説明

電磁波を用いた表面部の油脂成分の検査方法及び装置

【課題】表面部の油脂成分を確実に再現性良く迅速に検査可能な表面部の油脂成分の検査方法及び装置を提供する。
【解決手段】プローブ1に備えた測定端面10に設けた窓(14)を介して、プローブ内部から検査対象の表面8に電磁波を放射し、その透過または反射された前記電磁波から油脂成分を演算して検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波を照射することによって表面部の油脂成分を検査する方法及び装置に関する。詳しくは、検査対象の生産物あるいは動植物の分泌物の湿潤、脂肪、色彩等の表面性状の電気的測定に活用することができ、生産工場等における製品表面の性状検査あるいは食品衛生管理者らが物性検査を迅速、簡便に実施しようとするときに用いて好適な、電磁波を用いた表面部の油脂成分の検査方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
比較的最近までは衛生管理を必要とする表面部の性状の測定、例えば生産物に付着した異物とか油などによる汚れは殆ど外見や触診によって行なわれていた。
【0003】
例えば、加工品の物質表面に付着した油脂量を光照射により目視で行なう観測方法があるが、定量化と迅速性に問題がある。
【0004】
又、表面部に電極を押し当てて表皮の水分を導電度やインピーダンスの変化として定量的に測定する方法が開発されており、特許文献1に示されている。
【0005】
脂肪成分の測定については、スリガラス等のサンプリング板に皮脂を付着させ、その脂肪の赤外領域における吸収波長スペクトルに基づく透過量によって測定するものがある。
【0006】
また、予め脂肪成分を採取した測定用プローブを計測本体の光学処理系に移して反射量を計測する方法があり、特許文献2に示されている。
【0007】
【特許文献1】特許第1981624号公報
【特許文献2】特許第2992595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、油脂成分や水分などによる汚れの検査を目視とか転写した試料を介して測定する従来の手法では、測定者の個人差による人為的な誤差を解消することができなった。
【0009】
本発明は、表面部の油脂成分を確実に再現性良く迅速に検査可能な表面部の油脂成分の検査方法及び装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の表面部の油脂成分の検査方法及び装置においては、検査対象の表面部に電磁界、電波、光スペクトルの領域にわたる電磁エネルギを放射し、その放射スペクトルと変化量などに基づいて油脂成分を検査可能としたものである。
【0011】
油脂成分測定手段は、脂肪に吸収波長領域を有する電磁波を検査対象の表面部に向けて放射する放射源と、その透過量又は反射量を測定する受信器(受波器とも呼ぶ)とを備え、測定値を演算することによって直ちに脂肪成分およびその存在を検出しようとするものである。
【0012】
この場合、例えば反射量を測定する時において、測定端面に装着した平面ガラスのような透過体を脂肪表面に直接押し当てた接触状態で測定するように構成する場合と、端面に装着した透過体と脂肪表面とが空隙を介して互いに非接触の状態で測定するように構成する場合とがある。
【0013】
前者の構成によれば透過体と表面部とが所定の押圧力で密着された間に脂肪を拡散させた状態を測定することができる。後者の構成では脂肪表面を在るがままの状態で測定でき、その表面部と放射源との間隔を大きくすることができると共に、放射源を有するプローブ又は表面部を高速で移動させながら検査できるという特長がある。
【0014】
又、脂肪成分測定手段に用いる電磁波の波長は、赤外放射から紫外放射までを含む各電磁又は光スペクトルが適用できる。
【0015】
殊に、380〜500nmの青色系可視放射の波長帯域に最大発光強度を有する小型発光ダイオードを選定して本発明を実施すれば、装置の小型化にも役立つ。
【発明の効果】
【0016】
本発明によって、電磁波を用いて表面部の油脂成分を検査する手法が確立されたため、測定者の技量の相違に係わらず再現性良く迅速に検出処理ができるようになった。
【0017】
また、脂肪成分の測定手段に用いる電磁波の波長は、赤外放射から紫外放射までを含む各種の波長の電磁波又は光スペクトルを適用できるが、発光ダイオードを選定して用いれば、装備の小型化と省電力化を図りながら、本発明の検出処理を容易に達成できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0019】
脂肪成分が電磁波の性質を変化させる幾つかの現象について、これを測定手段に用いる方法を検討した。
【0020】
例えば、脂肪膜を塗布した透明石英板に250〜800nmの電磁波を照射したときの透過率の測定(純水膜と比較)を公的研究機関で実験したところ、波長380nm(透過率88%)以下における紫外放射領域で透過率が低下する現象が観測された。即ち、270nmで60%、250nmで20%減少するという顕著な性状変化が明らかにされた。
【0021】
そこで図1に図示したように平面状金属、プラスチック、生体等の表面部8の一部すなわち規定の大きさの面積のスポットに対して脂肪成分8aを塗布し、これに放射源15から300nm〜4.0μmの波長領域の電磁スペクトルを選択し、それぞれを照射する実験を行った。
【0022】
380〜500nmにおけるバイオレット−ブルー系波長の電磁波を所定の入射角θで照射した場合、脂肪成分に応じて濃厚色のダークブルーに変色する傾向が目視で確認された。その照射点からの反射光量が減衰して変色する現象を、受信器16(受波器とも呼ぶ)にCCDカメラを用い撮像しながらマトリクス分布割合の実験的検討を行った結果、脂肪成分を認識できることが判った。
【0023】
この場合、脂肪成分が塗布されていない個所、又は基準の脂肪成分を付着した箇所をダミー33と設定して、その反射光量と前記脂肪成分8aからの反射光量との信号出力差を演算することにより脂肪成分の測定値を安定に算出することができる。
【0024】
放射源15はハロゲン光源に所定の光学フィルタをかけて電磁スペクトルを形成し実験に供した。また青色発光ダイオードと称する試供品を購入して放射源15とし、反射光の減衰割合を受信器16の受光素子によって測定する方法は、測定装置の簡易化小型化に役立つ手段となる。
【0025】
図2は、本発明の第1実施形態において、プローブ1の測定端面10に備えた透過体14を、表面部8の脂肪成分8aに押し当てた様子であって、透過体14と表面部8とが所定の押圧力で密着された間に脂肪が拡散される形態が示されている。従って放射源15からの電磁波が脂肪拡散部35に照射される状態で測定する方式になる。図において、3はスプリング、31はケーシング、32はスリーブである。
【0026】
図3に示す第2実施形態は、測定端面10に備えた透過体14の表面の位置が図示のように表面部8との間に空隙を設ける構造にしてあるので、脂肪成分8aに直接押し当てられることがなく表面性状を在るがままの状態で測定する方式である。
【0027】
電磁波の透過体14としては光領域の放射波長なら透明ガラス、石英などの透明体あるいは空洞であってもよい。
【0028】
表面部の状態が平面、凹凸、縞状あるいは硬質、可塑的または弾性的軟質などの性状に応じて、図2と図3との構成を適宜選択または組み合わせればよい。又、図3の場合には、放射源15又は透過体14と表面部8との間隔が大きい時にも測定が可能である。
【0029】
何れにしても電磁波が放射された時の表面状態の測定基準となるダミーを放射源15の近傍に設定する。そして検査対象の脂肪により測定された反射量と、ダミーによる反射量とを受信器16の受光素子により検出し、その信号出力差を演算して測定値を定める。あるいは受信器16としてCCDカメラ等のイメージセンサを用い前述のように脂肪成分を認識する手段を適用してもよい。
【0030】
このような測定手段は、検査対象に応じた選択波長と、入射角、放射強度、複合光などにより脂肪、水分その他の分泌物のみならず、基材色、塗装色などの彩色測定にも適用できるものである。
【0031】
本発明の脂肪成分測定手段において、電磁波透過体に用いる電磁波の波長は、赤外放射から紫外放射までを含む電磁(又は光)スペクトルを適用することが可能である。
【0032】
ハロゲンランプを放射源(発光源)15として所定の入射角(例えば45度)で入射し、受信器(受光器)16の前に光学フィルタを設置して、反射量を測定することにより、脂肪成分8aの検出を良好に行うことができる。
【0033】
また、可視放射の380〜500nmの青色系可視放射帯域に最大発光強度を有する発光ダイオードを放射源(発光源)15として用いた場合には、約60度の入射角に選定すれば良好な結果が得られることなどが実験で示されている。このような機能は、検査装置の小型化を図りながら脂肪成分の検出を容易に達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の原理を示す、測定端面と表面部の概要図
【図2】本発明の第1実施形態を示す縦断面の概要図
【図3】本発明の第2実施形態を示す縦断面の概要図
【符号の説明】
【0035】
1…プローブ
8…表面部
8a…脂肪成分
10…測定端面
14…透過体
15…放射源
16…受信器
33…ダミー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プローブに備えた測定端面の内部から検査対象の表面部に電磁波を放射し、
その透過または反射された前記電磁波の受信器による測定値から油脂成分を演算して検出することを特徴とする電磁波を用いた表面部の油脂成分の検査方法。
【請求項2】
請求項1において、前記測定端面の内部から前記電磁波を放射して油脂成分を測定する時に、透過体面に検査対象の油脂成分を有する表面部を直接押し当てて検出する手段と、前記透過体面に接触させないで検出する手段との、何れの測定手段で実施する場合においても、前記電磁波が放射された時の表面状態の測定基準となるダミーを設定しておき、検査対象の油脂により測定された透過量または反射量と前記ダミー部分における透過量または反射量とを前記受信器の受光素子又はイメージセンサにより検出し、その信号出力差を演算して測定値を定めることを特徴とする電磁波を用いた表面部の油脂成分の検査方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記電磁波の放射源に380〜500nmの波長領域において所要の測定波長に最大発光強度を有する可視放射領域を含む電磁スペクトルを選択して用いることを特徴とする電磁波を用いた表面部の油脂成分の検査方法。
【請求項4】
測定端面を備えたプローブと、
前記測定端面の内部から、検査対象の表面部に電磁波を放射し、その透過又は反射された前記電磁波から油脂成分を演算して検出する油脂成分測定手段を備えたことを特徴とする電磁波を用いた表面部の油脂成分の検査装置。
【請求項5】
請求項4において、前記油脂成分測定手段は、前記測定端面の内部から前記電磁波を放射して油脂成分を測定する時に、前記透過体面に検査対象の油脂成分を有する表面部を直接押し当てて検出する手段と、前記透過体面に接触させないで検出する手段との、何れの測定手段で実施する場合においても、前記電磁波が放射された時の表面状態の測定基準となるダミーを設定しておき、検査対象の油脂により測定された透過量又は反射量と前記ダミー部分における透過量又は反射量とを前記受信器の受光素子又はイメージセンサにより検出し、その信号出力差を演算して測定値を定めることを特徴とする電磁波を用いた表面部の油脂成分の検査装置。
【請求項6】
請求項4又は5において、前記電磁波の放射源に380〜500nmの波長領域において所要の測定波長に最大発光強度を有する可視放射領域を含む電磁スペクトルを選択して用いることを特徴とする電磁波を用いた表面部の油脂成分の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−78502(P2006−78502A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−354990(P2005−354990)
【出願日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【分割の表示】特願2005−45889(P2005−45889)の分割
【原出願日】平成17年2月22日(2005.2.22)
【出願人】(000152871)株式会社日本システム研究所 (5)
【出願人】(000187655)
【Fターム(参考)】