説明

電磁調理器用鍋

【課題】 電磁調理器による食品素材の加熱調理に適し、電磁調理器上で鍋振りを行った場合でも、食品素材を確実に攪拌、反転させることができるとともに、電磁調理器トッププレート表面にも傷をつけることのない電磁調理器用鍋を提供する。
【解決手段】 電磁調理器上で食品素材を加熱調理するのに使用される電磁調理器用鍋であって、鍋本体と、前記鍋本体から外方に突出して設けられた把手とからなり、前記鍋本体は、鍋底から開口部に向けて外方に湾曲した下方部と、該下方部から開口部に向けて内方に湾曲した上方部を備え、前記下方部の外面には、前記鍋底を前記電磁調理器表面から浮かせる浮かし部材を備えていることを特徴とする電磁調理器用鍋。浮かし部材としては、回転自在なコロ又はボールとそれを支持する構造や突起状の構造がよい。中華鍋を水平移動させ、その移動速度を可変することで、電磁調理器上で鍋振りが容易にできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁調理器上で食品素材を加熱調理できる炒め物鍋、特に、中華鍋に関する。
【背景技術】
【0002】
中華鍋は、その鍋底が丸味を帯び、周壁に把手が設けられた略半球状の鍋であり、主に強火で野菜や肉などの食品素材を加熱調理したり、油を使用した揚げ物の調理など種々の調理に使用されている。中華鍋を用いて食品素材を調理する場合には、食品素材に均一にかつその内部にまで十分に熱が伝わるようにするために、中華鍋を把手の取り付け方向及び上下方向に揺動させて内部の食品素材を攪拌、反転させる操作が頻繁に行われる。尚、以下では、この中華鍋を揺動させて当該中華鍋内の食品素材を攪拌、反転させる操作を「鍋振り」と呼ぶこととする。
【0003】
従来より、中華鍋を用いた鍋振り作業はかなりの労力と熟練を要するので、安全かつ確実に鍋振りができる装置や中華鍋が提案されている。例えば、特開平9−28580号公報は、中華鍋を固定、載置する台を支点と揺動杆を用いて軸支する構造を有し、上記中華鍋を載置した台を揺動可能とするとともに、揺動操作に連動して中華鍋の片側を上方へ加速可能とすることで、安全に食品素材の反転を行う中華鍋の揺動装置を提案している(特許文献1参照)。また、特開平11−276355号公報は、鍋振りを安全に行うことを目的として、中華鍋本体の把手が設けられた手前側下方部よりも把手に対向した奥側の下方部の高さが高くなるように、鍋本体の上端縁部を傾斜して形成した中華鍋を提案している(特許文献2参照)。
【0004】
一方、近年、電磁調理器(IH調理器、IHクッキングヒーターとも呼ばれる)が、そのクリーンさや高い安全性から普及しつつある。この電磁調理器は、その内部のコイルに交流電流を通電して高周波の磁力線を発生させ、この磁力線を金属鍋等の導電体に作用させることで、当該導電体に誘導(渦)電流を発生させ、それによって上記導電体自体を加熱するものであり、通常のガスコンロ等と比較して熱効率が高いという利点も有する。また、電磁調理器表面に設けられたトッププレートと呼ばれる保護被覆層上に金属鍋等を載置した後に操作パネルで簡単な温度設定操作を行うだけで、当該設定温度で加熱調理が行えるという利点を更に有する。
【0005】
しかしながら、従来の中華鍋では、電磁調理器上で食品素材を調理しようとすると、中華鍋の鍋底が丸味を帯びているため、当該鍋底が受ける磁束密度が部分的に異なり磁力線が均等に届かず、加熱むらを生じて十分に食品素材を加熱できなかった。その上、更に従来通り電磁調理器から中華鍋を浮かせて鍋振りを行った場合には、中華鍋内の食品素材がほとんど加熱されないという問題があった。
また、電磁調理器上で鍋振りを行った場合、電磁調理器表面のトッププレートに中華鍋の鍋底が当たり、その表面に傷を付けてしまうという問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開平9−28580号公報
【特許文献2】特開平11−276355号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明は、電磁調理器による食品素材の加熱調理に適し、電磁調理器上で鍋振りを行った場合でも、食品素材を確実に攪拌、反転させることができるとともに、電磁調理器トッププレート表面に傷をつけにくい電磁調理器用鍋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、本発明によれば、電磁調理器上で食品素材を加熱調理するのに使用される電磁調理器用鍋であって、鍋本体と、前記鍋本体から外方に突出して設けられた把手とからなり、前記鍋本体は、鍋底から開口部に向けて外方に湾曲した下方部と、該下方部から開口部に向けて内方に湾曲した上方部を備え、前記下方部の外面には、前記鍋底を前記電磁調理器表面から浮かせる浮かし部材を備えていることを特徴とする電磁調理器用鍋によって達成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、中華鍋の鍋底から湾曲した下方部の上端に開口部に向けて内方に湾曲した上方部を設けたので、鍋振りを行い容易に内部の食品素材を攪拌、反転させることができ、これにより食品素材に十分に火を通すことが可能となる。また、本発明の中華鍋は、上記の上方部を設けるとともに、上記下方部の外面に浮かし部材を備えたので、電磁調理器上で中華鍋を水平方向に移動させ、その移動速度を可変させることにより鍋振りを行うことができ、また電磁調理器のトッププレートに傷をつけにくいという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の電磁調理器用鍋を、図1〜10を参照して、詳細に説明する。これらの図に示す電磁調理器用鍋の鍋本体は、外方に湾曲した下方部及び内方に湾曲した上方部を有しているが、本発明の電磁調理器用鍋は、このような鍋本体の縦断面が湾曲面を呈するものに限られず、常識的な範囲内で縦断面が階段状に屈曲した下方部や上方部を有するものであってもよい。本明細書では、この「湾曲」の語を上記「屈曲」をも含めた意味で使用する。尚、図1〜図3では、本発明の電磁調理器用鍋の鍋本体の構造を示すために、浮かし部材を省略してある。
【0011】
図1は、本発明の電磁調理器用中華鍋(片手鍋)の一例の縦断面図である。
本発明の電磁調理器用中華鍋1は、図1に示すように、鍋底10と、当該鍋底10から開口部15に向けて外方に湾曲した下方部11と、該下方部11から上記開口部15に向けて内方に湾曲した上方部12とを備えた鍋本体と、当該鍋本体から外方に突出して設けられた把手14及び不図示の浮かし部材を備えている。
【0012】
本発明の中華鍋1の鍋底10は、従来の中華鍋と同様に下方に球面状に突出していてもよいが、この形状に限定されず、上方に凸面を有し丸味を帯びていたり、平面であってもよい。このうち、電磁調理器のトッププレートが平面である点を考慮すると、鍋底10は平面状に形成されているのが好ましい。このように中華鍋の鍋底を平面形状とした場合、広い面積で電磁調理器からの磁力線の作用による誘導電流(渦電流)を発生させることができるので、加熱速度及び熱効率を高めることができるとともに、十分に食品素材を加熱調理することが可能となる。この場合、その平面は円形、矩形、楕円形、多角形等種々の形状を採ることができる。その平面のサイズ、即ち円形の平面の場合の直径、多角形の場合の対向する辺の間隔は、なるべく大きい方が好ましいが、通常電磁調理器内部のコイルの大きさに合わせて、通常100〜250mmとされる。
【0013】
上記鍋底10からは、上記の通り、湾曲した下方部11が、開口部15に向けて外方に拡がり、その上に開口部15に向けて内方に湾曲した上方部12が設けられている。上記の下方部11及び上方部12の水平方向断面は、通常、いずれも円形とされるが、これに限られず、矩形、楕円形等であってもよい。この上方部12は、鍋振りを行う場合に、当該中華鍋1内部から食品素材がはみ出さないようにするためのものである。上記の下方部11と上方部12との接合部13では、鍋1の周壁が水平方向に最も膨出した状態となり、その内径が最大となっている。
【0014】
上記接合部13の鍋底10からの高さは、通常、全周にわたって一様とされるが、上方部12上端縁部の鍋底10からの高さは、全周にわたって一様としてもよく、部分的に高低を設けてもよい。例えば、鍋振りは、通常、把手14の取付け方向(図4の線分Lの方向)に中華鍋1を揺動させて行うので、上方部12において把手14の取り付け位置と対向する部分の上端縁部の高さのみを部分的に高くしたり(図4参照)、この部分及び把手14取り付け位置側の上方部12の双方の上端縁部15の高さを部分的に高くしてもよい。また、別の方法として、上方部12上端を全周にわたって一様な高さに形成しておき、把手14の取り付け方向と直角な方向の上端縁部に切り欠き部(不図示)を設けることもできる。
【0015】
上方部12の上端には、開口部15が形成され、その開口は、該上方部12の高さによっては、例えば把手14の取り付け方向(図4線分Lの方向)に短軸を有し、直角な方向に長軸を有する楕円形状等の他、更に複雑な種々の形状をとり得るが、上方部12の高さが一定の場合には、円形となる。開口が円形の場合、当該開口の内径D1は、通常上記最大内径D2の70〜99%とされる。上記範囲未満の場合、皿に盛り付けるのに、加熱調理後の食品素材を中華鍋から取り出しにくくなり、上記範囲を超える場合には、電磁調理器上で鍋振りを行う場合に食品素材がはみ出しやすくなり、はみ出し防止効果が得られなくなる。
【0016】
上方部12は、その下側の下方部11と着脱可能に形成されていてもよい。例えば、図2に示すように、上方部12と下方部11とを接合部13で接合せず、分離した状態とし、これらを相互に嵌合させる等の手段を用いて着脱可能とすることができる。また、上方部12は、接合部13よりも開口側寄りの部分を着脱可能としてもよい。
【0017】
また、例えば図3に示すように、上方部12と下方部11とを接合部13で接合しない状態で、上方部12の下端縁部と当該縁部に対応する下方部11の上端縁部とを両縁部の円周が重なるように蝶番20にて固定し、当該蝶番20を介して上方部12が開閉可能に形成されていてもよい。上記蝶番20の取り付け位置は、接合部13の全周のうち任意の位置に取り付けることができるが、把手14の取り付け位置若しくはその近傍、又は上記把手14の取り付け位置に対向する位置において接合部13を跨ぐように上方部12及び下方部11に取り付けるのが好ましい。また、上方部12の開口側寄りの部分を略水平方向に分離し、上記のように蝶番を用いて当該開口側寄りの部分を開閉可能としてもよい。このように上方部12を着脱可能に設けることにより、例えば食品素材の加熱調理時には上方部12を装着し、その後これを取り外すことにより、調理後の食品素材を鍋から容易に取り出して皿等に盛り付けることができる。
【0018】
把手14は、本発明の電磁調理器用中華鍋が片手鍋の場合、中空又は中実の棒状とされ、中華鍋1の本体より外方に突出して設けられる。図1では、上方部12下端と同程度の高さとなるように把手14の取り付け部が設けられているが、この位置に限定されず、把手14の取り付け位置は、中華鍋の使い勝手等を考慮して、下方部11の任意の位置に設定できる。また、下方部11と上方部12とに跨るように、把手14の取り付け部を設けるようにしてもよい。尚、中華鍋1が両手鍋の場合には、コの字状の把手が、鍋本体の対向した位置に取り付けられる。
【0019】
尚、本発明の電磁調理器用中華鍋1の鍋本体の材質は、一般に電磁調理器による加熱調理に使用可能な材質であれば特に制限なく使用できる。具体的には、鉄製、銅製、アルミ製、ステンレス製、セラミック製等が挙げられる。鍋本体は、これらの板状材料を一体成型等の方法によって成型するか、又は多層構造に積層して得られる。例えば、軽量の中華鍋1が求められる場合には、アルミ製の板状材料を用いて成型することができる。また、鍋本体の内面は、例えばテフロン(登録商標)加工等の加熱調理中に食品素材のこびりつきを防止する手段を施してあってもよく、波目状に凹凸を設けてあってもよい。把手14も、その材質について特に制限されないが、この鍋本体と同じ材質としてもよく、他の材質のものを使用してもよい。
【0020】
次に、上記下方部の外面に備えられる浮かし部材について説明する。
本発明の電磁調理器用中華鍋は、上記の通り、下方部外面に浮かし部材を設け、鍋底を電磁調理器表面のトッププレートより浮かせる構成とされる。この場合、鍋底下面と電磁調理器のトッププレート表面との間隔は任意に設定できるが、好ましくは0.1〜30mm、より好ましくは0.1〜20mm、更に好ましくは0.1〜5mmとするのがよい。この間隔を大きくすると、電磁調理器からの磁力線の磁束密度が低下し、発生する渦電流が減少することになり、中華鍋の温度が上昇しにくくなるとともに、熱効率が低下することになる。
このような浮かし部材を上記の上方部とともに、中華鍋の外面に設けることにより、電磁調理器上で中華鍋1内の食品素材を加熱調理する際に、中華鍋1を水平に移動させ、その移動速度を可変するだけで、従来の鍋振りを行うのと同程度に食品素材を攪拌、反転させることが可能となる。また、上記のように水平に鍋振りを行った場合でも、上記トッププレートを傷付けないという利点がある。
【0021】
以下、図4〜図10に基づいて本発明の電磁調理器用中華鍋の下部に取り付けられる浮かし部材について説明する。
これらの図は、本発明の電磁調理器用中華鍋の下部に設けられる浮かし部材の幾つかの実施形態を示しているが、これらの実施形態に限定されないことはいうまでもない。尚、これらの図において、上記図1〜図3と共通する部分には、同一の符号を付し、説明は省略する。
【0022】
図4に示す浮かし部材20は、線分Lを軸として左右対称に配置された計4個のコロ21及びこれらを回転可能に支持する支持体22から構成されている。この図では、浮かし部材20は、下方部11の外面に取り付けられているが、その取り付け位置は、下方部11に限られず、鍋底10外面であってもよい。また、鍋底10下面、又は把手14が取り付けられた手前側若しくは奥側の下方部11下面のいずれかの位置に2個の浮かし部材20を線分Lを軸として左右対称になるように取り付けてもよい(図5参照)。
【0023】
この図では、コロ21は、線分Lに平行な方向に中華鍋1を水平移動できるように、その軸が線分Lに直角な方向に向けて配置されている。このようなコロとして、通常の円筒コロ、ニードルコロ、テーパコロ、球面コロ、たわみコロ等が使用できる。また、このようなコロの他、ボール(球)状のものを使用し、中華鍋1をいずれの方向にも水平移動させることができるようにしてもよい。コロ21の材質は、それが接触する電磁調理器のトッププレート15表面はそれ自体高温にならないので、中華鍋1の重量を支えることができ、水平移動に耐えられる強度特性を有しているものであれば特に限定されず、金属製、木製、セラミック製、樹脂製等のいずれも使用できる。これらのうち安全性や中華鍋1からの熱伝導等を考慮して300℃程度の高温に耐えられる耐熱性材料製とするのが好ましい。また、コロ21のサイズ、例えば軸方向の長さや直径等についても、鍋底下面と電磁調理器のトッププレート表面との間隔の上記範囲が維持できる限り、任意に設定できる。
【0024】
支持体22は、図4及び図5に示すように、その一端が上記コロ21を軸支等により支持する構造となっており、他端が中華鍋1の下方部11の外面に取り付けられるものである。コロとして例えばボールを用いた場合、当該ボールが自在に回転でき、かつ逃げないような構造とすることもできる。この支持体22は、同図に示すように、中華鍋1の下方部11外面に予めねじ止め、接合、接着、溶接等の手段を用いて固定され一体とされていてもよく、使用に際して例えば、中華鍋1の下方部11にねじ込んだり、下方部11外面と磁石によって固着するような着脱可能な構造であってもよい。磁石を使用する場合、鍋振り時の水平移動によっても中華鍋1の下方部11から容易に離脱しない程度の強力な磁石を支持体22の下方部11と接触する部分に固定する必要がある。このように支持体21を着脱可能とすることにより、中華鍋1の取り扱い、特に持ち運びや収納や浮かし部材20の洗浄が容易となるという利点がある。
【0025】
支持体21の材質は、本発明の電磁調理器用中華鍋1からの熱伝導により高温に晒されることになるので、熱変形を生じないようなものを使用するのが好ましい。従って、支持体21の材質は、金属、セラミック、樹脂その他の耐熱性材料から適宜選択するのがよい。
【0026】
図6に示す浮かし部材23は、鍋底10外面の中央部に取り付けられた架台24及び該架台に固定された突起25から構成されている。この態様の浮かし部材23は、鍋底10外面の中央部に1箇所取り付けただけでも、中華鍋1を電磁調理器トッププレート15上で水平移動による鍋振りを行うことが可能である。また、水平移動時の中華鍋1のバランスの観点から、線分Lを軸として左右対称となるように少なくとも2個を鍋底10に設けてもよい。また、浮かし部材23は、中華鍋1の鍋底10を上記所定の間隔で浮かせることができれば、下方部11外面に設けることもできる。この場合、例えば図7に示すように、複数個の浮かし部材23、23、23、・・・を下方部11の外面に鍋底10の中心から放射状に配置してもよい。
【0027】
架台24は、中華鍋1と同じ材質の鍋底10外面に予め、ねじ止め、溶接、接着等の手段を用いて一体に取り付けておいてもよく、中華鍋1を使用する際にねじ込み、はめ込み等の手段により又は磁石等を用いて鍋底10に着脱可能に取り付けるように構成してもよい。また、その材質は、耐熱性材料製であることが好ましい。
【0028】
上記突起25は、図6及び図7に示すように、架台24から電磁調理器トッププレート面15に向かって半球状とする他、台形円錐、台形角錐、横断面が楕円形状のもの等、種々の形状を採用でき、そのサイズも鍋底10下面とトッププレート15との間隔が、上記所定の範囲となる限り任意に設定できる。また、その材質は、中華鍋1を水平移動させて鍋振りを行った場合に、変形せず、かつ電磁調理器トッププレート15表面に傷をつけないような材質のものであれば特に限定されないが、好ましくは上記コロ21と同様、約300℃の高温に耐えられる耐熱性材料とするのがよい。
【0029】
図8に示す浮かし部材26は、線分Lに直角な方向に平行に配置された2個のコロ27及びこれらのコロを支持する軸28から構成されている。この態様の浮かし部材26は、鍋本体とは別体に形成されていてもよく、鍋下方部11の外面にステーを設け、上記軸28を掴むようにし、鍋本体と一体に形成されていてもよい。このコロ27の材質は、図4の態様におけるコロと同様のものが使用でき、そのサイズも鍋底10下面とトッププレート15との間隔が、上記所定の範囲となる限り任意に設定できる。上記2個のコロ27は、線分Lに平行な方向に中華鍋1を水平移動できるように、その軸方向が線分Lに直角な方向に向けて配置されている。この態様の浮かし部材26の場合、各コロ27は、その軸方向の両端から中央に向かって直径を徐々に細くし、鍋振りの際の水平移動においてこれらのコロから中華鍋1が簡単にずれないように形成されていることが好ましい。このコロ27の材質としては、上記と同様耐熱性材料を使用できる。また、軸28は、対向する辺が互いに平行な四角形状に形成され、線分Lに直角な方向の辺は、上記コロ27の中心部を貫通してこれらのコロを支持するとともに平行に保ち、各コロが自在に回転するようになっている。また、線分Lに平行な2つの辺は、各コロの両端の更に外側で上記線分Lに直交する辺と接合されており、各コロ27の間隔を一定に維持している。この軸28の材質は、金属、樹脂その他の耐熱性材料製とすることができる。
【0030】
この態様の浮かし部材26は、更に食品素材を加熱調理する場合には、中華鍋1をこの上に載置し、水平移動させることにより鍋振りができ、調理後は、中華鍋1を持ち上げるだけで容易に浮かし部材26を離脱させることができる利点がある。また、このように浮かし部材26を容易に離脱させることができるので、中華鍋1の取り扱いや浮かし部材26の洗浄が容易となるという利点もある。
【0031】
図9に示す浮かし部材30は、複数のコロ31及びこれらのそれぞれのコロ31の中心を貫通してこれらのコロを回転可能に支持する円輪状の軸32から構成されている。この態様の浮かし部材30もまた、上記浮かし部材26と同様、鍋本体とは別体に形成されてもよく、鍋下方部11外面にステーを設け、上記軸32をつかむようにして鍋本体と一体に形成されてもよい。複数のコロ31をこのように配置することにより、中華鍋1を四方いずれの方向にも水平移動させることができる。また、このバリエーションの浮かし部材30は、使用に際して中華鍋1の鍋底10に近い下方部11下部を上記各コロ31で受けるように中華鍋1を載置し、調理後は容易に中華鍋1を持ち上げるだけで、浮かし部材30から中華鍋1を容易に離脱させることができ、中華鍋1の取り扱いや浮かし部材30の洗浄が容易となるという利点がある。上記複数のコロ31及び軸32の材質は、図8に示す浮かし部材のコロ及び軸のそれと同様のものを使用できる。また、コロのサイズも、鍋底10下面とトッププレート15との間隔が、上記所定の範囲となる限り任意に設定できる。
【0032】
図10に示す浮かし部材33は、リング状を呈し、鍋底10の周縁部に全周にわたって取り付けられている。同図では、このリング状の浮かし部材33の縦断面は放物線状としているが、これに限定されず、半円状、三角形状、台形形状等の種々の形状をとることができる。この浮かし部材33は、予め鍋底10又は下方部11に接着、溶接等の手段を用いて一体に取り付けてもよく、また磁石等を備え、使用に際して着脱可能に取り付けるものであってもよい。また、同図では鍋底10の平面部の直径と略同等の直径の浮かし部材33を1個用いているが、更に直径の異なる同様のリング状の浮かし部材と併用して鍋底10又は下方部11に同心円状に配置してもよい。その材質は、トッププレート15表面を傷つけないものであれば特に限定されないが、好ましくは上記浮かし部材と同様、耐熱性材料とするのがよい。そのサイズも、鍋底10下面とトッププレート15との間隔が上記所定の範囲となる限り、任意に設定できる。
【0033】
以上、浮かし部材の実施の形態を幾つか述べたが、これらの浮かし部材は、それぞれ単独で使用してもよいし、組み合わせて使用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
上記のように、本発明の電磁調理器用鍋は、鍋底から外方に湾曲した下方部の上端に開口部に向けて内方に湾曲した上方部を設けたので、鍋振りを行い容易に内部の食品素材を攪拌、反転させることができ、更に下方部の外面に浮かし部材を備えたので、電磁調理器上で鍋を水平方向に移動させ、その移動速度を可変させるだけで容易に鍋振りを行うことができ、また電磁調理器のトッププレートに傷をつけにくい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の電磁調理器用鍋の一例の縦断面図である。
【図2】本発明の電磁調理器用鍋の上方部12の着脱状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の磁調理器用鍋の上方部12の開閉状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の電磁調理器用鍋の浮かし部材の一例を示す図である。
【図5】本発明の電磁調理器用鍋の浮かし部材の別の例を示す図である。
【図6】本発明の電磁調理器用鍋の浮かし部材の更に別の例を示す図である。
【図7】本発明の電磁調理器用鍋の浮かし部材の更に別の例を示す図である。
【図8】本発明の電磁調理器用鍋の浮かし部材の更に別の例を示す図である。
【図9】本発明の電磁調理器用鍋の浮かし部材の更に別の例を示す図である。
【図10】本発明の電磁調理器用鍋の浮かし部材の更に別の例を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
1 中華鍋
10 鍋底
11 下方部
12 上方部
13 把手
14 蝶番
20 浮かし部材
23 浮かし部材
26 浮かし部材
30 浮かし部材
33 浮かし部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁調理器上で食品素材を加熱調理するのに使用される電磁調理器用鍋であって、鍋本体と、前記鍋本体から外方に突出して設けられた把手とからなり、前記鍋本体は、鍋底から開口部に向けて外方に湾曲した下方部と、該下方部から開口部に向けて内方に湾曲した上方部とを備え、前記下方部の外面には、前記鍋底を前記電磁調理器表面から浮かせる浮かし部材を備えていることを特徴とする電磁調理器用鍋。
【請求項2】
前記鍋底は、平面状に形成されてなる請求項1に記載の電磁調理器用鍋。
【請求項3】
前記上方部は、前記下方部上端の全周にわたって形成されている請求項1に記載の電磁調理器用鍋。
【請求項4】
前記下方部及び上方部の水平方向断面は、前記開口部に至るまで円形を呈し、当該円形の開口部の内径は、前記下方部上端周縁部における最大内径の70〜99%である請求項1又は3に記載の電磁調理器用鍋。
【請求項5】
前記上方部またはその開口側寄りの部分が、着脱可能に形成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の電磁調理器用鍋。
【請求項6】
前記上方部またはその開口側寄りの部分が、その下側の鍋本体と蝶番で開閉可能に取り付けられている請求項5に記載の電磁調理器用鍋。
【請求項7】
前記浮かし部材は、前記電磁調理器用鍋を水平移動させるように機能する回転自在なコロ又はボールと、それを支持する構造とからなる請求項1に記載の電磁調理器用鍋。
【請求項8】
前記浮かし部材は、突起物からなる請求項1に記載の電磁調理器用鍋。
【請求項9】
前記浮かし部材は、着脱可能に形成されている請求項1、7及び8のいずれか1項に記載の電磁調理器用鍋。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の電磁調理器用鍋を用い、これに食品素材を入れて電磁調理器のトッププレート上で前記鍋を水平方向に鍋振りを行うことにより、前記食品素材を加熱調理することを特徴とする電磁調理器用鍋を用いた食品素材の加熱調理方法。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2006−51254(P2006−51254A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−236151(P2004−236151)
【出願日】平成16年8月13日(2004.8.13)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】