説明

電源装置

【課題】従来よりもケース内のデッドスペースを低減し、かつ、製品の小型化が可能な電源装置を提供することである。
【解決手段】電源装置は、実装表面12a(基板の一面)に対向して配置されるインサートバスバー19を有し、ケース内には実装表面12aとケースの対向面との間に形成される第1空間以外の第2空間に配置されるトランス16(一以上の回路素子)をさらに有し、トランス16の1次側端子(接続端子)はプリント基板12とインサートバスバー19との間に配置されるとともにインサートバスバー19に備えられる接続端子台19c(端子台)の端子と電気的に接続され、接続端子台19cは実装表面12aに対向する構成とした。この構成によれば、従来よりもケース内のデッドスペースを低減できる。また、体格の大きな回路素子を第2空間に配置するので、電源装置を従来より小型化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板やケースなどを有する電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、小型化が図られた水冷方式のスイッチング電源に関する技術の一例が開示されている(例えば特許文献1を参照)。このスイッチング電源は、スイッチング回路、メイントランス、整流回路、平滑回路をベースプレート上に有する。ベースプレート上に形成される台座部の内部には、電子部品を冷却するための冷媒流路が形成されている。スイッチング回路の制御を行う制御基板は、ベースプレートの上方に配置されている(特許文献1の図6を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−297887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1の図6では図示が省略されているが、スイッチング回路の制御を行うための回路素子は、制御基板の上面に実装せざるを得ない。ベースプレートの上面(すなわち制御基板の下方)には、上記スイッチング回路やメイントランス等が実装されるため、制御基板用の回路素子を実装するスペースを確保し難いからである。仮に制御基板に回路素子を実装するとしても、実装時の高さが低い回路素子(いわゆるチップ部品などの表面実装品)に制限される。回路素子を含む実装品は、形状や大きさ等の形態が様々であるため、デッドスペースが生じ得る。特許文献1の図6では、ベースプレートの上面に体格の大きなメイントランス等を配置するので、大きなデッドスペースが生じ易い。したがって、装置全体が大型化するという問題がある。
【0005】
また、大きな電流(例えば10[A]や30[A]等)が流れる電源装置では、回路素子(例えばトランス,コンデンサ,コイル等)の体格が大きくならざるを得ない。このような回路素子を制御基板に配置したり、ケース内に収容しようとすると、制御基板や回路素子等の体格が大きくならざるを得ず、製品の小型化(特に高さ)が困難であった。一方、ベースプレートの上面に回路用部品の相互間を電気的に接続するバスバーを配置しようとすると、当該バスバーを配置するための空間も別途必要になる。このようにバスバーの配置空間も必要になるので、製品の小型化がさらに困難になる。
【0006】
本発明はこのような点に鑑みてなしたものであり、従来よりもケース内のデッドスペースを低減し、かつ、製品の小型化が可能な電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、少なくとも半導体素子を配置する基板と前記基板を収容するケースとを有する電源装置において、前記基板の一面に対向して配置され回路用部品の相互間を電気的に接続するためのインサートバスバーを有し、前記ケース内には前記基板の一面と前記基板の一面に対向する前記ケースの対向面との間に形成される第1空間以外の第2空間に配置される一以上の回路素子をさらに有し、前記回路素子の接続端子は前記基板と前記インサートバスバーとの間に配置されるとともに前記インサートバスバーに備えられる端子台の端子と電気的に接続され、前記端子台は前記基板の一面に対向することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、半導体素子を含む実装品やインサートバスバーなどを第1空間に配置し、体格の大きな回路素子(例えば整流素子,トランス,フィルタ部等)を第2空間に配置する。基板の一面とケースの対向面との間には、半導体素子を含む実装品やインサートバスバーを配置し、しかもインサートバスバーの端子台を基板の一面に対向させるので、従来よりもケース内のデッドスペースを低減することができる。また、体格の大きな回路素子を第2空間に配置することでケースに収容する部品全体の高さが抑えられ、ケース全体(すなわち製品としての電源装置)も従来より小型化することができる。
【0009】
なお「半導体素子」は、半導体による電子部品または電子部品の根幹である機能中心部の素子であれば任意である。例えば、スイッチング素子(FET,IGBT,GTO,パワートランジスタ等を含む)、整流素子(整流回路や整流器等を含む)などが該当する。「ケース」は基板や冷却部など収容可能であれば任意である。例えば、単体のケースでもよく、仕切部(例えば仕切壁や仕切面など)によって複数の空間が形成されるブロック体にかかる一の空間からなるケースでもよい。「インサートバスバー」は、端子(端子台を含む)や配線(導電線)などを有し、回路用部品の相互間を電気的に接続するために所定形状に形成された部材である。「回路用部品」と「回路素子」は電気回路に用いる部品や素子という意味で同義であるが、インサートバスバーの電気的な接続を行う対象物と第2空間に配置する対象物とを区別するために用いる。回路用部品に含まれる回路素子があったり、回路素子に含まれる回路用部品があったりする。「基板」は、少なくとも半導体素子および実装品を実装可能な板状部材であれば任意であり、層数(単層や多層等)を問わない。「基板の一面」は、実装品が実装される基板の特定面を意味し、以下では簡単のために「実装表面」と呼ぶことにする。この称呼に伴って、同基板における実装表面とは反対側の面を「実装裏面」と呼ぶことにする。「実装品」は、素子(例えば半導体素子や回路素子等を含む)や部品(例えば接続線,台座,端子台等を含む)などのように基板に実装可能なものが該当し、表面実装品であるか否かを問わない。実装裏面に実装品を配置するか否かを問わない。形態(形状や大きさ等が該当し、特に高さ)が異なる実装品を「異型部品」と呼ぶ場合がある。「回路素子の接続端子」は回路素子を電気的に接続可能な部材であれば任意であり、端子のみならず、リード線等を含む。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記インサートバスバーは、前記基板の一面に実装品が実装されない部位または表面実装品が実装される部位と対向する位置に配置され、電力源から供給される電力を入力する入力部を有することを特徴とする。この構成によれば、インサートバスバーの入力部は基板の一面と対向する位置に配置されるものの、基板の一面には実装品が実装されない部位または表面実装品が実装される部位である。入力部の下方がケースで仕切られるため、電源装置の遮熱性を向上させ、外部への熱害を減らすことができる。また、基板とインサートバスバーとを合わせた全体の高さを低く抑えられるので、ケース全体(すなわち製品としての電源装置)をより小型化することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記インサートバスバーは、前記基板の一面と、前記ケースの対向面との間に配置されることを特徴とする。この構成によれば、インサートバスバー、半導体素子を含む実装品が配置された基板の一面とケースの対向面との間に配置される。言い換えれば、体格の大きな回路素子(例えば整流素子,トランス,フィルタ部等)は配置されない。よって、ケースに収容する部品全体の高さが抑えられるので、ケース全体(すなわち製品としての電源装置)をより小型化することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記インサートバスバーは、前記インサートバスバー自体を前記ケースに固定するための固定部を有することを特徴とする。この構成によれば、固定部を通じてインサートバスバーがケースに固定されるので、振動等の外部要因を受けてもケース内でガタつくことがない。固定手段は、長期に亘って固定状態を堅持可能であれば任意である。固定方法の一例は、ボルトやネジ等の締結部材を用いる締結や、母材を溶かすことでハンダ付けやアーク溶接等を行う接合、接着剤を用いる接着などが該当する。
【0013】
請求項5に記載の発明は、一以上の前記固定部は、導電性部材で形成され、グラウンドと電気的に接続されることを特徴とする。この構成によれば、導電性部材で形成される固定部についてはグラウンドと電気的に接続される。一般的にケースは同電位部(0[V]とは限らない)であるグラウンドの電位が採用されるので、固定部を通じてインサートバスバーの配線の一部をグラウンドの電位にすることができる。
【0014】
請求項6に記載の発明は、前記ケースは、前記対向面の一部が前記基板の一面に向かって突出して形成されて冷却を行うための冷却部を有し、前記対向面は、前記基板に実装される実装品と対向することを特徴とする。この構成によれば、冷却部によって半導体素子を含む実装品を冷却することができる。「冷却部」には、実装品を冷却可能であれば任意の装置や部品等を適用できる。例えば、冷媒(空気,水,油などの流体)が流れる通路を有する部位・部品・装置等、冷却用フィン(放熱フィン)、ヒートポンプなどのうちで一以上が該当する。
【0015】
請求項7に記載の発明は、前記対向面は、前記端子台と近づくように、前記端子台に向けて突起する突起部を有することを特徴とする。この構成によれば、突起部が近づくので、冷却部から伝わる冷たさが突起部を通じて端子台も冷却できる。そのため、端子台に備える端子に電流が流れて発熱しても、その発熱を吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】電源装置の構成例を模式的に示す分解斜視図である。
【図2】電源装置の構成例を模式的に示す平面図である。
【図3】図2に示す矢印Da方向から見た電源装置の構成例を示す側面図である。
【図4】図2に示すIV−IV線矢視の構成例を示す断面図である。
【図5】図2に示すV−V線矢視の構成例を示す断面図である。
【図6】ケース内の配置例を示す平面図である。
【図7】インサートバスバーの構成例を示す三面図である。
【図8】図6に示す矢印Dc方向から見た配置例を示す側面図である。
【図9】電源装置の回路構成例を模式的に示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。なお、特に明示しない限り、「接続する」という場合には電気的な接続を意味する。各図は、本発明を説明するために必要な要素を図示し、実際の全要素を図示してはいない。上下左右等の方向を言う場合には、図面の記載を基準とする。連続符号は記号「〜」を用いて呼ぶ。例えば「接続端子T1〜T6」は、「接続端子T1,T2,T3,T4,T5,T6」を意味する。
【0018】
まず、電源装置の全体的な構成例について図1〜図4を参照しながら説明する。図1には電源装置の構成例を模式的に分解斜視図で示す。図2には電源装置の構成例を平面図で示す。図3にはインサートバスバーの構成例を三面図で示す。図4にはケースに収容される要素の配置例を模式的に平面図で示す。
【0019】
図1に示す電源装置10は、いわゆる「DC−DCコンバータ」であって、電力源(例えばバッテリや燃料電池等)から供給される直流電圧を目的の電圧に変換して出力する機能を担う。この電源装置10は、大別してケース11、プリント基板12、図示しない収容部品などを有する。「収容部品」は、ケース11内に収容される部品等であって、プリント基板12上には配置されない素子や部品等を意味する。例えば、回路素子(具体的には整流素子,トランス,フィルタ部等)や、後述するインサートバスバー(図3,図4を参照)などが該当する。
【0020】
ケース11は、ケース蓋11aとケース本体11bとで構成される。ケース本体11bは、一面を開口させた箱状筐体である。図1の例では簡単のために直方体状の形成例を示すが、プリント基板12や収容部品などを収容可能であれば、形成する形状は任意である。ケース蓋11aは、ケース本体11bの開口部を覆う蓋である。本形態のケース11は金属で形成するが、一部または全部について使用環境条件(例えば温度,磁気遮蔽,剛性等)を満たす他の材料(例えば樹脂等)で形成してもよい。
【0021】
プリント基板12は、実装表面12aおよび実装裏面12bの両面でプリント配線がなされ、実装品を配置して実装する基板である。実装品は、素子(例えば半導体素子や回路素子等を含む)や部品(例えば接続線,台座,端子台等を含む)などのように基板に実装可能なものが該当し、表面実装品であるか否かを問わない。図1には、実装表面12aに半導体素子群Qgや実装品P1〜P6などを実装した例を示す。実装品P1〜P6などには、異型部品が含まれる。半導体素子群Qgも実装品の一つであり、図1や図2等に示す半導体素子Q1,Q2が該当する。半導体素子Q1,Q2には、例えばFET(具体的にはMOSFET,JFET,MESFET等)、IGBT、GTO、パワートランジスタなどのスイッチング素子を適用できる。一方、実装裏面12bはプリント配線のみとするか、実装する高さが低い表面実装品のみを配置する。なお、図1では簡単のために選択的に実装品P1〜P6を示すが、実際のプリント基板12には多数の実装品が配置して実装される。
【0022】
図1に示す台座13や冷却部14は、ケース11の内部(特にケース本体11b)に備えられる。複数の台座13および冷却部14のうちで一方または双方は、ケース本体11bと一体形成してもよく、別体形成した上で固定手段(例えばボルトやネジ等の締結部材を用いる締結や、母材を溶かすことでハンダ付けやアーク溶接等を行う接合など)によって固定してもよい。複数の台座13は、プリント基板12をケース11内に収容するにあたって、ケース本体11bに固定するために用いる。
【0023】
冷却部14は、半導体素子群Qg、プリント基板12の実装品、ケース11内の収容部品等を冷却する機能を担う。本形態の冷却部14は、冷媒(例えば水,空気,油等)を通すための冷媒通路を内部に有する(図示せず)。冷却部14には、冷媒を流すための入出口となる接続部14a,14bを有する。接続部14a,14bにはホース等の接続部材で物理的に接続し、冷却部14と図示しない冷却装置(例えばラジエータ等)との間で冷媒が流れるように構成される。このように冷媒を介して冷却を確実に行うため、冷却部14は熱伝導率が高い材料で形成するのが望ましい。
【0024】
プリント基板12や収容部品などを収容した後の電源装置10を図2に示す。具体的には、ケース蓋11aで覆わない状態の平面図を示す。図2に示すケース11内には、半導体素子群Qgや実装品群Pgを配置したプリント基板12のほかに、整流素子15,トランス16,フィルタ部17等のような回路素子が配置される。
【0025】
プリント基板12は、ケース11内に収容されて固定されている。このプリント基板12の実装表面12aは、ケース11の対向面11fと対向する。よって、プリント基板12に配置される実装品群Pg(実装品P1〜P6)もまた対向面11fと対向する。この対向面11fを含む部位(仕切壁や仕切面など)は「仕切部」に相当する。
【0026】
整流素子15は、例えば整流回路や整流器などが該当する。トランス16は変圧器としての機能を担い、具体的な構成例については後述する(図5を参照)。フィルタ部17は、出力電力(特に直流電力であり、以下同様である。)の交流成分を低減したり除去したりする機能を有すれば任意であり、パッシブフィルタ(LC回路,RLC回路,RC回路等)やアクティブフィルタ等の種類を問わない。これらの回路素子は、実装表面12aと対向面11fとの間に形成される空間(以下では「第1空間」と呼ぶ;図1,図4を参照)以外の空間(以下では「第2空間」と呼ぶ;図1,図2を参照)に配置される。
【0027】
上記フィルタ部17は、ノイズの影響を受け易く、出力電力に重畳され易い。そのため、トランス16とフィルタ部17との間にはシールド部S1を配置し、プリント基板12とフィルタ部17との間にはシールド部S2を配置する。シールド部S1,S2には、ノイズの影響を低減または遮断できる電磁シールドであれば形状,厚み,材料(素材)等は任意である。例えば、金属板(板金を含む),金属メッシュ,発泡金属等が該当する。また、所定形状(例えば板状や筐体状等)に成形された樹脂部材の表面や裏面に金属インクまたは同様の物質でメッキしたものでもよい。本形態ではシールド部S1,S2を個別に配置したが、L字状に一体成形して配置してもよい。シールド部S1,S2の一部に貫通穴をあける場合、当該貫通穴や接続線J1,J2との隙間も同様にシールドするのが望ましい。ただし、絶縁等を確保するために隙間が必要な場合には、接続線J1,J2を通すことが可能な最小の貫通穴にするのが望ましい。シールド部S1,S2の一部として、ケース11の一部(壁部や床部等)を構成するのが望ましい。ケース本体11bと同様な形状(すなわち一面が開口する箱状の筐体)のシールド部を形成して、フィルタ部17全体を覆う構成としてもよい。
【0028】
図3に示すように、電源装置10のケース11と電力変換装置20のケース21とは一体形成されている。電力変換装置20は、いわゆる「インバータ」であるが、その構成や機能作用等については周知であるので図示および説明を省略する。
【0029】
図4および図5に示すように、プリント基板12は、ケース11内に収容されて固定されている。このプリント基板12の実装表面12aは、ケース11の対向面11fと対向する。よって、プリント基板12に配置される実装品群Pg(実装品P1〜P6)もまた対向面11fと対向する。この対向面11fを含む部位(仕切壁や仕切面など)は「仕切部」に相当する。
【0030】
図4に示す冷却部14は、少なくとも半導体素子群Qg(半導体素子Q1,Q2)に向かって、対向面11fの一部が突出して形成されている。図1の例では、ケース11の隅部(図面左側の隅部)を上方に向けて突出させている。冷却部14の上面には半導体素子群Qg(図4では半導体素子Q2)が直接的にまたは間接的に接触して配置(固定)されている。間接的に接触する形態としては、例えば冷却部14と半導体素子群Qgとの間に絶縁シート等の部材を介在させる形態などが該当する。実装品P1,P2などは、実装品群Pgのうちで発熱性が高い部品である。発熱性が高い実装品P1,P2などを冷却部14の近傍に配置することで、当該実装品の冷却効率を高めることができる。
【0031】
トランス16は、図2に示すように整流素子15やフィルタ部17とともに、プリント基板12の長辺側と平行状にケース本体11b内に収容される。「平行状」は、平行に限らず、所定の許容角度(例えば10度や20度等)範囲内の非平行を含む。またトランス16は、図5に示すように第1空間(すなわちプリント基板12の一面と対向する対向面11fとで挟まれる空間)以外の第2空間に配置される。「回路素子の接続端子」に相当する1次側端子16t1および2次側端子16t2,16t3は、いずれもトランス16から引き出される導電部材であって、例えば端子やリード線等が該当する。1次側端子16t1は、インサートバスバー19の接続端子台19cに向けて引き出され、プリント基板12とインサートバスバー19との間に配置される(図6を参照)。これに対して、トランス16の2次側端子16t2は整流素子15に向かう方向に引き出され、同じく2次側端子16t3はフィルタ部17に向かう方向に引き出される。
【0032】
次に、ケース11内に収容するプリント基板12,インサートバスバー19,収容部品の配置例について、図6を参照しながら説明する。図6には、プリント基板12の実装表面12a側における所定位置にインサートバスバー19を配置した状態を示し、半導体素子群Qgや実装品P1〜P6等も併せて示す。第1空間に配置される収容部品(すなわち整流素子15,トランス16,フィルタ部17など)は、プリント基板12の長辺側と平行状に収容される。
【0033】
インサートバスバー19は、その全体の一部または全部を、実装表面12aに配置した実装品群Pgと対向面11fとの隙間に挿入して配置する。特に、トランス16の1次側端子16t1とインサートバスバー19の接続端子台19cとを接続するにあたって、その接続距離が最短になるような構成としている。インサートバスバー19に備える接続端子T1〜T6等は、各端子に対応するプリント基板12の接続部(例えばスルーホールや接続端子等)と接続される。
【0034】
図6に二点鎖線で示す冷却部14は、少なくとも半導体素子群Qg(半導体素子Q1,Q2)に向かって、対向面11fの一部が突出して形成されている。図1の例では、ケース11の短辺隅部(図面左側の隅部)を上方に向けて突出させている。冷却部14の上面には半導体素子群Qg(半導体素子Q1,Q2)が直接的または間接的に接触して配置されている。間接的に接触する形態としては、例えば冷却部14と半導体素子群Qgとの間に絶縁シート等の部材を介在させる形態などが該当する。実装品P1,P2などは、実装品群Pgのうちで発熱性が高い部品である。発熱性が高い実装品P1,P2などを冷却部14の近傍に配置することで、当該実装品の冷却効率を高めることができる。
【0035】
第1空間に配置されるインサートバスバー19の構成例について、図7を参照しながら説明する。図7(A)には平面図を示し、図7(B)には図7(A)の右側から見た側面図を示し、図7(C)には図7(A)の下側から見た側面図を示す。
【0036】
図7に示すインサートバスバー19は、プリント基板12よりも先にケース本体11bに収容されて固定される。このインサートバスバー19は、バスバー本体19bに対して、固定部19a,19d,19f、接続端子台19c、入力部19e、接続端子T1〜T6などを備える。これらの各要素はバスバー本体19bの一面側(接続表面19g側)に配置され、他面側(接続裏面19h側)には何も配置されない。固定部19a,19d,19fは、インサートバスバー19をケース本体11b(具体的には対向面11f)に固定手段(例えばボルトやネジ等の締結部材を用いる締結等)によって固定する部位である。これらの固定部19a,19d,19fは、実装品P1〜P6など(異型部品を含む)と対向しない位置に備えるのが望ましく、一以上の固定部(本形態では固定部19d)を導電性部材で形成するのが望ましい。バスバー本体19bは絶縁性材料(例えば樹脂等)で図示するような所定形状に形成される。例えば、鋳造や射出成形等によるモールディングで成形される。接続端子台19cは「端子台」に相当し、実装表面12aおよびトランス16の双方と対向する位置に備えられ、トランス16の1次側端子16t1と接続するための複数(図7(A)の例では4つ)の端子からなる端子群19ctを有する。接続端子台19cは、バスバー本体19bと一体成形するのが望ましい。
【0037】
接続端子台19cの端子群19ctに電流が流れると、当該電流の大きさにもよるが少なからず発熱する。そのため、接続端子台19c自体を冷却するのが望ましい。そこで図4や図5に示すように、接続端子台19cに向けて突起させる突起部11gを対向面11fに形成する。この突起部11gは、接続端子台19cの近傍に位置し、インサートバスバー19を組み付ける際の支えとしての機能をも担う。突起部11gが接続端子台19cに近づくので、冷却部14の冷たさが図4に矢印Dbで示すように伝わり、突起部11gを通じて接続端子台19cも冷却できる。端子群19ctに電流が流れて発熱しても、その発熱を吸収することができる。
【0038】
入力部19eは、電力源から供給される電力を入力する部位であり、電力源との間を接続する接続部材(例えばケーブル等)を固定する。この入力部19eは、図8に示すように、実装表面12aに実装品P1〜P7等が実装されない部位(すなわちプリント配線のみの部位)と対向する位置のインサートバスバー19に配置される(図6や図7をも参照)。なお二点鎖線で示すように、プリント基板12と入力部19eとの間に空間が確保される限りにおいて、実装する高さの低い表面実装品Pa,Pb(例えばIC,抵抗器,コンデンサ等のようなチップ部品)に対向する位置に入力部19eを配置してもよい。
【0039】
上述のように構成される電源装置10を回路図で示すと、図9のようになる。ただし、図9に示す回路図は一例にすぎず、主要部を示す。
【0040】
図9において、電力源Edcは直流電力を入力部19eを介して電源装置10に供給する。電力源Edcには、例えばバッテリや燃料電池が用いられる。電力源Edcのプラス端子は、チョークコイルL10,コンデンサC10およびインサートバスバー19を経て、トランス16の1次側端子に接続される。一方、電力源Edcのマイナス端子は、チョークコイルL10,コンデンサC10,コンデンサC12およびインサートバスバー19を経て、トランス16の1次側端子16t1に接続される。チョークコイルL10は入力フィルタとして機能し、コンデンサC10は直流電力の充放電を繰り返し行う。
【0041】
プリント基板12は、半導体素子Q1,Q2、コンデンサC11,C12、ドライブ回路12c、制御回路12d、検出回路12eなどを有する。半導体素子Q1,Q2は、ドライブ回路12cから伝達される駆動信号に従って個別にスイッチングが制御される。検出回路12eはフィルタ部17の出力側の電圧(すなわち電圧Vd)を検出する。制御回路12dは、電圧Vdが目標電圧となるように、ドライブ回路12cを駆動する指令信号Vc*を出力する。目標電圧は、制御回路12d内の記録媒体に予め記録したり、外部装置(例えばECU等)から入力したりする。ドライブ回路12cは、指令信号Vc*に基づいて、上述した駆動信号を生成して出力する。
【0042】
半導体素子Q1,Q2は直列接続される。ただし、2つの半導体素子Q2(図1,図2,図6を参照)は並列接続される。二点鎖線で示すダイオードD1,D2はフリーホイールダイオードとして機能し、半導体素子Q1,Q2に内蔵されたものでもよく、外付けしたものでもよい。コンデンサC11は、半導体素子Q1のドレイン端子と接続端子台19cとの間に接続される。コンデンサC12は、上述したように電力源Edcのマイナス端子と接続端子台19cとの間に介在して接続される。電力源Edcのマイナス端子およびコンデンサC12の一方側端子は、半導体素子Q2のソース端子に共通して接続される。
【0043】
接続端子台19cの端子群19ctは、トランス16の1次側端子16t1と接続する。トランス16の2次側端子16t2,16t3は、整流素子15,コンデンサC13,フィルタ部17などと接続する。整流素子15は、2次側端子16t2から出力される交流電力を整流する機能を担う。図9には二相全波整流を行う構成を示すが、単相ブリッジ整流を行う構成としてもよい。コンデンサC13は、整流素子15によって整流された出力電力を平滑化する機能を担う。フィルタ部17は、リアクトル(コイル)L17とコンデンサC17とを有し、2次側端子16t3から出力される出力電力に含まれる高周波成分を除去したり、整流に伴う出力電力(特に直流電圧)の脈動を抑制したりする機能を担う。整流素子15やコンデンサC17の一方側端子は、共通電位となるグラウンドNに接続される。整流素子15,コンデンサC12,フィルタ部17によって安定化された出力電力は、出力機器30に出力される。出力機器30には、直流の電力を必要とする任意の機器を適用できる。
【0044】
上述した実施の形態によれば、以下に示す各効果が得られる。まず請求項1に対応し、電源装置10は、実装表面12a(基板の一面)に対向して配置されるインサートバスバー19を有し、ケース11内には実装表面12aと対向面11fとの間に形成される第1空間以外の第2空間に配置されるトランス16等(一以上の回路素子)をさらに有し、トランス16の1次側端子16t1(接続端子)はプリント基板12とインサートバスバー19との間に配置されるとともにインサートバスバー19に備えられる接続端子台19c(端子台)の端子と接続され、接続端子台19cは実装表面12aに対向する構成とした(図4,図5,図8を参照)。この構成によれば、半導体素子Q1,Q2、実装品P1〜P7、インサートバスバー19などを第1空間に配置し、体格の大きな回路素子(例えば整流素子15,トランス16,フィルタ部17等)を第2空間に配置する。実装表面12aと対向面11fとの間には、半導体素子Q1,Q2、実装品P1〜P7、インサートバスバー19などを配置し、しかも接続端子台19cを実装表面12aに対向させるので、従来よりもケース11内のデッドスペースを低減することができる。また、体格の大きな回路素子を第2空間に配置することでケース11に収容する部品全体の高さが抑えられ、電源装置10を従来より小型化することができる。
【0045】
請求項2に対応し、インサートバスバー19は、実装表面12aに実装品P1〜P7が実装されない部位と対向する位置に配置され、電力源Edcから供給される直流電力を入力する入力部19eを有する構成とした(図8を参照)。この構成によれば、インサートバスバー19の入力部19eは実装表面12aと対向する位置に配置されるものの、実装表面12aには実装品P1〜P7が実装されない部位である。入力部19eの下方がケース11(具体的には対向面11f)で仕切られるため、電源装置10の遮熱性を向上させ、外部への熱害を減らすことができる。また、プリント基板12とインサートバスバー19とを合わせた全体の高さを低く抑えられ、電源装置10をより小型化できる。
【0046】
請求項3に対応し、インサートバスバー19は、実装表面12aと対向面11fとの間に配置される構成とした(図4,図5,図8を参照)。この構成によれば、実装表面12aと対向面11fとの間には、体格の大きな回路素子(例えば整流素子15,トランス16,フィルタ部17等)は配置されない。よって、ケース11に収容する部品全体の高さが抑えられるので、電源装置10をより小型化することができる。
【0047】
請求項4に対応し、インサートバスバー19は、インサートバスバー19自体をケース11に固定するための固定部19a,19d,19fを有する構成とした(図7を参照)。この構成によれば、固定部19a,19d,19fを通じてインサートバスバー19自体がケース11に固定されるので、振動等の外部要因を受けてもケース11内でガタつくことがない。
【0048】
請求項5に対応し、固定部19dは導電性部材で形成され、グラウンドNと接続される構成とした(図7(A)を参照)。この構成によれば、固定部19dはケース11に固定されることでグラウンドNと接続される。また、固定部19dを通じてインサートバスバー19の配線の一部をグラウンドNの電位にすることができる。
【0049】
請求項6に対応し、ケース11は対向面11fの一部が実装表面12aに向かって突出して形成されて冷却を行うための冷却部14を有し、対向面11fはプリント基板12に実装される実装品P1〜P7と対向する構成とした(図1〜図4を参照)。この構成によれば、冷却部14によって半導体素子Q1,Q2や実装品P1,P2等を冷却することができる。
【0050】
請求項7に対応し、対向面11fは、接続端子台19cと近づくように、接続端子台19cに向けて突起させる突起部11gを有する構成とした(図1,図4,図5を参照)。この構成によれば、突起部11gが接続端子台19cに近づくので、冷却部14から伝わる冷たさが突起部11gを通じて接続端子台19cも冷却できる。そのため、接続端子台19cに備える端子に電流が流れて発熱しても、その発熱を吸収することができる。なお図示しないが、接続端子台19cに直接的または間接的に接触するように突起部11gを突起させる構成としても、同様の効果が得られる。
【0051】
〔他の実施の形態〕
以上では本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は当該形態に何ら限定されるものではない。言い換えれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施することもできる。例えば、次に示す各形態を実現してもよい。
【0052】
上述した実施の形態では、第2空間に配置される回路素子としてトランス16を適用した(図2,図6を参照)。この形態に代えて(あるいは加えて)、インサートバスバー19の接続端子台19cと接続し、かつ、第2空間に配置されるトランス16以外の他の回路素子を適用してもよい。他の回路素子は、例えば整流素子15、フィルタ部17、コンデンサ、インダクタなどが該当する。単に回路素子の相違に過ぎないので、上述した実施の形態と同様の作用効果が得られる。
【0053】
上述した実施の形態では、プリント基板12は、実装表面12aと実装裏面12bとを有する基板を適用した(図1〜図7を参照)。この形態に代えて、一以上の中間層を含む多層基板を適用してもよく、ユニバーサル基板を適用してもよい。いずれの基板にせよ、半導体素子群Qgや実装品群Pgを配置することができるので、上述した実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0054】
上述した実施の形態では、冷却部14は、対向面11fから実装表面12aに向けて突出させ、その突出部位に冷媒が流れる冷媒通路を有する構成とした(図1,図2,図4を参照)。この形態に代えて(あるいは加えて)、他の冷却手段を構成してもよい。他の冷却手段は、例えば冷却用フィン(放熱フィン)、ヒートポンプなどのうちで一以上が該当する。他の冷却手段で構成した場合でも、半導体素子群Qgや実装品を冷却できるので、上述した実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0055】
上述した実施の形態では、冷却部14は、ケース本体11b(ケース11)の短辺部(直線や曲線を問わない)に沿って端部に配置する構成とした(図1,図2,図4を参照)。この形態に代えて(あるいは加えて)、ケース本体11bの長辺部(直線や曲線を問わない)に沿って端部に配置する構成としてもよく、端部以外の部位(例えば中央部等)に配置する構成としてもよい。長辺部に沿って配置すると、冷却を行う部位や面積等が増えるので、ケース11内の冷却効率を高めることができる。
【0056】
上述した実施の形態では、プリント基板12の実装表面12aとケース11の対向面11fとの間にインサートバスバー19を配置する構成とした(図2,図4を参照)。この形態に代えて、プリント基板12の実装裏面12bとケース11のケース蓋11aとの間にインサートバスバー19を配置する構成としてもよい。この場合の実装裏面12bには、上述した実施の形態における実装表面12aと同様の実装品を実装する。単にインサートバスバー19の配置が相違するに過ぎないので、上述した実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0057】
上述した実施の形態では、実装表面12aに配置した実装品群Pgと対向面11fとの隙間にインサートバスバー19を配置する構成とした(図5,図8を参照)。この形態に代えて(あるいは加えて)、実装品群Pgと対向面11fとの隙間に他の部品を配置してもよい。他の部品は、例えばバスバーやファンなどが該当する。隙間を利用して配置するので、デッドスペースをさらに縮小することができる。なお、ファン(扇風機)は冷却部14の近傍に配置するのが望ましい。ケース11内に封入された空気を循環または拡散させて、ケース11内の全体を効率良く冷却することができる。
【0058】
上述した実施の形態は、DC−DCコンバータの電源装置10に適用した(図1〜図8を参照)。この形態に代えて、DC−DCコンバータ以外の他の電源装置に適用してもよい。他の電源装置には、例えばAC−DCコンバータやインバータなどの電源装置が該当する。他の電源装置が、プリント基板12や、冷却部14を備えるケース11、インサートバスバー19、トランス16等の回路素子などで構成される場合には、上述した実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0059】
10 電源装置(DC−DCコンバータ)
11,21 ケース
11f 対向面
11g 突起部
12 プリント基板(基板)
12a 実装表面(基板の一面)
14 冷却部
15 整流素子(回路素子)
16 トランス(回路素子)
16t1 1次側端子(接続端子)
17 フィルタ部(回路素子)
19 インサートバスバー
19a,19d,19f 固定部
19c 接続端子台(端子台)
19e 入力部
20 電力変換装置
30 出力機器
Qg 半導体素子群
Q1,Q2,… 半導体素子
P1〜P7,… 実装品
T1〜T6,… 接続端子
Edc 電力源
N グラウンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも半導体素子を配置する基板と、前記基板を収容するケースと、を有する電源装置において、
前記基板の一面に対向して配置され、回路用部品の相互間を電気的に接続するためのインサートバスバーを有し、
前記ケース内には、前記基板の一面と、前記基板の一面に対向する前記ケースの対向面と、の間に形成される第1空間以外の第2空間に配置される一以上の回路素子をさらに有し、
前記回路素子の接続端子は、前記基板と前記インサートバスバーとの間に配置されるとともに、前記インサートバスバーに備えられる端子台の端子と電気的に接続され、
前記端子台は、前記基板の一面に対向することを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記インサートバスバーは、前記基板の一面に実装品が実装されない部位または表面実装品が実装される部位と対向する位置に配置され、電力源から供給される電力を入力する入力部を有することを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記インサートバスバーは、前記基板の一面と、前記ケースの対向面との間に配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記インサートバスバーは、前記インサートバスバー自体を前記ケースに固定するための固定部を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電源装置。
【請求項5】
一以上の前記固定部は、導電性部材で形成され、グラウンドと電気的に接続されることを特徴とする請求項4に記載の電源装置。
【請求項6】
前記ケースは、前記対向面の一部が前記基板の一面に向かって突出して形成されて冷却を行うための冷却部を有し、
前記対向面は、前記基板に実装される実装品と対向することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の電源装置。
【請求項7】
前記対向面は、前記端子台と近づくように、前記端子台に向けて突起させる突起部を有することを特徴とする請求項6に記載の電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−34273(P2013−34273A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167973(P2011−167973)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】