説明

電灯用ガラス組成物

【課題】 高い耐紫外線着色性を有し、しかも加工性及び電気特性に優れた電灯用ガラス組成物を提供する。
【解決手段】 質量%表示で、SiO2 55〜80%、Al23 0〜5%、B23 0〜9.5%、CaO 0〜5%、MgO 0〜5%、SrO 0〜5%、CaO+MgO+SrO 0〜10%、BaO 0.1〜20%、ZnO 0.1〜15%、Na2O 0〜15%、K2O 0.1〜10%、Li2O 0〜10%、Na2O+K2O+Li2O 8.5〜20質量%、CeO2 0.1〜2%、ZrO2 0〜2%含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光ランプ、白熱電球などに使用される電灯用ガラス組成物に関し、特に電球型コンパクト蛍光ランプ、細径環形蛍光ランプ等のコンパクト蛍光ランプのバルブガラスとして好適な電灯用ガラス組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、蛍光ランプは、アーク放電により発生した紫外線がガラス管壁に塗布されている蛍光体に照射され、蛍光体から可視光が発生することにより発光するものである。
【0003】
蛍光ランプに使用されるガラスは、管状のバルブ部とステム部に大別され、バルブ部の形状としては、直管や直管を熱加工した環状の形状を有するものが一般的であるが、最近では、蛍光ランプの効率化、コンパクト化を目的に、U字管やこれを繋いだツイン管といったように複雑な形状を有するコンパクト蛍光ランプが開発されている。
【0004】
当初、これら環形や複雑な形状の蛍光ランプの外囲器に用いられるガラス管は、加工を容易にするために、PbOを20〜30%程度と比較的多量に含む低粘度の鉛ガラスで作成されていたが、現在では環境的側面からPbOを含まないソーダライムガラスに切り替えが進められている。この用途に使われているソーダライムガラスとしては、PbO含有ガラスに近い加工性及び電気特性を付与するためにBaOやSrOを導入したものなどがある。
【0005】
また、蛍光ランプに要求される高輝度を維持するために、紫外線によるガラスのソラリゼーション着色(紫外線着色)を軽減し、かつ蛍光ランプから漏洩する紫外線による灯具などの変色を防ぐために、ガラス中にCeO2が導入されたものもある。
【特許文献1】特開昭60−155547号公報
【特許文献2】特開2001−220175号公報
【特許文献3】特開平6−56467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、電球型コンパクト蛍光ランプや細径環形蛍光ランプに代表されるコンパクト蛍光ランプは、一層の高出力化・細径化による高輝度化がはかられている。しかしランプの高出力化は、ランプ内で発生する紫外線量の増大を招き、細径化は単位面積当たりのガラスの紫外線受光量を増大させる。その結果、紫外線着色による可視光透過率の低下が著しくなる。このため、バルブを構成するガラスには、より一層の耐紫外線着色性が要求されている。
【0007】
本発明の目的は、高い耐紫外線着色性を有し、しかも加工性及び電気特性に優れた電灯用ガラス組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は種々の実験を行った結果、SrO、CaO、MgOの含有量を制限し、その代わりにBaOとZnOを併用することにより、上記目的が達成できることを見いだし、本発明として提案するものである。
【0009】
即ち、本発明の電灯用ガラス組成物は、質量%表示で、SiO2 55〜80%、Al23 0〜5%、B23 0〜9.5%、CaO 0〜5%、MgO 0〜5%、SrO 0〜5%、CaO+MgO+SrO 0〜10%、BaO 0.1〜20%、ZnO 0.1〜15%、Na2O 0〜15%、K2O 0.1〜10%、Li2O 0〜10%、Na2O+K2O+Li2O 8.5〜20質量%、CeO2 0.1〜2%、ZrO2 0〜2%含有することを特徴とする。
【0010】
なお以下の説明では、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を表すものとする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電灯用ガラスは、紫外線の照射を受けた後も高い透過率を維持し、紫外線遮蔽能が高いために管外への紫外線の漏洩が殆ど無く、しかも加工性や電気特性にも優れているために、高輝度のコンパクト蛍光ランプのバルブガラスとして好適である。なお、本明細書においては、主としてコンパクト蛍光ランプのバルブ用ガラスについて説明したが、本発明のガラスはこれらに限られるものではなく、他のランプ用途にも使用可能である。例えば自動車電球用バルブ、液晶ディスプレーのバックライトに用いられる蛍光ランプのバルブ、平面ランプのカバーガラス(前面板)のような耐紫外線着色及び紫外線遮蔽性が要求される用途に好適に使用可能である。またこれ以外にも、ステム、排気管等の他の照明用部材に使用しても差し支えない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明者は紫外線着色によるガラスの透過率低下現象について詳細に調査したところ、ガラスを構成するアルカリ土類金属酸化物(CaO、MgO、SrO、BaO)及びZnOについて興味深い知見を得た。
【0013】
一般に、アルカリ土類金属酸化物はガラスの加工性と電気抵抗を改善するために含有される成分であり、PbO含有ガラスに近い加工性と電気抵抗を得るには必須の成分であると考えられている。ところがアルカリ土類金属酸化物を含むガラスの透過率特性は、アルカリ土類金属酸化物の種類とその含有量に大きく左右されることが本発明者の実験で明らかになった。即ち、アルカリ土類金属酸化物の中でも、特にCaO、MgO、SrOはガラスの紫外線着色を起こし易くする成分であることが分かった。一方、BaOはこれらの成分と比較すると、影響が少ない。
【0014】
またZnOは、アルカリ金属酸化物と同様にガラスの加工性を改善するが、紫外線着色を殆ど引き起こさないことが明らかになった。
【0015】
これらの知見に基づき、本発明においては、CaO、MgO、SrOの合量を10%以下に制限するとともに、BaO及びZnOを各々0.1%以上含有させている。このように組成設計することにより、良好な加工性及び高い電気抵抗を確保しながら、良好な耐紫外線着色性を得ることができる。このため紫外線が照射されても380nm付近における透過率の低下が少なく、高い可視光透過率を維持できる。なお380nmにおける透過率が高ければ、可視光域(400〜700nm)の透過率も高くなると見なすことができる。
【0016】
以下に、上記各成分について詳細に説明する。
【0017】
CaO、MgO、SrOはより良い加工性と高電気抵抗をガラスに与えるが、380nm付近の透過率を大きく低下させる成分である。これらの成分の合量が10%を超えると高輝度のランプを得ることが困難になる。CaO、MgO及びSrOの合量の好ましい範囲は5.5%以下、さらに好ましくは5%以下である。
【0018】
またCaO、MgO及びSrOが各々5%を超えると、紫外線照射による380nm付近の透過率低下により、高輝度のランプを得ることが困難になる。各成分の好ましい範囲は各々0〜3%、さらに好ましくは各々0〜1%であるが、これら成分の含有量はできる限り最小限に留めることが望ましい。
【0019】
BaOはより良い加工性と高電気抵抗をガラスに与え、PbO含有ガラスに近い加工性と電気特性を得るには必須の成分である。また紫外線照射による透過率低下の影響は他のアルカリ土類金属酸化物と比較すると小さい。従って、本発明においては、BaOを必須成分として含有させる。BaOの含有量は0.1〜20%、好ましくは1.5〜15%、さらに好ましくは4.5〜12%である。BaOが0.1%より少ないとその効果を得られず。また20%を超えると紫外線照射による380nm付近の透過率低下により、高輝度のランプを得ることが困難になる。
【0020】
ZnOは耐侯性を向上させる効果をもつ。また加工温度域で、PbO含有ガラスと近似する粘度特性をガラスに与える、すなわち作業温度と軟化点間の温度差を大きくする。この有用な粘度特性は、曲げ、封止、繋ぎなどのガラス加工時の温度ばらつきに対し、ガラスの粘度のばらつきを小さくする。このため、適切な加工粘度に対する加工温度範囲を広げることが可能になり、加工性を向上させる。なお、作業温度と軟化点間の温度差は、PbO含有ガラスの場合、345℃程度であり、これと同等の温度差が必要である。また本発明の範囲内では380nm付近の透過率を低下させにくくする働きがある。ZnOの含有量は0.1〜15%、好ましくは1〜10%、さらに好ましくは2.5〜9%である。ZnOが0.1%未満では上記の効果が十分に得られず、15%を越えると380nm付近の透過率低下が大きくなり、高輝度のランプを得ることが困難になる。
【0021】
なおBaOとZnOは、合量で3.5〜25%であることが好ましい。これらの成分がこの範囲内にあれば、良好な加工性と電気特性を得ることが容易になる。これらの成分のさらに好ましい範囲は5〜25%であり、特に9.5〜20%であることが望ましい。
【0022】
また、蛍光ランプ用途に要求される耐紫外線着色以外の特性としては以下のものが挙げられる。
(1)蛍光ランプ内に封入される水銀ガスと反応してアマルガム(HgNa)を生成しないように高い化学耐久性が求められる。具体的には、JIS R3502に示された測定されるアルカリ溶出量が0.7mg以下であること。
(2)電極を直接封止するバルブ用として、或いはステムガラスとして使われる場合、デュメットリード線と膨張が整合するように、90〜100×10-7/℃の熱膨張係数を有すること。
(3)電極を直接封止するバルブ用として、或いはステムガラスとして使われる場合、150℃における体積抵抗が1010Ω・cm以上と高いこと。
(4)ガラスの溶融が容易であること。
(5)蛍光ランプ内に封入された水銀ガスは、254、280、297、303、313nmなどの波長をもつ紫外線を発生させる。これら紫外線の遮蔽効果が求められ、具体的には315nm未満の波長域で光が透過しないこと。
【0023】
本発明のガラスにおいて、CaO、MgO、SrO、BaO、ZnO以外の成分の含有量は、これらの諸特性を満足するために上記範囲に特定される。
【0024】
CaO、MgO、SrO、BaO、ZnO以外の成分の組成範囲を上記のように限定した理由を以下に示す。
【0025】
SiO2はガラスの骨格を形成する成分である。SiO2が55%より少ないとガラス骨格の生成が不十分となり、機械的強度、化学耐久性、体積抵抗率が低くなる。SiO2が80%より多いとガラスの粘性が上昇し、溶融成形が困難になる。SiO2の好ましい範囲は60〜75%である。
【0026】
Al23もガラスの骨格形成成分である。Al23は必須成分ではないが、0.5%以上含有させることにより化学耐久性を向上させ、またガラス成形時の失透を抑制するという効果が得られる。ただし5%より多いと溶融や成形が困難になる。Al23の好ましい範囲は0.5〜5%、特に1〜4%である。
【0027】
23は化学耐久性を改善し、高温粘性を低下させる効果がある。しかしB23は環境負荷物質であるため、やむを得ない場合を除き、使用しないことが望ましい。さらにB23が9.5%より多い場合は、380nm付近の透過率低下を招く。B23の好ましい範囲は0〜4.5%、さらに好ましくは0〜3%である。
【0028】
Na2O、K2O、Li2Oといったアルカリ金属酸化物は、熱膨張係数を調整し、またガラスの粘性を低下させて加工性を高めるために1種又は2種以上使用する。Na2O、K2O及びLi2Oを特定の比率で共存させると、アルカリ混合効果と呼ばれる化学耐久性や電気絶縁性を向上させる効果が得られる。
【0029】
Na2Oは必須成分ではないが、アルカリ混合効果を得るためには2%以上含有させることが好ましい。一方、15%を超える場合はアルカリ混合効果が得られず、化学耐久性が悪くなる。Na2Oの好ましい範囲は2〜15%、特に2〜12%、さらに好ましくは2〜10%である。
【0030】
2Oが0.1%未満の場合はその効果がなく、10質量%を超える場合はアルカリ混合効果が得られず、化学耐久性が悪くなる。K2Oの好ましい範囲は2.5〜10%である。
【0031】
Li2Oが10%を超えると失透しやすくなり、ガラスの成形性を悪化させる。なおLi2Oは、膨張調整機能が他のアルカリ金属成分に比べて約2倍と高く、少量の添加でその効果が得られる。また特に高温粘性を低下させることから、加工温度調整のために添加することが好ましい成分である。具体的には、Li2Oを0.3%以上含有させることにより、Na2OやK2Oを多量に含有させなくても、加工温度の調整やデュメットリード線に適合した膨張調整を行いやすくなる。しかもアルカリ混合効果により高い化学耐久性が得られる。Li2Oの好ましい範囲は0.5〜6%である。
【0032】
アルカリ金属酸化物は合量で8.5〜20%である。アルカリ金属酸化物の合量が8.5%以上であれば、デュメットリード線との膨張の整合性が得易くなる。またアルカリ金属酸化物が少なくなると、ガラスの粘性が上昇し加工性が悪化する傾向が現れるが、8.5%以上含有していれば問題ない。またアルカリ金属酸化物の合量が20%以下であれば、デュメットリード線との膨張の整合性が得易くなる。またアルカリ金属酸化物が多くなると、化学耐久性が悪化し、輝度劣化の原因となるアマルガムの生成を起こし易くなる傾向が現れるが、20%以下であれば問題ない。これらの成分のさらに好ましい範囲は10.5〜20%であり、特に12〜18%であることが望ましい。
【0033】
CeO2はガラスに紫外線遮蔽効果を付与し、かつ紫外線照射による透過率の低下を改善する効果がある。また清澄剤としても機能する。CeO2が0.1%より少ないとその効果は得られず、2%より多いとガラスが黄色に着色し、高輝度のランプを得ることが困難になる。CeO2の好ましい範囲は0.2〜2%、特に0.2〜1.2%、さらに好ましくは0.2〜0.9%である。
【0034】
ZrO2は化学耐久性を高める成分である。また体積抵抗率を高める効果もある。これらの効果を得るためにはZrO2が0.01%以上であることが好ましい。ただしZrO2はガラスの粘性を上昇させて加工性を低下させる傾向があるため、含有量の上限は2%に制限される。ZrO2の好適な範囲は0.01〜2%、さらに好ましくは0.05〜1%である。
【0035】
以上の成分以外にも、例えば稀土類酸化物等の光透過特性を改善する成分や、TiO2等の紫外線着色防止効果を有する成分の添加が可能である。また清澄剤として、Na2SO4等のSO3系原料やNaCl等のCl系原料を添加してもよい。なお不純物として、Fe23が含まれることが多いが、Feは有色イオンであり、透過率を低下させる要因であるので、0.1%以下、特に0.08%以下に制限することが重要である。またNd23のような可視光透過率を低下させる成分を含有すべきではない。さらに環境上の理由から、PbOやAs23を含有することも避けるべきである。
【0036】
次に本発明の電灯用ガラス組成物を用いて管状のバルブガラスを製造する方法を説明する。
【0037】
工業的規模でのガラス管の製造方法は、ガラスを形成する成分を含有する鉱物や精製結晶粉末を計測混合し、炉に投入する原料を調合する調合混合工程と、原料を溶融ガラス化する溶融工程と、溶融したガラスを管状に成形する成形工程と、管を所定の寸法に切断する加工工程からなる。
【0038】
まずガラス原料を調合混合する。原料は、酸化物や炭酸塩など複数の成分からなる鉱物や不純物からなっており、分析値を考慮して調合すればよく、原料は限定されない。これらを重量で計測し、Vミキサー、ロッキングミキサー、セメント混合用ミキサー、攪拌羽根のついたミキサーなど規模に応じた適当な混合機で混合し、投入原料を得る。
【0039】
次に原料をガラス溶融炉に投入し、ガラス化する。溶融炉はガラス原料を溶融しガラス化するための溶解槽と、ガラス中の微小泡を除去するための清澄室と、清澄されたガラスを成形に適当な粘度まで下げ、成形装置に導くための通路(フィーダー)よりなる。溶解槽は、耐火物や内部を白金で覆った炉が使用され、バーナーやガラスへの電気通電によって加熱される。バブリングを行う場合、バブリング用ノズルを溶解槽底部に設置して溶融ガラス中に気体を送り込めばよい。投入された原料は通常1400℃〜1600℃に保持の溶解槽でガラス化される。また溶解槽では、ガラス中の泡を浮上させて泡を除去する。さらに残存する微小泡は、1300℃〜1400℃に保持された清澄室で泡ジメされ除去される。清澄室から出たガラスは、フィーダーを通って成形装置に移動するうちに温度が下がり、ガラスの成形に適した粘度104〜106dPa・sになる。
【0040】
次いで成形装置にてガラスを管状に成形する。成形法としてはダンナー法、ベロ法、ダウンドロー法、アップドロー法が適用可能である。
【0041】
その後、管状ガラスを所定の寸法に切断することにより、管状のバルブガラスを得ることができる。また必要に応じて、得られたバルブガラスをさらに所望の形状に加工して使用に供してもよい。
【実施例】
【0042】
以下、実施例に基づいて本発明を説明する。
【0043】
(実施例1)
まずSiO2 69.1%、Al23 2.7%、CaO 1.0%、MgO 0.5%、BaO 8.0%、ZnO 3.5%、Na2O 7.9%、K2O 4.4%、Li2O 2.3%、CeO2 0.4%、ZrO2 0.2%の組成となるようにガラス原料を調合した。さらに調合した原料をライカイ機と呼ばれる乳鉢式擂り潰し攪拌機で10分間攪拌し、500gの原料バッチを得た。なお使用した原料は、SiO2原料として比較的Fe不純物が少ない海岸砂(SiO2分99.8%)を、CeO2原料としてガラス工業用酸化セリウム(CeO2分99.8%以上)を、その他の酸化物原料は、主として量産に適した一般的に使用されるもののうち、できる限り安価な工業用ガラス原料を使用した。また酸化剤には硝酸ナトリウムを使用した。
【0044】
次に原料バッチを容量300cm3の白金ロジウム合金製の坩堝に入れ、箱型電気炉にて1450〜1500℃で4時間溶融した。なお溶融開始後30分毎に白金攪拌棒を用いて計3回攪拌を行った。
【0045】
続いて溶融ガラスをカーボン製成形板上に流し出し、560℃に保持された箱型カンタル式アニール炉内に入れ、4℃/分の平均冷却速度で炉冷した。さらにアニール後のガラス塊から試料(No.1)を作製し、評価に共した。
【0046】
その結果、線膨張係数が95.8×10-7/℃、軟化点が650℃、作業温度が990℃、150℃における体積抵抗率が1011Ω・cm、アルカリ溶出量が0.3mgであった。また波長380nmでの透過率は、紫外線照射前が90.2%、照射後が87.4%であった。紫外線の吸収端は336nmであった。
【0047】
以上より、No.1の試料は電球型コンパクト蛍光ランプ、細径環形蛍光ランプ等のコンパクト蛍光ランプのバルブガラスとして好適なガラスであることが分かる。
【0048】
なお線膨張係数は、30〜380℃における平均線熱膨張係数を示すものであり、ディラトメーターを用いて測定した。軟化点は107.6dPa・sの粘度を示す温度、作業温度は104dPa・sの粘度を示す温度であり、それぞれASTMで規定されるファイバー引っ張り法、及び白金球引き上げ法を用いて求めた。体積抵抗率は、ASTM C657−78に基づき測定し、150℃での抵抗値を示した。アルカリ溶出量は、JIS R−3502に基づいて測定したものである。
【0049】
波長380nmでの光透過率及び紫外線吸収端は、次のようにして求めた。まず30倍視野の光学顕微鏡にて研磨傷が確認できない程度に光学研磨された30×10mm、肉厚1.0±0.02mmの試料を用意した。次に分光光度計(島津製作所製UV3100PC)にて200〜800nmにおける透過率を測定し、380nmでの透過率及び紫外線吸収端を求めた。なお紫外線吸収端は、光透過率曲線の短波長側で実質的に透過率が0%と見なし得る波長とした。続いて、UVドライプロセッサー 型番VUM−3073−B−00((株)オーク製作所製)を用い、256nmに主波長を有する紫外線を試料に7.5mw/cm2の照度で3時間照射した後、再度透過率を測定し、紫外線照射後の380nmにおける透過率を求めた。
【0050】
(実施例2)
表1〜3は、紫外線照射前後の380nmにおける透過率に対するアルカリ土類酸化物及びZnOの影響を評価したものである。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
【表3】

【0054】
各試料は、実施例1と同様にして調製し、評価に供した。
【0055】
表1から、BaOの一部をCaO、SrO、又はMgOに置換すると紫外線着色による透過率の低下が大きくなるが、ZnOに置換すると大幅に改善されることが分かる。また表2から、ZnOの含有量が変化しても、紫外線照射前後の透過率に殆ど影響を与えないことが分かる。さらに表3から、BaO一定の条件で、SrO及びMgOをZnOに置換すると、紫外線照射前後の透過率がともに改善されることが分かる。
【0056】
(実施例3)
表4〜6は本発明の実施例(試料No.12〜24)を、表7は比較例(試料No.25〜27)をそれぞれ示している。なお各試料は、実施例1に準じて調製し、評価した。
【0057】
【表4】

【0058】
【表5】

【0059】
【表6】

【0060】
【表7】

【0061】
表4〜7から、本発明の実施例である試料No.12〜24は加工性及び電気特性に優れ、さらに紫外線着色による透過率の低下が小さかった。またZnO含有量が10%以下であるNo.12〜23の各試料は、紫外線照射前後の透過率が87.6%以上であり、高い透過率を有していた。
【0062】
これらの実施例に対し、比較例であるNo.25の試料は、紫外線遮蔽能が不足していた。またNo.26の試料は、紫外線着色による透過率低下が大きかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%表示で、SiO2 55〜80%、Al23 0〜5%、B23 0〜9.5%、CaO 0〜5%、MgO 0〜5%、SrO 0〜5%、CaO+MgO+SrO 0〜10%、BaO 0.1〜20%、ZnO 0.1〜15%、Na2O 0〜15%、K2O 0.1〜10%、Li2O 0〜10%、Na2O+K2O+Li2O 8.5〜20質量%、CeO2 0.1〜2%、ZrO2 0〜2%含有することを特徴とする電灯用ガラス組成物。
【請求項2】
請求項1の組成を有するガラスからなることを特徴とする蛍光ランプ用バルブ。
【請求項3】
請求項1の組成を有するガラスからなることを特徴とする電球用バルブ。
【請求項4】
請求項1の組成を有するガラスからなることを特徴とする電灯用ステム。
【請求項5】
請求項1の組成を有するガラスからなることを特徴とする電灯用排気管。

【公開番号】特開2008−94718(P2008−94718A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−326391(P2007−326391)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【分割の表示】特願2002−114664(P2002−114664)の分割
【原出願日】平成14年4月17日(2002.4.17)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】