説明

電球形蛍光ランプ

【課題】寿命末期時の安全性を向上させることができる低圧水銀放電ランプを提供することを目的とする。
【解決手段】電球形蛍光ランプは、1本の放電路を構成するためのガラス管の両端に電極が封着されてなる発光管と、前記ガラス管の両端部を内部に受け入れて発光管を保持する樹脂ケースと、前記樹脂ケース内に収納され且つ一対のスイッチング素子59,60により高周波電圧を生成するインバータ方式の点灯ユニットとを備え、前記一対のスイッチング素子59,60が樹脂体57により封入されている。これにより、スイッチング素子59,60は、自己発熱の熱を蓄熱する構造を有することになり、定格消費電力の約2倍のランプ投入電力に相当する電力が印加されたときに、前記蓄積された熱のみで破壊する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白熱電球で使用されている口金を有し、ガラス管を屈曲させてなる発光管と、インバータ方式の点灯ユニットとを備える電球形蛍光ランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の省エネルギー化に伴い、照明分野においても従来からある白熱電球に替えて、発光効率が高く、しかも長寿命な電球形蛍光ランプ(以下、単に「ランプ」という。)が用いられるようになっている。このランプは、発光管、当該発光管を点灯させるための点灯ユニット、発光管を保持すると共に内部に点灯ユニットを収納する樹脂ケース等から構成されている。樹脂ケースの一端には照明器具側への装着及び商用電源からの電力を受けるための口金が設けられている。
【0003】
点灯ユニットは、インバータ方式のものであって、例えばブリッジダイオード素子や平滑コンデンサを有する整流・平滑回路、一対のスイッチング素子を有するインバータ回路部、チョークコイルと共振コンデンサとからなる共振回路部等から構成されている(特許文献1)。
ところで、このようなランプにおいて、電極が寿命末期に達した場合、電極(コイル)に塗布されている電子放出物質(エミッタ)がなくなるため、放電が始まる際に生じるエネルギーロスが増大し、電極の温度が上昇する。なお、本明細書において「寿命末期」とは、前記電子放出物質が電極からなくなった状態をいう。
【0004】
この状態が続くと、電極の周囲の温度が過度に上昇し、何の対策も施さない場合には、電極の周辺に位置する樹脂ケースが変色する等の異変が生じるおそれがある。
特許文献1に代表される従来方式のインバータ方式を利用したランプでは、スイッチング素子を電極付近に配置し、電極からの熱によりスイッチング素子の温度を上昇させるようにしている。
【0005】
これにより、スイッチング素子は、自己発熱による熱に、寿命末期時に温度上昇した電極から放射された熱が加わり、自己の温度が上昇し、やがて熱破壊を起こす。そして、スイッチング素子の熱破壊で共振回路部の発振が停止する。なお、従来の電球形蛍光ランプは、ランプ投入電力が定格消費電力の2倍程度に達した際に、点灯ユニットの機能が通常停止するように設計されている。
【特許文献1】特開2000−82303号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のランプでは、スイッチング素子の電極から受ける熱は、ランプ点灯時における電極とスイッチング素子との位置関係で大きく変化し、例えば、ランプがその中心軸が横になる状態で点灯された場合、電極からの熱が上方へと伝わり、スイッチング素子へ伝わる熱量が少なくなる。
このため、ランプ投入電力が定格消費電力の2倍に達した場合でも、スイッチング素子の温度が熱破壊する温度に達しない場合があるのである。つまり、従来のランプでは、ランプ投入電力が定格消費電力の2倍程度に達しても、スイッチング素子が熱破壊しない場合が生じ得るのである。
【0007】
なお、寿命末期においてスイッチング素子が破壊せずにそのまま点灯状態が続くと、電極の温度がさらに上昇し、発光管において電極をガラス管の端部に封止している部分でクラックが生じる。
本発明は上記のような課題点を鑑みてなされたものであって、寿命末期時に点灯ユニットの機能を確実に停止させることができる電球形蛍光ランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明に係る電球形蛍光ランプは、1本の放電路を構成するためのガラス管の両端に電極が封着されてなる発光管と、前記ガラス管の両端部を内部に受け入れて前記発光管を保持する樹脂ケースと、前記樹脂ケース内に収納され且つスイッチング素子により高周波電圧を生成するインバータ方式の点灯ユニットとを備え、前記発光管のインピーダンスが1kΩ以上であり、前記スイッチング素子は、自己発熱で発生した熱を蓄熱する構造を有すると共に、ランプ投入電力が定格消費電力の1.2倍以上の任意の電力になったときに、前記蓄積された熱のみで破壊する特性を有することを特徴としている。
【0009】
また、前記任意の電力は、定格消費電力の2.1倍以下であることを特徴とし、或いは、前記発光管のガラス管の外径が8mm以下であることを特徴としている。
さらに、前記スイッチング素子は、当該スイッチング素子への過電流を防止するツェナーダイオード素子と共に樹脂材料により封入されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る電球形蛍光ランプは、点灯ユニットのスイッチング素子が自己発熱による熱を蓄積する構造を有している。このため、電極が寿命に達し、電極での降下電圧が大幅に増大して共振回路部の共振電圧も上昇した時に、この共振電圧の上昇に伴い、スイッチング素子を流れる電流も増大し、スイッチング素子の自己発熱量も増大してスイッチング素子の温度も上昇する。
【0011】
そして、スイッチング素子は、ランプ投入電力が定格消費電力の1.2倍以上の任意の電力になったときに、スイッチング素子に蓄積する熱のみで熱破壊する特性を有しているので、寿命末期の電極からの熱による温度上昇に関係なく、定格消費電力の1.2倍以上の任意のランプ投入電力がランプに印加されたときに確実に熱破壊する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
<実施の形態>
以下、本発明に係る電球形蛍光ランプ(以下、同様に「ランプ」という。)について図面を参照しながら説明する。
1.ランプの全体構成
図1は、ランプ側方より見た図であり、内部の様子が分かるように一部を切り欠いている。なお、この図に示すランプ1は60Wタイプの白熱電球代替用である。
【0013】
図1に示すように、ランプ1は、1本の放電路を内部に有する発光管10と、この発光管10を保持する樹脂ホルダ20と、発光管10を点灯させる点灯ユニット50を内部に備える樹脂ケース30とから構成されている。なお、樹脂ケース30は、発光管10を保持している側と反対側に給電用の口金40を備えている。
(1)発光管について
発光管10は、例えば、軟質ガラスからなるガラス管11(例えば、外径;8.0(mm))をその略中央部で折り返し、この折り返した部分(この部分を「折り返し部」という。)11aからガラス管11の端部11b,11cまでを、折り返し部11aを通る旋回軸の周りを旋回して形成されたものが用いられる。なお、この旋回軸が発光管10の中心軸Aであり、ガラス管11の形状は2重螺旋形状となる。
【0014】
二重螺旋形状をしたガラス管11の内面には、蛍光体層12が形成されている。蛍光体層12は、例えば、希土類系であって、赤、緑、青発光の3種類の蛍光体を用いた、所謂3波長型である。蛍光体の具体例としては、Y:Eu、LaPO:Ce、TbおよびBaMaAl1627:Eu,Mn蛍光体を混合したものが用いられる。
発光管10の内部(放電路)における両端部、つまりガラス管11の端部11b,11cには、電極13(,13)がそれぞれ設けられている。電極13は、図1の拡大図に示すように、所謂ビーズマウント方式のものであり、電極コイル14と、当該電極コイル14を支持する一対のリード線15a,15bと、一対のリード線15a,15bを保持するビーズガラス16とを備える。電極コイル14には、加熱により電子を放出する電子放出物質(エミッタ)が塗布されている。なお、ガラス管11の端部11cにも、電極13と同じ構造の電極(13)が封着されている。
【0015】
ガラス管11の少なくとも一方の端部(ここでは端部11b)には、電極13の封着に併せて排気管17も取着され、排気管17を利用して、ガラス管11の内部を排気し、また水銀、および希ガス(例えばアルゴン)が充填される。
これにより、内面に蛍光体層12が塗布されたガラス管11の端部11b,11cに電極13(,13)が封着され、ガラス管11の内部に水銀、希ガスが封入されてなるものを発光管10といい、これにより、内部に放電路18が形成される。
【0016】
また、発光管10において、電極13(,13)が付着されている部分を発光管10の端部とし、その符号を、ガラス管11の端部11b,11cと同じ、「11b」、「11b」を用いる。
(2)樹脂ホルダについて
図2は、樹脂ホルダを示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【0017】
樹脂ホルダ20は、図2に示すように、筒状の周壁21と、この周壁21の一端(図1では下端)に形成された端壁22とを備える有底筒状をしている。
樹脂ホルダ20は、樹脂材料、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)を用いて形成され、その端壁22に発光管10の端部11b,11cを受け入れるための一対の受入口23a,23bが形成されている。
【0018】
ここで、発光管10の樹脂ホルダ20への取着を簡単に説明する。
まず、発光管10の中心軸Aと樹脂ホルダ20の中心軸B(図2(b)参照)とを略同軸に一致させて、発光管10の端部11b,11cと端壁22とを付き合わせる。そして、発光管10の中心軸Aを回転軸として、ガラス管11の折り返し部11aから両端部11b,11cまでの旋回部分が旋回している方向に発光管10を自転させると、発光管10の端部11b,11cが樹脂ホルダ20の受入口23a,23bからその内部に進入し、発光管10の端部11b,11cが所定位置まで挿入されると、接着剤(例えば、シリコン)29で発光管10の端部11b,11cを樹脂ホルダ20の内壁面に固定する。
【0019】
これにより、発光管10の樹脂ホルダ20への固定が完了する。
なお、発光管10の端部11b,11cを樹脂ホルダ20の内部に進入させるときに発光管10の端部11b,11cが進む方向を「下手側」、その逆側を「上手側」とする。
また、端壁22は、受入口23a,23b以外に、受入口23a,23bの上手側に発光管10の端部11b,11cを受入口23a,23bに案内する溝状の案内部24a,24bと受入口23a,23bの下手側に樹脂ホルダ20の内部に進入した発光管10の端部11b,11cを覆うためのドーム状に隆起したカバー25a,25bを備える。
【0020】
(3)樹脂ケースについて
樹脂ケース30は、図1に示すように、発光管10を保持している側が太くなるコーン形状をしており、口金40が被着する小径部30aと、この小径部30aよりも径が大きく且つ樹脂ホルダ20の周壁21と嵌着する大径部30bと、小径部30aから大径部30bへと徐々に拡径する拡径部30cとからなる。
【0021】
樹脂ケース30は、樹脂材料、例えば、PBT(ポリブチレンテレフタレート)を用いて形成されている。
口金40は、白熱電球と同じタイプであり、例えば、金属筒の側壁外面にネジ溝が刻まれたものであり、ここでは、E17タイプが用いられている。なお、口金40は、E17タイプに限定するものではなく、例えばE26タイプでも良いし、B形タイプを用いても良い。
【0022】
また、樹脂ケース30は、発光管10を保持すると共に小径部30aに口金40を被着し、その内部に点灯ユニット50を収納するようなものであれば良く、部品点数や形状等を特に限定するものではない。
(3)点灯ユニットについて
点灯ユニット50は、樹脂ケース30内に収納され、また、複数の電子部品が基板に実装して構成される。
【0023】
図3は、点灯ユニットの斜視図であり、(a)は基板を口金側から見た図であり、(b)は、基板を発光管側から見た図である。
点灯ユニット50は、基板51の両主面に電子部品、主として、チョークコイル、電解コンデンサ、共振コンデンサ、スイッチング素子、ツェナーダイオード素子等が実装されて構成されている。
【0024】
基板51の発光管10側の主面には、図3の(a)に示すように、チョークコイル52、電解コンデンサ53、共振コンデンサ54等の電子部品が実装されている。
これらの電子部品52〜54は、本体部(53a,54a)の一面からリード線(53b,53b、54b)が延出しており、このリード線(53b,53b、54b)が基板51に形成されている貫通孔に挿入された状態で、例えば半田により固着されることにより基板51に実装されている。
【0025】
基板51の口金40側の主面には、図3の(b)に示すように、ブリッジダイオード素子55の他、一対のスイッチング素子と、当該スイッチング素子を保護するツェナーダイオード素子等とを一体にモールドしたモールド素子56が実装されている。
図4は、モールド素子の概念図である。
モールド素子56は、図4に示すように、一対のスイッチング素子59,60と、ツェナーダイオード素子61,62とを接続した状態で、樹脂体57で封入されている。なお、スイッチング素子59,60の各端子は、モールド素子56の端子56a〜56hにそれぞれ接続されている。
【0026】
図4では、スイッチング素子59,60、ツェナーダイオード素子61,62を白抜きで記載すると共これらは1つの部品を指す。各部品は、例えば、これらの部品を端子56a〜56h等に接続した状態で、モールド型に配置され、その後、樹脂体57となるべき樹脂を充填することでモールド素子56が製造される。
樹脂体57の厚さ、材料(熱伝導特性)等は、ランプ投入電力が定格消費電力の2倍になったときに、内部に収納するスイッチング素子が自己発熱して、スイッチング素子の温度が熱破壊する温度に等しくなるように設定されている。
【0027】
なお、基板51と口金40とは、図1に示すように、リード線58a,58bにより接続されている。また、点灯ユニット50は、基板51が発光管10の中心軸Aと直交するように、樹脂ケース30に装着されている。点灯ユニット50の樹脂ケース30への装着は、図1に示すように、樹脂ケース30の内面に形成されている係止部31,32が基板51の周縁に係止することで行われる。
【0028】
2.ランプの回路構成について
図5は、点灯ユニット50を含むランプ1の回路構成を説明する。
点灯ユニット50は、図5に示すように、主に整流・平滑回路部100、インバータ回路部101、共振回路部102とから構成されている。
整流・平滑回路部100は、口金40を介して商用低周波電源に接続されており、商用低周波交流電圧を整流し・平滑して直流に変換して出力するもので、ブリッジダイオード素子55、電解コンデンサ53から構成されている。
【0029】
インバータ回路部101は、整流・平滑回路部100から出力された直流を高周波に変換するものであって、スイッチング素子59,60と、当該スイッチング素子59,60への過電流を防止してスイッチング素子59,60を保護するツェナーダイオード素子61,62、後述の機能を有するコイル等を有している。
スイッチング素子59には、ここではN型MOSFETを利用し、また、スイッチング素子60は、ここではP型MOSFETを利用している。
【0030】
このインバータ回路部101の出力側には、共振回路部102が接続されている。共振回路部102は、インバータ回路部101のスイッチング素子59,60により反転電圧が所定の周期で印加され、チョークコイル52と共振コンデンサ54とを備える。
コイル63は、チョークコイル52の2次コイルとして作用し、チョークコイル52の一次電圧の反転電圧が両スイッチング素子59,60のゲートとソース間に印加される。
【0031】
これにより発光管10の両電極13(,13)間に所定の高周波電圧が印加され、発光管10が点灯を開始する。
3.実施例
次に、点灯ユニット50を構成する主要部品の具体的な構成(一例であり、これに限定するものではない)について説明する。
【0032】
共振コンデンサ54は、例えば5600(pF)の容量を有するポリエステルコンデンサが用いられ、また、電解コンデンサ53は、例えば、耐圧160(V)、容量12(μF)というスペックを有するものが用いられている。
また、モールド素子56は、スイッチング素子59,60のジャンクション間とモールド素子56の外部の空気(外気)との熱抵抗が600℃/W程度で、オン抵抗が2(Ω)程度のスイッチング素子59,60を2つ実装したものであり、モールド素子56を平面視したときに、それが4(mm)×5(mm)の長方形状で、厚さが1.5(mm)である。
【0033】
このモールド素子56は、基板51に面実装されている。なお、樹脂体57には、エポキシが用いられている。
樹脂ケース30の耐熱温度は約250(℃)であり、共振コンデンサ54の耐熱温度は150(℃)である。また、電解コンデンサ53の耐熱温度は105(℃)である。
発光管10は、例えば、管径が約8(mm)のガラス管11を螺旋状に湾曲させ、その放電路長は約400(mm)である。また、ランプ投入電力が10(W)で、点灯時のランプのインピーダンスが1(kΩ)である。
【0034】
4.ランプの点灯動作について
ランプの点灯動作について、主に図5を用いて説明する。
4−1.正常点灯時
図外の商用低周波交流電源から口金40を介してランプ1に供給された交流電圧は、整流・平滑回路部100において直流電圧に一旦変換され、スイッチング素子59のゲートに電圧が印加される。これにより、スイッチング素子59が導通状態となり、チョークコイル52を介して共振コンデンサ54に電圧が印加される。なお、本明細書では、正常点灯は、ランプが異常な状態、例えば、破損したり、回路機能が停止したりすることのない状態での点灯を指している。
【0035】
一方、チョークコイル52に電流が流れると、2次コイル63に起電圧が生じ、これが反転電圧としてN型のスイッチング素子59とP型のスイッチング素子60のゲートとソースの間に印加される。これによりN型のスイッチング素子59とP型のスイッチング素子60が交互に導通状態となるため、チョークコイル52と共振コンデンサ54との間で共振電圧が生じ、発光管10の電極13,13間に高周波電圧が供給される。
【0036】
なお、一旦、電極13,13より放電が開始されると、発光管10は負性インピーダンス特性を持ち、チョークコイル52により電流を制限されることにより安定した電力で放電を維持される。
4−2.寿命末期時(ランプ投入電力上昇時)
次に、電極13,13が寿命末期になる、つまり、電極コイル14に塗布されていた電子放出物質がなくなると、電極コイル14から電子を放出する際に大きなエネルギーを消費するために、電極13(,13)での電圧降下が大きく増すことにより、電子放出物質がなくなった側の電極コイル14の温度が上昇する。そしてこの状態がつづくと、電子放射物質がなくなった側の電極コイル14付近の温度が上昇する。
【0037】
この際、電子放射物質がなくなり、電極13(,13)での電圧降下が増大すると発光管10に印加される電圧も上昇し、共振電圧が上昇すると共に共振電流が増大する。このため、両スイッチング素子59,60に流れる電流も増大する。
図6は、寿命末期時のFET素子に流れる電流の波形であり、図中の線分aが異常電極を用いて点灯させた時のFET電流波形であり、図中の線分bが正常電極を用いて点灯させた時のFET電流波形である。なお、図6の縦軸が電流値である。
【0038】
同図の線分aに示すように、電子放射物質がなくなった寿命末期となった異常電極を使用して点灯させた時のスイッチング素子に流れる電流(図中の線分aである。)が、電子放射物質が残存する正常電極を使用して点灯させた時の電流(図中の線分bである。)に比べて、約2倍にまで増加をしているのが分かる。
一方、スイッチング素子59,60のジャンクションでは、寿命末期時の増加した電流量の2乗に比例して発熱するため、空気とジャンクション間の熱抵抗が大きく、且つ両スイッチング素子59,60の自己発熱同士の相互作用により、樹脂体57の温度が急激に上昇する。これにより、スイッチング素子59,60が自己発熱により熱破壊し、共振回路部102での共振が停止する。
【0039】
このように、各スイッチング素子59,60は、電極寿命末期の電極13(,13)からの熱と、電極寿命末期に増加する電流量による自己発熱とにより、自己の温度が150(℃)で熱破壊するので、従来の方法のように電極が寿命末期のときに発生する熱を主に利用する場合に比べて、早期且つ確実に熱破壊することになる。
これにより、寿命末期に達した後、スイッチング素子59,60の熱破壊を早期に誘導でき、スイッチング素子59,60の熱破壊が遅れがちな従来よりも寿命末期の安全(信頼)性を向上させることができる。
【0040】
また、電極13(,13)が寿命末期に達した際の共振電圧の上昇に伴い、チョークコイル52の2次側出力に並列に配置されているスイッチング素子59,60を保護するためのツェナーダイオード素子61,62に印加される電圧も増大する。このため、前記ツェナーダイオード素子61,62に流れる電流も増大するため、前記ツェナーダイオード素子61,62による発熱も大きくなる。
【0041】
したがって、ツェナーダイオード素子61,62とスイッチング素子59,60とを同一の樹脂体57の内部に封入しているので、相互の自己発熱作用でスイッチング素子59,60の温度上昇を助長し、本発明の効果を高めることができる。
さらに、ツェナーダイオード素子61,62の発熱を利用することで、スイッチング素子59,60自身のオン抵抗を下げることができ、正常点灯時のインバータ回路ロスを減らすことができる。
【0042】
5.考察
5−1.スイッチング素子について
実施例で説明したランプ1は、白熱電球60W代替用の電球形蛍光灯12Wタイプである。このランプで使用しているスイッチング素子は、自己温度が約150(℃)に達すると、熱破壊(自己破壊)する。
【0043】
図7は、各種仕様のスイッチング素子における、ランプ投入電力/定格消費電力と自己温度上昇との関係を示す図である。
図7の線分aは、1スイッチング素子で、従来利用していたスイッチング素子である(このスイッチング素子を従来品とする。)。
線分bは、直列接続した2スイッチング素子を1つに封入したものであって、そのオン抵抗の合計が従来品と等しく、ジャンクション−空気間熱抵抗の合計が従来品の6倍であるものを用いた場合であり、上記実施例でのモールド素子56に相当する。
【0044】
線分cは、直列接続した2スイッチング素子を1つに封入したものであって、そのオン抵抗の合計が従来品の1.4倍であり、ジャンクション−空気間熱抵抗の合計が従来品の6倍であるものを用いた場合である。
線分dは、直列接続した2スイッチング素子を1つに封入したものであって、そのオン抵抗の合計が従来品の2.5倍であり、ジャンクション−空気間熱抵抗の合計が従来品の6倍であるものを用いた場合である。
【0045】
線分eは、直列接続した2スイッチング素子を1つに封入したものであって、そのオン抵抗の合計が従来品の3倍であり、ジャンクション−空気間熱抵抗の合計が従来品の18倍であるものを用いた場合である。
本発明に係るランプでは、正常時のランプ投入電力(定格消費電力である。)は12(W)で、寿命末期時のランプ投入電力は正常時の約2倍の24(W)であり、モールド素子56は、図7の線分bに相当する。
【0046】
一方、実施例で説明したスイッチング素子の自己温度は、図7(線分b)から、正常時のランプ投入電力が12(W)では10(℃)であり、寿命末期時のランプ投入電力が24(W)では、略熱破壊する温度である150(℃)であるのが分かる。
これに対して、従来のスイッチング素子の自己温度は、図7(線分a)から、正常時のランプ投入電力12(W)では5(℃)であり、寿命末期時に相当するランプ投入電力が24(W)では123(℃)程度であるのが分かる。
【0047】
このように、本発明に係るスイッチング素子では、ランプ投入電力が、例えば、24(W)に達すると、自己発熱により熱破壊を自ら生じる。これに対して、従来のスイッチング素子では、熱破壊する温度にまで達していない。
仮に、従来のスイッチング素子を用いて、ランプ投入電力が24(W)で熱破壊させようとすると、他の熱、例えば、寿命末期の電極から発生する熱を利用して、スイッチング素子の温度を150(℃)にする必要があり、スイッチング素子の配置、特に電極(電極コイル)との距離等を精度良く管理する必要がある。
【0048】
これに対して、本発明に係るスイッチング素子では、電極からの熱等を考慮せずに、自己発熱によって自ら熱破壊するので、スイッチング素子を配置する際の設計の自由度を高めることができる。
また、従来の技術では、電極が寿命に達した際にスイッチング素子が破壊するまでの温度に上昇させるために、チョークコイルの飽和を必要としていたが、本発明では、樹脂体の熱抵抗とスイッチング素子のオン抵抗を適宜選択(調節)することでチョークコイルの飽和を必要としないため、ランプ始動時の信頼性も向上できる。
【0049】
5−2.自己発熱特性
実施の形態では、2つのスイッチング素子を1つにパッケージ(樹脂体内に封入)し、モールド素子における空気とジャンクション間との熱抵抗が600(℃/W)程度で、オン抵抗が2(Ω)程度としていたが、熱抵抗、オン抵抗は、定格消費電力に応じて他の数値のものを使用しても良いし、熱破壊する温度も150(℃)でなくても良く、150(℃)以外の破壊温度のスイッチング素子を用いても良い。当然、定格消費電力の異なるランプにも適用することができる。
【0050】
通常、スイッチング素子等の電子部品は、規格値に対して±10%程度のばらつきを有していることが予想される。一方、ランプは、通常単独で使用されることは少なく、例えば、照明器具内に装着されて使用される。照明器具内でランプが点灯されると、ランプの周囲温度T1が60(℃)程度まで上昇することもある。
したがって、正常点灯時では、電子部品のばらつき及びランプ周囲温度を考慮すると、定格消費電力に対して1.1倍のランプ投入電力がランプに印加された状態と略同じ状態になり、この状態で、スイッチング素子の温度T2は、少なくとも90(℃)より低い必要がある。
【0051】
なお、この90(℃)は、スイッチング素子の熱破壊温度T3が150(℃)の場合であり、熱破壊温度T3とランプの周囲温度T1との差で求まる。
発明者らは、ランプ投入電力が定格消費電力の1.1倍になった状態のときに、スイッチング素子の温度が90(℃)となるようなモールド素子を作成し、そのランプ投入電力/定格消費電力とスイッチング素子の自己温度上昇を測定した結果が、図7の線分eである。
【0052】
図7の線分eから、スイッチング素子が自己発熱で破壊する破壊温度(150(℃))に達するのは、ランプ投入電力が定格消費電力の1.2倍のときであることが分かる。
以上のことから、スイッチング素子が、照明器具に装着され且つ正常点灯時に自己破壊しないようにするには、スイッチング素子におけるランプ投入電力と自己温度上昇との関係を示す線分が、図7の線分eよりも右側の領域にあれば良いことになる。
【0053】
換言すると、スイッチング素子は、ランプ投入電力が定格消費電力の1.2倍以上になったときに、自己熱破壊するような特性を有しておれば良い。
一方、従来のスイッチング素子は、図7の線分aで示すように、自己温度上昇が150(℃)になるのは、ランプ投入電力が、定格消費電力の2.15倍に達したときであり、本発明のスイッチング素子は、自己温度上昇が150(℃)になるランプ投入電力が、定格消費電力の2.1倍以下であれば、従来のランプよりも早期にスイッチング素子が熱破壊することになる。
【0054】
つまり、モールド素子は、定格消費電力の1.1倍のランプ投入電力がランプに印加したときの自己発熱が、スイッチング素子の熱破壊温度T3から周囲温度T1を引いた温度より低い自己発熱特性を有し、熱破壊させたいランプ投入電力をW2(W)とすると、ランプ投入電力がW2(W)となったときのスイッチング素子の自己温度が熱破壊する熱破壊温度T3(℃)となるような熱抵抗、オン抵抗を有しておれば良い。
【0055】
そして、破壊させたときのランプ投入電力W2(W)と、定格消費電力W1(W)との関係は、以下の関係を満たすことが好ましい。
1.2×W1 ≦ W2 ≦ 2.1×W1
つまり、ランプ投入電力W2が定格消費電力W1の2.1倍よりも大きくなると、スイッチング素子が熱破壊するタイミングが従来の点灯ユニットと同じ又はそれよりも遅くなり、また、ランプ投入電力W2が定格消費電力W1の1.2倍よりも小さいと、ランプの周囲温度が高かったり、スイッチング素子に印加している電力がばらついたりしてしまうと、正常点灯時でもスイッチング素子が熱破壊してしまうおそれがあるからである。
【0056】
5−3.その他
近年、発光管のコンパクト・高効率化が進められ、発光管のガラス管が細長くなる傾向にある。例えば、ガラス管の管径が8(mm)以下にして放電路長を従来よりも長くした場合、発光管(ガラス管)の横断面積が小さくなるため、発光管内を流れる電流が減少し、ランプ電圧が上昇する。
【0057】
このため、従来では、発光管のインピーダンスが1(kΩ)より小さかったのに対し、上述のコンパクトにした発光管を用いた場合、そのインピーダンスが1(kΩ)以上に増加する。
この結果、コンパクトにしたランプでは、寿命末期時に電極コイルに塗布されている電子放出物質がなくなった際に、従来のランプよりもランプ電流が減少しているので、放電維持するために必要な電子を放出するエネルギーも減少する。
【0058】
これにより、電極からの発熱量も減少し、従来の技術(電極からの熱を利用してスイッチング素子を破壊させる技術)では、スイッチング素子の温度が上昇しにくく、共振回路部での共振が停止するまでの時間が延びてしまう。
これに対し、本発明に係るランプでは、寿命末期時に増加する共振電流によってスイッチング素子の自己温度が上昇するため、発光管のインピーダンスが1(kΩ)以上となった場合でも、自己発熱の熱を有効に利用して安全性を確保することができる
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明の内容が、上記実施の形態に示された具体例に限定されないことは勿論であり、例えば、以下のような変形例をさらに実施することができる。
【0059】
<変形例>
1.ランプについて
上記実施の形態においては、12W品種の電球形蛍光ランプを一例として説明したが、ランプの品種、サイズ等についてもこれに限定するものではない。また、言うまでもなく、点灯ユニットを構成する部品の定格、あるいは種類などは、上記実施の形態(実施例)に限定されるものではない。
【0060】
また、実施の形態でのランプは、発光管を覆う外管バルブ(グローブ)を備えていない、所謂D形であったが、外管バルブを備えるランプであっても良い。この場合、外管バルブの形状が、所謂、A形であっても良いし、T形、G形であっても良い。
2.発光管について
実施の形態では、発光管の形状が2重螺旋状をしているが、当然、他の形状であっても良い。例えば、「U」字状に湾曲するガラス管を1本用いたもの、あるいは、複数本、例えば、3本連結したものであっても良い。さらには、1本のガラス管を湾曲させたU字状をさらに屈曲させた、所謂「くら形」にした形状でも良い。
【0061】
さらには、直管状のガラス管を1本用いても良いし、複数本、例えば、4本を連結したもの(所謂ツイン形)であっても良い。当然、円弧状、多角形状等にガラス管が湾曲したものであっても良い。
但し、発光管形状が実施の形態で説明した螺旋形状をしていると、発光管内の電極の位置が、比較的樹脂ケースの周壁近傍に位置するため、寿命末期に樹脂ケースが高温になり易く、螺旋形状の発光管を備えるランプに本発明を適用すると特に効果的である。
【0062】
3.電極について
実施の形態では、電極は、所謂ビーズマウント方式のものを利用したが、例えば、電極コイルがステムにより保持された、所謂ステム方式の電極を用いても良い。
4.モールド素子
(1)スイッチング素子の数について
実施の形態でのモールド素子は、2個のスイッチング素子が樹脂体によって封入され一体化されていたが、例えば、1個のスイッチング素子を樹脂体により封入しても良い。この場合も、1対のスイッチング素子の内、一方が自己発熱により、熱破壊するので、共振回路部の発振を停止させることができ、結果的に点灯ユニットの機能を停止させることとなる。
【0063】
また、モールド素子内でのスイッチング素子の接続についても上記実施の形態で説明したものに限定するものではなく、モールド素子201は、例えば、図8に示すような接続で、スイッチング素子203,205が樹脂体207により封入されていても良い。
(2)スイッチング素子の種類
実施の形態でのスイッチング素子は、N型MOSFET或いはP型MOSFETを利用したが、例えば、N型同士、或いはP型同士で構成しても良いし、さらには、FET以外の他の素子、例えば、バイポーラトランジスタを利用しても良い。
【0064】
また、点灯ユニットは、2つのスイッチング素子を用いたハーフブリッジ形であったが、例えば、定電流プッシュプル形でも良いし、スイッチング素子を4個用いたフルブリッジ形であっても良い。
(3)封入材料
実施の形態では、一対のスイッチング素子を封入する樹脂体は樹脂材料で構成していたが、(一対でなくても良い)スイッチングを封入する封入体は、他の材料、例えば、シリコン、ガラスを用いて良い。
【0065】
さらには、モールド素子は、スイッチング素子と、当該スイッチング素子を封入する封入体とから構成されていたが、例えば、筐体内にスイッチング素子を接続配置し、この状態で筐体内に封入材料を封入しても良い。
(4)他の電子部品との封入
実施の形態では、スイッチング素子の他、当該スイッチング素子保護用のツェナーダイオード素子も一緒に封入していたが、ツェナーダイオード素子は封入しなくても良いし、ツェナーダイオード素子以外の電子部品をスイッチング素子と共に封入しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】ランプ側方より見た図であり、内部の様子が分かるように一部を切り欠いている。
【図2】樹脂ホルダを示す図であり、(a)は平面図、(b)正面図、(c)は側面図である。
【図3】点灯ユニットの斜視図であり、(a)は基板を口金側から見た図であり、(b)は、基板を発光管側から見た図である。
【図4】モールド素子の概念図である。
【図5】点灯ユニットを含むランプの回路構成を説明する。
【図6】寿命末期時のFET素子に流れる電流の波形である。
【図7】各種仕様のスイッチング素子におけるランプ投入電力/定格消費電力と自己温度上昇との関係を示す図である。
【図8】モールド素子の変形例における概念図である。
【符号の説明】
【0067】
1 電球形蛍光ランプ
2 発光管
13 電極
18 放電路
30 樹脂ケース
50 点灯ユニット
56 モールド素子
57 樹脂体
59,60 スイッチング素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1本の放電路を構成するためのガラス管の両端に電極が封着されてなる発光管と、前記ガラス管の両端部を内部に受け入れて前記発光管を保持する樹脂ケースと、前記樹脂ケース内に収納され且つスイッチング素子により高周波電圧を生成するインバータ方式の点灯ユニットとを備える電球形蛍光ランプであって、
前記発光管のインピーダンスが1kΩ以上であり、
前記スイッチング素子は、自己発熱で発生した熱を蓄熱する構造を有すると共に、ランプ投入電力が定格消費電力の1.2倍以上の任意の電力になったときに、前記蓄積された熱のみで破壊する特性を有する
ことを特徴とする電球形蛍光ランプ。
【請求項2】
前記任意の電力は、定格消費電力の2.1倍以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の電球形蛍光ランプ。
【請求項3】
前記発光管のガラス管の外径が8mm以下である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電球形蛍光ランプ。
【請求項4】
前記スイッチング素子は、当該スイッチング素子への過電流を防止するツェナーダイオード素子と共に樹脂材料により封入されている
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電球形蛍光ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−273177(P2007−273177A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−95571(P2006−95571)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】