説明

電磁誘導加熱式炊飯器

【課題】炊飯器用鍋の出し入れ時に傷が付きにくい電磁誘導加熱式炊飯器を提供する。
【解決手段】本体(図示せず)に着脱自在に収納される炊飯器用鍋9と、炊飯器用鍋9を収納する部位を構成する保護枠下(図示せず)と保護枠胴14を備え、炊飯器用鍋9は、単層または多層の金属を基材とし、その最外層の金属は磁性金属17で構成され、当該磁性金属17の表面に、粗面化処理が施され、その粗面化表面に、主成分が耐熱性樹脂で必要に応じてマイカ、顔料、光輝材を添加した上に、潤滑性物質を0.5〜1.5重量%添加した塗膜21を設けたもので、磁性金属17の外面の塗膜21に適度な潤滑性物質が添加されているので、炊飯器用鍋9の外面の塗膜21と保護枠胴14との間の摩擦が低下し、塗膜21の擦れが生じにくく、高品位な外観と食味性能を長期間維持することができるとともに、ご飯をよそう際に炊飯器用鍋9がくるくると回ることが無く使い勝手が良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導加熱式炊飯器に関するもので、特に、電磁誘導加熱式炊飯器に用いられる炊飯器用鍋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、広く世間一般に市販されている電磁誘導加熱式炊飯器の炊飯器用鍋は、アルミニウム、ステンレス、チタン、鉄、銅、あるいは、これらを組み合わせた複合材を基材として製造されている。
【0003】
特に、電磁誘導加熱式炊飯器に用いられる炊飯器用鍋においては、フェライト系ステンレス等の磁性金属を鍋基材の外層に配し、その内側にアルミニウムを積層する、あるいは、場合によってさらにその内面にステンレスを積層しているものなどがある。
【0004】
電磁誘導加熱の特性として磁性の高い材料の方が、電磁誘導による発熱性に有利であることから炊飯器用鍋の外層には、フェライト系ステンレス等の磁性金属がよく用いられており、また、炊飯器用鍋の内層には熱拡散を素早く行い調理物に均一に熱を加える目的により熱伝導率の高いアルミニウムなどがよく用いられる。
【0005】
さらに、これら金属製の炊飯器用鍋は、調理物が強く付着することを防止するために、その内面にフッ素樹脂コートが処理されることもあり、調理物に対する非粘着性を向上させている。
【0006】
炊飯器用鍋の内面に処理されるフッ素樹脂コートは、1層構造をとるものから2層、あるいは、3層以上となっているのが通常であるが、良好な非粘着性、高い耐久性および良好な外観を得る観点から2層以上のフッ素樹脂コートとすることが好ましい。
【0007】
電磁誘導加熱用の炊飯器用鍋においてはその発熱性をさらに向上することが従来課題として挙げられ、炊飯器用鍋の材料面から発熱性を向上させる手段としては、比透磁率の高い材料を用いるか、固有抵抗値の高い材料を用いることが有効な手段である。
【0008】
これらの観点より、電磁誘導加熱式の炊飯器用鍋の発熱層には、磁性金属としてSUS430を代表とするフェライト系ステンレスなどが多く用いられてきた。その他、パーマロイ等の鉄系合金を使用した事例や磁性金属の外面に銅メッキを処理した事例などもあった。
【0009】
炊飯器用鍋では炊飯性能を改善することが大きな命題であり、従来、炊飯器用鍋においては、熱を均一に分布させるために基材の厚肉化を図ったり、基材を多層に積層させたりする事例がある他、炊飯器用鍋の磁性金属で発生し鍋内に伝わった熱を逃さずに炊飯器用鍋内に封じ込める構成をとるために、炊飯器用鍋外面に適度な厚みの塗膜を設けることも食味向上面では一つの重要な手段となっている。
【0010】
また、このように、炊飯器用鍋外面に塗膜を設けた場合、商品の性質上、外観の美しさも向上できることが大きな利点であり、金属層がむき出しの場合よりも温かみのある外観とすることができる他、耐食性の向上も期待できる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平9−192001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ここで、電磁誘導加熱式炊飯器の使用実態を考慮した場合、炊飯器用鍋は、日常の使用において炊飯器本体に頻繁に出し入れされる状況に置かれ、出し入れのたびに保護枠胴部と接触摩耗する可能性が高いが、従来の電磁誘導加熱式炊飯器の構成では、電磁誘導加熱式炊飯器の保護枠胴の材質よりも炊飯器用鍋の外面に処理された塗膜の硬度が低い場合、炊飯器用鍋の出し入れによって、炊飯器用鍋外面の塗膜が摩耗を受け、傷が発生し、その結果、外観を大きく損ねる上に、塗膜剥離をきたし、炊飯性能にも悪影響を及ぼすという問題があった。
【0013】
解決策の一手段としては、塗膜の耐摩耗性を向上させるために炊飯器用鍋外面の塗装をシリコーン系にして滑りを向上させる手段もあるが、この場合、滑りが良過ぎてご飯をよそったときに炊飯器内で炊飯器用鍋がくるくると回り出す鍋回りという現象を引き起こし、炊飯器用鍋内のご飯がよそいにくいという使い勝手の悪化があった。
【0014】
また、炊飯器用鍋外面の塗膜よりも保護枠胴の硬度が低い場合は、炊飯器用鍋の出し入れによって、保護枠胴が摩耗を受け傷が発生し、その結果、外観を大きく損ねるという課題があった。
【0015】
本願発明は、これら上記従来の課題を解決するもので、鍋回りを防止しつつ高品位の外観と高い炊飯性能を長期間維持することが可能な電磁誘導加熱式炊飯器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記従来の課題を解決するために、本発明の電磁誘導加熱式炊飯器は、本体と、前記本体に着脱自在に収納される炊飯器用鍋と、前記炊飯器用鍋を収納する部位を構成する保護枠と保護枠胴を備え、前記炊飯器用鍋は、単層または多層の金属を基材とし、前記基材の最外層の金属は磁性金属で構成され、当該磁性金属の表面に、粗面化処理が施され、その粗面化表面に、耐熱性樹脂を主成分とし、必要に応じてマイカ、顔料、光輝材を添加した上に、潤滑性物質を0.5〜1.5重量%添加した塗膜を設けたもので、磁性金属の外面に処理された塗膜には適度な潤滑性物質が添加されているので、炊飯器用鍋の外面に処理される塗膜と保護枠胴との間の摩擦を低くすることができるため、塗膜の擦れが生じにくく、高品位な外観と食味性能を長期間維持することができるとともに、ご飯をよそうときに炊飯器用鍋がくるくると回るという使い勝手の低下も生じない。
【発明の効果】
【0017】
本発明の電磁誘導加熱式炊飯器は、炊飯器用鍋の外面に設けられる塗膜と保護枠胴の耐摩耗性を高めることができるので、高品位な外観と食味性能を長期間維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1における電磁誘導加熱式炊飯器の断面図
【図2】同電磁誘導加熱式炊飯器の炊飯器用鍋と保護枠胴の部分拡大断面図
【図3】同電磁誘導加熱式炊飯器の炊飯器用鍋の外面の塗膜に添加されるPTFEの添加量を振った各鍋を炊飯器本体に出し入れしたときの鍋外面塗膜への傷、および、ご飯よそい時の鍋の回り性を評価した結果を示す図
【図4】本発明の実施の形態2における電磁誘導加熱式炊飯器の保護枠胴塗膜に添加する潤滑性物質の添加量を振った各炊飯器用鍋を本体に出し入れしたときの保護枠胴の傷、および、保護枠胴塗膜の密着性を評価した結果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
第1の発明は、本体と、前記本体に着脱自在に収納される炊飯器用鍋と、前記炊飯器用鍋を収納する部位を構成する保護枠と保護枠胴を備え、前記炊飯器用鍋は、単層または多層の金属を基材とし、前記基材の最外層の金属は磁性金属で構成され、当該磁性金属の表面に、粗面化処理が施され、その粗面化表面に、耐熱性樹脂を主成分とし、必要に応じてマイカ、顔料、光輝材を添加した上に、潤滑性物質を0.5〜1.5重量%添加した塗膜を設けたもので、より具体的には、電磁誘導加熱特性に優れた磁性金属であるフェライト系ステンレス単体、あるいは、アルミニウムのごとき熱良導性の金属とフェライト系ステンレスを接合して得られたクラッド材のような多層金属を炊飯器用鍋の基材とし、これを成形加工して得られた炊飯器用鍋の外面、すなわち、磁性金属の表面にアルミナ粒子などによるショットブラストにより表面粗度Raが0.5〜5μmとなるように粗面化処理を実施する。
【0020】
次いで、その粗面化した磁性金属の表面に塗膜を形成するものであるが、好ましくは、エポキシ系、シリコーン系、ポリエーテルサルホン系などの耐熱性の塗膜を設けるものである。
【0021】
また、この塗膜には顔料、光輝材、セラミック粒子、中空ガラスビーズ、中空セラミックビーズなどを適量添加することにより、高品位な外観を得ることができる他、耐摩耗性を向上させたり、適度な断熱性を炊飯器用鍋に付与して炊飯性能を向上させることも可能である。
【0022】
ここで、添加材としてフッ素樹脂系の潤滑物質を塗膜に0.5〜1.5重量%添加するものとする。
【0023】
フッ素樹脂系の潤滑物質としてはポリテトラフロロロエチレン(PTFE)、ポリテトラフロロエチレン=パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフロロエチレン=ヘキサフロロプロピレン共重合体(FEP)、ポリテトラフロロエチレン=エチレン共重合体(ETFE)、ビニリデンフルオライド樹脂(PVDF)、クロロトリフルオロエチレン樹脂(PCTFE)などがある。
【0024】
フッ素樹脂系の潤滑物質を塗膜に0.5重量%未満の添加では塗膜と保護枠胴の滑り性が良好とならず、炊飯器用鍋の出し入れ時に塗膜に傷がつき、外観を著しく損ねる可能性が高い。
【0025】
他方、フッ素樹脂系の潤滑物質を塗膜に1.5重量%よりも多く添加した場合は、塗膜の滑り性が増し、鍋の出し入れ時に傷がつきにくくなる反面、あまりにも塗膜の滑り性が増すので、炊飯器用鍋内のご飯をしゃもじでよそうときに本体内でくるくると炊飯器用鍋が回転してしまい、非常に使い勝手が悪くなる。
【0026】
これは、本体に設置される鍋回り止めゴム、底温度センサー、上枠キャップと鍋外面の塗膜とがお互いに滑ってしまうことから引き起こされる現象である。
【0027】
以上を考慮すると塗膜に添加するフッ素樹脂系の潤滑物質は0.5〜1.5重量%とすることが最も望ましい。
【0028】
なお、炊飯器用鍋内面には非粘着性を向上するためのフッソ樹脂コートを処理しても良い。
【0029】
本構成によれば、炊飯器用鍋の磁性金属の外面に処理された塗膜には適度な潤滑性物質が添加されているので、炊飯器用鍋の外面に処理される塗膜と保護枠胴の摩擦を低くすることができるため、塗膜の擦れが生じにくく、高品位な外観と食味性能を長期間維持することができるとともに、ご飯をよそうときに炊飯器用鍋がくるくると回るという使い勝手の低下も生じない。
【0030】
また、磁性金属表面に粗面化処理が施されているため、その表面に処理される塗膜の密着性が高く、磁性金属の耐食性劣化を防止することができ耐久性の高い炊飯器用鍋とすることができる。
【0031】
第2の発明は、特に、第1の発明の保護枠胴は金属製であり、且つ、炊飯器用鍋を装着した場合に、前記炊飯器用鍋と相対する面には塗膜が処理され、前記塗膜には、潤滑性物質が0.1〜1重量%添加されているもので、より具体的には、保護枠胴部分の基材として、鋼板、あるいは、アルミや亜鉛などの各種鍍金を処理した鍍金鋼板やステンレスを用い、これらの基材の内、少なくとも炊飯器用鍋に相対する面に塗膜を設けたものであり、この塗膜には潤滑性物質が0.1〜1重量%添加されている。
【0032】
塗膜としては、ポリエステル系、ウレタン系、アクリル系、エポキシ系、あるいは、ポリエーテルサルホンなど各種耐熱系樹脂などの樹脂コーティングの中より選択されるが、塗膜の鉛筆硬度はH以上のものが望ましく、塗膜に添加される潤滑性物質は、シリコーンオイル、フッ素オイル、シリコーン樹脂、フッ素樹脂から選択されるものとする。
【0033】
添加される潤滑性物質は0.1重量%未満の添加では塗膜と保護枠胴の滑り性が良好とならず、炊飯器用鍋の出し入れ時に保護枠胴の塗膜に傷がつき、外観を著しく損ねる可能性が高い。
【0034】
他方、潤滑性物質を塗膜に1重量%よりも多く添加した場合は、塗膜の滑り性が増し、炊飯器用鍋の出し入れ時に傷がつきにくくなる反面、塗膜の密着性や外観に悪影響を生じたり耐久性が低くなる可能性がある。
【0035】
以上を考慮すると保護枠胴の塗膜に添加する潤滑性物質量は0.1〜1重量%とすることが最も望ましい。
【0036】
本構成によれば、保護枠胴に処理された塗膜には適度な潤滑性物質が添加されているので、炊飯器用鍋外面に処理される塗膜と保護枠胴の摩擦を低くすることができるため、塗膜の擦れが生じにくく、高品位な外観と食味性能を長期間維持することができる。
【0037】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0038】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における電磁誘導加熱式炊飯器の断面図、図2は、同電磁誘導加熱式炊飯器の炊飯器用鍋と保護枠胴の部分拡大断面図、図3は、同電磁誘導加熱式炊飯器の炊飯器用鍋の外面の塗膜に添加されるPTFEの添加量を振った各鍋を炊飯器本体に出し入れしたときの鍋外面塗膜への傷、および、ご飯よそい時の鍋の回り性を評価した結果を示す図である。
【0039】
図1、2において、炊飯器用鍋9を加熱する本実施の形態における電磁誘導加熱式炊飯器の本体1の内部に電磁誘導加熱コイル3を設け、炊飯器用鍋9を電磁誘導加熱により加
熱するように構成している他、鍋底温度検知センサー8を備え、炊飯器用鍋9の温度を検知することができるようになっている。
【0040】
また、炊飯器用鍋9を着脱自在に収納する本体1には、保護枠下13、保護枠胴14、上枠キャップ15、鍋回り止めゴム16、加熱板7がそれぞれ鍋周りに配置されている。
【0041】
保護枠胴14は、炊飯器用鍋9の側面部に対向して配置される部材であり、上枠キャップ15は、炊飯器用鍋9を支える部材であり、鍋回り止めゴム16は、炊飯器用鍋9の外面と接して、ご飯をよそうときに炊飯器用鍋9がくるくると回らないようにする抵抗となるものである。
【0042】
ここで、炊飯器用鍋9は、図2に示すように、厚さ0.5mmのフェライト系ステンレスを磁性金属17として、これに厚さ1.0mmのアルミニウム18を接合したクラッド材を基材としたものであり、磁性金属17側を外面にしてプレス加工して鍋形状にしたものである。
【0043】
保護枠胴14は、炊飯器用鍋9と相対する面に厚さ20μmのポリエステル系の塗膜23を設けた厚さ0.4mmの鋼板22であり、円筒形に加工され、炊飯器用鍋9の外面に数mmの空間を隔てて配置される構成となっている。
【0044】
炊飯器用鍋9の内面のアルミニウム18の表面には、以下のプライマ層19とトップコート20の2層構成のフッ素樹脂コートを処理している。
【0045】
基材を鍋形状にプレス成形し洗浄した後、炊飯器用鍋9の内面のアルミニウム18の表面にサンドブラストをかけ、表面粗さRaが3〜5μmとなるように調整し、その後、フッ素樹脂と接着成分、顔料、光輝材を塗膜構成成分とした液状のプライマ塗料を成膜後膜厚が約10μmとなるよう塗装し、100℃で20分間乾燥してプライマ層19とした。
【0046】
プライマの乾燥が終了し、十分に基材温度が下がったところでトップコート処理として顔料や光輝材等の添加物を含有しないフッ素樹脂の粉体塗料をプライマの上に成膜後膜厚が35μmとなるように塗装した後に、400℃で15分間焼成してトップコート20を形成した。
【0047】
一方、鍋基材の外層を構成する磁性金属17の外表面には、サンドブラストにより表面粗さRaが0.5〜3μmとなるように調整して粗面化処理面(図示せず)を形成し、その後、成膜後膜厚が約30μmとなるようにシリコーン/エポキシ系耐熱塗料を塗装し、200℃で15分間焼付けを行い塗膜21とした。
【0048】
塗膜21には、ポリテトラフロロロエチレン(PTFE)が0.5〜1.5重量%添加されている。
【0049】
ここで、本実施の形態の炊飯器用鍋9と同一厚さのアルミニウムとフェライト系ステンレスの合わせ材を基材とし、その外面に約30μmとなるようにシリコーン/エポキシ系耐熱塗膜を設け、なお且つ、その耐熱塗膜に0〜0.3重量%、2〜3重量%のPTFEを添加して作製した各炊飯器用鍋9を比較例として、本実施の形態における炊飯器用鍋9との比較実験を実施した。
【0050】
炊飯器用鍋9の外面の塗膜に添加されるPTFEの添加量を振った各炊飯器用鍋9を本体1に出し入れしたときの炊飯器用鍋9の外面塗膜への傷、および、ご飯よそい時の炊飯器用鍋9の回り性を評価した結果を図3に示す。
【0051】
図3においては、5.5合炊飯器用鍋で、本体1に出し入れを100回繰り返した場合において、炊飯器用鍋の傷を評価した結果を示したものであり、目立つ傷ができる場合を×、ほとんど傷が発生しない場合を○として評価した。
【0052】
また、鍋回りについては、3合の米を通常に炊飯し、炊き上がった後のご飯のよそい性を示したものであり、×は、よそい時に炊飯器用鍋9がくるくる回ってよそいにくいことを意味し、○は、炊飯器用鍋9が回りにくくよそいやすいことを意味する。
【0053】
図3に示す通り、本実施の形態における炊飯器用鍋9と比べ、PTFEの添加量を本実施の形態よりも少ない、あるいは、多い場合は、傷つきや鍋回りに問題が生じ良好な結果が得られない。
【0054】
以上の結果より、鍋外面塗装と保護枠胴14への傷付きを抑制し、なお且つ、鍋回りを防止するためには適度な量の潤滑性物質を塗膜に添加しなければならないことがわかり、良好な結果を得るためには、0.5〜1.5重量%とすることが重要である。
【0055】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2における電磁誘導加熱式炊飯器について説明する。なお本実施の形態における電磁誘導加熱式炊飯器の基本構成は、実施の形態1における電磁誘導加熱式炊飯器のそれとは、同一であるが、保護枠胴14には厚さ0.4mmの予め塗装された鋼板22が用いられており、炊飯器用鍋9と相対する面にはポリエステル系の樹脂が塗装され厚さ20μmの塗膜23を形成している。
【0056】
塗膜23には、潤滑性物質としてシリコーンオイルが0.1〜1重量%添加されている。
【0057】
また、炊飯器用鍋9には実施の形態1と同様に、炊飯器用鍋9の基材の外層を構成する磁性金属17の外表面には、サンドブラストにより表面粗さRaが0.5〜3μmとなるように調整して粗面化処理面を形成し、その後、成膜後膜厚が約30μmとなるようにシリコーン/エポキシ系耐熱塗料を塗装し、200℃で15分間焼付けを行い塗膜21としており、この塗膜21にはポリテトラフロロロエチレン(PTFE)が1重量%添加されている。
【0058】
ここで、保護枠胴14に厚さ20μmのポリエステル系の塗膜23を設け、なお且つ、塗膜23に0重量%、1.5〜3重量%のシリコーンを添加して作製した保護枠胴14を装着した電磁誘導加熱式炊飯器を比較例として、本実施の形態2における保護枠胴14を装着した電磁誘導加熱式炊飯器との比較実験を実施した。
【0059】
炊飯器用鍋9の外面の塗膜に添加されるPTFEの添加量を振った各炊飯器用鍋9を本体1に出し入れするときの炊飯器用鍋9の外面塗膜への傷、保護枠胴14の傷発生、あるいは、ご飯のよそい時の炊飯器用鍋9の回り性を評価した結果を図3に示す。
【0060】
図3においては、5.5合炊飯用の炊飯器用鍋9で、電磁誘導加熱式炊飯器の本体1に出し入れを100回繰り返した場合において、炊飯器用鍋9の傷、保護枠胴14の傷を評価した結果を示したものであり、目立つ傷ができる場合を×、やや目立つ傷ができる場合を△、ほとんど傷が発生しない場合を○として評価した。
【0061】
また、保護枠胴14の塗膜23の密着性については、1マスが1×1mmで100マスの碁盤目剥離評価を実施し、テープ剥離後に剥離が見られた場合を×、剥離が生じない場
合を○と評価した。
【0062】
図4に示す通り、本実施の形態と比べ、保護枠胴14の塗膜23に添加する潤滑性物質の添加量を本実施の形態よりも少なくした場合には、保護枠胴14の傷が生じ、多い場合には傷つきが生じないものの、塗膜23の密着性に問題が生じ良好な結果が得られない。
【0063】
以上の結果より、保護枠胴14の塗膜23への傷付きを抑制し、なお且つ、鍋回りを防止するためには、適度な量の潤滑性物質を塗膜23に添加しなければならないことがわかり、良好な結果を得るためには、0.1〜1重量%とすることが重要である。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上のように、本発明にかかる電磁誘導加熱式炊飯器用の炊飯器用鍋は、鍋基材外層を構成する磁性金属表面に粗面化処理を施し、その粗面化表面に非粘着性物質を添加した耐熱性の塗膜を処理しているので、炊飯器用鍋の出し入れの際に塗膜が傷付かず、なお且つ、高い耐久性をも有するため、電磁誘導加熱式炊飯器の炊飯器用鍋として有用である。
【0065】
また、本発明にかかる電磁誘導加熱式炊飯器用の保護枠胴は、基材を構成する金属層表面に潤滑性物質を添加した塗膜を処理しているので、炊飯器用鍋の出し入れの際に塗膜が傷付かず、なお且つ、高い耐久性をも有するため、電磁誘導加熱式炊飯器の保護枠胴として有用である。
【符号の説明】
【0066】
1 本体
9 炊飯器用鍋
13 保護枠下(保護枠)
14 保護枠胴
17 磁性金属
21、23 塗膜
22 鋼板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、前記本体に着脱自在に収納される炊飯器用鍋と、前記炊飯器用鍋を収納する部位を構成する保護枠と保護枠胴を備え、前記炊飯器用鍋は、単層または多層の金属を基材とし、前記基材の最外層の金属は磁性金属で構成され、当該磁性金属の表面に、粗面化処理が施され、その粗面化表面に、耐熱性樹脂を主成分とし、必要に応じてマイカ、顔料、光輝材を添加した上に、潤滑性物質を0.5〜1.5重量%添加した塗膜を設けたことを特徴とする電磁誘導加熱式炊飯器。
【請求項2】
保護枠胴は金属製であり、且つ、炊飯器用鍋を装着した場合に、前記炊飯器用鍋と相対する面には塗膜が処理され、前記塗膜には、潤滑性物質が0.1〜1重量%添加されていることを特徴とした請求項1に記載の電磁誘導加熱式炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−40272(P2012−40272A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185760(P2010−185760)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】