予め定められた範囲に入るように、電装機器を含む負荷10のリセットが発生しない範囲で所定のレベル幅で段階的に低くする。そして、前記出力端子9へ出力されている現在のDC/DCコンバータ出力電圧と前記所定のレベル幅で低くした目標値との偏差が小さくなるように昇圧部26のチョークコイル3の制御を行う。
【0022】
図3は、この実施の形態の電源装置に用いられるDC/DCコンバータ1の動作を示すフローチャートである。
図4は、アイドルストップシステムを適用した車両にこの実施の形態の電源装置を用いたときのエンジン再始動時のクランキング電位の電圧降下量とDC/DCコンバータ1の出力端子9の電位Voutを示す説明図である。
以下、図3のフローチャートに従って、この実施の形態の電源装置の動作について説明する。
【0023】
先ず、この電源装置が適用された車両はアイドルストップシステムによりエンジンが停止した状態にある。このため、バッテリは電装機器を含む負荷10へ電力を供給している状態にある。
このときバッテリ2に充分な電力供給能力が維持されていると、DC/DCコンバータ1の出力端子9の電位Voutの電圧降下は小さく、現在の出力端子9の電位Voutと前記目標値Voとの偏差量Vd1は上限値と下限値とで規定される予め定められた範囲内の状態を維持している。
また、制御回路7は目標値Voを目標値設定手段21へ設定した状態にある。この目標値Voは、DC/DCコンバータ1の出力端子9の電位として制御回路7により目標値設定手段21へ設定される初期値である。
【0024】
この状態でアイドルストップシステムが解除され、エンジンの始動操作が行われる。
制御回路7は、現在値検出手段28により現在の出力端子9の電位Voutを検出し、前記検出した現在の出力端子9の電位Voutと前記目標値Voとの偏差量Vd1を演算部22で算出する(ステップS1)。
さらに、この偏差量Vd1が前記上限値と下限値とで規定される予め定められた範囲内であるか否かを偏差量判定手段23で判定する(ステップS2)。
アイドルストップシステムが解除されエンジンが始動されたとき、バッテリは図示していないスタータユニットと電装機器を含む負荷10とへ電力を供給している状態になる。
このときバッテリ2に充分な電力供給能力が維持されていると、目標値Voで出力端子9の電位を制御しているDC/DCコンバータ1の能力により出力端子9の電位Voutの電圧降下量は小さく、現在値検出手段28により検出した現在の出力端子9の電位Voutと前記目標値Voとの偏差量Vd1は前記上限値と下限値とで規定される予め定められた範囲内となる。このときのクランキング電位波形を図4に(1)で示す。
偏差量Vd1が前記上限値と下限値とであらかじめ規定された範囲内であると偏差量判定手段23が判定すると、制御回路7の操作量算出手段24は偏差量Vd1をゼロにするように操作量を算出する(ステップS3)。
そして、前記算出した操作量を、たとえばPWM信号として昇圧部26のNチャネルMOSトランジスタ5のゲート端子へ出力する(ステップS4)。
NチャネルMOSトランジスタ5は、前記操作量に応じてオン/オフ動作し、DC/DCコンバータ1の出力端子9の電位Voutの電圧降下量を補償して偏差量Vd1をゼロにする(ステップS5)。
【0025】
一方、ステップS2においてバッテリ2に充分な電力供給能力が維持されていないか、あるいは電装機器の負荷が増大していると、目標値Voで出力端子9の電位を制御しているDC/DCコンバータ1の能力では不十分な状態になる。この結果、出力端子9の電位Voutの電圧降下量は増大し、現在値検出手段28により検出した現在の出力端子9の電位Voutと前記目標値Voとの偏差量Vd2は前記上限値と下限値とであらかじめ規定された範囲を超える。このときのDC/DCコンバータ1の出力端子9の電位Voutの電圧降下量であるクランキング電位波形を図4に(2)で示す。
現在の出力端子9の電位Voutと前記目標値Voとの偏差量Vd2が前記上限値と下限値とであらかじめ規定された範囲を超えたことを偏差量判定手段23が判定すると、目標値制御手段29は、目標値を電装負荷10がリセットしない範囲の最小レベルV まで目標値を下げ、あるいは電装負荷10がリセットしない範囲で一定のレベル幅v、つまりVo−vのレベルまで目標値を下げる(ステップS6)。
【0026】
続いて、演算部22において出力端子9の電位Voutと目標値V との偏差量Vd2あるいは出力端子9の電位Voutと目標値Vo−vとの偏差量Vd2を算出する(ステップS7)。
制御回路7の操作量算出手段24は偏差量Vd2をゼロにするように操作量を算出し(ステップS8)、前記算出した操作量を、たとえばPWM信号として昇圧部26のNチャネルMOSトランジスタ5のゲート端子へ出力する(ステップS4)。
NチャネルMOSトランジスタ5は、前記操作量に応じてオン/オフ動作し、出力端子9の電位Voutの電圧降下量を偏差量Vd2が小さくなるように補償する(ステップS5)。
【0027】
電装負荷が大きく、ステップS6においてVo−vのレベルまで目標値を下げたにもかかわらず、次のサイクルのステップS2で出力端子9の電位Voutと目標値Vo−vとの偏差量Vd2が前記上限値と下限値とであらかじめ規定された範囲を超える場合には、目標値を電装負荷10がリセットしない範囲で、さらに一定の幅vつまりVo−2vのレベルまで目標値を下げる(ステップS6)。
【0028】
以上、説明したように、この実施の形態によれば、DC/DCコンバータ1が動作しているときの出力端子9の電位Voutと目標値V との偏差量Vd2、あるいは出力端子9の電位Voutと目標値Vo−vとの偏差量Vd2が前記上限値と下限値とであらかじめ規定された範囲を超えるか否かを判定し、偏差量Vd2が前記範囲を超えない場合、目標値を変更しないように構成した。
また、偏差量Vd2が前記上限値と下限値とであらかじめ規定された範囲を超える場合、目標値を電装負荷10がリセットしない範囲の最小レベルV まで目標値を下げ、あるいは電装負荷10がリセットしない範囲で一定のレベル幅vごとに目標値を下げるように構成した。
出力端子9の電位Voutを可変できるDC/DCコンバータ1の出力Voutと出力Ioutとの関係は互に反比例する関係にある。つまりIout=C/Voutの関係にあるため、DC/DCコンバータ1の目標値を低くして出力Voutを可変範囲内で低出力V´outに設定すると、出力Voutを低くした分、出力Ioutは増加する。したがって、目標値を電装負荷10がリセットしない範囲で低くしてDC/DCコンバータ1の出力Voutを可変範囲内で低出力V´outに設定することで、その分、出力Ioutの最大値を大きくでき、負荷変動に対するDC/DCコンバータの補償能力を向上できる。
また、DC/DCコンバータ自体をコンパクト化するという面から、チョークコイル3、出力コンデンサ6も小さなものが要求される。このため、電装負荷10の変動範囲が小さい場合、目標値を電装負荷10がリセットしない範囲で低くしてDC/DCコンバータ1の出力Voutを可変範囲内で低出力V´outに設定すると、出力Voutを低出力V´outに設定した分、出力の小さいDC/DCコンバータ1を使用できることになる。この結果、チョークコイル3のインダクタンス値、出力コンデンサ6の容量値を小さくできることになり、DC/DCコンバータ自体の小型化を実現できる。
【0029】
なお、以上説明した実施の形態では、偏差量判定手段23において目標値と現在値検出手段28により検出された出力端子9へ出力されている現在のDC/DCコンバータ出力電圧との偏差量が上限値と下限値とで規定される予め定められた範囲を超えたと判定されると、目標値設定手段21に設定されている目標値を、前記偏差量が前記予め定められた範囲に入るように、電装機器を含む負荷10のリセットが発生しない範囲で所定のレベル幅で段階的に低くするように構成した。そして、前記出力端子9へ出力されている現在のDC/DCコンバータ出力電圧と前記所定のレベル幅で低くした目標値との偏差が小さくなるように昇圧部26のチョークコイル3の制御を行うようにした。
これに対し、エンジン再始動時のDC/DCコンバータ1の出力端子9の電位Voutの電圧降下量の変化率を検出し、前記検出した変化率が上限値と下限値とであらかじめ規定された範囲内であれば目標値を変えず、前記検出した変化率が前記範囲を超えていれば目標値を電装負荷10がリセットしない範囲の最小値まで一定の量ずつ下げるか、あるいは前記検出した変化率に応じた目標値をあらかじめ規定されているデータテーブルから読み出し、DC/DCコンバータの目標値として設定するように構成してもよい。
このように構成した場合にも、目標値を電装負荷10がリセットしない範囲で低くしてDC/DCコンバータ1の出力Voutを可変範囲内で低出力V´outに設定することで、その分、出力Ioutの最大値を大きくでき、負荷変動に対するDC/DCコンバータの補償能力を向上できる。
また、目標値を電装負荷10がリセットしない範囲で低くしてDC/DCコンバータ1の出力Voutを可変範囲内で低出力V´outに設定することで、出力Voutを低出力V´outに設定した分、出力の小さいDC/DCコンバータ1を使用できることになる。この結果、チョークコイル3のインダクタンス値、出力コンデンサ6の容量値を小さくできることになり、DC/DCコンバータ自体の小型化を実現できる。
【符号の説明】
【0030】
1……DC/DCコンバータ、2……バッテリ、7……制御回路、10……負荷、21……目標値設定手段、22……演算手段、23……偏差量判定手段、24……操作量算出手段(出力電圧制御手段)、25……操作量出力手段(出力電圧制御手段)、26……昇圧部(出力電圧制御手段)、27……DC/DCコンバータ出力手段(出力電圧制御手段)、28……現在値検出手段、29……目標値制御手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリと負荷との間に介在し、前記負荷へ印加される出力電圧の変動を補正する電源装置であって、
前記負荷へ印加される出力電圧の目標値が設定される目標値設定手段と、
前記負荷へ印加されている出力電圧を現在値として検出する現在値検出手段と、
前記設定された目標値と、前記検出された現在値との偏差量を演算する演算手段と、
前記演算手段により演算された前記偏差量が、予め定められた範囲内であるか否かを判定する偏差量判定手段と、
前記偏差量判定手段により前記偏差量が前記予め定められた範囲を超えていると判定されると、前記偏差量が前記予め定められた範囲に入るように、前記目標値設定手段に設定されている前記出力電圧の目標値を、前記負荷のリセット電位を下回らない範囲で変更する目標値制御手段と、
前記演算手段より演算された前記偏差量をもとに、前記負荷へ印加される出力電圧と前記出力電圧の目標値との差が小さくなるように前記出力電圧を制御する出力電圧制御手段と、
を備えたことを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記目標値制御手段による前記出力電圧の目標値の変更は、前記目標値設定手段に設定されている前記出力電圧の目標値を、予め定められた電圧レベルで段階的に低くすることでなされることを特徴とする請求項1記載の電源装置。
【請求項3】
前記出力電圧制御手段は、チョークコイルと、前記チョークコイルに流れる電流を制御するためのスイッチング素子とを備え、前記負荷へ印加される出力電圧と前記出力電圧の目標値との差が小さくなるように前記スイッチング素子をオン/オフし、前記出力電圧を制御することを特徴とする請求項1記載の電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−166923(P2011−166923A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26133(P2010−26133)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】