説明

電磁波防護材

【課題】 多様な被着基材でも着磁層が形成でき適宜の磁束密度で着磁させて安価で且高い電磁波防護作用を保持する電磁波防護材の提供。
【解決手段】 強磁性体素材を微粉体となし且不動態化処理をした不動態化微粉体とビヒクル、水及び分散材とにより着磁性塗着材を形成したうえ、適宜の被着基材の一側面若しくは両側面に所要の塗着量を以って塗着し且乾燥させて着磁層を形成し、而して所望の磁束密度で着磁させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電磁波防護材に関するもので、更に詳しくは情報処理装置類を初め、通信機器類或いはマイコン内蔵家電機器等より膨大量に発生する電磁波を効率良く且安価に防護することの可能な電磁波防護材に関する。
【背景技術】
【0002】
我が国の経済環境は国際化や情報化並びに革新化に晒され、これに伴って情報網の整備や情報処理機器類の装備はもとより、これら情報に基づく新規の財やサービスの開発競争は熾烈化を極めている。
加えて就労環境においても極度の都市化の進展に伴い、就労は狭少な建物区画内において多数の情報処理機器や多種に亘るマイコン付帯事務機器類等と同居しての業務処理を余儀なくされており、更に極度の都市化は当然に就労者の住生活においても▲こう▼住近接には狭少な居住区画が、更にはゆとりの居住区画のためには過酷な遠距離通勤が強いられるとともに、かかる居住区画内もテレビやパソコンの他多数の家電機器に囲まれた生活を強いられており、而も通勤には強電界の電車や鉄道施設を利用せねばならず、終日を通して膨大量の電磁波に晒されている。
【0003】
ところで経済成長期においては合理性の追求に伴う安価で環境ホルモンの生成物質たる可塑剤や重金属類からなる安定剤等を多用した合成樹脂素材製品が膨大量に使用され、更には食品類でも長期保存のための防黴や酸化防止のために化学薬剤の多用や、或いは産業上の水処理においても化学物質の多用による容易な処理と、且その排水等により環境汚染は極限まで至っており、既に今日に至るまでに重金属による健康被害の発生やPCB汚染の拡大、或いは化学物質から揮散放散される有害化学物質によるシックハウス症候群の頻発等健康被害は枚挙にいとまが無い。
【0004】
これがため、今日では環境保全に適合し且安全性の高い生産手段や生産財への転換は不可欠要件とされるに至っているものの、前記の如く就労環境や生活環境においては、多種多様な電磁波に晒されており、既に情報処理機器のディスプレイからの電磁波による角膜障害の発生はもとより電磁波過敏症の潜在疾病者は急激に拡大化しているものと指摘されている。
加えて近年の高齢化と且医療技術の向上とも相俟って、心臓ペースメーカーの着用や、輸液ポンプや人工呼吸器の使用が積極的になされているものの、電磁波によりこれら機器への障害発生も危惧されている。
【0005】
かかる状況に鑑み既に周知の技術としては、導電性細繊度繊維を天然繊維や合成繊維と燃合若しくは絡合させたうえ織物状に織成させたものや、導電性金属薄膜を基材に接着若しくは貼合させたもの、或いは導電性細繊度のチョップドストランド若しくは導電性微粉体を接着剤等により高濃度に混合のうえ適宜の素材の表面に、導電性が保持されるよう塗着させたもの等が開発上市されたものの極めてコスト的に高価なうえこれら導電性素材は使用経過とともに腐蝕破損し電磁波防護性の低下と且腐蝕滅損に伴い製品価値や製品機能が著しく損なわれる等の問題を内在していた。
【0006】
発明者等はかかる経緯に鑑み鋭意研究を重ねた結果、電磁波は磁気バリヤーが形成されてなる場合には遮断若しくは防護効果が働くことに着目し鉄、コバルト、ニッケル、酸化鉄、サマリウム−コバルト、ネオジウム−鉄−ホウ素、磁鉄鉱、クロム鋼若しくはKS鋼等の強磁性体素材からなる微粉体を、硝酸溶液若しくは亜硝酸溶液に浸漬することにより不動態化が図れ、この不動態化された強磁性体素材からなる微粉体を適宜の塗着成分と混合のうえ、織物、シート若しくは板材に塗着したうえ所望の着磁処理を施すことにより、広範囲な基材に自在に電磁波防護作用を保持せしめられることを想到し本発明に至った。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は多様な被着基材でも着磁層が形成できるとともに、適宜の磁束密度に着磁させ安価で高い電磁波防護作用を保持する電磁波防護材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために本発明が用いた技術的手段は鉄、コバルト、ニッケル、酸化鉄、サマリウム−コバルト、ネオジウム−鉄−ホウ素、磁鉄鉱、クロム鋼若しくはKS鋼等の強磁性体素材を微粉体となしたるうえ、腐蝕滅失を防止するための硝酸若しくは亜硝酸溶液で不動態化し、広範囲の被着基材と強固且強靭に且高い安全性で塗着させるために、この不動態化された強磁性体素材からなる微粉体即ち不動態化微粉体を水溶性アクリル酸エステル樹脂若しくはセルロース誘導体をビヒクルに使用して一旦着磁性塗着材を形成する。
【0009】
この着磁性塗着材は、広範囲の被着基材に均質な塗着厚と且不動態化微粉体を均等に塗着分散させることから、良好な塗着粘度を保持させるための水分率や、不動態化微粉体を有効に分散させる分散剤も要請されることから、その構成としては不動態化微粉体15乃至30容量%、水溶性アクリル酸エステル樹脂若しくはセルロース誘導体からなるビヒクル15乃至30容量%、水分30乃至45容量%及び分散剤2乃至5容量%が望ましく、且かかる構成における望ましい分散剤としてはポリオキシエチレン若しくはポリオキシプロピレンが挙げられる。
【0010】
かくしてなる着磁性塗着材は、所望の使用目的に合せて所望の素材を用い形成される織物やシート或いは板材等の被着基材の一側面若しくは両側面に、少なくとも不動態化微粉体を5乃至50g/mの塗着割合で塗着させ一旦乾燥を施し着磁層を形成させたうえ、適宜の磁束密度を以って着磁させてなる電磁波防護材に存する。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上述の如き構成を用いてなるもので、着磁性の極めて高い強磁性体素材を予め微粉体に粉砕させたうえ、硝酸溶液若しくは亜硝酸溶液に浸漬させることにより不動態化が図れるため、広範囲に且長期に亘る実用使用に際しても腐蝕滅失や変色が防止されて、製品の品質や性能が長期に維持される。
加えて本発明においては、強磁性体素材からなり不動態化された微粉体が、水溶性アクリル酸エステル樹脂若しくはセルロース誘導体からなるビヒクルに分散されたうえ、所望の素材からなる織物やシート或いは板材の一側面若しくは両側面に、少なくとも不動態化微粉体が5乃至50g/mの塗着割合で分散され塗着されたうえ乾燥させて着磁層が形成されるため、織物やシート等の比較的薄い被着素材でも素材自体の補強効果が著しく高まるばかりか変形性や屈曲性が阻害されることもない。
そして本発明では所望の素材に所要の着磁層が形成されたうえ、使用目的に合せて適宜の磁束密度を以って着磁させるため磁気バリヤーが簡便に形成され、外部電磁波を有効に防護できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
酢酸ビニルからなる所望の幅と厚さのフィルム基材の一側面に、強磁性体からなる鉄を平均粒径30μに粉砕して微粉体としたうえ、硝酸溶液で不動態化させたうえ、水溶性アクリル酸エステル樹脂30容量%に水40容量%並びに不動態化微粉体27容量%及びポリオキシエチレンからなる分散剤3容量%割合で混合して着磁性塗着材となしたるうえ、フィルム基材の一側面に不動態化微粉体を30g/mの塗着割合に塗着のうえ乾燥して着磁層を形成したうえ、磁束密度300ガウスに着磁させる。
【実施例1】
【0013】
以下に本発明実施例を図に基づき詳細に説明すれば、図1は本発明の生産工程概略図、図2は着磁性塗着材の説明図であって、強磁性体素材からなる微粉体1は、強磁性体素材1Aをその平均粒径で100μm以下望ましくは1乃至30μmに適宜の粉砕装置10において粉砕させてなるもので、強磁性体素材1Aの具体的なものとしては、鉄、コバルト、ニッケル、酸化鉄、サマリウム−コバルト、ネオジウム−鉄−ホウ素、磁鉄鉱、クロム鋼、KS鋼等が挙げられる。
【0014】
かくしてなる強磁性体素材からなる微粉体1は、実用使用に際して使用される織物状、シート状若しくは板状からなる被着基材4に、着磁性塗着材3を以って着磁層5を形成せしめたうえ、所要の磁束密度を以って着磁させて、その創出する磁気バリヤーにより長期に亘って電磁波の防護を図るものであって、強磁性素材たる鉄、コバルト、ニッケル、酸化鉄、サマリウム−コバルト、ネオジウム−鉄−ホウ素、磁電鉱、クロム鋼、或いはKS鋼等は微粉体に粉砕することにより表面積率が増大し酸化や腐蝕作用を著しく受けることから、かかる微粉体のままでは長期使用に際して腐蝕滅失や変色等が発生し、製品性能や価値を著しく損なう結果となる。
【0015】
かかる対策として硝酸溶液若しくは亜硝酸溶液が、これら微粉体の外表面に作用して不動態化を創出することが知られており、本発明においても所望の粒径に粉砕してなる強磁性体素材からなる微粉体1を硝酸溶液若しくは亜硝酸溶液2Aで不動態化させて不動態化微粉体2として使用する。
かかる場合に一般的硝酸は略69.08%の高濃度の水溶液であるが、本発明における不動態化には粉砕粒径により多少異なるが、略10乃至30%希釈溶液が望まれる。
【0016】
かかる如くして不動態化の図られた不動態化、微粉体2は、それぞれ使用目的に合せて形成される被着基材4の一側面若しくは両側面に、着磁層5を形成させて使用するために、一旦不動態化微粉体2を着磁性塗着材3となしたるうえ、所要の塗着量を以って塗着形成させるものであるため、該着磁性塗着材3は水溶性アクリル酸エステル樹脂若しくはセルロース誘導体からなるビヒクル3Aと水3B並びに不動態化微粉体2を均質に分散混合させるための分散剤3Cとが混合撹拌30される。
【0017】
この場合のビヒクル3Aを形成するセルロース誘導体の具体的なものとしては、エチルセルロール、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース等が挙げられる。更に不動態化微粉体2の分散性を高めるための分散剤3Cの具体的なものとしては、ポリオキシエチレンやポリオキシプロピレンが挙げられる。
【0018】
そしてかかる着磁性塗着材3の形成のための配合組成としては、不動態化微粉体2が15乃至30容量%に、水溶性アクリル酸エステル樹脂若しくはセルロース誘導体からなるビヒクル2Aが15乃至30容量%、水2Bが30乃至44容量%及び分散剤2Cが2乃至5容量%割合で混合撹拌30されて、図2に示す如き着磁性塗着材3が形成される。
かかる場合において不動態化微粉体2の配合量が15容量%以下では、十分な磁束密度による着磁がなされにくくなること、及び30容量%を超えると織物やシート等変形や屈曲がなされ易い被着基材4の変形性や屈曲性が阻害されることになる。更にビヒクル3Aが15容量%以下では、塗着乾燥により形成される着磁層5が脆弱となり、且30容量%を超えると却って着磁層5の剛性が増大する結果による。加えて水3Bは着磁層5の形成に際して、30容量%以下では高粘度となり均質な着磁層5の塗着形成が至難となり、反面45容量%を超えると、低粘度化して厚さの調整が難しくなることによる。
【0019】
かくして形成された着磁性塗着材3は、予め使用目的に合せて形成される織物やシート或いは板材等の被着基材4の一側面若しくは両側面に、不動態化微粉体2が実質的に5乃至50g/mの塗着割合を以って塗着させる。この不動態化微粉体2の塗着量は、本発明の使用に際しての電磁波防護のための磁気バリヤーとしての磁束密度が略800乃至8,000ガウス程度であることによる。
かかる塗着手段としては図1においても理解されるように、供給ロール4Aと供出ロール4B間において所望の寸法形状に形成させてなる織物やペーパー、シート或いは板材等の被着基材4を移送させつつ、塗着ロール4により着磁性塗着材3を所要の塗着量を以って塗着させたうえ加熱乾燥4Dによる乾燥を施すことにより、被着基材4の一側面に着磁層5が形成される。
【0020】
被着基材4の一側面に着磁層5が形成されたうえは、一次ロール6Aと二次ロール6Bとの間に着磁極6Cが設けられた着磁工程において所望の磁束密度を以って着磁させるもので、具体的な電磁波の強さによって磁束密度も自在に変化させることが可能であるが、通常の電磁波防護のためには略800乃至8,000ガウス程度の磁束密度を以って磁気バリヤーが形成されれば良い。
図3にはシート状の被着基材4の一側面に着磁層5が形成された説明図が示されてなり、更に図4には板材からなる被着基材4の両側面に着磁層5が形成された説明図が示されている。当然に被着基材4の両側面に着磁層5を形成する場合には、前記する塗着手段の供給ロール4Aと供出ロール4B間において、両側面に塗着ロール4Cを設けたうえ、被着基材4の両側面に着磁性塗着材3が、所要の塗着量を以って塗着され、且両側面より加熱乾燥4Dが施されることとなる。
【0021】
図3に示す如く被着基材4が織物やシート、フィルム等からなる場合には、電磁波発生機器のカバー類や帽子や着衣等の電磁波防護服等に、更に被着基材4が板材からなる場合には、建物区画等の電磁波保護パネル等に使用すれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0022】
使用目的に合せて形成された被着基材の一側面若しくは両側面に、着磁性塗着材を、その不動態化微粉体が所要の塗着量を以って塗着且乾燥させたうえ、所望の磁束密度に着磁させることで使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】 本発明の生産工程概略図である。
【図2】 着磁性塗着材の説明図である。
【図3】 シート状被着基材による本発明の説明図である。
【図4】 両側面に着磁層が形成された本発明の説明図である。
【符号の説明】
【0024】
1 強磁性体素材からなる微粉体
1A 強磁性体素材
10 粉砕装置
2 不動態化微粉体
2A 硝酸若しくは亜硝酸水溶液
3 着磁性塗着材
3A ビヒクル
3B 水
3C 分散剤
30 混合撹拌
4 被着基材
4A 供給ロール
4B 供出ロール
4C 塗着ロール
4D 加熱乾燥
5 着磁層
6 本発明電磁波防護材
6A 一次ロール
6B 二次ロール
6C 着磁極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強磁性体素材を微粉状に粉砕のうえ硝酸溶液若しくは亜硝酸溶液で不動態化させて不動態化微粉体となしたるうえ、該不動態化微粉体が15乃至30容量%、水溶性アクリル酸エステル樹脂若しくはセルロース誘導体からなるビヒクル15乃至30容量%、水30乃至45容量%及びポリオキシエチレン若しくはポリオキシプロピレンからなる分散剤が2乃至5容量%で配合撹拌して着磁性塗着材を形成するとともに、その目的に合せ所要の素材で織物状、フィルム状若しくは板状に形成してなる被着基材の一側面に、所要の厚さを以って着磁性塗着材が塗着され且乾燥させて着磁層を形成させたうえ、所望の磁束密度に着磁させてなることを特徴とする、電磁波防護材。
【請求項2】
セルロース誘導体からなるビヒクルがエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース若しくはカルボキシメチルセルロースである、請求項1記載の電磁波防護材。
【請求項3】
着磁性塗着材が被着基材の両側面に塗着されて着磁層が形成されたうえ、所望の磁束密度に着磁されてなる、請求項1若しくは請求項2記載の電磁波防護材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−35357(P2011−35357A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194791(P2009−194791)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(506283640)株式会社セラピース (4)
【Fターム(参考)】