説明

電磁変換器

【課題】
永久磁石の磁束を効率良く受けて、安価な永久磁石でも必要な駆動力を得ることができ、また振動膜の剛性を向上させた電磁変換器を得る。
【解決手段】
所定のギャップ11を有するように、また極性が交互に異なるように配置された帯状の永久磁石10と、基材の所定方向に沿って凸状の曲げ部21aが形成され、凸状の曲げ部21aの表面にコイル22が形成され、凸状の曲げ部21aが永久磁石10の異なる極性間のギャップ11に配置された振動膜20と、永久磁石10を収容し振動膜20を支持するフレーム30とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば永久磁石と振動膜とを組み合わせてオーディオ信号を再生する電磁変換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
永久磁石と振動膜とを組み合わせた電磁変換器については、例えば、特許文献1によれば、永久磁石板とその永久磁石板に対向するように配置した振動膜と、これら永久磁石板及び振動膜の間に配置された緩衝部材とを備えている。
永久磁石板は、帯状の異なる磁極が一定の間隔をおいて交互に形成された多極着磁パターンを有しているものであり、また、振動膜は永久磁石板の異なる磁極同士の間隙部分のいわゆる着磁のニュートラルゾーンと称される部分に対向する位置に、蛇行形状の導体パターンからなるコイルが全面に形成されているものである。
【0003】
これにより、振動膜のコイルに電流(オーディオ信号)が流れると、そのコイルと永久磁石板の多極着磁パターンとが電磁的に結合し、フレミングの法則に従って振動膜にオーディオ振動が発生する。
【0004】
上記の永久磁石板、振動膜および緩衝部材は、金属フレームに覆われてスピーカ筺体に取り付けられており、このオーディオ振動によって発生した音波は、永久磁石板と金属フレームに設けた放射孔を通して放射されてオーディオ再生が行われる。
【0005】
このような電磁変換器は、振動膜を挟むように磁石を配置し、磁石の漏れ磁束を使用しているため、効率が悪い。そこで、十分な音圧を得るため振動膜の駆動に必要な磁束密度を上げるために、ネオジウム鉄ボロン磁石などの最大エネルギー積(BHmax)の大きい磁石を使用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3192372号公報(特開平9−331596号公報)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来の電磁変換器は、永久磁石の漏れ磁束で振動膜の駆動力を得るため、効率が悪いという課題があった。また、大きな駆動力を得るためにネオジウム鉄ボロン磁石などの高価な永久磁石を用いるので、この永久磁石を用いた磁気回路で構成する電磁変換器は高価であるという課題があった。また、振動膜が薄く剛性が低いため、分割共振により音圧レベルのロスが発生するという課題があった。
【0008】
この発明は、上述した課題を解決するためになされたもので、永久磁石の磁束を効率良く受けて、安価な永久磁石でも必要な駆動力を得ることができ、また振動膜の剛性を向上させた電磁変換器を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る電磁変換器は、所定のギャップを有するように、また極性が交互に異なるように配置された帯状の永久磁石と、基材の所定方向に沿って凸状の曲げ部が形成され、凸状の曲げ部の表面にコイルが形成され、凸状の曲げ部が永久磁石の異なる極性間のギャップに配置された振動膜と、永久磁石を収容し振動膜を支持するフレームとを備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係る電磁変換器によれば、振動膜の基材の所定方向に沿って形成され、表面にコイルを形成した凸状の曲げ部が、各永久磁石間のギャップに配置されるように構成したことにより、コイルが永久磁石から大きな磁束密度を受けることができ、安価な永久磁石であっても必要な磁束密度を得ることができる。
また、突起部を振動膜を折り曲げて形成したことにより、振動膜の断面係数が上がり、振動膜の剛性が向上し音圧レベルのロスを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の電磁変換器の全体の構成を示す図であり、(a)分解斜視図、(b)側面図である。
【図2】実施の形態1に係る電磁変換器の構成を示すA−A線断面図である。
【図3】実施の形態1に係る電磁変換器の他の構成を示すA−A線断面図である。
【図4】実施の形態1に係る電磁変換器の他の構成を示すA−A線断面図である。
【図5】実施の形態1に係る電磁変換器の他の構成を示すA−A線断面図である。
【図6】実施の形態2に係る電磁変換器の構成を示すA−A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の電磁変換器の全体の構成を示すための図であり、図1(a)が電磁変換器の分解斜視図、図1(b)が電磁変換器の側面図である。
図2は、実施の形態1に係る電磁変換器の構成を示す図1のA−A線断面図である。
【0013】
実施の形態1の電磁変換器1の構成について説明する。
図1(a),(b)に示すように、電磁変換器1は、大きく分けると、永久磁石10、振動膜20、フレーム30からなり、永久磁石10が振動膜20とフレーム30との間に挟まれるように収容され構成されている。
【0014】
永久磁石10は、断面が矩形の帯状磁石であり、極性が交互に異なるように配置され、図2に示すような磁気空隙(以下、ギャップ)11として所定の間隔を空けている。
【0015】
振動膜20は、例えば薄く柔軟な樹脂フィルムを基材として、その表面にコイル22を形成した矩形のシート状からなるものである。振動膜20の長手方向には、永久磁石10と対向する面が凸状になるように折り曲げた曲げ部21aが形成されており、この曲げ部21aの断面はV字形状である。曲げ部21aの表面にはコイル22が形成されており、コイル22は、例えばFPC(Flexible printed circuits)と同様にプリントする方法、細線状にした導体を巻く方法などにより形成される。
【0016】
振動膜20に形成されたV字形状の曲げ部21aは、永久磁石10間のギャップ11に配置されており、曲げ部21aに形成されたコイル22が永久磁石10間に発生している強い磁束を受ける位置にある。
また、振動膜20の振動を妨げることなく振動膜20をフレーム30に固定するため、振動膜20の外周に沿って、断面が半円形状のエッジ23が形成されている。
【0017】
フレーム30は、略直方体形状であり、その一つの面が振動膜20で覆われている。振動膜20と対向する内面には永久磁石10が接着固定され、各永久磁石10の間隔に相当する位置に放音孔31が形成されている。
【0018】
次に電磁変換器1の動作について説明する。
図示しない制御部からオーディオ信号としての電流を振動膜20の曲げ部21aのコイル22に流すと、コイル22に流れる電流と永久磁石10間のギャップ11に発生している磁束とが電磁的に結合し、フレミングの法則に従って振動膜20が前後(図2では上下方向)に駆動してオーディオ振動を発生させる。発生したオーディオ振動は、フレーム30の放音孔31を通して電磁変換器1の外部に放出される。
【0019】
このとき、全面平板状の振動膜を用いた場合、分割共振が発生し音圧レベルがロスするが、振動膜20は凸状の曲げ部21aを形成したことにより、薄く柔軟なシート状の断面係数を上げて剛性が向上するので、分割共振を制動し音圧レベルのロスを抑制している。
【0020】
上述のように、実施の形態1の電磁変換器1は、振動膜20の所定の方向に沿って凸状の曲げ部21aを形成し、表面にコイル22を形成した曲げ部21aを永久磁石10間のギャップ11に配置する構成にしたことにより、コイル22が永久磁石10間の磁束密度の高い部分で磁束を受けることができる。その結果、安価なフェライト磁石を使用しても必要とする磁束密度を得ることができ、またネオジウム鉄ボロン磁石などの高価な磁石でも磁石体積を減らすことで安価で必要な磁束密度を得ることができる。
また、曲げ部21aを形成したことにより、振動膜20の断面係数を上げて剛性を向上することができるため、薄い振動膜20の分割共振を抑制して音圧レベルのロスを少なくすることができる。
【0021】
なお、実施の形態1において、凸状の曲げ部21aの断面形状をV字形状として説明したが、図3、図4、図5に示すように断面形状がU字形状の曲げ部21b、断面形状が矩形形状の曲げ部21c、断面形状がI字形状の曲げ部21dで構成してもよく、これらの断面形状であっても実施の形態1の電磁変換器1と同じ効果を得ることができる。
【0022】
実施の形態2.
実施の形態1の電磁変換器1では、振動膜20の一方の面に凸状の曲げ部21aを形成する構成について説明したが、実施の形態2では、振動膜20の両面に凸状の曲げ部21aを形成した構成について説明する。
図6は、実施の形態2の電磁変換器1の構成を示す断面図である。
なお、図1〜5と同じ構成については、同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0023】
図6に示すように、電磁変換器1は、上下のフレーム30からなる筺体の外縁で振動膜20を挟み込むように支持し、振動膜20の両面に対向する上下のフレーム30のそれぞれの内面に永久磁石10を接着固定して構成されている。
【0024】
永久磁石10は、実施の形態1と同様に極性が交互に異なるように配置され、ギャップとして所定の間隔を空けており、振動膜20の両面には、凸状の曲げ部21aが永久磁石10間のギャップ11に配置されるように形成されている。
【0025】
上述のように、実施の形態2の電磁変換器1は、振動膜20の両面に形成した凸状の曲げ部21aのコイル22を、上下のフレーム30の永久磁石10間のギャップ11に配置したことにより、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また、振動膜20の上下方向からフレーム30で挟み込むように覆うことにより、振動膜20を保護することもできる。
【0026】
なお、実施の形態2において、断面形状がV字形状の曲げ部21aを示して説明したが、実施の形態1と同様に断面形状の異なる曲げ部21b,21c,21dとした構成でも良く、同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0027】
1 電磁変換器、10 永久磁石、11 ギャップ、20 振動膜、21a,21b,21c,21d 曲げ部、22 コイル、23 エッジ、30 フレーム、31 放音孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のギャップを有するように、また極性が交互に異なるように配置された帯状の永久磁石と、
基材の所定方向に沿って凸状の曲げ部が形成され、上記凸状の曲げ部の表面にコイルが形成され、上記凸状の曲げ部が上記永久磁石の異なる極性間のギャップに配置された振動膜と、
上記永久磁石を収容し上記振動膜を支持するフレームとを備えた電磁変換器。
【請求項2】
上記振動膜に形成された凸状の曲げ部の断面はV字形状であることを特徴とする請求項1記載の電磁変換器。
【請求項3】
上記振動膜に形成された凸状の曲げ部の断面はU字形状であることを特徴とする請求項1記載の電磁変換器。
【請求項4】
上記振動膜に形成された凸状の曲げ部の断面は矩形状であることを特徴とする請求項1記載の電磁変換器。
【請求項5】
上記振動膜に形成された凸状の曲げ部の断面はI字形状であることを特徴とする請求項1記載の電磁変換器。
【請求項6】
上記振動膜の凸状の曲げ部が上記振動膜の両面に形成され、上記永久磁石が上記振動膜の両面側に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1項記載の電磁変換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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