説明

電磁処理装置

【課題】 この発明は、エネルギー効率の改善と最適化を図った液流体の電磁処理装置に関する。
【解決手段】本発明にかかる電磁処理装置は、液体の流路を構成する配管の外側に設けた作動コイルと、該作動コイルに電流を供給する電源部と、該電源部の供給する電流の基本周波数を前記作動コイルの共振周波数とし、断続駆動の周期を調整可能として、前記作動コイルに高調波のビート波形を発生させる電流制御部とからなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エネルギー効率の改善と最適化を図った液流体の電磁処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体流路を構成する管体内面へのスケールの付着防止や除去、管体内面の腐食防止を図るため電磁処理装置が知られている。
電磁処理装置は、液体の流路となる配管の外側に作動コイルを巻き付け、この作動コイルに電源部から電流を流す。この電流は電流制御部によって特定周波数帯域で周波数が時間的に変化する特定波形の電磁界誘起電流に変換されて前記作動コイルに供給される。
これにより、コイルは電磁界を誘起させて配管内に磁場と電場とを生じさせ、この磁場と電場の電子エネルギーによって配管内を流れる液体に対して、その分子やイオンを媒体とし電解エネルギーを与えて電磁処理を行い、スケールの結晶体や錆びなどの付着物表面と配管の内面を強く負に帯電しこれらを反発させたり結合を不安定にして離れさせ、またスケールを小さく再結晶化させて配管内面から剥離させると共に、配管内面を還元状態にして腐食を防止している。
この種の電磁処理装置の動作周波数と作動コイルを検証すると、駆動周波数はDC〜50KHzの範囲で、周波数変調等色々有り、また、基本波形は矩形波形状からなっている。
一例を挙げると、水処理用の配管の作動コイルは、直径20mm程度の配管に断面2mmのビニール電線等を10回〜150回(実用的には10数回)巻いて作動コイルにしている。この作動コイルを駆動するために、駆動回路では数〜150アンペアターンの電力を投入している。
しかし、コイルのインダクタンスは数10μHであり、共振点は100KHz以上でるため、磁気エネルギーへの変換は矩形波のDC成分を除いた微分波形(共振周波数)の数十分の1から数百分の1程度となり、非常に効率が悪く殆どの電力が熱損失となっていた。そのため装置の大型化が避けられず、電力も無駄となり効率が悪いという不具合があった(図9(a)〜(d)参照)。
【特許文献1】特開2001−38362号公報 図1〜図2、図11参照
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明は上記実情に鑑みてなされたもので、その主たる課題は、作動コイルのインダクタンスに着目し、駆動基本周波数を作動コイルの共振周波数に合わせ、その断続駆動を行うことで効率化を図った電磁処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、請求項1の発明では、
液体の流路を構成する配管の外側に設けた作動コイルと、該作動コイルに電流を供給する電源部と、該電源部の供給する電流の基本周波数を前記作動コイルの共振周波数とし、断続駆動の周期を調整可能として、前記作動コイルに高調波のビート波形を発生させる電流制御部とからなることを特徴とする。
また、請求項2の発明では、
前記電流制御部に形成された共振回路が直列共振回路からなることを特徴とする。
更に、請求項3の発明では、
前記作動コイルが、複数に分割された構成片からなる巻線用の冶具によって配管に形成されており、
前記冶具が、配管の外周より僅かに大径の内周を有する左右一対のサイドプレートと、該サイドプレート間に掛け渡されたクロスメンバとからなって断面略アングル状の巻線収納部が形成されており、前記サイドメンバの内周側に形成された電線の導入孔と、前記サイドメンバの外周寄りに形成されて冶具に巻き付けられて外へ抜け出る電線の他端側を係止する導出溝とを有しており、
前記分割された構成片を配管に添って外嵌して略ドーナツ状に組み合わせ固定して冶具を組立て、
該冶具を配管に添って回転することで前記電線を巻線収納部内に巻き付け、前記冶具を配管に固定して作動コイルを形成してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
この発明は、電源部の供給する電流の駆動基本周波数を作動コイルの共振周波数に合わせて断続駆動を行うことで、DC成分(熱損失)を極力低く抑えて電磁処理装置の効率化を達成することができる。
断続駆動の周期と、作動コイルの共振周波数からなる基本周波数の高周波バースト波形で駆動した作動コイルには、高調波のビート波形が発生する。
上記断続周期と周波数を調整することで、配管内の流体に最適な周期(周波数)でパワーピークを発生させることができるので、エネルギー効率の改善と最適化が図れて極めて有益である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下に、この発明の電磁処理装置の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0007】
図1に示す電磁処理装置1は、配管2内のパイプ空間を液体流路として液体を流し、前記配管2の外側には電線を巻き付けて作動コイル3を設けている。
この作動コイル3は電流制御部6を介して電源部7に接続されており、該電源部7の供給する電流の基本周波数を前記コイルの共振周波数とし、作動コイル3に高調波のビート波形を発生させる構成からなっている。
配管2に巻き付ける作動コイル3は1つであってもよいが、図1では一定間隔を隔てて複数(図示例では3つ)の作動コイルを直列につなげた構成からなっている。
【0008】
ここで電流制御部6は、共振回路10を有している。
この共振回路10は、直流共振回路であっても、並列共振回路であってもよい。
共振回路10の共振点は、以下の式で各定数を共振点に合わせることで、能率が最大になる。
【0009】
【数1】


例えば、発振回路(OSC):8KHzの時に、L:74μH C:4.5μFとなる。
図3は共振回路として直列共振回路10を用いた場合であって、該回路中のIC1(LM358)はOPAMPで三角波のランプ波形(図4(a)参照)を発生し、VR2でオフセット電位の調整をする。
また、回路中、IC2(MC14046BC)は、VCO高周波発信器であって三角波のランプ波形を変調波として、次段の高周波発生器を断続するためのスイープ波形(図4(b)参照)を発生させる。
【0010】
回路中、Q1は電力スイッチであって、IC3(IR2111)はインバータ駆動制御用ICであって、作動コイルを駆動する搬送波(20KHz〜200KHz)を発生させる(図4(c)参照)。
本実施例では、一例として発信周波数を133KHzに設定した。
CXは直列共振用コンデンサーであり、作動コイル3と直列共振回路を構成している。
これにより、電源部7の供給する電流の基本周波数を前記コイルの共振周波数とし、作動コイル3に高調波のビート波形を発生させることができる。
なお、図4(d)は、作動コイル重畳電圧波形である。
【0011】
次に、図5に示す並列共振回路10は、該回路中のIC1(LM358)がOPAMPで三角波のランプ波形(図4(a)参照)を発生し、VR2でオフセット電位の調整が行われる。
また、前記回路中、IC2(MC14046BC)は、電圧制御型発振器(VCO)であって、三角波のランプ波形を変調波として、次段の高周波発生器の発振周波数を断続するためのスイープ波形を発生させる(図4(b)参照)。
【0012】
更に、前記回路中、IC3(μPC494C)は、スイッチング電源用のパルス幅変調(PWM)コントロールICであって、作動コイル3を駆動する搬送波(20Khz〜200KHz)を発生する。
本実施例でも発信周波数を133KHzに設定した。
VR3は133KHzの方形波のデューティ比を調整して出力電力を調整する。
【0013】
また、前記回路中、Q2.Q3、Q4はQ5のパワーMOSのドライブ回路である。
前記Q5は図4(c)で図示する電力駆動波形でドライブする電力SWであり、R1は電流調整のためのブリーダ抵抗である。
C1は、作動コイル3と並列共振回路を構成しており、この作動コイル3の直近に配置してもよい。
なお、図4(d)は、作動コイル重畳電圧波形である。
【0014】
また、図中、ピックアップコイル4は、FFT解析のセンサーとして使用する際に、適宜用いるものである。
なお、図6はFFT解析を示すグラフであり、(a)はパワー解析波形、同(b)は高周波ビート波形であり、上記実施例の効果を確認することができた。
【実施例2】
【0015】
図2は、配管に作動コイルを巻き付けた別の実施例を示す。
配管2に巻き付ける作動コイル3は1つであってもよいが、図1では一定間隔を隔てて複数(図示例では3つ)の作動コイルを直列につなげた構成からなっている。
【0016】
図2では、フェライトコア5を作動コイル3に巻き込む構成からなっている。
配管2に巻き付ける作動コイル3は1つであってもよいが、図1では一定間隔を隔てて複数(図示例では3つ)の作動コイルを直列につなげた構成からなっている。
各作動コイル3には、フェライトコア5を120度の角度間隔で配置し、配管2に固定したうえで0.5mmφ程度の銅線を11回巻き付ける。
【0017】
次に、フェライトコア5の幅かそれ以上にスペ−スを開けて、再度同様に配管上に固定した別のフェライトコア5に銅線を巻き付けて作動コイル3を形成する。
上記作動コイル3は、条件や状況に応じて1列から複数列配置する。
これは、フェライトコア5を作動コイル3中に巻き込むと、透磁率が向上して共振し易くなるためである。
【実施例3】
【0018】
次に、図7および図8に示す作動コイル3は、ボビン状の巻線用の冶具20を用いて配管2に巻き付ける構成からなっている。
この場合、冶具20は、リングの2つ割り構造20A、20Bからなり、非導電性の素材が用いられている。
【0019】
この冶具20は、本実施例の場合、アクリル樹脂からなっており、配管2の外周の半径より僅かに大きい半径の内周21を有する左右一対の略半円形状のサイドプレート22と、該一対のサイドプレート22の内周21側に架け渡されて両者を連結するクロスメンバ23とからなっている。
【0020】
前記サイドプレート22には、内周21寄りに形成されて作動コイル3成形用の銅線を通す導入孔24と、外周寄りに形成されて冶具に巻き付けられた銅線を外へ抜け出させるためのU字状に形成された導出溝25とを有している。
【0021】
前記2分割された冶具構成片20A、20Bは配管2に外嵌して配管2の上下から接近させて、一体的に整合する(図7(a)(b)参照)。
次いで、一対の冶具構成片20A、20Bを接着テープ26を巻くなどして、中央に貫通孔が形成された略ドーナツ状で断面がアングル状の巻線収納部20aを有する冶具20を組み立てる(図7(c)参照)。
【0022】
このように組み立てられた冶具20の一方のサイドプレート22の導入孔24に銅線を通して斜め上向きに引出して他方のサイドプレート22の導出溝25に導線の先端側を掛け止めておく。
この冶具20を配管2に沿って図8(a)で示すa方向(図中反時計方向)に回転させることで、冶具20内に容易に銅線を引込み、導入孔側から導出溝側に向かうb方向(図8(b)参照)に導線を巻き付けて作動コイル3を成形することができる。
【0023】
このようにして銅線を巻き付けて作動コイル3とした冶具20をそのまま配管2に接着または固定することで、作動コイル3を極めて簡単に配管2に取り付けることができる(図8(b)参照)
ここで、それぞれの冶具20から延びる導入側および導出側の銅線は、それぞれ一体にまとめられて、導入側が電流制御部6の陽極と接続され、導出側が陰極に接続される。
この発明は上記構成に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で種々設計変更しうること勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】電磁処理装置の模式図である。(実施例1)
【図2】フェライトコアを設けた電磁処理装置の模式図である。(実施例2)
【図3】直列共振回路からなる駆動回路の回路図である。
【図4】駆動回路の波形を示す図であって、(a)はランプ波形、(b)はVCO出力波形(断続信号)、(c)は電力駆動波形、(d)コイル重畳電圧波形である。
【図5】並列共振回路からなる駆動回路の回路図である。
【図6】FFT解析であって(a)はパワー解析波形、(b)は高周波ビート波形である。
【図7】巻線用の冶具であって、(a)は組立前の側面図、(b)は同正面図、(c)は組立状態の正面図である。
【図8】(a)巻線用冶具の使用例を示す側面図、(b)は正面図である。
【図9】(a)は従来の駆動電圧波形、(b)は従来の駆動電流波形、(c)は従来のコイル重畳電圧波形、(d)は従来の熱損失波形(模擬)、(e)は本実施例の高周波バースト波形である。
【符号の説明】
【0025】
1 電磁処理装置
2 配管
3 作動コイル
4 ピックアップコイル
5 フェライトコア
6 電流制御部
7 電源部
10 共振回路
20 冶具
20A、20B 冶具構成片
20a 巻線収納部
21 内周
22 サイドプレート
23 クロスメンバ
24 導入孔
25 導出溝
26 接着テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の流路を構成する配管の外側に設けた作動コイルと、該作動コイルに電流を供給する電源部と、該電源部の供給する電流の基本周波数を前記作動コイルの共振周波数とし、断続駆動の周期を調整可能として、前記作動コイルに高調波のビート波形を発生させる電流制御部とからなることを特徴とする電磁処理装置。
【請求項2】
電流制御部に形成された共振回路が直列共振回路からなることを特徴とする請求項1に記載の電磁処理装置。
【請求項3】
作動コイルが、複数に分割された構成片からなる巻線用の冶具によって配管に形成されており、
前記冶具が、配管の外周より僅かに大径の内周を有する左右一対のサイドプレートと、該サイドプレート間に掛け渡されたクロスメンバとからなって断面略アングル状の巻線収納部が形成されており、前記サイドメンバの内周側に形成された電線の導入孔と、前記サイドメンバの外周寄りに形成されて冶具に巻き付けられて外へ抜け出る電線の他端側を係止する導出溝とを有しており、
前記分割された構成片を配管に添って外嵌して略ドーナツ状に組み合わせ固定して冶具を組立て、
該冶具を配管に添って回転することで前記電線を巻線収納部内に巻き付け、前記冶具を配管に固定して作動コイルを形成してなることを特徴とする請求項1に記載の電磁処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−207958(P2009−207958A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−51433(P2008−51433)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(594117010)ビーイー電子工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】