説明

電磁波シールドフィルムの製造方法

【課題】微細で寸法精度の高い金属導電部を有し、電磁波シールド性および光透過性に優れた電磁波シールドフィルムを安価で簡便に製造する方法を提供すること。
【解決手段】本発明に係る電磁波シールドフィルムの製造方法は、溶融押出成形法により表面にメッシュ状の凹部3を有する透明基材1を形成する工程と、該メッシュ状の凹部3内に金属導電部4を形成する工程とを含むことを特徴とする。前記透明基材表面のメッシュ状の凹部3は、溶融押出成形法により該透明基材1を成形する際に、メッシュ状の凸部が設けられた冷却ロール2を該透明基材1の表面に圧着することにより形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネルの前面板フィルターなどに好適に用いられる電磁波シールドフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大型の薄型ディスプレイとしてプラズマディスプレイパネル(以下「PDP」ともいう。)が注目されている。
PDPは、2枚の板状ガラスの間に封入したネオンなどの希ガスに電圧を加え、その時に生じる紫外線を発光体に当てることで可視光を発生させている。しかしながら、可視光発生の際に電磁波や近赤外線なども放射されるため、人体に与える影響や周辺の電子機器を誤作動させるといった問題がある。そのため、PDPの前面に、電磁波シールドフィルムや近赤外線吸収フィルムなどが積層された前面板フィルターが設けられている。
【0003】
上記電磁波シールドフィルムとして、たとえば、フィルム基材上に銀(Ag)などの金属薄膜層をスパッタリング法などにより形成した、いわゆるスパッタリングタイプの電磁波シールドフィルムが知られている(たとえば、特許文献1参照)。しかしながら、スパッタリングタイプの電磁波シールドフィルムは、電磁波シールド性と光透過性との両立が難しいという問題がある。
【0004】
これに対して、電磁波シールド性と光透過性とを両立することができる電磁波シールドフィルムとして、たとえば、銅などの金属箔をフィルム基材上にラミネートした後、フォトレジスト法を用いてエッチング処理することにより金属導電部を形成した、いわゆるエッチングメッシュタイプの電磁波シールドフィルムが知られている(たとえば、特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、従来のエッチング処理法では、金属箔の積層、金属箔上へのレジスト膜の形成、露光および現像によるレジストパターンの形成、エッチングによる金属導電部の形成、レジスト膜の剥離、さらに必要に応じて金属導電部の開口部に透明樹脂を埋め込んで電磁波シールドフィルムの表面を平滑にするといった多くの煩雑な工程を経なければならないという問題があった。
【0006】
また、電磁波シールド性および光透過性をさらに向上させるため、より微細で寸法精度の高い金属導電部の形成が求められるとともに、電磁波シールドフィルムの低コスト化が要求されている現状において、従来のエッチング処理法等では、線幅が20μm以下の微細で寸法精度の高い金属導電部を安価に形成することが難しく、またエッチング処理工程における工程数の短縮や大幅なコスト削減も難しいという問題があった。
【0007】
したがって、より微細で寸法精度の高い金属導電部を簡便かつ安価に形成する方法、ならびに、電磁波シールド性および光透過性に優れた電磁波シールドフィルムの開発が求められている。
【特許文献1】特開平1−278800号公報
【特許文献2】特開平11−145676号公報
【特許文献3】特開2002−258759号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、微細で寸法精度の高い金属導電部を有し、電磁波シールド性および光
透過性に優れた電磁波シールドフィルムを安価で簡便に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った。その結果、溶融押出成形法により表面にメッシュ状の凹部を有する透明基材を形成し、その凹部内に金属導電部を形成することにより、寸法精度に優れた微細な金属導電部を有し、電磁波シールド性および透明性に優れた電磁波シールドフィルムを簡便かつ経済的に製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明に係る電磁波シールドフィルムの製造方法は、溶融押出成形法により表面にメッシュ状の凹部を有する透明基材を形成する工程と、該メッシュ状の凹部内に金属導電部を形成する工程とを含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の電磁波シールドフィルムの製造方法は、前記電磁波シールドフィルムの金属導電部を有する面に、589nmにおける前記透明基材の屈折率との差が0.1以下となる屈折率を有する透明被覆層を形成する工程をさらに含んでもよい。
【0012】
本発明の電磁波シールドフィルムの製造方法は、前記金属導電部の表面を黒化処理する工程や、前記金属導電部が形成された透明基材を焼成する工程をさらに含んでもよい。
本発明の製造方法により、表面にメッシュ状の凹部が形成された透明基材と、該メッシュ状の凹部内に形成された線幅が20μm以下の金属導電部とを有する電磁波シールドフィルムを安価に得られる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、透明基材のフィルム成形と同時に透明基材の表面にメッシュ状の凹部が形成されるため、フィルム成形と別個にメッシュ状の凹部を形成する工程を設ける必要がない。また、フィルム幅に渡ってしわや変形を生じることなく均一にメッシュ状の凹部を形成することができるとともに、線幅が20μm以下の微細で寸法精度の高い金属導電部を透明基材上に簡便に形成することが可能である。したがって、従来のエッチングメッシュタイプの電磁波シールドフィルムと比較して、電磁波シールド性および光透過性に優れ、かつ安価な電磁波シールドフィルムを得ることができる。
【0014】
また、本発明の方法を用いれば、透明基材に形成したメッシュ状の凹部内に金属導電部が形成されるため、従来のように金属メッシュの開口部に透明樹脂を埋め込むといった平滑処理を行わなくても、充分な表面平滑性を有する電磁波シールドフィルムが得られる。
【0015】
さらに、本発明の電磁波シールドフィルムに、該電磁波シールドフィルムの金属導電部を有する面を被覆する透明被覆層を積層して、被覆層付き電磁波シールドフィルムとすることもできる。透明被覆層と透明基材との屈折率差を0.1以下とすることにより、ヘイズを低下させて透明性をさらに向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る電磁波シールドフィルムの製造方法について、詳細に説明する。
本発明の製造方法により得られる電磁波シールドフィルムは、表面にメッシュ状の凹部が形成された透明基材と、該メッシュ状の凹部内に形成された金属導電部とを有する。このような電磁波シールドフィルムは、図1に示すように、透明基材1を溶融押出法でフィルム成形する際に、冷却ロール2の表面に設けたメッシュ状の凸部を透明基材1に圧着して該凸部のメッシュパターンを転写することにより、メッシュ状の凹部3を形成し、該メッシュ状の凹部3内に金属導電部4を形成することにより製造することができる。
【0017】
上記透明基材としては、可視波長領域において十分な透明性を有していれば特に限定されず、たとえば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート、ナイロン、トリアセチルセルロース(TAC)、ノルボルネン系樹脂などの材質からなる透明樹脂フィルムを用いることができる。好ましくは、後述するエンボス加工に適した耐熱性および強度を有する、ノルボルネン系フィルムが用いられる。プラスチックの材質は、単独でも、2種以上を混合したものでもよい。これらの中では、PET、PEN、TAC、PC、ノルボルネン系樹脂が、耐熱性、透明性、価格などの点から好ましく、特に、下記式(1)で表される少なくとも1種の化合物を含む単量体を開環重合し、さらに水素添加して得られたノルボルネン系樹脂が、上記透明基材の材質として好適である。
【0018】
【化1】

【0019】
上記式(1)中、R1〜R4は、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の炭化水素基またはその他の1価の有機基を表す。R1〜R4は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子およびケイ素原子からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子を1個以上含む1価の極性基であってもよく、R1〜R4のうち少なくとも一つが、酸素原子、窒素原子、硫黄原子およびケイ素原子からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子を1個以上含む1価の極性基であることが好ましい。また、R1とR2および/またはR3とR4が相互に結合してアルキリデン基を形成していてもよく、R1とR2、R3とR4またはR2とR3が相互に結合して炭素環もしくは複素環を形成してもよい。該炭素環もしくは複素環は、単環構造でも多環構造でもよく、また芳香環でも非芳香環でもよい。mは0〜3の整数であり、pは0または1である。
【0020】
上記式(1)で表される化合物の具体例としては、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]−3−ドデセン等が挙げられる。
上記透明基材として用いられるプラスチックフィルムの可視光線透過率は、80%以上であることが好ましい。可視光透過率が80%未満であると、得られる前面板フィルターが透過率の低いものとなるため、PDPの表示画面が十分な明度を有さないことがある。
【0021】
本発明に用いられる透明基材は、溶融押出法によりフィルム成形して製造される。本発明における溶融押出法においては、通常、押出機に熱可塑性ノルボルネン系樹脂を投入する前に、熱可塑性ノルボルネン系樹脂中に含まれている水分、気体(酸素など)、残溶剤などを予め除去することを目的として、Tg以下の適切な温度で樹脂の乾燥を行う。
【0022】
乾燥に用いる乾燥機は特に限定されるものではないが、通常、熱風循環乾燥機、除湿式乾燥機、真空乾燥機、窒素などの不活性ガス循環式乾燥機などが用いられ、熱可塑性ノルボルネン系樹脂の揮発成分または溶存酸素を効率よく取り除ける点で、特に不活性ガス循環式乾燥機または真空乾燥機を用いることが好ましい。
【0023】
また、ホッパー中での吸湿や酸素の吸収を抑えるため、ホッパーを窒素やアルゴンなど
の不活性ガスでシールしたり、減圧状態に保持できる真空ホッパーを使用したりすることも好ましい。
【0024】
さらに、押出機シリンダーには、溶融押出し中に発生する揮発成分を取り除くためにベント機能や、酸素混入によるポリマーの劣化を抑えるために窒素やアルゴンなどの不活性ガスによりシールする機能を設けることが好ましい。
【0025】
押出成形法としては、押出機により樹脂を溶融し、ギアポンプにより定量供給し、これを金属フィルターでろ過により不純物を除去して、ダイにてフィルム形状に賦型し、引き取り機を用いてフィルムを冷却し、巻き取り機を用いて巻き取る方法が一般的に使用される。
【0026】
押出成形に使用される押出機としては、単軸、二軸、遊星式、コニーダー、バンバリーミキサータイプなど、いずれを用いてもよいが、好ましくは単軸押出機が用いられる。また、押出機のスクリュウ形状としては、ベント型、先端ダルメージ型、ダブルフライト型、フルフライト型などがあり、圧縮タイプとしては、緩圧縮タイプ、急圧縮タイプなどがあり、フルフライト型緩圧縮タイプが好ましい。
【0027】
計量に使用するギアポンプに関しては、ギアの間で下流側より戻される樹脂が、系内に入る内部潤滑方式と、外部に排出される外部潤滑方式とがあるが、熱安定性が良好でない熱可塑性ノルボルネン系樹脂の場合には、外部潤滑方式が好ましい。ギアポンプのギア歯の切り方は、軸に対して平行な方向よりも、ヘリカルタイプの方が計量の安定化の点から好ましい。
【0028】
異物のろ過に使用するフィルターに関しては、リーフディスクタイプ、キャンドルフィルタータイプ、リーフタイプ、スクリーンメッシュなどが挙げられるが、比較的滞留時間分布が小さく、ろ過面積を大きくすることが可能なリーフディスクタイプのものが好ましい。フィルターエレメントとしては、金属繊維焼結タイプ、金属粉末焼結タイプ、金属繊維/粉末積層タイプなどが挙げられる。
【0029】
フィルターのセンターポールの形状には、外流タイプ、六角柱内部流動タイプ、円柱内部流動タイプなどが挙げられるが、滞留部が小さい形状であれば、いずれの形状を選択することも可能であるが、好ましくは外流タイプである。
【0030】
溶融された熱可塑性ノルボルネン系樹脂は、ダイから吐出され、冷却ロールに密着固化されて目的とするフィルムに成形される。ダイ形状に関しては、ダイ内部の樹脂流動を均一にすることが必須であり、フィルムの厚みの均一性を保つためには、ダイ出口近傍でのダイ内部の圧力分布が幅方向で一定であることが必須である。また、幅方向での樹脂の流量がほぼ一定であり、ダイの出口での流量の微調整をリップ開度により調整可能な範囲で一定であることが厚みの均一性を得るために必須要件である。上記条件を満たすためには、マニホールド形状がコートハンガータイプであることが好ましく、ストレートマニホールドやフィッシュテールタイプなどは、幅方向での流量分布などが発生しやすくなるために好ましくない。
【0031】
また、上記フィルムの厚み分布を均一にするためには、ダイ出口での温度分布を幅方向において一定にすることが重要であり、温度分布は±1℃以下であることが好ましく、±0.5℃以下であることがより好ましい。±1℃を超えて幅方向に温度ムラが生じていると、樹脂の溶融粘度差が生じ、厚みムラや応力分布ムラなどが生じるため、延伸操作を実施する過程において、位相差ムラが発生しやすくなり好ましくない。
【0032】
さらに、ダイ出口のリップ開き量(以下「リップギャップ」という。)は、通常、0.05〜1mm、好ましくは0.3〜0.8mm、さらに好ましくは0.35〜0.7mmである。リップギャップが上記範囲を下回ると、ダイ内部の樹脂圧力が高くなり過ぎて、樹脂がダイのリップ以外の場所から樹脂漏れを起こしやすくなるため好ましくない。一方、リップギャップが上記範囲を超えると、ダイの樹脂圧力が上がりにくくなるため、フィルムの幅方向の厚みの均一性が悪くなり好ましくない。
【0033】
ダイから押出されたフィルムは、冷却ロールによりエンボス加工が施されるとともに、冷却して固化される。本発明で用いられる冷却ロールは、そのフィルムと接触するロール面にメッシュ状の凸部パターンが設けられている。このメッシュ状の凸部パターンをフィルムに圧着することにより、該メッシュ状の凸部パターンがフィルムに転写されて、透明基材の表面にメッシュ状の凹部が形成される。
【0034】
冷却ロール表面についても、押出機シリンダーやダイスの内面などと同様に、各種の表面処理が行われることが好ましい。これらの表面処理は、押出フィルムのロール表面への密着を防いでフィルムの厚み斑発生を防ぐとともに、冷却ロール表面精度を高くし、表面硬度が高いために傷などがつきにくく、連続してフィルムの製造を行っても安定してフィルム表面精度を保ち、かつ厚み斑がないフィルムを製造できる点で好ましい。
【0035】
押出機(シリンダー・スクリューなど)やダイスの材質としては、SCM系の鋼鉄、SUSなどのステンレス材などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、押出機シリンダー、ダイスの内面および押出機スクリュー表面には、クロム、ニッケル、チタンなどのメッキが施されたもの、PVD(Physical Vapor Deposition)法などにより、TiN、TiAlN、TiCN、CrN、DLC(ダイアモンド状カーボン)などの被膜が形成されたもの、WCなどのタングステン系物質、サーメットなどのセラミックが溶射されたもの、表面が窒化処理されたものなどを用いることが好ましい。このような表面処理は、樹脂との摩擦係数が小さいため、均一な樹脂の溶融状態が得られる点で好ましい。
【0036】
本発明における溶融押出フィルムを製造する際の樹脂温度(押出機シリンダー温度)としては、通常、200〜350℃、好ましくは220〜320℃である。樹脂温度が前記範囲よりも低いと、樹脂を均一に溶融させることができない場合があり、一方、前記範囲を超えると、溶融時に樹脂が熱劣化して表面性に優れた高品質なフィルムの製造が困難になることがある。さらに、上記温度範囲内であって、樹脂のガラス転移温度(Tg)に対して、Tg+120℃〜Tg+160℃の範囲内の温度であることが特に好ましい。例えば、樹脂のTgが130℃であれば、フィルム製造にとって特に好ましい温度範囲は250℃〜290℃である。
【0037】
また、溶融押出時のせん断速度としては、通常、1〜500(1/sec)、好ましくは2〜350(1/sec)、より好ましくは5〜200(1/sec)である。押出時のせん断速度が前記範囲を下回ると、樹脂を均一に溶融させることができないため厚み斑が小さい押出フィルムが得られないことがあり、一方、前記範囲を超えると、せん断力が大きすぎて樹脂および添加物が分解・劣化し、押出フィルムの表面に発泡、ダイライン、付着物などの欠陥が生じてしまうことがある。
【0038】
上記冷却ロールのメッシュ状の凸部の断面形状は、上記条件でエンボス加工を行えば、形状の異常を引き起こしにくいことから特に限定されず、たとえば、三角形、四角形、台形、多角形、半円状などの形状が挙げられ、冷却ロール表面のメッシュ状の凸部の加工性や寸法精度を考慮して適宜選択すればよい。また、凸部の幅は、通常、1〜50μmであり、5〜35μmが好ましい。凸部の最高部の高さは、通常、5〜50μmであり、5〜
30μmが好ましい。
【0039】
上記メッシュ状の凸部を構成するメッシュパターンの形状は、特に限定されるものではなく、例えば、格子状や、連結したリング状等の一定の基本形状が連続するパターンが好ましい。メッシュのピッチ(線間隔)は、通常、50〜500μmであり、100〜300μmが好ましい。また、メッシュ状の凸部の周辺部には、このようなパターンとは異なるパターンを設けてもよい。例えば、メッシュ状の凸部をその周辺部に沿って囲むような凸部パターンを設けることにより、電磁波シールドフィルムにアース電極を設けることができる。
【0040】
このようなメッシュ状の凸部を有する冷却ロールは、通常、フォトエッチング加工や機械加工などによって作製される。
透明基材表面のメッシュ状の凹部は、前述のように、冷却ロール表面のメッシュ状の凸部のパターンが転写されて形成されるものである。そのため、これらの凹部と凸部のパターンは鏡像関係となり、該凹部の好適な幅、深さ、ピッチやパターン形状は、それぞれ凸部の各寸法等と同一である。ここで、凸部の高さは凹部の深さに対応する。
【0041】
本発明の溶融押出フィルムの厚みは、通常、10〜500μm、好ましくは20〜200μm、より好ましくは40〜120μmである。厚みが前記範囲を下回ると、機械的強度が不足することがあり、一方、前記範囲を超えると、厚みや表面性などが均一なフィルムを製造することが難しいばかりか、得られたフィルムを巻き取ることが困難になり、さらには可視光透過率も低下することがある。
【0042】
本発明における原反フィルムの厚み分布は、通常、平均値に対して±5%以内、好ましくは±3%以内、より好ましくは±1%以内である。厚み分布が前記範囲を超えると、透明性等の光学性能が不均一になることがある。
【0043】
上記透明基材には、エンボス加工を施す面の反対側の面に保護フィルムが積層されていてもよい。また、前記保護フィルムの代わりに、近赤外カット、ネオンカット、色調調整、反射防止、帯電防止などの機能を持たせた機能性光学フィルムを透明基材に積層させてもよい。なお、このような機能性光学フィルムは金属導電部形成後に透明基材に積層させる。また、エンボス加工および金属導電部形成時は上記保護フィルムを透明基材に積層させておき、金属導電部形成後に保護フィルムを剥離して機能性光学フィルムを積層させてもよい。上記保護フィルムまたは機能性光学フィルムには、さらにセパレーターが積層されていてもよい。
【0044】
上記メッシュ状の凹部内に形成される金属導電部を構成する金属としては、銅、銀、金、白金、鉄、ニッケル、アルミニウム、タングステン、クロム、チタンなどの導電性を有する金属、およびこれらの金属の2種以上を組み合わせた合金、さらには炭素などが挙げられる。上記金属は1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、加工性、導電性および価格の観点から銅および銀を主成分とすることが好ましい。
【0045】
上記金属導電部の形成方法としては、上記メッシュ状の凹部内に金属導電部を形成することができれば特に限定されず、たとえば、金属粉を含有する導電性ペーストの塗布、メッキ、スパッタリング、蒸着、印刷などが挙げられる。これらの中では、簡便かつ経済的であり、得られる金属導電部の均一性に優れることから、導電性ペーストの塗布による形成方法が好ましい。
【0046】
上記導電性ペーストとしては、銅または銀を主成分とする導電性粒子と、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂などから選ばれる樹脂成分とを含
有する混合物が挙げられる。ここで、銅または銀を主成分とする導電性粒子としては、たとえば、銀粒子とカーボンの混合物(混合物全量に対するカーボンの割合は0.2〜5質量%が好ましい。)等を挙げることができる。銀−カーボンからなる導電性粒子は、導電性粒子内にカーボンを含有させることにより、フィルムを形成した際に反射を抑制することができることから好ましい。上記導電性ペーストしては、特に、銀−カーボンからなる導電性粒子とポリエステル樹脂とを含有する導電性ペーストが好ましい。
【0047】
上記導電性ペーストの塗布は、スキージを用いた印刷のような方法によって行うことができる。塗布により過剰に付着したペーストは、スキージにより平坦化させてもよいし、表面を研磨してもよい。例えば、CMPスラリーのような研磨粒子による研磨を行ってもよい。
【0048】
上記導電性ペーストの塗布後、必要に応じて焼成を加えることができる。焼成は、100〜200℃の温度条件で、20分〜1時間程度行うことが好ましい。このような条件で焼成を行うことにより、導電性粒子の焼結が促進され、電磁波シールド特性の一つである電界シールド性能が向上するとともに、金属導電部の機械的強度が高まり、電磁波シールドフィルムの屈曲耐性が向上する。
【0049】
上記金属導電部は、線幅が細く、線間隔(ピッチ)が広くなるほど、開口率が高くなり光透過性は向上する。しかしながら、線幅を細くした場合、ピッチが広くなりすぎると、フィルム表面の導電性が不足して電磁波シールド性が低下する傾向にある。したがって、本発明においては、金属導電部の線幅が1〜50μm、好ましくは3〜30μm、特に好ましくは5〜20μmの範囲にあり、線間隔が5〜500μm、好ましくは100〜300μmの範囲にあることが望ましい。
【0050】
上記範囲の線幅および線間隔を有する金属導電部を形成することにより、良好な電磁波シールド性および光透過性が得られる。なお、本発明の方法を用いれば、線幅20μm以下のパターンを精度よく作成することが可能であり、さらには従来困難であった線幅10μm以下のパターンについても高い寸法精度で形成することも可能である。
【0051】
また、上記金属導電部の厚みは、1〜50μm、好ましくは3〜30μm、特に好ましくは5〜20μmであることが望ましい。金属導電部の厚みが上記範囲にあることにより、電磁波シールド性およびディスプレイの視野角などに優れるとともに、均一で強度に優れた金属導電部を効率的かつ経済的に形成することができる。
【0052】
上記のようにして形成された金属導電部の表面が銅などの金属色や白色系であると、可視光線反射率が増加してディスプレイのコントラストや視認性を低下させることがある。そのため、上記のようにして形成された金属導電部の表面を黒化処理することが好ましい。
【0053】
上記黒化処理の方法としては、電磁波シールド性を損なわなければ特に限定されず、従来公知の黒化処理方法、たとえば、金属導電部の表面を酸化処理する方法、ニッケルメッキやクロムメッキなどのメッキ処理による方法、アルカリ液等による表面処理による方法などが挙げられる。また、予め導電性ペーストにカーボンなどの黒色成分を混合しておくことで金属導電部を黒化することもできる。
【0054】
また、透明基材表面のメッシュ状の凹部の中に、ブラックマトリックス部を金属導電部に積層して形成することもできる。ブラックマトリックス部の形成方法としては、特に限定されず、たとえば、カーボンブラック等の炭素微粒子とポリエチレングリコール等のバインダーとを含有する組成物を塗布・乾燥等して形成する方法などが挙げられる。このよ
うに、透明基材表面のメッシュ状の凹部の中に、ブラックマトリックス部を金属導電部に積層して設けることにより、金属導電部が電磁波シールドフィルムの透明性に与える着色等の影響を低減し、電磁波シールドフィルムの透明性を高く保持することができる。
【0055】
本発明では、上記金属導電部を有する面に透明被覆層を形成してもよい(以下、透明被覆層を有する電磁波シールドフィルムを「被覆層付き電磁波シールドフィルム」という。)。
【0056】
透明被覆層は、上記金属導電部を有する面の少なくとも一部、好ましくは全部を被覆して形成される。具体的には、上記金属導電部を有する面のうち、金属導電部を含む透明基材表面のメッシュ状の凹部と、該凹部以外の表面とを被覆するように設けられる。透明被覆層を設けることにより、上記金属導電部や上記ブラックマトリックス部を物理的に保護することができる。透明被覆層の材質は、高い透明性を有していれば特に限定されないが、放射線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。
【0057】
上記透明被覆層は、589nmにおける上記透明基材の屈折率(以下、589nmにおける屈折率を単に「屈折率」という。)との差が0.1以下となる屈折率を有することが望ましい。上記透明被覆層と透明基材との屈折率差が0.1以下、好ましくは0.05以下、より好ましくは0.03以下、特に好ましくは0.01以下であることにより、透明基材表面の微小な凹凸に由来する光散乱を抑制し電磁波シールドフィルムの透光性を向上させることができる。
【0058】
上記透明被覆層に用いることができる放射線硬化性樹脂としては、透明性が高く、上記屈折率特性を有していれば特に限定されず、たとえば、(A)エチレン性不飽和基含有化合物と(B)光重合開始剤とを含有する放射線硬化性樹脂組成物が好ましい。
【0059】
上記エチレン性不飽和基含有化合物(A)としては、エチレン性不飽和基を2以上有する化合物(以下「多官能モノマー」という。)やエチレン性不飽和基を1つ有する化合物(以下「単官能モノマー」という。)が挙げられる。硬化物の屈折率を調節するために、成分(A)として、通常、透明基材の屈折率よりも高い屈折率を有する成分と、透明基材の屈折率よりも低い屈折率を有する成分とを混合して用いる。また、硬化収縮等による透明被覆層の反りを低減するために、成分(A)として、適宜、多官能モノマーと単官能モノマーとを併用することが好ましい。さらに、透明基材と透明被覆層との高い密着性を得るために、成分(A)として、透明基材の材質と化学構造が近似した成分を配合することが好ましい。
【0060】
上記成分(A)として用いることのできる多官能モノマーとしては、たとえば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロイルオキシ)イソシアヌレート、ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン(慣用名;トリシクロデカンジイルジメタノールジ(メタ)アクリレート)、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのポリエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドの付加体であるジオールのジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのエチ
レンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドの付加体であるジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルに(メタ)アクリレートを付加させたエポキシ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジビニルエーテルなどが挙げられる。
【0061】
上記多官能モノマーの中で、高屈折率の多官能モノマーとしては、トリス(2−ヒドキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロイルオキシ)イソシアヌレート、ビスフェノールAのポリエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドの付加体であるジオールのジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドの付加体であるジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルに(メタ)アクリレートを付加させたエポキシ(メタ)アクリレート等の芳香族構造を有する多官能モノマーなどが挙げられる。また、透明基材として、たとえばノルボルネン系樹脂を用いる場合には、ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロデカンジ(メタ)アクリレートなどが、基材との密着性向上の観点から好ましい。
【0062】
上記成分(A)として用いることのできる単官能モノマーとしては、たとえば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシ−2−メチルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、4−フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、3−(2−フェニルフェニル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレンオキシドを反応させたp−クミルフェノールの(メタ)アクリレート、2−ブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4−ジブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4,6−トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを複数モル変性させたフェノキシ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、7
−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシブチルビルエーテル、ラウリルビニルエーテル、セチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテルなどが挙げられる。
【0063】
上記多官能モノマーの中で、低屈折率の単官能モノマーとしては、ラウリル(メタ)アクリレート等の直鎖状アルキル基を有する単官能モノマーなどが、透明被覆層の反り低減の観点から好ましい。また、透明基材として、たとえばノルボルネン系樹脂を用いる場合には、3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリンなどが、基材との密着性向上の観点から好ましい。
【0064】
上記光重合開始剤(B)としては、光照射により分解してラジカルを発生し、重合反応を開始させるものであれば特に限定されず、たとえば、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、べンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシドなどが挙げられる。
【0065】
上記放射線硬化性樹脂組成物には、透明被覆層の透明性を損なわない範囲で、上記成分(A)および(B)以外の成分、たとえば、シリカ粒子等の無機粒子、ポリスチレン粒子等の有機ポリマー粒子などを配合してもよい。
【0066】
上記放射線硬化性樹脂組成物中の各成分の配合量は、成分(A)と成分(B)の合計量を100質量%として、成分(A)が、通常90〜99.9質量%、好ましくは90〜98質量%であり、成分(B)が、通常0.1〜10質量%、好ましくは2〜10質量%である。また、屈折率の調整および硬化物の反り低減のためには、成分(A)全量100質量%中に占める多官能モノマーの割合を30〜95質量%とすることが好ましく、30〜70質量%とすることがさらに好ましい。
【0067】
上記透明被覆層は、上記放射線硬化性樹脂組成物を電磁波シールドフィルムの金属導電部を有する面に塗布し、該組成物を硬化させることによって形成することができる。上記放射線硬化性樹脂組成物の塗布は、たとえば、スキージ等を用いて行うことができ、塗膜の厚さは5〜100μmの範囲内であることが好ましい。上記放射線硬化性樹脂組成物は放射線によって硬化される。ここで放射線とは、たとえば、赤外線、可視光線、紫外線ならびにX線、電子線、α線、β線およびγ線などの電離放射線を意味し、通常は紫外線等の光が簡便に用いられる。
【0068】
上記のように、本発明の方法によれば、従来のエッチング処理法による金属導電部の形成方法と比較して、大幅に工程数を削減することができるとともに、寸法精度が高い微細な金属導電部を形成することができる。すなわち、本発明によれば、電磁波シールド性および光透過性に優れた電磁波シールドフィルムを、低コストで製造することができる。このような本発明の電磁波シールドフィルムは、たとえば、プラズマディスプレイパネルの
前面板フィルターなどに好適に用いることができ、優れた電磁波シールド性を発揮するとともに、ディスプレイの輝度や画質についても向上させることができる。
【0069】
[実施例]
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。なお、屈折率の測定は、JIS K7105に従い、アタゴ(株)製アッベ屈折計を用いて25℃で測定した。
【0070】
<合成例1>
8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]−3−ドデセン(単量体A)215質量部と、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(単量体B)35質量部と、1−ヘキセン(分子量調節剤)18質量部と、トルエン750質量部とを窒素置換した反応容器に仕込み、この溶液を60℃に加熱した。次いで、反応容器内の溶液に、重合触媒としてトリエチルアルミニウム(1.5モル/L)のトルエン溶液0.62質量部と、t−ブタノールおよびメタノールで変性した六塩化タングステン(t−ブタノール:メタノール:タングステン=0.35モル:0.3モル:1モル)のトルエン溶液(濃度0.05モル/L)3.7質量部とを添加し、この系を80℃で3時間加熱攪拌することにより開環共重合体溶液を得た。この重合反応における重合転化率は97%であり、得られた開環共重合体について、30℃のクロロホルム中で測定した固有粘度(ηinh)は0.65dL/gであった。
【0071】
このようにして得られた開環共重合体溶液4,000質量部をオートクレーブに仕込み、この開環共重合体溶液に、RuHCl(CO)[P(C653]30.48質量部を添加し、水素ガス圧力100kg/cm2、反応温度160℃の条件下で、3時間加熱攪拌して水素添加反応を行った。得られた反応溶液(水素添加重合体溶液)を冷却した後、水素ガスを放圧した。この反応溶液を大量のメタノール中に注いで凝固物を分離回収し、これを乾燥して、水素添加された熱可塑性ノルボルネン系樹脂を得た。
【0072】
このようにして得られた熱可塑性ノルボルネン系樹脂(以下「樹脂A」という。)について500MHz 1H−NMRを用いて水素添加率を測定したところ、99.9%であった。500MHz 1H−NMRを用いて単量体Bに由来する構造単位bの割合を測定したところ、10.2%であった。ここで、構造単位bの割合は、約3.7ppm付近に出現する単量体Aに由来する構造単位aのメチルエステルのメチルに由来するプロトンの吸収と、0.15〜3ppmに出現する構造単位aおよびbの脂環構造のプロトンに由来する吸収とから算出した。
【0073】
樹脂AのTgは130℃であった。また、GPC法(溶媒:テトラヒドロフラン)により、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を測定したところ、Mnは16,000、Mwは68,000、分子量分布(Mw/Mn)は3.58であり、固有粘度(ηinh)は0.55dL/gであった。さらに、23℃における飽和吸水率を測定したところ、0.3%であった。
【0074】
〔実施例1〕
樹脂A 100質量部に対して、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンを0.5質量部加えて2軸押出機を用い溶融混練りしてペレットを得た。得られたペレットを、100℃で3時間、窒素下で循環除湿乾燥した後、乾燥窒素とともにホッパーに送り、スクリュウ径65mmφの単軸押出機を用いて樹脂温度265℃(樹脂AのTg+135℃)で溶融した。このとき、スクリュウとしてはフルフライト形状のものを使用した。
【0075】
この溶融樹脂を、両軸排出型ギアポンプにより30kg/hrの割合で金属繊維焼結タイプのポリマーフィルターを介して750mm幅コートハンガーダイに導いた。用いたポリマーフィルターは目開き5μmのもので、フィルターの入口と出口との差圧は4MPaであった。また、ダイのヒーターには、アルミ鋳込みヒーター(幅方向に7区分あるもの)を使用し、ダイ温度を270℃に設定した。加えて、リップヒーターをダイ前面のリップ部に設けた。これにより、ダイのリップ表面温度を255±0.4℃に制御した。リップ開度は幅方向に0.5mmにセットし、フィルムの厚みムラを下流側にて、β線式厚み計を用いて厚みを計測し、この厚みをフィードバックしてリップ開度を自動調整した。
【0076】
ダイを出た樹脂を、表面にメッシュ状の凸部が形成された冷却ロール(450mmφ)に圧着させて引き取った。このメッシュ状の凸部の断面形状は、図2(a)に示した略台形(a1:25μm、a2:15μm、h:20μm)である。冷却ロールについては、オイルにより温度コントロールを行い、冷却ロールの表面温度を120±1℃に制御した。引き取りは毎分10mの速度で行った。冷却ロール通過後、両端をカットして550mm幅のフィルムとし、その後保護フィルムを貼付して6インチ紙巻に巻き取った。保護フィルムには、サンエー化研製保護フィルム「PAC−2−70」を使用した。このようにして得られた、表面にメッシュ状の凹部を有するフィルムをフィルムA−1とした。
【0077】
製造後のダイリップ出口における樹脂などの付着状況を目視にて確認したが、目やになどの付着は認められなかった。フィルムA−1の厚みは103μmであった。また、フィルムA−1の589nmにおける屈折率は1.51であった。
【0078】
凹部が形成されたフィルムA−1に、銀粒子(平均粒径5〜8μm)75重量%、カーボン粒子(平均粒径5〜8μm)1重量%、ポリエステル樹脂10重量%およびn−ヘキサノール14重量%からなる導電性ペーストを塗布し、余分な導電ペーストを除去し、凹部のみ残して硬化することにより、フィルムA−1の凹部内に銀を主成分とする金属メッシュパターンが形成された電磁波シールドフィルムを得た。
【0079】
〔実施例2〕
冷却ロール表面のメッシュ状の凸部の断面形状が、図2(b)に示した略台形(a1:15μm、a2:10μm、h:20μm)であること以外は実施例1と同様にして、表面にメッシュ状の凹部を有するフィルムA−2を得た。フィルムA−2の厚みは103μmであった。また、フィルムA−2の589nmにおける屈折率は1.51であった。
【0080】
凹部が形成されたフィルムA−2を用いたこと以外は実施例1と同様にして、フィルムA−2の凹部内に銀を主成分とする金属メッシュパターンが形成された電磁波シールドフィルムを得た。
【0081】
〔実施例3〕
実施例1で得られた電磁波シールドフィルムの金属メッシュパターンを有する面に、ビス(アクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン47.5質量部、ラウリルアクリレート47.5質量部および1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン5質量部からなる放射線硬化性樹脂組成物をアプリケーターを用いて塗布した。この塗膜を、窒素雰囲気下にてメタルハライドランプを用いて500mJ/cm2の条件で硬化させて、厚さ20μmの透明被覆層を形成し、被覆層付き電磁波シールドフィルムを得た。透明被覆層の589nmにおける屈折率は1.51であり、透明基材の屈折率と同一であった。
【0082】
〔評価〕
実施例1〜3で得られた電磁波シールドフィルムについて以下の方法で評価を行った。
結果を表1に示す。
【0083】
(外観評価)
形成された金属導電部の線幅、最深部の深さ、メッシュピッチを測定した。
(電磁波シールド性)
関西電子工業振興センター法(KEC法)による評価を実施した。シールドプレートの間に試料を挟み、特定周波数の電磁波を発信させ、試料を通過する電界および磁界を他方で受信し、試料通過による減衰を測定する。測定は、温度22.5℃、湿度64%RH、気圧997hPa、周波数100kHz〜1GHzの条件で行った。3MHz〜1GHzの範囲内のすべての周波数で減衰量が50db以上であった場合を「○」、50db未満であった場合を「×」と判定した。
【0084】
(光透過性)
スガ試験機社製ヘイズメーター「HGM−2DP型」を使用して全光線透過率を測定した。全光線透過率が80%以上であった場合を「○」、80%未満であった場合を「×」と判定した。
【0085】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の電磁波シールドフィルムの製造方法の一例を示す概略図である。
【図2】冷却ロール表面のメッシュ状の凸部の断面形状の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0087】
1・・・透明基材
2・・・冷却ロール
3・・・メッシュ状の凹部
4・・・金属導電部
5・・・電磁波シールドフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融押出成形法により表面にメッシュ状の凹部を有する透明基材を形成する工程と、該メッシュ状の凹部内に金属導電部を形成する工程とを含むことを特徴とする電磁波シールドフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記透明基材表面のメッシュ状の凹部が、溶融押出成形法により該透明基材を成形する際に、メッシュ状の凸部が設けられた冷却ロールを該透明基材の表面に圧着することにより形成されることを特徴とする請求項1に記載の電磁波シールドフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記透明基材がノルボルネン系樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1または2に記載の電磁波シールドフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記ノルボルネン系樹脂が、下記式(1)で表される少なくとも1種の化合物を含む単量体を開環重合し、さらに水素添加して得られた樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電磁波シールドフィルムの製造方法。
【化1】

[式(1)中、R1〜R4は、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の炭化水素基またはその他の1価の有機基を表す。R1〜R4は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子およびケイ素原子からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子を1個以上含む1価の極性基であってもよい。また、R1とR2および/またはR3とR4が相互に結合してアルキリデン基を形成していてもよく、R1とR2、R3とR4またはR2とR3が相互に結合して炭素環もしくは複素環を形成してもよい。該炭素環もしくは複素環は、単環構造でも多環構造でもよく、また芳香環でも非芳香環でもよい。mは0〜3の整数であり、pは0または1である。]
【請求項5】
前記金属導電部を構成する主成分が銅または銀であり、該金属導電部が形成された透明基材を50〜200℃の温度で焼成する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電磁波シールドフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記電磁波シールドフィルムの金属導電部を有する面に、透明被覆層を形成する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電磁波シールドフィルムの製造方法。
【請求項7】
前記透明被覆層が、589nmにおける前記透明基材の屈折率との差が0.1以下となる屈折率を有することを特徴とする請求項6に記載の電磁波シールドフィルムの製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の方法により製造されたことを特徴とする電磁波シールドフィルム。
【請求項9】
透明基材上に形成されたメッシュ状の凹部内に金属導電部を有する電磁波シールドフィルムと、該電磁波シールドフィルムの該金属導電部を有する面を被覆する透明被覆層とを
有することを特徴とする被覆層付き電磁波シールドフィルム。
【請求項10】
前記透明被覆層が、589nmにおける前記透明基材の屈折率との差が0.1以下となる屈折率を有することを特徴とする請求項9に記載の被覆層付き電磁波シールドフィルム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−43044(P2007−43044A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−316039(P2005−316039)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】