説明

電磁シールド構造

【課題】電磁シールドの接合作業の簡素化を図ると共に接合部分のシールド性能を高める。
【解決手段】電磁シールド構造は、隣接する導電性メッシュ部材11,12の重合部分13を内側方向及び外側方向からそれぞれ挟持する一対の挟持部材14,15を備え、各挟持部材14,15は内側に突出するように屈曲された角部16,17を有し、導電性メッシュ部材11,12の重合部分13を外側の挟持部材15の内側に配設して内側の挟持部材14を導電性メッシュ部材11,12の重合部分13と外側の挟持部材15とに重合して外側の挟持部材15側に押圧すると、内側の挟持部材14の角部16の内角が広がり、内側の挟持部材14と外側の挟持部材15との間の複数箇所で導電性メッシュ部材11,12の重合部分13が挟持されるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、居室の床、壁、天井等から電磁波が漏洩するのを防止するために設置される電磁シールド構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年における高度情報化や医療技術の発展に伴い、居室の外部から床、壁、天井等を介して到来する電磁波を遮蔽し、居室内の電子機器の誤動作を防止するため、電磁シールド構造を採用する建築物が増えている。
【0003】
一般に、この種の電磁シールド構造は、金属板や金属メッシュ材等の電磁シールド部材を電気的に接合して居室の床、壁、天井等を覆うように構成されている。そして、従来の電磁シールド構造では、例えば、図6に示すように、金属板や銅箔から成る電磁シールド部材1の突き合わせ部分を溶接したり、或いは半田付けしたりして隣接する電磁シールド部材1同士を接合していた(例えば、特許文献1又は特許文献2参照)。
【0004】
また、従来の簡易的な電磁シールド構造では、例えば、図7(a)に示すように、金属板2を重ね合わせ、該重ね合わせ部分3に所定ピッチでビス4を打ったり、或いは、図7(b)に示すように、金属板2の重ね合わせ部分3の上から導電性テープ5を貼り付けたりして隣接する電磁シールド部材同士を接合することも行われていた(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−343883号公報の従来技術の記載
【特許文献2】特開平8−107287号公報の従来技術の記載
【特許文献3】特開2003−184203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来の電磁シールド構造のうち、電磁シールド部材を溶接や半田付けによって接合する場合には、熟練した技術と時間を必要とするため、接合作業に掛かる手間やコストが嵩むといった問題があった。
【0007】
一方、上記した従来の電磁シールド構造のうち、所定ピッチでビス打ちを行う場合には、接合作業に時間を要するといった問題があり、また、導電性テープを貼り付ける場合には、時間経過と共にテープが剥離する可能性があり、接合部分のシールド性能を高めることが難しいといった問題があった。
【0008】
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、電磁シールドの接合作業の簡素化を図ると共に、接合部分のシールド性能を高めることのできる電磁シールド構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するため、本発明は、複数の導電性メッシュ部材を電気的に接合して構成される電磁シールド構造であって、隣接する導電性メッシュ部材の重合部分を内側方向及び外側方向からそれぞれ挟持する一対の挟持部材を備え、該各挟持部材は内側に突出するように屈曲された角部を有し、前記導電性メッシュ部材の重合部分を前記外側の挟持部材の内側に配設して前記内側の挟持部材を前記導電性メッシュ部材の重合部分と前記外側の挟持部材とに重合して該外側の挟持部材側に押圧すると、前記内側の挟持部材の角部の内角が広がり、前記内側の挟持部材と前記外側の挟持部材との間の複数箇所で前記導電性メッシュ部材の重合部分が挟持されるように構成されていることを特徴とする。
【0010】
そして、本発明の電磁シールド構造において、前記各挟持部材はいずれも山型鋼により構成され、前記内側の挟持部材の角部の内角が前記外側の挟持部材の角部の内角より小さくなるように形成されているのが好ましい。
【0011】
また、本発明の電磁シールド構造は、前記内側の挟持部材の角部と前記外側の挟持部材の角部とを締結する締結手段を備えているのが好ましい。
【0012】
さらに、本発明の電磁シールド構造において、前記外側の挟持部材は構造体又は内装下地材を兼用していてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、隣接する導電性メッシュ部材の重合部分を内側の挟持部材と外側の挟持部材とで挟持するだけで簡単且つ確実に電気的に接合することができ、導電性メッシュ部材の接合作業に熟練した技術を必要としないため、接合作業に掛かる手間の軽減化及びコストの低減化を図ることができると共に、接合作業に要する時間を短縮することができ、導電性メッシュ部材の接合部分のシールド性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る電磁シールド構造を部分的に破断して示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る電磁シールド構造を床に設置した例を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る電磁シールド構造を床に設置した別の例を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る電磁シールド構造を壁に設置した例を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る電磁シールド構造の変形例を示す断面図である。
【図6】従来例を示す平面図である。
【図7】(a)は別の従来例を示す平面図であり、(b)はさらに別の従来例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
【0016】
図1は本発明の実施の形態に係る電磁シールド構造を部分的に破断して示す斜視図であり、この電磁シールド構造は、複数の導電性メッシュ部材11,12を電気的に接合して構成され、隣接する導電性メッシュ部材11,12の重合部分13を内側方向(図1の上側)及び外側方向(図1の下側)からそれぞれ挟持する一対の挟持部材14,15を備えている。
【0017】
各挟持部材14,15はいずれも、例えば山型鋼により構成されており、内側に突出するように略90°屈曲された角部16,17を備え、内側の挟持部材14の角部16の内角αが外側の挟持部材15の角部17の内角βより僅かに小さくなるように形成されている。また、内側の挟持部材14の角部16と外側の挟持部材15の角部17とを締結する締結手段としてボルト18が設けられており、このボルト18は、従来のビス打ちの一般的なピッチ(シールド対象の電磁波の波長の1/4ピッチ)の数十倍のピッチで配設されている。
【0018】
次に、上記した構成を備えた電磁シールド構造を設置する方法について説明する。
【0019】
図2は本発明の実施の形態に係る電磁シールド構造を床19に設置した例を示す断面図であり、この場合、先ず、床19の上の所定位置に外側の挟持部材15を固定する。そして、導電性メッシュ部材11,12の各外周縁部を外側の挟持部材15上に互いに重ね合わせて配設し、内側の挟持部材14を導電性メッシュ部材11,12の重合部分13と外側の挟持部材15上に重合する。この時、内側の挟持部材14の角部16の内角αが外側の挟持部材15の角部17の内角βより僅かに小さくなるように形成されているため、内側の挟持部材14の角部16と外側の挟持部材15の角部17との間には僅かな隙間が形成される。
【0020】
次いで、内側の挟持部材14の角部16の所定位置にボルト18を螺合して締め付け、内側の挟持部材14の角部16を外側の挟持部材15側に押圧すると、内側の挟持部材14の角部16の内角が広がり、内側の挟持部材14の角部16と外側の挟持部材15の角部17との間の隙間がなくなる。その結果、内側の挟持部材14の両端部20,21が導電性メッシュ部材11,12の重合部分13及び外側の挟持部材15の内面側を押圧し、導電性メッシュ部材11,12の重合部分13は内側の挟持部材14と外側の挟持部材15との間の複数箇所(この場合、内側の挟持部材14の両端部20,21と外側の挟持部材15の内面側との間の2箇所)において所定圧力で挟持される。
【0021】
その後、電磁シールド構造を設置した床19の上にOAフロア22を設置し、床仕上げを行う。なお、この場合、図3に示すように、電磁シールド構造を設置した床19の上にシンダーコンクリート23を打設し、床仕上げを行ってもよい。
【0022】
次に、図4は本発明の実施の形態に係る電磁シールド構造を壁24に設置した例を示す断面図であり、壁24の内面の所定位置に外側の挟持部材15を固定した後、床19に電磁シールド構造を設置する場合と同様に、導電性メッシュ部材11,12の各外周縁部を外側の挟持部材15上に互いに重ね合わせて配設し、内側の挟持部材14を導電性メッシュ部材11,12の重合部分13と外側の挟持部材15上に重合する。なお、図4の例では、左側の接合部分において示すように、柱25の角部26を外側の挟持部材15として利用しているが、このように、柱や梁等の構造体や内装下地材を外側の挟持部材15として利用してもよい。
【0023】
次いで、内側の挟持部材14の角部16の所定位置にボルト18を螺合して締め付け、内側の挟持部材14の角部16を外側の挟持部材15又は柱25側に押圧し、導電性メッシュ部材11,12の重合部分13を内側の挟持部材14と外側の挟持部材15との間の複数箇所(この場合、内側の挟持部材14の両端部20,21と外側の挟持部材15又は柱25の内面側との間のそれぞれ2箇所ずつ)において所定圧力で挟持する。
【0024】
その後、特に図示しないが、内側の挟持部材14に内装下地材を接着又は溶接し、壁仕上げを行う。
【0025】
なお、上記した実施の形態では、内側の挟持部材14及び外側の挟持部材15が山型形状を成しているが、これは単なる例示に過ぎず、本発明は内側の挟持部材14と外側の挟持部材15の形状を限定する趣旨ではない。すなわち、例えば、図5に示すように、内側の挟持部材14を開口側が広げられたコの字状に形成すると共に外側の挟持部材15を矩形状に形成し、内側の挟持部材14をボルト18で締め付けた時に内側の挟持部材14の左右傾斜部分27,28が外側の挟持部材15の左右角部29,30をそれぞれ所定圧力で押圧し、導電性メッシュ部材11,12の重合部分13が内側の挟持部材14と外側の挟持部材15との間の複数箇所(この場合は、内側の挟持部材14の左右傾斜部分27,28と外側の挟持部材15の左右角部29,30との間の2箇所)において所定圧力で挟持されるように構成する等、各種変更が可能である。
【0026】
このように上記した実施の形態に係る電磁シールド構造によれば、隣接する導電性メッシュ部材11,12の重合部分13を内側の挟持部材14と外側の挟持部材15とで挟持してボルト18を締め付けるだけで簡単且つ確実に隣接する導電性メッシュ部材11,12同士を電気的に接合することができる。したがって、導電性メッシュ部材11,12の接合作業に熟練した技術を必要とせず、接合作業に掛かる手間の軽減化及びコストの低減化を図ることができる.
また、ボルト18の締め付けピッチを、従来のビス打ちのピッチの数十倍のピッチに設定することができるため、接合作業に要する時間を短縮することができ、さらにまた、導電性メッシュ部材11,12の接合部分に導電性テープを貼り付ける場合のように時間経過と共にテープが剥離するおそれがないので、接合部分のシールド性能を確実に高めることができる。
【符号の説明】
【0027】
11 導電性メッシュ部材
12 導電性メッシュ部材
13 重合部分
14 内側の挟持部材
15 外側の挟持部材
16 内側の挟持部材の角部
17 外側の挟持部材の角部
18 ボルト(締結手段)
25 柱(構造体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の導電性メッシュ部材を電気的に接合して構成される電磁シールド構造であって、
隣接する導電性メッシュ部材の重合部分を内側方向及び外側方向からそれぞれ挟持する一対の挟持部材を備え、該各挟持部材は内側に突出するように屈曲された角部を有し、前記導電性メッシュ部材の重合部分を前記外側の挟持部材の内側に配設して前記内側の挟持部材を前記導電性メッシュ部材の重合部分と前記外側の挟持部材とに重合して該外側の挟持部材側に押圧すると、前記内側の挟持部材の角部の内角が広がり、前記内側の挟持部材と前記外側の挟持部材との間の複数箇所で前記導電性メッシュ部材の重合部分が挟持されるように構成されていることを特徴とする電磁シールド構造。
【請求項2】
前記各挟持部材はいずれも山型鋼により構成され、前記内側の挟持部材の角部の内角が前記外側の挟持部材の角部の内角より小さくなるように形成されている請求項1に記載の電磁シールド構造。
【請求項3】
前記内側の挟持部材の角部と前記外側の挟持部材の角部とを締結する締結手段を備えている請求項2に記載の電磁シールド構造。
【請求項4】
前記外側の挟持部材は構造体又は内装下地材を兼用している請求項1〜3のいずれか1の請求項に記載の電磁シールド構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−219149(P2010−219149A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−61642(P2009−61642)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【Fターム(参考)】