説明

電磁誘導加熱式電気炊飯器用の内鍋

【課題】焼物で形成した電磁誘導加熱式電気炊飯器の内鍋は、流し台等への載置面であり洗浄時等に物が落下しやすい底壁部や、外周部側方に突出しているフランジ部が、物にぶつかり欠けることがある。また、そのままでは表面が粗である土鍋においては、シール部であるフランジ部から蒸気漏れが発生することがある。
【解決手段】表面に釉薬層を形成した焼物よりなり、その内周面側表面にフッ素樹脂コート層を設ける一方、外周面側に電磁誘導加熱用の発熱部材を設けてなる電磁誘導加熱式電気炊飯器の内鍋であって、上記フッ素樹脂コート層は、側壁部の膜厚に比べて底壁部の膜厚の方を厚くした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、電磁誘導加熱式電気炊飯器用の内鍋、特に一般に土鍋と呼ばれる焼物タイプの電磁誘導加熱式電気炊飯器の内鍋の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
最近では、内鍋を誘導加熱する誘導加熱コイルを備えた電磁誘導加熱式電気炊飯器において、内鍋を炭素材や焼物(セラミック材)で形成したものが提供されている(前者の例として特許文献1、後者の例として特許文献2を参照)。
【0003】
炭素材で形成された内鍋の場合、側方に突出しているフランジ部が衝撃等により割れやすい問題がある。そこで、フランジ部の外周に補強用の環状部材を設ける提案がなされている(例えば特許文献3を参照)。
【0004】
他方、焼物製の内鍋の場合には、素材自体が硬いので、これまでのところ特別な補強手段は採用されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−95283号公報
【特許文献2】特開2008−188219号公報
【特許文献3】特開2007−37634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、焼物製の内鍋の場合にも、口縁部のフランジ部は側方に突出しているために、物にぶつかり易く、ぶつかった時に応力が集中し易い構造になっているので、やはり割れる恐れがないとは言えない。また、一般に底壁部は側壁部に比べて肉厚が薄く形成されており、上方からの物の落下に弱い(特許文献2の図1を参照)。
【0007】
したがって、焼物製の内鍋の場合にも、それらの部分に、やはり何らかの補強手段が必要となる。
【0008】
本願発明は、このような事情に基いてなされたもので、一般に土鍋と呼ばれる焼物タイプの電磁誘導加熱式電気炊飯器用の内鍋において、特別な部品の新設なしに、かつ構造を複雑化させることなく、上記フランジ部や底壁部の損傷を防止できるように強度を向上させた電磁誘導加熱式電気炊飯器用の内鍋を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は、上記の目的を達成するために、次のような課題解決手段を備えて構成されている。
【0010】
(1) 請求項1の発明
この発明は、表面に釉薬層を形成した焼物よりなり、その内周面側表面にフッ素樹脂コート層を設ける一方、外周面側に電磁誘導加熱用の発熱部材を設けてなる電磁誘導加熱式電気炊飯器の内鍋であって、上記フッ素樹脂コート層は、側壁部の膜厚に比べて底壁部の膜厚の方を厚くしたことを特徴としている。
【0011】
このような構成によれば、膜厚の厚い底壁部のフッ素樹脂コート層が補強部材として機能するので、内鍋洗浄時等に誤って内鍋内部の底壁部に物を落下させてしまったような場合にも、内鍋底壁部に欠け等の損傷が生じにくくなるとともに、仮に欠けが生じた場合にも破片が飛び散りにくくなる。
【0012】
また、フッ素樹脂コート層の厚さが厚いと、洗米時におけるフッ素樹脂コート層の耐久性も高くなり、信頼性の高いものとなる。また、底壁部は発熱部材との対向部でもあり、その耐久性が増すことにより、炊飯回数が多くなっても、長期に亘って、ご飯のこびりつきを抑えることができるようになる。
【0013】
さらに、構造的に断熱材を設けることが困難な底壁部下面側方向への放熱に対しても、断熱性が向上する。
【0014】
(2) 請求項2の発明
この発明は、表面に釉薬層を形成した焼物の内周面側表面にフッ素樹脂コート層を設ける一方、外周面側に電磁誘導加熱用の加熱部材を設け、上面側開口部の外周にフランジ部を有してなる電磁誘導加熱式電気炊飯器の内鍋であって、上記フッ素樹脂コート層は、側壁部の膜厚に比べてフランジ部の膜厚の方を厚くしたことを特徴としている。
【0015】
このような構成によれば、膜厚の厚いフランジ部のフッ素樹脂コート層が補強部材として機能するので、内鍋を落したり、物にぶつけたりした場合にも、フランジ部に欠け等の損傷が生じにくくなるとともに、仮に欠けが生じた場合にも破片が飛び散りにくくなる。
【0016】
また、フランジ部を内蓋側のパッキン等のシール部材でシールするようにした場合において、素焼状態のように表面が粗であると、シール部から蒸気漏れが発生することがあるが、フランジ部のフッ素コート層の厚さを厚くすると、その表面が平滑になり、シール性が向上するので、そのような蒸気漏れを防ぐことができる。
【0017】
(3) 請求項3の発明
この発明は、上記請求項1又は2の発明の構成において、内周面側の釉薬層の表面には金属溶射層が設けられ、上記フッ素樹脂コート層は、該金属溶射層の表面に設けられていることを特徴としている。
【0018】
このような構成にすると、先ず請求項1又は2の発明と同様の補強作用が得られる。
【0019】
しかも、その場合において、同内鍋の基体内周面に所定の釉薬層を形成し、その上に金属溶射層を形成し、その上で同金属溶射層の上面にフッ素樹脂コート層を形成するようにしているので、フッ素樹脂コート層の金属溶射層に対する密着度を大きく向上させることができ、ご飯のこびりつきと焦げつきを防止作用を有効に発揮させながら、その信頼性、耐久性を向上させることができる。
【0020】
(4) 請求項4の発明
この発明は、上記請求項1,2又は3の発明の構成において、内鍋は水平部である底壁部と垂直部である側壁部との間に曲面部である湾曲壁部を設け、側壁部は底壁部の壁厚に比べて厚く形成されていることを特徴としている。
【0021】
このように構成すると、側壁部の蓄熱性が高くなり、むらし時のむらし効率や保温時の保温性能が向上する。また、そのままでは側壁部に比べて底壁部の強度が低く、欠けやすいので、上記フッ素樹脂コート層の膜厚を厚くすることによる補強効果は特に有効となる。
【発明の効果】
【0022】
以上の結果、本願発明によれば、衝撃を受けやすい部分である底壁部やフランジ部に、物の落下その他の原因による衝撃が加わった場合においても、欠け等の損傷を発生しにくくすることができ、構造的に断熱材を設けることが困難な底壁部下面から下方向への放熱に対する断熱性も向上する。また、フランジ部のフッ素コート層の膜厚を厚くすることで表面が平滑になり、シール性が向上するので、蒸気漏れを防ぐ効果も併せ持つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本願発明の実施の形態に係る電磁誘導加熱式電気炊飯器の構成を示す縦断面図である。
【図2】同電磁誘導加熱式電気炊飯器用の内鍋の断面構造を示す図である。
【図3】同内鍋の断面構造の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本願発明の実施の形態について、添付の図面を参照しながら詳細に説明し、本願発明の理解に供する。なお、以下の説明は、あくまでも本願発明の一具体例であって、決して特許請求の範囲を限定するものではない。
(電気炊飯器の全体的な構成)
先ず図1は、本願発明の実施の形態に係る電磁誘導加熱式電気炊飯器の構成を示す断面図である。この電磁誘導加熱式電気炊飯器1は、上部が開口された本体2と後端側を支点として回動可能な蓋部3とで構成され、内鍋4が本体2内に着脱できるように収納されている。内鍋4に対する炊飯時の加熱手段として、外ケース5内に所定の間隔を保って設けられた合成樹脂製の内ケース6を介して、当該内鍋4の底壁部4dから湾曲壁部4cを包み込むように電磁誘導加熱用のワークコイル7a,7bを設け、また当該内鍋4に対する保温時等の加熱手段として、当該内鍋4の側壁部4bの全周に対応する保温ヒータHが設けられている。
【0025】
そして、該電気炊飯器1の上面側の開口部には、肩部材7の後端側に設けられたヒンジ部8を介して、前後方向に開閉する蓋部3が設けられている。
【0026】
該蓋部3は、その上部側外周面を構成するとともに中央部に調圧部材9設置用の凹部10aを備えた合成樹脂製の外カバー10と、該外カバー10の外周部下面側に係合一体化して設けられ、その内周側円形の開口部内に蒸気シール用パッキン11を介して伝熱性の良い金属よりなる円形の放熱板12が接合される合成樹脂製の内カバー13とから構成されている。上記放熱板12の上面には、蓋ヒータ(図示省略)がその全周面に亘って配設されており、内鍋4の開口を閉じるアルミニウムなどの金属製の内蓋21を介して、ご飯を上方から加熱する。
【0027】
内蓋21には、内鍋4のフランジ部4aとの間で開口部をシールするシール部材22が装着されてある。
【0028】
一方、該電気炊飯器1の炊飯/調理/保温の各機能に対するタイマー予約や炊飯および保温メニュー、加熱調理メニューの選択、それら各メニューに対応した加熱量、加熱パターン、保温温度、保温時間などの選択設定操作は、上記炊飯器本体1の前面側操作パネル部14に設けられた各種入力スイッチ群(操作キー群)を介してユーザーにより行われ、その選択設定内容に応じて最終的に上記ワークコイル7a,7bおよび保温ヒータH、蓋ヒータが適切に駆動制御されるようになっている。
【0029】
そして、同電気炊飯器1の本体2内へ内鍋4が収納セットされた状態において、例えば炊飯開始スイッチのON操作等によって炊飯動作が開始されると、所定の手順に従って上記ワークコイル7a,7bに高周波電流が供給され、上記ワークコイル7a,7bに発生する交番磁界により、ワークコイル7a,7bと対向する内鍋4の各発熱部材27a,27bが電磁誘導可能に結合して渦電流が流れる。
【0030】
そして、発熱部材27a,27bは、この渦電流によるジュール熱によって発熱し、その熱が発熱部材27a,27bの内側の内鍋4へ伝達され、同内鍋4内の米と水を加熱する。このとき、熱の一部は上記内鍋4の本体(基体)を通して内鍋4の底壁部4dから湾曲壁部4c、湾曲壁部4cから側壁部4b、側壁部4bからフランジ部4aへと伝わり、内鍋4の全体が温められて内鍋4内の米と水が均一に加熱される。
【0031】
また、上記外ケース2の上記操作パネル部14の内側部分(裏側空間部分)には、操作基板(表示基板)15を保持した操作基板カバー16が上記操作パネル14に平行な形で傾斜状態に設置されている。
【0032】
一方、上記内ケース6の底壁部の下方側には、フェライトコアを備えたコイルカバー(コイル台)17が設けられ、その上部に各々リッツ線が同心状に巻成されたワークコイル7a,7bが設けられている。
【0033】
上記内ケース6の側壁部(およびコイルカバー17)の前方部側には、上記ワークコイル7a,7bや駆動用のIGBTを備えたIH回路、該IH回路のIGBTを駆動するIGBT駆動回路、上記保温ヒータ、蓋ヒータ等を駆動制御するヒータ駆動回路、電源電圧整流用のダイオードブリッジおよびCR回路よりなる整流平滑回路などの各種の回路を備えた制御基板18および該制御基板18を保持した制御基板カバー19が、上記内ケース6と外ケース2の間に位置して上下垂直方向に立設されている。
【0034】
上記内ケース6の皿状の底壁部の中央部には、その底面部の中央部に内鍋4の温度を検出する温度検出手段であるサーミスタを内装したセンターセンサーSが設けられている。
【0035】
また、同炊飯器本体1の外ケース底壁部の前部側には格子構造の冷却風の導入口が形成されており、該冷却風の導入口の上部側には、電装品等冷却用のファン20が設けられており、該電装品等冷却用のファン20からの冷却風を炊飯器本体2内の必要な部分に導入するようになっている。
【0036】
(内鍋の構造)
次に図2は、内鍋4の構造を説明する図である。この内鍋4は、すでに述べたような一般に土鍋と呼ばれる前述した電磁誘導加熱式電気炊飯器用の内鍋であって、内鍋本体(基体部)4a〜4d部分は、耐熱温度が高く、保温時の蓄熱性が良い、例えばコーディエライト系の焼物材料よりなり、開口部周縁にフランジ部4aを備えた有底断面形状のものに形成されている。
【0037】
内鍋4のフランジ部4aは内径方向へ少し膨らんだ形状で、アルミニウムなどの金属製の内蓋21の外周に設けたシール部材22との十分な圧接面を提供し、土鍋の成形や焼成による寸法誤差があっても内蓋21による上端開口との間の蒸気漏れを防止できるようにしている。しかし、表面が粗である素焼状態の土鍋においては、シール部から蒸気漏れが発生することがあるので、後述するフッ素樹脂コート層26a,26bをフランジ部4a部分ではその膜厚を他の部分よりも厚くすることで表面を平滑にし、シール性を向上させているので、蒸気漏れを防ぐことができる。
【0038】
ところで、本実施の形態では、上述の如く内鍋4としてセラミック製のいわゆる土鍋が採用されている。このように、内鍋4に土鍋を使用したものでは、一旦昇温すると冷めにくい反面、加熱時の熱伝導性が悪い性質がある。したがって、この種の電磁誘導加熱式電気炊飯器に使用される内鍋4では、内鍋4下部の加熱される底壁部4d及びアール面形状の湾曲壁部4c部分の厚さを側壁部4bに比較して薄くして、発熱部材27a,27bからの熱が内鍋4の内面まで早く伝導されるようにしている。他方、内鍋4のフランジ部4a及び側壁部4bの厚さは、炊飯時において徐々に温められ、その後十分蓄熱性を発揮すればよいので、比較的厚くしている。特にフランジ部4aの外周部には厚さの厚いフランジ縁部4eを形成し、蓄熱効果を一層良好にしている。
【0039】
すなわち、このように内鍋4のフランジ部4a及び側壁部4bの厚さを厚くすると、昇温は遅くなるが炊き上げ完了時等の蓄熱量が多くなって冷めにくくなるので、むらし工程におけるむらし効率(又は保温工程における保温効率)が良くなる。尚、厚さの薄い内鍋下部4dについては後述するフッ素樹脂コート層を側壁部4bより厚くすることで下方向への放熱に対して、断熱性を向上させている。
【0040】
図2に示す内鍋4は、例えば図3に拡大して示すように、中央のフラット面である底壁部4dから、湾曲壁部4c、側壁部4b、フランジ部4aに亘る素焼状態の内鍋本体(基材)の内周面に(または必要に応じて外周面にも)、先ず所望の厚さのリチア系の釉薬層24を形成し、それによって安価に内鍋本体部分の非通水性を実現させている。
【0041】
そして、その上に、後述するフッ素樹脂コート層26a(プライマー),26b(トップ)形成のための第1の下地処理として、アーク溶射機等の簡易な溶射機を用いて、アルミ金属の溶射(吹き付け)を行ない、上記釉薬層24の表面にアルミ溶射層25を形成する。このアルミ溶射層25には相対的に底壁部4d側の加熱性能を向上させて内鍋中央部側の加熱効率をアップさせ、それによって有効な外対流を形成するために、上記湾曲壁部4c側の金属溶射層の表面を研摩又はブラスト処理することによって、所定のレベルに平滑化し、その粗度を低下させるようにしている。
【0042】
そして、同アルミ溶射層25の表面に、さらに接着成分、顔料等で構成された液状のフッ素樹脂塗料を塗装し、乾燥させて、フッ素樹脂プライマーコート層26aを形成する。このフッ素樹脂プライマーコート層26aが形成された後、上記内鍋側壁部4bに内面にフッ素樹脂プライマーコート層26aとは異なる色で水目盛りをパッド印刷し、その後PFA(テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルパーフルオロビニルとの共重合体)等で構成された粉体のフッ素樹脂塗料を塗装した後、焼成を行いフッ素樹脂トップコート層26bを所望の厚さで形成することによって、ご飯のこびりつき、焦げつきがない内鍋4が構成される。ここで、フッ素樹脂プライマーコート層26a、フッ素樹脂トップコート層26bは、底壁部4dやフランジ部4aの特に上記放熱板21側シール部材22との圧接面であるフラット部分が側壁部4b部分に比べて塗布量が多くなるように、同部分に集中した塗装を行い厚い膜厚を確保している。
【0043】
一方、内鍋4の底壁部4d下面側(外周面側)には、誘導加熱用の発熱部材27a、側壁部4bに連続するアール面形状の湾曲壁部4cには誘導加熱用の発熱部材27bが設けられている。これらの発熱部材27a,27bは、電気炊飯器本体のワークコイル7a,7bによって誘起される渦電流によって自己発熱が可能な、例えば銀ペースト等の金属製の誘導発熱シートや、ステンレス(SUS430)等の金属材料をアーク溶射機を用いてポーラスな断面構造となるように溶射して所望の厚さに形成した金属溶射層よりなっている。
【0044】
尚、この加熱部材は電磁誘導で発熱するものであればよく、特に種類を限定するものではない。
【0045】
以上のように、内鍋4のフッ素樹脂コート層26a,26bの膜厚を底壁部4dやフランジ部4aの塗布量が多くなるように塗装を行い、側壁部4bに比べて、その膜厚を厚くコーティングしたことにより、同膜厚の厚いフッ素樹脂層により内鍋4の底壁部4dやフランジ部4aが保護・強化(フッ素樹脂膜の摺動性の高さによる衝撃角の緩和とその膜厚が大きいことによる衝撃力の吸収など)され、それら各部に落下時等の衝撃による欠けが生じにくくなるとともに、同フッ素樹脂膜のラミネート効果により、仮に欠けが生じたような場合であっても破片が飛び散りにくくすることができる。
【0046】
また、内鍋底壁部4dのフッ素樹脂コート層26a,26bの膜厚が厚いので、洗米時におけるフッ素樹脂コート層26a,26bの耐久性もよく信頼性の高いものとなる。
【0047】
また、フランジ部4aをパッキン等のシール部材22でシールする電気炊飯器において、そのままだと金属材料とは異なり表面が粗である土鍋において、同シール部から蒸気漏れが発生することがあるが、フランジ部4aのシール部材22との圧接面のフッ素樹脂コート層26a,26bの膜厚を厚くすることで表面を、より平滑面にすることができ、さらにシール性が向上するので、そのような蒸気漏れをも一層効果的に防ぐことができる。
【0048】
しかも、その場合において、内鍋4の基体内周面に所定の釉薬層24を形成し、その上にアルミ等の金属溶射層25を形成し、その上で同金属溶射層25の上面にフッ素樹脂コート層26a,26bを形成するようにしているので、フッ素樹脂コート層26a,26bの金属溶射層25に対する密着度を大きく向上させることができ、ご飯のこびりつきと焦げつきを防止作用を有効に発揮させながら、上記の作用をより有効に得ることができ、その信頼性、耐久性を、より一層向上させることができる。
【符号の説明】
【0049】
2は外ケース、3は蓋部、4は内鍋、7a,7bはワークコイル、23は内鍋基材、24は釉薬層、25はアルミ溶射層、26aはフッ素樹脂プライマーコート層、26bはフッ素樹脂トップコート層、27a,27bは発熱部材である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に釉薬層を形成した焼物よりなり、その内周面側表面にフッ素樹脂コート層を設ける一方、外周面側に電磁誘導加熱用の発熱部材を設けてなる電磁誘導加熱式電気炊飯器の内鍋であって、上記フッ素樹脂コート層は、側壁部の膜厚に比べて底壁部の膜厚の方を厚くしたことを特徴とする電磁誘導加熱式電気炊飯器用の内鍋。
【請求項2】
表面に釉薬層を形成した焼物の内周面側表面にフッ素樹脂コート層を設ける一方、外周面側に電磁誘導加熱用の加熱部材を設け、上面側開口部の外周にフランジ部を有してなる電磁誘導加熱式電気炊飯器の内鍋であって、上記フッ素樹脂コート層は、側壁部の膜厚に比べてフランジ部の膜厚の方を厚くしたことを特徴とする電磁誘導加熱式電気炊飯器用の内鍋。
【請求項3】
内周面側の釉薬層の表面には金属溶射層が設けられ、上記フッ素樹脂コート層は、該金属溶射層の表面に設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の電磁誘導加熱式電気炊飯器用の内鍋。
【請求項4】
内鍋は水平部である底壁部と垂直部である側壁部との間に曲面部である湾曲壁部を設け、側壁部は底壁部の壁厚に比べて厚く形成されていることを特徴とする上記請求項1,2又は3に記載の電気炊飯器の内鍋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−24747(P2011−24747A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−172736(P2009−172736)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(000003702)タイガー魔法瓶株式会社 (509)
【Fターム(参考)】