説明

電磁波シールドシート及び光学フィルタ

【課題】外部のアース端子との直接の接続が可能となる新しい接地構造を有し、プラズマディスプレイパネルに特別な設計や工夫を施すことなく、プラズマディスプレイ装置のコストダウンを実現し、製造過程で傷が付きにくい、新構造の電磁波シールドシート、及び光学フィルタを提供する。
【解決手段】基材フィルム2aと、基材フィルム2a上に形成された、メッシュ状パターンからなる電磁波シールド層3a及び電磁波シールド層3aに電気的に接続された接地層4aと、接地層4a及び電磁波シールド層3a上に形成された樹脂層7aと、を有し、樹脂層7aの表面に、接地層4aと向かい合うように配置された導電層5aが設けられ、導電層5aと接地層4aとが部分的に接触している電磁波シールドシート1aによって、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波シールドシート及び該電磁波シールドシートを用いた光学フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ装置はテレビやパーソナルコンピュータのモニター等、各種の分野で用いられているが、その種類は多岐にわたる。ディスプレイ装置の種類としては、例えば、CRTディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置(LCD)、プラズマディスプレイ装置、及びELディスプレイ装置等を挙げることができる。
【0003】
上記の様々なディスプレイ装置のうち、大画面ディスプレイ装置の分野では、プラズマディスプレイ装置が注目されている。プラズマディスプレイ装置は、画像表示領域に微細な画素区画パターンが形成されたプラズマディスプレイパネルを有する高精細な表示装置であり、その奥行きが薄いこと、また軽量であることから、テレビジョン、モニター等の種々の用途に利用され、今後も需要の増加が期待されている。
【0004】
しかし、こうしたプラズマディスプレイ装置は、発光にプラズマ放電を利用するため、30MHz〜1GHz帯域の不要な電磁波が外部に漏洩して他の機器(例えば、遠隔制御機器、情報処理装置等)に影響を与えるおそれがある。そのため、プラズマディスプレイ装置に用いられるプラズマディスプレイパネルの前面側(観察者側)に、漏洩する電磁波をシールドするための電磁波シールドフィルムを設けるのが一般的である。
【0005】
電磁波シールドフィルムは、プラズマディスプレイパネルの表示の視認性を落とすことなく電磁波を効率的にシールドするために、通常、金属メッシュ、及びこの金属メッシュと電気的に接続された電極部が、透明基材フィルム上に形成された形態を有する。こうした電磁波シールドフィルムは、粘着剤を用いてディスプレイパネルの表示面に貼付される。そして、外部のアース端子と上記の電極部とを電気的に接続することにより、金属メッシュが接地される。
【0006】
透明基材フィルム上に形成される金属メッシュを接地するための構造として、特許文献1では、ディスプレイパネルの周縁に接地電極を設置し、この接地電極に設けられた突起又は突条を利用する構造が提案されている。具体的には、金属メッシュ及び電極部が透明基材フィルム上に設けられた電磁波シールドフィルムを、粘着剤層を介してディスプレイパネルに貼り合わせるにあたり、上記の金属メッシュ及び電極部とディスプレイパネルとを対向するように配置する。そして、ディスプレイパネルの周縁に接地電極を設置し、この接地電極に設けられた突起又は突条を電磁波シールドフィルムの電極部に貫通させることにより、金属メッシュの接地を行っている。
【特許文献1】特開2006−196760号公報(第0026段落〜第0027段落、第0033段落〜第0036段落、図2、図5、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、同文献の図5に示されるように、プラズマディスプレイパネル/粘着剤層/金属メッシュ及び電極部/基材フィルム、の順番で各部材が配置される(以下、「金属メッシュ」を「メッシュ状パターンからなる電磁波シールド層」又は、単に「電磁波シールド層」という。また、「電極部」を「接地層」という。)。
【0008】
上記の配置においては、導電性の電磁波シールド層及び接地層が、絶縁性の基材フィルムと、絶縁性の粘着剤層及びプラズマディスプレイパネル(表示面はガラス基板)とに挟まれる構造になり、外部のアース端子を接地層に接続して電磁波シールド層の接地を行うことが困難となる。このため、同文献においては、プラズマディスプレイパネルの周縁に接地電極を設けて、この接地電極と接地層とを電気的に接続するという構造を採用する。ところが、こうした接地電極の設置は、プラズマディスプレイパネル側での新たな設計変更を生じさせるものであり、容易に行えるものではない。また、接地電極に突起又は突条を設ける分、プラズマディスプレイ装置全体のコストが増加する問題もある。さらに、同文献の図6に記載されるように、接地電極に設けられた突起又は突条を接地層に貫通させるために圧縮ロールを用いているが、こうした圧縮ロールの採用により、圧縮ロールの押圧によって電磁波シールドシートに傷が付きやすくなるという問題もある。
【0009】
そこで、上記した電磁波シールド層の接地の困難性を回避するために、電磁波シールドシートとプラズマディスプレイパネルとを粘着剤層を介して貼り合わせる際に、電磁波シールドシートの基材フィルム側の表面とプラズマディスプレイパネルとを対向するように配置することが考えられる。この場合、プラズマディスプレイパネル/粘着剤層/基材フィルム/電磁波シールド層及び接地層、の順番に各部材が配置されるので、導電性の電磁波シールド層及び接地層が表面(観察者側)に位置することになり、外部のアース端子を接地層に接続して電磁波シールド層の接地を行うことが容易となる。
【0010】
しかしながら、電磁波シールド層及び接地層が表面(観察者側)に位置するような部材構成においても、製造コストの低減の観点から、電磁波シールドシートの電磁波シールド層上に平坦化層等の樹脂層を連続的に形成して電磁波シールドシートを製造する場合に、接地層上に絶縁性の樹脂層が形成される場合がある。また、同様に、製造コストの低減の観点から、電磁波シールドシートの電磁波シールド層上に連続的に光学調整層を設けて光学フィルタを製造する場合に、接地層上に絶縁性の光学調整層が設けられる場合がある。この点につき、以下さらに説明する。
【0011】
図5は、電磁波シールドシートの連続的な製造工程を示す模式的断面図である。電磁波シールドシート巻き取りロール50は、長尺の基材フィルム56の表面に一組の電磁波シールド層52及び接地層51が連続的かつ断続的に複数設けられてロール状に巻き取られたものである。図5に示すように、まず、電磁波シールドシート巻き取りロール50から長尺の基材フィルム56を引き出しながら、電磁波シールド層52及び接地層51上に、塗工機53から吐出される樹脂層形成用の塗布液54を連続的に塗布する。樹脂層形成用の塗布液54を電磁波シールド層52に塗布することにより、メッシュ状パターンにより形成される凹凸が被覆されることになる。樹脂層形成用の塗布液54には、通常、紫外線硬化性樹脂が用いられる。また、形成される樹脂層を平坦化層として機能させる場合には、塗布後の塗布膜表面への透明な平坦化基板の押圧及び紫外線照射による硬化を経て樹脂層(平坦化層)が形成される。その後、後続の工程に備えて、樹脂層が連続的に形成された長尺の基材フィルム56を再度ロール状に巻き取ってもよいし、1つの電磁波シールドシート部分55毎に切り出して電磁波シールドシートを1枚ごと製造してもよい。こうした製造方法を経る結果、電磁波シールドシート部分55の表面には、連続的に樹脂層が形成されることとなり、接地層51上にも紫外線硬化性樹脂よりなる絶縁性の樹脂層が存在することになる。
【0012】
図11は、光学フィルタの連続的な製造工程を示す模式的断面図である。電磁波シールドシート巻き取りロール60は、図5の電磁波シールドシート巻き取りロール50と同様のものである。一方、光学調整層巻き取りロール63は、長尺の光学調整層64がロール状にされたものである。光学フィルタの製造は、以下のようにして行われる。まず、電磁波シールドシート巻き取りロール60から長尺の基材フィルム66を引き出すとともに、光学調整層巻き取りロール63からローラー67を介して長尺の光学調整層64を引き出し、長尺の基材フィルム66と長尺の光学調整層64とを、必要に応じて接着剤を用い、圧接ローラー68a,68bにより圧着する。その後、後続の工程に備えて、光学調整層が連続的に形成された長尺の基材フィルム66を再度ロール状に巻き取ってもよいし、1つの電磁波シールドシート部分65毎に切り出して光学フィルタを1枚ごと製造してもよい。こうした製造方法を経る結果、電磁波シールドシート部分65の表面には、連続的に光学調整層が形成されることとなり、電磁波シールド層62のみならず接地層61上にも光学調整層が存在することになる。
【0013】
図5に示す方法で製造される電磁波シールドシートにおける平坦化層、及び図11に示す方法で製造される光学フィルタにおける光学調整層は、形成領域を制御することにより、電磁波シールド層及び接地層の全面に形成せずに設けることはできる。この点について、光学フィルタを例に説明する。
【0014】
図12は、光学調整層が連続的に形成された光学フィルタの模式的斜視図である。光学フィルタ71は、基材フィルム69上に形成された電磁波シールド層62及び接地層61からなる電磁波シールドシートを有し、電磁波シールド層62上及び接地層61の一部の上に透明な光学調整層70が設けられている。より詳しくは、透明かつ絶縁性の光学調整層70は、電磁波シールド層62の短辺の幅と略同一の幅を有するようにして、電磁波シールド層62上及び接地層61の一部の上に連続的に形成されている。したがって、接地層61のうち、斜線で示すZAの領域は、導電性の接地層61が表面に存在することになるために、外部のアース端子との接続は問題なく行うことができるが、接地層61のうち、光学調整層70が上部に設けられたZBの領域では、光学調整層70の存在により、ZBの領域から外部のアース端子への接続を行うことはできない。ところが、電磁波シールド機能を確実に確保するためには、接地層61において、なるべく均等に配置された多数の点において外部のアース端子との接続を行うことが重要である。このため、接地層61におけるZBの領域からも接地を行う必要があるという課題がある。そして、以上説明した事情は、樹脂層が連続的に形成された電磁波シールドシートにおいても全く同様であり、こうした電磁波シールドシートにおいても同様の課題が存在する。
【0015】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、外部のアース端子との直接の接続が可能となる新しい接地構造を有し、プラズマディスプレイパネルに特別な設計や工夫を施すことなく、プラズマディスプレイ装置のコストダウンを実現し、製造過程で傷が付きにくい、新構造の電磁波シールドシートを提供することにある。
【0016】
また、本発明の他の目的は、外部のアース端子との直接の接続が可能となる新しい接地構造を有し、プラズマディスプレイパネルに特別な設計や工夫を施すことなく、プラズマディスプレイ装置のコストダウンを実現し、製造過程で傷が付きにくい、新構造の光学フィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するための本発明の電磁波シールドシートは、基材フィルムと、該基材フィルム上に形成された、メッシュ状パターンからなる電磁波シールド層及び該電磁波シールド層に電気的に接続された接地層と、該接地層及び前記電磁波シールド層上に形成された樹脂層と、を有する電磁波シールドシートにおいて、前記樹脂層の表面に、前記接地層と向かい合うように配置された導電層が設けられ、該導電層と前記接地層とが部分的に接触していることを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、樹脂層の表面に、接地層と向かい合うように配置された導電層が設けられ、導電層と接地層とが部分的に接触しているので、樹脂層の表面と接地層ひいては電磁波シールド層との電気的な接続が確保され、その結果、外部のアース端子との直接の接続が可能となる接地構造を有する電磁波シールドシートを得ることができる。
【0019】
本発明の電磁波シールドシートの好ましい態様においては、前記導電層と前記接地層との部分的な接触が超音波接合により行われている。
【0020】
この発明によれば、導電層と接地層との部分的な接触が超音波接合により行われているので、導電層と接地層との安定な電気的接続が可能となり、その結果、安定した接地特性を有する電磁波シールドシートを得ることができる。
【0021】
本発明の電磁波シールドシートの好ましい他の態様においては、前記導電層及び前記接地層に同一の金属材料を用いる。
【0022】
この発明によれば、導電層及び接地層に同一の金属材料を用いるので、導電層と接地層との接合が強固になり、その結果、導電層と接地層との間の電気抵抗をより低減できる。
【0023】
本発明の電磁波シールドシートの好ましい他の態様においては、前記導電層が前記樹脂層の表面の面内に複数設けられている。
【0024】
この発明によれば、導電層が樹脂層の表面の面内に複数設けられているので、導電層と接地層とが電気的に接続される箇所が増加し、その結果、電磁波シールド層の接地を行いやすくなる。
【0025】
上記課題を解決するための本発明の光学フィルタは、基材フィルムと、該基材フィルム上に形成された、メッシュ状パターンからなる電磁波シールド層及び該電磁波シールド層に電気的に接続された接地層と、該接地層及び前記電磁波シールド層上に形成された光学調整層と、を有する光学フィルタにおいて、前記光学調整層の表面に、前記接地層と向かい合うように配置された導電層が設けられ、該導電層と前記接地層とが部分的に接触していることを特徴とする。
【0026】
この発明によれば、光学調整層の表面に、接地層と向かい合うように配置された導電層が設けられ、導電層と接地層とが部分的に接触しているので、光学調整層の表面と接地層ひいては電磁波シールド層との電気的な接続が確保され、その結果、外部のアース端子との直接の接続が可能となる接地構造を有する光学フィルタを得ることができる。
【0027】
本発明の光学フィルタの好ましい態様においては、前記導電層と前記接地層との部分的な接触が超音波接合により行われている。
【0028】
この発明によれば、導電層と接地層との部分的な接触が超音波接合により行われているので、導電層と接地層との安定な電気的接続が可能となり、その結果、安定した接地特性を有する光学フィルタを得ることができる。
【0029】
本発明の光学フィルタの好ましい他の態様においては、前記導電層及び前記接地層に同一の金属材料を用いる。
【0030】
この発明によれば、導電層及び接地層に同一の金属材料を用いるので、導電層と接地層との接合が強固になり、その結果、導電層と接地層との間の電気抵抗をより低減できる。
【0031】
本発明の光学フィルタの好ましい他の態様においては、前記導電層が前記光学調整層の表面の面内に複数設けられている。
【0032】
この発明によれば、導電層が光学調整層の表面の面内に複数設けられているので、導電層と接地層とが電気的に接続される箇所が増加し、その結果、電磁波シールド層の接地を行いやすくなる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の電磁波シールドシートによれば、樹脂層の表面に、接地層と向かい合うように配置された導電層が設けられ、導電層と接地層とが部分的に接触しているので、外部のアース端子との直接の接続が可能となる接地構造を有する電磁波シールドシートを得ることができる。そして、本発明の電磁波シールドシートによれば、プラズマディスプレイパネルに特別な設計や工夫を施すことなく、プラズマディスプレイ装置のコストダウンを実現し、製造過程で傷が付きにくい、新構造の電磁波シールドシートを提供できる。
【0034】
本発明の光学フィルタによれば、光学調整層の表面に、接地層と向かい合うように配置された導電層が設けられ、導電層と接地層とが部分的に接触しているので、外部のアース端子との直接の接続が可能となる接地構造を有する光学フィルタを得ることができる。そして、本発明の光学フィルタによれば、プラズマディスプレイパネルに特別な設計や工夫を施すことなく、プラズマディスプレイ装置のコストダウンを実現し、製造過程で傷が付きにくい、新構造の光学フィルタを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
次に、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0036】
[電磁波シールドシート及びその製造方法]
(電磁波シールドシート)
図1は、本発明の電磁波シールドシートの一例を示す模式的な斜視図であり、図2は、図1におけるA−A’面の模式的な断面図であり、図3は、図2の一部を拡大して示す模式的な断面図である。
【0037】
本発明の電磁波シールドシート1aは、基材フィルム2aと、基材フィルム2a上に形成された、メッシュ状パターンからなる電磁波シールド層3a及び電磁波シールド層3aに電気的に接続された接地層4aと、接地層4a及び電磁波シールド層3a上に形成された樹脂層7aと、を有し、樹脂層7aの表面13aに、接地層4aと向かい合うように配置された導電層5aが設けられ、導電層5aと接地層4aとが部分的に接触している。なお、本発明において、「導電層と接地層とが部分的に接触している」とは、図2,3に示すような、断続的に導電層5aと接地層4aとが接触している場合のように、導電層の少なくとも一部が接地層と接触している接触形態をいう。このため、こうした接触形態としては、図2,3に示されるようなものに限られず、例えば、導電層の全面が接地層と接触するようなものを用いてもよい。また、本発明においては、樹脂層は接地層の全面に設けてもよいが、図1に示すように、樹脂層7aを接地層4aの表面の一部に設けてもよい。
【0038】
電磁波シールドシート1aにおいては、樹脂層7aの表面13aに、接地層4aと向かい合うように配置された導電層5aが設けられ、導電層5aと接地層4aとが部分的に接触しているので、樹脂層7aの表面13aと接地層4aひいては電磁波シールド層3aとの電気的な接続が確保され、その結果、外部のアース端子との直接の接続が可能となる接地構造が形成される。
【0039】
電磁波シールドシート1aにおいては、導電層5aと接地層4aとの部分的な接触が超音波接合により行われている。導電層5aと接地層4aとの部分的な接触が超音波接合により行われているので、導電層5aと接地層4aとの安定な電気的接続が可能となり、その結果、安定した接地特性を有する電磁波シールドシート1aを得ることができる。なお、導電層と接地層との電気的な接続方法としては、超音波接合の他、例えば、回転押圧体の内部にある固定ヒータを用いた加熱による接合(例えば、特開2006−209393号公報を参照)、ヒータが内蔵された伝熱性のかしめ刃による接合(例えば、特開2006−107418号公報を参照)、及びレーザ光を用いた加熱による接合(例えば、特開2006−209395号公報を参照)等を用いることもできる。
【0040】
基材フィルム2aは、透明なフィルムであり、従来公知のものを用いることができる。具体的には、透明性の高い樹脂フィルムが用いられる。基材フィルム2aの透明性は、分光光度計等を利用して測定される可視光線透過率で80%以上であることが好ましい。樹脂フィルムの材料としては、透明性、耐熱性、コスト等の観点から、通常、ポリエチレンテレフタレートが用いられる。また、こうした樹脂フィルムは、1軸延伸又は2軸延伸した延伸シートが用いられ、より好ましくは2軸延伸した延伸シートが用いられる。基材フィルム2aの厚さは、機械的強度、反りや弛み、破断、及び帯状で供給して加工すること等を考慮して、通常12μm以上、通常1000μm以下とする。
【0041】
基材フィルム2aの表面には、電磁波シールド層3a及びこの電磁波シールド層3aに電気的に接続された接地層4aがそれぞれ設けられている。
【0042】
電磁波シールド層3aは、プラズマディスプレイパネルから漏洩する電磁波をシールドするために、基材フィルム2aの一方の面に設けられる。電磁波シールド層3aは、プラズマディスプレイパネルの視認性を低下させずに電磁波シールド機能を奏するために、互いに交差する細い導電性の線群で形成されるメッシュ状パターンからなる。
【0043】
電磁波シールド層3aには、通常、電磁波シールド機能以外に、プラズマディスプレイパネルに入射する外光を吸収するという機能が付加される。このため、電磁波シールド層3aを構成するメッシュ状パターンの線群は、通常、電磁波をシールドするための金属材料で構成される金属層と、外光を吸収するための黒化層との少なくとも2層で構成される。そして、外光が入射する側に黒化層が設けられ、プラズマディスプレイパネルと対向する側に金属層が設けられるように構成される。より詳しくは、電磁波シールドシート1aにおいては、図1には図示していないが、プラズマディスプレイパネルの表示面に基材フィルム2aが対向するように、電磁波シールドシート1aがプラズマディスプレイパネルに貼り合わせられ、電磁波シールド層3aが観察者側(外光入射側)に配置される。このため、電磁波シールド層3aは、基材フィルム2a上から金属層及び黒化層の順番になるように形成される。こうした電磁波シールド層3aは、通常、黒化処理によって得られる黒化層と、銅等の金属層との2層を少なくとも有する薄膜を基材フィルム2aの全面に形成し、フォトリソグラフィー法等でメッシュ状パターンにパターニングして得る。
【0044】
電磁波シールド層3aは、通常、プラズマディスプレイパネルの表示面と同等またはそれより大きくなるように形成され、図1に示すように略長方形の形状を有する。
【0045】
接地層4aは、電磁波シールド層3aと外部のアース端子とを電気的に接続するために用いられるものである。このため、接地層4aは、メッシュ状パターンからなる電磁波シールド層3aと電気的に接続され、電磁波シールド層3aと同様に、基材フィルム2aの一方の面上に設けられている。より詳しくは、図1では、接地層4aは、電磁波シールド層3aを囲むようにして基材フィルム2a上に額縁状に設けられている。接地層4aと電磁波シールド層3aとの電気的な接続は、通常、電磁波シールド層3aのメッシュ状パターンを構成する線群と、接地層4aとを連続的に形成することによって行われる。例えば、上記のフォトリソグラフィー法でメッシュ状パターンからなる電磁波シールド層3aを形成する場合には、黒化処理によって得られる黒化層と、銅等の金属層との2層を少なくとも有する薄膜を基材フィルム2aの全面に形成する。その後フォトリソグラフィー法で、電磁波シールド層3aに該当する領域をメッシュ状パターンにパターニングすれば、パターニングが行われなかった電磁波シールド層3aの周囲の領域が接地層4aとなる。こうして得られる接地層4aの、材料、層構成、及び厚さ等は、電磁波シールド層3aと同様となる。なお、接地層は、必ずしも額縁状である必要はない。例えば、電磁波シールド層と同様にメッシュ状パターンに形成してもよい。
【0046】
樹脂層7aは、メッシュ状パターンからなる電磁波シールド層3aの凹凸を被覆するため、また、電磁波シールド層3aを保護するために用いられるものである。樹脂層7aは、電磁波シールド層3aに積層して設けられるものゆえ、十分な透明性が必要とされる。一般的には、基材フィルム2aと同程度の透明性があることが好ましい。樹脂層7aは、代表的には平坦化層として用いられる。樹脂層7aを平坦化層として用いる場合、通常、透明性が高く、後述する光学調整層と接着される際に用いられる接着剤との接着力の高い材料が用いられる。こうした材料としては、例えば、アクリル系の紫外線硬化性樹脂を挙げることができる。アクリル系の紫外線硬化性樹脂としては、電離放射線硬化性樹脂を用いることが好ましい。
【0047】
樹脂層7aの材料として紫外線硬化性樹脂を用いる場合には、例えば、重合開始剤等の添加剤を含有する液体状の紫外線硬化性樹脂を電磁波シールド層3a及び接地層4a上に塗布した後、塗布膜に紫外線を照射して硬化させることにより樹脂層7aを形成できる。
【0048】
樹脂層7aを平坦化層として用いる場合には、平坦性が高いことが望まれる。これは、樹脂層7aの表面に、突起、くぼみ、ムラがあると、プラズマディスプレイパネルの前面に設置した際に、モワレ、干渉ムラ、ニュートンリングが発生しやすくなるからである。このように、樹脂層7aに平坦性が求められる場合には、樹脂層7aを電磁波シールド層3a及び接地層4a上に形成する際に、平坦化処理を行うことが好ましい。平坦化処理は、例えば、液状の樹脂を電磁波シールド層3a及び接地層4a上に塗布した後に、平面性に優れ剥離性のある透明な平坦化基板を塗布膜に押圧した後、この基板を介して紫外線を照射するか又は加熱すること等により塗布膜を硬化させる。そして塗布膜が硬化した後に上記の基板を剥離して、樹脂層7aを得る。
【0049】
導電層5aは、樹脂層7aの表面13aと接地層4aとの間の電気的な接続を確保するために用いられるものである。より詳しくは、導電層5aは、樹脂層7aの表面13aに設けられ、接地層4aと向かい合うように配置され、接地層4aと超音波接合される。導電層5aと接地層4aとを超音波接合して部分的に接触させることにより、樹脂層7aの表面13aにおける外部のアース端子との直接の接続が可能となる。
【0050】
導電層5aは、図3に示すように、空隙部H1の底部で接地層4aと接触し溶融することにより、溶接面6aを形成する。溶接面6aは、図3では3カ所形成されているが、こうした断続的に形成される複数の溶接面6aにより、導電層5aと接地層4aとが部分的に接触することとなる。空隙部H1は、超音波接合の際に、超音波ヘッドに加えられる超音波振動及び温度によって、樹脂層7aが軟化又は溶融されて、樹脂層7aの樹脂材料が超音波ヘッドの周囲に押し出されることによって形成される。そして、空隙部H1内の樹脂層7aの樹脂材料をほとんど押し出すと、最終的に導電層5aと接地層4aとが接触して、超音波ヘッドの熱と超音波振動により、導電層5a又は接地層4aのいずれか又は両方の界面が溶融して溶接面6aが形成される。なお、図1〜3の電磁波シールドシート1aにおいては、超音波ヘッドを導電層5a側から押し込んで導電層5aに凹凸形状を形成し、溶接面6aで導電層5aと接地層4aとを接触させているが、本発明はこうした態様に限られるものではない。例えば、接地層の厚さにもよるが、超音波ヘッドを基材フィルムの側から押し込んで接地層に凹凸形状を形成し、接地層と導電層との間で溶接面を形成してもよい。また、例えば、導電層及び接地層を挟むようにして2つの超音波ヘッドを用い、一方の超音波ヘッドは導電層の側から押し込み、他方の超音波ヘッドは基材フィルムの側から押し込み、導電層及び接地層の両方に凹凸形状を形成し、導電層及び接地層が接触した部分で溶接面を形成してもよい。
【0051】
導電層5aでは、図1に示すように、溶接面6aが9カ所形成されているが、導電層一つあたりの溶接面は、通常1以上とする。上記範囲とすれば、超音波ヘッドをコンパクトに形成できるとともに、導電層と接地層との電気的接続を確保しやすくなる。
【0052】
導電層5aと接地層4aとが形成する溶接面6aの幅tは、図3に示すように、通常1.0mm以上、好ましくは2.5mm以上とする。上記範囲とすれば、導電層5aと電磁波シールド層3aとの間の電気抵抗を低減しやすくなる。
【0053】
導電層5aには、通常、金属材料が用いられる。導電層5aに用いる金属材料としては、例えば、銅、アルミニウム、及び金を挙げることができる。これらのうち、電気抵抗、コスト等の点から、銅を用いることが好ましい。一方、上記で説明したように、接地層4aに金属層が用いられる場合には、導電層5a及び接地層4aに同一の金属材料を用いることが好ましい。同一の金属材料を用いることにより、溶接面6aにおける導電層5aと接地層4aとの接合が強固になり、その結果、導電層5aと接地層4aとの間の電気抵抗をより低減できる。
【0054】
導電層5aの厚さは、通常1μm以上、好ましくは10μm以上とする。上記範囲とすれば、超音波接合時に切断されることなく溶融されやすくなり、接地層4aとの間で強固な溶接面6aを形成しやすくなる。
【0055】
図4は、電磁波シールドシートの他の一例を示す模式的な斜視図である。
【0056】
電磁波シールドシート1bにおいては、樹脂層7bの表面の面内に導電層5bが複数、より詳しくは、4カ所設けられている。そして、これら複数の導電層5bがそれぞれ接地層4bと超音波接合されている。図4に示すように、導電層5bが、接地層4bと向かい合うようにして、樹脂層7bの表面における異なる位置に複数配置されることにより、樹脂層7bの表面の面内に導電層5bが複数設けられることになる。
【0057】
電磁波シールドシート1bにおいては、導電層5bが複数設けられ、これら複数の導電層5bがそれぞれ接地層4bと超音波接合されているので、導電層5bと接地層4bとが電気的に接続される箇所が増加し、その結果、電磁波シールド層3bの接地を行いやすくなる。具体的には、電磁波シールドシート1bにおいては、一つの導電層5bあたりの溶接面6bの数が9個であるので、電磁波シールドシート1b全体でみると、36個の溶接面6bが存在することになる。このように、本発明においては、樹脂層7bの表面の面内に導電層5bが複数設けられている、すなわち導電層5bが樹脂層7bの表面の異なる位置に複数設けられることが好ましいが、電磁波シールドシートに設けられる導電層の数は、通常1以上、好ましくは4以上とする。この範囲とすれば、電磁波シールド層の接地が行いやすくなる。
【0058】
電磁波シールドシート1a,1bは、図1〜4に示されるように、1つの導電層5a,5bごとに、9つの溶接面からなる超音波溶接部が1つ形成されるというものである。しかしながら、本発明はこのような態様に限られるものではない。例えば、導電層を大きく設け、一つの導電層に上記の超音波溶接部を複数設けるということをしてもよい。
【0059】
(電磁波シールドシートの製造方法)
本発明の電磁波シールドシートの製造方法は、通常、電磁波シールドシート巻き取りロールの製造工程、この電磁波シールドシート巻き取りロールへの樹脂層の形成工程、導電層の接地及び超音波接合工程、の3つの工程に大きく分けることができる。具体的には、長尺の基材フィルムの表面に一組の電磁波シールド層及び接地層を連続的かつ断続的に複数設けた後にロール状に巻き取り、これを電磁波シールドシート巻き取りロールとする。次いで、この電磁波シールドシート巻き取りロールから長尺の基材フィルムを引き出す。そして、この長尺の基材フィルム上に連続的かつ断続的に形成された電磁波シールド層及び接地層上に、樹脂層を連続的に形成する。その後、電磁波シールドシートを切り出すことなく連続的に、又は、電磁波シールドシート1枚毎に切り出した後に、導電層を樹脂層の表面に接地層と向き合う位置に設置し、導電層と接地層とを超音波接合する。
【0060】
図5は、電磁波シールドシートの連続的な製造工程を示す模式的断面図である。具体的には、図5は、上記3つの工程のうち、電磁波シールドシート巻き取りロールへの樹脂層の形成工程を示すものである。
【0061】
電磁波シールドシート巻き取りロール50は、長尺の基材フィルム56の表面に一組の電磁波シールド層52及び接地層51が連続的かつ断続的に複数設けられてロール状に巻き取られたものである。電磁波シールドシート巻き取りロール50は、長尺の基材フィルム56上にスパッタリングや印刷等により、黒化層と金属層とを少なくとも形成し、これをフォトリソグラフィー法でパターニングして電磁波シールド層及び接地層を一組ずつ形成する。黒化層及び金属層の形成やフォトリソグラフィー法等については、従来公知の方法をそのまま用いることができるので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0062】
樹脂層の形成は以下のようにして行われる。具体的には、図5に示すように、電磁波シールドシート巻き取りロール50から長尺の基材フィルム56を引き出す。そして、電磁波シールド層52及び接地層51上に、塗工機53から吐出される樹脂層形成用の塗布液54を連続的に塗布する。樹脂層形成用の塗布液54を電磁波シールド層52に塗布することにより、メッシュ状パターンにより形成される凹凸が被覆されることになる。ここで、図5には図示していないが、塗工機53から吐出される樹脂層形成用の塗布液52の塗布幅は、電磁波シールド層52の短辺の長さ(幅)と略同一となるように制御され、電磁波シールド層52を覆うように塗布が行われる。これにより、電磁波シールド層52の長辺の上下に位置する接地層51の各領域には樹脂層が形成されず、これらの領域では、接地層51と外部のアース端子との直接の接続が可能となる。
【0063】
樹脂層形成用の塗布液54には、通常、紫外線硬化性樹脂が用いられる。また、形成される樹脂層を平坦化層として機能させる場合には、塗布後の塗布膜表面への透明な平坦化基板の押圧及び紫外線照射による硬化を経て樹脂層(平坦化層)が形成される。
【0064】
樹脂層が連続的に形成された後は、後続の導電層の設置及び超音波接合を連続的に行う場合には、樹脂層が連続的に形成された長尺の基材フィルム56を再度ロール状に巻き取る。一方、後続の導電層の設置及び超音波接合を間欠的に行う場合には、1つの電磁波シールドシート部分55毎に切り出して電磁波シールドシートを1枚ごとに製造する。いずれにせよ、上記の連続した樹脂層の形成を行うことによって、電磁波シールドシート部分55の表面には、連続的に樹脂層が形成されることとなり、接地層51上にも一部紫外線硬化性樹脂よりなる絶縁性の樹脂層が存在することになる。
【0065】
次に、樹脂層の表面に、導電層を接地層と向き合うような位置に設置し、超音波接合を行う。導電層の設置及び超音波接合は、連続的に行ってもよいし、間欠的に行っても良い。連続的に行う場合は、通常、上記で説明したように、樹脂層が連続的に形成された長尺の基材フィルムを再度ロール状に巻き取ったものを準備し、長尺の基材フィルムをロールから引き出しながら、一組の電磁波シールド層及び接地層ごとに導電層の設置及び超音波接合を行う。一方、導電層の設置及び超音波接合を間欠的に行う場合は、通常、上記で説明したように、樹脂層が連続的に形成された長尺の基材フィルムから1つの電磁波シールドシート部分毎に裁断を行い、電磁波シールドシートを1枚ごとに製造し、これら1枚1枚の電磁波シールドシート毎に、導電層の設置及び超音波接合を行う。
【0066】
図6は、導電層の設置及び超音波接合を行う際の各工程を示す模式的な断面図である。より詳しくは、図6(a)には導電層を設置する工程が、図6(b),(c),(d)には超音波接合を行う工程が示されている。以下、各工程について説明する。
【0067】
導電層5cを設置する工程においては、図6(a)に示すように、接着層8を介して、導電層5cが樹脂層7cの表面13cに貼り付けられる。このとき、導電層5cは、樹脂層7cを挟んで接地層4cと向かい合うような位置に設置する。なお、図6(a)においては、導電層5cの片面に接着層8を設けることにより、樹脂層7cの表面13c上での導電層5cの設置・固定が行われるが、本発明はこのような態様に限られるものではない。例えば、接着層を用いることなく、導電層を樹脂層上に単に裁置するだけでもよい。また、例えば、スクリーン印刷、パターン印刷等の印刷法、スパッタリングや蒸着等の物理的気相成長法(Physical vapor deposition:PVD)を用いて樹脂層上に導電層の形成を行ってもよい。
【0068】
次に、超音波接合を行う工程においては、まず、図6(b)に示すように、所定の温度に加熱された超音波ヘッド9が超音波振動しながら導電層5cから接地層4c及び基材フィルム2cへの方向(下向き方向)に移動する。そして、超音波ヘッド9を樹脂層7c側に押し込みながら、超音波ヘッド9に加えられる超音波振動及び温度によって、樹脂層7cの材料が軟化又は溶融されて、超音波ヘッド9の周囲に押し出される。そして、図6(c)に示すように、導電層5cが接地層4cに接し、接触面が超音波接合されて溶接面6cが形成される。その後、図6(d)に示すように、超音波ヘッド9を接地層4cから導電層5cへの方向(上向き方向)に移動させて、超音波接合によって形成された溶接面6cから、離脱させる。溶接面6cの形成により、導電層5cと接地層4cとの電気的な接続が行われ、ひいては、導電層5cと電磁波シールド層3cとの電気的な接続が行われることになる。以上を経て、電磁波シールドシート1cが製造される。
【0069】
導電層5cと接地層4cとは、樹脂層7cを介して超音波接合される。樹脂層7cが比較的薄い場合には、超音波接合を良好に行いやすいが、樹脂層7cが相対的に厚くなると、導電層5cと接地層4cとを接合するに際し、超音波接合の条件の設定が重要となる。具体的には、超音波接合に用いる超音波ヘッド9の加熱温度、振幅、荷重、及び押し込み量の制御が重要となる。
【0070】
超音波ヘッド9の加熱温度は、樹脂層7cに用いる樹脂の軟化温度よりも高い温度に設定することが好ましい。より具体的には、超音波ヘッド9の加熱温度は、通常50℃以上、好ましくは80℃以上とする。加熱温度を上記範囲とすれば、軟化・溶融による樹脂層7cの除去が行われやすくなる。
【0071】
超音波ヘッド9の振幅は、通常8.5μm以上、好ましくは10μm以上とする。超音波ヘッド9の振幅を上記範囲とすれば、軟化・溶融した樹脂層7cをより効率的に除去することが可能となる。
【0072】
超音波接合の際に、超音波ヘッド9にかける荷重は、通常50N以上、好ましくは200N以上とする。超音波ヘッド9にかける荷重を上記範囲とすれば、軟化・溶融した樹脂層7cをより効率的に除去することが可能となる。
【0073】
超音波ヘッド9の押し込み量は、樹脂層7cの厚さにも依存するが、通常50μm以上、好ましくは75μm以上とする。超音波ヘッド9の押し込み量を上記範囲とすれば、接地層4cを傷づけにくく、効率的な超音波接合が行われやすくなる。
【0074】
以上説明した超音波接合の工程は、工業的には、例えば、特開2006−79258号公報に記載された超音波接合の方法、装置を適宜応用して行うこともできる。
【0075】
[光学フィルタ及びその製造方法]
(光学フィルタ)
図7は、本発明の光学フィルタの一例を示す模式的な斜視図であり、図8は、図7におけるB−B’面の模式的な断面図であり、図9は、図8の一部を拡大して示す模式的な断面図である。
【0076】
本発明に係る第1の光学フィルタ10aは、基材フィルム2dと、基材フィルム2d上に形成された、メッシュ状パターンからなる電磁波シールド層3d及び電磁波シールド層3dに電気的に接続された接地層4dと、接地層4d及び電磁波シールド層3d上に形成された光学調整層15aと、を有し、光学調整層15aの表面16aに、接地層4dと向かい合うように配置された導電層5dが設けられ、導電層5dと接地層4dとが部分的に接触している。
【0077】
光学フィルタ10aにおいては、光学調整層15aの表面16aに、接地層4dと向かい合うように配置された導電層5dが設けられ、導電層5dと接地層4dとが部分的に接触しているので、光学調整層15aの表面16aと接地層4dひいては電磁波シールド層3dとの電気的な接続が確保され、その結果、外部のアース端子との直接の接続が可能となる接地構造を有する光学フィルタ10aを得ることができる。
【0078】
光学フィルタ10aにおいては、導電層5dと接地層4dとの部分的な接触が超音波接合により行われている。導電層5dと接地層4dとの部分的な接触が超音波接合により行われているので、導電層5dと接地層4dとの安定な電気的接続が可能となり、その結果、安定した接地特性を有する光学フィルタ10aを得ることができる。なお、導電層と接地層との電気的な接続方法としては、超音波接合の他、様々な方法を用いることが可能であることは、電磁波シールドシートにおいてすでに説明したとおりである。
【0079】
光学フィルタ10aは、樹脂層の代わりに光学調整層15aが設けられていること以外は、基本的には、図1〜3で説明した電磁波シールドシート1aと同様とすればよい。したがって、光学フィルタ10aにおける好ましい態様や変形例も、基本的に電磁波シールドシート1aと同様とすればよい。以下、光学フィルタ10aの好ましい態様について代表的なものをいくつか説明する。
【0080】
光学フィルタ10aにおいて、導電層5dとして金属を用い、接地層4dに金属層が用いられる場合には、導電層5d及び接地層4dに同一の金属材料を用いることが好ましい。同一の金属材料を用いることにより、溶接面6dにおける導電層5dと接地層4dとの接合が強固になり、その結果、導電層5dと接地層4dとの間の電気抵抗をより低減できる。
【0081】
導電層5dと接地層4dとが形成する溶接面6dの幅tは、図9に示すように、通常1.0mm以上、好ましくは2.5mm以上とする。上記範囲とすれば、導電層5dと電磁波シールド層3dとの間の電気抵抗を低減しやすくなる。光学調整層15aとして、例えば50μm以上の比較的厚いものを用いる場合には、導電層5dと接地層4dとの電気的接続を確実にするために、接合面6dの幅tを上記範囲に制御することが重要となる。
【0082】
光学フィルタ10aは、上記で説明したように、樹脂層の代わりに光学調整層15aが設けられている点で電磁波シールドシート1aと異なる。そこで、以下では、電磁波シールドシート1aとの相違点である光学調整層15aについて説明を行う。
【0083】
光学調整層15aとしては、通常、公知のものをそのまま用いればよい。例えば近赤外線吸収層、ネオン光吸収層、紫外線吸収層、反射防止層、ハードコート層、防汚層、及び防眩層等を挙げることができる。これら層を複数用いる場合における層を積層する順番は、用いる用途に応じて適宜調整すればよい。また、それぞれの層の厚さはそれぞれの光学調整層15a毎に適当な厚さが設定される。
【0084】
近赤外線吸収層は、通常、プラズマディスプレイパネルから放射される近赤外線を吸収するために設けることができる。近赤外線吸収層を設けることにより、プラズマディスプレイ装置の近くで使用されるリモートコントロール装置の誤作動等を防止することができる。近赤外線吸収層は、例えば、ジインモニウム系化合物、フタロシアニン系化合物等の近赤外線吸収剤をバインダ樹脂中に添加した塗料を、電磁波シールド層3dや接地層4d上に塗工する、又は透明基材上にかかる近赤外線吸収塗料を塗工したものを電磁波シールド層3dや接地層4d上に接着剤で接着することにより設けることができる。
【0085】
ネオン光吸収層は、通常、プラズマディスプレイパネルから放射されるネオン光を吸収するために設けることができる。ネオン原子の発光スペクトル帯域は波長550〜640nmであるので、ネオン光吸収層は、通常、少なくとも550〜640nmの波長領域内に吸収極大を有する色素をバインダ樹脂に分散させた層とすることが好ましく、中心波長590nmにおける光線透過率が50%以下になるように含有量等を調整することがより好ましい。
【0086】
紫外線吸収層は、外光としてプラズマディスプレイパネルに入射する紫外線を吸収して、プラズマディスプレイパネルを構成する材料の紫外線劣化を防ぐために設けることができる。また、上記のような有機系の近赤外線吸収剤を含有する近赤外線吸収層を設ける場合には、この近赤外線吸収剤は紫外線により劣化しやすいため、紫外線吸収層を近赤外線吸収層より外側に積層することが好ましい。紫外線吸収層は、通常、紫外線吸収剤をバインダ樹脂に分散させた層を電磁波シールド層3dや接地層4d上に設ける、又は紫外線吸収層を有するシートを電磁波シールド層3dや接地層4d上に貼り合わせて設けることができる。
【0087】
反射防止層(AR(Anti Reflection)層)は、通常、光干渉で反射光を抑制するために設けることができる。反射防止層としては、通常、低屈折率層が最表面に位置するようにして低屈性率層と高屈折率層とを交互に積層した多層構成からなるものが好ましく用いられる。
【0088】
ハードコート層(HC(Hard Coat)層)は、通常、光学調整層15a表面を保護するために設けることができる。ハードコート層は、通常、電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等で形成される。
【0089】
防眩層(AG(Anti Glare)層)は、光拡散によって外光の鏡面反射を低減し、ギラツキを防止するために設けることができる。防眩層は、通常、透明樹脂バインダ中にこれと屈折率の異なるシリカ等の無機フィラーを分散させた層として、又は透明樹脂層表面にエンボス加工等で光拡散性の微小な凹凸を賦形したものとして形成することができる。
【0090】
防汚層は、通常、基材フィルム2dに付着する汚れを防止するために設けることができる。防汚層は、撥水性や撥油性を有する層であり、通常、シロキサン系化合物や、フッ素化アルキルシリル化合物等が用いられる。
【0091】
光学調整層15aは、求められる性能に応じて、以上説明した各層を適宜選択して用いればよい。光学調整層15aの厚さは、通常1.0μm以上、好ましくは5.0μm以上とする。上記範囲とすれば、光学調整層としての所定の機能を付与しやすくなる。また、光学調整層15aの厚さが50μm以上と相対的に厚くなる場合には、導電層5cと接地層4cとの電気的な接続を確保するために、導電層5cと接地層4cとを接合するに際しての超音波接合の条件の設定が重要となる。
【0092】
図10は、本発明の光学フィルタのさらに他の一例を示す模式的な斜視図である。光学フィルタ10bでは、導電層5eが、光学調整層15bの表面の面内に複数設けられている。また、いずれの導電層5eも、接地層4eと向かい合うように配置されている。そして、これら複数の導電層5eがそれぞれ接地層4eと超音波接合により部分的に接触している。より詳しくは、図10に示すように、光学調整層15bの表面の面内に導電層5eが4カ所設けられている。こうして導電層5eが光学調整層15bの表面の面内に複数設けられているので、導電層5eと接地層4eとが電気的に接続される箇所が増加し、その結果、電磁波シールド層3eの接地を行いやすくなる。具体的には、光学調整層15bの表面の異なる位置に設けられた4カ所の導電層5eにより溶接面6eが36個形成されている。このように、本発明においては、導電層5eが光学調整層15bの表面の面内に複数設けられていること、すなわち、導電層5eが光学調整層15bの表面の異なる位置に複数設けられることが好ましい。光学フィルタに設けられる上記の導電層の数は、通常1以上、好ましくは4以上とする。この範囲とすれば、電磁波シールド層の接地が行いやすくなる。
【0093】
(光学フィルタの製造方法)
本発明の光学フィルタの製造方法は、通常、電磁波シールドシート巻き取りロールの製造工程、必要に応じこの電磁波シールドシート巻き取りロールへの樹脂層の形成工程、この電磁波シールドシート巻き取りロールへの光学調整層の形成工程、導電層の接地及び超音波接合工程、の4つの工程に大きく分けることができる。これらのうち、電磁波シールドシート巻き取りロールへの光学調整層の形成工程以外の工程については、電磁波シールドシートの製造方法と同様とすればよいので、ここでの説明は省略する。
【0094】
図11は、光学フィルタの連続的な製造工程を示す模式的断面図であり、より詳しくは、電磁波シールドシート巻き取りロールへの光学調整層の形成工程の一例が示されている。電磁波シールドシート巻き取りロール60は、図5の電磁波シールドシート巻き取りロール50と同様のものであるが、図5に示す方法で樹脂層を形成した後の電磁波シールド巻き取りロールを使用してもよい。一方、光学調整層巻き取りロール63は、長尺の光学調整層64がロール状にされたものである。
【0095】
光学フィルタの製造は、図11に示すように、まず、電磁波シールドシート巻き取りロール60から長尺の基材フィルム66を引き出すとともに、光学調整層巻き取りロール63からローラー67を介して長尺の光学調整層64を引き出し、長尺の基材フィルム66と長尺の光学調整層64とを、必要に応じて接着剤を用い、圧接ローラー68a,68bにより圧着する。その後、後続の工程に備えて、光学調整層が連続的に形成された長尺の基材フィルム66を再度ロール状に巻き取ってもよいし、1つの電磁波シールドシート部分65毎に切り出して光学フィルタを1枚ごと製造してもよい。いずれにせよ、上記の連続した光学調整層の貼り合わせを行うことによって、電磁波シールドシート部分65の表面には、連続的に光学調整層が形成されることとなり、電磁波シールド層62のみならず接地層61上にも一部光学調整層が存在することになる。
【0096】
光学調整層巻き取りロール63の幅は、図11には図示していないが、電磁波シールド層の短辺の長さを略同一とされ、電磁波シールド層62を覆うように、長尺の光学調整層64が長尺の基材フィルム66に貼り合わせられる。これにより、電磁波シールド層62の長辺の上下に位置する接地層61の各領域には光学調整層が設けられず、これらの領域では、接地層61と外部のアース端子との直接の接続が可能となる。この点について、最終的に得られる光学フィルタを用いて以下説明する。
【0097】
図12は、光学調整層が連続的に形成された光学フィルタの模式的斜視図である。光学フィルタ71においては、光学調整層70の幅は、電磁波シールド層62の短辺と略同一となっている。このため、図11に示すような方法で、長尺の光学調整層64を長尺の基材フィルム66連続的に貼り合わせたとしても、図12に示すように、接地層61のうちZA領域においては、光学調整層70は形成されない。このため、ZAの領域からは、外部のアース端子への直接の接続が可能となる。そして、接地層61のうち、光学調整層70で覆われるZBの領域においては、接地層61と外部アース端子との直接の接続ができなくなる。一方、接地層61は、通常薄膜であるので、外部のアース端子との接続箇所は、接地層61の面内で偏在させることなく、均等に配置することが重要である。こうした場合に、接地層61のうちのZB領域においても外部のアース端子との接続が必要となり、本発明の接地構造の利点が発揮されることとなる。
【0098】
[プラズマディスプレイ装置への適用]
図13は、本発明の光学フィルタを適用したプラズマディスプレイ装置の模式的断面図である。より詳しくは、7〜9図に示す光学フィルタ10aをプラズマディスプレイ装置に適用したものである。
【0099】
プラズマディスプレイ装置100は、プラズマディスプレイパネル80と、光学フィルタ10aの基材フィルム2dとが、粘着層75を挟んで向かい合うように設置されている。そして、光学調整層15aの表面16aに存在する導電層5dと、外部アース端子90とを電気的に接続することにより、電磁波シールド層3dが接地されている。
【0100】
プラズマディスプレイ装置100では、図7〜9の光学フィルタ10aについてのみ説明したが、上記において紹介したその他の電磁波シールドシート1a,1bや、光学フィルタ10bにおいても同様の効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の電磁波シールドシートの一例を示す模式的な斜視図である。
【図2】図1におけるA−A’面の模式的な断面図である。
【図3】図2の一部を拡大して示す模式的な断面図である。
【図4】電磁波シールドシートの他の一例を示す模式的な斜視図である。
【図5】電磁波シールドシートの連続的な製造工程を示す模式的断面図である。
【図6】導電層の設置及び超音波接合を行う際の各工程を示す模式的な断面図である。
【図7】本発明の光学フィルタの一例を示す模式的な斜視図である。
【図8】図7におけるB−B’面の模式的な断面図である。
【図9】図7の一部を拡大して示す模式的な断面図である。
【図10】本発明の光学フィルタのさらに他の一例を示す模式的な斜視図である。
【図11】光学フィルタの連続的な製造工程を示す模式的断面図である。
【図12】光学調整層が連続的に形成された光学フィルタの模式的斜視図である。
【図13】本発明の光学フィルタを適用したプラズマディスプレイ装置の模式的断面図である。
【符号の説明】
【0102】
1a,1b,1c 電磁波シールドシート
2a,2b,2c,2d,2e,69 基材フィルム
3a,3b,3c,3d,3e,52,62 電磁波シールド層
4a,4b,4c,4d,4e,51,61 接地層
5a,5b,5c,5d,5e 導電層
6a,6b、6c,6d、6e 溶接面
7a,7b,7c 樹脂層
8 接着層
9 超音波ヘッド
10a,10b,71 光学フィルタ
13a,13c 樹脂層の表面
15a,15b,70 光学調整層
16a 光学調整層の表面
50,60 電磁波シールドシート巻き取りロール
53 塗工機
54 樹脂層形成用の塗布液
55,65 電磁波シールドシート部分
56,66 長尺の基材フィルム
63 光学調整層巻き取りロール
64 長尺の光学調整層
67 ローラー
68a,68b 圧接ローラー
75 粘着層
80 プラズマディスプレイパネル
90 外部アース端子
100 プラズマディスプレイ装置
H1 空隙部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、該基材フィルム上に形成された、メッシュ状パターンからなる電磁波シールド層及び該電磁波シールド層に電気的に接続された接地層と、該接地層及び前記電磁波シールド層上に形成された樹脂層と、を有する電磁波シールドシートにおいて、
前記樹脂層の表面に、前記接地層と向かい合うように配置された導電層が設けられ、該導電層と前記接地層とが部分的に接触していることを特徴とする電磁波シールドシート。
【請求項2】
前記導電層と前記接地層との部分的な接触が超音波接合により行われている、請求項1に記載の電磁波シールドシート。
【請求項3】
前記導電層及び前記接地層に同一の金属材料を用いる、請求項1又は2に記載の電磁波シールドシート。
【請求項4】
前記導電層が前記樹脂層の表面の面内に複数設けられている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電磁波シールドシート。
【請求項5】
基材フィルムと、該基材フィルム上に形成された、メッシュ状パターンからなる電磁波シールド層及び該電磁波シールド層に電気的に接続された接地層と、該接地層及び前記電磁波シールド層上に形成された光学調整層と、を有する光学フィルタにおいて、
前記光学調整層の表面に、前記接地層と向かい合うように配置された導電層が設けられ、該導電層と前記接地層とが部分的に接触していることを特徴とする光学フィルタ。
【請求項6】
前記導電層と前記接地層との部分的な接触が超音波接合により行われている、請求項5に記載の光学フィルタ。
【請求項7】
前記導電層及び前記接地層に同一の金属材料を用いる、請求項5又は6に記載の光学フィルタ。
【請求項8】
前記導電層が前記光学調整層の表面の面内に複数設けられている、請求項5〜7のいずれか1項に記載の光学フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−26814(P2009−26814A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−185917(P2007−185917)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】