説明

電源装置

【課題】電源と負荷との間に変圧器を使用しない電源装置において、正と負側線路それぞれに挿入される直列回路におけるインダクタの誘導値とキャパシタの容量値とが、非対称であっても、電源側と負荷側との絶縁を図ることができる電源装置を提供すると共に、より容易、より効率的に負荷を駆動できる電源装置を提供する。
【解決手段】正側と負側との線路間に接続されたフルブリッジ回路と、第1インダクタと第1キャパシタとからなる少なくとも1つの直列回路と、第2インダクタと第2キャパシタとからなる少なくとももう1つの直列回路と、を備え、フルブリッジ回路内のスイッチング素子を同時オン駆動し、L1,L2を第1、第2インダクタそれぞれの誘導値、C1,C2を第1、第2キャパシタそれぞれの容量値、K0を、L1・C1/L2・C2=K0とし、負荷の一端側と接地との間に接続された抵抗の両端間電圧が規定電圧より低い電圧となるよう定められる数としたとき、K0が1.7以下の数である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源と負荷との間を、変圧器を使用することなく、絶縁することができるようにした電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電源装置は小型化・軽量化の目的のために、変圧器を用いない電源装置が求められるものの、変圧器がないと、電源側と負荷側との絶縁を保つことが一般には困難である。
【0003】
上記絶縁は、電源が立ち上がっている状態で、当該電源装置に接続する負荷側と接地間に人体等の抵抗体が電気的に接続された状態となった場合に、当該抵抗体両端間電圧を規定の安全電圧以下として上記負荷側を電源側から絶縁し、これにより人体の安全を図るという意義である。
【0004】
そこで、この絶縁のため、電源側と負荷側との間でキャパシタを直列に結合させることも提案されているが、キャパシタにより直流絶縁は可能でも、交流絶縁の確保ができない。
【0005】
そこで、本発明者らは、直流絶縁および交流絶縁もできる発明を提案した(特許文献1、2参照)。
【0006】
特許文献1では図5の構成、特許文献2では図6の構成の電源装置である。
【0007】
これらの図において、1は電源、2a,2bは第1、第2直列回路、3はスイッチング素子回路、4は負荷を示す。これらの図で示す電源装置では、電源1と負荷4との間にはそれらの絶縁をとるための変圧器が使用されていない。
【0008】
第1直列回路2aは、電源1と負荷4との間の正側線路5に第1インダクタL1(誘導値L1)と第1キャパシタC1(容量値C1)とが直列に接続されて構成される。
【0009】
第2直列回路2bは、負側線路6に第2インダクタL2(誘導値L2)と第2キャパシタC2(容量値C2)とが直列に接続されて構成される。
【0010】
これら誘導値と容量値とを図5、図6ではL1・C1=L2・C2でかつ、L1=L2=L、C1=C2=Cの関係を満足することで、電源1側と負荷4側との絶縁を図るようにしている。
【0011】
なお、図5のスイッチング素子回路3は、第1インダクタL1と第1キャパシタC1との接続部a1と第2インダクタL1と第2キャパシタC1との接続部a2との間に挿入されたスイッチング素子SW1で構成される。また、図6のスイッチング素子回路3は、3つの直列の第1ないし第3のスイッチング素子SW1−SW3を備え、第1、第2スイッチング素子SW1,SW2の接続部a3に第1直列回路2a、第2、第3スイッチング素子SW2,SW3の接続部a4に第2直列回路2bが接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003−116268号公報
【特許文献2】国際公開番号WO 2005/062452
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1,2は共に、誘導値と容量値とがL1・C1=L2・C2でL1=L2=L、C1=C2=Cの関係を満足することが絶縁に必要とし、他の誘導値と容量値との関係については、特許文献2には、キャパシタC1,C2の値を対称(共に0.01μF)とし、インダクタL1,L2の値を非対称(一方を350μH、他方を150μH)とし、絶縁を図ることができなかったことが記載されている。
【0014】
さらに、特許文献1,2のいずれの方式もスイッチング素子回路3の構成が図5ではスイッチング素子SW1単一のみで制御範囲が小さく、また、高精度な制御はできず、また、図6では制御が複雑で、かつ、スイッチング素子SW1,SW2とSW3とで耐圧仕様が異なるので電源装置に組み込みにくい、などの課題がある。
【0015】
本発明は、電源と負荷との間に変圧器を使用しない電源装置において、正と負側線路それぞれに挿入される直列回路におけるインダクタの誘導値とキャパシタの容量値とが、非対称であっても、電源側と負荷側との絶縁を図ることができる電源装置を提供すると共に、より容易、より効率的に負荷を駆動できる電源装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明による電源装置は、少なくとも直流を導く正側と負側との線路間に並列に接続された単一のスイッチング素子または直列接続された複数のスイッチング素子を含み、これらスイッチング素子のオンオフにより該直流を交流に変換して2つの出力間に出力するスイッチング素子回路と、上記スイッチング素子回路の一方の出力点と負荷一端側との間に接続された、第1インダクタと第1キャパシタとからなる第1の直列回路と、上記スイッチング素子回路の他方の出力点と負荷他端側との間に接続された、第2インダクタと第2キャパシタとからなる第2の直列回路と、を備え、L1,L2を第1、第2インダクタそれぞれの誘導値、C1,C2を第1、第2キャパシタそれぞれの容量値、K0を、L1・C1/L2・C2=K0とし、負荷の一端側と接地との間に接続された抵抗の両端間電圧が規定電圧より低い電圧となるよう定められる数としたとき、上記K0を1.7以下の数とした、ことを特徴とする。
【0017】
好ましくは、上記スイッチング素子回路が、少なくとも2つのスイッチング素子が直列接続されてなる2つのアームを有すると共に、上記両アームが直流を導く正側と負側との線路間に並列に接続されたフルブリッジ回路であり、このフルブリッジ回路は、一方のアーム内の上側のスイッチング素子と他方のアーム内の下側のスイッチング素子とを第1組合せで同時オンまたは同時オフで駆動し、一方のアーム内の下側のスイッチング素子と他方のアーム内の上側のスイッチング素子とを第2組合せで前記第1組合せの駆動とは駆動位相が正反対で同時オフまたは同時オンで駆動し、上記第1の直列回路は、上記フルブリッジ回路の一方のアーム中点と負荷一端側との間に接続され、上記第2の直列回路は、上記フルブリッジ回路の他方のアーム中点と負荷他端側との間に接続されている。
【0018】
また、好ましくは、上記各スイッチング素子の駆動周期が負荷に対応して調整可変である。
【0019】
以上の本発明において、K0を1.7以下に設定したことで、感電電圧を60Vp未満に低くでき、絶縁をとることができるようになった。
【0020】
また、スイッチング素子回路を、フルブリッジ回路とし、そのフルブリッジ回路内の一方のアーム内の上側のスイッチング素子と他方のアーム内の下側のスイッチング素子とを第1組合せで同時オンまたは同時オフで駆動し、一方のアーム内の下側のスイッチング素子と他方のアーム内の上側のスイッチング素子とを第2組合せで前記第1組合せの駆動とは駆動位相が正反対で同時オフまたは同時オンで駆動することを前提とした場合、特許文献2とは異なり、スイッチング素子としてはいずれも同等の素子を利用することができ、これらの駆動も簡単に済むうえ、電源側として低電圧から高電圧まで広い範囲の電源を入力電源として利用することができ、汎用性が拡大する。
【0021】
なお、上記直流は、交流電源から整流回路を通して供給された直流、または直流電源から直接供給された直流を含む。
【0022】
なお、他方アーム中点と負荷一端側との間に第1直列回路と共に他の回路、例えば整流回路等を含む場合、一方アーム中点と負荷他端側との間に第2直列回路と共に他の回路、例えば整流回路等を含む場合も、本発明の範囲に含む。
【0023】
なお、上記第1、第2インダクタは、それぞれ単一のインダクタに限定するものではなく、1つないし複数のインダクタを含む。
【0024】
なお、第1、第2キャパシタは、それぞれ単一のキャパシタに限定するものではなく、1つないし複数のキャパシタを含む。
【0025】
また、上記各スイッチング素子の駆動周期が負荷に対応して調整可変としたいわゆるPFM(パルス周波数変調)可能とすることが好ましい。
【0026】
こうした場合、駆動周期を可変すると、コンピュータシミュレーションによれば、負荷に対して所望とする大きさの電圧ないし電流を印加することができると共に、この印加電圧ないし電流の値を一定にも制御することができ、負荷の利用範囲を大きく拡大させることができるようになる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、従来よりもより容易でかつより効率的に負荷を駆動できる電源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は本発明の実施形態に係る電源装置の構成を示す図である。
【図2】図2は図1の電源装置におけるフルブリッジ構成のスイッチング素子回路に対する駆動波形を示す図である。
【図3】図3は本発明の効果を検証するために用いた電源装置のシミュレーション用回路を示す図である。
【図4A】図4Aは図3の回路を用いてコンピュータシミュレーションを行った検証例1での電源入力後の負荷抵抗R5の両端間電圧波形と負荷抵抗一端側と接地間の抵抗R6の両端間電圧波形と、を示す図である。
【図4B】図4Bは検証例2での電源入力後の負荷抵抗R5の両端間電圧波形と負荷抵抗一端側と接地間の抵抗R6の両端間電圧波形と、を示す図である。
【図4C】図4Cは検証例3での電源入力後の負荷抵抗R5の両端間電圧波形と負荷抵抗一端側と接地間の抵抗R6の両端間電圧波形と、を示す図である。
【図4D】図4Dは検証例4での電源入力後の負荷抵抗R5の両端間電圧波形と負荷抵抗一端側と接地間の抵抗R6の両端間電圧波形と、を示す図である。
【図4E】図4Eは検証例5での電源入力後の負荷抵抗R5の両端間電圧波形と負荷抵抗一端側と接地間の抵抗R6の両端間電圧波形と、を示す図である。
【図5】図5は従来の特許文献1に係る電源装置の構成を示す図である。
【図6】図6は従来の特許文献2に係る電源装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施の形態に係る電源装置を説明する。図1に本発明の実施形態に係る電源装置の構成を示す。図1において図5、図6と対応する部分には同一の符号を付している。
【0030】
1は電源である。この電源1は、商用交流電源と全波整流回路とを含む。電源1の出力は、全波整流出力であるので、脈流となっている。こうした交流電源の電源電圧、周波数は、国内、海外いずれの電源電圧、周波数も含む。
【0031】
2aは第1直列回路、2bは第2直列回路である。
【0032】
第1直列回路2aは、インダクタL1とキャパシタC1とが直列接続されて構成される。この場合、インダクタL1とキャパシタC1の直列接続順序を逆にしてもよい。インダクタL1やキャパシタC1の接続個数は実施形態ではそれぞれ1つであるが、複数にしてもよい。
【0033】
第2直列回路2bは、インダクタL2とキャパシタC2とが直列接続されて構成される。この場合、インダクタL2とキャパシタC2の直列接続順序を逆にしてもよい。インダクタL2やキャパシタC2の接続個数は実施形態ではそれぞれ1つであるが、複数にしてもよい。
【0034】
また、第1、第2直列回路2a,2bそれぞれにおけるインダクタL1とL2は電磁結合する形態としてもよいなど、実施形態で示す第1、第2直列回路2a,2bは一例である。
【0035】
3はスイッチング素子回路である。
【0036】
4は負荷であり、この負荷4は実施形態の電源装置を電流源として電流供給を受けることができるようになっている。これにより負荷4はLEDや蛍光灯等の照明灯を負荷として選択して接続することができる。照明灯としては例えば屋内の照明器具用としたり、あるいは液晶表示装置のバックライトとして用いることができる。このように実施形態の電源装置ではこうした照明灯の電源装置とすることができる。
【0037】
スイッチング素子回路3は、電源1と負荷4との間の正側線路5と負側線路6との間に接続される。スイッチング素子回路3は、MOSFETやIGBT等の半導体スイッチング素子からなる、4つのスイッチング素子SW1−SW4がフルブリッジ接続されてなる回路である。スイッチング素子回路3は、線路5,6に対して並列接続された2つの第1、第2アームA1,A2を有する。第1アームA1はスイッチング素子SW1,SW3が直列接続されてなり、第2アームA2はスイッチング素子SW2,SW4が直列接続されてなる。
【0038】
電源1においては、商用交流電圧を全波整流回路で全波整流し、線路5,6に直流を供給するようになっている。この直流は、スイッチング素子回路3により交流に変換されて、第1、第2直列回路2a,2bに印加される。
【0039】
第1直列回路2aは、第2アームA2の中点b2と負荷4一端側との間に接続された、第1インダクタL1と第1キャパシタC1との直列回路で構成される。
【0040】
第2直列回路2bは、第1アームA1の中点b1と負荷4他端側との間に接続された、第2インダクタL2と第2キャパシタC2との直列回路で構成される。
【0041】
上記インダクタL1,L2、キャパシタC1,C2は個別の部品で構成してもよいし、プリント基板上に形成してもよい。例えばインダクタでは、プリントコイル形状としたり、また、キャパシタでは、積層コンデンサ形状としたりしてもよい。本発明では、そうしたインダクタやキャパシタの形状等には限定されない。
【0042】
以上の構成において、制御部7は、スイッチング素子回路3における第1アームA1内の上側のスイッチング素子SW1と第2アームA2内の下側のスイッチング素子SW4とを第1組合せで所定の駆動周波数のパルスで同時オンまたは同時オフで駆動し、第1アームA1内の下側のスイッチング素子SW3と第2アームA2内の上側のスイッチング素子SW2とを第2組合せで前記第1組合せの駆動とは駆動位相が正反対で同時オフまたは同時オンで駆動する。
【0043】
この駆動タイミングチャートを図2に示す。図2においてP1,P2,P3…は第1組合せ内のスイッチング素子SW1,SW4の同時オン駆動パルス、P4,P5,P6…は第2組合せ内のスイッチング素子SW2,SW3の同時オン駆動パルス、を示す。また、第1組合せ内のスイッチング素子SW1,SW4は第2組合せ内のスイッチング素子SW2,SW3の同時オン時には同時オフされ、第2組合せ内のスイッチング素子SW2,SW3は第1組合せ内のスイッチング素子SW1,SW4の同時オン時には同時オフされる。このような同時オンオフは、電源1側と負荷4側との絶縁を行うために必要である。
【0044】
制御部7は、これら同時オン駆動パルスによるスイッチング素子SW1−SW4の駆動周期T1,T2,T3…を負荷4に対応して調整可変となっている。すなわち、制御部7は、スイッチング素子回路3をPFM(パルス周波数変調)駆動するようになっている。このPFMにおけるパルス周波数は例えば100〜300kHzである。
【0045】
上記制御部7の制御により、スイッチング素子SW1,SW4が同時オンし、スイッチング素子SW2,SW3が同時オフするときは、電源1からの直流は、スイッチング素子SW1、第2直列回路2b、負荷4、第1直列回路2a、スイッチング素子SW4を介して、流れる。また、スイッチング素子SW1,SW4が同時オフし、スイッチング素子SW2,SW3が同時オンするときは、電源1からの直流は、スイッチング素子SW2、第1直列回路2a、負荷4、第2直列回路2b、スイッチング素子SW3を介して、流れる。すなわち、電源1の直流は、スイッチング素子回路3により交流に変換されて負荷4に流れる。なお、実施形態では、上記のように負荷4に交流を出力する交流出力タイプであるが、その交流を全波整流するなどして直流とし、その直流を負荷に供給する直流出力タイプとすることができる。
【0046】
本実施形態では、電源1側と負荷4側との間で変圧器無しで上記した絶縁をとるために、第1、第2直列回路2a,2bにおいて、第1、第2インダクタL1,L2それぞれの誘導値をL1,L2とし、第1、第2キャパシタC1,C2それぞれの容量値をC1,C2として、次式(1)を満足するように設定する。
【0047】
L1・C1/L2・C2=K0 …(1)
ただし、K0は1.7以下の数であり、実験により負荷を抵抗としその負荷抵抗の一端側と接地との間に接続されて絶縁を調べるための抵抗(絶縁測定用抵抗)の両端間電圧が規定電圧より低い電圧となるように定められる。上記式(1)はL1・C1/L2・C2=1すなわちL1・C1=L2・C2も含むと共に、L1=L2,C1=C2の場合も含むが、L1・C1=L2・C2の関係に限定されず、L1・C1≠L2・C2であっても、これらの間に上記式(1)を満たす関係があればよい。
【0048】
K0は実験で定めることができ、好ましいK0の値は、絶縁測定用抵抗の両端間電圧を人体の感電電圧とし、規定電圧を安全電圧(例えば60Vpである。このVpは、ピーク電圧値を示す)とすると、1.7以下にすることで、電源1と負荷4との間における直流絶縁および交流絶縁が達成される。
【0049】
このことは、後述するように、負荷端子OUT1,OUT2間の抵抗に対してそのいずれか一方あるいは両方と接地との間で人体に見立てた抵抗を接続しても、この抵抗にはその両端間電圧(上記感電電圧)が安全電圧以下となるような直流電流、交流電流が流れることを確認することで、証明することができる。
【0050】
この証明を、回路解析ソフトを用いたコンピュータシミュレーションにより行う。
【0051】
なお、本実施形態では、電源1において、商用交流電源、全波整流回路が無く、直流入力形の電源装置にも適用可能である。また、全波整流回路が無く、直接、商用交流電源が接続した交流入力形の電源装置にも適用可能である。また、負荷4において直流出力形、交流出力形いずれの電源装置にも適用可能である。本発明はこの範囲内で種々の変更を含むことができる。
【0052】
次に、図3および図4を参照して、回路解析ソフトを用いたコンピュータシミュレーションにより上記を証明する。このソフトにより、図3の回路構成、回路定数をコンピュータに入力すると共に、各部の電圧、電流の波形を算出する。図3は本発明の効果を検証するために用いた電源装置のシミュレーション用回路を示す。電源1は直流140V、スイッチング素子SW1−SW4はいずれもMOSFET、駆動部V1−V4からそれぞれ100Ωの抵抗R1−R4を介して図2に対応する駆動パルスが印加される。駆動パルスの波形の図示は略する。出力端子OUT1,OUT2間に負荷4に20Ωの抵抗R5、出力端子OUT2と接地との間に10kΩの抵抗R6を接続している。
【0053】
図4A−図4Eにおいて、VLは図3の回路における電源入力後の負荷抵抗R5両端間電圧の波形、Viは、負荷抵抗一端側と接地間の抵抗R6両端間の電圧波形、を示す。図4A−図4E中、横軸は時間(μsec.)、縦軸は電圧(volt.)を示す。また、駆動部V1−V4によるスイッチング素子SW1−SW4のスイッチング駆動周波数fは330kHzである。以下の各検証例において、L1は第1直列回路2aのインダクタL1の誘導値、C1は同回路2aのキャパシタC1の容量値、L2は第2直列回路2bのインダクタL2の誘導値、C2は同回路2bのキャパシタC2の容量値である。
【0054】
<検証例1>…図4A
L1・C1/L2・C2=K0=1である。ただし、L1=L2=32μH、C1=C2=0.01μFである。図4Aでは、負荷電圧VLは60Vpであり、感電電圧Viは30Vpであり、安全電圧上限の60V未満である。したがって、安全であり、絶縁がとられている。
【0055】
<検証例2>…図4B
L1・C1/L2・C2=K0=1である。ただし、L1=27μH、L2=46μH、C1=0.0135μF、C2=0.00794μFである。図4Bでは、負荷電圧VLは60Vpであり、感電電圧Viは30Vpであり、安全電圧上限の60V未満である。したがって、安全であり、絶縁がとられている。
【0056】
<検証例3>…図4C
L1・C1/L2・C2=K0=1である。ただし、L1=8μH、L2=65μH、C1=0.0456μF、C2=0.00562μFである。図4Cでは、負荷電圧VLは60Vpであり、感電電圧Viは安全電圧上限の60Vpであり、安全ではなく、絶縁がとられていない。
【0057】
<検証例4>…図4D
L1・C1/L2・C2=K0=1.4である。ただし、L1=57.7μH、L2=41.3μH、C1=C2=0.01μFである。図4Dでは、負荷電圧VLは60Vpであり、感電電圧Viは安全電圧上限の60Vpであり、絶縁がとられている。
【0058】
<検証例5>…図4E
L1・C1/L2・C2=K0=1.7である。ただし、L1=46μH、L2=27μH、C1=C2=0.01μFである。図4Eでは、負荷電圧VLは60Vpであり、またも感電電圧Viは安全電圧上限の60Vpを超えていて、安全ではなく、絶縁がとられていない。すなわち、K0が1.7以上では、絶縁をとることができない。
【0059】
以上の検証例からK0は1.7以下であることが感電電圧を60Vp以下にすることができる。
【0060】
以上説明したように、本実施形態では、コンピュータシミュレーション結果に示すように、電源1と負荷4との間の絶縁を、直流に対しても、交流に対しても達成することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 電源
2a,2b 直列回路
3 スイッチング素子回路
4 負荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも直流を導く正側と負側との線路間に並列に接続された単一のスイッチング素子または直列接続された複数のスイッチング素子を含み、これらスイッチング素子のオンオフにより該直流を交流に変換して2つの出力間に出力するスイッチング素子回路と、
上記スイッチング素子回路の一方の出力点と負荷一端側との間に接続された、第1インダクタと第1キャパシタとからなる第1の直列回路と、
上記スイッチング素子回路の他方の出力点と負荷他端側との間に接続された、第2インダクタと第2キャパシタとからなる第2の直列回路と、
を備え、
L1,L2を第1、第2インダクタそれぞれの誘導値、C1,C2を第1、第2キャパシタそれぞれの容量値、K0を、L1・C1/L2・C2=K0とし、負荷の一端側と接地との間に接続された抵抗の両端間電圧が規定電圧より低い電圧となるよう定められる数としたとき、上記K0を1.7以下の数とした、
ことを特徴とする電源装置。
【請求項2】
上記スイッチング素子回路が、
少なくとも2つのスイッチング素子が直列接続されてなる2つのアームを有すると共に、上記両アームが直流を導く正側と負側との線路間に並列に接続されたフルブリッジ回路であり、
このフルブリッジ回路は、一方のアーム内の上側のスイッチング素子と他方のアーム内の下側のスイッチング素子とを第1組合せで同時オンまたは同時オフで駆動し、一方のアーム内の下側のスイッチング素子と他方のアーム内の上側のスイッチング素子とを第2組合せで前記第1組合せの駆動とは駆動位相が正反対で同時オフまたは同時オンで駆動し、
上記第1の直列回路は、上記フルブリッジ回路の一方のアーム中点と負荷一端側との間に接続され、
上記第2の直列回路は、上記フルブリッジ回路の他方のアーム中点と負荷他端側との間に接続されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
上記各スイッチング素子の駆動周期が負荷に対応して調整可変である、請求項2に記載の電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−239492(P2011−239492A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106283(P2010−106283)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【特許番号】特許第4647713号(P4647713)
【特許公報発行日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000111085)ニッタ株式会社 (588)
【Fターム(参考)】