説明

電磁波シールド構造体

【課題】電磁波遮蔽板を2重もしくは3重以上に配置したシールドルーム等に用いられ、電磁波シールド構造体の強度を保ちつつ電磁波遮蔽性能が低下する周波数の発生を低減可能な電磁波シールド構造体を提供する。
【解決手段】電磁波シールド構造体2は、室外側の電磁波遮蔽板3と、室内側の電磁波遮蔽板4と、電磁波遮蔽板3,4が取り付けられる構造材5,6とを備える。対向する2つの電磁波遮蔽板3,4の間隔が、電磁波遮蔽板3,4の上端側から下端側へ向かって直線的に漸次増加するように構成されている。電磁波遮蔽板30,40間で電磁波の反射が繰り返される際に、同相の電磁波同士が合成されて強め合うことが起こりにくくなり、電磁波遮蔽特性が低下する周波数の発生を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波、例えば外来電磁波を遮蔽するシールドルーム等に用いる電磁波シールド構造体に関するもので、特に2重遮蔽構造をもつ電磁波シールド構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
車載アンテナや車載レーダ、携帯電話等の高周波機器の特性評価などをする際に、外来電磁波の影響を排除する為にシールドルーム内での測定を行う事がある。また、製品の電磁環境に対する放射を実施し、或いは、装置の電磁妨害に対する耐性を評価するためのイミュニティ試験を実施する際にも、シールドルームを用いた測定がなされることが多い。
【0003】
シールドルームによる外来電磁波の遮蔽は、遮蔽板として金属板または金網を用いることで外来電磁波の大部分を反射し、室内へ侵入する外来電磁波を低減させている。この遮蔽性能をさらに高める目的で一定の間隔をおいて電磁波遮蔽板を2重もしくは多重に配置したシールドルームが実用化されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0004】
図5は従来のシールドルームの電磁波シールド構造体を示している。このような電磁波シールド構造体では、電磁波遮蔽板を2重構造とする場合、図5に示すように所定の距離をおいて配置された2つの金属フレーム(構造材)103の両面に電磁波遮蔽板101,102を貼り付けるのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-065386号公報
【特許文献2】特開2008-106455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電磁波遮蔽板を図5の構成で配置した場合には、図6のグラフに示すように特定の周波数において電磁波遮蔽性能が低下してしまう問題が起こる。
【0007】
図6のグラフは図5に示すシールドルームの電磁波シールド構造体において電磁波遮蔽板101,102の間隔が60mmであるときの電磁波遮蔽性能を測定した結果を示している。図6のグラフにおいて、電磁波遮蔽性能の数値は大きいほど遮蔽性能が高いことを示している。図6から、2500MHz,5000MHzおよび7500MHz付近の周波数において、電磁波遮蔽性能が低下するピークがあることが分かる。2500MHzの1/2波長は60mmとなり、電磁波遮蔽板101,102の間隔60mmと一致する。
【0008】
図5に示すシールドルームの電磁波シールド構造体では、入射した電磁波Pは1枚目の電磁波遮蔽板101で大部分が反射されるが、電磁波遮蔽板101を通過した電磁波は2枚目の電磁波遮蔽板102と1枚目の電磁波遮蔽板101との間で多重反射を生じる。ある周波数、例えば2500MHzの電磁波の1/2波長が電磁波遮蔽板101,102の間隔と等しいときに、その電磁波の往復距離が1波長となり、電磁波遮蔽板101,102間で電磁波の反射が繰り返される際に、同相の電磁波同士が合成されて強め合う。この合成されて強め合う電磁波の一部が2枚目の電磁波遮蔽板を通過して室内に侵入することにより、図6のグラフで示すような電磁波遮蔽性能が低下するピークを持った周波数特性を示すようになる。
【0009】
このように、図5に示すシールドルームの電磁波シールド構造体では、電磁波遮蔽板101,102間の間隔が電磁波の1/2波長と一致するときの電磁波の周波数を基本周波数とすると、その基本周波数及びその整数倍の高調波の周波数の電磁波において電磁波遮蔽性能がそれぞれ低下する問題が起こる。
【0010】
電磁波遮蔽板101,102間の間隔をより小さくすることで電磁波遮蔽性能低下のピークが発生する周波数を引き上げる事は可能である。しかしながら、図5に示すようなシールドルームの電磁波シールド構造体は、電磁波遮蔽板101,102を構造材103,103の両面に張り付けるという構造である。そのため、電磁波遮蔽板101,102の間隔を小さくするには構造材101,102の寸法を小さくしなければならない。たとえば3GHz(3000MHz)で試算してみると、電磁波遮蔽性能のピークが発生する電磁波遮蔽板101,102の間隔は50mmとなる。そのため3GHzに対応する電磁波シールド構造体では、電磁波遮蔽板101,102の間隔50mmよりも厚さの小さい40mm程度の構造材を用いる必要がある。この場合、壁構造(電磁波シールド構造体)の強度確保できなくなるという問題が新たに発生し、シールドルームの対応周波数を引き上げることが困難となってしまう。
【0011】
そこで、本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、電磁波遮蔽板を2重もしくは多重に配置した多重シールド構造をもつシールドルーム等に用いられ、電磁波シールド構造体の強度を保ちつつ電磁波遮蔽性能低下が特定周波数で発生する事を抑制可能な電磁波シールド構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の一の態様に係る電磁波シールド構造体は、間隔を置いて設けられた少なくとも2つの電磁波遮蔽板を有する電磁波を遮蔽する電磁波シールド構造体であって、前記少なくとも2つの電磁波遮蔽板のうちの、対向する2つの電磁波遮蔽板の間隔が、電磁波遮蔽板の位置により異なるように構成したことを特徴とする。
ここで、「対向する2つの電磁波遮蔽板の間隔が、電磁波遮蔽板の位置により異なる」とは、対向する2つの電磁波遮蔽板の各位置における相互間の間隔(最短距離)がその位置により異なることを意味する。
【0013】
本発明の他の態様に係る電磁波シールド構造体は、前記対向する2つの電磁波遮蔽板の間隔が、前記電磁波遮蔽板の位置により漸次変化するように構成したことを特徴とする。
【0014】
本発明の他の態様に係る電磁波シールド構造体は、前記対向する2つの電磁波遮蔽板の間隔が、該電磁波遮蔽板の一端側から他端側へ向かって漸次増加するように構成したことを特徴とする。
【0015】
本発明の他の態様に係る電磁波シールド構造体は、前記対向する2つの電磁波遮蔽板の間隔が、該電磁波遮蔽板の中央位置から一端側及び他端側へ向かってそれぞれ漸次増加するように構成したことを特徴とする。
【0016】
本発明の他の態様に係る電磁波シールド構造体は、前記対向する2つの電磁波遮蔽板のいずれか一方に、中央部が前記対向する2つの電磁波遮蔽板の他方へ向かって凸または凹となる形状に形成された電磁波遮蔽板を用いたことを特徴とする。
【0017】
本発明の他の態様に係る電磁波シールド構造体は、前記対向する2つの電磁波遮蔽板のいずれか一方を、中央部が前記対向する2つの電磁波遮蔽板の他方へ向かって凸または凹となる湾曲形状に保持する形状保持具を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、金属フレーム等の構造材の寸法を小さくすることの限界によって引き起こされる特定周波数での電磁波遮蔽性能低下の発生を低減することが可能となり、電磁波シールド構造体の強度を保ちつつ電磁波遮蔽性能が局所的に低下する周波数の発生を低減可能な電磁波シールド構造体を実現することができる。これにより、広帯域な外来電磁波遮蔽特性を有する電磁波シールド構造体を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施形態に係るシールドルームの電磁波シールド構造体の横断面を示す概略構成図。
【図2】図1に示す電磁波シールド構造体における電磁波遮蔽性能を示すグラフ。
【図3】第2の実施形態に係るシールドルームの電磁波シールド構造体の横断面を示す概略構成図。
【図4】第3の実施形態に係るシールドルームの電磁波シールド構造体の横断面を示す概略構成図。
【図5】従来のシールドルームの電磁波シールド構造体の横断面を示す概略構成図。
【図6】図5に示す従来の電磁波シールド構造体において、電磁波遮蔽板の間隔が60mmであるときの電磁波遮蔽性能の測定結果を示すグラフ。
【図7】多重反射によって電磁波遮蔽性能が低下するシールド性能を試算した結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の各実施形態に係るシールドルームの電磁波シールド構造体を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1は第1の実施形態に係るシールドルーム1の電磁波シールド構造体2の横断面(水平断面)を概略的に示している。シールドルーム1は、床、壁及び天井で仕切られた部屋である。図1に示す電磁波シールド構造体2は、例えばシールドルーム1の床、壁及び天井のいずれにも適用可能である。ここでは、電磁波シールド構造体2は、例えば、シールドルーム1の一つの壁構造を示している。
この電磁波シールド構造体2は、間隔を置いて設けられた2つの電磁波遮蔽板3,4を有するものである。図1では、室外側の電磁波遮蔽板3と、室内側の電磁波遮蔽板4と、これらの電磁波遮蔽板3,4が取り付けられる上下及び左右4つの構造材のうちの2つの構造材5,6のみを示している。構造材5,6は、例えば金属フレームで構成される。なお、各電磁波遮蔽板3,4は、金網等の電磁波遮蔽効果を有するものであれば何でも用いることができる。このことは、以下の各実施形態においても同様である。
【0022】
このシールドルームの電磁波シールド構造体2の特徴は、少なくとも2つの電磁波遮蔽板のうちの、対向する2つの電磁波遮蔽板3,4の間隔が、電磁波遮蔽板3,4の位置により異なるように構成した点にある。ここで、「位置により異なる」とは、位置の変化に応じて間隔が少しずつ変化していく場合(漸次変化)のみならず、位置の変化量と間隔の変化量が比例せず、位置が少し変化しても間隔が大きく変化するような(例えばのこぎり波状や波状に変化する)場合も含んでいる。
図1に示す電磁波シールド構造体2では、対向する2つの電磁波遮蔽板3,4の間隔が、漸次変化するように構成されている。
より具体的には、図1に示す電磁波シールド構造体2では、対向する2つの電磁波遮蔽板3,4の間隔が、電磁波遮蔽板3,4の上端側(一端側)から下端側(他端側)へ向かって直線的に漸次増加するように構成されている。
【0023】
また、図1に示す電磁波シールド構造体2では、対向する2つの電磁波遮蔽板3,4の間隔を、電磁波遮蔽板3,4の上端側から下端側へ向かって漸次増加させるために、厚さの異なる2つの構造材5,6を用いている。そして、構造材5,6各々の一方の面(室外側の面)に電磁波遮蔽板3が、構造材5,6各々の他方の面(室内側の面)に電磁波遮蔽板5がそれぞれ貼り付けられている。
【0024】
なお、図1に示す電磁波シールド構造体2では、対向する2つの電磁波遮蔽板3,4の間隔が上下で漸次変化するように構成しているが、その間隔が左右で漸次変化するように構成しても良い。このことは、以下の各実施形態でも同様である。
【0025】
図2は、図1に示す電磁波シールド構造体2において、電磁波遮蔽板に電磁波が入射したときの電磁波遮蔽性能を測定したグラフである。何れか一方の電磁波遮蔽板への電磁波の入射角度を変えることで多重反射による同相合成が起こりにくくなり、図6で見られた電磁波遮蔽特性が局所的に低下する周波数の発生が抑制されているのが確認できる。
【0026】
図7のグラフは図5に示す従来技術の電磁波シールド構造体において、入射する電磁波Pが電磁波遮蔽板101,102間に侵入したあとに電磁波遮蔽板101,102間で空間による減衰を伴いながら多重反射によって電磁波遮蔽性能が低下するシールド性能を試算したものである。ここでは電磁遮蔽板101,102の間隔が1/2波長となる電磁波の周波数で、遮蔽板1枚当たり35dBの遮蔽性能があるものとしている。遮蔽板2枚で70dB得られるところが、多重反射による合成を繰り返すことにより40dB近くまで性能が低下する事が示されている。
【0027】
これに対して、本実施形態に係る電磁波シールド構造体2によれば、対向する2つの電磁波遮蔽板3,4の間隔を、一方の構造材5側からその他方の構造材6側へ向かって直線的に増加させている。このため、特定の周波数の電磁波の往復距離がその電磁波の1波長と同じ長さとなり、電磁波遮蔽板3,4間でその電磁波の反射が繰り返されることにより、同相の電磁波同士が合成されて強め合うこと(多重反射による同相合成)が起こりにくくなる。その結果、電磁波遮蔽性能が局所的に低下する周波数の発生を低減することができる。このことは、図2から確認できる。
【0028】
また、電磁波遮蔽板3,4の間隔を、電磁波遮蔽板3,4の上端側から下端側へ向かって漸次増加(直線的に増加)させるために、構造材5,6の寸法を小さくする必要がない。そのため、構造材5,6として、電磁波シールド構造体2の強度を充分確保できる厚さのフレームを使用することができる。
従って、構造体の強度を保ちつつ電磁波遮蔽性能が低下する周波数の発生を低減するシールドルームの電磁波シールド構造体2を実現することができる。
【0029】
図3は第2の実施形態に係るシールドルーム1の電磁波シールド構造体20の横断面(水平断面)を概略的に示している。
この電磁波シールド構造体20は、室外側の電磁波遮蔽板30と、室内側の電磁波遮蔽板40と、これらの電磁波遮蔽板30,40が取り付けられる2つの構造材50,60とを備えている。
【0030】
この電磁波シールド構造体20の特徴は、対向する2つの電磁波遮蔽板30,40の間隔が、電磁波遮蔽板の中央位置から上端側(一端側)及び下端側(他端側)へ向かってそれぞれ直線的に漸次増加するように構成した点にある。
【0031】
このような構成を実現するために、図3に示す電磁波シールド構造体20では、対向する2つの電磁波遮蔽板30,40の一方(電磁波遮蔽板40)に、中央部が、対向する2つの電磁波遮蔽板の他方(電磁波遮蔽板30)へ向かって凸となる形状に形成された電磁波遮蔽板を用いている。この電磁波遮蔽板40は、中央部が電磁波遮蔽板30へ向かって凸となる形状に曲げ加工しても良いが、室内側から山型の押え部材により電磁波遮蔽板40を押圧変形させるように構成しても良い。
【0032】
本実施形態に係る電磁波シールド構造体20によれば、対向する2つの電磁波遮蔽板30,40の間隔を、電磁波遮蔽板30,40の中央位置から上端側及び下端側へ向かってそれぞれ漸次増加(直線的に増加)させている。このため、電磁波遮蔽板30,40間で電磁波の反射が繰り返される際に、同相の電磁波同士が合成されて強め合うこと(多重反射による同相合成)が起こりにくくなる。その結果、電磁波遮蔽性能が低下する周波数の発生を低減することができる。
【0033】
また、電磁波遮蔽板30,40の間隔を、電磁波遮蔽板30,40の中央位置から上端側及び下端側へ向かってそれぞれ直線的に漸次増加させるために、電磁波シールド構造体2の構造材5,6として比較的大きな構造材を使用することができる。そのため、電磁波シールド構造体20の強度を確保することができる。
また、2つの構造材50,60として、同じ厚さの構造材50,60を用いることができるという効果も有する。
【0034】
図4は第3の実施形態に係るシールドルーム1の電磁波シールド構造体21の横断面(水平断面)を概略的に示している。
この電磁波シールド構造体21は、室外側の電磁波遮蔽板31と、室内側の電磁波遮蔽板41と、これらの電磁波遮蔽板31,41が取り付けられる2つの構造材51,61とを備えている。
【0035】
この電磁波シールド構造体21の特徴は、対向する2つの電磁波遮蔽板31,41の間隔が、電磁波遮蔽板の中央位置から上端側(一端側)及び下端側(他端側)へ向かってそれぞれ曲線的に漸次増加するように構成した点にある。
【0036】
また、この電磁波シールド構造体21では、対向する2つの電磁波遮蔽板31,41の一方(電磁波遮蔽板41)に、その他方(電磁波遮蔽板31)へ向かって凸となる湾曲形状を有する電磁波遮蔽板を用いている。
また、図3の電磁波シールド構造体20と同様に、2つの構造材51,61として同じ厚さの構造材50,60を用いることができる。
【0037】
なお、この電磁波シールド構造体21では、一方の電磁波遮蔽板41を、他方の電磁波遮蔽板31へ向かって凸となる湾曲形状に保持するための形状保持具71が用いられている。
この形状保持具71は、構造材51,61各々の室内側の面に固定される平坦面を有する端部71a,71bと、端部71a,71bが各構造材51,61の室内側の面に固定された状態で、電磁波遮蔽板41を電磁波遮蔽板31へ向かって凸となる湾曲形状に保持する凸状の湾曲部71cとを有する。なお、図4の電磁波シールド構造体21では、形状保持具71により室内側の電磁波遮蔽板41を電磁波遮蔽板31へ向かって凸となる湾曲形状にしているが、電磁波遮蔽板41を曲げ加工により湾曲形状にしても良い。
【0038】
本実施形態に係る電磁波シールド構造体21によれば、対向する2つの電磁波遮蔽板31,41の間隔を、電磁波遮蔽板の中央位置から上端側及び下端側へ向かってそれぞれ漸次増加(曲線的に増加)させている。このため、電磁波遮蔽板31,41間で電磁波の反射が繰り返される際に、同相の電磁波同士が合成されて強め合うことが起こりにくくなる。その結果、電磁波遮蔽性能が低下する周波数の発生を低減することができる。
【0039】
また、電磁波シールド構造体2の構造材51,61の寸法を小さくする必要がないため、構造材51,61として、電磁波シールド構造体21の強度を確保できる厚さの構造材を使用することができる。
【0040】
また、形状保持具71を用いることにより、電磁波遮蔽板41を電磁波遮蔽板31へ向かって凸となる湾曲形状に、長期に渡って安定して保持することができる。
形状保持具71は電磁波遮蔽板41と電磁波遮蔽板31の間に配置して内側から電磁波遮蔽板41を保持する構造としても良い。
【0041】
なお、上記各実施形態において、対向する2つの電磁波遮蔽板間の最少距離は遮蔽を目的とする電磁波の周波数の1/20波長以上が好ましい。例えば、遮蔽を目的とする電磁波の周波数を2500MHz以上とすると、上記各実施形態において、対向する2つの電磁波遮蔽板間の最少距離は6mm以上が好ましい。これにより、構造体の強度を保ちつつ電磁波遮蔽性能が低下する周波数の発生を更に低減することができる。
【0042】
また、上記各実施形態によれば、室内側の電磁波遮蔽板の角度を変えることによりシールドルームのサイズによって決まる周波数でのシールドルーム内での多重反射による電磁波の合成を起こりにくくする効果も期待できる。
【0043】
また、上記各実施形態では、2つの電磁波遮蔽板が構造材に取付けられた2重遮蔽構造をもつ電磁波遮蔽構造体について説明したが、本発明はこれに限定されない。3つ以上の電磁波遮蔽板が構造材に取付けられた2重遮蔽構造をもつ電磁波遮蔽構造体においても、対向する2つの電磁波遮蔽板の間隔を異ならせることにより、上記各実施形態と同様の効果が得られる事は勿論である。
【0044】
また、上記各実施形態において、室内側の電磁波遮蔽板と室外側の電磁波遮蔽板と入れ替えた構成にも、本発明は適用可能である。例えば、図3に示す電磁波シールド構造体20において、対向する2つの電磁波遮蔽板30,40の一方(室外側の電磁波遮蔽板30)を、中央部が、対向する2つの電磁波遮蔽板の他方(室内側の電磁波遮蔽板40)へ向かって凸となる形状に構成しても良い。凹となる形状としても同様の効果が得られる事は勿論である。
【符号の説明】
【0045】
1:シールドルーム
2,20,21:電磁波シールド構造体
3,4,30,40,31,41:電磁波遮蔽板
5,6,50,60,51,61:構造材
71:形状保持具
P:電磁波

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔を置いて設けられた少なくとも2つの電磁波遮蔽板を有する電磁波を遮蔽する電磁波シールド構造体であって、
前記少なくとも2つの電磁波遮蔽板のうちの、対向する2つの電磁波遮蔽板の間隔が、電磁波遮蔽板の位置により異なるように構成したことを特徴とする電磁波シールド構造体。
【請求項2】
前記対向する2つの電磁波遮蔽板の間隔が、前記電磁波遮蔽板の位置により漸次変化するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の電磁波シールド構造体。
【請求項3】
前記対向する2つの電磁波遮蔽板の間隔が、該電磁波遮蔽板の一端側から他端側へ向かって漸次増加するように構成したことを特徴とする請求項2に記載の電磁波シールド構造体。
【請求項4】
前記対向する2つの電磁波遮蔽板の間隔が、該電磁波遮蔽板の中央位置から一端側及び他端側へ向かってそれぞれ漸次増加するように構成したことを特徴とする請求項2に記載の電磁波シールド構造体。
【請求項5】
前記対向する2つの電磁波遮蔽板のいずれか一方に、中央部が前記対向する2つの電磁波遮蔽板の他方へ向かって凸または凹となる形状に形成された電磁波遮蔽板を用いたことを特徴とする請求項4に記載の電磁波シールド構造体。
【請求項6】
前記対向する2つの電磁波遮蔽板のいずれか一方を、中央部が前記対向する2つの電磁波遮蔽板の他方へ向かって凸または凹となる形状に保持する形状保持具を備えることを特徴とする請求項4に記載の電磁波シールド構造体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−216560(P2011−216560A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81449(P2010−81449)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】