電磁クラッチ、搬送ローラ、及びこれを備えた画像形成装置
【課題】小型で耐久性がある上に、アマチュアとロータとの離間時のロータの回転停止時間の遅れを抑えた電磁クラッチの提供。
【解決手段】駆動軸2と、駆動力伝達手段を備え駆動軸に回転自在に嵌合された回転体3と、回転体3の側面に回転体と一体に回転するように係合された平板状のアマチュア4と、駆動軸2に固定され、アマチュア4の側面と離接可能に対向して配置されたロータ5と、ロータ5とアマチュア4との間に起磁力を与えるコイル8とを備えた電磁クラッチ1であって、前記回転体3には、アマチュア4を係合するアマチュア係合部を設け、前記アマチュア4には、前記アマチュア係合部と係合する回転体係合部を設けたことを特徴とする電磁クラッチ1である。
の提供。
【解決手段】駆動軸2と、駆動力伝達手段を備え駆動軸に回転自在に嵌合された回転体3と、回転体3の側面に回転体と一体に回転するように係合された平板状のアマチュア4と、駆動軸2に固定され、アマチュア4の側面と離接可能に対向して配置されたロータ5と、ロータ5とアマチュア4との間に起磁力を与えるコイル8とを備えた電磁クラッチ1であって、前記回転体3には、アマチュア4を係合するアマチュア係合部を設け、前記アマチュア4には、前記アマチュア係合部と係合する回転体係合部を設けたことを特徴とする電磁クラッチ1である。
の提供。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁クラッチ、搬送ローラ、及びこれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、給紙装置を備えた複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置においては、給紙や排紙等の搬送手段により搬送されている記録紙に、画像を直接又は転写等により間接的に形成している。搬送手段は、ゴムローラの摩擦力を利用した搬送ローラを使用している場合が多い。ゴムローラは、電磁クラッチを備えた駆動装置により回転、停止が制御されている。
【0003】
画像形成装置用の電磁クラッチとしては、例えばこのような画像形成装置に適用される小型の電磁クラッチとして、例えば図11に示す構造のスプリング式電磁クラッチがよく知られている。この電磁クラッチは、図11に従って説明すると、駆動軸2を備え、この駆動軸2の端部には図示しない負荷(上記の画像形成装置の場合はレジストローラの軸など)が連結されている。この駆動軸2の外側には、回転体3が回転自在に嵌合されるとともに、ロータ5が駆動軸2と一体回転するように嵌合されている。そして、回転体3には歯車部が設けられ、図外のモータによって駆動される仕組みになっている。さらに、ロータ5とともにコイル8を支持するヨーク6が駆動軸2に回転自在に嵌合されている。ヨーク6は駆動軸2およびロータ5が回転しても滑りを起こして静止状態を維持することができる。
【0004】
上記のロータ5は、外側円筒部、内側円筒部、および両円筒部を連結する連結部を有している。ロータ5の連結部と回転体3との間の略対向する位置には、中空円板状のアマチュア4が配置されており、このアマチュア4には中空皿状のリターンスプリング49の一端が固定され、リターンスプリング49の他端は回転体3に固定されている。したがって、アマチュア4は、回転体3に固定されていることになり、リターンスプリング49および回転体3と一体回転する。しかし、リターンスプリング49の作用によって軸方向に微動できるようになっている。
【0005】
ロータ5の連結部には、その周方向に沿う複数箇所に遮磁穴が形成されている。これらの遮磁穴は後述のアマチュア4への磁路が容易に形成されるように、磁気抵抗を確保するためのものである。
【0006】
ヨーク6は、大径筒部、小径筒部、および両筒部を連結する底板部によって構成されており、各部で囲まれた内部には、ロータ5の連結部とアマチュア4とが対向する磁極部に対して起磁力を与えるためのコイル8が巻かれたボビン7が収納されている。
【0007】
駆動軸2の左右端にはストッパ9,10が配置され、回転体3,ロータ5,ヨーク6などが駆動軸上を軸方向に移動しないようにしている。また、81は、コイル8に接続されたリード線である。また、駆動軸2は図示していない軸受けにより支持され、ヨーク6も図示していないこの電磁クラッチのケーシングやフレームに支持されている。
【0008】
上記構成において、リード線81を介してコイル7に通電されて励磁されると、ロータ5の連結部とアマチュア4との対向部分により形成された磁極部に吸引力が発生して両者が結合し、その結果、図外のモータにより駆動される回転体3からリターンスプリング49、アマチュア4を介してロータ5にトルクが伝わり、さらにロータ5に一体結合されている駆動軸2が回転して図外の負荷が駆動される。なお、ヨーク6、コイル8、ボビン7は、ロータ5および駆動軸2が回転しても滑りを起こして静止状態を維持したままである。
【0009】
このコイル8に通電した時の磁路は、コイル8の回りに形成され、ヨーク6の大径筒部→ロータ5の外側円筒部→ロータ5の連結部→アマチュア4→ロータ5の連結部→ロータ5の内側円筒部→駆動軸2の外周部→ヨーク6の小径筒部→ヨーク5の底板部→ヨーク5の大径筒部のようになる。そして、ロータ5とアマチュア4との間に電磁結合が形成され、ロータ5とアマチュア4とは、リターンスプリング49のばね力に反して密着する。
【0010】
コイル8の通電を遮断して消磁すると,アマチュア4とロータ5との電磁結合が解除されて、アマチュア5がリターンスプリング49のばね力によって回転体3側に復帰し、アマチュア4とロータ5とが離間し、アマチュア4からロータ5へのトルク伝達が遮断される。
【0011】
特許文献1には、ロータ5とアマチュア4との間に電磁結合力のばらつきをなくし、ロータ5とアマチュア4との安定した結合、離間をさせることのできる電磁クラッチが開示されている。この電磁クラッチは、コイルの回りをシェルで覆い、コイルをロータと駆動軸に固定したハブロータとで挟むようにして、ロータ→ハブロータ→シェル→ロータと周回する磁路を形成している。そして、ハブロータ→シェルの磁路を、駆動軸のスラスト方向にし、間隙を小さくすることにより磁力の安定が図れるとしている。
【0012】
特許文献2には、スプリングを使用しない電磁クラッチが開示されている。図12,13にこの電磁クラッチの断面図及び分解斜視図を示す。この電磁クラッチにつき、図11における部品と同じ機能の部品は同じ符号を付けて説明する。駆動軸2、ロータ5、ヨーク6、ボビン7、コイル8については、図10に示した電磁クラッチとほぼ同じであるので詳しい説明を省く。この電磁クラッチは、アマチュア4にスプリングを備えていない。そして、円盤状のアマチュア4はその周縁部に複数の突起45を備えている。この突起45は、円盤状の面に対し直角に付き出した2本の足を持っている。一方、回転体3のアマチュア4と対向する面には、突起45の足を収納し、アマチュア4が回転体3と一体になって回転するための係止部を設けている。
【0013】
アマチュア4は、回転体3とロータ5とで形成された空間中配置されており、駆動軸の方向には微動可能である。このため、コイル8に電流が流れると、磁力が働きアマチュア4はロータ5側に引き寄せられロータ5と密着する。アマチュア4とロータ5とが密着すると回転体3の駆動力は、アマチュア4を介してロータ5に伝わりロータ5も回転する。ロータ5は駆動軸に固定されているので、最終的には回転体3の回転が駆動軸2に伝達される。コイル8の電流が遮断されると、アマチュア4とロータ5との密着力がなくなり、ロータ5すなわち駆動軸2は駆動されなくなる。ここで、アマチュア4とロータ5との離間を確実なものとするため、アマチュア4やロータ5を平面ではなく波形にしたり、皿形にしたりしてバネ力を持たせる工夫なども開示されている。
【0014】
このような電磁クラッチは、バネを必要とせず、部品点数が少なくなり、小型化できるメリットがある。また、疲労部品であるバネを使用しないことにより電磁クラッチの寿命や信頼性にも良い影響がある。
【特許文献1】特開2006−258229号公報
【特許文献2】特開2006−170231号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特許文献2に記載の電磁クラッチは、従来のスプリング式の電磁クラッチに比べ優れているが、アマチュア4とロータ5との結合の際に、アマチュア4の突起45と回転体3の係止部35との間に衝撃を受けやすい。この為、アマチュア4に亀裂が生じたり、回転体3の係止部35の、アマチュア4の突起45の足と接触する部分に破損や摩耗が生じたりする恐れがある。例えば、アマチュア4とロータ5とが結合してアマチュア4に付加が係った瞬間、突起45の足が回転体3の係止部35の、回転体3の回転方向後側の側壁34に当たり側壁34を破損や摩耗させる。この動作が長期間繰り返されると、側壁34が大きく破損して破損部35aが形成される。そうすると、最初図14(a)に示すような回転体3の係止部35とアマチュア4の突起45の係合状態であったものが、図14(b)に示すように、係止部35が広がってしまい突起45の足が破損部35a上に乗り上げてしまう。このような状態になったままコイルの電源を遮断して、アマチュア4とロータ5との密着状態を解除しようとすると、突起45の足が係止部35の奥側に移動しにくいため、アマチュア4とロータ5とが密着したままで離間が不十分となる。アマチュア4とロータ5との離間が不十分であると、アマチュア4とロータ5との間の摩擦力が残り、ロータ5がアマチュア4に連れ回りすることがある。このようにしてロータ5の停止時間に遅れが出てくる。
【0016】
この遅れ時間の変化を耐久テストで確かめたところ、図15に示すような結果が出た。図15は、4個の同種の上述の電磁クラッチにつき回転停止を200万回繰り返した際に、ロータ5すなわちローラの停止遅れ時間をプロットしたグラフである。図15から判るように、4つの電磁クラッチとも当初の停止遅れ時間は、7ms程度であったものが100万回操作時には11〜14ms、200万回操作時には12〜15msとなった。
【0017】
このような電磁クラッチの停止遅れは、画像形成装置の記録紙の搬送位置を決める際に問題となり、正確な印刷には重要な問題である。特に、高速印刷になるほど位置ずれは大きくなりやすく、一方で係止部35の破損摩耗も起こりやすくなる。
【0018】
本発明の目的は、上記問題点を踏まえ、小型で耐久性がある上に、アマチュアとロータとの離間時のロータの回転停止時間の遅れを抑えた電磁クラッチ、並びにこれを備えた搬送ローラ及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するため本発明者等は、以下の発明を完成した。
本発明は、駆動軸と、駆動力伝達手段を備え駆動軸に回転自在に嵌合された回転体と、回転体の側面に回転体と一体に回転するように係合された平板状のアマチュアと、駆動軸に固定され、アマチュアの側面と離接可能に対向して配置されたロータと、ロータとアマチュアとの間に起磁力を与えるコイルとを備えた電磁クラッチであって、前記回転体には、アマチュアを係合するアマチュア係合部を設け、前記アマチュアには、前記アマチュア係合部と係合する回転体係合部を設けたことを特徴とする電磁クラッチである。
【0020】
好ましい本発明は、前記アマチュア係合部における回転体の回転時にアマチュアと接して駆動力を伝達する側面と、該側面に接する前記回転体係合部における側面とが面接触していることを特徴とする前記電磁クラッチである。
【0021】
好ましい本発明は、前記アマチュア係合部における回転体の回転時にアマチュアと接して駆動力を伝達する側面は、ロータ側から離れるほど回転体の回転方向後方に傾斜していることを特徴とする前記電磁クラッチである。
【0022】
好ましい本発明は、前記アマチュア係合部における回転体の回転時にアマチュアと接して駆動力を伝達する側面のロータ側と反対側に溝が形成されていることを特徴とする前記電磁クラッチである。
【0023】
好ましい本発明は、前記ロータ及びアマチュアが軟磁性材料を含む部材により形成されていることを特徴とする前記電磁クラッチである。
【0024】
好ましい本発明は、前記ロータ及びアマチュアは、コイルにより磁化されていないときは互いに反発するよう磁化されている部分を備えていることを特徴とする前記電磁クラッチである。
【0025】
好ましい本発明は、前記回転体及びアマチュアの少なくとも一方は、アマチュアがコイルにより磁化されていないときは、互いに吸引するよう磁化されている部分を備えていることを特徴とする前記電磁クラッチである。
【0026】
本発明は、前記電磁クラッチの駆動軸に、ローラを配置したことを特徴とする搬送ローラである。
【0027】
本発明は、前記搬送ローラを備えた画像形成装置である。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、小型で耐久性がある上に、アマチュアとロータとの離間時のロータの回転停止時間の遅れを抑えた電磁クラッチ、並びにこれを備えた搬送ローラ及び画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明を実施するための最良の形態を必要に応じて図面を参照にして説明する。なお、いわゆる当業者は特許請求の範囲内における本発明を変更・修正をして他の実施形態をなすことは容易であり、これらの変更・修正はこの特許請求の範囲に含まれるものであり、以下の説明はこの発明の好ましい形態における例であって、この特許請求の範囲を限定するものではない。
【0030】
(実施形態1)
本発明に係る実施形態1の電磁クラッチを断面図1及び分解斜視図2に示す。この電磁クラッチ1は、主要構成部品として駆動軸2、回転体3、アマチュア4、ロータ5、ヨーク6、ボビン7、及びコイル8を備えており、その他に、ストッパ9,10、摺動部材11,12なども備えている。なお、この電磁クラッチ1は、従来のスプリング式電磁クラッチのようなリターンスプリングは備えていない。
【0031】
図1、図2を参照にして、この電磁クラッチの構成を簡単に説明すると、駆動軸2にギアを備えた回転体3が回転自在に勘合されており、回転体3の側面にはアマチュア4が係合部を介して回転体3と一体回転するように嵌め込まれている。なお、アマチュア4は、回転方向へはアマチュア係合部(この実施形態では係止部35)及び回転体係合部(この実施形態では突起41)の係合により自由回転できないが、駆動軸2の軸方向には移動可能である。そして、アマチュア4の回転体3と反対側には、この反対側の面を臨むようにロータ5が配置され、ロータ5は駆動軸2に固定されている。ロータ5の回転体3と反対側にはコイル8を巻き付けたボビン7を支持するヨーク6が配置されている。ヨーク6は駆動軸2に回転自在に勘合されている。回転体3とヨーク6は、駆動軸2の両側に配置したストッパ9,10により駆動軸2の軸方向への移動を制限されている。
【0032】
図1,2を参照にしながら各部品の説明をする。駆動軸2は、通常、中空筒状で、図示しない軸受けに支持され、この電磁クラッチを画像形成装置に使用する場合は搬送ローラの軸等の負荷が結合されている。また、この駆動軸2の軸方向の中間位置には径方向外方に張り出したフランジ13が形成されており、このフランジ13は後述するロータ5を駆動軸2に固定するとともに、回転体3が駆動軸2の軸方向に移動しないようなストッパの役目も担っている。
【0033】
回転体3は、合成樹脂成形品や金属製の歯車部31を備え、駆動軸2の外側に回転自在に嵌合され、図外のモータ及びギアにより駆動力を与えられる。歯車部31の側面には、冠状のキャップ部36を備え、キャップ部36の内側底面32の外周よりには後述するアマチュア4の突起41を係止する係止部35が形成されている。この係止部35は、アマチュア4の突起41の数に合わせており、この実施形態の例では6個形成されている。
【0034】
アマチュア4は、回転体3とロータ5で囲まれた空間内において、この空間内で駆動軸2の軸方向に沿って摺動可能に配置されている。アマチュア4は、平板状でリング状をしており、アマチュア4の外周には、周方向に沿う複数箇所に平面状の突起41が形成されている。そして、この突起41は回転体3に設けた前述の係止部35に係合されている。これにより、アマチュア5は、回転体2の係止部35に係止されて回転体3と一体回転するようになっている。しかし、アマチュア5は、駆動軸2の軸方向への移動に対しては係止部35により係止されておらず、駆動軸2の軸方向に沿って摺動し後述するロータ5の側面に密着したり離間したりできる。また、アマチュア4は、リングの周方向に沿って複数箇所(本実施形態では3箇所)に遮磁穴42が形成されており、各遮磁穴42の間はリブで連結されている。
【0035】
ロータ5は、円筒部53と、この円筒部53から径方向内方に縮径されて断面段差状に形成された縮径部と、円筒部53と縮径部とを連結する平面部51とを有する。そして、平面部51には、径方向に二重に形成された遮磁穴52が周方向に沿う複数箇所(本実施形態では3箇所、合計6個の遮磁穴)に設けられており、各遮磁穴52の間はリブで連結されている。ロータ5の遮磁穴52とアマチュア4の遮磁穴42とは、互いに対向して配置したとき、径方向に位置ずれして形成されている。このため、ロータ5とアマチュア4とが対向する部分において、磁極部は4極あることになる。なお、ロータ5とアマチュア4の各遮磁穴の数を変えることで極数を変えた構成とすることも可能である。縮径部は駆動軸2のフランジ13に着座されている。縮径部の内周端には、駆動軸2に形成した突起に係合する係止部を設け両者を係合している。このため、ロータ5と駆動軸2とは一体回転するようになっている。なお、駆動軸2のフランジ13の周方向に沿う複数箇所に凹部を設け、また、ロータ5の内周端にはこの凹部と係合する突起を設けて両者を係合させる構成とすることも可能である。
【0036】
ヨーク6は、従来のスプリング式電磁クラッチと同じように、大径筒部、小径筒部、および両者を連結する底板部によって構成されたキャップ状をしており、キャップの内部にはコイル8が巻かれたボビン7が収納されている。そして、このヨーク6は、駆動軸2に回転自在に勘合されており、支持部材71を介して、図示していない電磁クラッチのケーシングやフレームに支持されている。また、符号81は、コイル8の端子となるリード線を表す。なお、ヨーク6とストッパ10及び駆動軸2との間には摺動部材11,12などが配置されており、駆動軸2及びロータ5が回転しても滑りをよくしてヨーク6の静止状態を容易に維持できる。
【0037】
駆動軸2、アマチュア4、ロータ5、ヨーク6の各磁路形成部には、それぞれ軟磁性体が使用されていることが好ましい。特に、アマチュア4、ロータ5は磁力により密着する必要がありため、高性能の軟磁性体が使用されていることが特に好ましい。また、ロータ5、アマチュア4、ヨーク6等の磁路形成部に軟磁性体を使用する場合は、消磁後に残留磁束が存在しないよう、加工歪を抑えた保磁力の小さい材料を使用することが好ましい。この加工歪みの解消には、従来から知られている水蒸気処理や焼鈍処理をすれば良い。この実施形態の電磁クラッチでは、駆動軸2、アマチュア4、ロータ5、ヨーク6の各磁路形成部材に軟磁性体を使用し、また、必要に応じて焼鈍処理や水蒸気処理等の保磁力低下処理を行って磁路内の残留磁束量を低減して残留吸引力を減らしている。軟磁性体としては、例えば無方向性電磁鋼板(JIS C2552)や電磁軟鉄(JIS C2504)などが適用される。保磁力低下処理により、コイルの電源を遮断して消磁すると、即座にアマチュア4とロータ5との対向部分の磁極部が消磁され吸引力がなくなり、アマチュア4からロータ5へのトルク伝達が停止され、駆動軸2に結合している負荷ローラ等の回転が直ちに停止する。
【0038】
残留磁束が少ないと、コイルの電源を遮断時の吸引力がないので、ロータ5とアマチュア4との離接面の吸引ギャップを極めて小さく設定することができる。すなわち、ロータ5と回転体3との間にアマチュア4が介在された場合の駆動軸2の軸方向隙間であるスラスト隙間を極めて小さく設定できるため、アマチュア4の軸方向の移動量を微小にできる。その結果、アマチュア4が軸方向に移動するときの余分な時間ロスが省かれてトルク伝達開始遅れ時間及びトルク解放遅れ時間が共に短縮化され、クラッチの応答性が高まる。しかも、アマチュア4の軸方向の移動量は微小であるため、励磁時にロータ5とアマチュア4とが吸引されるときに発生する衝撃音や、消磁時にアマチュア4がロータ5から離れるときに発生する衝撃音を共に低減することができる。さらに、従来のようなリターンスプリングを使用していないだけでなく、アマチュア4を一枚の平板としているため、電磁クラッチ全体の軸方向長さを短くすることができ、小型化が可能になる。
【0039】
この電磁クラッチの動作について説明する。図3は、電磁クラッチの動作時の磁路を概念的に表したものである。コイル8に電流を流して磁力を発生させると、磁路はコイルの中心にあるヨーク6の小径筒部から底板部、大径筒部(コイルのシェル部を兼ねている。)へと繋がり、さらにロータ5の周縁部からアマチュア4、ロータ5の内周部を通ってヨーク6の小径筒部へと戻る。このとき、ロータ5とアマチュア4が磁化されて、アマチュア4はロータ5に吸引され、軸方向に沿ってロータ5側に移動し、ロータ5とアマチュア4は密着する。この密着し吸引された状態で、アマチュア4が図外のモータにより駆動される回転体3と一体になって回転していると、ロータ5もアマチュア4との密着部の摩擦力により連れ回りする。ロータ5が回転すれば、これに固定されている駆動軸2が回転する。このようにして、回転体3の駆動力が駆動軸2へと伝達される。さらに、駆動軸2が回転して駆動軸2に連結している図外の搬送ローラ等の負荷が駆動される。なお、ヨーク6、ボビン7、コイル8は、電磁クラッチのケーシングなどに支持されており、ロータ5や駆動軸2が回転しても摺動部材11,12などとの間で滑りを起こして静止状態を維持する。
【0040】
この場合、アマチュア4が軸方向に沿って移動する距離は僅かであり、しかも、従来のようなリターンスプリングを使用していないので、そのばね力に打ち勝ってアマチュア5がロータ3に結合する必要がなく、このため、アマチュア4の移動時間が短縮化され、回転体3から駆動軸2へのトルク伝達開始の応答性が高まる。また、リターンスプリングのばね力のばらつきに起因してトルク伝達開始の応答時間がばらつくといったこともないのでトルク伝達のおくれ時間が安定化する。
【0041】
一方、コイル8の電源が遮断されると、ロータ5とアマチュア4との間に形成されていた磁力がなくなり、ロータ5とアマチュア4との引力がなくなる。アマチュア4は、駆動軸2の軸方向には移動可能な状態になっているので、ロータ5とアマチュア4との間に働いていた引力がなくなれば、ロータ5とアマチュア4との間の回転方向に対する摩擦力がほとんどなくなり、アマチュア4の回転がロータ5には伝わらなくなる。そして、ロータ5とこれに固定されている駆動軸2は回転停止する。
【0042】
この実施形態の電磁クラッチを組み立てるには、駆動軸2の一端側(図1中右側)にロータ5を挿入し、フランジ13にロータ5の縮径部を着座させる。次いで、アマチュア4の突起41を回転体3の係止部35に係合させた状態で、アマチュア4および回転体3をロータ5に被せるようにして駆動軸2に挿入する。引き続いて、駆動軸2の一端側にストッパ9を挿入してフランジ13との間でロータ5、アマチュア4、および回転体3を軸方向に位置規制する。
【0043】
また、駆動軸2の他端側(図1中左側)にボビン7、ヨーク6、摺動部材11,12,及びストッパ10を順次挿入し、このストッパ10とフランジ部13との間でボビン7およびヨーク6を軸方向に位置規制する。
【0044】
駆動軸2の一端側(図1中右側)にストッパ9を挿入する場合に、ストッパ9をフランジ13側に向けて差し込み過ぎると、アマチュア4のリング部が回転体3とロータ5の連結部51とによって強固に挟まれて、軸方向に移動できなくなってクラッチとしての役目を果たさなくなる。このため、アマチュア4のリング部がロータ3の連結部51と回転体3との間で移動できるように、これらの相互間に僅かなスラスト隙間を確保しておく必要がある。また、回転体3が樹脂成形品の場合には温度上昇による膨張が大きいので、この点からもスラスト隙間を確保しておく必要がある。
【0045】
(実施形態2)
実施形態2として、実施形態1の電磁クラッチのアマチュアの形状を変更した電磁クラッチがある。図4(a)は、実施形態1の電磁クラッチのアマチュアの形状を示している。これに対し、図4(b)は、実施形態2の電磁クラッチのアマチュアの形状を示している。アマチュア4は、平板状であればどのような形状の回転体係合部でも良い。この形態のアマチュアの回転体係合部は、図4(b)に示すように係止孔46となっている。係止孔46は、図では円形の孔となっているが、楕円形、四角形、六角形などどのような形状でも良い。なお、図示はしていないが、回転体3に形成するアマチュア係合部は、この係止孔46を嵌め込んでアマチュア4を回転体3に係合する突起となる。この場合も、回転体3にアマチュア4が係合されれば、アマチュア4は回転体3と一体に回転し、駆動軸2の駆動軸方向(スラスト方向)には移動可能である。実施形態2は、アマチュア4と回転体3の係合部以外は実施形態1と同様であり、その動作、作用も同じである。このように本発明の電磁クラッチ1におけるアマチュア4は、平板であることと回転体係合部の形状の自由度が大きいことにより、回転体係合部の強度を十分に持たせる構造とすることが容易であり、またアマチュア4の繰り返し応力による破損に対しても耐久性を与えられる構造とすることが容易である。さらに、アマチュア4を平板とすることで、回転体3とロータ5との間隔を狭くでき、電磁クラッチ1全体の大きさや重量を抑えることもでる。
【0046】
(実施形態3)
実施形態3の電磁クラッチも回転体3とアマチュア4との係合部に特徴がある。この実施形態の電磁クラッチは、図5に示すように、回転体3のアマチュア係合部35における回転体3の回転時にアマチュア4と接して駆動力を伝達する側面34aと、該側面34aに接する回転体係合部41における側面41aとが面接触している。この電磁クラッチも上記の点を除けば実施形態1又は2の電磁クラッチと同じである。すでに説明したように、アマチュア係合部35における側面34aと回転体係合部41における側面41aとは、ロータ5への駆動力伝達開始時に強い応力がかかる。この為、図13に示したように、従来の電磁クラッチでは摩耗の激しい部分であった。本発明の電磁クラッチにおいても、この部分は駆動力伝達開始時に強い応力がかかる。そこで、この強い応力がかかる側面を面接触するようにして応力の分散を図っている。これにより、この側面34a、41aの摩耗が減少し、長時間使用しても図14に示して説明したような停止時間の遅れが解消される。
【0047】
(実施形態4)
実施形態4の電磁クラッチは、アマチュア係合部35における回転体3の回転時にアマチュアと接して駆動力を伝達する側面34aは、ロータ5側から離れるほど回転体3の回転方向後方に後退し、側面34aは回転体3側に面するように傾斜している。図6に示すように、回転体3のアマチュア係合部35の側面34aはアマチュア係合部35の奥側に面するように90°よりも傾斜している。回転体3の回転方向は、図6における右横向きの矢印のように回転していると仮定しており、回転体3の回転時には、アマチュア4は、側面34a側に接して回転方向に押されるようにして回転している。この場合、アマチュア4には常に下向きの力が働く。すなわち、アマチュア4はアマチュア係合部35の奥側、言い換えればロータ5から離間する方向に力が働いている。この力は、スプリング式電磁クラッチのスプリングの応力と同じ作用を生じ、コイル8の電源を遮断して、ロータ5とアマチュア4との間に磁力による吸引力がなくなれば、瞬時にロータ5とアマチュア4とを離間させることになる。これにより、コイル8の電源を遮断時の駆動軸2停止の遅れ時間が短縮できる。
【0048】
なお、この側面34aの傾斜角は、回転体3の回転速度や電磁クラッチに係る負荷の強さ、クラッチの接続が遮断されている状態で回転しているときのアマチュア4の回転抵抗などを勘案して決定することが好ましい。側面34aの傾斜が少なく垂直に近ければ、アマチュア4は、図7における下向きに小さな応力しか受けず、磁力遮断時のロータ5とアマチュア4との離間には大きな力にはならない。しかし、ロータ5とアマチュア4とのクラッチ結合時における結合力を弱めることはほとんどない。逆に、側面34aの傾斜が大きく、例えば傾斜角が60°にもなり、側面34aがアマチュア係合部35の底面の平行に近いようになっていると、マチュア4は、大きな下向きの応力を受け、クラッチ結合時における結合力を弱め十分な駆動力伝達が行えない恐れがある。通常は、コイル8の電源遮断時に、即座にアマチュア4がロータ5から離間することができる傾斜のうち最も小さい傾斜(側面34aを回転体3の回転方向に対し垂直に近い状態)とすることが好ましい。この実施形態についても、その他の点についてはすでに説明したと同じである。なお、回転体係合部41における側面41aも側面34aと面接触するように傾斜角を持たせ、実施形態3と実施形態4とを組み合わせた電磁クラッチは、耐久性からも駆動軸2停止の遅れ時間の短縮の点からも優れた形態である。
【0049】
(実施形態5)
実施形態5の電磁クラッチは、アマチュア係合部35における回転体3の回転時にアマチュア4と接して駆動力を伝達する側面34aのロータ側と反対側に溝が形成されている。図7に示すように、アマチュア係合部35の側面34aの奥には、溝35aが形成されている。この溝は、電磁クラッチが新しいうちは何の効果も現さない。しかし、長期間使用していると、すでに説明したように、アマチュア係合部35の側面34aは、図8に示すように摩耗してくる。このときに、従来の電磁クラッチにおいては、図14(b)に示したように回転体係合部41が摩耗部35(a)に乗り上げたような状態になり、クラッチ切断時のアマチュア4とロータ5との離間を妨げる恐れがある。この形態の電磁クラッチにおいては、アマチュア係合部35の側面34aの奥には溝35aが形成されているので、アマチュア係合部35の側面34aの開口部側が、図8に示すように摩耗しても、溝35aがあるので摩耗した側壁34bには、回転体結合部41が乗り上げるように段ができにくい。この為、図14を用いて説明したようなトラブルは起こらない。この形態の電磁クラッチにおいても上述の点以外は、これまで説明してきた実施形態の電磁クラッチと同じである。
【0050】
(実施形態6)
実施形態6の電磁クラッチは、ロータ及びアマチュアが、コイルにより磁化されていないときは互いに反発するよう磁化されている部分を備えている。図9(a)に示すようにこの形態の電磁クラッチは、アマチュア4とロータ5のそれぞれ互いに対向する面の、少なくとも一部に互いに反発する磁力を備えている。これは、アマチュア4とロータ5とをそれぞれ保持力を持つように磁化しておき、コイル8により磁化されていないときは、それぞれの磁力により反発するようにしておく。そうすれば、コイルの電源を遮断すると同時にアマチュア4とロータ5とは反発し合い離間する。この反発力は、コイルによるマチュア4とロータ5との磁化による吸引力に比べれば非常に弱いものである。なお、図9(b)に示すように、アマチュア4及びロータ5の一部にのみ永久磁石を使用し、この永久磁石の反発力を利用することもできる。この形態の電磁クラッチにおいても上述の点以外は、これまで説明してきた実施形態の電磁クラッチと同じである。
【0051】
(実施形態7)
実施形態7の電磁クラッチは、回転体及びアマチュアの少なくとも一方は、アマチュアがコイルにより磁化されていないときには、互いに吸引するよう磁化されている部分を備えている。図10に、この実施形態の電磁クラッチの回転体及びアマチュアを示す。図10(a)に示す回転体及びアマチュアは、回転体3及びアマチュア4の全体をそれぞれ磁化させて、それぞれの対向面32及び対向面45の磁極を、例えば、SとNのように逆にする。そうすれば、回転体3とアマチュア4とは、吸引力を生じスプリング式電磁クラッチのスプリングと同じ効果を発揮する。図10(b)に示す回転体3及びアマチュア4は、回転体3の外周部のみを磁気を帯びた材料として、軟磁性体であるアマチュア4に対する吸引力を付与する。それぞれの対向面32及び対向面45の間隔は小さいので、アマチュア4と図示していないロータ5がコイル8の強力な起磁力により吸引されていないときは、回転体3はアマチュア4を吸引する。この形態の電磁クラッチにおいても上述の点以外は、これまで説明してきた実施形態の電磁クラッチと同じである。
【0052】
(実施形態8)
実施形態8は、上述の実施形態1〜7で説明したいずれかの電磁クラッチを備えた搬送ローラである。この搬送ローラは、上記電磁クラッチの駆動軸2の端部にローラの軸を結合し、ローラの外周部にはゴムや樹脂製の適度な摩擦力と弾性を備えた搬送部が形成されている。このようにして、駆動軸2の駆動力を確実にローラの搬送部に伝達し、記録紙等の被搬送物を搬送できる。この形態の搬送ローラは、画像形成装置などに用いられている記録紙などの搬送ローラとして、記録紙等を正確な速度で搬送し、正確なタイミングで搬送開始や搬送停止を行なうことができる。このような特徴から、この搬送ローラは、画像形成装置において記録紙等の搬送、停止のタイミングを正確に制御する必要のあるレジストローラ、給紙ローラ、排紙ローラなどに特に好適に使用できる。
【0053】
この搬送ローラを備えた画像形成装置としては、電子写真方式の複写機、プリンタ、ファクシミリ、及びこれらの機能などを複合した複合機がある。さらに、インクジェットプリンタや従来からのスクリーン印刷や活版印刷等の印刷装置の用紙搬送ローラを必要とする画像形成装置にも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る電磁クラッチの断面図
【図2】図1に示した電磁クラッチの分解斜視図
【図3】電磁クラッチ動作時の磁路概念図
【図4】本発明に係る電磁クラッチのアマチュアの例
【図5】本発明に係る電磁クラッチの回転体の係止部とアマチュアの突起の係合図
【図6】傾斜した回転体の係止部側面とアマチュアの突起の係合図
【図7】改良された回転体の係止部側面とアマチュアの突起の係合図
【図8】係止部側面が摩耗したときの回転体の係止部側面とアマチュアの突起の係合図
【図9】ロータとアマチュアの磁化の状態の概念図
【図10】回転体とアマチュアの磁化の状態の概念図
【図11】スプリング式の電磁クラッチの断面図
【図12】改良された従来の電磁クラッチの断面図
【図13】図12に示した電磁クラッチの分解斜視図
【図14】回転体の係合部とアマチュアの突起の係合図
【図15】耐久試験における停止時間の変化
【符号の説明】
【0055】
1:電磁クラッチ
2:駆動軸
3:回転体
4:アマチュア
5:ロータ
6:ヨーク
7:ボビン
8:コイル
9,10:ストッパ
11,12:摺動部材
31:歯車部
32:回転体のアマチュアの平面を臨む対向面
34a:回転体の駆動力をアマチュアに伝達する側面
34b:側面34aの摩耗部
35:係止部(アマチュア係合部)
35a:溝
37:回転体の外周部
41:突起(回転体係合部)
41a:側面34aに接する回転体係合部における側面
43:アマチュアのロータを臨む対向面
44:アマチュアの外周部
45:アマチュアの回転体を臨む対向面
46:係止孔
49:リターンスプリング
54:ロータのアマチュアを臨む対向面
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁クラッチ、搬送ローラ、及びこれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、給紙装置を備えた複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置においては、給紙や排紙等の搬送手段により搬送されている記録紙に、画像を直接又は転写等により間接的に形成している。搬送手段は、ゴムローラの摩擦力を利用した搬送ローラを使用している場合が多い。ゴムローラは、電磁クラッチを備えた駆動装置により回転、停止が制御されている。
【0003】
画像形成装置用の電磁クラッチとしては、例えばこのような画像形成装置に適用される小型の電磁クラッチとして、例えば図11に示す構造のスプリング式電磁クラッチがよく知られている。この電磁クラッチは、図11に従って説明すると、駆動軸2を備え、この駆動軸2の端部には図示しない負荷(上記の画像形成装置の場合はレジストローラの軸など)が連結されている。この駆動軸2の外側には、回転体3が回転自在に嵌合されるとともに、ロータ5が駆動軸2と一体回転するように嵌合されている。そして、回転体3には歯車部が設けられ、図外のモータによって駆動される仕組みになっている。さらに、ロータ5とともにコイル8を支持するヨーク6が駆動軸2に回転自在に嵌合されている。ヨーク6は駆動軸2およびロータ5が回転しても滑りを起こして静止状態を維持することができる。
【0004】
上記のロータ5は、外側円筒部、内側円筒部、および両円筒部を連結する連結部を有している。ロータ5の連結部と回転体3との間の略対向する位置には、中空円板状のアマチュア4が配置されており、このアマチュア4には中空皿状のリターンスプリング49の一端が固定され、リターンスプリング49の他端は回転体3に固定されている。したがって、アマチュア4は、回転体3に固定されていることになり、リターンスプリング49および回転体3と一体回転する。しかし、リターンスプリング49の作用によって軸方向に微動できるようになっている。
【0005】
ロータ5の連結部には、その周方向に沿う複数箇所に遮磁穴が形成されている。これらの遮磁穴は後述のアマチュア4への磁路が容易に形成されるように、磁気抵抗を確保するためのものである。
【0006】
ヨーク6は、大径筒部、小径筒部、および両筒部を連結する底板部によって構成されており、各部で囲まれた内部には、ロータ5の連結部とアマチュア4とが対向する磁極部に対して起磁力を与えるためのコイル8が巻かれたボビン7が収納されている。
【0007】
駆動軸2の左右端にはストッパ9,10が配置され、回転体3,ロータ5,ヨーク6などが駆動軸上を軸方向に移動しないようにしている。また、81は、コイル8に接続されたリード線である。また、駆動軸2は図示していない軸受けにより支持され、ヨーク6も図示していないこの電磁クラッチのケーシングやフレームに支持されている。
【0008】
上記構成において、リード線81を介してコイル7に通電されて励磁されると、ロータ5の連結部とアマチュア4との対向部分により形成された磁極部に吸引力が発生して両者が結合し、その結果、図外のモータにより駆動される回転体3からリターンスプリング49、アマチュア4を介してロータ5にトルクが伝わり、さらにロータ5に一体結合されている駆動軸2が回転して図外の負荷が駆動される。なお、ヨーク6、コイル8、ボビン7は、ロータ5および駆動軸2が回転しても滑りを起こして静止状態を維持したままである。
【0009】
このコイル8に通電した時の磁路は、コイル8の回りに形成され、ヨーク6の大径筒部→ロータ5の外側円筒部→ロータ5の連結部→アマチュア4→ロータ5の連結部→ロータ5の内側円筒部→駆動軸2の外周部→ヨーク6の小径筒部→ヨーク5の底板部→ヨーク5の大径筒部のようになる。そして、ロータ5とアマチュア4との間に電磁結合が形成され、ロータ5とアマチュア4とは、リターンスプリング49のばね力に反して密着する。
【0010】
コイル8の通電を遮断して消磁すると,アマチュア4とロータ5との電磁結合が解除されて、アマチュア5がリターンスプリング49のばね力によって回転体3側に復帰し、アマチュア4とロータ5とが離間し、アマチュア4からロータ5へのトルク伝達が遮断される。
【0011】
特許文献1には、ロータ5とアマチュア4との間に電磁結合力のばらつきをなくし、ロータ5とアマチュア4との安定した結合、離間をさせることのできる電磁クラッチが開示されている。この電磁クラッチは、コイルの回りをシェルで覆い、コイルをロータと駆動軸に固定したハブロータとで挟むようにして、ロータ→ハブロータ→シェル→ロータと周回する磁路を形成している。そして、ハブロータ→シェルの磁路を、駆動軸のスラスト方向にし、間隙を小さくすることにより磁力の安定が図れるとしている。
【0012】
特許文献2には、スプリングを使用しない電磁クラッチが開示されている。図12,13にこの電磁クラッチの断面図及び分解斜視図を示す。この電磁クラッチにつき、図11における部品と同じ機能の部品は同じ符号を付けて説明する。駆動軸2、ロータ5、ヨーク6、ボビン7、コイル8については、図10に示した電磁クラッチとほぼ同じであるので詳しい説明を省く。この電磁クラッチは、アマチュア4にスプリングを備えていない。そして、円盤状のアマチュア4はその周縁部に複数の突起45を備えている。この突起45は、円盤状の面に対し直角に付き出した2本の足を持っている。一方、回転体3のアマチュア4と対向する面には、突起45の足を収納し、アマチュア4が回転体3と一体になって回転するための係止部を設けている。
【0013】
アマチュア4は、回転体3とロータ5とで形成された空間中配置されており、駆動軸の方向には微動可能である。このため、コイル8に電流が流れると、磁力が働きアマチュア4はロータ5側に引き寄せられロータ5と密着する。アマチュア4とロータ5とが密着すると回転体3の駆動力は、アマチュア4を介してロータ5に伝わりロータ5も回転する。ロータ5は駆動軸に固定されているので、最終的には回転体3の回転が駆動軸2に伝達される。コイル8の電流が遮断されると、アマチュア4とロータ5との密着力がなくなり、ロータ5すなわち駆動軸2は駆動されなくなる。ここで、アマチュア4とロータ5との離間を確実なものとするため、アマチュア4やロータ5を平面ではなく波形にしたり、皿形にしたりしてバネ力を持たせる工夫なども開示されている。
【0014】
このような電磁クラッチは、バネを必要とせず、部品点数が少なくなり、小型化できるメリットがある。また、疲労部品であるバネを使用しないことにより電磁クラッチの寿命や信頼性にも良い影響がある。
【特許文献1】特開2006−258229号公報
【特許文献2】特開2006−170231号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特許文献2に記載の電磁クラッチは、従来のスプリング式の電磁クラッチに比べ優れているが、アマチュア4とロータ5との結合の際に、アマチュア4の突起45と回転体3の係止部35との間に衝撃を受けやすい。この為、アマチュア4に亀裂が生じたり、回転体3の係止部35の、アマチュア4の突起45の足と接触する部分に破損や摩耗が生じたりする恐れがある。例えば、アマチュア4とロータ5とが結合してアマチュア4に付加が係った瞬間、突起45の足が回転体3の係止部35の、回転体3の回転方向後側の側壁34に当たり側壁34を破損や摩耗させる。この動作が長期間繰り返されると、側壁34が大きく破損して破損部35aが形成される。そうすると、最初図14(a)に示すような回転体3の係止部35とアマチュア4の突起45の係合状態であったものが、図14(b)に示すように、係止部35が広がってしまい突起45の足が破損部35a上に乗り上げてしまう。このような状態になったままコイルの電源を遮断して、アマチュア4とロータ5との密着状態を解除しようとすると、突起45の足が係止部35の奥側に移動しにくいため、アマチュア4とロータ5とが密着したままで離間が不十分となる。アマチュア4とロータ5との離間が不十分であると、アマチュア4とロータ5との間の摩擦力が残り、ロータ5がアマチュア4に連れ回りすることがある。このようにしてロータ5の停止時間に遅れが出てくる。
【0016】
この遅れ時間の変化を耐久テストで確かめたところ、図15に示すような結果が出た。図15は、4個の同種の上述の電磁クラッチにつき回転停止を200万回繰り返した際に、ロータ5すなわちローラの停止遅れ時間をプロットしたグラフである。図15から判るように、4つの電磁クラッチとも当初の停止遅れ時間は、7ms程度であったものが100万回操作時には11〜14ms、200万回操作時には12〜15msとなった。
【0017】
このような電磁クラッチの停止遅れは、画像形成装置の記録紙の搬送位置を決める際に問題となり、正確な印刷には重要な問題である。特に、高速印刷になるほど位置ずれは大きくなりやすく、一方で係止部35の破損摩耗も起こりやすくなる。
【0018】
本発明の目的は、上記問題点を踏まえ、小型で耐久性がある上に、アマチュアとロータとの離間時のロータの回転停止時間の遅れを抑えた電磁クラッチ、並びにこれを備えた搬送ローラ及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するため本発明者等は、以下の発明を完成した。
本発明は、駆動軸と、駆動力伝達手段を備え駆動軸に回転自在に嵌合された回転体と、回転体の側面に回転体と一体に回転するように係合された平板状のアマチュアと、駆動軸に固定され、アマチュアの側面と離接可能に対向して配置されたロータと、ロータとアマチュアとの間に起磁力を与えるコイルとを備えた電磁クラッチであって、前記回転体には、アマチュアを係合するアマチュア係合部を設け、前記アマチュアには、前記アマチュア係合部と係合する回転体係合部を設けたことを特徴とする電磁クラッチである。
【0020】
好ましい本発明は、前記アマチュア係合部における回転体の回転時にアマチュアと接して駆動力を伝達する側面と、該側面に接する前記回転体係合部における側面とが面接触していることを特徴とする前記電磁クラッチである。
【0021】
好ましい本発明は、前記アマチュア係合部における回転体の回転時にアマチュアと接して駆動力を伝達する側面は、ロータ側から離れるほど回転体の回転方向後方に傾斜していることを特徴とする前記電磁クラッチである。
【0022】
好ましい本発明は、前記アマチュア係合部における回転体の回転時にアマチュアと接して駆動力を伝達する側面のロータ側と反対側に溝が形成されていることを特徴とする前記電磁クラッチである。
【0023】
好ましい本発明は、前記ロータ及びアマチュアが軟磁性材料を含む部材により形成されていることを特徴とする前記電磁クラッチである。
【0024】
好ましい本発明は、前記ロータ及びアマチュアは、コイルにより磁化されていないときは互いに反発するよう磁化されている部分を備えていることを特徴とする前記電磁クラッチである。
【0025】
好ましい本発明は、前記回転体及びアマチュアの少なくとも一方は、アマチュアがコイルにより磁化されていないときは、互いに吸引するよう磁化されている部分を備えていることを特徴とする前記電磁クラッチである。
【0026】
本発明は、前記電磁クラッチの駆動軸に、ローラを配置したことを特徴とする搬送ローラである。
【0027】
本発明は、前記搬送ローラを備えた画像形成装置である。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、小型で耐久性がある上に、アマチュアとロータとの離間時のロータの回転停止時間の遅れを抑えた電磁クラッチ、並びにこれを備えた搬送ローラ及び画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明を実施するための最良の形態を必要に応じて図面を参照にして説明する。なお、いわゆる当業者は特許請求の範囲内における本発明を変更・修正をして他の実施形態をなすことは容易であり、これらの変更・修正はこの特許請求の範囲に含まれるものであり、以下の説明はこの発明の好ましい形態における例であって、この特許請求の範囲を限定するものではない。
【0030】
(実施形態1)
本発明に係る実施形態1の電磁クラッチを断面図1及び分解斜視図2に示す。この電磁クラッチ1は、主要構成部品として駆動軸2、回転体3、アマチュア4、ロータ5、ヨーク6、ボビン7、及びコイル8を備えており、その他に、ストッパ9,10、摺動部材11,12なども備えている。なお、この電磁クラッチ1は、従来のスプリング式電磁クラッチのようなリターンスプリングは備えていない。
【0031】
図1、図2を参照にして、この電磁クラッチの構成を簡単に説明すると、駆動軸2にギアを備えた回転体3が回転自在に勘合されており、回転体3の側面にはアマチュア4が係合部を介して回転体3と一体回転するように嵌め込まれている。なお、アマチュア4は、回転方向へはアマチュア係合部(この実施形態では係止部35)及び回転体係合部(この実施形態では突起41)の係合により自由回転できないが、駆動軸2の軸方向には移動可能である。そして、アマチュア4の回転体3と反対側には、この反対側の面を臨むようにロータ5が配置され、ロータ5は駆動軸2に固定されている。ロータ5の回転体3と反対側にはコイル8を巻き付けたボビン7を支持するヨーク6が配置されている。ヨーク6は駆動軸2に回転自在に勘合されている。回転体3とヨーク6は、駆動軸2の両側に配置したストッパ9,10により駆動軸2の軸方向への移動を制限されている。
【0032】
図1,2を参照にしながら各部品の説明をする。駆動軸2は、通常、中空筒状で、図示しない軸受けに支持され、この電磁クラッチを画像形成装置に使用する場合は搬送ローラの軸等の負荷が結合されている。また、この駆動軸2の軸方向の中間位置には径方向外方に張り出したフランジ13が形成されており、このフランジ13は後述するロータ5を駆動軸2に固定するとともに、回転体3が駆動軸2の軸方向に移動しないようなストッパの役目も担っている。
【0033】
回転体3は、合成樹脂成形品や金属製の歯車部31を備え、駆動軸2の外側に回転自在に嵌合され、図外のモータ及びギアにより駆動力を与えられる。歯車部31の側面には、冠状のキャップ部36を備え、キャップ部36の内側底面32の外周よりには後述するアマチュア4の突起41を係止する係止部35が形成されている。この係止部35は、アマチュア4の突起41の数に合わせており、この実施形態の例では6個形成されている。
【0034】
アマチュア4は、回転体3とロータ5で囲まれた空間内において、この空間内で駆動軸2の軸方向に沿って摺動可能に配置されている。アマチュア4は、平板状でリング状をしており、アマチュア4の外周には、周方向に沿う複数箇所に平面状の突起41が形成されている。そして、この突起41は回転体3に設けた前述の係止部35に係合されている。これにより、アマチュア5は、回転体2の係止部35に係止されて回転体3と一体回転するようになっている。しかし、アマチュア5は、駆動軸2の軸方向への移動に対しては係止部35により係止されておらず、駆動軸2の軸方向に沿って摺動し後述するロータ5の側面に密着したり離間したりできる。また、アマチュア4は、リングの周方向に沿って複数箇所(本実施形態では3箇所)に遮磁穴42が形成されており、各遮磁穴42の間はリブで連結されている。
【0035】
ロータ5は、円筒部53と、この円筒部53から径方向内方に縮径されて断面段差状に形成された縮径部と、円筒部53と縮径部とを連結する平面部51とを有する。そして、平面部51には、径方向に二重に形成された遮磁穴52が周方向に沿う複数箇所(本実施形態では3箇所、合計6個の遮磁穴)に設けられており、各遮磁穴52の間はリブで連結されている。ロータ5の遮磁穴52とアマチュア4の遮磁穴42とは、互いに対向して配置したとき、径方向に位置ずれして形成されている。このため、ロータ5とアマチュア4とが対向する部分において、磁極部は4極あることになる。なお、ロータ5とアマチュア4の各遮磁穴の数を変えることで極数を変えた構成とすることも可能である。縮径部は駆動軸2のフランジ13に着座されている。縮径部の内周端には、駆動軸2に形成した突起に係合する係止部を設け両者を係合している。このため、ロータ5と駆動軸2とは一体回転するようになっている。なお、駆動軸2のフランジ13の周方向に沿う複数箇所に凹部を設け、また、ロータ5の内周端にはこの凹部と係合する突起を設けて両者を係合させる構成とすることも可能である。
【0036】
ヨーク6は、従来のスプリング式電磁クラッチと同じように、大径筒部、小径筒部、および両者を連結する底板部によって構成されたキャップ状をしており、キャップの内部にはコイル8が巻かれたボビン7が収納されている。そして、このヨーク6は、駆動軸2に回転自在に勘合されており、支持部材71を介して、図示していない電磁クラッチのケーシングやフレームに支持されている。また、符号81は、コイル8の端子となるリード線を表す。なお、ヨーク6とストッパ10及び駆動軸2との間には摺動部材11,12などが配置されており、駆動軸2及びロータ5が回転しても滑りをよくしてヨーク6の静止状態を容易に維持できる。
【0037】
駆動軸2、アマチュア4、ロータ5、ヨーク6の各磁路形成部には、それぞれ軟磁性体が使用されていることが好ましい。特に、アマチュア4、ロータ5は磁力により密着する必要がありため、高性能の軟磁性体が使用されていることが特に好ましい。また、ロータ5、アマチュア4、ヨーク6等の磁路形成部に軟磁性体を使用する場合は、消磁後に残留磁束が存在しないよう、加工歪を抑えた保磁力の小さい材料を使用することが好ましい。この加工歪みの解消には、従来から知られている水蒸気処理や焼鈍処理をすれば良い。この実施形態の電磁クラッチでは、駆動軸2、アマチュア4、ロータ5、ヨーク6の各磁路形成部材に軟磁性体を使用し、また、必要に応じて焼鈍処理や水蒸気処理等の保磁力低下処理を行って磁路内の残留磁束量を低減して残留吸引力を減らしている。軟磁性体としては、例えば無方向性電磁鋼板(JIS C2552)や電磁軟鉄(JIS C2504)などが適用される。保磁力低下処理により、コイルの電源を遮断して消磁すると、即座にアマチュア4とロータ5との対向部分の磁極部が消磁され吸引力がなくなり、アマチュア4からロータ5へのトルク伝達が停止され、駆動軸2に結合している負荷ローラ等の回転が直ちに停止する。
【0038】
残留磁束が少ないと、コイルの電源を遮断時の吸引力がないので、ロータ5とアマチュア4との離接面の吸引ギャップを極めて小さく設定することができる。すなわち、ロータ5と回転体3との間にアマチュア4が介在された場合の駆動軸2の軸方向隙間であるスラスト隙間を極めて小さく設定できるため、アマチュア4の軸方向の移動量を微小にできる。その結果、アマチュア4が軸方向に移動するときの余分な時間ロスが省かれてトルク伝達開始遅れ時間及びトルク解放遅れ時間が共に短縮化され、クラッチの応答性が高まる。しかも、アマチュア4の軸方向の移動量は微小であるため、励磁時にロータ5とアマチュア4とが吸引されるときに発生する衝撃音や、消磁時にアマチュア4がロータ5から離れるときに発生する衝撃音を共に低減することができる。さらに、従来のようなリターンスプリングを使用していないだけでなく、アマチュア4を一枚の平板としているため、電磁クラッチ全体の軸方向長さを短くすることができ、小型化が可能になる。
【0039】
この電磁クラッチの動作について説明する。図3は、電磁クラッチの動作時の磁路を概念的に表したものである。コイル8に電流を流して磁力を発生させると、磁路はコイルの中心にあるヨーク6の小径筒部から底板部、大径筒部(コイルのシェル部を兼ねている。)へと繋がり、さらにロータ5の周縁部からアマチュア4、ロータ5の内周部を通ってヨーク6の小径筒部へと戻る。このとき、ロータ5とアマチュア4が磁化されて、アマチュア4はロータ5に吸引され、軸方向に沿ってロータ5側に移動し、ロータ5とアマチュア4は密着する。この密着し吸引された状態で、アマチュア4が図外のモータにより駆動される回転体3と一体になって回転していると、ロータ5もアマチュア4との密着部の摩擦力により連れ回りする。ロータ5が回転すれば、これに固定されている駆動軸2が回転する。このようにして、回転体3の駆動力が駆動軸2へと伝達される。さらに、駆動軸2が回転して駆動軸2に連結している図外の搬送ローラ等の負荷が駆動される。なお、ヨーク6、ボビン7、コイル8は、電磁クラッチのケーシングなどに支持されており、ロータ5や駆動軸2が回転しても摺動部材11,12などとの間で滑りを起こして静止状態を維持する。
【0040】
この場合、アマチュア4が軸方向に沿って移動する距離は僅かであり、しかも、従来のようなリターンスプリングを使用していないので、そのばね力に打ち勝ってアマチュア5がロータ3に結合する必要がなく、このため、アマチュア4の移動時間が短縮化され、回転体3から駆動軸2へのトルク伝達開始の応答性が高まる。また、リターンスプリングのばね力のばらつきに起因してトルク伝達開始の応答時間がばらつくといったこともないのでトルク伝達のおくれ時間が安定化する。
【0041】
一方、コイル8の電源が遮断されると、ロータ5とアマチュア4との間に形成されていた磁力がなくなり、ロータ5とアマチュア4との引力がなくなる。アマチュア4は、駆動軸2の軸方向には移動可能な状態になっているので、ロータ5とアマチュア4との間に働いていた引力がなくなれば、ロータ5とアマチュア4との間の回転方向に対する摩擦力がほとんどなくなり、アマチュア4の回転がロータ5には伝わらなくなる。そして、ロータ5とこれに固定されている駆動軸2は回転停止する。
【0042】
この実施形態の電磁クラッチを組み立てるには、駆動軸2の一端側(図1中右側)にロータ5を挿入し、フランジ13にロータ5の縮径部を着座させる。次いで、アマチュア4の突起41を回転体3の係止部35に係合させた状態で、アマチュア4および回転体3をロータ5に被せるようにして駆動軸2に挿入する。引き続いて、駆動軸2の一端側にストッパ9を挿入してフランジ13との間でロータ5、アマチュア4、および回転体3を軸方向に位置規制する。
【0043】
また、駆動軸2の他端側(図1中左側)にボビン7、ヨーク6、摺動部材11,12,及びストッパ10を順次挿入し、このストッパ10とフランジ部13との間でボビン7およびヨーク6を軸方向に位置規制する。
【0044】
駆動軸2の一端側(図1中右側)にストッパ9を挿入する場合に、ストッパ9をフランジ13側に向けて差し込み過ぎると、アマチュア4のリング部が回転体3とロータ5の連結部51とによって強固に挟まれて、軸方向に移動できなくなってクラッチとしての役目を果たさなくなる。このため、アマチュア4のリング部がロータ3の連結部51と回転体3との間で移動できるように、これらの相互間に僅かなスラスト隙間を確保しておく必要がある。また、回転体3が樹脂成形品の場合には温度上昇による膨張が大きいので、この点からもスラスト隙間を確保しておく必要がある。
【0045】
(実施形態2)
実施形態2として、実施形態1の電磁クラッチのアマチュアの形状を変更した電磁クラッチがある。図4(a)は、実施形態1の電磁クラッチのアマチュアの形状を示している。これに対し、図4(b)は、実施形態2の電磁クラッチのアマチュアの形状を示している。アマチュア4は、平板状であればどのような形状の回転体係合部でも良い。この形態のアマチュアの回転体係合部は、図4(b)に示すように係止孔46となっている。係止孔46は、図では円形の孔となっているが、楕円形、四角形、六角形などどのような形状でも良い。なお、図示はしていないが、回転体3に形成するアマチュア係合部は、この係止孔46を嵌め込んでアマチュア4を回転体3に係合する突起となる。この場合も、回転体3にアマチュア4が係合されれば、アマチュア4は回転体3と一体に回転し、駆動軸2の駆動軸方向(スラスト方向)には移動可能である。実施形態2は、アマチュア4と回転体3の係合部以外は実施形態1と同様であり、その動作、作用も同じである。このように本発明の電磁クラッチ1におけるアマチュア4は、平板であることと回転体係合部の形状の自由度が大きいことにより、回転体係合部の強度を十分に持たせる構造とすることが容易であり、またアマチュア4の繰り返し応力による破損に対しても耐久性を与えられる構造とすることが容易である。さらに、アマチュア4を平板とすることで、回転体3とロータ5との間隔を狭くでき、電磁クラッチ1全体の大きさや重量を抑えることもでる。
【0046】
(実施形態3)
実施形態3の電磁クラッチも回転体3とアマチュア4との係合部に特徴がある。この実施形態の電磁クラッチは、図5に示すように、回転体3のアマチュア係合部35における回転体3の回転時にアマチュア4と接して駆動力を伝達する側面34aと、該側面34aに接する回転体係合部41における側面41aとが面接触している。この電磁クラッチも上記の点を除けば実施形態1又は2の電磁クラッチと同じである。すでに説明したように、アマチュア係合部35における側面34aと回転体係合部41における側面41aとは、ロータ5への駆動力伝達開始時に強い応力がかかる。この為、図13に示したように、従来の電磁クラッチでは摩耗の激しい部分であった。本発明の電磁クラッチにおいても、この部分は駆動力伝達開始時に強い応力がかかる。そこで、この強い応力がかかる側面を面接触するようにして応力の分散を図っている。これにより、この側面34a、41aの摩耗が減少し、長時間使用しても図14に示して説明したような停止時間の遅れが解消される。
【0047】
(実施形態4)
実施形態4の電磁クラッチは、アマチュア係合部35における回転体3の回転時にアマチュアと接して駆動力を伝達する側面34aは、ロータ5側から離れるほど回転体3の回転方向後方に後退し、側面34aは回転体3側に面するように傾斜している。図6に示すように、回転体3のアマチュア係合部35の側面34aはアマチュア係合部35の奥側に面するように90°よりも傾斜している。回転体3の回転方向は、図6における右横向きの矢印のように回転していると仮定しており、回転体3の回転時には、アマチュア4は、側面34a側に接して回転方向に押されるようにして回転している。この場合、アマチュア4には常に下向きの力が働く。すなわち、アマチュア4はアマチュア係合部35の奥側、言い換えればロータ5から離間する方向に力が働いている。この力は、スプリング式電磁クラッチのスプリングの応力と同じ作用を生じ、コイル8の電源を遮断して、ロータ5とアマチュア4との間に磁力による吸引力がなくなれば、瞬時にロータ5とアマチュア4とを離間させることになる。これにより、コイル8の電源を遮断時の駆動軸2停止の遅れ時間が短縮できる。
【0048】
なお、この側面34aの傾斜角は、回転体3の回転速度や電磁クラッチに係る負荷の強さ、クラッチの接続が遮断されている状態で回転しているときのアマチュア4の回転抵抗などを勘案して決定することが好ましい。側面34aの傾斜が少なく垂直に近ければ、アマチュア4は、図7における下向きに小さな応力しか受けず、磁力遮断時のロータ5とアマチュア4との離間には大きな力にはならない。しかし、ロータ5とアマチュア4とのクラッチ結合時における結合力を弱めることはほとんどない。逆に、側面34aの傾斜が大きく、例えば傾斜角が60°にもなり、側面34aがアマチュア係合部35の底面の平行に近いようになっていると、マチュア4は、大きな下向きの応力を受け、クラッチ結合時における結合力を弱め十分な駆動力伝達が行えない恐れがある。通常は、コイル8の電源遮断時に、即座にアマチュア4がロータ5から離間することができる傾斜のうち最も小さい傾斜(側面34aを回転体3の回転方向に対し垂直に近い状態)とすることが好ましい。この実施形態についても、その他の点についてはすでに説明したと同じである。なお、回転体係合部41における側面41aも側面34aと面接触するように傾斜角を持たせ、実施形態3と実施形態4とを組み合わせた電磁クラッチは、耐久性からも駆動軸2停止の遅れ時間の短縮の点からも優れた形態である。
【0049】
(実施形態5)
実施形態5の電磁クラッチは、アマチュア係合部35における回転体3の回転時にアマチュア4と接して駆動力を伝達する側面34aのロータ側と反対側に溝が形成されている。図7に示すように、アマチュア係合部35の側面34aの奥には、溝35aが形成されている。この溝は、電磁クラッチが新しいうちは何の効果も現さない。しかし、長期間使用していると、すでに説明したように、アマチュア係合部35の側面34aは、図8に示すように摩耗してくる。このときに、従来の電磁クラッチにおいては、図14(b)に示したように回転体係合部41が摩耗部35(a)に乗り上げたような状態になり、クラッチ切断時のアマチュア4とロータ5との離間を妨げる恐れがある。この形態の電磁クラッチにおいては、アマチュア係合部35の側面34aの奥には溝35aが形成されているので、アマチュア係合部35の側面34aの開口部側が、図8に示すように摩耗しても、溝35aがあるので摩耗した側壁34bには、回転体結合部41が乗り上げるように段ができにくい。この為、図14を用いて説明したようなトラブルは起こらない。この形態の電磁クラッチにおいても上述の点以外は、これまで説明してきた実施形態の電磁クラッチと同じである。
【0050】
(実施形態6)
実施形態6の電磁クラッチは、ロータ及びアマチュアが、コイルにより磁化されていないときは互いに反発するよう磁化されている部分を備えている。図9(a)に示すようにこの形態の電磁クラッチは、アマチュア4とロータ5のそれぞれ互いに対向する面の、少なくとも一部に互いに反発する磁力を備えている。これは、アマチュア4とロータ5とをそれぞれ保持力を持つように磁化しておき、コイル8により磁化されていないときは、それぞれの磁力により反発するようにしておく。そうすれば、コイルの電源を遮断すると同時にアマチュア4とロータ5とは反発し合い離間する。この反発力は、コイルによるマチュア4とロータ5との磁化による吸引力に比べれば非常に弱いものである。なお、図9(b)に示すように、アマチュア4及びロータ5の一部にのみ永久磁石を使用し、この永久磁石の反発力を利用することもできる。この形態の電磁クラッチにおいても上述の点以外は、これまで説明してきた実施形態の電磁クラッチと同じである。
【0051】
(実施形態7)
実施形態7の電磁クラッチは、回転体及びアマチュアの少なくとも一方は、アマチュアがコイルにより磁化されていないときには、互いに吸引するよう磁化されている部分を備えている。図10に、この実施形態の電磁クラッチの回転体及びアマチュアを示す。図10(a)に示す回転体及びアマチュアは、回転体3及びアマチュア4の全体をそれぞれ磁化させて、それぞれの対向面32及び対向面45の磁極を、例えば、SとNのように逆にする。そうすれば、回転体3とアマチュア4とは、吸引力を生じスプリング式電磁クラッチのスプリングと同じ効果を発揮する。図10(b)に示す回転体3及びアマチュア4は、回転体3の外周部のみを磁気を帯びた材料として、軟磁性体であるアマチュア4に対する吸引力を付与する。それぞれの対向面32及び対向面45の間隔は小さいので、アマチュア4と図示していないロータ5がコイル8の強力な起磁力により吸引されていないときは、回転体3はアマチュア4を吸引する。この形態の電磁クラッチにおいても上述の点以外は、これまで説明してきた実施形態の電磁クラッチと同じである。
【0052】
(実施形態8)
実施形態8は、上述の実施形態1〜7で説明したいずれかの電磁クラッチを備えた搬送ローラである。この搬送ローラは、上記電磁クラッチの駆動軸2の端部にローラの軸を結合し、ローラの外周部にはゴムや樹脂製の適度な摩擦力と弾性を備えた搬送部が形成されている。このようにして、駆動軸2の駆動力を確実にローラの搬送部に伝達し、記録紙等の被搬送物を搬送できる。この形態の搬送ローラは、画像形成装置などに用いられている記録紙などの搬送ローラとして、記録紙等を正確な速度で搬送し、正確なタイミングで搬送開始や搬送停止を行なうことができる。このような特徴から、この搬送ローラは、画像形成装置において記録紙等の搬送、停止のタイミングを正確に制御する必要のあるレジストローラ、給紙ローラ、排紙ローラなどに特に好適に使用できる。
【0053】
この搬送ローラを備えた画像形成装置としては、電子写真方式の複写機、プリンタ、ファクシミリ、及びこれらの機能などを複合した複合機がある。さらに、インクジェットプリンタや従来からのスクリーン印刷や活版印刷等の印刷装置の用紙搬送ローラを必要とする画像形成装置にも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る電磁クラッチの断面図
【図2】図1に示した電磁クラッチの分解斜視図
【図3】電磁クラッチ動作時の磁路概念図
【図4】本発明に係る電磁クラッチのアマチュアの例
【図5】本発明に係る電磁クラッチの回転体の係止部とアマチュアの突起の係合図
【図6】傾斜した回転体の係止部側面とアマチュアの突起の係合図
【図7】改良された回転体の係止部側面とアマチュアの突起の係合図
【図8】係止部側面が摩耗したときの回転体の係止部側面とアマチュアの突起の係合図
【図9】ロータとアマチュアの磁化の状態の概念図
【図10】回転体とアマチュアの磁化の状態の概念図
【図11】スプリング式の電磁クラッチの断面図
【図12】改良された従来の電磁クラッチの断面図
【図13】図12に示した電磁クラッチの分解斜視図
【図14】回転体の係合部とアマチュアの突起の係合図
【図15】耐久試験における停止時間の変化
【符号の説明】
【0055】
1:電磁クラッチ
2:駆動軸
3:回転体
4:アマチュア
5:ロータ
6:ヨーク
7:ボビン
8:コイル
9,10:ストッパ
11,12:摺動部材
31:歯車部
32:回転体のアマチュアの平面を臨む対向面
34a:回転体の駆動力をアマチュアに伝達する側面
34b:側面34aの摩耗部
35:係止部(アマチュア係合部)
35a:溝
37:回転体の外周部
41:突起(回転体係合部)
41a:側面34aに接する回転体係合部における側面
43:アマチュアのロータを臨む対向面
44:アマチュアの外周部
45:アマチュアの回転体を臨む対向面
46:係止孔
49:リターンスプリング
54:ロータのアマチュアを臨む対向面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸と、
駆動力伝達手段を備え駆動軸に回転自在に嵌合された回転体と、
回転体の側面に回転体と一体に回転するように係合された平板状のアマチュアと、
駆動軸に固定され、アマチュアの側面と離接可能に対向して配置されたロータと、
ロータとアマチュアとの間に起磁力を与えるコイルとを備えた電磁クラッチであって、
前記回転体には、アマチュアを係合するアマチュア係合部を設け、
前記アマチュアには、前記アマチュア係合部と係合する回転体係合部を設けたことを特徴とする電磁クラッチ。
【請求項2】
前記アマチュア係合部における回転体の回転時にアマチュアと接して駆動力を伝達する側面と、該側面に接する前記回転体係合部における側面とが面接触していることを特徴とする請求項1に記載の電磁クラッチ。
【請求項3】
前記アマチュア係合部における回転体の回転時にアマチュアと接して駆動力を伝達する側面は、ロータ側から離れるほど回転体の回転方向後方に傾斜していることを特徴とする請求項1又は2に記載の電磁クラッチ。
【請求項4】
前記アマチュア係合部における回転体の回転時にアマチュアと接して駆動力を伝達する側面のロータ側と反対側に溝が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電磁クラッチ。
【請求項5】
前記ロータ及びアマチュアが軟磁性材料を含む部材により形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電磁クラッチ。
【請求項6】
前記ロータ及びアマチュアは、コイルにより磁化されていないときは互いに反発するよう磁化されている部分を備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の電磁クラッチ。
【請求項7】
前記回転体及びアマチュアの少なくとも一方は、アマチュアがコイルにより磁化されていないときは、互いに吸引するよう磁化されている部分を備えていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の電磁クラッチ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の電磁クラッチの駆動軸に、ローラを配置したことを特徴とする搬送ローラ。
【請求項9】
請求項8に記載の搬送ローラを備えた画像形成装置。
【請求項1】
駆動軸と、
駆動力伝達手段を備え駆動軸に回転自在に嵌合された回転体と、
回転体の側面に回転体と一体に回転するように係合された平板状のアマチュアと、
駆動軸に固定され、アマチュアの側面と離接可能に対向して配置されたロータと、
ロータとアマチュアとの間に起磁力を与えるコイルとを備えた電磁クラッチであって、
前記回転体には、アマチュアを係合するアマチュア係合部を設け、
前記アマチュアには、前記アマチュア係合部と係合する回転体係合部を設けたことを特徴とする電磁クラッチ。
【請求項2】
前記アマチュア係合部における回転体の回転時にアマチュアと接して駆動力を伝達する側面と、該側面に接する前記回転体係合部における側面とが面接触していることを特徴とする請求項1に記載の電磁クラッチ。
【請求項3】
前記アマチュア係合部における回転体の回転時にアマチュアと接して駆動力を伝達する側面は、ロータ側から離れるほど回転体の回転方向後方に傾斜していることを特徴とする請求項1又は2に記載の電磁クラッチ。
【請求項4】
前記アマチュア係合部における回転体の回転時にアマチュアと接して駆動力を伝達する側面のロータ側と反対側に溝が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電磁クラッチ。
【請求項5】
前記ロータ及びアマチュアが軟磁性材料を含む部材により形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電磁クラッチ。
【請求項6】
前記ロータ及びアマチュアは、コイルにより磁化されていないときは互いに反発するよう磁化されている部分を備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の電磁クラッチ。
【請求項7】
前記回転体及びアマチュアの少なくとも一方は、アマチュアがコイルにより磁化されていないときは、互いに吸引するよう磁化されている部分を備えていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の電磁クラッチ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の電磁クラッチの駆動軸に、ローラを配置したことを特徴とする搬送ローラ。
【請求項9】
請求項8に記載の搬送ローラを備えた画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−58058(P2009−58058A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−226174(P2007−226174)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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