説明

電界発光素子

【課題】 高輝度な光出力を有し、高耐久性の発光素子を提供する。
【解決手段】 陽極と陰極との間に挟持される有機化合物からなる層の構成材料として、少なくとも下記一般式[1]で表される化合物を用いる。
【化1】


[式中、R乃至R10は、水素原子、ハロゲン原子、置換アミノ基、アルキル基、アリール基、複素環基から、それぞれ独立に選ばれる。
また、Xは炭素原子数2から6のアルキレン基[該アルキレン基中の1つもしくは隣接しない2つのメチレン基は−O−、−CO−、−CO−O−、−S−、−NRa−で置き換えられていてもよく、該アルキレン基中の水素原子は炭素原子数1から10の直鎖状または分岐状または環状のアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有しても良い複素環基またはフッ素原子に置換されていてもよい。]を示す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化合物を用いた発光素子に関するものであり、さらに詳しくは、特定の分子構造を有する化合物を含有する層を有する有機発光素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子における最近の進歩は著しく、その特徴は低印加電圧で高輝度、発光波長の多様性、高速応答性、薄型、軽量の発光デバイス化が可能であることから、広汎な用途への可能性を示唆している。
【0003】
しかしながら、現状では更なる高輝度の光出力あるいは高変換効率が必要である。また、長時間の使用による経時変化や酸素を含む雰囲気気体や湿気などによる劣化等の耐久性の面で未だ多くの問題がある。さらにはフルカラーディスプレイ等への応用を考えた場合の色純度の良い青、緑、赤の発光が必要となるが、これらの問題に関してもまだ十分でない。
【0004】
また、発光層などに用いる蛍光性有機化合物として、芳香族化合物や縮合環芳香族化合物が数多く研究されているが、発光輝度や耐久性が十分に満足できるものは得られているとは言いがたい。
【0005】
特許文献1乃至4には、発光効率や輝度の向上、または長寿命化(耐久性の向上)を目的としてベンゾフルオランテン骨格を含む化合物の有機発光素子への応用が開示されている。特許文献1には、ベンゾフルオランテン化合物の有機発光への応用が開示されている。特許文献2には、ベンゾ[k]フルオランテン化合物の有機発光素子への応用の開示が見られる。また、特許文献3には、ベンゾ[k]フルオランテン環上の、3,4位に、芳香族環が縮合した化合物の有機発光素子への応用が開示されている。また、特許文献4には、ベンゾ[k]フルオランテン環上の、3,4位が2つの窒素原子で、架橋された化合物の有機発光素子への応用が開示されている。
また、有機発光素子をディスプレイ等の表示装置に応用するためには、高輝度な光出力を有すると同時に高耐久性を十分に確保する必要がある。
【特許文献1】特開2002−069044公報
【特許文献2】特開平10−189247号公報
【特許文献3】特開平11−176573号公報
【特許文献4】特開2005−235633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高輝度な光出力を有する発光素子を提供することを目的とする。また、高耐久性の発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、陽極及び陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に挟持された有機化合物からなる層を少なくとも一層有する有機発光素子において、下記一般式[1]で示される化合物を含んでなる層を少なくとも一種含有することを特徴とする有機発光素子を提供するものである。
【0008】
【化1】

【0009】
[式中、R乃至R10は、水素原子、ハロゲン原子、置換アミノ基、炭素原子数1から20の直鎖状または分岐状または環状のアルキル基(該アルキル基中の1つもしくは隣接しない2つ以上のメチレン基は−O−、−C=C−で置き換えられていてもよく、該アルキル基中の水素原子はフッ素原子に置換されていてもよい。)、
置換基を有しても良いアリール基(該置換基はハロゲン原子、置換アミノ基、炭素原子数1から20の直鎖状または分岐状または環状のアルキル基(該アルキル基中の1つもしくは隣接しない2つ以上のメチレン基は−O−で置き換えられていてもよく、該アルキル基中の水素原子はフッ素原子に置換されていてもよい。)を示す。)、
置換基を有しても良い複素環基(該置換基はハロゲン原子、置換アミノ基、炭素原子数1から20の直鎖状または分岐状または環状のアルキル基(該アルキル基中の1つもしくは隣接しない2つ以上のメチレン基は−O−で置き換えられていてもよく、該アルキル基中の水素原子はフッ素原子に置換されていてもよい。)を示す。)から、それぞれ独立に選ばれる。
また、Xは炭素原子数2から6のアルキレン基[該アルキレン基中の1つもしくは隣接しない2つのメチレン基は−O−、−CO−、−CO−O−、−S−、−NRa−(Raは、水素原子または、炭素原子数1から10の直鎖状または分岐状または環状のアルキル基(該アルキル基中の水素原子はフッ素原子に置換されていてもよい。)に置換されていてもよい。)で置き換えられていてもよく、該アルキレン基中の水素原子は炭素原子数1から10の直鎖状または分岐状または環状のアルキル基(該アルキル基中の水素原子はフッ素原子に置換されていてもよい。)、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有しても良い複素環基、または、フッ素原子に置換されていてもよい。]を示す。]
【0010】
また、本発明は上記一般式[1]で示される化合物を含んでなる層が発光層である有機発光素子、前記発光層がホスト材料とゲスト材料の少なくとも2種の化合物から構成される有機発光素子、及び、上記一般式[1]で表される化合物が前記発光層のゲスト材料である有機発光素子をも提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高輝度な発光が得られるだけでなく、長い期間高輝度を保つ、優れた発光素子を得ることができる。また、本発明によれば、表示素子としても優れた発光素子を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について説明する。
【0013】
本発明は、陽極及び陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に挟持された有機化合物からなる層を少なくとも一層有する有機発光素子において、下記一般式[1]で示される化合物を含んでなる層を少なくとも一種含有することを特徴とする有機発光素子である。
初めに、一般式[1]で示される化合物について説明する。
【0014】
【化2】

【0015】
一般式[1]における、R乃至R10の具体例を以下に示す。但し、これらは代表例を例示しただけで、本発明は、これに限定されるものではない。好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、置換アミノ基、直鎖状または分岐状または環状のアルキル基、水素原子がフッ素原子に置換された直鎖状または分岐状または環状のアルキル基、アルコキシル基、置換基を有しても良いアリール基、置換基を有しても良い複素環基である。
ハロゲン原子として、好ましくは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子であり、真空蒸着法で素子を作成する場合は、フッ素原子が特に好ましい。
【0016】
炭素原子数1から20の直鎖状または分岐状または環状のアルキル基(該アルキル基中の1つもしくは隣接しない2つ以上のメチレン基は−O−で置き換えられていてもよく、該アルキル基中の水素原子はフッ素原子に置換されていてもよい。)としては、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、ターシャリーブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、エトキシ基などが挙げられる。
【0017】
導電性や、ガラス転移温度の観点から、メチル基、ターシャリーブチル基、トリフルオロメチル基が好ましく、より好ましくは、メチル基、ターシャリーブチル基、トリフルオロメチル基、であり、さらに好ましくは、メチル基、ターシャリーブチル基である。
【0018】
置換基を有しても良いアリール基及び、複素環基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、フルオランテニル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基、テトラセニル基、ペンタセニル基、トリフェニレニル基、ペリレニル基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、ピリダジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、フェナントリジニル基、ア クリジニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、フタラジニル基、フェナントロリル基、フェナジニル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、カルバゾリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、インドリル基、シクロアジル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基などが挙げられる。
【0019】
材料の分子量が大きすぎる場合、昇華温度が上昇して真空蒸着時に熱分解する確率が大きくなると考えられる。昇華性の観点から、好ましくはフェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、ピリジル基であり、より好ましくは、フェニル基、ビリジル基である。
【0020】
アリール基、複素環基が有してもよい置換基としては特に限定は無いが、好ましくは、ハロゲン原子、直鎖状または分岐状または環状のアルキル基、水素原子がフッ素原子に置換された直鎖状または分岐状または環状のアルキル基、アルコキシル基、置換アミノ基である。
【0021】
これら置換基に特に限定は無いが、ガラス転移温度と、昇華性の観点から、好ましくは、フッ素原子、トリフルオロメチル基、メチル基、エチル基、ターシャリーブチル基、メトキシ基、ジフェニルアミノ基、ジターシャリーブチルアミノ基であり、より好ましくは、フッ素原子、トリフルオロメチル基、メチル基、ターシャリーブチル基であり、更に好ましくは、メチル基、ターシャリーブチル基である。
【0022】
Xは炭素原子数2から6のアルキレン基が好ましく、より好ましくは炭素原子数が2もしくは3である。該アルキレン基中の1つもしくは隣接しない2つのメチレン基は−O−、−CO−、−CO−O−、−S−、−NRa−(Raは、水素原子または、炭素原子数1から10の直鎖状または分岐状または環状のアルキル基(該アルキル基中の水素原子はフッ素原子に置換されていてもよい。)で置き換えられていてもよく、該アルキレン基中の水素原子は炭素原子数1から10の直鎖状または分岐状または環状のアルキル基(該アルキル基中の水素原子はフッ素原子に置換されていてもよい。)、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有しても良い複素環基、または、フッ素原子に置換されていてもよい。
【0023】
該アルキレン基の構成ユニットとして、好ましくは、−CRaRa−(Ra、Raは好ましくは水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1から10の直鎖状または分岐状または環状のアルキル基(該アルキル基中の水素原子はフッ素原子に置換されていてもよい。)より好ましくは、水素原子、フッ素原子、メチル基、ターシャリーブチル基、トリフフロロメチル基であり、さらに好ましくは、フッ素原子、水素原子、トリフロロメチル基である。)−O−、−CO−O−、−O−CO−、−NRa−(Raは、水素原子または、炭素原子数1から10の直鎖状または分岐状または環状のアルキル基(該アルキル基中の水素原子はフッ素原子に置換されていてもよい。)が好ましく、より好ましくは、メチル基、ターシャリーブチル基、トリフルオロメチル基、であり、更に好ましくは、メチル基、トリフルオロメチル基である。)、−CO−である。より好ましくは、−CRaRa−、−O−、である。さらに好ましくは、−CRaRa−である。
【0024】
Xが−CRaRa−であることが、特に好ましい理由を以下に述べる。RaとRaに置換基を導入した場合、置換基は一般式[1]のπ共役平面から垂直方向に立体的に張り出した位置に導入される。その結果、分子間のスタックを抑制することができる。分子間スタッキングを抑えることで、次の二つの効果が期待できる。
1.結晶性の低下による、膜性の向上
2.濃度消光(発光素子内のゲスト材料濃度が大きくなると発光効率が低下する現象)の抑制
また、これらについては、Ra、Raに導入する置換基が、立体的に嵩高いほうが効果的であると考えられる。
【0025】
これまでに、一般式[1]が有してもよい置換基について述べてきたが、これら置換基によって作られる具体的構造のうち、炭素原子と水素原子だけから構成された構造が特に好ましい。炭化水素から構成された分子は、孤立電子対を持つヘテロ原子が含まれた化合物に比べイオン性の不純物などの取り込みが、より低減されると考えられ、発光素子の寿命の向上が期待できるためである。なぜなら、イオン性の不純物の混入は電界発光素子の通電劣化の原因の一つと考えられているからである。
【0026】
また、高分子化合物を素子に用いた場合は、高分子中の不純物の除去が難しいため、素子に不純物が混入しやすく、素子の短寿命化を引き起こす。しかしながら、本発明の一般式[1]で示される化合物は、単一化合物であるため、再結晶法、カラムクロマトグラフィー法、昇華精製法等の精製法を適宜用いる事により、不純物の除去が容易であり、有機発光素子の高耐久化を期待する事が出来る。
【0027】
本発明は、陽極及び陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に挟持された有機化合物からなる層を少なくとも一層有する有機発光素子に好適にもちいられる。その際、前記有機化合物からなる層が複数存在する場合、どの層に用いるかは特に限定はされないが、前記有機化合物からなる層が発光層である場合が好ましい。
【0028】
本発明の化合物を発光層中のゲスト材料として用いる場合、その含有量は、好ましくは0.1%以上50%以下、より好ましくは0.1%以上20%以下である。
【0029】
また、本発明の化合物を発光層中のホスト材料のとして用いる場合、その含有量は、好ましくは50%以上99.9%以下、より好ましくは80%以上99.9%以下である。
【0030】
また、本発明の一般式[1]で示される化合物を発光層中のホスト材料のとして用いる場合、ゲスト材料は、特に限定されないが、蛍光発光材料であることが好ましい。
【0031】
一般式[1]で示される化合物を含有する有機層は、真空蒸着法、キャスト法、塗布法、スピンコート法、インクジェット法などにより製膜することができる。
【0032】
以下、本発明に用いられる発光素子材料の具体的な構造式を示す。但し、これらは、代表例を例示しただけで、本発明は、これに限定されるものではない。
【0033】
【化3】

【0034】
【化4】

【0035】
【化5】

【0036】
【化6】

【0037】
【化7】

【0038】
【化8】

【0039】
【化9】

【0040】
尚、具体例中、置換基の回転障害により異性体が存在する場合、それらの異性体のうち一種でも、また異性体の混合物でもそれぞれ好適に使用することができる。
【0041】
これら化合物は、例えば以下のようなルートによって合成する事が出来る。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0042】
【化10】

【0043】
次に、本発明の発光素子について説明する。
本発明の発光素子は、一対の電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機層を有する。本発明の発光素子の好ましい例を図1〜図6に示す。
【0044】
図1は本発明の有機発光素子の一例を示す断面図である。図1は基板1上に陽極2、発光層3及び陰極4を順次設けた構成のものである。ここで使用する発光素子はそれ自体でホール輸送能、エレクトロン輸送能及び発光性の性能を単一で有している化合物を使う場合や、それぞれの特性を有する化合物を混ぜて使う場合に有用である。
【0045】
図2は本発明の有機発光素子における他の例を示す断面図である。図2は基板1上に陽極2、ホール輸送層5、電子輸送層6及び陰極4を順次設けた構成のものである。この場合、発光物質はホール輸送性かあるいは電子輸送性のいずれかあるいは両方の機能を有している材料をそれぞれの層に用い、発光性の無い単なるホール輸送物質あるいは電子輸送物質と組み合わせて用いる場合に有用である。また、この場合発光層3はホール輸送層5あるいは電子輸送層6のいずれかから成る。
【0046】
図3は本発明の有機発光素子における他の例を示す断面図である。図3は基板1上に陽極2、ホール輸送層5、発光層3、電子輸送層6及び陰極4を順次設けた構成のものである。これはキャリア輸送と発光の機能を分離したものであり、ホール輸送性、電子輸送性、発光性の各特性を有した化合物と適時組み合わせて用いられ極めて材料選択の自由度が増すとともに、発光波長を異にする種々の化合物が使用できるため、発光色相の多様化が可能になる。
【0047】
さらに、中央の発光層に各キャリアあるいは励起子を有効に閉じこめて発光効率の向上を図ることも可能になる。
【0048】
図4は本発明の有機発光素子における他の例を示す断面図である。図4は図3に対してホール注入層7を陽極側に挿入した構成であり、陽極とホール輸送層の密着性改善あるいはホールの注入性改善に効果があり、低電圧化に効果的である。
【0049】
図5および図6は本発明の有機発光素子における他の例を示す断面図である。図5および図6は、図3および図4に対してホールあるいは励起子(エキシトン)を陰極側に抜けることを阻害する層(ホールブロッキング層8)を、発光層、電子輸送層間に挿入した構成である。イオン化ポテンシャルの非常に高い化合物をホールブロッキング層8として用いる事により、発光効率の向上に効果的な構成である。
【0050】
但し、図1〜図6はあくまでごく基本的な素子構成であり、本発明の化合物を用いた有機発光素子の構成はこれらに限定されるものではない。例えば、電極と有機層界面に絶縁性層を設ける、接着層あるいは干渉層を設ける。また、ホール輸送層がイオン化ポテンシャルの異なる多層から構成される。その他、電子輸送層が有機材料層と、有機材料にアルカリ金属イオンやアルカリ金属塩などを共蒸着した層との多層から構成される。など多様な層構成をとることができる。
【0051】
本発明に用いられる一般式[1]で示される化合物は、図1〜図6のいずれの形態でも使用することができる。
【実施例】
【0052】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0053】
<合成例1>
<例示化合物c−7の合成>
【0054】
【化11】

【0055】
20mLの反応容器に、Jaurnal of American Chemical Society,91,918(1969).に従って合成されたXX−1(0.5g,2.4mmol)、XX−2(0.5g,2.4mmol)、トルエン:エタノール=10:1(w/w)混合溶媒(8mL)を加えた。この溶液を攪拌しながら、6N−水酸化カリウム水溶液(1mL)をゆっくり滴下した。この溶液を75℃に加熱し同温で10分間攪拌した。室温まで冷却し、析出した結晶を濾過し、結晶を、水、メタノールで洗浄し、XX−3を(0.8g,収率=86%)を得た。
【0056】
次に、50mlの反応容器にXX−3(0.8g,2.1mmol)ジクロロエタン(16mL)XX−4(0.4g,2.3mmol)プロピレンオキサイド(0.5g,8.3mmol)を加え、70℃で1時間攪拌した。
【0057】
反応液を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(移動相;クロロホルム:ヘキサン=1:2)で分離精製し、クロロホルム−エタノールから再結晶し、黄色粉末のc−7(0.7g,1.56mmol,収率=75%)を得た。
【0058】
核磁気共鳴装置(Bruker AVANCE 500 NMR Spectrometer)とMALDI−TOF−MS 質量分析計(Bruker AUTOFLEX)により構造を確認した。
MS(MALDI):430.2
H NMR(CDCl,500MHz)σ(ppm):7.70−7.59(m,12H),7.39(m,2H),7.15(d,2H,J=7.0Hz),6.65(d,2H,J=7.0Hz),3.43(s,4H).
この化合物の発光スペクトルは、λmax=452nmであり、ディスプレイに用いる青色発光材料に適した発光スペクトルである。
【0059】
<合成例2>
<例示化合物c−37の合成>
【0060】
【化12】

【0061】
300mLの反応容器に、c−7(3.0g,6.97mmol)とクロロベンゼン(150ml)を加えた。これにベンゼンボロン酸無水物(70%)(7.15g,13.9mmol)を加え、130℃に加熱し同温で24時間攪拌した。
【0062】
反応液を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(移動相;クロロホルム:ヘキサン=1:1)で分離精製し、黄色粉末のXX−4(3.0g,6.54mmol,収率=93%)を得た。
【0063】
50mLの耐圧試験管に、XX−4(1.0g,2.18mmol)と無水ジオキサン(15ml)を加えた。これにジエチルアミノ硫酸トリフルオライド(DAST)(90%)(2.34g,13.1mmol)を加え、100℃に加熱し同温で14時間攪拌した。室温まで冷却後、さらにジエチルアミノ硫酸トリフルオライド(DAST)(90%)(2.34g,13.1mmol)を加え、100℃に加熱し同温で5時間攪拌した。
【0064】
室温まで、冷却後飽和重曹水(80ml)にあけ、析出した結晶をろ別した。この結晶を、シリカゲルクロマトグラフィー(移動相;クロロホルム:ヘキサン=1:1)で分離精製し、黄色粉末のc−37(731mg,1.45mmol,収率=66%)を得た。
【0065】
核磁気共鳴装置(Bruker AVANCE 500 NMR Spectrometer)とMALDI−TOF−MS 質量分析計(Bruker AUTOFLEX)により構造を確認した。
MS(MALDI):502.1
H NMR(CDCl,500MHz) σ(ppm):7.72−7.66(m,8H),7.60−7.56(m,6H),7.47(m,2H),6.76(d,2H,J=7.2Hz).
この化合物の発光スペクトルは、λmax=444nmであり、ディスプレイに用いる青色発光材料に適した発光スペクトルである。
【0066】
<実施例1>
図−3に示す有機層が3層の素子を製造した。
【0067】
ガラス基板[透明基板(1)]上に100nmのITO[透明電極(2)]をパターニングした。そのITO基板上に、以下の有機層と電極層を10−5Paの真空チャンバー内で抵抗加熱による真空蒸着にて連続製膜し、対向する電極面積が3mmになるようにした。
ホール輸送層(5)(40nm):α−NPD
発光層(3)(30nm):HOST−1:例示化合物c−7(重量比5%)
電子輸送層(6)(30nm):Bphen(同仁化学研究所製)
金属電極(4−1)(1nm):KF
金属電極(4−2)(130nm):Al
【0068】
【化13】

【0069】
【化14】

【0070】
【化15】

【0071】
有機発光素子の特性は、電流電圧特性をヒューレッドパッカード社製・微小電流計4140Bで測定し、発光輝度は、トプコン社製BM7で測定した。本例の素子は、電圧5V印加時に、600cd/mの青色発光を確認した。
【0072】
また、本実施例の素子に窒素雰囲気下、50時間電圧を印加したところ、良好な発光の継続が確認された。c−7をゲスト材料に用いた発光素子は、青色発光素子として有用である事が確認された。
【0073】
<実施例2>
実施例1の例示化合物c−7の代わりに例示化合物c−37を用いる以外は実施例1と同様の方法により素子を作成した。本例の素子は、電圧6V印加時に、400cd/mの青色発光を確認した。
【0074】
また、本実施例の素子に窒素雰囲気下、50時間電圧を印加したところ、良好な発光の継続が確認された。c−37をゲスト材料に用いた発光素子は、青色発光素子として有用である事が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明における有機発光素子の一例を示す断面図である。
【図2】本発明における有機発光素子の他の例を示す断面図である。
【図3】本発明における有機発光素子の他の例を示す断面図である。
【図4】本発明における有機発光素子の他の例を示す断面図である。
【図5】本発明における有機発光素子の他の例を示す断面図である。
【図6】本発明における有機発光素子の他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0076】
1 基板
2 陽極
3 発光層
4 陰極
5 ホール輸送層
6 電子輸送層
7 ホール注入層
8 ホール/エキシトンブロッキング層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極及び陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に挟持された有機化合物からなる層を少なくとも一層有する有機発光素子において、下記一般式[1]で示される化合物を含んでなる層を少なくとも一種含有することを特徴とする有機発光素子。
【化1】

[ 式中、R乃至R10は、水素原子、ハロゲン原子、置換アミノ基、炭素原子数1から20の直鎖状または分岐状または環状のアルキル基(該アルキル基中の1つもしくは隣接しない2つ以上のメチレン基は−O−、−C=C−で置き換えられていてもよく、該アルキル基中の水素原子はフッ素原子に置換されていてもよい。)、
置換基を有しても良いアリール基(該置換基はハロゲン原子、置換アミノ基、炭素原子数1から20の直鎖状または分岐状または環状のアルキル基(該アルキル基中の1つもしくは隣接しない2つ以上のメチレン基は−O−で置き換えられていてもよく、該アルキル基中の水素原子はフッ素原子に置換されていてもよい。)を示す。)、
置換基を有しても良い複素環基(該置換基はハロゲン原子、置換アミノ基、炭素原子数1から20の直鎖状または分岐状または環状のアルキル基(該アルキル基中の1つもしくは隣接しない2つ以上のメチレン基は−O−で置き換えられていてもよく、該アルキル基中の水素原子はフッ素原子に置換されていてもよい。)を示す。)から、それぞれ独立に選ばれる。
また、Xは炭素原子数2から6のアルキレン基[該アルキレン基中の1つもしくは隣接しない2つのメチレン基は−O−、−CO−、−CO−O−、−S−、−NRa−(Raは、水素原子または、炭素原子数1から10の直鎖状または分岐状または環状のアルキル基(該アルキル基中の水素原子はフッ素原子に置換されていてもよい。)に置換されていてもよい。)で置き換えられていてもよく、該アルキレン基中の水素原子は炭素原子数1から10の直鎖状または分岐状または環状のアルキル基(該アルキル基中の水素原子はフッ素原子に置換されていてもよい。)、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有しても良い複素環基、または、フッ素原子に置換されていてもよい。]を示す。]
【請求項2】
一般式[1]で示される化合物を含んでなる層が発光層であることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項3】
前記発光層がホスト材料とゲスト材料の少なくとも2種の化合物から構成されることを特徴とする請求項2に記載の有機発光素子。
【請求項4】
請求項1に記載の一般式[1]で表される化合物が前記発光層のゲスト材料であることを特徴とする請求項3に記載の有機発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−227159(P2008−227159A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−63596(P2007−63596)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】