説明

電磁誘導式給電装置

【課題】便座支持体側の一次コイルと暖房便座側の二次コイルの間に生じる相互誘導で便座支持体から暖房便座へ給電する電磁誘導式の暖房便座装置であって、発光具が便座支持体と暖房便座との隙間を通過して受光具へ向かう光を発光し、光が隙間に挟まった異物で遮られて受光具が受光しないときに一次コイルの励磁を停止するものに関して、低コストで且つ故障しにくいものとする。
【解決手段】発光具16と受光具17を一次コイル12Aの近辺又は内部に設ける。光案内具18(光ファイバー等)を二次コイル12Bの近辺又は内部に設ける。異物が隙間Gに無いときは、発光具16からの光Lが光案内具18を経由して受光具17で受光される。異物が隙間Gに挟まっているときは、発光具16からの光Lが異物で遮られて受光具17で受光されなくなり制御回路19で一次コイル12Aの励磁を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給電側部材から受電側部材へ電磁誘導で給電する電磁誘導式給電装置であって、給電側部材と受電側部材との間に挟まる異物を検知する異物検知手段を備えるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁誘導式の給電装置は、給電側部材に設けられた一次コイル及び受電側部材に設けられた二次コイルを有し、給電側部材と受電側部材の接近に伴い両コイルが近接して両コイルに相互誘導を生じさせることで給電側部材から受電側部材へ給電する給電手段と、給電側部材と受電側部材の間に位置する異物を検知する異物検知手段と、異物検知手段の異物検知信号に基づいて給電手段の給電を停止する制御手段とを備える(特許文献1)。
【特許文献1】特開2001−112190号公報
【0003】
前記給電装置の異物検知手段は、給電側部材に設けられた第1の発光具と受電側部材に設けられた第1の受光具との間、並びに、受電側部材に設けられた第2の発光具と給電側部材に設けられた第2の受光具との間で光信号を送受信するものであって、第1の発光具と第1の受光具の間又は第2の発光具と第2の受光具の間に挟まった異物で遮られて第1又は第2の受光具が光信号を受信しないときに異物検知信号を制御手段へ発信するようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記給電装置の異物検知手段は、受電側部材に第1の受光具及び第2の発光具を設けるため、受電側部材に該受光具及び該発光具を作動させる電気回路が必要となり、この電気回路が給電装置のコストを増大させている。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するために、給電装置のコストを抑えることができる電磁誘導式給電装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
給電装置のコストを抑えるために請求項1記載の本発明が採用した手段は、給電側部材に設けられた一次コイル及び受電側部材に設けられた二次コイルを有し、給電側部材と受電側部材の接近に伴い両コイルが近接して両コイルに相互誘導を生じさせることで給電側部材から受電側部材へ給電する給電手段と、給電側部材と受電側部材の間に位置する異物を検知する異物検知手段と、異物検知手段の異物検知信号に基づいて給電手段の給電を停止する制御手段とを備える電磁誘導式給電装置において、異物検知手段は、一次コイルの近辺又は内部に設けられた発光具及び受光具と、二次コイルの近辺又は内部に設けられ、両コイルの近接時に発光具からの光を受光すると共に該光を案内して受光具へ向けて投光する光案内具とを有し、該光が発光具及び受光具の両方又はいずれか一方と光案内具との間に挟まる異物で遮られて受光具に投光されないときに受光具が異物検知信号を制御手段へ発信することを特徴とする電磁誘導式給電装置である。
【0007】
暖房便座装置に適用したときの装置のコストを抑えるために請求項2記載の本発明が採用した手段は、便座支持体と、便座支持体に揺動自在に支持され便座加熱手段が設けられた暖房便座と、便座支持体に設けられた一次コイル及び暖房便座に設けられた二次コイルを有し、便座閉状態のときに両コイルが近接して両コイルに相互誘導を生じさせることで便座支持体から暖房便座の便座加熱手段へ給電する給電手段と、便座支持体と暖房便座の間に位置する異物を検知する異物検知手段と、異物検知手段の異物検知信号に基づいて給電手段をの給電を停止する制御手段とを備える電磁誘導式給電装置において、異物検知手段は、一次コイルの近辺又は内部に設けられた発光具及び受光具と、二次コイルの近辺又は内部に設けられ、便座閉状態のときに発光具からの光を受光すると共に該光を案内して受光具へ向けて投光する光案内具とを有し、該光が発光具及び受光具の両方又はいずれか一方と光案内具との間に挟まる異物で遮られて受光具に投光されないときに受光具が異物検知信号を制御手段へ発信することを特徴とする電磁誘導式給電装置である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の本発明に係る電磁誘導式給電装置は、受電側部材に設けた異物検知手段の光案内具が電気回路を必要としないため、従来の受電側部材に電気回路を必要とする異物検知手段を備えた給電装置に比べて構造を簡単にすることができるので、低コストで且つ故障しにくいものとなる。
【0009】
請求項2記載の本発明に係る電磁誘導式給電装置は、便座支持体に設けた異物検知手段の光案内具が電気回路を必要としないため、便座支持体に電気回路を必要とする異物検知手段を備えた暖房便座装置に比べて構造を簡単にすることができるので、低コストで且つ故障しにくい暖房便座装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係る電磁誘導式給電装置(以下、「本発明装置」という。)を図面に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0011】
図1〜図6は本発明装置を暖房便座装置に適用した実施の形態を示すものである。図1は便座5の閉状態を実線で示し便座5の開状態を二点鎖線で示すものであって、便器本体3の下側部分を省略し便座支持体4及び暖房便座5の内部の概略を破線で示した左側側面図であり、図2は便座支持体4及び暖房便座5に設けられた部材の関係を示すブロック図である。図3は光案内具18として光ファイバー24を採用した態様であって便座支持体4及び暖房便座5を形成するケーシング6A,6Bの内側を拡大した平面断面図、図4の図(A)〜(E)は二次コイル12Bと光案内具18(光ファイバー24)の配置関係の各態様を示す断面図である。図5は光案内具18としてプリズム25,25を採用した態様であって便座支持体4及び暖房便座5を形成するケーシング6A,6Bの内側を拡大し一次コイル12A及び二次コイル12Bを断面した平面図、図6は光案内具18として鏡26を採用した態様であって便座支持体4及び暖房便座5を形成するケーシング6A,6Bの内側を拡大した平面断面図である。
【0012】
本発明装置1は、図1に示す如く、暖房便座装置に適用したものであり、便座支持体4(給電側部材)と、便座支持体4に開閉揺動自在に取付けられ便座加熱手段7が内蔵された暖房便座5(受電側部材)と、便座支持体4から暖房便座5に給電を行う給電手段8と、便座支持体4と暖房便座5の間に位置する異物を検知する異物検知手段15と、給電手段8及び異物検知手段15を制御する制御回路19(制御手段)とを備える。本発明装置1は、便座支持体4を便器本体3の上面側に設置して用いられ、暖房便座5が開いて起立した便座開状態のときには男子が小用可能であり、閉じて伏倒した便座閉状態のときには使用者が便座5の着座面部5aに着座可能である。なお、便座加熱手段7は、本例では電気ヒータを採用しているが、これ以外には、電磁コイルと該電磁コイルに近接した発熱体とからなり、電磁誘導加熱の原理により電磁コイルで発熱体を発熱させるものであってもよい。
【0013】
前記給電手段8は、図1及び図2に示す如く、便座支持体4に設けられた励磁回路10と、励磁回路10と便座加熱手段7の間に設けられた便座支持体4側の配線11a及び暖房便座5側の配線11bと、配線11a,11bの間に設けられた便座支持体4側の一次コイル12A及び便座5側の二次コイル12Bとを有し、便座閉状態のときに両コイル12A,12Bが近接して励磁回路10で一次コイル12Aを励磁することで両コイル12A,12Bに相互誘導を生じさせて、便座支持体4から便座5の便座加熱手段7へ給電し、発熱した便座加熱手段7で着座面部5aを加熱させる。
【0014】
本発明装置1は、図2に示す如く、便座閉状態となるときに、便座支持体4と便座5との隙間Gのうち一次コイル12Aの磁束が通過する磁束領域Sに金属製異物が挟まる場合があり、もし異物が挟まったまま一次コイル12Aを励磁すると異物が発熱することがある。そこで、本発明装置1は、便座閉状態のときに隙間Gの磁束領域Sに挟まる異物を異物検知手段15で検知し制御回路19で一次コイル12Aの励磁を停止して異物の発熱を阻止するようにしてある。
【0015】
前記異物検知手段15は、便座支持体4に設けられた発光具16及び受光具17と、暖房便座5に設けられた光案内具18とを備え、発光具16、受光具17及び光案内具18の配置関係が便座閉状態のときに発光具16の発する光Lを光案内具18で受光・案内して受光具17へ向かって投光するように決めてある。発光具16は、制御回路19に配線21を介して接続され、便座閉状態のときに制御回路19から給電されて光Lを発光するようになっており、例えば、赤外線LED素子等からなる。受光具17は、制御回路19に配線22を介して接続され、光Lを受光するときに制御回路19へ正常信号を発信し、光Lを受光しないときに異物検知信号を発信するようになっており、例えば、フォトトランジスタ等からなる。光案内具18は、便座閉状態のときに発光具16からの光Lを受光すると共にこの光Lを案内して受光具17へ向けて投光するようになっており、光Lの受光、案内及び投光をするにあたって電気を必要としない光学素子(例えば、光ファイバー24(図3参照)、鏡26(図6参照)等)又は光学素子を組合わせた光学系(例えば、プリズム25,25の組合わせ(図5参照)等)からなる。
【0016】
本発明装置1は、給電手段8の各コイル12A,12Bのコア28を、コ字状に形成すると共に便座閉状態のときに各コイル12A,12Bの先端28aどうしが対向して近接するように設け、異物検知手段15の発光具16、受光具17及び光案内具18をコア28の近辺(下記の(1)〜(3)参照)又は内部(下記の(4)〜(6)参照)に設けて、発光具16の発光部と光案内具18の受光面18aとの対向、及び、受光具17の受光部と光案内具18の投光面18bとの対向が隙間Gの磁束領域Sを隔てて行われるようにしてある。
(1)発光具16、受光具17及び光案内具18をコア28の外側の側面部28b−1に沿って付設した態様(図3参照、光案内具18については図4(A)も参照)
(2)発光具16、受光具17及び光案内具18をコア28の中央側の側面部28b−2に沿って付設した態様(発光具16及び受光具17については図示略、光案内具18については図4(B)参照)
(3)発光具16及び受光具17をコア28の中央側に設け、鏡26を採用した光案内具18を、便座5を形成するケーシング6Bの内側に設けた態様(図6参照)
(4)発光具16、受光具17及び光案内具18をコア28の外側の側面部28b−1に形成した凹溝28c−1に嵌装した態様(発光具16及び受光具17については図示略、光案内具18については図4(C)参照)
(5)発光具16、受光具17及び光案内具18をコア28の中央側の側面部28b−2に形成した凹溝28c−2に嵌装した態様(発光具16及び受光具17については図示略、光案内具18については図4(D)参照)
(6)発光具16及び受光具17をコア28の先端28a側に穿設した穴28eに挿着し、光案内具18をコア28を貫通する貫通孔28fに挿着した態様(図5参照、光案内具18については図4(E)も参照)
【0017】
異物検知手段15の発光具16、受光具17及び光案内具18は、便座支持体4又は便座5を形成するケーシング6A,6Bに設けられた透明板を嵌め込んだ透明窓31の内側に設けられ、発光具16、受光具17及び光案内具18に汚れが直接付かないようにする態様や、ケーシング6A,6Bに開設した開口部を介してケーシング6A,6Bの外側に露出させる態様がある。異物検知手段15は、本例では、発光具16及び受光具17を各々別々に適宜間隔を離して設けてあるが、これに限らず、図示は省略するが発光具16及び受光具17を一体にして設けることもある。異物検知手段15は、本例では、発光具16、受光具17及び光案内具18の各一個を一組とするものを一組だけ設けた態様であるが、これに限らず、適宜間隔離して複数組を設けて異物検知が可能な範囲を広くすることもある。
【0018】
前記制御回路19は、便座支持体4に設けられ励磁回路10に配線32を介して接続されており、異物検知手段15の受光具17から異物を検知しない正常信号を受信するときに、給電手段8の励磁回路10による一次コイル12Aの励磁を開始又は継続し、受光具17から異物検知信号を受信するときに、励磁回路10による一次コイル12Aの励磁を停止するようになっている。
【0019】
本発明装置1は、便座閉状態のときに発光具16と光案内具18の間及び光案内具18と受光具17の間に異物が無い場合には、発光具16から発光された光Lが隙間Gの磁束領域Sを通過し光案内具18を経て再び磁束領域Sを通過し受光具17で受光され、受光具17が正常信号を制御回路19へ発信し、該信号を受信した制御回路19が励磁回路10による一次コイル12Aの励磁を開始又は継続する。本発明装置1は、便座閉状態のときに発光具16と光案内具18の間及び/又は光案内具18と受光具17の間に異物が挟まっている場合には、発光具16から発光された光Lが異物に遮られて受光具17で受光されなくなり、受光具17が異物検知信号を制御回路19へ発信し、該信号を受信した制御回路19が励磁回路10による一次コイル12Aの励磁を停止する。
【0020】
本発明装置1は、便座支持体4に設けた異物検知手段15の光案内具18が電気回路を必要としないため、従来の電気回路を必要とする異物検知手段を備えたものに比べて構造を簡単にすることができるので、低コストで且つ故障しにくい暖房便座装置を得ることができる。本発明装置1は、発光具16、受光具17及び制御回路19をいつでも給電できる便座支持体4に設けると共に電気がなくても機能する光案内具18を暖房便座5に設けてあるので、便座閉状態のときの暖房便座5が給電されない状態(例えば給電開始時)であっても、異物検知手段15を動作させて隙間Gの磁束領域Sに異物が無いことを検知してから給電手段8で給電できる。
【0021】
なお、本発明装置1は、本例の如く暖房便座装置に適用する態様以外には、図示は省略するが給電側部材としてドア枠体を採用すると共に受電側部材として回動ドアを採用することで、ドア取付構造に適用する態様もある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明装置を暖房便座装置に適用した実施の形態を示すものであって、便座の閉状態を実線で示し便座の開状態を二点鎖線で示すものであって、便器本体の下側部分を省略し便座支持体及び暖房便座の内部の概略を破線で示した左側側面図である。
【図2】同実施の形態において、便座支持体及び暖房便座に設けられた部材の関係を示すブロック図である。
【図3】同実施の形態において、光案内具として光ファイバーを採用した態様であって便座支持体及び暖房便座を形成するケーシングの内側を拡大した平面断面図である。
【図4】同実施の形態において、図(A)〜(E)は二次コイルと光案内具(光ファイバー)の配置関係の各態様を示す断面図である。
【図5】同実施の形態において、光案内具としてプリズムを採用した態様であって便座支持体及び暖房便座を形成するケーシングの内側を拡大し一次コイル及び二次コイルを断面した平面図である。
【図6】同実施の形態において、光案内具として鏡を採用した態様であって便座支持体及び暖房便座を形成するケーシングの内側を拡大した平面断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1…電磁誘導式給電装置(本発明装置) 4…給電側部材(便座支持体)
5…受電側部材(暖房便座) 7…便座加熱手段 8…給電手段 12A…一次コイル
12B…二次コイル 15…異物検知手段 16…発光具 17…受光具
18…光案内具 19…制御手段(制御回路) L…光


【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電側部材に設けられた一次コイル及び受電側部材に設けられた二次コイルを有し、給電側部材と受電側部材の接近に伴い両コイルが近接して両コイルに相互誘導を生じさせることで給電側部材から受電側部材へ給電する給電手段と、給電側部材と受電側部材の間に位置する異物を検知する異物検知手段と、異物検知手段の異物検知信号に基づいて給電手段の給電を停止する制御手段とを備える電磁誘導式給電装置において、異物検知手段は、一次コイルの近辺又は内部に設けられた発光具及び受光具と、二次コイルの近辺又は内部に設けられ、両コイルの近接時に発光具からの光を受光すると共に該光を案内して受光具へ向けて投光する光案内具とを有し、該光が発光具及び受光具の両方又はいずれか一方と光案内具との間に挟まる異物で遮られて受光具に投光されないときに受光具が異物検知信号を制御手段へ発信することを特徴とする電磁誘導式給電装置。
【請求項2】
便座支持体と、便座支持体に揺動自在に支持され便座加熱手段が設けられた暖房便座と、便座支持体に設けられた一次コイル及び暖房便座に設けられた二次コイルを有し、便座閉状態のときに両コイルが近接して両コイルに相互誘導を生じさせることで便座支持体から暖房便座の便座加熱手段へ給電する給電手段と、便座支持体と暖房便座の間に位置する異物を検知する異物検知手段と、異物検知手段の異物検知信号に基づいて給電手段の給電を停止する制御手段とを備える電磁誘導式給電装置において、異物検知手段は、一次コイルの近辺又は内部に設けられた発光具及び受光具と、二次コイルの近辺又は内部に設けられ、便座閉状態のときに発光具からの光を受光すると共に該光を案内して受光具へ向けて投光する光案内具とを有し、該光が発光具及び受光具の両方又はいずれか一方と光案内具との間に挟まる異物で遮られて受光具に投光されないときに受光具が異物検知信号を制御手段へ発信することを特徴とする電磁誘導式給電装置。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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