説明

電磁弁

【課題】製造工程において外殻体に挿入した部材の飛び出しを懸念する必要がない電磁弁に関し、部品点数を削減することができるとともに、スリーブやスプールの長さを抑制しても製造工程においてコイルスプリングをガイドすることができる構造を提供する。
【解決手段】電磁弁は、スリーブの内部でコイルスプリングの軸方向一端を支持する支持部材8を備える。また、支持部材8では、基部27において内周縁27aから外周縁27bに達する切れ込み29aと、突出部28において内周面28aから外周面28bに達する切れ込み29bとが軸方向に一続きに設けられている。そして、支持部材8は、一続きに設けられた切れ込み29a、29bを併せた第1切れ込み29により周方向に弾性を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、以下のような構成を備える電磁弁が周知となっており、例えば、可変バルブタイミング機構や自動変速機における油圧供給先の切替等に利用されている。
【0003】
すなわち、従来の電磁弁は、流体の流出入口である複数のポートが形成されたスリーブと、スリーブの内部で軸方向へ摺動自在に支持されて複数のポート間の連通状態を可変するスプールと、スリーブおよびスプールの軸方向他端側でスプールと同軸的に配置され、通電により磁束を発生するコイルと、コイルの内周側に配置され、コイルが発生する磁束により軸方向一端側に吸引されてスプールを軸方向一端側に駆動する可動鉄心と、スリーブの内部でスプールの軸方向一端側にセットされ、スプールを軸方向他端側に付勢するコイルスプリングとを備える(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
ところで、特許文献1の電磁弁によれば、スリーブは軸方向一端に底部を有する有底筒状に設けられ、スリーブの底部は、コイルスプリングの軸方向一端を支持する支持座として機能するとともに、軸方向一端側に駆動されたスプールに対するストッパとして機能する。
また、特許文献2の電磁弁によれば、スリーブは軸方向両端が開放されている筒状に設けられ、スリーブの軸方向一端に、コイルスプリングの支持座およびスプールに対するストッパとして機能するリテーナが配置されている。
【0005】
しかし、特許文献1の電磁弁のように、有底筒状のスリーブを用いてスリーブの底部をコイルスプリングの支持座およびスプールに対するストッパとして機能させる場合、以下の点で製造工程が煩雑になる。
【0006】
すなわち、特許文献1の電磁弁によれば、例えば、電磁弁の外殻体としてのスリーブ内にコイルスプリングやスプール等の部材を順次に挿入してバルブ部を組み立て、バルブ部とは別に、電磁弁の外殻体としてのヨーク内にコイルや可動鉄心等の部材を順次に挿入してソレノイド部を組み立てる。
【0007】
そして、最後に、スリーブにおける部材挿入側の開口縁と、ヨークにおける部材挿入側の開口縁とを突き合わせ、スリーブにヨークをかしめて固定させる。このため、開口縁同士を突き合わせてかしめを行なう過程で、一旦、スリーブ内やヨーク内に挿入した部材がスリーブ外やヨーク外に飛び出さないように工夫する必要がある。
【0008】
これに対し、特許文献2の電磁弁によれば、例えば、ソレノイド部を組み立てた後にヨークにスリーブをかしめて固定し、その後、スリーブ内にスプール、コイルスプリングやリテーナ等を挿入し、最後にスナップリングをスリーブに装着して、挿入した部材の飛び出しを防止している。このため、特許文献1の電磁弁に比べ、製造工程において、一旦挿入した部材の飛び出しをさほど懸念する必要がないので、製造工程を簡素化できる。
【0009】
しかし、特許文献2の電磁弁によれば、特許文献1の電磁弁に比べて、リテーナおよびスナップリングの2部品が追加的に必要となり、部品点数が増加してしまう。
また、特許文献2の電磁弁によれば、コイルスプリングを圧縮しながら組立てを行なう必要があり、圧縮の際にコイルスプリングをガイドするために、例えば、スリーブやスプールを長くする必要がある。さらに、スリーブやスプールを長くするのを避けてコイルスプリングをガイドせずに圧縮すると、コイルスプリングは、座屈等により姿勢が悪い状態でセットされる虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−315557号公報
【特許文献2】特開平11−002354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、製造工程でスリーブ内やヨーク内に挿入した部材の飛び出しを懸念する必要がない態様の電磁弁において、部品点数を削減すること、および、スリーブやスプールの長さを抑制しても製造工程でコイルスプリングをガイドすることができる構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
〔請求項1の手段〕
請求項1の手段によれば、電磁弁は、流体の流出入口である複数のポートが形成された筒状のスリーブと、スリーブの内部で軸方向へ摺動自在に支持されて複数のポート間の連通状態を可変するスプールと、スリーブおよびスプールの軸方向他端側でスプールと同軸的に配置され、通電により磁束を発生するコイルと、コイルの内周側に配置され、コイルが発生する磁束により軸方向一端側に吸引されてスプールを軸方向一端側に駆動する可動鉄心と、スリーブの内部でスプールの軸方向一端側にセットされ、スプールを軸方向他端側に付勢するコイルスプリングと、スリーブの内部でコイルスプリングの軸方向一端側に配置されてコイルスプリングの軸方向一端を支持する支持部材とを備える。
【0013】
また、支持部材は、円環状の基部と、基部の内周縁を包囲するように基部から軸方向他端側に突出してコイルスプリングの軸方向一端側の内周に嵌まる筒状の突出部とを有する。さらに、支持部材では、基部において内周縁から外周縁に達する切れ込みと、突出部において内周面から外周面に達する切れ込みとが軸方向に一続きに設けられている。そして、一続きに設けられた2つの切れ込みを併せて第1切れ込みと定義すれば、支持部材は、第1切れ込みにより周方向に弾性を具備する。
【0014】
これにより、支持部材を、コイルスプリングの支持座およびスプールに対するストッパとして機能させることができるとともに、スプール等の飛び出しを防止するために装着されるスナップリングとして機能させることができる。このため、例えば、特許文献2の電磁弁で必要とされたリテーナおよびスナップリングの2部品の機能を1部品で果たすことができるので、部品点数を削減することができる。
【0015】
また、支持部材の突出部をコイルスプリングの軸方向一端側の内周に嵌めることで、コイルスプリングを内周側でガイドすることができる。このため、スリーブやスプールをさほど長くしなくても、コイルスプリングをガイドして座屈等の虞を低減することができるので、スリーブやスプールの長さを抑制することができる。
【0016】
以上により、製造工程でスリーブ内やヨーク内に挿入した部材の飛び出しを懸念する必要がない態様の電磁弁において、部品点数を削減することができるとともに、スリーブやスプールの長さを抑制しても製造工程でコイルスプリングをガイドすることができる。
【0017】
〔請求項2の手段〕
請求項2の手段によれば、スプールの軸方向一端には、軸方向一端側に開口する凹部が設けられ、コイルスプリングの軸方向他端は凹部の内側に嵌まっている。
これにより、コイルスプリングを軸方向他端側において外周側でガイドすることができる。このため、コイルスプリングを内、外周の両側でガイドすることができるので、さらに座屈等の虞を低減することができる。
【0018】
〔請求項3の手段〕
請求項3の手段によれば、スプールの軸方向一端には、軸方向一端側に突出する凸部が設けられ、凸部は、コイルスプリングの軸方向他端側の内周に嵌まっている。
これにより、支持部材をスプールに対するストッパとして機能させる場合、軸方向に厚みを有する突出部によりスプールの当接を受けることができる。このため、支持部材の強度確保が容易になる。
【0019】
〔請求項4の手段〕
請求項4の手段によれば、突出部にはコイルスプリングを引っ掛ける突起が設けられている。
これにより、コイルスプリングが支持部材から脱落する虞を低減することができるので、電磁弁の組み立てをより確実に行なうことができる。
【0020】
〔請求項5の手段〕
請求項5の手段によれば、第1切れ込みとは別に、基部において内周縁から外周縁に達することなく外周に広がる切れ込みと、突出部において内周面から外周面に達する切れ込みとが軸方向に一続きに設けられている。そして、第1切れ込みとは別に、一続きに設けられた2つの切れ込みを併せて第2切れ込みと定義すれば、第2切れ込みは2つ以上設けられている。
これにより、突出部によるコイルスプリングのガイドを、周方向に分散して均等化することができるので、コイルスプリングをより安定してガイドすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】電磁弁の全体構成図である(実施例1)。
【図2】電磁弁の要部構成図である(実施例1)。
【図3】(a)は支持部材の平面図であり、(b)は(a)のA−A断面図であり、(c)は(a)のB−B断面図であり、(d)は(a)のC−C断面図である(実施例1)。
【図4】電磁弁の要部構成図である(実施例2)。
【図5】電磁弁の要部構成図である(実施例3)。
【図6】支持部材の平面図である(変形例)。
【図7】支持部材の平面図である(変形例)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
実施形態1の電磁弁は、流体の流出入口である複数のポートが形成された筒状のスリーブと、スリーブの内部で軸方向へ摺動自在に支持されて複数のポート間の連通状態を可変するスプールと、スリーブおよびスプールの軸方向他端側でスプールと同軸的に配置され、通電により磁束を発生するコイルと、コイルの内周側に配置され、コイルが発生する磁束により軸方向一端側に吸引されてスプールを軸方向一端側に駆動する可動鉄心と、スリーブの内部でスプールの軸方向一端側にセットされ、スプールを軸方向他端側に付勢するコイルスプリングと、スリーブの内部でコイルスプリングの軸方向一端側に配置されてコイルスプリングの軸方向一端を支持する支持部材とを備える。
【0023】
また、支持部材は、円環状の基部と、基部の内周縁を包囲するように基部から軸方向他端側に突出してコイルスプリングの軸方向一端側の内周に嵌まる筒状の突出部とを有する。さらに、支持部材では、基部において内周縁から外周縁に達する切れ込みと、突出部において内周面から外周面に達する切れ込みとが軸方向に一続きに設けられている。そして、一続きに設けられた2つの切れ込みを併せて第1切れ込みと定義すれば、支持部材は、第1切れ込みにより周方向に弾性を具備する。
【0024】
また、スプールの軸方向一端には、軸方向一端側に開口する凹部が設けられ、コイルスプリングの軸方向他端は凹部の内側に嵌まっている。
さらに、第1切れ込みとは別に、基部において内周縁から外周縁に達することなく外周に広がる切れ込みと、突出部において内周面から外周面に達する切れ込みとが軸方向に一続きに設けられている。そして、第1切れ込みとは別に、一続きに設けられた2つの切れ込みを併せて第2切れ込みと定義すれば、第2切れ込みは2つ以上設けられている。
【0025】
実施形態2の電磁弁によれば、スプールの軸方向一端には、軸方向一端側に突出する凸部が設けられ、凸部は、コイルスプリングの軸方向他端側の内周に嵌まっている。
実施形態3の電磁弁によれば、突出部にはコイルスプリングを引っ掛ける突起が設けられている。
【実施例】
【0026】
〔実施例1の構成〕
実施例1の電磁弁1の構成を、図1〜図3に基づいて説明する。
電磁弁1は、流体の流出入口である複数のポート2が形成された筒状のスリーブ3と、スリーブ3の内部で軸方向へ摺動自在に支持されて複数のポート2間の連通状態を可変するスプール4と、スリーブ3およびスプール4の軸方向他端側でスプール4と同軸的に配置され、通電により磁束を発生するコイル5と、コイル5の内周側に配置され、コイル5が発生する磁束により軸方向一端側に吸引されてスプール4を軸方向一端側に駆動する可動鉄心6と、スリーブ3の内部でスプール4の軸方向一端側にセットされ、スプール4を軸方向他端側に付勢するコイルスプリング7と、スリーブ3の内部でコイルスプリング7の軸方向一端側に配置されてコイルスプリング7の軸方向一端を支持する支持部材8とを備える。
【0027】
また、電磁弁1では、スリーブ3、スプール4、コイルスプリング7および支持部材8等により流体の流路切り替え等を行う弁部10が構成され、コイル5および可動鉄心6等により弁部10を動作させるための駆動力を発生するソレノイド部11が構成されている。そして、電磁弁1は、例えば、可変バルブタイミング機構や自動変速機における油圧供給先の切替に利用されている。
【0028】
スリーブ3は、例えば、5つのポート2(以下、ポート2を軸方向一端から他端側に、順次、ポート2a、2b、2c、2d、2eと呼ぶことがある。)が軸方向に並ぶように設けられている。また、スリーブ3の内周面には、ポート2aの軸方向一端側、ポート2a、2bの間、ポート2b、2cの間、ポート2c、2dの間、ポート2d、2eの間、および、ポート2eの軸方向他端側に、それぞれ、スプール4の摺接を受ける円筒状の摺接面12a、12b、12c、12d、12e、12fが設けられている。
【0029】
また、スリーブ3は、軸方向両端が開放されている略円筒状に設けられ、スリーブ3の内部の軸方向一端は支持部材8により区画されている。また、スリーブ3の軸方向他端にはヨーク13がかしめ固定されており、スリーブ3の内部の軸方向他端はソレノイド部11により封鎖されている。
【0030】
スプール4は、例えば、軸方向に並ぶ4つのランド部(以下、4つのランド部を軸方向一端から他端側に、順次、ランド部14a、14b、14c、14dと呼ぶ。)を有している。そして、ランド部14aは、摺接面12aに摺接してスリーブ3の内部における流体の流動領域を軸方向一端側で封鎖する。また、ランド部14dは、摺接面12fに摺接してスリーブ3の内部における流体の流動領域を軸方向他端側で封鎖する。
【0031】
また、ランド部14bは、摺接面12bおよび摺接面12cの少なくとも一方に摺接し、摺接面12bに摺接してポート2b、2c間が連通している状態と、摺接面12cに摺接してポート2a、2b間が連通している状態とを切り替える。
また、ランド部14cは、摺接面12dおよび摺接面12eの少なくとも一方に摺接し、摺接面12eに摺接してポート2c、2d間が連通している状態と、摺接面12dに摺接してポート2d、2e間が連通している状態とを切り替える。
なお、ランド部14dの軸方向他端には、可動鉄心6に当接する当接部15が設けられている。
【0032】
コイル5は、コイルボビン17に巻回されており、ターミナル18を介して電源から給電される。
可動鉄心6は、コイルボビン17の内周側に配置される非磁性のカップ19内に収容され、カップ19の内周面に摺動しながら軸方向に移動する。また、可動鉄心6の軸方向一端面にスプール4の当接部15が当接している。
【0033】
また、可動鉄心6の軸方向一端側ではカップ19の外周側に固定鉄心20が配置され、可動鉄心6の外周側ではコイルボビン17とカップ19との間に磁性材からなる筒体21が配置され、コイル5の外周側には筒状のヨーク13が配置されている。さらに、ヨーク13に設けられた段部と固定鉄心20との間には、電磁弁1を自動変速機等に取り付けるためのブラケット22が挟まっており、ブラケット22は、磁性材により設けられている。
【0034】
このため、コイル5に通電が行なわれると、可動鉄心6、固定鉄心20、ブラケット22、ヨーク13および筒体21を通る磁束が発生し、この磁束により、可動鉄心6が軸方向一端側に吸引されてスプール4を軸方向一端側に移動させる。
なお、可動鉄心6には呼吸孔(図示せず)が設けられており、可動鉄心6の軸方向一端側と他端側との間で気体の流出入が可能となっている。そして、可動鉄心6の軸方向一端側と他端側との間で気体の流出入が可能となることで、可動鉄心6が円滑に軸方向に移動することができる。
【0035】
コイルスプリング7は、スリーブ3の内部において支持部材8とスプール4との間で軸方向にセットされている。ここで、スプール4の軸方向一端を占めるランド部14aには、軸方向一端側に開口する凹部24が設けられ、コイルスプリング7の軸方向他端は凹部24の内側に嵌まっている。
【0036】
支持部材8は、スリーブ3の内周に設けられた環状の溝25に嵌まっている。また、支持部材8は、円環板状の基部27と、基部27の内周縁27aを包囲するように基部27から軸方向他端側に突出してコイルスプリング7の軸方向一端側の内周に嵌まる筒状の突出部28とを有する。さらに、支持部材8では、基部27において内周縁27aから外周縁27bに達する切れ込み29aと、突出部28において内周面28aから外周面28bに達する切れ込み29bとが軸方向に一続きに設けられている(以下、一続きに設けられた切れ込み29a、29bを併せて第1切れ込み29と呼ぶことがある。)。そして、支持部材8の全体が第1切れ込み29の存在により周方向に弾性を具備する。
【0037】
これにより、支持部材8は、スナップリングの機能を有し、第1切れ込み29が周方向に狭まるように周方向に圧縮されて溝25に嵌まり、基部27の外周縁27bが溝25の底面に環状に圧接している。
ここで、切れ込み29aは、内周縁27aから外周側に向かい放射状に広がって外周縁27bで開口している。また、切れ込み29bは、切れ込み29aの内周縁27aにおける開口から、軸方向他端側に垂直に連続しており、突出部29bの軸方向の全範囲で内周面28aから外周面28bに達している。
【0038】
また、切れ込み29aの外周縁27bにおける開口は、開口の周方向両端から伸びる膨出部30により狭まっている。そして、膨出部30には、支持部材8をスリーブ3に装着する際に支持部材8を保持する治具(図示せず)の一部が嵌まる穴31が設けられ、支持部材8は、穴31に治具の一部が嵌まった状態で治具に保持されてスリーブ3に装着される。
【0039】
なお、支持部材8は、コイルスプリング7により軸方向一端側に付勢され、溝25の両側面の内の軸方向一端側の側面に当接し、軸方向他端側の側面との間に軸方向の隙間を形成している。つまり、溝25の軸方向幅は、支持部材8を装着しやすくするため、基部27の軸方向幅に対して余裕を有するように設定されている。
【0040】
さらに、支持部材8には、第1切れ込み29とは別に、基部27において内周縁27aから外周縁27bに達することなく外周に広がる切れ込み33aと、突出部28において内周面28aから外周面28bに達する切れ込み33bとが軸方向に一続きに設けられている(以下、第1切れ込み29とは別に、一続きに設けられた切れ込み33a、33bを併せて第2切れ込み33と呼ぶことがある。)。そして、突出部28は、第1、第2切れ込み29、33の両方の存在により周方向に弾性を具備する。
【0041】
これにより、突出部28は、切れ込み29a、33aが周方向に狭まるように周方向に圧縮されてコイルスプリング7の軸方向一端側の内周に嵌まり、外周側に張ってコイルスプリング7の軸方向一端側をガイドする。
ここで、切れ込み33aは、基部27の内周縁27aから外周側に向かい放射状に広がり、外周縁27bの内周側で広がりが止まっている。また、切れ込み33bは、切れ込み33aの内周縁27aにおける開口から、軸方向他端側に垂直に連続しており、突出部28の軸方向の全範囲で内周面28aから外周面28bに達している。
【0042】
また、突出部28が凹部24よりも小径であることから、突出部28は、スプール4が軸方向一端側に駆動されると凹部24内に相対的に移動し、ランド部14aの軸方向一端(スプール4の軸方向一端)は、基部27に当接して更なる軸方向一端側への移動を規制される。このため、基部27は、スプール4に対するストッパとして機能する。
【0043】
さらに、突出部28がコイルスプリング7の軸方向一端側の内周に嵌まることで、コイルスプリング7の軸方向一端は基部27に当接する。このため、基部27は、コイルスプリング7の支持座として機能する。
なお、第2切れ込み33は2つ設けられており、突出部28は、第1、第2切れ込み29、33の存在により、周方向に、第1、第2切れ込み29、33の総数に等しい3つに分割されている。また、第1切れ込み29および2つの第2切れ込み33は、支持部材8の軸心の周囲に略等角度間隔で設けられている。
【0044】
〔実施例1の効果〕
実施例1の電磁弁1は、スリーブ3の内部でスプール4の軸方向一端側にセットされ、スプール4を軸方向他端側に付勢するコイルスプリング7と、スリーブ3の内部でコイルスプリング7の軸方向一端側に配置されてコイルスプリング7の軸方向一端を支持する支持部材8とを備える。また、支持部材8では、基部27において内周縁27aから外周縁27bに達する切れ込み29aと、突出部28において内周面28aから外周面28bに達する切れ込み29bとが軸方向に一続きに設けられている。そして、支持部材8は、一続きに設けられた切れ込み29a、29bを併せた第1切れ込み29により周方向に弾性を具備する。
【0045】
これにより、電磁弁1の製造工程を、スリーブ3やヨーク13等の電磁弁1の外殻体内に一旦挿入した部材の飛び出しをさほど懸念する必要がない簡素な工程にすることができる。
すなわち、例えば、ヨーク13内にコイル5や可動鉄心6等の部材を順次に挿入してソレノイド部11を組み立てた後、ヨーク13にスリーブ3をかしめ固定し、その後、スリーブ3内にスプール4やコイルスプリング7等を挿入し、最後に支持部材8を周方向に弾性圧縮してスリーブ3に装着し、挿入した部材の飛び出しを防止する。
【0046】
このため、電磁弁1の製造工程では、弁部10およびソレノイド部11を個別に組み立てた後、ヨーク13にスリーブ3をかしめ固定する場合に比べて、一旦挿入した部材の飛び出しをさほど懸念する必要がないので、製造工程を簡素化できる。
【0047】
また、支持部材8を、コイルスプリング7の支持座およびスプール4に対するストッパとして機能させることができるとともに、スプール4等の飛び出しを防止するために装着されるスナップリングとして機能させることができる。このため、例えば、特許文献2の電磁弁で必要とされたリテーナおよびスナップリングの2部品の機能を1部品で果たすことができるので、部品点数を削減することができる。
【0048】
さらに、支持部材8の突出部28をコイルスプリング7の軸方向一端側の内周に嵌めることで、コイルスプリング7を内周側でガイドすることができる。このため、スリーブ3やスプール4をさほど長くしなくても、電磁弁1の製造工程においてコイルスプリング7の軸方向一端側をガイドして座屈等の虞を低減することができるので、スリーブ3やスプール4の長さを抑制することができる。
【0049】
以上により、製造工程においてスリーブ3内やヨーク13内に挿入した部材の飛び出しを懸念する必要が低い電磁弁1に関し、部品点数を削減することができるとともに、スリーブ3やスプール4の長さを抑制しても製造工程においてコイルスプリング7をガイドすることができる。
【0050】
また、スプール4の軸方向一端には、軸方向一端側に開口する凹部24が設けられ、コイルスプリング7の軸方向他端は凹部24の内側に嵌まっている。
これにより、コイルスプリング7を軸方向他端側において外周側でガイドすることができる。このため、コイルスプリング7を内、外周の両側でガイドすることができるので、さらに製造工程において座屈等の虞を低減することができる。
【0051】
また、支持部材8には、第1切れ込み29とは別に、基部27において内周縁27aから外周縁27bに達することなく外周に広がる切れ込み33aと、突出部28において内周面28aから外周面28bに達する切れ込み33bとが軸方向に一続きに設けられている。そして、第1切れ込み29とは別に、一続きに設けられた切れ込み33a、33bを併せた第2切れ込み33は2つ設けられている。
これにより、突出部28によるコイルスプリング7の軸方向一端側のガイドを、周方向に分散して均等化することができるので、コイルスプリング7をより安定してガイドすることができる。
【0052】
〔実施例2〕
実施例2の電磁弁1によれば、図4に示すように、ランド部14aの軸方向一端には、軸方向一端側に突出する凸部35が設けられ、凸部35は、コイルスプリング7の軸方向他端側の内周に嵌まっている。
【0053】
これにより、支持部材8をスプール4に対するストッパとして機能させる場合、軸方向に厚みを有する突出部28によりスプール4の当接を受けることができる。このため、支持部材8の強度確保が容易になる。
なお、凸部35は突出部28と略同一径に設けられ、凹部24は凸部35よりも小径に設けられて凸部35の軸方向一端に開口している。
【0054】
〔実施例3〕
実施例3の電磁弁1によれば、図5に示すように、突出部28にはコイルスプリング7を引っ掛ける突起36が設けられている。ここで、突起36は、例えば、突出部28の軸方向他端の外周面28bから外周側に突出する鍔状を呈するものである。そして、突起36は、コイルスプリング7の内周側からコイルスプリング7を引っ掛けている。
これにより、コイルスプリング7が支持部材8から脱落する虞を低減することができるので、電磁弁1の組み立てをより確実に行うことができる。
【0055】
〔変形例〕
電磁弁1の態様は、実施例1〜3に限定されず種々の変形例を考えることができる。
例えば、実施例1〜3の電磁弁1によれば、支持部材8には第2切れ込み33が2つ設けられていたが、3つ以上の第2切れ込み33を設けてもよく、例えば、図6に示すように5つの第2切れ込み33を支持部材8に設けてもよい。さらに、図7に示すように、第2切れ込み33を設けずに、第1切れ込み29のみを設けてもよい。
また、凹部24は、軸方向他端側が閉塞している必要がなく、例えば、スプール4の軸方向他端で開口して孔を形成してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 電磁弁
2 ポート
3 スリーブ
4 スプール
5 コイル
6 可動鉄心
7 コイルスプリング
8 支持部材
24 凹部
27 基部
27a 内周縁
27b 外周縁
28 突出部
28a 内周面
28b 外周面
29 第1切れ込み
29a 切れ込み
29b 切れ込み
33 第2切れ込み
33a 切れ込み
33b 切れ込み
35 凸部
36 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流出入口である複数のポートが形成された筒状のスリーブと、
このスリーブの内部で軸方向へ摺動自在に支持されて前記複数のポート間の連通状態を可変するスプールと、
前記スリーブおよび前記スプールの軸方向他端側で前記スプールと同軸的に配置され、通電により磁束を発生するコイルと、
このコイルの内周側に配置され、前記コイルが発生する磁束により軸方向一端側に吸引されて前記スプールを軸方向一端側に駆動する可動鉄心と、
前記スリーブの内部で前記スプールの軸方向一端側にセットされ、前記スプールを軸方向他端側に付勢するコイルスプリングと、
前記スリーブの内部で前記コイルスプリングの軸方向一端側に配置されて前記コイルスプリングの軸方向一端を支持する支持部材とを備え、
この支持部材は、円環状の基部と、前記基部の内周縁を包囲するように前記基部から軸方向他端側に突出して前記コイルスプリングの軸方向一端側の内周に嵌まる筒状の突出部とを有し、
さらに、前記支持部材では、前記基部において内周縁から外周縁に達する切れ込みと、前記突出部において内周面から外周面に達する切れ込みとが軸方向に一続きに設けられ、
一続きに設けられた2つの前記切れ込みを併せて第1切れ込みと定義すれば、前記支持部材は、前記第1切れ込みにより周方向に弾性を具備することを特徴とする電磁弁。
【請求項2】
請求項1に記載の電磁弁において、
前記スプールの軸方向一端には、軸方向一端側に開口する凹部が設けられ、
前記コイルスプリングの軸方向他端は前記凹部の内側に嵌まっていることを特徴とする電磁弁。
【請求項3】
請求項1に記載の電磁弁において、
前記スプールの軸方向一端には、軸方向一端側に突出する凸部が設けられ、
この凸部は、前記コイルスプリングの軸方向他端側の内周に嵌まっていることを特徴とする電磁弁。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の内のいずれか1つに記載の電磁弁において、
前記突出部には前記コイルスプリングを引っ掛ける突起が設けられていることを特徴とする電磁弁。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の内のいずれか1つに記載の電磁弁において、
前記第1切れ込みとは別に、前記基部において内周縁から外周縁に達することなく外周に広がる切れ込みと、前記突出部において内周面から外周面に達する切れ込みとが軸方向に一続きに設けられ、
前記第1切れ込みとは別に、一続きに設けられた2つの前記切れ込みを併せて第2切れ込みと定義すれば、
この第2切れ込みは2つ以上設けられていることを特徴とする電磁弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−225429(P2012−225429A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93925(P2011−93925)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】