説明

電磁波遮蔽シート、及び電磁波遮蔽シートの製造方法

【課題】導電層の表面上に設けられた絶縁部材(透明樹脂層)を効率良く除去することができ、且つ、アースを接地するための領域が分かり易く、当該導電層から容易に良好な導通を取ることができる、電磁波遮蔽シート、及び当該電磁波遮蔽シートの製造方法を提供する。
【解決手段】透明基材の一方の面に少なくとも導電層、透明樹脂層が順に積層された電磁波遮蔽シートの製造方法において、(i)透明基材の一方の面に、導電層を設ける工程、(ii)前記導電層の透明基材側の面とは反対側の面に、透明樹脂層を設ける工程、(iii)前記透明樹脂層の周縁部に着色層形成領域を設定する工程、及び(iv)前記着色層形成領域において、当該透明樹脂層の導電層側の面とは反対側の面に着色層を形成し、当該着色層及び当該着色層の直下部分の透明樹脂層を光(好ましくはパルス光)照射により除去して、前記導電層の周縁部の表面の少なくとも一部を露出させる工程を含むことを特徴とする電磁波遮蔽シートの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種用途、中でも特に、PDP(プラズマディスプレイパネル)などのディスプレイから発生する電磁波を遮蔽(シールド)するのに好適な、電磁波遮蔽シート、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気電子機器の機能高度化と利用増加に伴い、電磁気的なノイズ妨害(Electro Magnetic Interference;EMI)が増え、陰極線管(CRTという)、プラズマディスプレイパネル(PDPという)などのディスプレイでも電磁波が発生する。特に、プラズマディスプレイパネルは、データ電極と蛍光層を有するガラスと透明電極を有するガラスとの組合体であり、作動すると電磁波、及び近赤外線が大量に発生する。
【0003】
通常、電磁波を遮蔽するためにプラズマディスプレイパネルの前面に、電磁波遮蔽用シートと硝子板との積層体が前面板として設けられる。ディスプレイ前面から発生する電磁波の遮蔽性は、日本では30MHz〜1GHzにおいてVCCI(情報処理装置等電波障害自主規制協議会)が規定する家庭環境、住宅環境で使用する情報処理装置に適用される規格(クラスB)を達成することが必要である。なお、本発明において単に電磁波と言った場合は、周波数が上記範囲を中心とするkHz〜GHz帯近辺の電磁波のことを言い、赤外線、可視光線、紫外線、X線等は含まないものとする(例えば、赤外線帯域の周波数の電磁波は赤外線と呼称する)。
【0004】
特許文献1には、プラスチックフィルムに接着剤層を介して構成される導電性金属付きプラスチックフィルムにおいて、導電性金属で描かれた幾何学図形を有し、かつ、導電性金属で描かれた幾何学図形の外周に前記幾何学図形と電気的に接続した導電性の額縁部を有する電磁波シールド性接着フィルムが記載されている。
このような電磁波シールド性接着フィルム(電磁波遮蔽用シート)においては、電磁波遮蔽性を良好なものとするため、導電性金属(導電層)を接地(アース)する必要がある。そのために通常、導電層は、その周縁部に囲むように設けられた額縁状の接地用領域を有し、この額縁状の導電層から接地することが一般的である。
上記特許文献1では、レーザー光により導電性の額縁部を支持する接着剤層とプラスチックフィルムを除去し少なくともその額縁部の一部を露出させ、アースを接地するための領域(導通部)を形成している。
しかしながら、プラスチックフィルム及び接着剤層は無着色透明であるため、プラスチックフィルム及び接着剤層の所定領域を除去して接地用領域を形成する際に、レーザー光の吸収率が低く、照射するレーザー光のエネルギー利用効率が低かった。又、レーザー光により除去すべき領域が目視で分かり難いという問題があった。更にまた、接地用領域形成後においては、当該プラスチックフィルムをレーザー光により除去した部分と、除去していない部分との見分けがつき難く、アースを接地するための領域が分かり難いという問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開平11−233992号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記問題点を解消するためになされたものであり、導電層の表面上に設けられた絶縁部材(透明樹脂層)を効率良く除去することができ、且つ、アースを接地するための領域が分かり易く、当該導電層から容易に良好な導通を取ることができる、電磁波遮蔽シート、及び当該電磁波遮蔽シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、透明樹脂層の導電層側の面とは反対側の面において、アースを接地するための領域(導通部)を形成する部分に着色層を形成することにより、上記課題が解決されるという知見を見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明に係る電磁波遮蔽シートの製造方法は、透明基材の一方の面に少なくとも導電層、透明樹脂層が順に積層された電磁波遮蔽シートの製造方法において、
(i)透明基材の一方の面に、導電層を設ける工程、
(ii)前記導電層の透明基材側の面とは反対側の面に、透明樹脂層を設ける工程、
(iii)前記透明樹脂層の周縁部に着色層形成領域を設定する工程、及び
(iv)前記着色層形成領域において、当該透明樹脂層の導電層側の面とは反対側の面に着色層を形成し、当該着色層及び当該着色層の直下部分の透明樹脂層を光照射により除去して、前記導電層の周縁部の表面の少なくとも一部を露出させる工程を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明の電磁波遮蔽シートの製造方法によれば、透明樹脂層の導電層側の面とは反対側の面の周縁部に着色層を形成することにより、当該着色層が光を吸収して透過率を抑制し(照射光の吸収率を高くし)、効率良く当該着色層の直下部分の透明樹脂層に熱を伝達することができるため、少ないエネルギーで当該着色層及び当該着色層の直下部分の透明樹脂層を除去でき、前記導電層の周縁部の表面の少なくとも一部を露出させることができる。
また、透明樹脂層の導電層側の面とは反対側の面において、光照射により除去する部分(周縁部)に着色層を形成するため、仮に、当該着色層及び当該着色層の直下部分の透明樹脂層を光照射により除去した後、当該周縁部において、当該透明樹脂層が除去されずに残った場合でも、当該透明樹脂層上に着色層が積層されているため、除去されずに残った部分を目視あるいは検査装置により確認することができ、当該透明樹脂層の除去もれを防止することができる。
【0009】
本発明に係る電磁波遮蔽シートの製造方法においては、前記工程(iv)において、光照射を行った後で、除去した着色層及び当該着色層の直下部分の透明樹脂層の残渣を吸塵することが、当該残渣が拡散することによる電磁波遮蔽シートの傷つき防止の観点から好ましい。
【0010】
本発明に係る電磁波遮蔽シートの製造方法においては、前記透明樹脂層の周縁部の少なくとも一部に、着色層が積層された透明樹脂層を残すことで、アースを接地するための領域が分かり易く、導電層を容易に接地することが可能な電磁波遮蔽シートを提供することができる。
【0011】
本発明に係る電磁波遮蔽シートの製造方法においては、前記導電層が導電性パターン層であることが好ましい。また、前記導電層が全面パターン形状である導電性パターン層の場合でも、透明樹脂層の導電層側の面とは反対側の面の周縁部に着色層を形成することにより、当該周縁部において光の透過率が一定に保たれるため、当該透明樹脂層を段差なく除去することができ、良好な導通を取ることが可能な電磁波遮蔽シートを提供することができる。
【0012】
本発明に係る電磁波遮蔽シートは、透明基材の一方の面に少なくとも導電層、透明樹脂層が順に積層された電磁波遮蔽シートにおいて、当該透明樹脂層の周縁部の少なくとも一部に当該透明樹脂層上に着色層が積層された部分と、当該着色層の隣接領域に前記導電層の表面の一部が露出した部分とを有することを特徴とする。
【0013】
本発明の電磁波遮蔽シートによれば、透明樹脂層の周縁部の少なくとも一部に、当該透明樹脂層上に着色層が積層された部分を有することにより、アースを接地するための領域が分かり易く、導電層を容易に接地することができる。また、透明樹脂層の周縁部の少なくとも一部に、導電層の表面の一部が露出していることにより、当該導電層から容易に良好な導通を取ることができる。
【0014】
本発明に係る電磁波遮蔽シートにおいては、前記周縁部において、着色層を有する透明樹脂層が、当該透明樹脂層の周縁部の内周部及び/又は外周部の少なくとも一部にあることが、アースを接地するための領域が分かり易く、導電層から容易に良好な導通を取ることができる点から好ましい。
【0015】
本発明に係る電磁波遮蔽シートにおいては、前記導電層が導電性パターン層であることが好ましい。また、前記導電層が全面パターン形状である導電性パターン層の場合でも、透明樹脂層の導電層側の面とは反対側の面の周縁部に着色層を形成することにより、露出部を形成するのに光を当該着色層に照射して当該着色層直下の透明樹脂層を除去する製造方法によって製造する場合において、当該周縁部において光の透過率が一定に保たれるため、除去した後の透明樹脂層に段差が生じ難く、当該透明樹脂層の周縁部に配置したガスケット(導電性緩衝材)を介して当該導電層から良好な導通を取ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電磁波遮蔽シートの製造方法によれば、透明樹脂層の導電層側の面とは反対側の面の周縁部に着色層を形成することにより、当該着色層が光を吸収して透過率を抑制し、効率良く当該着色層の直下部分の透明樹脂層に熱を伝達することができるため、少ないエネルギーで当該着色層及び当該着色層の直下部分の透明樹脂層を均一の厚みで除去でき、前記導電層の周縁部の表面の少なくとも一部を露出させることができる。
また、透明樹脂層の導電層側の面とは反対側の面において、光照射により除去する部分(周縁部)に着色層を形成するため、仮に、当該着色層及び当該着色層の直下部分の透明樹脂層を光照射により除去した後、当該周縁部において、当該透明樹脂層が除去されずに残った場合でも、当該透明樹脂層上に着色層が積層されているため、除去されずに残った部分を目視により確認することができ、当該透明樹脂層の除去もれを防止することができる。
本発明の電磁波遮蔽シートによれば、透明樹脂層の周縁部の少なくとも一部に、当該透明樹脂層上に着色層が積層された部分を有することにより、アースを接地するための領域が分かり易く、導電層を容易に接地することができる。また、透明樹脂層の周縁部の少なくとも一部に、導電層の表面の一部が露出していることにより、当該導電層から容易に良好な導通を取ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、電磁波遮蔽シート、及びその製造方法を含むものである。以下、それぞれについて詳述する。
【0018】
I.電磁波遮蔽シート
本発明に係る電磁波遮蔽シートは、透明基材の一方の面に少なくとも導電層、透明樹脂層が順に積層された電磁波遮蔽シートにおいて、当該透明樹脂層の周縁部の少なくとも一部に当該透明樹脂層上に着色層が積層された部分と、当該着色層の隣接領域に前記導電層の表面の一部が露出した部分とを有することを特徴とする。
【0019】
本発明の電磁波遮蔽シートは、透明樹脂層の周縁部の少なくとも一部に、当該透明樹脂層上に着色層が積層された部分を有することにより、アースを接地するための領域が分かり易く、導電層を容易に接地することができる。また、透明樹脂層の周縁部の少なくとも一部に、導電層の表面の一部が露出していることにより、当該導電層から容易に良好な導通を取ることができる。
【0020】
本発明に係る電磁波遮蔽シートの層構成を図面を用いて説明する。
本発明に係る電磁波遮蔽シートの一例の断面図を図1で概念的に示す。なお、図1及び図2に示す断面図において、説明の容易化のために、厚み方向(図の上下方向)の縮尺を面方向(図の左右方向)の縮尺よりも大幅に拡大誇張して図示してある。図1に示す電磁波遮蔽シート1は、本発明に係る電磁波遮蔽シートの好適な実施形態のうちの第一の実施形態であり、透明基材10の一方の面に、接着剤層11を介して、導電層12が積層されており、当該導電層12の透明基材10側とは反対側の面に、絶縁層である透明樹脂層20が積層されている。当該透明樹脂層20の周縁部21には、着色層15が積層された部分と、当該着色層15の隣接領域に除去部14が形成されており、当該除去部14において、当該導電層12の周縁部の一部(接地用領域)13が露出している。
ここで、当該着色層15と当該導電層の露出領域(接地用領域)13との位置関係としては;
(1)当該透明樹脂層20の周縁部21の内周部21a及び外周部21b領域に着色層15を有し、その内側領域に当該導電層の露出領域(接地用領域)13が、単一個(数学用語でいう単連結領域として)位置する形態(図4(a))、
(2)当該透明樹脂層20の周縁部21の内周部21a及び外周部21b領域に着色層15を有し、その内側領域に当該導電層の露出領域(接地用領域)13が、複数個互いに隔離して(数学用語でいう多重連結領域として)位置する形態(図4(b))、
(3)当該透明樹脂層20の周縁部21の内周部21a及び外周部21b領域に当該導電層の露出領域(接地用領域)13を有し、その内側領域に着色層15を有する形態(図4(c))、
(4)当該透明樹脂層20の周縁部21において、当該着色層15と当該導電層の露出領域(接地用領域)13とが隣接して交互に配列する形態(図4(d))、
の何れかに大別される。
図1に示す例は上記(1)の形態の具体例であり、除去部14が形成された透明樹脂層20の周縁部21の内周部及び外周部の一部には、着色層15が(残存して)積層されている。
図2は、本発明に係る電磁波遮蔽シート1の好適な実施形態のうちの第二の実施形態であり、透明基材10の一方の面に、接着剤層11を介して、メッシュ状にパターン形成された導電性パターン層、即ち、導電性メッシュ層12が設けられており、当該導電性メッシュ層12の透明基材10側とは反対側の面に、絶縁層である透明樹脂層20が積層されている。当該透明樹脂層20の周縁部21には除去部14が形成されており、当該除去部14において、当該導電性メッシュ層12の周縁部の一部(接地用領域)13が露出している。図2に示す例は上記(2)の形態の具体例でもある。また、除去部14が形成された透明樹脂層20の周縁部21の一部には、着色層15が積層されている。図2の左側の例は上記(2)或いは上記(4)の形態の具体例(の断面図)である。
以下、本発明の電磁波遮蔽シートについて、透明基材から順に説明する。
【0021】
(1)透明基材
本発明で用いる透明基材10は、電磁波遮蔽シートを構成する一部の層であり、接着剤層を介して導電層を積層するための基材となる層である。従って、透明基材としては、機械的強度、光透過性と共に、耐熱性等の性能を適宜勘案したものを用途に応じて選択すればよい。このような、透明基材の具体例としては、樹脂等の有機材料或は硝子等の無機材料からなるシート(乃至フィルム。以下同様。)又は板が挙げられる。透明基材の透明性は高いほどよいが、好ましくは可視光域380〜780nmにおける光線透過率が70%以上、より好ましくは80%以上となる光透過性が良い。なお、光透過率の測定は、分光光度計(例えば、(株)島津製作所製 UV−3100PC)を用い、室温、大気中で測定した値を用いることができる。
【0022】
透明基材の材料として用いる樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、テレフタル酸−イソフタル酸−エチレングリコール共重合体、テレフタル酸−シクロヘキサンジメタノール−エチレングリコール共重合体などのポリエステル系樹脂、ナイロン6などのポリアミド系樹脂、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、シクロオレフィン重合体などのポリオレフィン系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体などのスチレン系樹脂、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂、イミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
【0023】
なお、これらの樹脂は、単独、又は複数種類の混合樹脂(ポリマーアロイを含む)として用いられ、透明樹脂基材の層構成は、単層、又は2層以上の積層体として用いられる。また、樹脂フィルムの場合、1軸延伸や2軸延伸した延伸フィルムが機械的強度の点でより好ましい。また、これら樹脂中には、必要に応じて適宜、紫外線吸収剤、充填剤、可塑剤、帯電防止剤などの添加剤を加えても良い。又、硝子としては、ソーダ硝子、カリ硝子、硼珪酸硝子、石英硝子等が挙げられる。通常、硝子の場合は、厚みの有る板状で用いられる。
【0024】
透明基材の厚さは、基本的には用途に応じ選定すればよく、特に制限はないが、通常は12〜5000μm、好ましくはフィルムの場合は50〜500μm、より好ましくは50〜200μm、板の場合は500〜3000μmである。このような厚み範囲ならば、機械的強度が十分で、反り、弛み、破断などを防ぎ、連続帯状で供給して加工する事も容易である。
なお、本発明では、透明基材としては、特に、可撓性の有る樹脂フィルム或は板から成るものが、製造加工適性が良好で、重量、価格も低減できる点で好ましい。特に、これら樹脂から成る基材を透明樹脂基材と称呼する。
【0025】
透明樹脂基材の形態としては樹脂板よりは透明樹脂フィルムが好ましい。当該樹脂フィルムのなかでも特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂フィルムが、透明性、耐熱性、コスト等の点で好ましく、より好ましくは2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが最適である。
【0026】
また、樹脂フィルム等の透明基材は、適宜その表面に、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、フレーム処理、プライマー処理、アルカリ処理、などの公知の易接着処理を行ってもよい。
【0027】
(2)導電層
本発明で用いる導電層12は、図3の如く、中央部のディスプレイの画像表示領域に対峙する透視性導電層121と、その周縁部に位置する接地用領域122(こちらは透視性、不透視性何れでも可能)から成る。
ここで、透視性導電層とは、当該透視性導電層を通して、ディスプレイパネルの表示画像を観賞できる可視光線透過性を有し、且つ、ディスプレイパネルから発生する電磁波を遮蔽できる導電性を有する層のことを意味する。透視性導電層としては、通常、後述の銅等の金属材料等の不透明性の導電性材料を用いてメッシュ等の微細なメッシュパターン状に形成して、その開口部から画像光を透過させるようにした導電性パターン層が用いられる。特に、当該パターンとしてメッシュを採用する場合は導電性メッシュ層と呼称する。但し、ITO等の透明導電性材料を用いて非パターン状(開口部なしで全面被覆、ソリッド状)に形成した薄膜を用いることもできる。導電性メッシュ層を用いる場合には、外光反射を抑制するために、導電性メッシュ層の視聴者側の面を黒化処理することが好ましい。以下の説明においては、透視性導電層として導電性メッシュ層を用いた例を説明する。
【0028】
(導電性メッシュ層)
導電性メッシュ層は、導電性を有することで電磁波遮蔽機能を担える層であり、またそれ自体は不透明性材料からなるが、多数の開口部が存在するメッシュ状の形状に加工することにより、電磁波遮蔽性能と光透過性を両立させている層である。
また、導電性メッシュ層は、一般的には金属箔のエッチングで形成した物が代表的であり、以下この形態を主に例示して説明するが、これ以外のものでも、電磁波遮蔽性能においては意義を有する。従って、本発明では、導電性メッシュ層の材料及び形成方法は特に限定されるものではなく、従来公知の光透過性の電磁波遮蔽シートにおける各種導電性メッシュ層を適宜採用できるものである。例えば、印刷法やめっき法等を利用して透明基材上に最初からメッシュ状の形状で導電性メッシュ層を形成したもの、或いは、最初は透明基材上に全面に、無電解めっき等の化学的形成手法を用いて非パターン状の透視性導電層を形成後、エッチング加工等でメッシュ状の形状にして導電性メッシュ層としたもの、或いは導電性組成物からなるインキ乃至ペーストをメッシュ状に印刷したもの等でも構わない。
【0029】
導電性メッシュ層は、電磁波遮蔽性能を発現するに足る導電性を有する物質であれば、特に制限はないが、通常は、導電性が良い点で金属層が好ましく、金属層は上記のように、めっき、金属箔ラミネート等により形成することができる。金属層の金属材料としては、例えば、金、銀、銅、白金、錫、アルミニウム、鉄、ニッケル、クロム等の高導電率金属が挙げられる。また、金属層の金属は合金でも良く、金属層は単層でも多層でも良い。例えば、鉄の場合には、低炭素リムド鋼や低炭素アルミキルド鋼などの低炭素鋼、Ni−Fe合金、インバー合金等が好ましい。一方、金属が銅の場合は、金属材料は銅や銅合金となり、銅箔としては圧延銅箔や電解銅箔があるが、薄さ及びその均一性、黒化層との密着性等の点からは、電解銅箔が好ましい。
【0030】
なお、金属層による導電性パターン層の厚さは、1〜50μm程度、好ましくは2〜15μmである。厚さがこれより薄くなり過ぎると電気抵抗上昇により十分な電磁波遮蔽性能を得難くなり、厚さがこれより厚くなり過ぎると高精細なパターン形状が得難くなり、パターン形状の均一性が低下する。導電性パターン層の平坦化を行いやすく、平坦化を行った際に気泡の混入が少なく、透明性に優れた電磁波遮蔽シートを得やすい点からは、導電性パターン層の厚さは2〜10μm程度であることが好ましい。
【0031】
[メッシュの形状]
なお、導電性メッシュ層のメッシュ状としての形状は、任意で特に限定されないが、そのメッシュの開口部の形状として、正方形が代表的である。開口部の平面視形状は、例えば、正三角形等の三角形、正方形、長方形、菱形、台形等の四角形、六角形等の多角形、或いは、円形、楕円形等である。メッシュはこれら形状からなる複数の開口部を有し、開口部間は通常幅均一のライン状のライン部となり、通常は、開口部及びライン部は全面で同一形状同一サイズである。具体的サイズを例示すれば、開口率及びメッシュの非視認性の点で、開口部間のライン部の幅は5〜50μmが良い。また、開口部サイズは〔ライン間隔或いはラインピッチ〕−〔ライン幅〕であるが、この〔ライン間隔或いはラインピッチ〕で言うと100μm〜500μm、且つ開口率(開口部の面積の合計/メッシュ部の全面積)を50〜97%とするのが、光透過性と電磁波遮蔽性との両立性の点で好ましい。また、ラインピッチは100μm〜500μmの間でランダムでもかまわない。
なお、バイアス角度(メッシュのライン部と電磁波遮蔽シートの外周辺との成す角度)は、ディスプレイの画素ピッチや発光特性を考慮して、モアレが出難い角度に適宜設定すれば良い。
【0032】
[接地用領域とメッシュ領域]
また、接地をとり易い点から、導電性メッシュ層12は、図3の平面図で概念的に例示する導電性メッシュ層12のように、その平面方向において、中央部のメッシュ領域121以外に周縁部に接地用領域122を備えた層とする。当該接地用領域は画像表示を阻害しない為に、画像表示領域周縁部の一部又は全周に形成する。当該メッシュ領域とは電磁波遮蔽シートを適用するディスプレイの画像表示領域を全て覆うことができる領域である。当該接地用領域とは接地をとる為の領域である。当該画像表示領域とは、ディスプレイが実質的に画像を表示する領域(実質的画像表示領域)を少なくとも意味する。
なお、接地用領域は基本的にはメッシュは不要だが、接地用領域の反り防止等の目的から、開口部から成るメッシュが存在しても良い。
【0033】
[黒化処理]
黒化処理は上記導電性メッシュ層の面の光反射を防ぐためのものであり、黒化処理で形成された黒化処理面により、導電性メッシュ層面での外光反射による透視画像の黒レベルの低下を防ぎ、また、透視画像の明室コントラストを向上させて、ディスプレイの画像の視認性を向上するものである。黒化処理面は、導電性メッシュ層のライン部(線状部分)の全ての面に設けることが好ましいが、本発明では表裏両面のうち少なくとも視聴者側であると共に外光入射側の面を黒化処理面とすることが好ましい。表裏両面や、側面(両側或いは片側)が更に黒化処理されていても良い。黒化層は、少なくとも視聴者側に設ければ良いが、ディスプレイ面側にも設ける場合には、ディスプレイから発生する迷光を抑えられるので、さらに、画像の視認性が向上する。
黒化処理としては、導電性メッシュ層の視聴者側表面を粗化するか、全可視光スペクトルに亘って光吸収性を付与する(黒化する)か、或いは両者を併用するかの何れかにより行なうことができる。
【0034】
本発明において黒化層は、黒等の暗色を呈し、密着性等の基本的物性を満足するものであれば良く、公知の黒化層を適宜採用し得る。
従って、黒化層としては、金属等の無機材料、黒着色樹脂等の有機材料等を用いることができ、例えば無機材料としては、金属、合金、金属酸化物、金属硫化物の金属化合物等の金属系の層として形成する。金属系の層の形成法としては、従来公知の各種黒化処理法を適宜採用できる。なかでも、メッキ法による黒化処理は密着性、均一性、容易性等で好ましい。メッキ法の材料は、例えば、銅、コバルト、ニッケル、亜鉛、モリブデン、スズ、クロム等の金属や金属化合物等を用いる。
【0035】
黒化処理として好ましいめっき法には、銅からなる導電層を、硫酸、硫酸銅及び硫酸コバルト等からなる電解液中で、陰極電解処理を行いカチオン性粒子を付着させるカソーディック電着メッキ法がある。この方法によれば、カチオン性粒子の付着で黒色と同時に粗面も得られる。カチオン性粒子としては、銅粒子、銅と他の金属との合金粒子が適用できるが、好ましくは銅−コバルト合金の粒子である。カチオン性粒子の粒径は、黒濃度の点から、平均粒径0.1〜1μm程度が好ましい。その他、黒化層形成法として、ニッケル−亜鉛合金、硫化ニッケル、或いはこれらの複合体からなる黒化ニッケルメッキ、並びに酸化銅も好適に使用できる。
【0036】
黒化層の厚みは、0.1〜0.5μmの範囲内であることが好ましく、0.1〜0.2μmの範囲内であることが、更に好ましい。
黒化層の黒濃度は0.6以上であることが好ましい。なお、黒濃度の測定方法は、COLOR・CONTROL・SYSTEMのGRETAG・SPM100−11(キモト社製、商品名)を用いて、観察視野角10度、観察光源D50、照明タイプとして濃度標準ANSITに設定し、白色キャリブレイション後に、試験片を測定する。また、黒化層の光線反射率(単に反射率とも称される)としては5%以下が好ましい。光線反射率は、JIS−K7105に準拠して、ヘイズメーターHM150(村上色彩社製、商品名)を用いて測定する。また、反射率の測定に換えて、色差計により反射のY値で表わしてもよく、この際にはY値として10以下が好ましい。
【0037】
(3)接着剤層
接着剤層11は、導電層(導電性メッシュ層)と透明基材とを接着することが可能な層であれば、その種類等は特に限定されるものではないが、本発明においては、上記導電性メッシュ層を構成する金属層と透明基材とを接着剤層を介して貼り合わせた後、金属層をエッチングによりメッシュ状とすることから、接着剤層も耐エッチング性を有することが好ましい。具体的には、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタンエステル樹脂等が挙げられる。また、本発明に用いられる接着剤層は、紫外線硬化型であってもよく、また熱硬化型乃至2液硬化型であってもよい。特に、透明基材との密着性などの観点からポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、特に、2液硬化型ウレタン樹脂が好ましい。
【0038】
接着剤層を介してドライラミネーション法等により透明基材と導電性メッシュ層を形成するための金属箔とを接着することができる。また、この接着剤層の膜厚が0.5μm〜50μmの範囲内、中でも1μm〜20μmの範囲内であることが好ましい。これにより、透明基材と導電性メッシュ層とを強固に接着することができ、また、導電性メッシュ層を形成するエッチングの際に透明基材が塩化鉄等のエッチング液の影響を受けること等を防ぐことができるからである。
【0039】
(4)透明樹脂層
透明樹脂層20は、電磁波遮蔽シートの導電層表面を保護すると共にメッシュ層凹凸の平坦化機能、光学フィルタ機能発現、或いは他の機能層を導電層上に積層する為の接着剤としての機能等を有する層である。
この様な透明樹脂(層)は一般に電気絶縁体である。物体中に電場の力で運動し得る自由電子がほとんど存在しないことによって、電場をかけても電流が流れないと共に、可視光及びkHzからGHz帯域の電磁波が自由電子との相互作用によって反射されることもない為である。その為、透明樹脂層で被覆された導電層を接地するためには、この透明樹脂層を除去する必要が有る。
また、上記導電層の透視性導電層を導電性メッシュ層とした場合、当該透明樹脂層は、導電性メッシュ層による表面凹凸を埋めて導電性メッシュ層側の表面を平坦化することにより、導電性メッシュ層側で被着体と接着剤等で積層する場合に気泡の噛み込み等を防ぐ機能を有する。
透明樹脂層は、擦り傷、表面汚染に対する耐性の点で好ましくは硬化性樹脂が硬化してなる樹脂硬化層として形成する。また、このような樹脂硬化層はいわゆるハードコート層〔HC(Hard Coat)層とも略称〕として形成できる。また、透明樹脂層は単層の他、多層として形成してもよい。
ハードコート層としても適用可能な透明樹脂層を形成する場合、用いる硬化性樹脂としては、電離放射線硬化性樹脂、その他公知の硬化性樹脂などを要求性能などに応じて適宜採用すればよい。電離放射線硬化性樹脂としては、アクリレート系、オキセタン系乃至エポキシ系、不飽和ポリエステル系、シリコーン系などが挙げられ、これら系のモノマー(単量体)、或いはオリゴマー乃至プレポリマーを1種単独で、又はこれらの中から適宜選択する2種以上を混合して用いる。例えば、アクリレート系の電離放射線硬化性樹脂は、単官能(メタ)アクリレートモノマー、2官能(メタ)アクリレートモノマー、3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーなどの(メタ)アクリル酸エステルモノマー、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル等のオリゴマー乃至はプレポリマーなどからなる。さらに3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーを例示すれば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等がある。
【0040】
このような電離放射線硬化性樹脂などの硬化樹脂からなる樹脂組成物を、透明基材上に積層した導電性メッシュ層表面に対して、塗布して当該樹脂を硬化させて、透明樹脂層を形成する。なお、電離放射線硬化性樹脂を硬化させる電離放射線としては、紫外線、電子線などが代表的である。
また、透明樹脂層を接着剤層として利用し、更にその上に他の機能層を積層する場合は、透明樹脂層(接着剤層)には、必ずしも、硬度、耐擦傷性は要求されない。この場合には、電離放射線硬化性樹脂の他に、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等を用いる事もできる。或いはまた透明樹脂層を接着剤層として利用する場合には、所謂粘着剤の形態のものを用いても良い。これら接着剤用の樹脂としては、公知の各種樹脂が使用できる。
また、以上の透明樹脂層中に、近赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、着色色素等を添加したり、或いは当該透明樹脂層表面に反射防止層、又は防眩層を積層することによって、当該透明樹脂層自体に光学フィルタ層としての機能を付与できる。
【0041】
透明樹脂層の厚みは、8〜150μmの範囲内であることが好ましく、10〜50μmの範囲内であることが、更に好ましい。
【0042】
(5)着色層
着色層15は、光照射により除去することができ、また、透明樹脂層の除去もれ防止、及びアースを接地するための領域を目視で確認することができる点から、透明樹脂層除去の為の照射光及び目視で接地加工領域を確認する為の可視光の両波長(帯域)を吸収する層である。また、当該着色層が吸収すべき、両波長即ち、透明樹脂層除去の為の照射光の波長及び目視で接地加工領域を確認する為の吸収波長は一致していても良いし、別個であっても良い。例えば、導電層露出工程後の後工程および製品組み込み後の外観を保つ為、導電層露出工程における吸収波長は紫外線或いは赤外線帯域の非可視光とし、且つ接地加工領域を確認する為の吸収波長も紫外線或いは赤外線帯域の非可視光(両波長は同一でも別でも良い)として、可視光を透過する材料であっても良い。この場合でも検査においては対象物を照射する照明光の可視光蛍光により目視で接地加工領域を確認するか、或いは紫外線又は赤外線帯域を検知するセンサーにより、接地加工領域を確認する形態が挙げられる。或いは、当該着色層が目視で認識出来ても最終製品の概観上支障なく、且つ照射光を吸収し当該透明樹脂層を除去するのに赤外線が好適な場合は、目視で確認し易い色となるように可視光帯域中に吸収波長を有し、同時に透明樹脂層除去用の赤外線光の波長にも吸収波長を有する形態も挙げられる。これらの形態は、着色層中に、例えば、後述の如き各種着色剤の中から所望の吸収波長スペクトルを持つ物を選択して添加する事で実現が可能である。
着色層は、透明樹脂層の導電層側の面とは反対側の面の周縁部に形成される。また、当該着色層は、光照射により除去することができ、且つ照明を選択し目視で確認できれば、特に限定されず、例えば、透明樹脂層上の周縁部に、樹脂バインダー中にカーボン(墨)、酸化第一銅、酸化第二銅、酸化第二鉄、四三酸化鉄、酸化クロム等の金属酸化物、群青、紺青、黄鉛、クロムバーミリオン、チタンイエロー、緑青等の無機顔料、フタロシアニンブルー、ポリアゾレッド、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー等の有機顔料等の遮光性粒子から成る着色剤を含有させた材料(インキ乃至塗料)を、フォトリソグラフィー法、印刷法等のパターニング方法やインクジェット印刷方式を用いて形成したり、着色テープを貼り合わせたり、熱、あるいはレーザー転写等の転写印刷法によって形成することができる。
【0043】
着色層の厚みは、0.1μm〜200μmの範囲内であることが好ましく、0.1μm〜10μmの範囲内であることが、更に好ましい。当該着色層の厚みを上記範囲内とすることで、目視およびセンサーによるパターン認識が容易であり、かつ透過率を一定に保つ事のできる光加工容易な領域とすることができる。
【0044】
II.電磁波遮蔽シートの製造方法
本発明に係る電磁波遮蔽シートの製造方法は、透明基材の一方の面に少なくとも導電層、透明樹脂層が順に積層された電磁波遮蔽シートの製造方法において、
(i)透明基材の一方の面に、導電層を設ける工程、
(ii)前記導電層の透明基材側の面とは反対側の面に、透明樹脂層を設ける工程、
(iii)前記透明樹脂層の周縁部に着色層形成領域を設定する工程、及び
(iv)前記着色層形成領域において、当該透明樹脂層の導電層側の面とは反対側の面に着色層を形成し、当該着色層及び当該着色層の直下部分の透明樹脂層を光照射により除去して、前記導電層の周縁部の表面の少なくとも一部を露出させる工程を含むことを特徴とする。
【0045】
本発明の電磁波遮蔽シートの製造方法によれば、透明樹脂層の導電層側の面とは反対側の面の周縁部に着色層を形成することにより、当該着色層が光を吸収して光エネルギーを熱に変換し、効率良く当該着色層の直下部分の透明樹脂層に熱を伝達することができるため、少ないエネルギーで当該着色層及び当該着色層の直下部分の透明樹脂層を除去でき、前記導電層の周縁部の表面の少なくとも一部を露出させることができる。
また、透明樹脂層の導電層側の面とは反対側の面において、光照射により除去する部分(周縁部)に着色層を形成するため、仮に、当該着色層及び当該着色層の直下部分の透明樹脂層を光照射により除去した後、当該周縁部において、当該透明樹脂層が除去されずに残った場合でも、当該透明樹脂層上に着色層が積層されているため、除去されずに残った部分を目視により確認することができ、当該透明樹脂層の除去もれを防止することができる。
【0046】
以下、透視性導電層が導電性メッシュ層である導電層を例に挙げ、各工程についてそれぞれ説明する。
【0047】
(i)透明基材の一方の面に、導電層を設ける工程
本工程においては、先ず透明基材を用意し、この透明基材の一方の面に金属層(箔)を積層する。
上記透明基材は、「I.電磁波遮蔽シート」において説明したものを用いることができる。
電磁波遮蔽シートを連続的に製造し生産性を向上できる点では、透明基材が樹脂基材である場合、後述するメッシュ層形成等の少なくとも製造初期の段階においては、連続帯状のシートの形態で取り扱うのが好ましい。
尚、透明基材は、適宜その表面に、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、フレーム処理、プライマー処理、アルカリ処理、などの公知の易接着処理を行ってもよい。
【0048】
上記金属層(箔)に対するメッシュの形成方法としては、特に限定されない。例えば、次の3つの方法が挙げられる。
(1)透明基材へ導電インキをパターン状に印刷し、形成された導電インキ層の上へ金属メッキする方法(例えば、特開2000−13088号公報)。
(2)透明基材へ、導電インキ又は化学メッキ触媒含有感光性塗布液を全面に塗布し、形成された塗布層をフォトリソグラフィー法でメッシュ状とした後に、当該メッシュの上へ金属メッキする方法(例えば、住友大阪セメント株式会社新材料事業部新規材料研究所新材料研究グループ、‘‘光解像性化学メッキ触媒’’、[online]、掲載年月日記載なし、住友大阪セメント株式会社、[平成15年1月7日検索]、インターネット〈URL:http://www.socnb.com/product/hproduct/display.html〉)。
(3)透明基材と金属箔とを透明接着剤等で積層した後に、当該金属箔をフォトリソグラフィー法でメッシュ状とする方法(例えば、特許第3388682号公報、特開2001−210988号公報)。
【0049】
以下、(3)の方法によって、透明基材上に積層された金属層を、フォトリソグラフィー法でメッシュ状とする工程の一例を挙げて説明する。
まず、上記のように準備した透明基材上に、上述した接着剤層を形成する。層形成法としては、公知の層形成法、例えば、ロールコート、コンマコート、グラビアコート等の塗工法、或いは、任意形状での部分形成が容易なスクリーン印刷、グラビア印刷等の印刷法を適宜採用することができる。
次に、上記透明基材の接着剤層の表面に、金属層を積層する。金属層としては、上記導電性メッシュ層の説明で述べた材料を適宜選択して用いることができる。
【0050】
次に、積層された金属層面へ、レジスト層をメッシュパターン状に設け、レジスト層で覆われていない部分の金属層をエッチングにより除去した後に、レジスト層を除去する所謂リソグラフィー法で、メッシュ状の金属層とする。なお、その際、金属層以外に、その他の導電性を有しない層も積層されている場合は、開口部に対応する領域においては、その他の層も金属層と共にエッチング除去する。
この工程も、帯状で連続して巻き取られたロール状の積層体を巻き出して加工し、加工後再度巻き取っていく(巻取り加工、ロールツーロール加工という)ことが好ましい。当該積層体を連続的又は間歇的に搬送しながら、緩みなく伸張した状態で、マスキング、エッチング、レジスト剥離する。透明基材としてガラスを用いる場合には、1枚毎に加工する(枚葉加工、枚葉工程という)。
【0051】
以下、レジスト層のパターン形成をパターン露光にて行う所謂フォトリソグラフィー法について説明する。
まず、マスキングを行う。例えば、金属層側の最表面へ感光性レジストを塗布し、乾燥した後に、所定のパターンを有するフォトマスクにて密着露光し、水現像し、硬膜処理などを施し、ベーキングすることにより、所望のパターンのレジスト層を形成する。尚、感光性レジストのネガ型、ポジ型の何れも使用可能である。感光性レジストがネガ型の場合は、フォトマスクのメッシュパターンはライン部が透明なものを用いる。また、感光性レジストがポジ型の場合は、フォトマスクのメッシュパターンは開口部が透明なものを用いる。また、露光パターンとしては、電磁波遮蔽シートとして所望のパターンであり、最低限メッシュ状領域のパターンから構成される。
【0052】
尚、導電性メッシュ層は、全面メッシュ状のパターンから構成されていてもよく、メッシュパターン周辺(周縁)部の少なくとも一部に額縁状の接地用領域が設けられていてもよい。
当該導電性メッシュ層が、全面メッシュ状のパターンから構成される場合、当該導電性メッシュ層の開口部はライン部に比べて光の透過率が大きいため、当該導電性メッシュ層の接地用領域上の透明樹脂層に、当該ライン部上の透明樹脂層を除去し得る程度の光を照射すると、当該開口部上の透明樹脂層は厚く残り、当該ライン部の厚みと当該開口部上の透明樹脂層の厚みに段差が生じる。そのため、当該透明樹脂層の除去部にガスケット(導電性緩衝材)を配置すると、当該ガスケットと当該導電性メッシュ層のライン部との接触が不十分となり、当該導電性メッシュ層から十分な導通を取ることができない恐れがある。
これに対して、本発明においては、導電性メッシュ層の接地用領域がメッシュ状のパターンから構成される場合でも、後述するように、透明樹脂層の導電層側の面とは反対側の面の周縁部において、透明樹脂層を除去すべき領域の表面上(及び必要に応じてその周囲の隣接領域にわたって)に着色層を形成することにより、当該周縁部において導電層の有無にかかわらず光の透過率(吸収率)が一定に保たれるため、当該透明樹脂層を段差なく除去することができる。従って、当該透明樹脂層の除去部にガスケットを配置すると、当該ガスケットと当該導電性メッシュ層のライン部とが接触し、当該導電性メッシュ層から良好な導通を取ることができる。
【0053】
上記感光性レジストの塗布は、巻取り加工では、帯状の積層体を連続又は間歇で搬送させながら、金属層面へ、カゼイン、PVA、ゼラチンなどから成るレジストをディッピング(浸漬)、カーテンコート、掛け流しなどの方法で行う。また、レジストは塗布ではなく、ドライフィルムレジストを用いてもよく、作業性を向上できる。
【0054】
マスキング後にエッチング(腐蝕)加工を行う。当該エッチングに用いるエッチング液としては、エッチングを連続して行う本発明には循環使用が容易にできる塩化第二鉄、又は塩化第二銅の水溶液が好ましい。また、当該エッチングは、帯状で連続する鋼材、特に厚さ20〜80μmの薄板をエッチングするカラーTVのブラウン管用のシャドウマスクを製造する設備、工程と基本的に同様である。透明基材としてガラスを用いる場合の枚葉加工もより古くから行われている。エッチング後は、水洗、アルカリ液によるレジスト剥離、洗浄を行ってから乾燥すればよい。
【0055】
(ii)前記導電層の透明基材側の面とは反対側の面に、透明樹脂層を設ける工程
本工程においては、まず上記メッシュ状金属層の凹凸面に、透明樹脂層用塗工液を塗工して、透明樹脂層を形成する。この場合、当該透明樹脂層によって当該メッシュ凹凸面を平坦化することになるため、かかる透明樹脂層形成は所謂平坦化処理に相当する。このような平坦化処理は、透明基材上に積層したメッシュ状金属層による凹凸表面に対して、透明樹脂を含む透明液状組成物を塗布し、開口部(凹部)を充填し塗膜の当該表面を実質上平坦面とすることにより行う。そして、上記塗工液を加熱又は紫外線照射等で硬化させて、透明樹脂層を形成する。尚、上記透明樹脂層用塗工液としては、上記「(4)透明樹脂層」の項において説明したものを用いることができる。
【0056】
(iii)前記透明樹脂層の周縁部に着色層形成領域を設定する工程
本工程においては、透明樹脂層の周縁部の所定位置に着色層形成領域を設定する。
着色層形成領域は、導電層の接地用領域を被覆した透明樹脂層上に設定される。具体的には、当該透明樹脂層の一端部から5mm〜50mmの範囲内で、当該透明樹脂層の周縁部の一部又は全周に設定される。当該着色層形成領域の平面視形状は接地加工の形態如何により種種有り得るが、通常は、長方形、正方形等の4角形、透視性導電層121(図3参照)の周縁部の接地用領域122内に位置して、当該透視性導電層121の周囲を囲繞する矩形の枠乃至額縁状形状等が代表的である。
【0057】
(iv)前記着色層形成領域において、当該透明樹脂層の導電層側の面とは反対側の面に着色層を形成し、当該着色層及び当該着色層の直下部分の透明樹脂層を光照射により除去して、前記導電層の周縁部の表面の少なくとも一部を露出させる工程
本工程においては、導電層の周縁部の表面の少なくとも一部を露出させて、アースを接地するための領域(導通部)を形成することができれば、特に限定されず、透明樹脂層の導電層側の面とは反対側の面に着色層を形成する工程と、当該着色層及び当該着色層の直下部分の透明樹脂層を光照射により除去する工程とを一貫して行ってもよく、或いは、各々独立に行ってもよい。
【0058】
上記透明樹脂層の導電層側の面とは反対側の面に着色層を形成する方法としては、樹脂バインダー中にカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させた材料を、フォトリソグラフィー法、印刷法等のパターニング方法やインクジェット方式によって、当該透明樹脂層上の所定領域に選択的に付着させて着色層を形成する方法、着色テープを当該透明樹脂層上の所定領域に貼り合わせ着色層を形成する方法、熱、またはレーザーによる転写等により、着色部が形成された基材から選択部を転移、付着させる転写印刷方法、メッキにより薄膜を形成する方法等が挙げられる。
着色部の色については、透明樹脂層除去の為に照射する光(波長)を吸収する色とする。例えば、以下に例示する実施形態ではYAGレーザー光の第2高調波を照射する為、当該第2波長系の吸収が良く、他の波長域の吸収が良い黒色が好ましい。尚、これはレーザーの波長、および、工程での目視、検査に合わせて自由に選択できる。着色層の色(吸収波長)の調整は前記の如く、各種着色剤を樹脂バインダー中に適宜添加した組成物にて当該着色層を構成することによって実現できる。その他、例えば、YAGレーザー光等の第4波長系レーザーを選択すると、金属(銀、銅など)の吸収が良くなるので、当該着色層に換えて、メッキ等による金属薄膜の形成をしても良い。
【0059】
上記光照射加工に用いる光は、着色層及び透明樹脂層を蒸発、或いは化学的分解により除去し得るエネルギーを有するものであれば、特に制限はない。但し、通常は、十分な可干渉性(コヒーレンス)が有って、ビームを最小1μm程度の直径に収束でき、単位面積当たり及び単位波長幅当たりのエネルギー密度も十分収束可能なレーザー光を利用する事が好ましい。かかるレーザーとしては、連続発振光(CW;Continuous Wave)或いはパルス光の何れの形態でも利用可能であるが、一般的には、パルス光が加工性に優れ、制御も容易な為、パルス光が多く用いられる。以下、レーザーによるパルス光を主体に説明する。十分な大出力のパルス発振ができる公知のレーザーを適宜選択して用いることができる。例えば、YAG(Nd:YAG;NeodymiumをドープしたYttrium Aluminum Garnet結晶の略称)レーザー、Nd:硝子レーザー、ルビーレーザー、アレクサンドライトレーザー等の固体レーザー、TEA炭酸ガスレーザー等の炭酸ガスレーザー、アルゴンイオンレーザー、He−Cdイオンレーザー、エキシマレーザー、半導体レーザー等の固体レーザー、各種色素レーザー等の液体レーザー等が挙げられ、中でも、除去部を好適な形状として形成することができる点から、YAGレーザーが好ましく、特に、YAGレーザーの第2高調波が好ましい。ここで、第2高調波とは、レーザー基本波の2倍の周波数(1/2の波長)の総称であり、YAGレーザーの場合、1064nmの基本波長の1/2で、532nmとなる。第2高調波の発生は、非線形光学結晶を用いた公知の手段を用いる。レーザーのパルス幅としては、10ns〜1s程度、尖頭値出力としては、1W〜1kW程度の範囲から、着色層の材料と厚み、透明樹脂層の材料と厚み、除去部の面積及び深さ等の条件に応じて適宜選択、調整する。
又、パルス光の発振方式としては、公知の各種技術手段が適用できる。特に、短パルス幅(1パルス当たりの発光時間)で大尖頭出力のパルスを発生させる為には、Qスイッチ方式、モードロック方式等の方式によっても良い。
また、レーザー装置としては、レーザー発振器と、電磁波遮蔽シートを載置、固定シート基台(ステージ)と、当該レーザー発振器からの出力レーザー光ビームを当該基台上に載置された電磁波遮蔽シートに対して、相対的に走査して、所定の2次元領域内を縦横2方向に走査する為の走査機構とを含む構成のものが使用できる。走査機構としては、回転鏡、回転プリズム等からなるレーザー光ビーム自体を走査する方式のものか、或いは、固定のレーザー光ビームに対して当該基台の方を縦横に駆動、制御する方式のものの何れも使用可能で有る。例えば、レーザーマーカーとガントリー型ステージからなるレーザー描画装置、レーザヘッド移動式のステージ固定型装置、ステージ移動型の装置等が挙げられる。例えば、連続帯状の上記積層体の着色層が形成された所定位置に、レーザーマーカーとガントリー型ステージからなるレーザー描画装置を配置し、描画位置、描画、描画終了のプロセスを繰り返す。これにより、パルスレーザー光が照射された部分の着色層及び透明樹脂層が除去される。
【0060】
レーザー描画装置は、キーエンス社製のMD−S9900(Nd:YAGレーザーの第2高調波使用。発振波長:532nm)を選定した。第2波長であれば特にメーカーを規定する物ではないが、本品はパルスレーザーであり、ドット単位での描画が容易に可能であり、また、連続波のレーザーに比べ立ち上がり、立下りが早いとうい利点がある。
ステージ(シート基台)については、特に規定しない。固定ステージ上へ設けられた水平方向であるXY(鉛直方向であるZ含む場合もある)方向へ可動するガントリー(門)型ステージでも、ステージ自体がXY方向へ可動する(このタイプの装置ではガントリーにZ軸可動を含める場合が多い)物でもよい。
上記キーエンス社製のレーザー描画装置を用いると、この装置に規定される一定範囲内(150mm〜300mm、装置グレードにより異なる)での焦点範囲において、精密位置決めが可能である。そして、一定範囲内での描画を終えたら、上記150mm〜300mmにて際まで移動させ、描画のプロセスを繰り返す事で、つながった描画形状が得られる。用途上、つなぎの部分については高精度を要しないので本装置の構成で十分な描画精度が得られる。逆に、通常、描画装置としてあるようなレーザー描画装置では、形状精度において過剰性能であり、装置が非常に高くなり、コストパフォーマンス(性能と価格との比)の面で不適切な物となるか(ガントリー型で顕著に現れる)、描画形状の大きさにおいて製作不可能となるか(ステージ移動型で顕著に現れる)いずれかの可能性が高い。よって、上記キーエンス社製のレーザー描画装置を使用する事で高精度を必要としないステージ構成とする事で安価で必要な可動範囲を有する大面積のステージを製作することができる。
【0061】
本発明においては、上記パルス光照射を行った後、除去した着色層及び当該着色層の直下部分の透明樹脂層の残渣を吸塵することが、当該残渣が拡散することによる電磁波遮蔽シートの傷つきを防止する観点から好ましい。
本工程は、上記残渣が拡散する前に吸塵することができれば、特に限定されるものではないが、着色層及び当該着色層の直下部分の透明樹脂層をパルス光照射により除去する工程と一貫して行うことが好ましい。
残渣を吸塵する手段としては、超音波吸引装置、真空吸引装置、粘着ロール等が挙げられる。
【0062】
本発明の電磁波遮蔽性シートは、各種用途に使用可能である。特に、テレビジョン受像装置、各種測定機器や計器類の表示部、各種事務用機器や電算機の表示部、電話機の表示部等に用いられるプラズマディスプレイ(PDP)、ブラウン管ディスプレイ(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、電場発光ディスプレイ(EL)などの画像表示装置の前面フィルタ用として好適であり、特にプラズマディスプレイ用として好適である。また、その他、建築物の窓、車両、船舶、航空機、或は電子レンジの窓等の電磁波遮蔽用途にも使用可能である。
【0063】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0064】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。
【0065】
(実施例1)
描画対象として既存品である電磁波遮蔽シートを用意した。この電磁波遮蔽シートは、厚さ100μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの透明基材の片面に、2液硬化型ウレタン樹脂の接着剤層を介して、電解銅箔の周縁部よりも内側には厚み10μm、線幅10μm、周期300μmの正方格子を形成して、導電性メッシュ層を形成し、当該導電性メッシュ層の周縁部4周は幅15mmのメッシュ非形成の接地用領域として成る導電層を積層し、更に、当該導電層上全面(導電性メッシュ層及び接地用領域の両方に亘って)に、紫外線硬化したアクリル樹脂層をメッシュ開口部における厚みが20μm厚、接地用領域上における塗工厚が10μmになる様に塗工した透明樹脂層から成る平坦化層を有する。当該導電層の接地用領域を被覆した透明樹脂層への描画を行うにあたり、レーザー描画装置としてキーエンス社製のMD−S9900(Nd:YAGレーザーの第2高調波である波長532nmのパルス光を発振)を選定し、使用した。また、レーザー描画装置の後方へ吸引ノズルを付加し、当該レーザー描画装置と共に移動するようにした。当該電磁波遮蔽シートをガントリー型ステージからなるXY座標移動装置上(位置決め精度は既存の類似機器に対し高精度を要求されない)へ当該透明樹脂層が表面に露出する向きで載置、固定し、レーザー加工想定箇所を黒色の有機顔料を樹脂バインダー中に分散させたインキを塗布する油性マーカーを使用して塗りつぶし(10mm幅×10mm長さ)着色層となし、当該レーザー加工想定箇所(着色層)への光照射によるレーザー加工を吸引ノズルを動作させながら行った。
その結果、これを問題なく均一に加工(透明樹脂層の周縁部を除去し、導電層の一部を露出させる)し、かつ加工箇所に関して、アブレーションにより生じた塵芥を吸引する事で塵芥が当該電磁波遮蔽シート上へ広がる前に吸引する事ができた。レーザーはパルス光レーザーであり、描画条件としてレーザー光スポットは直径30μm、ピッチ25μmにて行い、当該透明樹脂層の周縁部を除去し、導電層の一部を露出させることができた。なお、描画後の除去部の大きさはアブレーションにより直径約40μm〜50μmであった。また、当該レーザー描画装置の装置出力は20〜40%、描画速度は1500mm/sであった。当該レーザー加工想定箇所の周縁部1mm幅の領域のみ当該着色層を残し、その内側の着色層及び直下の透明樹脂層を除去し、導電層は除去せずに残せた。また、油性マーカーで塗りつぶす領域は自由に設定する事ができ、加工領域周縁部に塗りつぶした領域を除去せずに残す事が自在にできた。同様に、位置決めの手段として加工領域周縁部に位置決め用のマークを設ける事も可能であった。
【0066】
(実施例2)
前記実施例1と同様の既存品の電磁波遮蔽シートを使用し、加工手段として、一般的なインクジェットヘッド、前記実施例1で用いたレーザー描画装置、吸引ノズルの順に並べた加工ヘッド部を備える装置を使用して加工を行った。当該電磁波遮蔽シートをガントリー型ステージからなるXY座標移動装置上(位置決め精度は既存の類似機器に対し高精度を要求されない)へ当該透明樹脂層が表面に露出する向きで固定して乗せ、上記装置にて、インクジェットヘッドが黒色インキで実施例1と同様の平面視形状の着色層を印字後、レーザー描画装置がドット印字された箇所を描画し、吸引ノズルを動作させて発生した塵芥を吸引した。
その結果、これを問題なく均一に加工(透明樹脂層を除去し、導電層の一部を露出させる)し、かつ加工箇所に関して、アブレーションにより生じた塵芥を吸引する事で塵芥が当該電磁波遮蔽シート上へ広がる前に吸引する事ができた。また、加工領域の周縁部に1mm分のインクジェットヘッド印字のみを行い、レーザー加工を行わない事によって、実施例1と同様に、加工領域周縁部に塗りつぶした領域を残す事が自在にできた。同様に、位置決めの手段として加工領域周縁部に位置決め用のマークを設ける事も可能であった。そして、その塗りつぶした領域へのレーザー加工による干渉(アブレーション、溶解による加工幅の拡大)は見られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は、本発明に係る電磁波遮蔽シートの一例の断面模式図である。
【図2】図2は、本発明に係る電磁波遮蔽シートの一例の断面模式図である。
【図3】図3は、本発明に用いられる導電性メッシュ層の一例の平面図である。
【図4】図4は、本発明の透明樹脂層の周縁部における着色層と導電層の露出領域(接地用領域)との位置関係を表す平面図である。
【符号の説明】
【0068】
1 電磁波遮蔽シート
10 透明基材
11 接着剤層
12 導電層(導電性メッシュ層)
13 接地用領域の一部(露出領域)
14 除去部
15 着色層
20 透明樹脂層
21 透明樹脂層の周縁部
21a 内周部
21b 外周部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材の一方の面に少なくとも導電層、透明樹脂層が順に積層された電磁波遮蔽シートの製造方法において、
(i)透明基材の一方の面に、導電層を設ける工程、
(ii)前記導電層の透明基材側の面とは反対側の面に、透明樹脂層を設ける工程、
(iii)前記透明樹脂層の周縁部に着色層形成領域を設定する工程、及び
(iv)前記着色層形成領域において、当該透明樹脂層の導電層側の面とは反対側の面に着色層を形成し、当該着色層及び当該着色層の直下部分の透明樹脂層を光照射により除去して、前記導電層の周縁部の表面の少なくとも一部を露出させる工程を含むことを特徴とする電磁波遮蔽シートの製造方法。
【請求項2】
前記工程(iv)において、光照射を行った後で、除去した着色層及び当該着色層の直下部分の透明樹脂層の残渣を吸塵することを特徴とする、請求項1に記載の電磁波遮蔽シートの製造方法。
【請求項3】
前記透明樹脂層の周縁部の少なくとも一部に、着色層が積層された透明樹脂層を残すことを特徴とする、請求項1又は2に記載の電磁波遮蔽シートの製造方法。
【請求項4】
前記導電層が導電性パターン層であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電磁波遮蔽シートの製造方法。
【請求項5】
透明基材の一方の面に少なくとも導電層、透明樹脂層が順に積層された電磁波遮蔽シートにおいて、当該透明樹脂層の周縁部の少なくとも一部に当該透明樹脂層上に着色層が積層された部分と、当該着色層の隣接領域に前記導電層の表面の一部が露出した部分とを有することを特徴とする電磁波遮蔽シート。
【請求項6】
前記周縁部において、着色層を有する透明樹脂層が、当該透明樹脂層の周縁部の内周部及び/又は外周部の少なくとも一部にあることを特徴とする、請求項5に記載の電磁波遮蔽シート。
【請求項7】
前記導電層が導電性パターン層であることを特徴とする、請求項5又は6に記載の電磁波遮蔽シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−147235(P2010−147235A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−322627(P2008−322627)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】