説明

電磁シールド板及び電磁シールド壁

【課題】隣接する電磁シールド板相互間で、双方の周縁部を溶接しなくても、双方の周縁部を単に当接させるだけで、これらの電磁シールド板により作製した電磁シールド壁が全体として充分な導電性を有するものとなり、したがって充分な電磁シールド効果を有するものになる電磁シールド板及び電磁シールド壁を提供する。
【解決手段】電磁シールド板として、アルミニウム板の周縁部に高導電率材料を固着したものを用いた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電磁シールド板及び電磁シールド壁に関する。例えば磁気シールドルームや磁気シールドボックスを作製するとき、その壁面として、フレームに電磁シールド壁とその外側に密着して磁気シールド壁とを取付け、更に通常は化粧材を取付けたものが使用されている。この場合の電磁シールド壁は、複数の通常は四角形の電磁シールド板を1枚のパネル状に作製したものである。本発明は、かかる電磁シールド板及び電磁シールド壁の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前記のような電磁シールド板として、高導電率材料の板材、通常は数種類の寸法の四角形に成形されたアルミニウム板が使用されている(例えば特許文献1及び2参照)。従来は、かかるアルミニウム板の2枚以上を、隣接するアルミニウム板相互間で双方の周縁部を当接させるか又は溶接した状態としてフレームに取付けることにより前記のような電磁シールド壁としているのである。
【0003】
しかし、前記のように単なるアルミニウム板から成る従来の電磁シールド板には、その周縁部も含めて表面に酸化膜(Al膜)が形成され、この酸化膜に導電性が殆どないため、かかるアルミニウム板の周縁部を隣接するアルミニウム板の相互間で単に当接させただけの状態としてフレームに取付けると、電磁シールド壁全体としての導電性が得られず、結果として電磁シールド効果が低くなるという問題がある。これに対して、アルミニウム板の周縁部を隣接するアルミニウム板の相互間で溶接した状態としてフレームに取付けると、電磁シールド壁全体としての導電性が得られるため、電磁シールド効果が低くなるということはない。ところが、このようにしようとすると、例えば前記のような磁気シールドルームを作製する現場で、電磁シールド板相互の溶接作業に伴う様々な不都合が発生するという問題がある。一般に磁気シールドルームを設置するような場所は、学校、研究機関、病院等であるが、このような場所で、建物から溶接のために電源をとる場合のノイズの発生、別に発電機を使用する場合の騒音の発生、排ガスや臭気の発生等があるのであり、また既に磁気シールド板としてパーマロイが取付けられているような場合にはその磁気シールド効果を損ない易いという問題もあるのである。
【特許文献1】特開平5−183290号公報
【特許文献2】特開2004−356406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、電磁シールド板としてのアルミニウム板の周縁部を隣接するアルミニウム板相互間で溶接しなくても、これらのアルミニウム板で作製した電磁シールド壁が全体として充分な導電性を有し、したがって充分な電磁シールド効果を有するものとなる電磁シールド板及び電磁シールド壁を提供する処にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の課題を解決する本発明は、アルミニウム板の周縁部に高導電率材料が固着されて成ることを特徴とする電磁シールド板に係る。また本発明は、本発明に係る電磁シールド板の2枚以上を、隣接する電磁シールド板相互間で双方の周縁部の高導電率材料を当接させた状態としてフレームに取付けて成る電磁シールド壁に係る。
【0006】
先ず、本発明に係る電磁シールド板について説明する。本発明に係る電磁シールド板は、アルミニウム板の周縁部に高導電率材料が固着されたものから成っている。前記したように、アルミニウム板はその周縁部も含めて表面に酸化膜(Al膜)が形成され、この酸化膜は導電性が殆どないため、かかるアルミニウム板の周縁部を、溶接することなく、単に当接させるだけでは、作製した電磁シールド壁全体としての導電性が得られず、結果として電磁シールド効果が低くなってしまう。しかし、アルミニウム板の周縁部に高導電率材料を固着しておくと、かかるアルミニウム板の周縁部を、溶接することなく、単に当接させるだけで、作製した電磁シールド壁全体としての導電性が得られ、結果として充分な電磁シールド効果が得られる。しかも、このように全体としての導電性が得られる電磁シールド壁の外側に前記したように磁気シールド壁を密着させて磁気シールドルームや磁気シールドボックスを作製すると、外部からの変動磁場により電磁シールド壁に渦電流が生じ、この渦電流は変動磁場を打ち消そうとする磁場を発生させるので、結果として磁気シールドルームや磁気シールドボックスでの磁気シールド効果を一段と高める。
【0007】
本発明に係る電磁シールド板において、アルミニウム板の周縁部には、アルミニウム板の周縁における端面だけではなく、内側面等も含まれる。かかる周縁部には、それがアルミニウム板と同一平面にある場合だけでなく、それがアルミニウム板の平面部から屈曲された場合も含まれる。本発明に係る電磁シールド板では、以上説明したようなアルミニウム板の周縁部に高導電率材料が固着されている。高導電率材料はアルミニウム板の周縁部の全域に亘って固着されている場合だけではなく、アルミニウム板の周縁部の一部に固着されている場合もある。通常、アルミニウム板は平面外観で正方形又は長方形の四角形を呈しているので、このような場合には少なくともその一辺を形成する周縁部に高導電率材料が固着されている。2枚以上の電磁シールド板を用いて前記したように電磁シールド壁を作製するとき、隣接する電磁シールド板の相互間で当接することとなる周縁部には高導電率材料が固着されているのである。
【0008】
本発明に係る電磁シールド板において、アルミニウム板の周縁部に固着する高導電率材料としては、アルミニウムハンダをハンダ付けすることによりメッキ仕上げしたアルミニウムハンダメッキのような高導電率のハンダメッキ、銅や銀のような高導電率の異種金属材料、かかるハンダメッキと異種金属材料の双方等が挙げられるが、なかでもアルミニウムハンダメッキと銅が好ましい。アルミニウムハンダとしては硬質ハンダ、軟質ハンダ、反応ハンダ等が知られており、これらのなかでは反応ハンダが好ましいが、いずれも市販品、例えば日本アルミット株式会社製のものを使用できる。
【0009】
次に、本発明に係る電磁シールド壁について説明する。本発明に係る電磁シールド壁は、以上説明したような本発明に係る電磁シールド板の2枚以上を、隣接する電磁シールド板相互間で双方の周縁部の高導電率材料を当接させた状態としてフレームに取付けて成るものである。隣接する電磁シールド板相互間で、双方の周縁部の高導電率材料を単に当接させるだけでもよいが、隣接する電磁シールド板相互をより強く接合するため、双方の周縁部の高導電率材料に亘り高導電率の当て板、例えば高導電率の異種金属材料を宛てがってボルト止めするのが好ましい。ここで宛てがう高導電率の異種金属材料としては、前記したことと同様、銅が好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る電磁シールド板によると、隣接する電磁シールド板相互間で、双方の周縁部を溶接しなくても、双方の周縁部に固着されている高導電率材料を単に当接させるだけで、これらの電磁シールド板により作製した電磁シールド壁が全体として充分な導電性を有するものとなり、したがって充分な電磁シールド効果を有するものになるという効果がある。
【実施例】
【0011】
図1は本発明に係る電磁シールド板を例示する平面図である。電磁シールド板11は、平面外観が正方形のアルミニウム板31と、アルミニウム板31の2辺(図1では左辺と底辺)を形成する周縁部(図1では周縁の端面)に施されたアルミニウムハンダメッキ41,42とを備えている。
【0012】
図2は本発明に係る電磁シールド壁の作製状態をその使用状態も含めて例示する分解図、図3は図2と同じ電磁シールド壁をその使用状態も含めて示す一部省略の断面図である。図1と同様の4枚の電磁シールド板11〜14を用いて、隣接する電磁シールド板相互間で双方の周縁部のアルミニウムハンダメッキを当接させた状態とし、1枚の電磁シールド壁10を作製している。例えば、電磁シールド板11と電磁シールド板13との関係では、図3に示すように、電磁シールド板11の周縁部のアルミニウムハンダメッキ42と電磁シールド板13の周縁部のアルミニウムハンダメッキ44とを当接させた状態とし、また電磁シールド板11と電磁シールド板12との関係では、後述する図4に示すように、電磁シールド板11の周縁部のアルミニウムハンダメッキ41と電磁シールド板12の周縁部のアルミニウムハンダメッキ43とを当接させた状態としている。図2及び図3では、同様に4枚の磁気シールド板61〜64を用いて、隣接する磁気シールド板相互間で双方の周縁部を当接させた状態とし、1枚の磁気シールド壁60を作製している。そして、電磁シールド壁10の外側に磁気シールド壁60を密着し、更に磁気シールド壁60の外側から当て板71を宛てがって、これらをフレーム72にボルト止めしている。図3の使用状態は、かくして作製される磁気シールドルームの一つの壁面構造を示している。
【0013】
図4は図1と同じ電磁シールド板をその使用状態も含めて示す断面図である。図1と同様の2枚の電磁シールド板11,12を用い、電磁シールド板11の周縁部のアルミニウムハンダメッキ41と電磁シールド板12の周縁部のアルミニウムハンダメッキ43とを当接させている。これらの電磁シールド板11,12の位置関係は、図2の通りである。
【0014】
図5は本発明に係る他の電磁シールド板をその使用状態も含めて例示する断面図である。電磁シールド板15は、平面外観が長方形のアルミニウム板32と、アルミニウム板32の周縁部(図5では周縁の端面)に溶接された銅部45とを備えている。電磁シールド板16も電磁シールド板15と同じ構成になっている。図5では、同様の2枚の電磁シールド板15,16を用い、電磁シールド板15の周縁部の銅部45と電磁シールド板16の周縁部の銅部46とを当接させている。
【0015】
図6は本発明に係る他の電磁シールド板をその使用状態も含めて例示する断面図である。電磁シールド板17は、平面外観が長方形のアルミニウム板33と、アルミニウム板33の周縁部(図6では周縁の下側に位置する内側面)に施されたアルミニウムハンダメッキ47とを備えている。電磁シールド板18も電磁シールド板17と同じ構成になっている。図6では、同様の2枚の電磁シールド板17,18を用い、電磁シールド板17の周縁部のアルミニウムハンダメッキ47と電磁シールド板18の周縁部のアルミニウムハンダメッキ48とを当接させ、双方のアルミニウムハンダメッキ47,48に亘り片面にアルミニウムハンダメッキ82を施したアルミニウム片81を宛てがい、アルミニウムハンダメッキ47,48とアルミニウムハンダメッキ82とを当接させた状態でボルト止めしている。
【0016】
図7は本発明に係る他の電磁シールド板をその使用状態も含めて例示する断面図である。電磁シールド板19は、平面外観が長方形のアルミニウム板34と、アルミニウム板34の周縁部(図7では周縁の下側に位置する内側面)に溶接された銅部49とを備えている。電磁シールド板20も電磁シールド板19と同じ構成になっている。図7では、同様の2枚の電磁シールド板19,20を用い、電磁シールド板19の周縁部の銅部49と電磁シールド板20の周縁部の銅部50とを当接させ、双方の銅部49,50に亘り銅片83を宛てがい、ボルト止めしている。
【0017】
図8は本発明に係る他の電磁シールド板をその使用状態も含めて例示する断面図である。電磁シールド板21は、平面外観が略正方形のアルミニウム板35と、アルミニウム板35の周縁部(図8では平面部から内側の垂直方向へ屈曲された部分の外側面)に溶接された銅部51とを備えている。電磁シールド板22も電磁シールド板21と同じ構成になっている。図8では、同様の2枚の電磁シールド板21,22を用い、電磁シールド板21の周縁部の銅部51と電磁シールド板22の周縁部の銅部52とを当接させ、ボルト止めしている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る電磁シールド板を例示する平面図。
【図2】本発明に係る電磁シールド壁の作製状態をその使用状態も含めて例示する分解図。
【図3】図2と同じ電磁シールド壁をその使用状態も含めて示す一部省略の断面図。
【図4】図1と同じ電磁シールド板をその使用状態も含めて示す断面図。
【図5】本発明に係る他の電磁シールド板をその使用状態も含めて示す断面図。
【図6】本発明に係る他の電磁シールド板をその使用状態も含めて示す断面図。
【図7】本発明に係る他の電磁シールド板をその使用状態も含めて示す断面図。
【図8】本発明に係る他の電磁シールド板をその使用状態も含めて示す断面図。
【符号の説明】
【0019】
10 電磁シールド壁
11〜22 電磁シールド板
31〜35 アルミニウム板
41〜44,47,48,82 アルミニウムハンダメッキ
45,46,49〜52 銅部
60 磁気シールド壁
61〜64 磁気シールド板
71 当て板
81 アルミニウム片
83 銅片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム板の周縁部に高導電率材料が固着されて成ることを特徴とする電磁シールド板。
【請求項2】
アルミニウム板が平面外観で四角形を呈しており、少なくともその一辺を形成する周縁部に高導電率材料が固着された請求項1記載の電磁シールド板。
【請求項3】
アルミニウム板の周縁部が平面部から屈曲された請求項1又は2記載の電磁シールド板。
【請求項4】
高導電率材料が、アルミニウム板の周縁部に施されたアルミニウムハンダメッキである請求項1〜3のいずれか一つの項記載の電磁シールド板。
【請求項5】
高導電率材料が、アルミニウム板の周縁部に接合された高導電率の異種金属材料である請求項1〜3のいずれか一つの項記載の電磁シールド板。
【請求項6】
高導電率の異種金属材料が銅である請求項5記載の電磁シールド板。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一つの項記載の電磁シールド板の2枚以上を、隣接する電磁シールド板相互間で双方の周縁部の高導電率材料を当接させた状態としてフレームに取付けて成る電磁シールド壁。
【請求項8】
隣接する電磁シールド板相互間で双方の周縁部の高導電率材料に亘り高導電率の異種金属材料を宛てがってボルト止めした請求項7記載の電磁シールド壁。
【請求項9】
高導電率の異種金属材料が銅である請求項8記載の電磁シールド壁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−88452(P2009−88452A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−259913(P2007−259913)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【出願人】(591114102)大同プラント工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】