説明

電磁調理器

【課題】下面が凹曲面形状をした中華鍋を上側に配置可能な凹曲面形状をしたトッププレートが中華鍋からこぼれ落ちた汁や湯により局部的に加熱されないようにする。
【解決手段】電磁調理器10は、中華鍋Pのような下面が曲面形状をした導電性の被加熱物を上側に配置可能な凹曲面形状をしたトッププレート20と、トッププレート20の下側に設けられて中華鍋Pのような被加熱物を誘導加熱するための誘導加熱コイル30とを備え、トッププレート20には凹曲面形状の下部に水抜きのための貫通孔21を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中華鍋等の下面が曲面形状をした導電性の被加熱物を上側に配置可能な凹曲面形状をしたトッププレートを備えた電磁調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、下面が曲面形状をした中華鍋を上側に配置可能な凹曲面形状をしたトッププレートと、トッププレートの下側に設けられて中華鍋を誘導加熱するための誘導加熱コイルと、トッププレートの上側周縁部に設けられて中華鍋等の被加熱物をトッププレートとの間に僅かな隙間を設けて載置するための載置枠とを備えた電磁調理器が開示されている。この電磁調理器においては、誘導加熱コイルに高周波電流を流すと、トッププレートの上側で載置枠に載置された中華鍋が発熱する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−162947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の電磁調理器においては、中華鍋の曲面形状をした下面全体を加熱できるように、トッププレートは中華鍋の下面の曲面形状に合わせて凹曲面形状をしている。中華鍋を用いて食材を加熱調理するときには、食材に均一に熱を加えるために、中華鍋を前後に振って揺動させて食材を撹拌する必要がある。中華鍋を前後に振って揺動させながら食材を加熱調理すると、中華鍋からトッププレートに湯や汁等の液体がこぼれ落ちることがあった。トッププレートに湯や汁等の液体がこぼれ落ちた状態で中華鍋を加熱すると、トッププレート上の液体が誘導加熱された中華鍋の熱により加熱され、トッププレートが局部的に高温となることがあった。また、トッププレートと中華鍋との間が載置枠によって密閉されていると、この間の圧力が高くなって危険となっていた。本発明は、このような問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するため、下面が曲面形状をした導電性の鍋等の被加熱物を上側に配置可能な凹曲面形状をしたトッププレートと、トッププレートの下側に設けられて被加熱物を誘導加熱するための誘導加熱コイルとを備えた電磁調理器であって、トッププレートには凹曲面形状の下部に貫通孔を設けたことを特徴とする電磁調理器を提供するものである。
【0006】
上記のように構成した電磁調理器においては、トッププレートには凹曲面形状の下部に貫通孔を設けたので、被加熱物からトッププレートにこぼれ落ちた液体はトッププレートの下部に設けた貫通孔から排出されるようになり、トッププレートはこぼれ落ちた液体が残って加熱されることによって局部的に高温にならない。
【0007】
上記のように構成した電磁調理器においては、貫通孔には非導電性部材よりなる網部材を設けるようにするのが好ましく、このようにしたときには、被加熱物から食材等の固形物がこぼれ落ちても、食材等の固形物が貫通孔に詰まりにくくなり、液体がトッププレートに残りにくくなる。
【0008】
上記のように構成した電磁調理器においては、トッププレートの上側周縁部には、被加熱物をトッププレートの間に隙間を設けて載置するための載置枠を設けるようにするのが好ましく、このようにしたときには、トッププレートは被加熱物を揺動させても接触せずに破損しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明による電磁調理器の正面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図1の側面図である。
【図4】図2のA−A線における一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明による電磁調理器の一実施形態を図面を参照して説明する。本発明に係る電磁調理器10は、中華鍋Pのような下面が曲面形状をした導電性の被加熱物を上側に配置可能な凹曲面形状をしたトッププレート20と、トッププレート20の下側に設けられて中華鍋Pのような被加熱物を誘導加熱するための誘導加熱コイル30とを備えている。而して、この電磁調理器10のトッププレート20には、凹曲面形状の下部に水抜きのための貫通孔21を設けた。以下に、この電磁調理器10について詳述する。
【0011】
電磁調理器10により誘導加熱される被加熱物には一般的な中華鍋Pが用いられる。中華鍋Pは、電磁調理に適した鉄製またはステンレス製よりなり、下面は球面の下部形状である曲面形状をしている。
【0012】
図1〜図3に示すように、電磁調理器10は、略直方体形状の上面後部に垂直に立設する起立部11aを有するハウジング11を備えている。ハウジング11の上面には、トッププレート20を取り付けるための円形の開口11bが形成されている。ハウジング11の開口11bの周囲には、トッププレート20を支持するための支持枠12と、中華鍋Pを載置するための載置枠13とが設けられている。
【0013】
支持枠12は、トッププレート20を支持する環状の枠部材である。図4に示すように、支持枠12は、開口11bの周縁にて垂直に立ち上がる垂直部の下端が水平方向外側に折曲げられており、この折曲げられた部分がハウジング11の開口11bの周縁にねじにより固定されている。また、支持枠12の垂直部の上端は水平方向外側に折曲げられており、この折曲げられた部分にトッププレート20の周縁のフランジ部20aが載置されている。
【0014】
載置枠13は、中華鍋Pをトッププレート20と隙間を設けて載置するための環状の枠部材である。図4に示すように、載置枠13は、開口11bの周縁にて垂直に立ち上がる垂直部の下端が水平方向外側に折曲げられており、この折曲げられた部分がハウジング11にねじにより固定されている。また、載置枠13の垂直部の上端は水平方向内側に折曲げられて水平部が形成されており、水平部の内端はさらに下方に折曲げられている。中華鍋Pは、載置枠13の水平部の内端部に係止してトッププレート20と隙間を設けて載置される。
【0015】
また、ハウジング11の前面には、誘導加熱コイル30の出力を調整するレバー14を備えている。ハウジング11の起立部11aの前面には、図示しない水道に接続された蛇口15が取り付けられている。ハウジング11の上面後部には、開口11bの後側に排水槽16が設けられており、排水槽16の下部にはハウジング11外に水を排出する排水管17が接続されている。
【0016】
図1、図3及び図4に示すように、トッププレート20は、中華鍋Pの下面の曲面形状に対応して球面の下部形状である凹曲面形状をした非導電性のセラミックス材よりなる。トッププレート20の周縁には水平方向に屈曲するフランジ部20aが形成されており、トッププレート20はフランジ部20aを支持枠12に載置して支持されている。トッププレート20の最下部には、中華鍋Pからこぼれ落ちた汁や湯等の液体を排出するための貫通孔21が形成されており、この貫通孔21から下方に排水筒部22が一体的に形成されている。排水筒部22には排水ホース23が接続されており、排水ホース23の流出端部は排水管17の中間部に接続されている。トッププレート20の貫通孔21には、非導電性部材としてセラミック材よりなる網部材24が設けられている。網部材24は、中華鍋Pからトッププレート20に汁や湯等の液体とともにこぼれ落ちた食材を排水ホース23に排出しないようにするためのものである。この実施形態においては、トッププレート20は、非導電性のセラミックス材よりなるが、例えば、非導電性の耐熱ガラス材を用いてもよい。
【0017】
図1〜図4に示すように、誘導加熱コイル30は、トッププレート20の上側に配置された中華鍋P等の被加熱物を誘導加熱するものであり、トッププレート20の下側でその凹曲面形状に沿うように図示しない取付部材によりハウジング11に取り付けられている。誘導加熱コイル30の端部導線には図示しない高周波電源が接続されており、誘導加熱コイル30に高周波電流を流すと、載置枠13に載置した中華鍋Pに渦電流が流れて発熱する。
【0018】
上記のように構成した電磁調理器10による中華鍋Pを用いた食材の加熱調理について説明する。中華鍋Pを載置枠13に載置して、誘導加熱コイル30に高周波電流を流すと、載置枠13に載置した中華鍋Pに渦電流が流れて発熱する。加熱された中華鍋Pに食材を投入して、おたま等の調理器具を用いて食材を混ぜながら、中華鍋Pを前後に振って揺動させて食材に加えられる熱を均一にして調理する。
【0019】
このように構成した電磁調理器10においては、トッププレート20には凹曲面形状の下部に貫通孔21を設けたので、中華鍋Pからトッププレートにこぼれ落ちた汁や湯等の液体はトッププレート20の下部に設けた貫通孔21から排出されるようになる。これにより、トッププレート20は中華鍋Pからこぼれ落ちた液体が残って加熱されることによって局部的に高温にならない。また、トッププレート20にこぼれ落ちた汁や湯等の液体が貫通孔21から排出されるので、トッププレート20と中華鍋Pとの間の圧力が高くなって危険とならない。
【0020】
このように構成した電磁調理器10においては、貫通孔21には非導電性部材よりなる網部材24を設けたので、中華鍋Pから食材等の固形物がこぼれ落ちても、食材等の固形物が貫通孔21または排水経路として排水筒部22、排水ホース23及び排水管17の何れかに詰まりにくくなり、中華鍋Pからこぼれ落ちた汁や湯等の液体がトッププレート20に残りにくくなる。
【0021】
このように構成した電磁調理器10においては、トッププレート20の上側周縁部には、中華鍋Pをトッププレート20の間に隙間を設けて載置するための載置枠13を設けたので、トッププレート20は中華鍋Pを振って揺動させても接触せずに破損しにくくなる。
【0022】
上記の実施形態においては、被加熱物の一例として中華鍋Pを用いて説明したが、本発明はこれに限られるものでなく、下面が凹曲面形状をした他の鍋やフライパンであっても同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0023】
10…電磁調理器、20…トッププレート、21…貫通孔、24…網部材、30…誘導加熱コイル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下面が曲面形状をした導電性の鍋等の被加熱物を上側に配置可能な凹曲面形状をしたトッププレートと、
前記トッププレートの下側に設けられて前記被加熱物を誘導加熱するための誘導加熱コイルとを備えた電磁調理器であって、
前記トッププレートには凹曲面形状の下部に貫通孔を設けたことを特徴とする電磁調理器。
【請求項2】
請求項1に記載の電磁調理器において、
前記貫通孔には非導電性部材よりなる網部材を設けたことを特徴とする電磁調理器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電磁調理器において、
前記トッププレートの上側周縁部には、前記被加熱物を前記トッププレートの間に隙間を設けて載置するための載置枠を設けたことを特徴とする電磁調理器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−222197(P2011−222197A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88062(P2010−88062)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(000213231)株式会社中部コーポレーション (35)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【Fターム(参考)】