説明

電源遮断装置、テーブルタップおよび分電盤

【課題】ユーザーが停電時に通電するか遮断するかを選択し、停電時においてもその選択の変更を可能にする電源遮断装置を、低コストで実現することを目的とする。
【解決手段】電力を消費する負荷が接続される出力端子と、出力端子の一側を常時ON線または停電時OFF線のどちらかに接続する選択スイッチと、供給電圧を監視し、電路の開閉状態を制御する電圧低下時遮断回路と、電圧低下時遮断回路に作用し電路の開閉状態を初期化するリセット回路を備えている。電圧低下時遮断回路は、供給電圧の低下を検出すると停電時OFF線を電路から遮断し、その後リセット回路を動作させるまでは供給電圧の変化に関わらず停電時OFF線の遮断を保持し、リセット回路を動作させると停電時OFF線を電路に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、停電に対応した電源遮断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
商用電源の停電時には、非常用電源を用いることによって需要側の負荷に電力の供給を継続することができる。しかしながら、非常用電源の電力容量は限られているため、全ての負荷に対して非常用電源から電力供給を継続すると、電力供給は制限を受け、補償時間が短くなる。特に、データセンターなどで用いられる直流配電システムなどの直流系では、供給電圧自体が大きく低下することが予想され、コンピュータなどの直流機器に対する影響は大きい。また、直流、交流を問わず、電圧が低下した状態で電力の供給が継続されると、機器の状態によっては安全性を確保できないことが考えられる。
【0003】
地震などの災害による停電の場合には、電気ストーブなど、非常用電源による電力供給によって、逆に火災等の二次災害が想定される。このような負荷に対しては、停電から電力供給が復帰しても、電力供給を停止することが望ましい。従って、非常用電源を用いた電力供給系では、電力を供給する需要側の負荷を選択し、安全で、必要最低限の負荷に対してのみ電力を供給する必要がある。必要最低限の負荷を選択するために、商用電源のコンセントとは別に、非常用電源にバックアップされたコンセントを別途設けることが考えられる。この場合、コンセントの選択をすることはできるが、商用電源の配電線とは別の配電線を施設する必要がある。
【0004】
そこで、商用電源の配電線を用いることを前提に、負荷を選択する工夫がいくつか提案されている。特許文献1は、直流配電システムに関するもので、非常用電源の負荷を減らす方法を開示している。それぞれの負荷には個別に検出器が設けられている。非常用電源のエネルギー残量が低下した場合、直流母線の電圧を周期的に低下させて(あるいは周期的に上昇させて)、優先度の低い負荷から順番に切り離していく。
【0005】
特許文献2は、直流電源装置を長時間使用する方法を開示している。直流配電システムに対応する各機器には個別に機器切り離し手段が設けられている。直流電源装置の電圧が低下すると、各機器は、予め定められた優先度に従って、優先度の低い順に、機器切り離し手段によってラインから切り離される。
【0006】
特許文献3が対象にする交流配電システムにおいては、災害に繋がる可能性のある機器にそれぞれ子機が置かれている。親機で地震や停電を検知すると、無線で信号を子機に送信し、通電を遮断する。
【0007】
これらの方法では、それぞれの機器に検出器や通信手段を設ける必要があり、コスト高になる。また、一時的な停電か、地震などの災害による停電かによって、停電時に必要な機器は異なる上に、夜間か昼間かなどの時間帯や曜日、季節などによっても、停電中に電力が必要とする機器が変わる。上記方法では、予め停止させる機器が決められているので、停電中に変更することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−191565号公報(図1)
【特許文献2】特開2009−159655号公報(図1)
【特許文献3】特開2010−29004号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、ユーザーが停電時に通電するか遮断するかを選択し、停電時においてもその選択の変更を可能にする電源遮断装置を、低コストで実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係る電源遮断装置は、電力を消費する負荷が接続される出力端子と、出力端子の一側を常時ON線または停電時OFF線のどちらかに接続する選択スイッチと、供給電圧を監視し、電路の開閉状態を制御する電圧低下時遮断回路と、電圧低下時遮断回路に作用し電路の開閉状態を初期化するリセット回路とを備えていて、電圧低下時遮断回路は、供給電圧の低下を検出すると停電時OFF線を電路から遮断し、その後リセット回路を動作させるまでは供給電圧の変化に関わらず停電時OFF線の遮断を保持し、リセット回路を動作させると停電時OFF線を電路に接続するものである。
【発明の効果】
【0011】
本願に関わる電源遮断装置を使えば、常時ON端子と停電時OFF端子のどちらに負荷を接続していても、通常時に負荷は電力の供給を受けられる。停電が起こると、電圧低下時遮断回路が電圧の低下を検知して、停電時OFF線への電路が遮断されるので、停電時OFF端子に接続していた負荷のみが電力供給を停止される。選択スイッチで常時ON端子と停電時OFF端子の接続を切り換えられるので、ユーザーは、停電時に非常用電源で通電する負荷を簡単に切り換えることができる。また、停電後に復帰する機器を簡単に切り換えることができ、停電の理由や一時的な停電か、地震などの災害による停電か、夜間か昼間かなどの時間帯や曜日、季節などによって、臨機応変に切り換えることができる効果が得られる。さらに、リセット回路が動作されるまで非常時OFF線の遮断を維持するので、安全性が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明を実施するための実施の形態1に係わる直流48V用の電源遮断装置の回路構成図である。
【図2】この発明を実施するための実施の形態1に係わる電源遮断装置のD−フリップフロップ回路の回路記号と真理値表である。
【図3】実施の形態1に係わる直流48V用の電源遮断装置の回路構成を組み込んだテーブルタップの平面図である。
【図4】この発明を実施するための実施の形態2に係わる直流48V用の電源遮断装置の回路構成図である。
【図5】この発明を実施するための実施の形態3に係わる交流100V用の電源遮断装置の回路構成図である。
【図6】この発明の実施の形態4に係わる交流100V用の電源遮断装置の回路構成を組み込んだ分電盤の平面図である。
【図7】この発明の実施の形態5に係わる非常用電源を含めた電源遮断装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
図1は、この発明を実施するための実施の形態1に係わる直流48V対応の電源遮断装置の回路構成図である。電源遮断装置100にはDC48V電源から一組の受電端子27を介して電力が供給される。受電端子27に接続される片方の配電線を共通線、もう一方の配電線を常時ON線と呼ぶことにする。この実施の形態では、0V電位の配電線を共通線26、48V電位の配電線を常時ON線2としている。電圧低下時遮断回路1は破線によってその範囲が示されている。電圧低下時遮断回路1は商用電源や非常用電源などの電力供給側に近い常時ON線2と、負荷側に近い停電時OFF線3の間にあって、電圧低下時には停電時OFF線3を遮断する。電圧低下時遮断回路1には、スイッチング素子8、D−フリップフロップ回路(論理回路)10、コンパレータ9bが主要素子として含まれている。電圧低下時遮断回路1は単純な回路と安価な素子で構成されている。
【0014】
停電時選択スイッチ6は常時ON端子4、停電時OFF端子5、共通端子6bを備えている。停電時選択スイッチ6の共通端子6bは出力端子7の片側に接続されている。常時ON端子4を選ぶと、共通端子6bは常時ON線2に接続される。停電時OFF端子5を選ぶと、共通端子6bは停電時OFF線3に接続される。負荷のユーザーは、停電時でも動かしておかなければならない機器を使う際には停電時選択スイッチ6を常時ON端子4側にする。停電時には停止しても良い機器、あるいは、地震などによる停電の場合に、系統が復帰してもONになってもらっては困る電気ストーブなどの機器を使用する際には停電時選択スイッチ6を停電時OFF端子5側にする。
【0015】
図中には停電時選択スイッチ6と出力端子7が2組示されている。出力端子7の片端側には共通線26が、別の片端側には常時ON線2または停電時OFF線3が接続される。停電時選択スイッチ6は出力端子7のそれぞれに設けられている。使用者は使用する負荷(装置、機器)を、出力端子7に接続する。右側の出力端子7は常時ON端子4側に設定され、左側の出力端子7は停電時OFF端子5側に設定されている。常時ON線2はDC48V電源のプラス(48V)側に、共通線26はDC48V電源のマイナス(0V)側に、それぞれ接続されている。常時ON端子4と停電時OFF端子5のどちらを選んでも、通常時であれば負荷は電力の供給を受けられる。
【0016】
比較回路9は常時ON線2の電圧を監視し、供給電圧が基準電圧を満たすか否かを判断する。比較回路9は反転回路9a、コンパレータ9b、コンパレータ用クランプ13、分割抵抗等で構成されている。コンパレータ9bのプラス側端子(+)にはモニタする電圧が入力され、マイナス側端子(−)には比較電圧が入力される。コンパレータ9bはプラス側端子(+)の電位と、マイナス側端子(−)の電位を比較し、プラス側端子(+)の電圧がマイナス側端子(−)の電圧よりも高い場合には正の信号(第1の信号)を出力し、逆の場合は負の信号(第2の信号)を出力する。比較電圧にはコンパレータ用クランプ13で20Vにし、抵抗で分圧された電圧が使用されている。コンパレータ9bはモニタ電圧が20V以下にまで低下した場合に出力が反転する。以上のようにしてコンパレータ9bの出力から出力端子7に供給される電圧が基準電圧よりも低いか否かを判断できる。
【0017】
コンパレータ9bの出力は、反転回路9aを介して、D−フリップフロップ回路10に入力される。D−フリップフロップ回路10は反転回路9aの入力とリセット回路の入力に対応する出力(第3の信号または第4の信号)を発信する。比較回路9(コンパレータ9b)が電圧低下を検知すると、D−フリップフロップ回路10はスイッチング素子8を開状態から閉状態に切り換える。スイッチング素子8にはIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)などが用いられる。D−フリップフロップ回路10は、非常用電源から電源線を通じて送られてきた情報(瞬時の低電圧)を記憶し、電圧が復帰してもスイッチング素子8への信号(第4の信号)をそのままに維持する。
【0018】
リセット回路11はD−フリップフロップ回路10に接続されている。リセットボタン12が押された時にのみ、D−フリップフロップ回路10は解除され、初期化される。解除されると、D−フリップフロップ回路10はスイッチング素子8へ正常時の信号(第3の信号)を送って、停電時OFF線3を復帰させる。これにより、電源が復帰しても、リセットボタン12が押されない限り停電時OFF線3には電力は供給されないことになる。5V出力用クランプ14は、D−フリップフロップ回路10およびリセット回路11に必要なDC5Vを供給する。
【0019】
図2は、D−フリップフロップ回路10の回路記号と真理値表を示している。図には反転回路9a等のD−フリップフロップ回路10の周辺回路も描かれている。真理値表15において、「0/1」は入力「CLK」が「0」から「1」に反転する場合を意味している。同様に「1/0」は入力「CLK」が「1」から「0」に反転する場合を意味している。「D」はグラウンドに接続され、「PR」には電力が供給される。リセット回路11は「CLR」に接続されている。リセットボタン(またはリセットSW)12がOFF状態であれば「CLR」は「1」、ON状態であれば「CLR」は「0」が対応する。D−フリップフロップ回路10の素子として、市販の安価な部品である汎用D−FFを用いることができる。
【0020】
コンパレータ9bの出力は反転回路9aを介してD−フリップフロップ回路10の「CLK」に入力される。D−フリップフロップ回路10は「Q」に出力する。非常用電源から電源線を通じて瞬時の低電圧を比較回路9(コンパレータ9b)が検知すると、「Q」は「1」から「0」に反転する。D−フリップフロップ回路10はコンパレータ9bの出力が元に戻って、「CLK」が元に戻っても、「Q」への出力を維持し、手動のリセットボタン12がONにされて初めて、「Q」を初期の状態に戻す。これにより、電圧が復帰してもスイッチング素子8への信号はそのままに維持される。
【0021】
地震などで停電し、建物が損壊した後、停電が復帰した場合に、電気ストーブなどの発熱源が電力復帰すると、廻りに可燃物があったり、電気ストーブが倒れていたりすると、火災の恐れがあるが、実施の形態1の電源遮断装置によれば、リセットボタン12が押されない限り、復帰せず、安全が保たれる。
【0022】
図3は、実施の形態1に係わるDC48V用電源遮断装置の回路構成を組み込んだテーブルタップの平面図である。テーブルタップ16は、停電時選択スイッチ6、出力端子7、リセットボタン12、テーブルタップケーブル17、表示ランプ18を備えている。一つの出力端子7には一つの停電時選択スイッチ6が必要である。ここでは、出力端子7と停電時選択スイッチ6が4組設けられている。停電時選択スイッチ6とリセットボタン12は、テーブルタップ16の筐体(本体)の外側に互いに近接して設けられていて、手動で操作できる。表示ランプ18は、常時は黄色、停電時には赤色が点灯する。表示ランプ18は、暗闇でもテーブルタップ16の存在場所をユーザーに分かりやすく表示し、停電ではあるが、非常用電源による電力供給を受けていることを知らせることができる。
【0023】
ユーザーは、テーブルタップ16の停電時選択スイッチ6によって、テーブルタップ16に機器の入力端子を繋ぐ場合に、停電時にONにするのかOFFにするのかを選択できる。停電時でもONのままにしておく必要があると判断した負荷に対しては、停電時選択スイッチ6を常時ON側にし、電気ストーブなど、停電時にはOFFにした方が良いと判断した場合には、停電時選択スイッチ6を停電時OFF側にする。図3では、左側の3個の出力端子7は停電時OFF状態に、残りの一個の出力端子7は常時ON(停電時ON)状態に設定されている。
【0024】
実際に、停電が起こった場合を想定する。非常用電源に余裕があり、真冬で、暖房の必要がある場合には、テーブルタップ16で停電時選択スイッチ6を停電時OFF側から、常時ON側に切り換えることができる。また、昼間で、人感センサーのついた自動点灯式の照明を常時ON側ではなく、停電時OFF側にしてよいと判断した場合には、非常用電源の電力節約のため、テーブルタップ16で停電時選択スイッチ6を常時ON側から、停電時OFF側に切り換えることができる。
【0025】
さらに、本発明の電源遮断装置によれば、非常用電源の電力節約のため、常時ONが不要になった機器を停電時OFF側に切り換えたり、逆に必要になった機器を常時ONに切り換えることが容易にできる。商用電源が復帰しても、リセットボタン12を押さないと、通電が復帰しないので、安全を確認した上で、リセットボタン12を押して通電させることができる。
【0026】
実施の形態1では、図1の回路をテーブルタップ16に適用した場合を示したが、機械装置やOA機器用のタップや、壁コンセントでもよく、同様の効果が得られる。また、コンセントではなく、商用電源を、ブレーカを介して小規模の複数の漏電ブレーカに分岐した分電盤に適用してもよく、同様の効果が得られる。分電盤の場合には、停電時選択スイッチ6と負荷側の出力端子7との間に漏電ブレーカを介在させることで、停電時選択スイッチ6側での漏電電流や過剰電流によるスイッチング素子8の損傷を防止することができる。
【0027】
実施の形態2.
図4は、この発明を実施するための実施の形態2に係わる直流48V用電源遮断装置の回路構成図である。実施の形態1では、常時ON端子4と停電時OFF端子5のどちらかにスイッチする2端子タイプの停電時選択スイッチを示したが、停電時選択スイッチを3端子タイプとしてもよい。停電時選択スイッチ6aは常時OFF端子6cを有していて、常時OFF端子6cは接続先が開放されているか、共通線26に接続されている。共通線26に対して常時OFF端子6cはゼロ電位点になるため、出力端子7からは電力を供給できない。常時OFF端子6cを選択するとコンセントに負荷を繋いだ状態で、負荷の完全な電源OFF状態が確実に実現されるので、安全性を確保する効果が得られる。
【0028】
停電時選択スイッチ6aにLEDランプをつけることも考えられる。LEDランプを、常時OFF6c側では点灯しない、常時ON端子4側では赤色に点灯する、停電時OFF端子5側では緑色に点灯するようにすれば、暗闇でも、ユーザーに分かりやすく表示することができる。ユーザーはこれを基に、停電時でも、常時OFF、常時ON、停電時OFFを必要に応じて容易に切り換えることができる。
【0029】
リセットボタン12は、テーブルタップ、分電盤に直接設けるのではなく、非常用電源側や商用電源の配電盤側にあって、有線や無線を用いた信号伝達によってリセット回路11aを遠隔操作して動作するようにしてもよい。図4では、電源遮断装置100の筐体100aの外部にリセットボタン12が設けられていることを示している。リセットボタン12は信号線25によって本体と繋がれているので、リセット回路11aは遠隔操作できる。工場やオフィスビルなどでは、遠隔操作で多数のリセット回路11aを動作させることによって、機器の回復に要する時間の短縮を図ることができる。
【0030】
実施の形態3.
図5は、この発明を実施するための実施の形態3に係わる交流100V用電源遮断装置の回路構成図である。図1の直流用の電源遮断装置とは、素子の一部が異なるが、基本的な機能は同じである。コンパレータ9bには、AC/DC変換器(インバータ)20の出力が入力される。変圧器19は、交流の電圧を1/10に低下させて取り扱いを容易にすると共に、AC/DC変換器20を商用電源(AC100V)から絶縁して直流側のアース接続を容易にする。AC/DC変換器20は、図1の直流回路での電圧低下時遮断回路1とほぼ同じ構成を可能にする。
【0031】
機能的には、実施の形態1と同じであり、直流配電か交流配電かの違いになる。交流を変圧器19とAC/DC変換器20を用いて直流に変換しているので、耐圧の低い安価な素子で回路構成することを実施の形態3では実現している。
【0032】
図6は、この発明の実施の形態3に係わる交流100V用電源遮断装置の回路構成を組み込んだ分電盤の平面図である。分電盤40は、リセットボタン12、表示ランプ18、主ブレーカ21、子ブレーカ22を備えている。主ブレーカ21の一次側は電力供給側に繋がれる。主ブレーカ21からは子ブレーカ22が分岐している。この例では、主ブレーカ21は6個の子ブレーカ22を束ねている。主ブレーカ21の二次側に電圧低下時遮断回路1、リセットボタン12、および表示ランプ18が組み込まれている。図5の出力端子7に子ブレーカ22の一次側の端子が接続されていることになる。
【0033】
停電時選択スイッチ6はそれぞれの子ブレーカ22の一次側に設けられていて、子ブレーカ22の一つの端子を常時ON線または停電時OFF線のどちらかに接続する。分電盤40では、ユーザーは、テーブルタップの停電時選択スイッチ6によって、子ブレーカ22に機器の入力端子を繋ぐ場合に、停電時にONにするのかOFFにするのかを判断し、停電時でもONのままにしておく必要があると判断した負荷に対しては、停電時選択スイッチ6を常時ON側にし、停電時にはOFFにした方が良いと判断した場合には、停電時選択スイッチ6を停電時OFF側にする。
【0034】
リセットボタン12は、分電盤40ではなく、非常用電源側にあって、有線や無線を用いた信号伝達によってリセット回路11を起動させてもよい。遠隔操作によって、例えば、工場やオフィスビル全体の分電盤を瞬時にリセットすることができ、時間の短縮を図ることができる。
【0035】
なお、実施の形態3では、単相交流の場合について示したが、工場などで一般に使用される3相交流でもよく、変圧器19などを3相交流用に変更すれば、簡単な回路と安価な素子で、実施の形態2と同様の構成とすることができ、同様の効果が得られる。
【0036】
実施の形態4.
図7は、この発明を実施するための実施の形態4に係わる非常用電源を含めた電源遮断装置の構成図である。電力供給電源と分電盤もしくはコンセント(交流および直流)の間に非常用電源23が設けられている。電力供給電源は3相交流配電、単相交流配電、直流配電の3通りを図示している。直流配電は、データセンターなど直流機器を数多く用いる場合などに多く配線される。分電盤もしくは、コンセント(壁コンセント、テーブルタップを含む)のそれぞれに、本発明に係わる電源遮断装置が組み込まれており、ユーザーは、停電事故が起こった場合に、常時通電するかどうかをブレーカもしくはコンセントごとに判断して、停電時選択スイッチ6を選択する。
【0037】
停電事故が起こると、非常用電源23では、各機器が停止に至らない時間範囲の電圧低下が発生する。分電盤、交流コンセント、もしくは直流コンセントでは、それぞれの電圧低下時遮断回路1が作動して、停電時OFF線3に通電されなくなり、一挙に負荷が削減される。これによって、電力需要が大幅に削減され、非常用電源23の必要発電電力量が低下するので、非常用電源23が例えばディーゼル発電などの場合、出力が完全に上昇するまで待つことなく、短時間で立ち上げて送電を開始することが可能になる。ユーザーは、停電が長引くようであれば、非常用電源23の余力や燃料の残存量から判断して、停電時選択スイッチ6で負荷を調整できる。
【0038】
非常用電源23が、バッテリやキャパシタなどの電力貯蔵デバイスを用いている場合には、本発明に関わる電源遮断装置が負荷を削減するため、より長時間の停電や瞬停に耐えることが可能になる。停電事故から通常時に戻ったと判断した場合、非常用電源23から、信号線25を通じて低電圧の復帰用のパルス信号24を分電盤のリセット回路11に送って、復帰させる。また、テーブルタップについては、手動式のリセットボタン12で復帰させる。
【0039】
マイクログリッドやスマートグリッドと呼ばれる、不安定な太陽光発電や風力発電を大幅に取り入れた系統の配電システムにおいては、系統の電圧が変動して一時的な停電が頻繁に起こる可能性があるので、本発明の電源遮断装置では特に大きな効果が期待できる。
【符号の説明】
【0040】
1 電圧低下時遮断回路、2 常時ON線、3 停電時OFF線、4 常時ON端子、5 停電時OFF端子、6 停電時選択スイッチ、7 出力端子、8 スイッチング素子、9 比較回路、9b コンパレータ、10 D−フリップフロップ回路、11 リセット回路、12 リセットボタン、13 コンパレータ用クランプ、14 5V出力用クランプ、15 真理値表、16 テーブルタップ、17 テーブルタップケーブル、18 表示ランプ、19 変圧器、20 AC/DC変換器、21 主ブレーカ、22 子ブレーカ、23 非常用電源、24 パルス信号、25 信号線、26 共通線、100 電源遮断装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を消費する負荷が接続される出力端子と、出力端子の一側を常時ON線または停電時OFF線のどちらかに接続する選択スイッチと、供給電圧を監視し、電路の開閉状態を制御する電圧低下時遮断回路と、電圧低下時遮断回路に作用し電路の開閉状態を初期化するリセット回路とを備えていて、
電圧低下時遮断回路は、供給電圧の低下を検出すると停電時OFF線を電路から遮断し、その後リセット回路を動作させるまでは供給電圧の変化に関わらず停電時OFF線の遮断を保持し、リセット回路を動作させると停電時OFF線を電路に接続することを特徴とする電源遮断装置。
【請求項2】
電力を消費する負荷が接続される出力端子と、出力端子の一側を常時ON線または停電時OFF線のどちらかに接続する選択スイッチと、常時ON線の電圧を監視し、基準電圧よりも常時ON線の電圧が高い場合には第1の信号を、基準電圧よりも常時ON線の電圧が低い場合には第2の信号を出力する比較回路と、リセット信号を出力するリセット回路と、第1の信号と第2の信号とリセット信号に基づいて、第3の信号または第4の信号を出力する論理回路と、停電時OFF線と常時ON線の間に設けられ、論理回路から第3の信号が出力されると開状態になり、第4の信号が出力されると閉状態になるスイッチング素子とを備えていて、
論理回路は、比較回路の出力が第1の信号から第2の信号に変化すると出力を第3の信号から第4の信号に反転し、その後リセット信号が入力されるまでは比較回路の出力に関わらず第4の信号を保持し、リセット信号が入力されると保持している第4の信号を第3の信号に反転することを特徴とする電源遮断装置。
【請求項3】
リセット回路と選択スイッチが装置の筐体に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の電源遮断装置。
【請求項4】
リセット回路を装置の外部から操作できることを特徴とする請求項1または2に記載の電源遮断装置。
【請求項5】
選択スイッチは3点切り換えタイプであり、出力端子の一側を常時ON線、停電時OFF線またはゼロ電位点に接続することを特徴とする請求項1または2に記載の電源遮断装置。
【請求項6】
論理回路はD−フリップフロップ回路であることを特徴とする請求項2に記載の電源遮断装置。
【請求項7】
常時ON線に繋がっている降圧型の変圧器と、変圧器の出力を直流に変換するインバータを備えていて、インバータの出力が比較回路に入力されることを特徴とする請求項2に記載の電源遮断装置。
【請求項8】
電力を消費する負荷が接続される複数の出力端子と、出力端子のそれぞれに対応して設けられ、出力端子の一側を常時ON線または停電時OFF線のどちらかに接続する選択スイッチと、常時ON線の電圧を監視し、基準電圧よりも常時ON線の電圧が高い場合には第1の信号を、基準電圧よりも常時ON線の電圧が低い場合には第2の信号を出力する比較回路と、リセット信号を出力するリセット回路と、第1の信号と第2の信号とリセット信号に基づいて、第3の信号または第4の信号を出力する論理回路と、停電時OFF線と常時ON線の間に設けられ、論理回路から第3の信号が出力されると開状態になり、第4の信号が出力されると閉状態になるスイッチング素子とを備えていて、
論理回路は、比較回路の出力が第1の信号から第2の信号に変化すると出力を第3の信号から第4の信号に反転し、その後リセット信号が入力されるまでは比較回路の出力に関わらず第4の信号を保持し、リセット信号が入力されると保持している第4の信号を第3の信号に反転することを特徴とするテーブルタップ。
【請求項9】
電力供給側に繋がれる主ブレーカと、主ブレーカから分岐した複数の子ブレーカと、子ブレーカのそれぞれに対応して設けられ、子ブレーカの一側を常時ON線または停電時OFF線のどちらかに接続する選択スイッチと、常時ON線の電圧を監視し、基準電圧よりも常時ON線の電圧が高い場合には第1の信号を、基準電圧よりも常時ON線の電圧が低い場合には第2の信号を出力する比較回路と、リセット信号を出力するリセット回路と、第1の信号と第2の信号とリセット信号に基づいて、第3の信号または第4の信号を出力する論理回路と、停電時OFF線と常時ON線の間に設けられ、論理回路から第3の信号が出力されると開状態になり、第4の信号が出力されると閉状態になるスイッチング素子とを備えていて、
論理回路は、比較回路の出力が第1の信号から第2の信号に変化すると出力を第3の信号から第4の信号に反転し、その後リセット信号が入力されるまでは比較回路の出力に関わらず第4の信号を保持し、リセット信号が入力されると保持している第4の信号を第3の信号に反転することを特徴とする分電盤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−5250(P2012−5250A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138285(P2010−138285)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】