説明

電磁トラッカにおける歪み低減のためのシステム及び方法

【課題】本発明は、電磁(EM)トラッカにおける歪みの解析及び低減。
【解決手段】EMトラッカは、レシーバ及びトランスミッタとしてコイルを用いることができる。本システム(100)の特定の実施形態は、器具(110)の追跡動作を解析する追跡解析ユニット(120)と、器具(110)の追跡動作を補正する追跡修正ユニット(130)とを含む。このような器具(110)は、例えばドリル、カテーテル、外科用メス又はスコープなどの医療器具である。これらの器具及びその周囲環境は、金属構成要素を含むことが多い。レシーバ又はトランスミッタのようなEMナビゲーション装置を器具(110)上に配置することは、追跡及び追跡精度に影響する歪みを磁場に引き起こす可能性がある。医療用途以外の使用が予測され、また超音波又は慣性位置のようなEM追跡システム以外の追跡システムも予測される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には電磁式追跡システムに関する。具体的には、本発明は、電磁式追跡システムにおいて用具及び他の要素によって引き起こされる歪みを低減するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内科医、外科医及び他の医療専門家などの医師は、医療処置を行う時にイメージガイド手術又は検査などの技術に依存することが多い。追跡システムは、例えば患者又は基準座標系に対する医療器具の位置情報を提供することができる。医師は、医療器具が医師の視線内にない時に追跡システムを参照して医療器具の位置を確認することができる。追跡システムはまた、手術前の計画に役立てることができる。
【0003】
追跡又はナビゲーションシステムにより、医師は患者の生体構造を視覚化し、器具の位置及び方向を追跡することが可能になる。医師は、追跡システムを使用して所望の位置に器具を位置づけた時点を確定することができる。医師は、他の組織を避けながら所望の部位又は負傷部位に位置決めして手術を行うことができる。患者内部に医療器具を配置する際の精度が増大すると、患者への影響が少ないより小型の器具の制御を向上させることが可能になって、低侵襲性の医療処置を行うことができる。より小型のかつより精密な器具の制御及び精度が向上すると、開腹手術などのより侵襲的な処置に付随する危険性を少なくすることもできる。
【0004】
追跡システムはまた、様々な用途で医療器具以外のアイテムの位置を追跡するのにも使用することができる。すなわち追跡システムは、対象物又は環境内での器具の位置を目視検査によって正確に確定することが困難であるようなその他の状況において使用することができる。例えば、追跡技術は、犯罪捜査又は保安用途で使用することができる。小売店は、追跡技術を使用して商品の窃盗を防止することができる。このような場合、受動トランスポンダを商品上に設置することができる。小売店の施設内にトランスミッタを戦略的に設置することができる。トランスミッタは、トランスポンダからの応答を生成するように設計した周波数で励磁信号を送出する。トランスポンダを有する商品がトランスミッタの伝送距離内に位置している時には、トランスポンダは応答信号を生成し、その応答信号がレシーバによって検出される。レシーバは次に、応答信号の特性に基づいてトランスポンダの位置を確定する。
【0005】
追跡システムはまた、バーチャルリアリティシステム又はシミュレータで使用されることが多い。追跡システムは、シミュレーション環境内で人の位置を監視するのに使用することができる。1つ又は複数のトランスポンダを、人又は対象物上に設置することができる。トランスミッタは励磁信号を送出し、トランスポンダは応答信号を生成する。この応答信号は、レシーバによって検出される。次に、トランスポンダによって送出された信号を使用して、シミュレーション環境内の人及び対象物の位置を監視することができる。
【0006】
追跡システムは、例えば超音波、慣性位置又は電磁式追跡システムとすることができる。電磁式追跡システムは、レシーバ及びトランスミッタとしてコイルを使用することができる。典型的には、電磁式追跡システムは、工業規格コイルアーキテクチャ(ISCA)で構成される。ISCAは、3つの同一場所配置の直交準双極子トランスミッタコイルと、3つの同一場所配置の準双極子レシーバコイルとを使用する。他のシステムでは、3つの同一場所配置の準双極子レシーバコイルと共に3つの大型の非双極子の非同一場所配置のトランスミッタコイルを使用することができる。別の追跡システムアーキテクチャでは、間隔をあけて広がった6つ又はそれ以上のトランスミッタコイルのアレイと、1つ又はそれ以上の準双極子レシーバコイルとを使用する。それに代えて、間隔をあけて広がった6つ又はそれ以上のレシーバコイルのアレイと共に、単一の準双極子トランスミッタコイルを使用することができる。
【0007】
ISCAのトラッカアーキテクチャは、3軸の双極子コイルのトランスミッタと、3軸の双極子コイルのレシーバとを使用する。各3軸のトランスミッタ又はレシーバは、3つのコイルが同じ有効面積を示し、互いに直交方向に配向され、かつ同じ中心点に集まるように構成される。コイルがトランスミッタとレシーバとの間の距離に比べて十分に小さい場合には、コイルは双極子動作を示すことができる。3つのトランスミッタコイルによって発生した磁場は、3つのレシーバコイルによって検出することができる。例えば3つのほぼ同心に配置したトランスミッタコイルと3つのほぼ同心に配置したレシーバコイルとを用いて、9つのパラメータ測定値を得ることができる。9つのパラメータ測定値及び1つの既知の位置又は方向パラメータから、位置及び方向の計算により、3つの自由度を持つ3つのレシーバコイルに対するトランスミッタコイルの各々の位置及び方向の情報を確定することができる。
【0008】
多くの医療処置は、ドリル、カテーテル、外科用メス、スコープ、シャント又は他の用具などの医療器具を含む。医療活動に使用される多くの器具は、金属構成要素を含む。さらに、医療器具又は追跡システムを取り巻く環境が、金属を含む場合がある。金属又はそのような他の材料は、電磁式追跡システムの磁場を歪める可能性がある。電磁式追跡システムの歪みは、追跡システムを不正確にする原因となるおそれがある。
【0009】
例えば医師は、繊細なイメージガイド手術を行うために電磁式追跡システムに依存する。直接的な視線がない状態で患者の中に精密器具を誘導する時に、位置測定の精度が重要である。歪みは、位置測定を不正確なものにし、患者に対して潜在的な危険性をもたらす可能性がある。
【特許文献1】米国特許第5847976号
【特許文献2】米国特許第6516213号
【特許文献1】米国特許第6369564号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、不正確な追跡測定値を少なくするシステムが、非常に望ましいことになる。位置測定に対する歪みの影響を最小にするシステムが、非常に望ましいことになる。
【0011】
従って、電磁式追跡システムにおいて用具及び他の要素によって引き起こされる歪みを低減するためのシステム及び方法に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の特定の実施形態は、電磁トラッカにおける歪みの解析及び低減のためのシステム及び方法を提供する。改良型電磁式追跡システムの特定の実施形態は、対象を追跡するトランスミッタ及びレシーバと、対象の歪み特性を解析する歪み処理システムとを含む。トランスミッタは信号を送信し、またレシーバはトランスミッタからの信号を受信する。
【0013】
実施形態では、歪み処理システムは、レシーバによって受信した信号を解析して追跡精度を確定する。歪み処理システムは、追跡に対する歪み特性の影響をシミュレートする仮想電磁トラッカを含むことができる。歪み特性は、磁場とすることができる。歪み処理システムは、対象の追跡動作を調整することができる。
【0014】
歪み処理システムの特定の実施形態は、器具の追跡動作を解析する追跡解析ユニットと、器具の追跡動作を補正する追跡修正ユニットとを含む。追跡修正ユニットは、器具の追跡動作を調整することによって器具の追跡動作を補正することができる。追跡修正ユニットはまた、器具を追跡する追跡システムを調整することによって器具の追跡動作を補正することができる。追跡解析ユニットは、器具の調整した追跡動作をテストすることができる。実施形態では、追跡解析ユニットは、器具の歪み特性のマップ及び/又はモデルを生成する。歪み特性は、磁場とすることができる。実施形態では、歪み処理システムは、コンピュータ・シミュレーション歪み処理システムである。
【0015】
仮想追跡システムの特定の実施形態は、追跡する対象をシミュレートする対象シミュレーションモジュールと、対象の少なくとも1つの歪み特性を解析するシミュレーションツールセットとを含む。シミュレーションツールセットは、歪み特性に基づいて対象の歪み情報を生成することができる。実施形態では、シミュレーションツールセットは、対象のシミュレーション追跡の精度を確定する精度モジュールを含む。シミュレーションツールセットは、追跡精度に対する対象による歪みの影響を確定する歪み検出モジュールを含むことができる。シミュレーションツールセットはまた、トラッカ環境に対する対象の歪みの影響を評価するための電磁モデルを生成する歪みモデル化モジュールを含むことができる。さらに、シミュレーションツールセットは、電磁トラッカの歪み耐性を向上させる歪み補正モジュールを含むことができる。
【0016】
電磁式追跡システムにおける歪み解析のための方法の特定の実施形態は、対象の追跡動作を測定するステップと、対象の追跡動作を解析して歪みの影響を確定するステップとを含む。解析するステップはさらに、対象の追跡動作を解析して歪みの影響を確定するための該対象の磁場マップ及び/又はモデルを生成するステップを含むことができる。本方法はまた、対象の追跡をシミュレートして歪みの影響を確定するステップを含むことができる。さらに、本方法は、歪みの影響を解析するために電磁式追跡環境内の電磁場をモデル化するステップを含むことができる。本方法はまた、歪みの影響に基づいて電磁式追跡システムの歪み耐性を向上させるステップを含むことができる。
【0017】
実施形態では、本方法は、器具の追跡動作を調整して歪みの影響を低減するステップを含む。本方法はさらに、器具をテストして歪みの影響の低減を確認するステップを含むことができる。実施形態では、本方法は、電磁トラッカを調整して歪みの影響を補正するステップを含む。本方法はさらに、電磁トラッカをテストして歪みの影響の低減を確認するステップを含むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
前述の概要並びに本発明の特定の実施形態についての以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読む時に一層よく理解されるであろう。本発明を例示する目的で、特定の実施形態を図面に示している。しかしながら、本発明は添付の図面に示した構成及び手段に限定されないことを理解されたい。
【0019】
単に例示の目的で、以下の詳細な説明は、イメージガイド手術システムで使用する電磁式追跡システムの実施形態について述べる。本発明は、他のイメージングシステム及び他の用途で使用することができることを理解されたい。
【0020】
図1は、本発明の実施形態による、使用する電磁(EM)トラッカの位置測定精度を向上させるのに使用する歪み処理システム100を示す。システム100は、器具110と、追跡解析ユニット120と、追跡修正ユニット130とを含む。追跡解析ユニット120は、器具110の追跡動作を監視する。追跡修正ユニット130は、追跡解析ユニット120からの情報に基づいて、器具110の追跡動作を改善又は補正しようとする。追跡解析ユニット120及び追跡修正ユニット130は、別個のユニット又は単一のユニットとしてハードウェア及び/又はソフトウェアに実装することができる。追跡解析ユニット120及び/又は追跡修正ユニット130は、EMトラッカと一体化することができ、或いは別個のシステムとすることができる。
【0021】
器具110は、整形外科用用具(例えば、電気又は空気ドリル)、カテーテル、外科用メス、スコープ又は他の用具などの、医療活動で使用するあらゆる器具とすることができる。器具110は、EMトラッカの測定値に歪みを引き起こす磁場を生成するか又は磁場に影響を与える可能性がある。器具110上にレシーバ又はトランスミッタなどのEMナビゲーション装置を配置することは、追跡に対して歪み及び/又は歪みの影響を与える可能性がある。
【0022】
追跡解析ユニット120は、追跡動作及び器具110の影響を解析する。追跡解析ユニット120は、器具110の実際の及び/又はシミュレートしたEM追跡を行って、位置及び/又は方向の計算に対する器具110による歪みの影響を確定する。追跡解析ユニット120は、追跡システムにおいて器具110による影響をシミュレートするコンピュータとすることができる。器具110上に配置したレシーバ、トランスミッタ及び/又は他のセンサを使用して、器具110に関する情報を収集することができる。追跡解析ユニット120は、器具110の磁場データを取得する。追跡解析ユニット120は、追跡座標系における器具110の位置及び方向データを生成する。器具110の追跡に対する他の影響は、追跡解析ユニット120によって測定及び/又はシミュレートすることができる。追跡解析ユニット120はまた、器具110の周りの場及び歪みの影響に関するマップ及び/又はモデルを生成することができる。
【0023】
追跡修正ユニット130は、器具110の追跡動作を調整又は補正をする。追跡修正ユニット130は、追跡解析ユニット120からのマップ、モデル及び/又は他のデータを使用して器具110による歪みの影響を最小にする。追跡修正ユニット130は、器具110について異なるレシーバ及び/又はトランスミッタ構成をテストして器具110の追跡動作を向上させることができる。追跡修正ユニット130は、器具110による歪みの影響を相殺するようにEMトラッカを修正、再較正又は再プログラミングすることができる。
【0024】
器具110の追跡動作は、様々な方法で調整又は補正することができる。例えば、器具110及び/又はシステム100の構成要素の数理モデルを開発して歪みを補正することができる。例えば、磁場モデルを開発して、器具110を追跡する際の誤差を小さくするように補正することができる。それに代えて、追跡測定後に器具110の歪みのリングモデルを使用するなどして、歪みをモデル化し、誤差を補正することができる。さらに、器具110又は別のシステム100の構成要素をシールドして、追跡測定の前又は後に補正することができる既知の歪みを作り出すことができる。EMトラッカは較正することができ、また/或いは器具110のトランスミッタ又はレシーバの位置は、追跡時の歪みを補正又は低減するように調整することができる。
【0025】
別の実施形態では、例えば器具上の3コイルのトランスミッタ又はレシーバに隣接するような、器具110に隣接する歪み発生体は、該歪み発生体を含む器具110の特性を明らかにすることによって補正することができる。それに代えて、トランスミッタの特性を正確に明らかにするよりも、例えば1コイルのトランスミッタ及びレシーバアレイを用いて、トランスミッタの利得を追跡することが可能になる。利得を追跡することは、器具110の追跡における歪みの影響を低減するのに役立つ。
【0026】
実施形態では、EMトラッカは、信号を送信するトランスミッタと、トランスミッタからの信号を受信するレシーバと、レシーバによって受信した信号を解析するトラッカ・エレクトロニクスとを含む。トラッカ・エレクトロニクスは、ソフトウェアで構成することができる。トラッカ・エレクトロニクスは、レシーバ及び/又はトランスミッタからの情報に基づいて、追跡座標系における器具110の位置及び/又は方向を確定する。実施形態では、レシーバは、器具110上に配置されて、トランスミッタに関連させて器具110の位置及び/方向を確定する。別の実施形態では、トランスミッタは、器具110上に設置されて、レシーバに関連させて器具110の位置及び/又は方向を確定することができる。EMトラッカで使用するEMナビゲーション装置は、例えば有線及び/又は無線装置(無線トランスミッタなどの)とすることができる。EMトラッカの構成は、歪み処理システム100からの情報を使用して器具及び操作環境による歪みの影響を補正するように調整することができる。
【0027】
操作では、器具110は、EMトラッカ又は他のEMナビゲーション装置を使用して追跡される。物理的なEMトラッカで器具110を追跡することができ、又は仮想追跡システムで器具110のシミュレーションを追跡することができる。追跡解析ユニット120は、器具110の追跡に関連して、場、位置及び方向データなどのパラメータを測定する。追跡解析ユニット120は、器具110の歪みモデル及び/又は場マップを生成する。次に、追跡修正ユニット130が、追跡解析ユニット120からのモデル及び/又はマップ並びに付加的なデータを使用して、器具110による歪みの影響を最小にする。追跡修正ユニット130は、器具110について様々なレシーバ構成及び/又は配置をテストしてEMトラッカの歪みを最小にすることができる。例えば、ドリル上の特定の箇所にレシーバアセンブリを配置することにより、ドリルによる場によって引き起こされた歪みの影響を最小にすることができる。追跡修正ユニット130はまた、器具110による歪みの影響を考慮するようにEMトラッカを再構成又は再較正することができる。例えば、EMトラッカは、追跡するドリルによって引き起こされる特定の歪みを前もって処理するようにプログラムすることができる。さらに、追跡修正ユニット130は、患者位置決め表面、ライト及び/又は部屋構造における金属等の環境による歪みの影響を無視するようにEMトラッカをプログラムすることができる。追跡解析ユニット120は次に、EMトラッカの器具110をテストして位置精度を確認することができる。テストが満足なものであった場合には、医師は、器具110を使用してEMトラッカで追跡することができる。
【0028】
図2は、本発明の実施形態による、使用する電磁式追跡システムの歪み処理のための方法200のフロー図を示す。まずステップ210で、器具110を捕捉する。実施形態では、器具110は、物理的又は仮想的に(例えば、イメージ又は電子的表示で)捕捉することができる。
【0029】
次に、ステップ220で、器具110の追跡動作を測定する。例えば、器具110が物理的に捕捉された場合には、磁場、位置、方向及び/又は他のデータを測定する。器具が仮想的に表示されている場合には、器具110の影響は、例えばコンピュータ又は仮想トラッカ上でシミュレートすることができる。電磁式追跡中の器具110の歪み及び/又は他の特性は、監視及び/又はシミュレートすることができる。器具110の周りの磁場及び歪みの影響を解析するために、マップ及び/又はモデルを生成することができる。
【0030】
次に、ステップ230では、器具110による歪みの影響を低減又は補正するように器具110又はトラッカの追跡動作を調整する。器具110の追跡における誤差が解析される。様々な器具110及びレシーバアセンブリの構成をテストして、どの構成が歪みの影響及び他の誤差を最小にするか判定することができる。トラッカの較正又は構成をテストして、どの構成が歪み及び他の誤差を最も補正するかを判定することができる。
【0031】
さらに、器具110又はトラッカを調整した後に残る残余誤差を解析することができる。残余誤差を解析して、残余誤差が一定の閾値以下であるか否かを判定することができる。例えば、残余誤差が十分に小さい場合には、残余誤差は無視することができる。その上に、残余誤差の安定性を解析する。残余誤差を解析して、残余誤差が例えば所与のノイズ及び他の要素の一定の閾値より確実に下回っているか否かを判定することができる。実施形態では、残余誤差が一定の閾値を確実に下回っていない場合には、残余誤差を低減するように、器具110又はトラッカをさらに調整する。
【0032】
次に、ステップ240では、調整した器具110及び/又はトラッカをテストして追跡精度を確認する。実施形態では、上述のステップ220の間に生成したマップ及び/又はモデルを使用して位置の測定値を再取得する。器具110の追跡データが一定の基準又は改善レベルを満たしている場合には、器具110は、電磁トラッカと共に使用することができる。
【0033】
多くの方法を使用して器具110の電磁動作を評価することができる。図3は、本発明の実施形態による、器具110の電磁評価のための方法300のフロー図を示す。まずステップ310で、テストする器具110に関して最適のレシーバアセンブリの配置を推定するために予備テストを行うことができる。次にステップ320では、精度の検討を通して動作範囲の値にわたって、レシーバの配置を評価する。次にステップ330では、ワークフローの課題に対処するためにワークフローテストを実行する。ワークフローテストは、細部の様々なレベルで実行して器具110と外科的ワークフローとの相互作用を確定することができる。方法300のステップに示している例について、以下にさらに説明する。
【0034】
例えば、検討中の器具110に関して最適なEMレシーバパックの配置を推定するために、ホワイトボード又はロボットベースの予備テストを使用する。レシーバ配置の適合性の解析は、例えば器具110の位置に対する追跡システムの適合度データを解析することにより行うことができる。さらに、反復測定にわたる位置及び方向データの安定性の解析は、固定EMレシーバ及びトランスミッタ位置に対して行うことができる。
【0035】
EMレシーバパックの配置は、ロボット及びマニュアル模型精度解析により評価することができる。EMレシーバパックは、テスト及び/又はロボット評価用取付具の下方で器具110に取付けることができる。ロボット及び/又はマニュアル模型を使用して、所与の先端オフセット長に関してEMトラッカの動作範囲にわたり関連する誤差を評価することができる。例えば、誤差の最大値、根二乗平均(rms)値、標準値及びヒストグラムを複数の測定値に関して解析することができる。さらに、許容精度の動作範囲を取得することができる。また器具110上の作動モータの動作の影響もまた、解析することができる。さらに、器具110の金属による歪みに起因する位置誤差を検出する電磁場積分検出器(FID)の能力を解析することができる。
【0036】
電磁トラッカ及び歪み処理システム100のワークフローの観点に対処するために、様々なワークフローテストを使用することができる。移動範囲及び患者環境の影響は、範囲外位置及びFID警告に基づいて測定される。実施形態では、器具110は、大まかな近似によって表される。例えば、手術用ドリルは、噴射ガンで表される。ドリルガイドは、例えばレシーバパックを適当な位置にテープで貼り付けた木製のダウエルで表すことができる。大まかな近似を使用するテストは、様々な用途のために器具と外科的ワークフローとの相互作用の初期表示を提供することを意図している。
【0037】
別の実施形態では、テストは、器具110のより緊密な近似で行われる。追跡及びFID誤差を特定するために、適切な材料を使用する。テストは、例えば手術室及び骨折手術台の代わりとして木製テストテーブル上にボルト止めしたステンレス鋼シート及び/又はバーを使用することによって患者環境をシミュレートすることができる。
【0038】
別の実施形態では、臨床テストでの器具110を厳密に模倣するためにプロトタイプの用具を使用することができる。試作器具モデルは、例えば病院の手術室などの患者環境で死体又は被験者に使用することができる。追跡及びFID誤差は、テストを使用して特定することができる。
【0039】
さらに、シミュレーションツールセットを使用して、EMトラッカシステムを開発しかつテストすることができる。シミュレーションツールセットは、例えば異なるコイルアーキテクチャの追跡性能、金属耐性及び/又は歪み検出を調査することができる。ツールセットは、器具110の機能及び/又は器具110の用途を開発しかつテストするように調整することができる。
【0040】
シミュレーションツールは、歪みのないトラッカの精度限界を調べるために使用することができる。シミュレーションツールセットを備えた仮想トラッカ(VT)は、信号対雑音比、組立誤差、較正誤差及び他の要因による精度限界を調べるための制御システムを提供する。トラッカシステム精度に対する個々の及び/又は複合的な影響について、個々のトラッカパラメータを検討することもできる。
【0041】
シミュレーションツールはまた、歪みのモデル化に使用することができる。実施形態では、VTは物理的環境の電磁モデル化を含む。このモデルを使用して、トラッカの動作ボリューム内又はその付近での対象の歪みの影響を解析することができる。歪みを発生する対象には、例えば手術用具、部屋の構造(例えば、鉄筋の床及び/又は鉛製の壁)及び手術室のテーブル又はライトを含むことができる。まず、対象の歪み特性を所与のコイルアーキテクチャに関して評価する。実施形態では、補正技術なしで歪み特性を評価する。VTを使用して、一定の歪み(例えば、追跡する手術器具の)及び偶発的な歪み(例えば、テーブル又はクランプの)を含む金属による歪みに対する耐性が向上したセンサアーキテクチャを導き出す。
【0042】
VTはまた、歪み補正の又は歪み耐性の追跡を改善するために使用することができる。歪みモデル化データを使用して、EM追跡システムの歪み耐性を促進することができる。例えば、受動的及び/又は能動的シールド技術により、センサを歪みを生じる用具と一体化することができる。位置及び方向(P&O)マッピング又はEM場マッピングなどの歪みマッピング技術は、例えば測定データ、シミュレーションデータ、又はデータの組合せに基づくことができる。測定データ及び/又はシミュレートデータから縮小した自由度(DOF)のパラメータ化モデル(例えば、複数の双極子モデル)を抽出することにより、歪み耐性又は補正を改善することができる。実施形態では、多センサ「マッピングチャンバ」及び/又はロボットデータ収集を使用して、歪みデータをマップ化することができる。
【0043】
さらに、歪み検出を改善することができる。FIDアルゴリズムを改良することができる。例えば、個々の位置センサのFID、複数センサにより情報を収集しかつ解析する方法、FIDアルゴリズムの脆弱性を明らかにする方法、及びモデル適合化処理法を改善することができる。
【0044】
図4は、本発明の実施形態による、使用するEMトラッカの開発のための仮想トラッカ(VT)400を示す。VT400は、対象シミュレーションモジュール410とシミュレーションツールセット420とを含む。VT400は、例えば汎用コンピュータ或いは専用プロセッサ又は回路にソフトウェアとして実装することができる。VT400は、上述の歪み処理システム110と一体化することができる。
【0045】
対象シミュレーションモジュール410は、追跡する対象すなわち器具110をシミュレートする。対象シミュレーションモジュール410によって、器具110のデータ特性が生成される。シミュレーションツールセット420は、対象シミュレーションモジュール410からのシミュレーションデータを使用して、仮想追跡システム内で器具110の特性及び追跡動作を解析する。実施形態では、シミュレーションツールセット420は、精度モジュール430と、歪み検出モジュール440と、歪みモデル化モジュール450と、歪み補正モジュール460とを含む。
【0046】
精度モジュール430は、器具110又は該器具110の仮想表示を解析してシミュレートしたEMトラッカの精度及びEMトラッカの精度に対する器具110の影響を確定する。精度モジュール430は、信号対雑音比、器具110の組立誤差及び較正誤差などの誤差、並びに他の要因を調べてトラッカ測定精度に対する個々の及び/又は複合的な影響を確定する。
【0047】
歪み検出モジュール440は、追跡精度に対する歪みの影響を確定する。歪み検出モジュール440は、場積分検出(FID)、歪み及び器具モデル並びにセンサ情報を利用して、器具110による歪み場を確定する。歪み検出モジュール440からの歪み情報を使用して、追跡精度を向上させるようにトラッカ及びトラッカソフトウェアを調整することができる。
【0048】
歪みモデル化モジュール450は、EMトラッカ環境の電磁モデルを生成する。このモデルは、トラッカの動作ボリューム内又はその付近での対象の歪みの影響を評価するために使用される。歪みモデル化モジュール450は、器具110及びその中でトラッカが動作している環境(壁、床、患者テーブル、その他)などの様々な対象から歪み場をモデル化することができる。歪みモデル化モジュール450からの情報を使用して、器具110の構成を修正しまた/或いは一定の及び/又は偶発的な金属による歪みに対する耐性を向上させたトラッカのセンサアーキテクチャを開発することができる。
【0049】
歪み補正モジュール460は、EMトラッカ及び関連するシステムの歪み耐性を向上させるために使用される。歪み補正モジュール460を使用して、例えばセンサのシールド技術(例えば、受動的及び/又は能動的)、歪みマッピング技術、パラメータ化対象モデルの抽出、及び/又は場マッピングの作用をシミュレートすることができる。シミュレートした結果及びデータを使用して、EMトラッカをプログラムし、また/或いはEMトラッカの歪み耐性を向上させることができる。
【0050】
特定の実施形態では、VT400を使用して偶発的な歪み発生体に対して強い追跡システムを実現するのを助けることができる。VT400からの情報は、センサの手術用具との密接な又は人間工学的な一体化を可能にするのを助けることができる。VT400からの情報は、器具、器具ガイド及び追跡システムを構成しかつ較正するのを助けることができる。VT400のモジュールは、対象の不正確な追跡を引き起こす状態の確実な検出を行うのを助ける。VT400の特定の実施形態はまた、SNRを制限した追跡精度(例えば、システム誤差の低減)で動作する追跡システムを可能にすることができる。
【0051】
本発明の特定の実施形態による歪みの検出、補正及び耐性のために、様々なシステム、方法及び対象を使用することができる。幾つかの例を、例示の目的で以下に説明する。
【0052】
実施形態では、歪み発生対象(歪み発生体)がEMトランスミッタに対して取付けられている場合には、歪み発生体からの歪みは様々な方法を用いてマップ化することができる。トランスミッタの各トランスミッタコイルに関しては、歪み発生体を囲む境界面で磁場の垂直成分を測定することができる。歪みのない場の値を測定値から差し引いて、境界での歪み発生体の場を確定することができる。実施形態では、ラプラスの方程式及び有限要素解析を用いて境界の外側の歪み発生体の場を計算する。別の実施形態では、境界内部の例えば様々な位置、方向及び/又は強度の双極子のアレイとして歪み発生体をモデル化する。境界での場に適合するように双極子の位置、方向及び/又は強度を調整する。次に、歪み発生体の双極子アレイにトランスミッタ双極子を追加する。これら双極子は、測定した境界の外側のトランスミッタ及び歪み発生体の解析モデルを形成する。このモデルを使用して、境界の外側のいずれかの点において磁場、場の二乗振幅及び場の勾配を計算することができる。
【0053】
トランスミッタコイル場振幅に関しては、3つのトランスミッタコイル場の二乗振幅から、例えば8つの関数のセットを計算することができる。例えば、1つの関数は、x、y及びzの成分符号の各組合せに対して確定することができる。例えば、テーブル索引補間及び/又はラーブの信号マトリクス符号関数を使用して関数を確定することができる。実施形態では、歪みがない場合には、8つの関数は等しい。関数を逆にすることにより、歪みマッピングを作る出すことができる。さらに、関数を回転させて所望のマッピングを作り出すことができる。場及び勾配モジュールを使用して、歪みの最小二乗最適解を計算することができる。
【0054】
それに代えて、歪み発生体の場から信号マトリクスを測定することができる。次に、トランスミッタコイルの場振幅を計算する。歪みのないトランスミッタコイルの近似位置を(例えば、ラーブのアルゴリズムを使用して)確定する。トランスミッタコイルの符号を選択して、解の候補を選択する。解が軸に近い場合には、マトリクス関数を軸から離れるように回転させることができる。解を取得することができる。符号を選択する。次に、マトリクスを回転させて元の位置に戻す。解は、ほとんど歪みのない解を示す。次に、計算した歪みのないトランスミッタ双極子を使用して、最小二乗最適解を計算する。この解は、歪み誤差を含んでいる。歪みを含む場及び勾配モデルを使用して、第2の最小二乗最適解を計算する。歪みのある最小二乗適合を反復することにより、二次効果により結果を改善することができる。
【0055】
実施形態では、ISCA歪みマッピング処理を使用して、双極子のアレイとして歪み発生体をモデル化することができる。トランスミッタからの双極子場によって、歪み発生双極子を励磁する。歪み発生体双極子の利得は、歪み発生体双極子の位置での歪みのないトランスミッタ場に対する歪み発生体双極子のモーメントの比率である。歪み発生体双極子は、トランスミッタ場と対向する方向に位置する。しかしながら、歪み発生体双極子は、トランスミッタ場と平行ではない可能性がある。従って、歪み発生体の応答が歪みのないトランスミッタ場のx、y及びz方向の成分に関して異なることになるので、歪み発生体の利得は、例えばマトリクス又はテンソルとすることができる。実施形態では、利得マトリクス又はテンソルは、トランスミッタ場から独立している。トランスミッタが移動した場合に、歪み利得は同じ状態を維持する。歪み場は、歪み発生体の位置でのトランスミッタ場の新しい値を使用して再計算することができる。従って、歪み補正は、幾つかのパラメータによって整調可能であって、移動したトランスミッタに合わせて修正することができる。
【0056】
例えば、レシーバは、創面切除具ブレード上に取付けることができる。ブレードは、無制御ロール角で創面切除具ハウジング内で軸上に取付けられる。ハウジングは、歪みを引き起こす。ハウジングは非対称であり、そのため歪みは、レシーバに対するハウジングのロールと共に変化する。マップのロール値のような追跡時間調整可能なパラメータを有する歪みマップは、創面切除具ハウジングによる歪みを調整することができる。付加的なデータポイントを収集することにより、トランスミッタ又はレシーバのいずれか或いは他の場所に固定された歪み発生体に適応するようにマップのロール値を計算することが可能になる。1つよりも多い歪み発生体が存在する場合には、反復解析により互いの歪み発生体の影響に対処することができる。すなわち、例えばトランスミッタによる場及び別の歪み発生体による場によって、各歪み発生体に影響を与えることができる。
【0057】
実施形態では、歪み処理システム100で導電リングの歪みをモデル化することができる。リングの位置及び方向は、トランスミッタに対して確定される。リングの形状もまた、確定される。導体の断面は、リングの大きさに比べて小さい。従って、導体は、リングとトランスミッタコイルとの間の相互インダクタンスを計算すると、極微量なものとして処理することができる。さらに、導体の自己インダクタンスは、リングの自己インダクタンスを計算すると、無視することができる。この時、リングの自己インダクタンスは、リングの形状から計算することができる。リングとトランスミッタコイルとの間の相互インダクタンスは、例えばファインマンの相互インダクタンス二重積分により計算することができる。トランスミッタコイルのトランスミッタモデルを使用して、特定の位置(x、y、z)についてコイル電流当たりの磁場をアンペア当たりのテスラで確定することができる。次に、電流値及び電流値当たりの場から、歪み発生体リングの場モデルを計算することができる。
【0058】
実施形態では、磁場の歪みマッピングのために、多数の小さならせんコイルを含むトランスミッタコイルボードを使用することができる。ボード内のコイルは、駆動ボードによって1つずつ駆動される。実施形態では、1つの周波数により、コイルボード上の時分割コイルを駆動する。ボードの部品面は、ボリュームの内部の方を向いている。ボードのはんだ面は、ボリュームの外側に向いている。テスト用装置をボリュームの内部に配置する。ボードの部品面は、テスト用装置によりボードのはんだ面を静電気的にシールドし、駆動電流のリターンパスを形成する。
【0059】
ボード上の各コイルは、スイッチに接続する。コイル及び対応するスイッチは直列に接続する。非選択のコイルは、交流接地している。選択したコイルの電流は、電流測定装置に流れる。スイッチは、例えば光結合素子、ダイオード又は一連のダイオード、及び/或いはトランジスタとすることができる。部品面上のYラインは、交流源によって駆動される。各Yラインは、部品面上の接地トラックによって静電気的にシールドされる。Xラインは、部品面上に位置し、交流接地又は仮想接地している。Xラインは、電流測定装置に接続する。コイルは、X及びYラインの交差点においてスイッチと直列に接続する。実施形態では、ボードは、複数のX及びYラインの交差点において直列に接続された複数のコイル及びスイッチを含む。コイルボード又は駆動ボードは、コイルに電力を供給する時分割ロジックを含むことができる。時分割コイル及び電流測定装置を使用してテスト用装置の周りの磁場の歪みマッピングを作成する。
【0060】
実施形態では、蛍光透視イメージングシステムは、蛍光カメラ較正具に取付けた一対のISCAレシーバを使用する。蛍光カメラ較正具は、例えば画像増強管に取付けることができる。画像増強管は様々な金属を含み、電磁トラッカからの磁場を歪ませる。歪みをマップ化してトラッカ補正テーブルを作成するためにロボットシステムを使用することができる。次にこのテーブルを使用して、歪みによる追跡誤差を補正することができる。同じモデルの異なる画像増強管は、わずかに異なる磁場の歪みを示す。従って、各増強管は、異なる歪み補正テーブルを採用することができる。
【0061】
カメラ較正具には、歪み発生缶を使用することができる。実施形態では、この缶は、銅、銀又はアルミニウムなどの高導電性金属の単一片を含む。缶は画像増強管を可能な限り囲み、機械的制約条件と一致させ、かつ画像増強管の前面にX線透過領域を作る。缶はまた、トラッカの磁場を歪ませる。従って、缶による歪みをマップ化し、缶による歪みは、作成したトラッカ補正テーブルを使用して補正する。実施形態では、缶の金属厚さは、金属の表皮厚さよりも大きく、磁場は金属及び金属の後方のボリュームを感知できるほどは貫通しないようになる。缶は、磁場の大部分を画像増強管からシールドして、増強管の場がほとんど歪まないようにする。従って、缶を使用することにより、画像増強管を取り換えることが、場の歪みに対して感知できるほどの影響を与えない。所与のモデルの全ての画像増強管に対して、1つの歪み補正テーブルを使用することができる。別の実施形態では、異なるモデルの画像増強管に対して、1つの歪み補正テーブルを使用することができる。
【0062】
さらに、蛍光透視又は他のX線システムは、X線散乱フィルタを含むことができる。実施形態では、X線散乱フィルタは、鉛とプラスチック又はアルミニウムなどのX線透過材料とが交互になった層を含む。電気を導き、従って磁場を遮断するX線開口部を設けることができる。フィルタは、蛍光透視装置の画像増強管を覆う導電性シースのX線開口部を塞ぐことができる。シースは、トラッカの磁場を画像増強管から離れた状態に保ち、画像増強管の交換がトラッカに対して最小の影響を及ぼすようにする。
【0063】
実施形態では、蛍光透視システムのレシーバに近接させて受動導電性リングを配置することができる。受動リングは、ISCAトランスミッタに対して例えば非対称に配置することができる。受動導電性リングは、大型の巻線コイルなしでトラッカシステムの半球領域を明確にする。それに代えて、ISCAトランスミッタに近接する一端部に強磁性ロッドを配置して、半球領域を明確にすることができる。さらに、その相互性によって、リング又はロッドをトランスミッタの代わりにレシーバに近接させて配置して半球領域を明確にすることができる。
【0064】
実施形態では、システム100のトランスミッタに対して固定した歪み発生体のシードを計算できるように、既存のISCAシードルーチンをマップ化することができる。例えば、各トランスミッタコイルに対する3つのレシーバコイルの相互インダクタンスの合計の2乗から、位置成分の二乗(x、y、z)を計算する。実施形態では、インダクタンスの二乗は、レシーバの方向とは無関係である。歪み発生体がトランスミッタに対して固定されている場合、歪み発生体の解析的双極子解の代わりとするためにマップを計算することができる。歪み発生体に関して、インダクタンスの二乗はやはりレシーバの方向とは無関係である。さらに、相互性によって、レシーバ及びトランスミッタを交換して、レシーバに対して固定された歪み発生体に関して位置及び方向情報を確定することが可能になる。
【0065】
実施形態では、磁場マッピングデータを確定した後に、幾つかのデータ整理方法を使用することができる。例えば、場マップの境界点でラプラスの方程式及び有限要素法を使用することができる。内点を使用して、精度を確認することができる。次に、幾つかの形態で、歪み発生体モデルを表現することができる。このモデルは、例えば内挿法、関数適合度、及び/又はパラメータ化した基底関数和を備えたルックアップテーブルとすることができる。基底関数は、数学的利便性及び/又は電磁適合性に関して選択することができる。例えば、基底関数は、パラメータ化した大きさの歪みリング、ロッド及び/又はシートによる場に関して作成することができる。歪み発生体モデルは、計算上便利な関数に関して表現することができる。他の基底関数には、例えば様々な長さ及び配向の双極子と、グリーン関数とを含むことができる。実施形態では、電磁的可感基底により、ラプラスの方程式を満たす解をもたらすパラメータ値が得られる。さらに、比較的少ないパラメータを有する「優良」モデルを作り出す。モデルからマップ群を作り出すことができる。マップ群により、少ないデータポイントの歪みマッピングを行うことができる。
【0066】
実施形態では、小型の導電性ループの歪み発生体に対して、単一の双極子モデルを作り出すことができる。歪み発生体は、電磁トランスミッタに対して固定されている。この歪み発生体は、完全導体であると仮定する。トランスミッタによる場は、ループを通る磁束を形成する。ループは、該ループを通る全磁束を強制的にゼロにする渦電流を含む。渦電流の測定から、ループによる歪み場を計算することができる。大型のループに関しては、歪み場は、積分を使って計算することができる。小型のループに関しては、ループは双極子によって概算することができ、渦電流による場を確定することができる。例えば、ループの面積、ループ内の渦電流、及びループを通る磁束を用いて、該ループによる歪み場を確定することができる。実施形態では、歪み場がトランスミッタの電流の変化を引き起こす可能性があるが、この変化は、トラッカ・エレクトロニクスによって測定されかつ補正される。
【0067】
別の実施形態では、小型の導電性対象歪み発生体に対して、単一の双極子モデルを作り出すことができる。歪み発生体は、電磁トランスミッタに対して固定されている。この歪み発生体は、完全導体であって、歪み発生体の内部に磁束を発生させないと仮定する。対象歪み発生体の歪み場は、入射トランスミッタ場に対して垂直な平面内に対象の大型の断面を特定することによって、概算することができる。この断面を使用して、小型の導電性ループの歪み発生体に関して上述したように、歪み発生場を計算することができる。実施形態では、歪み発生体有効面積は、異なる方向の入射トランスミッタ場に対して異なる。
【0068】
別の実施形態では、トランスミッタに近接した小型の無限透過性非導電性フェライト対象を解析することができる。対象は、トランスミッタに対して固定されていることが好ましい。対象は、該対象の内部への入射磁束を例えば2倍又は3倍にする。この対象の歪み場は、小型の導電性対象歪み発生体に関して上述したように概算することができる。次に、歪み場を−2、−3などの磁束係数と乗算して、対象の内部への磁束を算定することができる。
【0069】
歪み処理システム100において及び/又はVT400を用いて、様々な器具をテストして、追跡システムに対する歪みの影響を確定し、その歪みの影響に基づいて追跡システムを較正することができる。例えば、空気又は電気ドリルを試験して、追跡システムの位置及び方向精度に対するドリルの影響を確定することができる。さらに、歪み処理システム100を使用して、EMレシーバとドリルとの間の適切な取付け距離を推定することができる。適切なレシーバ取付け距離により、ドリルなどの器具110の追跡を改善することができる。FIDの使用により、ドリルなどの器具110による磁場歪みに起因する誤った追跡の検出を改善することができる。
【0070】
ドリルを試験するために、センサをトランスミッタから取り外し、追跡座標系のX軸に平行に配置する。トランスミッタ及びレシーバパックをボードに取付ける。ドリルがない状態で位置及び方向データを収集して、較正又は基準データを取得する。次に、レシーバパックから複数の距離にドリルを配置する。ドリルの上面に対するレシーバパックの配向方向は、この複数の距離について平行に保つ。複数の距離に関して位置及び方向を収集する。トラッカの適合度(GOF)データもまた、複数の位置で記録することができる。次に、例えばドリルの先端に関して、位置情報を計算することができる。複数のテスト条件を使用して、先端位置の誤差を確定する。ナビゲーションアルゴリズム及び閾値を使用して、FIDデータを計算する。レシーバパックの方向及び先端オフセットの両方は、追跡座標系のX軸に対して平行であったので、先端誤差のX成分を取得することによって、理論的ドリルガイドチューブ軌道誤差を推定することができる。
【0071】
従って、本発明の特定の実施形態は、偶発的な歪みに強くかつ耐性がある追跡システム及び方法を提供する。特定の実施形態は、手術用具又は他の器具とのEM位置センサの人間工学的かつ効率的な一体化を提供する。特定の実施形態は、不正確な追跡を引き起こす状態の確実な検出を提供する。特定の実施形態は、信号対雑音比を制限した追跡精度により、システム誤差を最小にする。電磁式追跡システム及び歪み処理装置を使用して、金属による歪みに起因する追跡誤差を解析しかつ補正することができる。
【0072】
特定の実施形態は、追跡する器具、器具ガイド及び/又は追跡システムの歪み及び他の影響を測定しかつそれらの構成を調整するために使用する仮想追跡システム及びシミュレーション環境を提供する。特定の実施形態は、追跡システムにおける歪みを最小にするためのシステム及び方法を提供する。特定の実施形態は、歪み耐性のある器具及び追跡システムを開発しかつテストするためのシステム及び方法を提供する。
【0073】
特定の実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明の技術的範囲を逸脱することなく様々な変更を加えることができまた均等物で置き換えることができることは、当業者には分かるであろう。さらに、本発明の技術的範囲を逸脱することなく特定の状況又は物的要件を本発明の教示に適合させるように多くの修正を加えることができる。従って、本発明は開示した特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明は特許請求の範囲の技術的範囲内に属するあらゆる実施形態を含むことになることを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施形態による、使用する電磁トラッカの位置測定精度を向上させるのに使用する歪み処理システムを示す図。
【図2】本発明の実施形態による、使用する電磁式追跡システムのための歪み処理の方法を示すフロー図。
【図3】本発明の実施形態による、器具の電磁的評価のための方法を示すフロー図。
【図4】本発明の実施形態による、使用するEMトラッカの開発のための仮想トラッカを示す図。
【符号の説明】
【0075】
100 歪み処理システム
110 器具
120 追跡解析ユニット
130 追跡修正ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号を送信するトランスミッタと、
前記トランスミッタからの信号を受信し、該トランスミッタと共に対象を追跡するのに使用するレシーバと、
前記対象の歪み特性を解析する歪み処理システム(100)と、
を含む改良型電磁式追跡システム。
【請求項2】
前記歪み処理システム(100)が、追跡に対する歪み特性の影響をシミュレートする仮想電磁トラッカ(400)を含む、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
器具(110)の追跡動作を解析する追跡解析ユニット(120)と、
前記器具(110)の追跡動作を補正する追跡修正ユニット(130)と、
を含む歪み処理システム(100)。
【請求項4】
前記追跡解析ユニット(120)が、前記器具(110)の歪み特性のマップ及びモデルの少なくとも1つを生成する、請求項3記載のシステム(100)。
【請求項5】
追跡する対象をシミュレートする対象シミュレーションモジュール(410)と、
前記対象の少なくとも1つの歪み特性を解析し、該少なくとも1つの歪み特性に基づいて前記対象の歪み情報を生成することができるシミュレーションツールセット(420)と、
を含む仮想追跡システム(400)。
【請求項6】
前記シミュレーションツールセット(420)が、前記対象のシミュレートした追跡の精度を測定する精度モジュール(430)をさらに含む、請求項5記載のシステム(400)。
【請求項7】
前記シミュレーションツールセット(420)が、追跡精度に対する前記対象による歪みの影響を確定する歪み検出モジュール(440)をさらに含む、請求項5記載のシステム(400)。
【請求項8】
前記シミュレーションツールセット(420)が、トラッカ環境に対する前記対象の歪みの影響を評価するための電磁モデルを生成する歪みモデル化モジュール(450)をさらに含む、請求項5記載のシステム(400)。
【請求項9】
前記シミュレーションツールセット(420)が、電磁トラッカの歪み耐性を向上させる歪み補正モジュール(460)をさらに含む、請求項5記載のシステム(400)。
【請求項10】
電磁式追跡システムにおける歪み解析のための方法(200)であって、
対象(220)の追跡動作を測定するステップと、
前記対象の追跡動作を解析して歪みの影響を確定するステップと、
を含む方法(200)。
【請求項11】
前記解析するステップが、前記対象の追跡動作を解析して前記歪みの影響を確定するための場マップ及びモデルの少なくとも1つを生成するステップをさらに含む、請求項10記載の方法(200)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−519432(P2007−519432A)
【公表日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−539642(P2006−539642)
【出願日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【国際出願番号】PCT/US2004/036727
【国際公開番号】WO2005/048841
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】