説明

電磁作動のエレベータドアロック

電磁ドアロックアッセンブリ(30)は、昇降路ドア(22)に対して支持された第1の部分(32)と、エレベータかご(24)と共に移動するように支持された第2の部分(34)とを含む。第1および第2の部分は協働し、それらの間の電磁相互作用によって、たとえば、かご(24)へのアクセスのための一組の昇降路ドア(22)のロックを解除する。開示した実施例では、アクチュエータの第1の部分(32)は少なくとも1つの固定電磁部分(36A、36B)と、少なくとも1つの可動部分(38)とを有する。かご(24)と共に移動する第2の部分(34)は少なくとも1つの固定電磁部分(44)を含む。第1および第2の部分(32、34)の間の磁気相互作用は可動部分(38)の選択された移動を引き起こし、ドア(22)を選択的にロックまたはロック解除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般にエレベータ装置に関する。特に、本発明は、エレベータ用ドアロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータは通常、ビルの異なる階の間で昇降路を垂直に移動するかごを含む。各階または着床部において、一組の昇降路ドアが、エレベータかごがその着床部にないときは昇降路を閉鎖し、エレベータかごが着床部にあるときはエレベータかごのドアとともに開いてエレベータかごからの、または、かごへのアクセスを許容するよう配置されている。かごが昇降中のとき、または適切に着床部に位置していないときは、昇降路ドアをロックし、人が昇降路ドアを開けないように、昇降路を露出させないようにする必要がある。従来の構成は、適切な条件下で昇降路ドアのロックを保持するための機械的ロックを含んでいる。
【0003】
従来の構成は、通常いくつかの機能を単一の装置に統合したドアインターロックを含んでいる。インターロックは、昇降路ドアをロックし、昇降路ドアがロックされたことを検出し、かごドアを開くために昇降路ドアをかごドアに連結する。このように複数の機能を統合することにより材料費を低くできる一方、従来の構成によってもたらされた重大な設計上の難問がある。例えば、ロック機能と検出機能とは、法令を満足するために正確でなければならない。一方、連結機能は、昇降路ドアに対するかごドアの位置の変動を吸収するため相当量の公差を必要とする。これら二つの機能が通常単一の装置に統合されているが、これらの設計上の関係は通常互いに相反するものである。
【0004】
従来のインターロックの構成に関する相反する問題は、結果として相当量の欠陥部品回収や保守要求をもたらす。エレベータドア装置の部品がエレベータの保守要求の約50%と欠陥部品回収の30%を占めているものと考えられる。ドア装置の不具合に起因する欠陥部品回収の約半分は、インターロック機能のいずれかに関している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ロックされた昇降路ドアの安全を提供し、さらに従来の構成の複雑さを回避して、保守の必要を減少させるより信頼性の高い構成を提供する改善された構成が当業界において必要とされている。本発明は、独特なエレベータドアロックアッセンブリを用いてこの必要性に対処するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の例示的実施例は、アッセンブリを選択的にロックまたはロック解除する電磁アクチュエータを含むエレベータドアロックアッセンブリである。
【0007】
一実施例では、昇降路ドアをロックするためのロック部材が、電磁アクチュエータによってロック位置とロック解除位置との間を移動する。この実施例では、電磁アクチュエータはエレベータかごと共に移動するよう支持された第1の電磁部材を含む。第2の電磁部材はロック部材に関連している。第1の部材と第2の部材との間の磁気相互作用は、エレベータかごが昇降路ドアに対して適切に位置したときに、選択された方向へロック部材を移動させるよう作用する。
【0008】
一実施例では、第1および第2の電磁部材は、強磁性コアであり、コアの一方の磁束が他方に影響を与え、磁束の存在に応答してロック部材の移動を引き起こす。アッセンブリへの電力を適切に制御することによって、磁束が制御でき、ドアロックを確実な方法で開位置または閉位置へ操作できる。
【0009】
本発明の様々な特徴および利点は、以下における現在の好ましい実施例の詳細な説明によって当業者に明らかとなろう。詳細な説明に附属する図面の簡単な説明は以下の通りである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、たとえばビル内の着床部において公知の方法で支持された昇降路ドア22を含むエレベータドアアッセンブリ20を概略的に示す。エレベータかご24は、かご24が着床部に適切に位置しているときにかご24へのアクセスを提供するよう昇降路ドア22と協動するかごドア26を含む。
【0011】
本実施例は、昇降路ドア22を選択的にロックまたはロック解除するための電磁アクチュエータを有する電磁ドアロックアッセンブリ30を含む。図1に概略的に示されるように、第1の部分32は昇降路ドア22に対して支持され、着床部に残る。第2の部分34は、たとえば、昇降路をかご24と共に移動するように支持される。一実施例では、第2の部分34はかご枠の一部に支持される。他の例には、キャビン構造上に、または、ドア作動部品の一部として第2の部分34を支持することが含まれる。
【0012】
第2の部分34および第1の部分32が適切に整列されたとき(すなわち、かご24が着床部に正確に位置したとき)、電磁アクチュエータはドアロックアッセンブリ30の作動状態を制御する。記載例では、電磁アクチュエータがドアアッセンブリのロックを解除し、かご24への、またはかご24からのアクセスを提供する。
【0013】
図2を参照すると、電磁ドアロックアッセンブリ30の一実施例が示されている。第1の部分32は少なくとも1つの固定電磁部分と、可動部分とを有する。この例では、2つの固定部分36Aおよび36Bが、後述するようにドアロック操作を容易にするように可動部分38に対して配置される。一実施例では、固定部分36A、36Bおよび可動部分38は磁気コアからなる。一実施例では、磁気コアは強磁性材料で作られている。特定の実施例では、コアは鋼から作られる。
【0014】
可動部分38は、ドアロック機能を備えるストライク部材40と協働して、適切な条件下で昇降路ドア22の開放動作を防止する。この実施例における可動部分38は、ストライク部材40と協働して選択的にドアをロックするラッチ部材として機能する。
【0015】
図2の実施例では、第2の部分34は、本実施例では別の磁気コアであるところの別の電磁部材44を含む。一実施例では、電磁部材44は強磁性材料から作られる。この実施例では、電磁部材44は鋼からなる。一実施例では積層された鋼板からなるが、他の例では圧延された中実の鋼からなる。コイル46がコア44と適切に関連し、よってコイル46を流れる電流が公知の方法でコア44内に磁束を生じさせる。
【0016】
図2の実施例は、適切な条件下でコイル46に電力を供給するための回路として概略的に示された制御装置48を含む。スイッチ50がこの例の回路のループを閉じると、電源52はコイル46とつながり、電流がコイル46を流れる。一実施例では、電源52はドアロックアッセンブリ30専用のバッテリである。他の実施例では、電源52はかご24とすでに関連している電源であり、整流器およびフィルタを含み、コイル46の電流用の適切なDC電力を供給する。
【0017】
図2に示された位置では、スイッチ50は開いているので、電流はコイル46を流れていない。したがって、磁性部分のいかなる箇所にも磁束は流れていない。この状態で、可動部分38は重力によって、この例ではロック位置に、付勢される。図2および図3から分かるように、可動部分38はサポート54上に載っており、よってラッチアーム56がストライク部材40と係合するよう位置し、ストライク部材40が昇降路ドア22の移動を阻止する。
【0018】
また、この状態では、一方の固定部分36A、36Bと、他方の可動部分38との間にエアギャップ60が存在する。
【0019】
図4はスイッチ50が閉じており、よって電流がコイル46を流れる状態の図2の実施例を示す。この時点において、電磁部材44と固定部分36A、36Bを流れる磁束62によって、可動部分38が図4および図5に示される位置に移動する。特に、磁束62は最小抵抗の経路を探し、その結果、一方の固定部分36A、36Bと、他方の可動部分38との間のエアギャップ60を最小化することとなる。つまり、磁束62は、図4および図5に示されるロック解除位置へ可動部分38を移動させる。この実施例では、可動部分38は図2および図3に示されたロック位置と図4および図5に示されたロック解除位置との間を回動軸64回りに回動する。図5からよく分かるように、ラッチアーム56はストライク部材40から離れており、ロックは昇降路ドア22の移動を阻止しない。
【0020】
本実施例では、スイッチ50はかご24が着床部に到着し、呼びに応え、それによってたとえば、かごドア26が開くことに応答して閉じる。昇降路ドア22を開くには、ロックアッセンブリ30のロックが解除されなければならず、第1の部分32と第2の部分34との間の磁気的協働によりドアのロックを解除する。この実施例から分かるように、ロックアッセンブリ30は、選択的に、たとえば電気が供給されていないときにドア22をロックし、かごが適切に位置し電気が供給されたときにドア22のロックを解除する電磁アクチュエータを有する。
【0021】
図6および図7は、他の実施例を示す。この実施例では、第1の部分32’は異なる形状の固定部分および可動部分を含む。この実施例では、固定電磁部分66A、66Bが、図6に示すロック位置と図7に示すロック解除位置との間を効果的に回転するアーマチャ68に対して位置決めされる。この実施例では、スイッチ50が閉じたときに、磁束62が図7に示されるようなほぼ水平の位置にアーマチャ68を移動させ、それによってロックボルト70がストライカ凹部72から取り除かれ、ドア22の移動が許容される。磁束62は図7に示された位置にアーマチャ68を移動させて、アーマチャ68と固定部分66A、66Bのそれぞれとの間のエアギャップ76、78を最小化する。
【0022】
本実施例では、ロックボルト70に関連するアーマチャ68の端部74は反対側の端部よりも重いため、コイル46が励磁されていないときはいつでも図6に示されるロック位置へ重力によって付勢される。
【0023】
いくつかの実施例では、この開示した実施例のように単一のアクチュエータとロック部材とを有し、この単一のアクチュエータとロック部材とが唯一のロック機構である。他の例には、2つ以上のロック部材、2つ以上のアクチュエータ、あるいはその両方が2つ以上の場合が含まれる。たとえば、組込み上の制約または冗長性の基準を満たすために適切な数を選択することは、この説明を利用できる当業者には明らかであろう。
【0024】
上述の説明は例示的な性格のものであり、限定的な性格のものではない。当業者には開示された実施例に対する、本発明の趣旨から必ずしも逸脱しない変形および改良が明らかとなろう。本発明に与えられる法的保護の範囲は以下の請求の範囲を検討することによってのみ判定可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】エレベータかごおよび関連する昇降路ドアの選択された部分を概略的に示す図。
【図2】図1の実施例に含まれた電磁アクチュエータの、図1の2−2線に沿った部分断面図。
【図3】ロック位置にある図2の実施例の一部を概略的に示す斜視図。
【図4】ロック解除状態にある実施例のアッセンブリを示す図2と同様の断面図。
【図5】ロック解除位置にある図3の部品を概略的に示す、図4に対応する斜視図。
【図6】ロック状態にある他の実施例の部分断面図。
【図7】ロック解除状態にある図6の実施例を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁ドアロックアクチュエータを備えることを特徴とするエレベータドアロックアッセンブリ。
【請求項2】
前記アッセンブリは、昇降路ドアをロックするためのロック部材と、エレベータかごと共に移動するよう支持された第1の部分と、ロック部材に関連する第2の部分とを含み、該第1の部分と第2の部分との磁気相互作用がロック部材を移動させるよう作用することを特徴とする請求項1記載のアッセンブリ。
【請求項3】
前記第2の部分は固定部分と可動部分とを有し、該可動部分はアッセンブリのロック位置とロック解除位置の一方に対応した第1の位置と、アッセンブリのロック位置とロック解除位置の他方に対応した第2の位置との間を移動可能であり、磁気相互作用が可動部分を前記第1の位置から前記第2の位置に移動させるよう作用することを特徴とする請求項2記載のアッセンブリ。
【請求項4】
ロック部材は可動部分と共に移動することを特徴とする請求項3記載のアッセンブリ。
【請求項5】
前記第2の位置では固定部分と可動部分との間のエアギャップは最小であり、前記第1の位置ではエアギャップはより広いことを特徴とする請求項4記載のアッセンブリ。
【請求項6】
前記アッセンブリは、前記第1の部分に関連する巻線を含み、巻線内の電流が前記第2の部分における磁束を生じさせ、該磁束が可動部分を前記第2の位置に移動させることを特徴とする請求項3記載のアッセンブリ。
【請求項7】
前記アッセンブリは、前記第1の部分が前記第2の部分に対して選択された位置にあることに応じて巻線への電流供給を制御するスイッチを含むことを特徴とする請求項6記載のアッセンブリ。
【請求項8】
前記第1の部分と前記第2の部分は各々、磁気コアを備えることを特徴とする請求項2記載のアッセンブリ。
【請求項9】
前記アッセンブリは、電磁アクチュエータに応答してロック位置とロック解除位置との間を移動可能なロック部材を含むことを特徴とする請求項1記載のアッセンブリ。
【請求項10】
電磁アクチュエータは第1の部分と第2の部分とを含み、該第1および第2の部分に関連する磁束がロック部材の移動を引き起こすことを特徴とする請求項9記載のアッセンブリ。
【請求項11】
ロック部材がロック位置に付勢されており、磁束はその付勢に抗してロック部材を動かすことを特徴とする請求項10記載のアッセンブリ。
【請求項12】
前記第1の部分はエレベータかごと共に移動するよう支持され、前記第2の部分は昇降路ドアに関連していることを特徴とする請求項10記載のアッセンブリ。
【請求項13】
少なくとも1つの昇降路ドアと、
ロック位置とロック解除位置との間を移動可能なロック部材であって、ロック位置では閉鎖位置からの昇降路ドアの移動を阻止するよう作動するロック部材と、
ロック部材を選択的に移動させて、昇降路ドアの移動を選択的に許容する電磁アクチュエータと、
を備えることを特徴とするエレベータドアアッセンブリ。
【請求項14】
前記アッセンブリは、昇降路ドアとおおよそ整列する位置に選択的に移動可能な少なくとも1つのエレベータかごドアを含み、電磁アクチュエータはエレベータかごドアに関連する第1の部分と昇降路ドアに関連する第2の部分とを含み、該第1および第2の部分に関連する磁束がロック部材の移動を引き起こすことを特徴とする請求項13記載のアッセンブリ。
【請求項15】
磁束は、かごドアがおおよそ整列した位置にあるとき、ロック部材を移動させるように作動するようになることを特徴とする請求項14記載のアッセンブリ。
【請求項16】
前記アッセンブリは、前記第1の部分に関連する巻線と、かごドアがおおよそ整列した位置にあることに応答して巻線への電流の供給を制御する制御装置とを含むことを特徴とする請求項15記載のアッセンブリ。
【請求項17】
前記第2の部分は固定部分と、磁束に応答して移動する可動部分とを含み、可動部分の移動はロック部材の移動を引き起こすことを特徴とする請求項15記載のアッセンブリ。
【請求項18】
ロック部材はロック位置に付勢されており、磁束はその付勢に抗してロック部材を動かすことを特徴とする請求項15記載のアッセンブリ。
【請求項19】
ロック位置とロック解除位置との間でロック部材を電磁的に移動させることを含むことを特徴とする、エレベータドアのロックを解除する方法。
【請求項20】
エレベータかごドアを昇降路ドアと整列させ、その後昇降路ドアのロックを解除することを含むことを特徴とする請求項19記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−505821(P2008−505821A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−520280(P2007−520280)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【国際出願番号】PCT/US2004/021576
【国際公開番号】WO2006/014164
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(591020353)オーチス エレベータ カンパニー (402)
【氏名又は名称原語表記】OTIS ELEVATOR COMPANY
【Fターム(参考)】