説明

電磁波放射装置および電磁波検出装置

【課題】厚みを薄くでき、しかも電磁波の利用効率を向上できる電磁波放射装置および電磁波検出装置を提供する。
【解決手段】電磁波放射装置10は、電磁波を放射する電磁波源11と、電磁波源11に対向するように配置された収束レンズとしてのレンズ12と、電磁波源11およびレンズ12が取り付けられる基板13とを備える。レンズ12は、左手系メタマテリアルを用いて形成されている。レンズ12において電磁波源11と対向する対向面123は、電磁波源11を覆う凹面である。電磁波源11は、基板13と対向面123とで囲まれる空間14内に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波放射装置および電磁波検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電磁波放射装置が提案されている。電磁波放射装置は、電磁波(たとえば、電波や、光、X線、ガンマ線)を放射する電磁波源と、電磁波源に対向するように配置されるコリメートレンズとを備えている。電磁波放射装置において、コリメートレンズは、電磁波源から放射された電磁波をコリメートして平行光束に変換するために設けられている。また、従来から、電磁波検出装置が提案されている。電磁波検出装置は、電磁波を検出する電磁波センサと、電磁波センサに対向するように配置されるコリメートレンズとを備えている。電磁波検出装置では、コリメートレンズは、外部からの電磁波が電磁波センサに入射するように電磁波を収束させるために設けられている。
【0003】
このように、電磁波放射装置や電磁波検出装置では、電磁波を有効に利用するためにコリメートレンズを用いている。コリメートレンズは、透明な樹脂材料やガラスを用いて形成された両凸レンズである(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−101189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、コリメートレンズの表面は凸面であるため、電磁波源から放射された電磁波を全てコリメートレンズに入射させることは難しい。
【0006】
電磁波源から放射された電磁波のうちコリメートレンズに入射しなかった電磁波は、無駄になるだけではなく、周辺の機器に悪影響を与えるおそれもある。
【0007】
そのため、電磁波源から放射された電磁波を可能な限りコリメートレンズに入射させたいという要望がある。
【0008】
コリメートレンズに入射する電磁波の量を増やす方法としては、たとえば、コリメートレンズの直径を大きくすることが考えられる。しかしながら、コリメートレンズの表面は凸面であるから、コリメートレンズの直径を大きくすると、コリメートレンズの厚みも増すことになる。その結果、電磁波放射装置の厚みも厚くなってしまう。
【0009】
このように、従来の電磁波放射装置や電磁波検出装置では、厚みを薄くすることと電磁波の利用効率を向上することとを両立することができなかった。
【0010】
また、電磁波放射装置は、ヒータなどの暖房器具に用いることができる。しかしながら、コリメートレンズとして両凸レンズを用いた場合には、ヒータの表面に凸凹が現れるため、見栄えが悪いという問題がある。
【0011】
本発明は上述の点に鑑みて為された。本発明の目的は、厚みを薄くでき、しかも電磁波の利用効率を向上できる電磁波放射装置および電磁波検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に係る発明は、電磁波を放射する電磁波源と、上記電磁波源に対向するように配置された収束レンズとしてのレンズと、を備え、上記レンズは、左手系メタマテリアルを用いて形成され、上記レンズにおいて上記電磁波源と対向する対向面は、上記電磁波源を覆う凹面であることを特徴とする電磁波放射装置である。
【0013】
この発明によれば、電磁波源から放射された電磁波を収束させるために凸面レンズを用いなくて済むから、厚みを薄くできる。レンズにおいて対向面とは反対側の面を平面にできるから、見栄えが良くなる。レンズの対向面が電磁波源を覆う凹面であるから、対向面が平面や凸面である場合に比べてレンズに入射する電磁波が増える。その結果、電磁波源から放射される電磁波の利用効率が向上する。したがって、電磁波源に供給する電力を増やさなくても、レンズから外方に放射される電磁波の量が増える。よって、エネルギ効率が向上する。
【0014】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、上記電磁波源および上記レンズが取り付けられる基板を備え、上記電磁波源は、上記基板と上記対向面とで囲まれる空間内に配置されていることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、基板とレンズの対向面とで囲まれる空間内に電磁波源が配置されている。そのため、電磁波放射装置の厚みを更に薄くできる。また、電磁波源から放射された電磁波の大部分がレンズの対向面に入射するから、電磁波源から放射される電磁波の利用効率が更に向上する。そのため、エネルギ効率が更に向上する。
【0016】
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明において、上記基板は、上記レンズの上記対向面と対向する反射面を有し、上記反射面は、上記電磁波源から放射された電磁波が上記レンズの上記対向面に向かうように電磁波を反射する凹面であることを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、電磁波源からレンズの対向面に直接入射しない電磁波を利用できるようになる。よって、電磁波の利用効率が更に向上する。
【0018】
請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明において、上記電磁波源は、上記反射面を底面とする凹所内に配置されていることを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、厚みを更に薄くできる。
【0020】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のうちいずれか1項に係る発明において、上記電磁波源および上記レンズが取り付けられる基板を備え、上記基板には、上記電磁波源がアレイ状に配置され、上記レンズは、上記電磁波源と一対一で対応するように上記基板に取り付けられていることを特徴とする。
【0021】
この発明によれば、電磁波源およびレンズを大型せずに、電磁波の放射量を増やすことができる。
【0022】
請求項6に係る発明は、請求項1〜5のうちいずれか1項に係る発明において、上記電磁波源は、遠赤外線を放射するように構成されている。
【0023】
この発明によれば、暖房器具として利用できる。
【0024】
請求項7に係る発明は、電磁波を検出する電磁波センサと、上記電磁波センサに対向するように配置された収束レンズとしてのレンズと、を備え、上記レンズは、左手系メタマテリアルを用いて形成され、上記レンズにおいて上記電磁波センサと対向する対向面は、上記電磁波センサを覆う凹面であることを特徴とする電磁波検出装置である。
【0025】
この発明によれば、外部からの電磁波を電磁波センサに収束させるために凸面レンズを用いなくて済むから、厚みを薄くできる。レンズにおいて対向面とは反対側の面を平面にできるから、見栄えが良くなる。レンズの対向面が電磁波センサを覆う凹面であるから、対向面が平面や凸面である場合に比べて電磁波センサに入射する電磁波が増える。その結果、外部からの電磁波の利用効率が向上する。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る電磁波放射装置は、厚みを薄くでき、しかも電磁波の利用効率を向上できるという効果を奏する。
【0027】
本発明に係る電磁波検出装置は、厚みを薄くでき、しかも電磁波の利用効率を向上できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態1の電磁波放射装置を示し、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は同図(b)のA−A線断面図である。
【図2】同上の電磁波放射装置の変形例を示し、(a)はレンズを取り外した状態の概略平面図、(b)は部分平面図である。
【図3】本発明の実施形態2の電磁波放射装置の断面図である。
【図4】本発明の実施形態3の電磁波検出装置を示し、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は同図(b)のA−A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(実施形態1)
本実施形態の電磁波放射装置10は、図1(a)〜(c)に示すように、電磁波を放射する電磁波源11と、電磁波源11に対向するように配置される収束レンズであるレンズ12と、電磁波源11およびレンズ12が取り付けられる基板13とを備える。
【0030】
電磁波源11から放射される電磁波としては、電波(たとえば高周波)や、赤外線(たとえば遠赤外線)、可視光、紫外線、X線、ガンマ線が挙げられる。準ミリ波帯などの周波数を持つ電波を放射する電磁波源11を用いれば、電磁波放射装置10を送信アンテナ(レーダアンテナ)として利用できる。PTCフィルムや、カーボンランプ、ハロゲンランプなどの遠赤外線を放射する電磁波源12を用いれば、電磁波放射装置10をヒータとして利用できる。電磁波源11は、電磁波放射装置10の用途に応じて選択される。
【0031】
基板13は、平板状に形成されている。基板13の厚み方向の一面(図1(c)における右面)130には、電磁波源11が実装されている。また、基板13の一面130には、レンズ12が取り付けられている。基板13の厚み方向の他面(図1(c)における左面)131には、金属材料製のパッド132が形成されている。パッド132は、たとえば、外部の電源から電磁波源11に給電するために用いられる。基板13には、基板13を厚み方向に貫通する貫通孔配線133が形成されている。貫通孔配線133は、電磁波源11をパッド132に電気的に接続する。基板13は、たとえば絶縁性を有する樹脂を用いて形成されている。なお、パッド132は必要に応じて複数設けられる。各パッド132は、貫通孔配線133を介して電磁波源11に電気的に接続される。
【0032】
レンズ12は、板状に形成されている。レンズ12の厚み方向の一面(図1(c)における右面)120は、平坦な面(平面)である。一方、レンズ12の厚み方向の他面(図1(c)における左面)121には、凹所(第1凹所)122が形成されている。凹所122は、電磁波源11を収容可能な大きさの略半球状に形成されている。凹所122の底面123は、電磁波源11を覆う凹面である。レンズ12では、底面123が、電磁波源11と対向する対向面(電磁波源11からの電磁波が入射する面)となる。
【0033】
本実施形態では、レンズ12は、電磁波源11が凹所122内に位置するように基板13に取り付けられている。レンズ12の厚み方向と基板13の厚み方向とは一致している。また、電磁波源11の中心軸とレンズ12の光軸とを一致させている。電磁波源11は、基板13とレンズ12の対向面123とで囲まれた空間14内に配置される。空間14内には、所定の気体(本実施形態では空気)が封入されている。なお、空間14内は、真空であってもよい。
【0034】
レンズ12は、左手系メタマテリアルにより形成されている。左手系メタマテリアルは、負の屈折率を有するメタマテリアルである。メタマテリアルは、自然界に存在する物質では実現不可能な機能や物性を生じるように設計された人工的な機能物質である。このようなメタマテリアルは、たとえば、棒状やコイル状の金属や誘電体でできた構造体を空間に分散させることで形成されている。構造体の形状や配置等を適宜設計することで、屈折率を負にすることができる。左手系メタマテリアルについての技術は、周知であるから詳細な説明を省略する。
【0035】
本実施形態では、レンズ12の屈折率(左手系マテリアルの屈折率)は−1である。また、空間14は空気で満たされているから、空間14の屈折率は略1(0度、1気圧で1.000292)である。よって、電磁波は、レンズ12の対向面123で、入射角と屈折角との正負が逆になるように屈折する。すなわち、入射角をθ、屈折角をφとしたとき、φ=−θが成立する。この対向面123の曲率は、対向面123で屈折された電磁波がレンズ12内をレンズ12の一面120の法線方向(基板13の一面130の法線方向に等しい)に伝播するような値である。
【0036】
よって、対向面123で屈折した電磁波は、レンズ12内をレンズ12の一面120の法線方向(基板13の一面130の法線方向に等しい)に伝播し、レンズ12の一面120で屈折されることなくレンズ12から外側へ伝播する。
【0037】
このように、レンズ12は、対向面123に入射した発散光束をコリメートする(平行光束にする)コリメートレンズである。このレンズ12は、一面120に入射した平行光束を収束する(収束光束にする)収束レンズでもある。
【0038】
このように、本実施形態の電磁波放射装置10は、レンズ12の一面120の法線方向において強い指向性を有する。
【0039】
以上述べたように、本実施形態の電磁波放射装置10は、電磁波を放射する電磁波源11と、電磁波源11に対向するように配置された収束レンズとしてのレンズ12と、を備える。レンズ12は、左手系メタマテリアルを用いて形成され、レンズ12において電磁波源11と対向する対向面123は、電磁波源11を覆う凹面である。
【0040】
本実施形態の電磁波放射装置10によれば、電磁波源11から放射された電磁波を収束させるために凸面レンズを用いなくて済むから、電磁波放射装置10の厚みを薄くできる。レンズ12において対向面123とは反対側の面である厚み方向の一面120を平面にできるから、一面120が凸面である場合に比べて見栄えが良くなる。レンズ12の対向面123が電磁波源11を覆う凹面であるから、対向面123が平面や凸面である場合に比べてレンズ12に入射する電磁波が増える。その結果、電磁波源11から放射される電磁波の利用効率が向上する。したがって、電磁波源11に供給する電力を増やさなくても、レンズ12から外方に放射される電磁波の量が増える。よって、エネルギ効率が向上する。
【0041】
特に、電磁波放射装置10をアンテナとして用いる場合、サイドローブなどの誤動作の原因になる不要放射を低減できる。
【0042】
また、本実施形態の電磁波放射装置10は、電磁波源11およびレンズ12が取り付けられる基板13を備える。電磁波源11は、基板13とレンズ12の対向面123とで囲まれる空間14内に配置されている。
【0043】
本実施形態の電磁波放射装置10によれば、基板13とレンズ12の対向面123とで囲まれる空間14内に電磁波源11が配置されているため、電磁波放射装置10の厚みを更に薄くできる。また、電磁波源11から放射された電磁波の大部分がレンズ12の対向面123に入射するから、電磁波源11から放射される電磁波の利用効率が更に向上する。そのため、エネルギ効率が更に向上する。
【0044】
図2(a),(b)は、本実施形態の変形例の電磁波放射装置10を示す。変形例の電磁波放射装置10では、基板13に、複数の電磁波源11と、複数のレンズ12とが設けられている。電磁波源11は、基板13の一面130にマトリクス状(アレイ状)に配置されている。図示例では、144個の電磁波源11が12×12のマトリクス状に配置されている。レンズ12は、電磁波源11と一対一で対応するようにして基板13の一面130に取り付けられている。図2に示す例では、レンズ12は隣接するレンズ12と一体に形成されている。
【0045】
このように、電磁波源11の数を増やせば、電磁波源11およびレンズ12を大型化しなくても、電磁波の放射量を増やすことができる。また、電磁波源11が小さいほうが、電磁波源11からの電磁波がレンズ12に入射し易くなる。そのため、電磁波源11およびレンズ12を大型化する場合に比べて、電磁波の利用効率を向上できる。
【0046】
なお、電磁波源11としてPTCフィルムを用いれば、高効率で局所的な加熱を行うヒータを実現できる。このようなヒータは、トイレでの使用に好適である。
【0047】
本実施形態の電磁波放射装置10では、レンズ12の一面120は平面である。しかしながら、レンズ12の一面120は必ずしも平面である必要はない。レンズ12の一面120の形状は、電磁波放射装置10の用途に応じて適宜変更できる。
【0048】
(実施形態2)
本実施形態の電磁波放射装置10Aは、図3に示すように、基板13Aが実施形態1の電磁波放射装置10と異なる。本実施形態の電磁波放射装置10Aと実施形態1の電磁波放射装置10とで共通する構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0049】
基板13Aの一面130には、レンズ12の凹所122と対向する部位に、凹所(第2凹所)134が形成されている。凹所134は、電磁波源11を収容可能な大きさの略半球状に形成されている。凹所134の底面135の中央には、電磁波源11が設置されている。電磁波源11は、貫通孔配線133によりパッド132に電気的に接続されている。凹所134の底面135には、反射膜136が形成されている。反射膜136は、電磁波源11を囲うように形成され、電磁波源11および貫通孔配線133と電気的に絶縁されている。反射膜136は、たとえば金属膜である。なお、反射膜136は、高インピーダンスのメタマテリアルや、シングルネガティブのメタマテリアル(誘電率と透磁率のどちらか一方のみが負であるメタマテリアル)により形成されていてもよい。
【0050】
反射膜136においてレンズ12と対向する表面(図3における右面)137が、レンズ12の対向面132と対向する反射面となる。反射面137は、凹面であり、電磁波源11から放射された電磁波がレンズ12の対向面123に向かうように電磁波を反射する。
【0051】
以上述べたように本実施形態の電磁波放射装置10Aでは、基板13は、レンズ12の対向面123と対向する反射面137を有する。反射面137は、電磁波源11から放射された電磁波がレンズ12の対向面123に向かうように電磁波を反射する凹面である。
【0052】
本実施形態の電磁波放射装置10Aによれば、電磁波源11からレンズ12の対向面123に直接入射しない電磁波を利用できるようになる。よって、電磁波の利用効率が更に向上する。
【0053】
さらに、本実施形態の電磁波放射装置10Aでは、電磁波源11は、反射面137を底面とする凹所134内に配置されている。本実施形態の電磁波放射装置10Aによれば、電磁波放射装置10Aの厚みを更に薄くできる。
【0054】
本実施形態の電磁波放射装置10Aにおいても、実施形態1の変形例の電磁波放射装置10と同様に、電磁波源11の数を増やしても良い。
【0055】
(実施形態3)
本実施形態の電磁波検出装置20は、図4(a)〜(c)に示すように、電磁波を検出する電磁波センサ21と、電磁波センサ21に対向するように配置される収束レンズであるレンズ22と、電磁波センサ21およびレンズ22が取り付けられる基板23とを備える。
【0056】
電磁波センサ21で検出する電磁波としては、電波(たとえば高周波)や、赤外線(たとえば遠赤外線)、可視光、紫外線、X線、ガンマ線が挙げられる。電波を検出する電磁波センサ21を用いれば、電磁波検出装置20を受信アンテナとして利用できる。光を検出するフォトダイオードなどの電磁波センサ21を用いれば、電磁波検出装置20をディジタルカメラなどに利用できる。また、赤外線を検出する電磁波センサ21を用いれば、電磁波検出装置20を人感センサなどに利用できる。電磁波センサ21は、電磁波検出装置20の用途に応じて選択される。
【0057】
基板23は、平板状に形成されている。基板23の厚み方向の一面(図4(c)における右面)230には、電磁波センサ21が実装されている。また、基板23の一面230には、レンズ22が取り付けられている。基板23の厚み方向の他面(図4(c)における左面)231には、金属材料製のパッド232が形成されている。パッド232は、たとえば電磁波センサ21の出力を読み出すために用いられる。基板23には、基板23を厚み方向に貫通する貫通孔配線233が形成されている。貫通孔配線233は、電磁波源21をパッド232に電気的に接続する。基板23は、たとえば絶縁性を有する樹脂を用いて形成されている。なお、パッド232は必要に応じて複数設けられる。各パッド232は、貫通孔配線233を介して電磁波センサ21に電気的に接続される。
【0058】
レンズ22は、板状に形成されている。レンズ22の厚み方向の一面(図4(c)における右面)220は、平坦な面(平面)である。一方、レンズ12の厚み方向の他面(図1(c)における左面)221には、凹所222が形成されている。凹所222は、電磁波センサ21を収容可能な大きさの略半球状に形成されている。凹所222の底面223は、電磁波センサ21を覆う凹面である。レンズ22では、底面223が、電磁波センサ21と対向する対向面(電磁波センサ21に向けて電磁波を出射させる面)となる。この対向面223は、レンズ22の一面220に入射した電磁波を電磁波センサ21に収束するように形成されている。
【0059】
レンズ22は、対向面223で電磁波センサ21を覆うようにして基板23に取り付けられる。本実施形態では、電磁波センサ21が凹所222内に配置されている。レンズ22の厚み方向と基板23の厚み方向とは一致している。また、電磁波センサ21の中心軸とレンズ22の光軸とを一致させている。電磁波センサ21は、基板23とレンズ22の対向面223とで囲まれた空間24内に配置される。空間24内には、所定の気体(本実施形態では空気)が封入されている。なお、空間24内は、真空であってもよい。
【0060】
レンズ22は、左手系メタマテリアルにより形成されている。本実施形態では、レンズ22の屈折率(左手系マテリアルの屈折率)は−1である。また、空間24は空気で満たされているから、空間24の屈折率は略1(0度、1気圧で1.000292)である。よって、電磁波は、レンズ22から空間24に伝播する際に、レンズ22の対向面223で、入射角と屈折角との正負が逆になるように屈折する。すなわち、入射角をθ、屈折角をφとしたとき、φ=−θが成立する。レンズ22の対向面223の曲率は、レンズ22の一面220に入射した電磁波を電磁波センサ21に収束するような値である。
【0061】
このように、レンズ22は、一面220に入射した平行光束を収束する(収束光束にする)収束レンズである。このレンズ12は、対向面223に入射した発散光束をコリメートする(平行光束にする)コリメートレンズでもある。
【0062】
このように、本実施形態の電磁波検出装置20は、レンズ22の一面220の法線方向(基板23の一面230の法線方向)において強い指向性を有する。
【0063】
以上述べたように本実施形態の電磁波検出装置20は、電磁波を検出する電磁波センサ21と、電磁波センサ21に対向するように配置された収束レンズとしてのレンズ22とを備える。レンズ22は、左手系メタマテリアルを用いて形成される。レンズ22において電磁波センサ21と対向する対向面223は、電磁波センサ21を覆う凹面である。
【0064】
本実施形態の電磁波検出装置20によれば、外部からの電磁波を電磁波センサ21に収束させるために凸面レンズを用いなくて済むから、電磁波検出装置20の厚みを薄くできる。レンズ22において対向面223とは反対側の面である厚み方向の一面220を平面にできるから、一面120が凸面である場合に比べて見栄えが良くなる。レンズ22の対向面223が電磁波センサ21を覆う凹面であるから、対向面223が平面や凸面である場合に比べて電磁波センサ21に入射する電磁波が増える。その結果、外部からの電磁波の利用効率が向上する。
【0065】
特に、電磁波検出装置20をアンテナとして用いる場合、サイドローブなどの誤動作の原因になる電磁波の影響を低減できる。
【0066】
また、本実施形態の電磁波検出装置20によれば、基板23とレンズ22の対向面223とで囲まれる空間24内に電磁波センサ21が配置されているため、電磁波検出装置20の厚みを更に薄くできる。また、レンズ22の一面220に入射した電磁波の大部分が電磁波センサ21に入射するから、外部からの電磁波の利用効率が更に向上する。
【0067】
なお、電磁波検出装置20では、基板23に、複数の電磁波センサ21と、複数のレンズ22とが設けられていてもよい。たとえば、電磁波センサ21は、基板23の一面230にマトリクス状(アレイ状)に配置されていてもよい。一例としては、144個の電磁波センサ21を12×12のマトリクス状に配置できる。この場合、レンズ22は、電磁波センサ21と一対一で対応するようにして基板23の一面230に取り付けられる。このとき、レンズ22は隣接するレンズ22と一体に形成されていてもよい。
【0068】
このように、電磁波センサ21の数を増やせば、電磁波センサ21およびレンズ22を大型化しなくても、電磁波の検出量を増やすことができる。
【0069】
なお、本実施形態の電磁波検出装置20では、レンズ22の一面220は平面である。しかしながら、レンズ22の一面220は必ずしも平面である必要はない。レンズ22の一面220の形状は、電磁波検出装置20の用途に応じて適宜変更できる。
【符号の説明】
【0070】
10 電磁波放射装置
11 電磁波源
12 レンズ
123 対向面
13 基板
14 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波を放射する電磁波源と、
上記電磁波源に対向するように配置された収束レンズとしてのレンズと、を備え、
上記レンズは、左手系メタマテリアルを用いて形成され、
上記レンズにおいて上記電磁波源と対向する対向面は、上記電磁波源を覆う凹面であることを特徴とする電磁波放射装置。
【請求項2】
上記電磁波源および上記レンズが取り付けられる基板を備え、
上記電磁波源は、上記基板と上記対向面とで囲まれる空間内に配置されていることを特徴とする請求項1記載の電磁波放射装置。
【請求項3】
上記基板は、上記レンズの上記対向面と対向する反射面を有し、
上記反射面は、上記電磁波源から放射された電磁波が上記レンズの上記対向面に向かうように電磁波を反射する凹面であることを特徴とする請求項2記載の電磁波放射装置。
【請求項4】
上記電磁波源は、上記反射面を底面とする凹所内に配置されていることを特徴とする請求項3記載の電磁波放射装置。
【請求項5】
上記電磁波源および上記レンズが取り付けられる基板を備え、
上記基板には、上記電磁波源がアレイ状に配置され、
上記レンズは、上記電磁波源と一対一で対応するように上記基板に取り付けられていることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項記載の電磁波放射装置。
【請求項6】
上記電磁波源は、遠赤外線を放射するように構成されていることを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか1項記載の電磁波放射装置。
【請求項7】
電磁波を検出する電磁波センサと、
上記電磁波センサに対向するように配置された収束レンズとしてのレンズと、を備え、
上記レンズは、左手系メタマテリアルを用いて形成され、
上記レンズにおいて上記電磁波センサと対向する対向面は、上記電磁波センサを覆う凹面であることを特徴とする電磁波検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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