説明

電磁追跡システムの動的金属歪補償のためのシステム及び方法

電磁場発生器(12)による電磁場を用いて電磁追跡システム(EMTS)(10)を用いる動的金属歪補償のための方法及びシステムを提供する。複数の基準マーカ(14)が備えられ、各々の基準マーカは少なくとも1つの電磁センサ(26)を有し、少なくとも1つの電磁センサは複数のセンサオリエンテーションに方向付けられ、センサの少なくとも一部は所定ボリュームに近接して位置付けられる。基準マーカ(14)は画像空間においてそれらの位置を与えるように画像化される。電磁センサ(26)の位置読み取りはEMTSを用いてモニタリングされる、金属歪補正関数は、電磁センサの位置と画像空間の基準マーカの位置を比較することにより演算される。所定ボリュームを通って移動する医療装置(16)はまた、EMTSを用いて追跡され、歪補正関数が、歪を補償するように医療装置の位置読み取りに適用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁追跡システムについての、特に、アクティブ基準マーカを用いる動的金属歪補償のためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最小侵襲性医療処置の結果は、医療機器の位置を追跡して、医療画像に関する情報を表示するように電磁追跡システム(EMTS)を用い、それにより、生体組織内の目標位置に医療機器を案内する助けとなることにより改善される。
【0003】
EMTSは、処置のための部位において局所的な電磁場を生成し、医療機器が適切な小型センサコイルを有する電磁(EM)場発生器を用いることにより機能する。電磁場発生器の関連センサコイルの位置及びオリエンテーションの関数である電流がセンサコイルにおいて誘導される。EMTSは、センサコイルの位置を、従って、医療機器の位置を演算することが可能である。EMTSの特定の有利点は、電磁場は影響を与えないように人体を貫通することが可能であるために、視野方向が必要ないことである。従って、EMTSは、解剖学的構造内部の針又はカテーテルを追跡するために特に適切である。
【0004】
医療環境で用いられるEMTSの主な課題の1つは、電磁場に近接して金属の導電性又は強磁性を有するオブジェクトが存在することである。それらのオブジェクトは、医療機器を追跡する位置及びオリエンテーションにおけるエラーをもたらす歪又は金属アーティファクトをもたらすことである。医療環境においては、EMTSにおける金属アーティファクトをもたらす多くのオブジェクトが存在する。主な歪源は、患者が横たわる医療イメージング装置(例えば、CTガントリ、CTテーブル、X線C字形アーム等)によりもたらされる。他の歪源は、EMTSの近傍において移動する移動可能な医療装置又はツール(ECGモニタ、金属ツール等)である。それらの歪源は電磁場を歪め、故に、EMTSからの位置及びオリエンテーションを歪めて、追跡エラーをもたらす。そのようなエラーは、EMTSを用いる医療処理の結果に直接、影響し得る。現在、EMTSの臨床的有用性は、EMTSの位置及びオリエンテーションの精度が金属歪の存在下では保証されることは可能でない。
【0005】
Andersonによる米国特許出願公開第2005/0107687号明細書においては、EMTSにおける歪の分析及び減少のためのシステム及び方法が提供されている。追跡改善ユニットは、追跡される各々の特定のツール又は装置のための所定の歪モデルに依存している。その所定のモデルは、センサの配置及びシールドも考慮に入れる磁場マッピング及び/又はモデリング/シミュレーションを含む分析処理を介して開発されている。追跡分析ユニットは、本質的に装置のためのルックアップテーブルである、装置の歪特性のマップ及び/又はモデルを生成する。このシステムは、環境内で静止しているオブジェクトによりもたらされる歪を低減するように試みることはない。
【0006】
Jensenによる米国特許出願公開第2008/0079421号明細書においては、実施形態においてオブジェクトによりもたらされる歪磁場の静的マッピングが提案されている。電磁センサアレイが所定ボリューム内に位置付けされ、センサのアレイが、アレイ内の電磁センサの位置を表す信号を取得するようにサンプリングされる。そのアレイは固定されているため、電磁場歪が演算されることが可能である。このシステムは、医療処置中にリアルタイムに用いられることができず、所定のボリューム内で医療装置及びツールを移動させることによりもたらされる電磁場歪を考慮することができない。
【0007】
Shen等による国際公開第2007/113719号パンフレットにおいては、医療環境下でEMTSの精度を改善する、局所的な金属歪補正のためのシステムが提案されている。そのシステムは、適切なセンサコイルを有する医療装置をモニタリングする磁場発生器を有し、エラー補正ツールにより導出された補正関数がセンサコイルの位置及び折り縁手ション読み取りに適用される。エラー補正ツールは、固定された既知の幾何学的構成で配置された複数の電磁センサを有し、医療処置の標的部位を取り囲んで位置付けられる。更に、歪マッピングが、電磁追跡システムセンサと共に相対的ポジショニング読み取りのための光センサを利用して行われることが可能である。
【0008】
医療環境においてEMTSの精度及び信頼性を改善するように、リアルタイムで金属歪を効率的に補償することができるシステム及び方法についての要請が依然として存在している。従って、環境によりもたらされる静的歪及び医療装置及びツール自体によりもたらされる歪を補償することができるシステム及び方法を備えることは望ましいことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0107687号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/0079421号明細書
【特許文献3】国際公開第2007/113719号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
例示としての実施形態の一特徴に従って、電磁追跡システム(EMTS)を用いる動的金属歪補償のための方法は、少なくとも1つの電磁場発生器により電磁場を発生させることを有する。複数の基準マーカが備えられ、各々の基準マーカは少なくとも1つの電磁センサを有し、電磁センサは複数のセンサオリエンテーションで方向付けられていて、それらのセンサの少なくとも一部は所定のボリュームに近接して位置付けられている。基準マーカは、画像空間における基準マーカの少なくとも1つのベースライン位置を与えるように画像化される。その方法は、EMTSを用いて複数の電磁センサの位置読み取りをモニタリングすることと、電磁場における電磁センサの位置読み取りと画像空間における基準マーカの位置を比較することによる金属歪補正関数を演算することと、を更に有する。所定ボリュームを通って移動する医療装置の位置読み取りは、EMTSを用いてモニタリングされ、その装置は、少なくとも1つの電磁センサを有する。その場合、歪補正関数が、前記金属歪を補償するように医療装置位置読み取りに適用される。その補正は動的であり、リアルタイムに行われ、処置中に近接するようになって、オブジェクト/歪についての補償を可能にする。
【0011】
少なくとも1つの基準マーカの位置決めは、位置モニタリング中に変更可能である。基準マーカの少なくとも一部は、医療処置中に患者の身体の少なくとも一部の周囲におけるフレームにおいて位置付けられ、及び/又は、基準マーカの少なくとも一部は、医療処置中に患者の皮膚に直接位置付けられる。代替として又は付加的に、基準マーカの少なくとも1つが、医療処置中に患者の身体内部に位置付けられることが可能である。
【0012】
複数の電磁センサの位置読み取りの一部が、金属歪補正関数に寄与するように選択される。電磁センサの選択は、選択基準に動的に基づくことが可能である。選択基準は、補償を演算するように追跡される医療装置のオリエンテーションに最も近いオリエンテーションを有するセンサを選択することを有することが可能である。他の構成においては、選択基準は、補償を演算するように追跡される医療装置の空間位置に近接する空間位置を有するセンサを選択することを有することが可能である。更なる構成においては、選択基準は、補償を演算するように患者の身体内の目標位置に近接する空間位置を有するセンサを選択することを有することが可能である。更なる構成においては、選択基準は、補償を演算するように患者の身体内の目標位置及び追跡される医療装置の関連空間位置の形状に基づいてセンサを選択することを有することが可能である。全ての構成において、選択基準は、追跡される医療措置のオリエンテーション及び空間位置の少なくとも一が変化するにつれて、変化することが可能である。
【0013】
医療歪補正関数を演算する方法は、電磁気センサの選択に基づいて選択されることが可能である。例えば、全体的な変換(アフィン)演算方法が用いられる、補間演算が用いられる全体的な変換演算方法が、追跡される医療装置が選択されたセンサの幾何学的カバレッジの外側にある場合に、用いられる、及び/又は外挿演算方法が、追跡される医療装置が選択されたセンサの幾何学的カバレッジの外側にある場合に、用いられることが可能である。金属歪補正関数を演算する方法は、電磁気センサの選択が追跡される医療装置の移動のために変化されるにつれて、動的に変化されることが可能である。
【0014】
例示としての実施形態の他の特徴に従って、電磁追跡システム(EMTS)を用いる動的金属歪補償のためのシステムは、電磁場を発生させる少なくとも1つの電磁場発生器を有する。複数の基準マーカを有し、各々の基準マーカが少なくとも1つの電磁センサを有し、複数の電磁センサは複数のセンサオリエンテーションに方向付けられ、それらのセンサの少なくとも一部は所定ボリュームに近接して位置付けられ、基準マーカは画像空間において可視的である。電磁場において電磁センサの位置読み取りと画像空間における基準マーカの位置を比較することにより金属歪補正関数を演算するためにプロセッサは含まれている。少なくとも1つの電磁センサが医療装置に取り付けられている。プロセッサは、金属歪を補償するように前記医療装置位置読み取りに演算された歪補正関数を適用する。
【0015】
基準マーカの少なくとも一部が、医療処置中に患者の身体の少なくとも一部を取り囲むように適合されたフレームに備えられる。基準マーカの少なくとも一部は複数の電磁センサを有し、そのような基準マーカにおける複数の電磁センサは異なるセンサオリエンテーションを有することが可能である。
【0016】
本発明の上記の及び他の特徴及び有利点については、以下の詳細説明、添付図及び同時提出の特許請求の範囲により明らかになり、当業者は理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の構成要素の一般的構成を示す図である。
【図2】フレームに備えられた複数のアクティブ基準マーカを有する腹部ファントムを示す図である。
【図3】画像取得を示す図である。
【図4】経路プランニングを示す図である。
【図5】ベースライン位置整合を示す図である。
【図6】画像空間におけるアクティブ基準マーカを特定することを示す図である。
【図7】電磁歪補償を伴うナビゲーションを示す図である。
【図8】標的の周囲に備えられた3つの異なるオリエンテーションにおけるアクティブ基準を示す実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、医療装置及び他の構造物のための電磁追跡システム(EMTS)に関する。本発明の例示としての実施形態は、心臓及び血管への適用、針生検、経皮的ラジオ波焼灼療法、低温除去法、前立腺癌治療法等の癌への適用を含む多くの種類の構造に適用されることが可能であることを、当業者は理解する必要があるが、それらに限定されるものではない。
【0019】
はじめに図1を参照するに、電磁(EM)場発生器12を有する電磁追跡システム(EMTS)10を示している。一実施形態においては、電磁場発生器12は、アクティブ基準マーカ14及び医療機器16に含まれるEMセンサからのセンサデータを追跡することが可能である局所的な電磁場を発生することが可能である。マーカ14は、患者の身体18の周囲に備えられる。マーカ14は医療画像空間において可視的であり、電磁追跡空間における位置情報及びオリエンテーション情報を提供するセンサコイルも有し、故に、それらのマーカも電磁追跡空間内に位置付けられることが可能である。医療処置中に、医療機器16は典型的には、目標位置に対して皮膚の下の患者の身体に進入される。電磁センサコイルは、医療機器16内であって、例えば、医療機器16が針である又は針を含む場合には、その先端近傍に組み込まれる。電磁場発生器12に対するセンサコイルの位置及びオリエンテーションの関数である電流がセンサコイルにおいて誘導される。EMTS10はセンサコイルの位置を、従って、医療機器16の位置を演算することが可能である。EMTSの特定の有利点は、視野方向は必要ないことである。従って、EMTSは、人体組織内部で針又はカテーテルを追跡するのに特に適している。
【0020】
図2乃至8を参照するに、医療処置中に、アクティブ基準マーカ14は、患者の皮膚の表面に、又は患者の周囲を移動できるようにデザインされた固定フレーム20に位置付けられることが可能である(図示している構成においては、腹部ファントム18が試験目的で用いることが可能であるように、患者に代えて示されている)。マーカ14は、患者の皮膚上のエントリポイントに近接する、又は患者の身体内の目標位置に近接する適切な領域を取り囲むように位置付けられることが可能である。それらのマーカはワイヤ22でEMTS10に接続されることが可能である、患者18及びフレーム20は、テーブル24の上方に位置付けられた電磁場発生器12を伴って、テーブル24上に、又は何れか適切な場所に位置付けられることが可能である。関連する患者の解剖学的構造の画像が取得される。アクティブ基準マーカ14は医療画像において明確に特定可能であり、画像空間におけるそれらのマーカの位置を決定することが可能である(ソフトウェアの適用により)。これは、アクティブ基準マーカ14の位置についての真のベースラインを形成する。EMTSからのそれらの位置は、真のベースラインの画像位置とEMTS位置を比較することにより補償を演算するように用いられる。金属歪源が存在する場合、アクティブ基準マーカ14の1つ又はそれ以上の位置が歪められる又は不正確になる。ベースライン画像位置との比較することにより、補正が演算されることを可能にする。その補正は、剛体位置整合、アフィン(affine)位置整合及び多くの補間方法を含む種々の方法において実行されることが可能である。
【0021】
皮膚に対する接線方向のような単独のセンサのオリエンテーションを伴う基準マーカにおいては、主に、針のような追跡される医療機器は皮膚表面に対して垂直に挿入され、故に、そのセンサは皮膚の表面に対して垂直であるために最終的には、比較的低い整合性がもたらされる。マーカが、皮膚表面に対して垂直方向で内部に方向付けされたセンサを伴って患者の皮膚に取り付けられているとき、アクティブ基準マーカ14は、最初のやり方で、使用可能な補正又は補償を得るように用いられる。追跡される医療機器16がアクティブ基準マーカにおけるセンサと同じ方向に方向付けられるとき、効率は最適である。しかしながら、それは必ずしも又はかなりしばしば、追跡される医療装置及びアクティブ基準マーカにおけるセンサが近接して位置合わせことが可能であるものではない。
【0022】
第一の構成においては、開示されているシステム及び方法は、各々のアレイが異なるセンサオリエンテーションを有する、アクティブ基準マーカ14の複数のアレイを用いる。他の構成においては、開示されているシステム及び方法は、特定のオリエンテーションのアレイに組織化される必要のない種々のオリエンテーションを有する複数のアクティブ基本マーカ14を用いることが可能である。追跡される医療機器16に対して最も近いセンサオリエンテーションを伴うアクティブ基準マーカ14のアレイか又は、追跡される医療機器16に対して最近接のセンサオリエンテーションを伴う個別のアクティブ基準マーカ14のアレイのどちらかが選択される。選択されたアレイ又はセンサはその場合、歪補正を演算するように用いられる。マーカ14は、補償を演算するように用いられるベースライン位置についての医療画像において識別可能であることのみが必要であるため、アクティブ基準マーカ14は、正確ではなく患者の身体の周囲に位置付けられることが可能であり、即ち、先験的な位置は必要ない。これは、医療処置中に必要な場合には、マーカを再配置する自由度を与える。
【0023】
患者18を取り囲むフレーム20にアクティブ基準マーカ14を位置付けることにより、呼吸動作の影響が除かれる。アクティブ基準マーカ14が、呼吸による一定の動作の下にある場合、これは、補償を演算する能力に影響を与える。呼吸動作が推定され場合、アクティブ基準マーカ14は、患者の皮膚に直接位置付けられることが可能である。アクティブ基準マーカ14から読み取られた位置は、画像取得中に、吸気レベルと同期する必要がある。これは、患者が呼吸装置に繋がれている又はベローズ装置が用いられる場合には、ゲーティング処理を介して達成される。代替として、内部アクティブ基準マーカ又は類似するマーカが、EMTS又は類似する追跡システムを用いて呼吸状態を予測するように用いられることが可能である。
【0024】
EMTSを用いるためには、患者は先ず、何れかの適切なイメージングシステムを用いて撮像される(図3を参照されたい)。侵襲的医療処置のための目標経路がその場合、特定される(図4を参照されたい)。それらの2つのステップは、医療処置の開始の直前に、医療処理中に、又は医療処置より前に実行されることが可能である。画像空間と電磁追跡空間との間のベースライン位置整合(registration)が得られる(図5を参照されたい)。ベースライン位置整合は、画像空間と電磁追跡空間と間の最初の位置整合である。このステップは、補償演算中にアクティブ基準マーカ14を用いて、それら2つの空間の間の変換が演算されるために、オプションである。しかしながら、このステップを実行することにより、電磁補償の演算が失敗したイベントにおいて、画像空間と電磁追跡空間との間のベースライン変換が提供される。更には、このステップは、ソフトウェアアプリケーションが電磁歪補償のユーザによる選択(即ち、それをオン又はオフに切り換えるように)を可能にする場合に、有用である。
【0025】
アクティブ基準マーカ14の位置がその場合、画像空間において特定される(図6を参照されたい)。アクティブ基準マーカ14のEMTS位置情報がその場合、読み出され、EMTSは、歪補償を実行する、EMTS位置と画像空間位置との間の変換又は補間を演算する。一旦、歪補償が演算されると、画像は補正され、その補正され画像は、侵襲的ナビゲーションがリアルタイムの歪補償により実行されるように、医師に対して提供されることが可能である(図7を参照されたい)。追跡される医療機器16のオリエンテーションは、従って、リアルタイムにモニタリングされる。
【0026】
その補償は、追跡される医療機器16と同じオリエンテーション(閾値の範囲内の)を有するアクティブ基準マーカ14におけるセンサからの位置読み出しを用いて演算される。殆どの場合、追跡される医療機器16は、医療機器16が再位置決めされるように動的に変化するために、固定されていない。従って、異なるオリエンテーションを有する複数のセンサを使用することにより、追跡される医療機器16のオリエンテーションに最も近いオリエンテーションを有するセンサが補償を演算するように選択されることが可能になる。代替として、医療機器16に最近接のセンサが選択されることが可能である、又はその選択は、医療機器16に対するセンサの幾何学的位置に基づくことが可能である。追跡される医療機器16のオリエンテーションが変わるために、適切なセンサが、補償を演算するように動的に選択されることが可能である。全ての場合において、補正を演算するのにセンサの最小数が用いられる必要があるが、実際の最小数は、演算を実行するのに用いられる方法に依存する。
【0027】
演算のために用いられるセンサの選択は、補正のために採用される補償方法を決定するように用いられることが可能である。例えば、少ないセンサのみが選択基準に適合する場合、補償は、全体的(global)アフィン変換により実行されることが可能である。しかしながら、センサの十分な数が適切な幾何学的カバレッジを伴って選択される場合、補間方法が用いられることが可能である。一部の構成においては、追跡される医療装置のオリエンテーションが、実際の基準センサの最小数のオリエンテーションに対して正確に対応していないとき、補間は、オリエンテーションにおいて最も適切に適合するセンサにより演算されることが可能である。同様に、追跡される医療機器16が有効なセンサの幾何学的カバレッジから外れている場合、全体的な変換方法は、外挿方法に比べてより良好であり得る。
【0028】
補償の速度又は頻度は2つのイベントであって、実際の基準マーカ14から読み取られる位置を取得すること及び補償の演算のみにより制限される。用いられる実際の基準マーカの数、EMTSの速度及び用いられる補償アルゴリズムに依存して、1つの補償が数分の1秒中に行われることが可能である。真に連続的なリアルタイムの補償は、医療環境においては必要である又は必要ない。
【0029】
補償演算で用いるセンサ選択の一方法は、各々のアレイが実質的に同じオリエンテーションの、又は医療機器16に対して最近接である複数のセンサを有する複数のセンサアレイを用いることである。追跡される医療機器16のオリエンテーションに基づいて、センサの適切なアレイが補償を演算するように選択される。その選択は、適切なアレイのソフトウェア識別を介して、又はハードウェアマルチプレクサ/セレクタにより行われることが可能である。各々の個別のセンサアレイは、標的部位の周囲に適切に間隔を置かれたセンサを有する。第2の方法は、異なるオリエンテーションを有する複数の個別のセンサ(アレイに構成されていない)を用いることである。追跡される医療機器16のオリエンテーションに基づいて、追跡される医療機器16のオリエンテーションに最も近いオリエンテーションを有するセンサが補償を演算するように選択される。選択は、適切なセンサのソフトウェア識別を介して行われる可能性が最も高い。
【0030】
センサ構成の例示としての最も単純化した実施例が、3つの異なるオリエンテーションにあるセンサ26のグループ(それらのセンサはそれらのオリエンテーションを表す線で表現されている)により図8に示されている。センサ26の各々のグループは、実際の基準マーカ14において位置付けられることが可能である、又は各々の実際の基準マーカ14は1つのセンサに含まれて、一緒にアレイにグループ化されることが可能である。オリエンテーションの数は3つに限定される必要はなく、例えば、2つのオリエンテーションが用いられる、又は4つ以上のオリエンテーションが用いられることが可能である。
【0031】
他の構成においては、少なくとも1つの基準マーカ14が、処置中に患者の内部に、例えば、追跡されている医療機器16に近接して、標的部位に近接して、又は補償の精度を改善する何れかの適切な位置に、一時的に位置付けられることが可能である。
【0032】
電磁追跡は、心臓及び血管アプリケーション、癌アプリケーション、及び針生検、経費的ラジオ波焼灼療法、低温除去法、前立腺癌治療法等のような癌アプリケーションにおけるカテーテル追跡を含む医療処置を改善する手段である。金属干渉によりもたらされるエラーは、電磁追跡システムを用いる医療処置の精度に影響を与え得る。リアルタイムの動的エラー補償を提供することにより、開示している方法及びシステムは電磁追跡医療処理の精度を改善することができ、EMTSの使用をよりより現実的で実際的なものにし、また、最小侵襲性アプリケーションにおける医療装置追跡との医療イメージングの統合のために多くの機会可能性がもたらされる。それらの医療アプリケーションには、CTシステム、X線システム、超音波システムの使用があり、その技術は一般に、医師が解剖学的構造における位置に医療装置を案内する必要がある殆どの状況下で何れも適用可能である。
【0033】
上記の方法論のステップを有する本発明は、ハードウェア、ソフトウェア、又はハードウェア及びソフトウェアの組み合わせにおいて実現されることが可能である。本発明は、1つのコンピュータシステムで一元的に、又は異なる要素が複数の相互接続された複数のコンピュータシステムにおいて渡らされる分配方式で、実現することが可能である。何れかの種類のコンピュータシステム、又は本明細書で説明している方法を実行するように適合されている他の装置が適している。ハードウェア及びソフトウェアの典型的な組み合わせは、ロードされて実行されるときに、ここで説明している方法を実行するようなコンピュータシステムを制御するコンピュータプログラムを有する汎用コンピュータシステムであることが可能である。
【0034】
上記の方法論の複数のステップを有する本発明は、コンピュータプログラムプロダクトに組み込まれることが可能である。そのコンピュータプログラムプロダクトは、演算装置又はコンピュータに基づくシステムを本明細書で説明している種々の処理、処理及び方法を実行するように命令するためのコンピュータ実行可能コードを有するコンピュータプログラムに組み込まれたコンピュータ読み取り可能記憶媒体を有することが可能である。ここで記載しているコンピュータプログラムは、a)他の言語、コード又は表記への変換、b)異なる種類の材料における再生、に直接、若しくはそれらのどちらか又は両方の後に、特定の機能を、情報処理能力を有するシステムが実行するようにするように意図された命令の集合の何れかの言語、コード又は表記での何れかの表現を意味するものである。
【0035】
本明細書で説明している実施形態の例示は、種々の実施形態の構造の一般的な理解を提供するように意図されたものであり、本明細書で説明している構造を利用することが可能である装置及びシステムの要素及び特徴全てが揃った表現としての役割を果たすようには意図されていない。多くの他の実施形態が、それらの実施形態を利用する及びそれらの実施形態から導き出されることが可能であり、故に、構造的な及び論理的な置き換え及び変形が、本発明の範囲を逸脱することなく実行されることが可能である。図はまた、単なる表現であって、スケーリングして描かれてはいない。図における比率は誇張されていることがある一方、他の図は縮小化されていることもあり得る。従って、本明細書及び図は、限定的なものではなく、例示としてみなされるべきものである。
【0036】
従って、特定の実施形態について本明細書で図示して説明しているが、同じ目的を達成するように演算された何れかの構成が示されている特定の実施形態を置き換えることが可能であることが理解される必要がある。本明細書は、種々の実施形態の何れかの及び全ての適合又は変形をカバーするように意図されている。上記の実施形態の組み合わせ及び本明細書で特に記載していない他の実施形態が可能であることを、上記説明を検討するときに、当業者は理解することができる。従って、本明細書は、本発明を実行するために検討された最も良好なモードとして開示されている特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、同時提出の特許請求の範囲における範囲内に入る全ての実施形態を網羅するように意図されている。
【0037】
用語“を有する”及びそれの派生表現は、付加的な要素を排除するとみなされるべきではない。要素の単数表現は複数の要素を排除するとみなされるべきではない。表現“又は”は、含めるとして、換言すれば、“及び/又は”として解釈されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁追跡システム(EMTS)を用いる動的金属歪補償のための方法であって:
少なくとも1つの電磁場発生器により電磁場を発生させる段階;
複数の基準マーカを備える段階であって、各々の基準マーカは少なくとも1つの電磁センサを有し、前記少なくとも1つの電磁センサは複数のセンサオリエンテーションにおいて方向付けられ、前記電磁センサの少なくとも一部は所定ボリュームに近接して位置付けられる、段階;
画像空間において前記基準マーカの少なくとも1つのベースライン位置を与えるように前記基準マーカを画像化する段階;
前記EMTSを用いて、前記複数の電磁センサの位置読み取りをモニタリングする段階;
前記電磁場において前記電磁センサの前記位置読み取りと画像空間における前記基準マーカの位置を比較することにより、金属歪補正関数を演算する段階;
前記EMTSを用いて前記所定ボリュームを通って移動する医療装置の位置読み取りをモニタリングする段階であって、前記医療装置は少なくとも1つの電磁センサを有する、段階;及び
前記金属歪を補償するように前記医療装置の位置読み取りに前記金属歪補正関数を適用する段階;
を有する方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの基準マーカの位置決めは前記の位置をモニタリングする段階において変更可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基準マーカの少なくとも一部は、医療処置中に患者の身体の少なくとも一部を取り囲むフレームに位置付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記基準マーカの少なくとも一部は、医療処置中に患者の皮膚に直接に位置付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記基準マーカの少なくとも1つは、医療処置中に患者の身体の内部に位置付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記金属歪補正関数に寄与するように前記複数の電磁センサの前記位置読み取りの一部を選択する段階を更に有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記電磁センサの選択は選択基準に動的に基づく、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記選択基準は、前記補償を演算するように前記追跡される医療装置のオリエンテーションに最も近いオリエンテーションを有するセンサを選択することを有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記選択基準は、前記補償を演算するように前記追跡される医療装置の前記空間位置に近接する空間位置を有するセンサを選択することを有する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記選択基準は、前記補償を演算するように患者の身体内の目標位置に近接する空間位置を有するセンサを選択することを有する、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記選択基準は、前記補償を演算するように患者の身体内の目標位置及び前記追跡される医療装置の関連空間位置の形状に基づいてセンサを選択することを有する、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記選択基準は、前記追跡される医療装置の前記オリエンテーション及び前記空間位置の一が変化するにつれて、変化する、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記金属歪補正関数を演算する当該方法は、上記電磁センサの選択に基づいて選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項14】
全体的な変換演算方法が用いられる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
補間演算が用いられる、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
全体的な変換演算方法は、前記追跡される医療装置が前記選択されたセンサの幾何学的カバレッジの外側にある場合に、用いられる、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記金属歪補正関数を演算する当該方法は、前記追跡される医療装置の移動のために前記電磁センサの選択が変えられるにつれて、動的に変えられる、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
電磁追跡システム(EMTS)を用いる動的金属歪補償のためのシステムであって:
電磁場を発生させる少なくとも1つの電磁場発生器;
複数の基準マーカであって、各々の基準マーカは少なくとも1つの電磁センサを有し、前記少なくとも1つの電磁センサは複数のセンサオリエンテーションにおいて方向付けられ、前記電磁センサの少なくとも一部は所定ボリュームに近接して位置付けられ、前記基準マーカは画像空間において可視的である、基準マーカ;
前記電磁場において前記電磁センサの位置読み取りに対して画像空間における前記基準マーカの位置を比較することにより金属歪補正関数を演算するプロセッサ;及び
医療装置に取り付けられた少なくとも1つの電磁センサ;
を有するシステムであり、
前記プロセッサは、前記金属歪を補償するように前記医療装置の位置読み取りに前記演算された金属歪補正関数を適用する;
システム。
【請求項19】
前記基準マーカの少なくとも一部が、医療処置中に患者の身体の少なくとも一部を取り囲むように適合されたフレームに備えられる、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
演算装置に、
画像空間において基準マーカの少なくとも1つのベースライン位置を与えるように基準マーカの画像を生成させ、
複数の電磁センサの位置読み取りをモニタリングさせ、
電磁場において前記電磁センサの前記位置読み取りと前記画像空間における前記基準マーカの位置を比較することにより金属歪補正関数を演算させ、
所定ボリュームを通って移動する医療装置の位置読み取りをモニタリングさせ、そして
前記金属歪を補償するように前記医療装置の位置読み取りに前記歪補正関数を適用する、
ようにさせるためのコンピュータ命令を有するコンピュータ読み取り可能記憶媒体であって、
前記基準マーカは、複数のセンサオリエンテーションに方向付けられた前記複数の電磁センサを有し、前記電磁センサの少なくとも一部は所定ボリュームに近接して位置付けられ、前記電磁センサは、少なくとも1つの電磁場発生器により発生される電磁場を検出することが可能である、
コンピュータ読み取り可能記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−514738(P2012−514738A)
【公表日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544093(P2011−544093)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【国際出願番号】PCT/IB2009/054997
【国際公開番号】WO2010/076676
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】