説明

電磁音響変換器、およびその電磁音響変換器を有する超音波検査システム

【課題】 検査物体を、高い相対速度で、しかし、EMATの寿命または検査感度をほとんど制限することなく走査することを可能にする超音波検査用の電磁音響変換器を提供する。
【解決手段】 実質的に導電性材料からなる検査物体の超音波検査用の電磁音響変換器であって、前記検査物体(160)に侵入するように意図される磁界を発生させるための磁石システム(115)と、前記検査物体の前記磁界に重畳される交流電磁界を発生させるための、および前記検査物体から放射される交流電磁界を検出するための誘導コイル構造(140、300)と、を有する電磁音響変換器において、前記磁石システム(115)が磁化ユニット(110)に配置され、前記コイル構造が、前記磁化ユニットとは別個であるプローブユニット(120)に配置され、および前記プローブユニット(120)が前記磁界の領域の前記磁化ユニット(110)に対して移動することができるように取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実質的に導電性材料からなる検査物体の超音波検査用の電磁音響変換器と、少なくとも1つのこのような電磁音響変換器を有する超音波検査システムとに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波検査とは、音声を伝える金属等の材料からなる検査物体を検査するための非破壊音響検査方法である。超音波検査は、特に、検査物体の表面下に位置する内部欠陥も検出する能力の故に、多くの用途にとって魅力的である。従来の超音波ベースの検査システムでは、検査のために用いられる超音波が、圧電変換器によって発生し、結合媒体、例えば水を介して検査物体に導入される。
【0003】
電磁音響変換器(EMAT)は、この従来の超音波技術に代わるものであり、全て十分に導電性の材料を検査するために使用することができる。以下で略してEMATとも呼ばれる電磁音響変換器は、電磁原理に基づいて検査物体の材料に超音波を直接発生させるために使用される。この目的のために、EMATは、検査物体に侵入するように意図される磁界を発生させるための磁石システムと、検査物体のこの磁界に重畳される交流電磁界を発生させるための、および検査物体から放射される交流電磁界を検出するための誘導コイル構造とを有する。高周波AC電圧によって励磁されたコイル構造は、検査物体の表面に近接する領域に渦電流を発生させる。この場合に移動される電荷キャリアは、ここで、磁石システムによって検査物体に発生した磁界で移動される。このようにして発生したローレンツ力は、検査物体の材料の固体構造に対する周期的な力として作用し、したがって、検査物体内に超音波を直接発生させ、この超音波は、検査物体の材料に伝達し、検査のために用いられることができる。したがって、原則として、EMATによる超音波検査は結合媒体、例えば水を必要とせず、このようにして、EMAT技術を用いて、例えば、高温状態の金属を検査することも可能になる。EMATによる超音波検査を用いて、金属および合金の欠陥を検査することも、導電性材料からなる検査物体の壁厚、直径等のような幾何学的パラメータを決定することもできる。
【0004】
特許文献1(特許文献2に対応)は、検査物体に対面する作用面を有するハウジングを有する従来の電磁音響変換器を記載している。連続磁界を発生させるための永久磁石と、走査パルスを電磁的に発生させるための、および検査物体から放射されるパルスを受信するための、作用面の近くにある誘導コイル構造とを有する磁石システムが、ハウジング内に配置される。磁石システムは少なくとも3つの永久磁石を有し、これらの永久磁石は、長方形断面を有し、ハウジング内のEMATの作用面に直接隣接しておよびそれに対して平行に配置される。この場合、中央の磁石は、作用面に対して垂直な分極を有し、一方、側部の隣接する磁石の各々は、水平な分極を有する。中央の磁石から生じる磁束が、その都度、コンセントレータの下部に取り付けられる誘導コイルに集中されるように、磁束コンセントレータが磁石システムの永久磁石とコイル構造との間に取り付けられる。このように形成されたEMATは、高い感度と非常に広い動作範囲とを有するように、それと同時に、物理的にコンパクトであるように意図される。
【0005】
特許文献3は、外側ハウジングと、その中に取り付けられる内側ハウジングとを有する電磁音響変換器を開示している。複数の永久磁石を有する磁石システムは内側ハウジングに収容される。誘導コイル構造およびそれに関連する磁界コンセントレータは外側ハウジングの取付プレートに取り付けられるので、内側ハウジングが動作位置にあるときに、磁石システムによって発生した永久磁界はコイル構造に集中される。内側ハウジングは外側ハウジング内で移動することができるように取り付けられ、その結果、内側ハウジングは、外側ハウジングに取り付けられる駆動部による直線移動または回転によって、動作位置(コイル構造との磁束接点)から移動されることができ、これにより、不使用時にEMATを取り外すことが可能になる。この目的は、検査物体が、磁石システムによって発生した磁界によって妨害されないように、変換器をこの検査物体から迅速に取り外すことを可能にするためのものである。
【0006】
検査中に、高い検査感度を得るために、誘導コイル構造を検査物体の表面にできるだけ近接して配置すべきである。公知の電磁音響変換器の場合にコイル構造を保護するために、耐摩耗性材料からなる、例えばセラミック保護プレートの形態の保護装置は、コイル構造の前方に、すなわち、コイル構造と検査物体の表面との間に配置される。コイル構造のコイルと検査物体との間の距離が必要以上に長くなることを回避するために、保護層の材料は、非常に薄い厚さを有するべきである。別の制約として、材料は、超音波を発生させるための方法の原理の故に、高い導電性であってはならない。
【0007】
一般に、自動的に検査工程を行うために、電磁音響変換器が検査装置内で使用される。この場合、EMATは、検査すべき検査物体の全体領域をカバーすることができるように、検査すべき検査物体の表面にわたって通過する。産業用途では、この場合、検査時間をできるだけ短くして、検査される材料の処理能力を最大化することが望ましい。したがって、EMATと検査物体の材料との間では、比較的高い相対速度が望ましい。
【0008】
強磁性材料を検査するときに、検査物体と、検査物体の表面に沿って通過しているEMATとの間には、比較的強い磁気引力が生じることがあり、このことは、EMATと検査物体の表面との摺動接触が行われるときに、特に、相対速度が比較的高いときに、保護要素に対して著しい摩耗をもたらすことがある。
【0009】
代わりに、検査物体の表面とEMATとの間に小さな空隙を有することによって、接触なしに検査物体の表面を走査することができ、この空隙は、少なくとも、EMATと検査物体の材料との間で、例えば検査物体の表面が凸凹であることによる衝突が生じない程度にまたはほとんど生じない程度に十分に大きくすべきである。しかし、表面または検査物体とコイル構造との間の距離が長くなることにより、検査感度が急激に低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】独国特許出願公表第112005000106T5号明細書
【特許文献2】国際公開第2005/083419号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2007/013836A1号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、検査物体を、高い相対速度で、しかし、EMATの寿命または検査感度をほとんど制限することなく走査することを可能にする超音波検査用の電磁音響変換器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、この課題は、請求項1に記載の特徴を有する電磁音響変換器によって解決される。有利な発展形態は従属請求項に記載される。全ての請求項の用語は参照により説明の内容に含まれる。
【0013】
本発明による電磁音響変換器は、検査物体に侵入するように意図される磁界を発生させるための磁石システムと、検査物体の磁界に重畳される交流電磁界を発生させるための、および検査物体から放射される交流電磁界を検出するための誘導コイル構造とを有する。この場合、磁石システムは磁化ユニットに配置され、コイル構造は、磁化ユニットとは別個であるプローブユニットに配置され、そしてプローブユニットは、磁界の領域の磁化ユニットに対して移動することができるように取り付けられる。
【0014】
プローブユニットは、磁化ユニットに固定接続されず、それに対して移動することができるように保持され、このようにして、変換器が磁化ユニットに対して動作されているときに、プローブユニットが磁化ユニットに向かってまたはそこから移動することが可能になる。特に、材料を有しない可変サイズの中間空間を磁化ユニットとプローブユニットとの間に配置することが可能であり、この中間空間のサイズおよび/または厚さは、2つのユニットが互いに移動されるときに変化する。このことは、プローブユニットと検査物体の表面との摺動接触を維持しつつ、高い検査感度でおよび摩耗がほとんど生じない状態で強磁性検査材料を検査することを可能にするが、その理由は、磁化ユニットと強磁性検査材料との間の強い磁気引力が、検査物体の表面にプローブユニットが載置する力に対して影響を与えないか、またはほとんど影響を与えないものであるからである。
【0015】
磁化ユニットに対するプローブユニットの相対移動により、および磁化ユニットとプローブユニットとの間で剛性結合が生じないことにより、表面の凸凹にわたる移動中において移動させるべき質量は比較的小さくすることができ、このようにして、プローブユニットが、問題なしに、および変換器に対して摩耗をもたらすことがあるかまたはさらには破壊を引き起こすことがある過大な慣性力を生じさせることなく、検査物体の表面に沿うことが可能になる。
【0016】
特に産業環境において、検査は、厳しい環境条件で、例えば、依然として高温でありかつ鱗状の表面を有する検査物体で頻繁に行わなければならない。これらのような用途のために、可変サイズの中間空間が磁化ユニットとプローブユニットとの間に配置され、かつ中間空間が、可撓性ケースを使用して、汚染されないようにカプセル化される実施形態が有利である。これにより、汚物が磁化ユニットとプローブユニットとの間の中間空間に入り込むことができないことを保証することが可能になるが、それにもかかわらず、2つのユニットが互いに移動することができることが同時に保証される。実施例によれば、可撓性ケースは、適切な可撓性材料からなるベローズによって形成することが可能であり、この場合、ベローズは、特に、プラスチック製ベローズまたは革製ベローズの形態であり得る。
【0017】
磁化ユニットに対してプローブユニットを正確な相対位置に保持し、それと同時に、プローブユニットが磁化ユニットに対して移動する所望の制限された能力を保証する種々の可能な方法がある。弾性的に可撓性のホルダを使用して、プローブユニットを磁化ユニットに取り付ける1つの方法がある。ホルダは、力が存在しない場合には、プローブユニットが、磁化ユニットから公称距離にあるプローブユニットの公称位置をとり、外力の影響下では、この公称位置から離れることができるように構成することができる。弾性的に可撓性のホルダはプローブユニット用の1つのみのホルダであってもよい。特に有利には、弾性的に可撓性のホルダをベローズによって形成することが可能であり、それと同時に、このベローズは、さらに、汚染されないように磁化ユニットとプローブユニットとの間の中間空間をシールすることができ、このようにして、二重機能が行われる。その他の点においては、磁化ユニットを第1の保持装置に取り付けること、およびプローブユニットを、第1の保持装置とは別個である第2の保持装置に取り付けることも可能である。保持装置は、互いに独立して、関節式に、または保持装置が移動することができるようなある他の方法で変換器用の取付部に取り付けることができる。一改良形態では、プローブユニットを保持する第2の保持装置は第1の保持装置に関節式に接続される。これにより、第1の保持装置を移動させることで、磁化ユニットとプローブユニットとの組み合わせ、すなわちEMAT全体を移動させることが可能になり、一方、第2のホルダに対する第1のホルダの相対移動によって、プローブユニットが磁化ユニットに対して移動される。
【0018】
必要に応じて、磁化ユニットとプローブユニットとの間に1つ以上の磁界コンセントレータを設けることが可能である。しかし、いくつかの電磁音響変換器では、磁石システムとコイル構造との間の中間空間に磁界コンセントレータが存在しない。これにより、従来のEMATに比べて、磁石システムとコイル構造との間の距離をかなり短くすることが可能になる。間隔を短くすることによって得ることができる検査感度の向上により、磁界の集中が生じない影響を部分的または完全に補償することが可能になる。
【0019】
磁石システムとコイル構造との間の中間空間に磁界コンセントレータが存在しない構造は、磁石システムとコイル構造との間に所定の固定距離および/または剛性結合を有する電磁音響変換器のために設けることもできる。
【0020】
いくつかの実施形態では、磁石システムとコイル構造との間の公称距離は8mm未満であり、この場合、その距離は、7mm未満、6mm未満、または5mm未満であってもよい。コイル構造と磁化ユニットとの間の距離が制限的に可変である場合、距離は、例えば、3mm、4mmまたは5mmの公称距離を中心として、±2mmでまたは±3mmで変動し得る。さらに、磁石システムとコイル構造との間の距離はより長くてもよい。
【0021】
異常な動作状態におけるプローブユニットと磁化ユニットとの危険な接触の可能性を防止するために、本発明の一実施形態によれば、磁化ユニットとプローブユニットとの間の相互偏差を有限の最小間隔に制限するために、スペーサ装置が設けられ、このようにして、互いに移動するこれらのアセンブリ間の接触が防止される。弾性的に可撓性の材料からなる層またはある他の衝撃減衰装置を、プローブユニットと磁化ユニットとの間に配置することができる。衝撃減衰層はベローズ材料のセクションによって形成され得る。
【0022】
一実施形態では、スペーサを検査物体の表面に直接支持するための支持セクションを有するスペーサは、磁化ユニットのハウジングに取り付けられ、この場合、スペーサが検査物体の表面に衝突するときに、それらのスペーサは、磁化ユニットと、その磁化ユニットの方向に最大に押圧されているプローブユニットとの間に小さな間隔がなお残存するようなサイズである。
【0023】
コイル構造は従来の方法で構成してもよい。しかし、特に磁界コンセントレータがなくても最良の検査結果を可能にする新規なコイル構造が開発された。コイル構造の一実施形態は、互いに並んで配置される複数の個々のコイルを有し、この場合、直接隣接する個々のコイルのラインセクションは互いに重畳領域に重畳する。個々のコイルは、通常、コアを有さずかつ1つ以上の巻回部を有するコイルであり、巻回部はコイル軸線を規定する。重畳領域は、隣接するコイル軸線の間の中央にその都度配置することが可能である。直接隣接する個々のコイルが、装置の動作中に、逆位相でまたは1つの個々のコイルから次のコイルへの180°の位相オフセットで動作されることができるように、このようなコイル構造で逆位相に切り換えられる場合、この結果、重畳領域に重畳する個々のコイルのそれらのラインセクションの望ましくない寄与が互いに相殺し合う。ここで、特にこれらの状態では、磁化ユニットとプローブユニットとの間の距離が短いために、磁界コンセントレータの使用を完全に省略することが可能である。これにより、EMATの感度が非常に良くなる。
【0024】
コイル構造は個々の巻回コイルによって形成され得る。コイル構造が、電気絶縁材料からなる必要に応じて可撓性の取付プレートに取り付けられる導体トラックの形態である場合、最初の組立中におけるおよび保守または修理中における継手の取り付けおよび取り外しが特に簡単である。プリントによってまたはある他のコーティング方法によって、導体トラックを取付プレートに取り付けることができる。
【0025】
検査材料が検査または測定されている間、EMATは、プローブユニットと材料表面との間に、小さな空隙、例えば、最大約5mmの厚さを有する空隙が存在するように材料表面と接触することなく、その材料表面を走査することができる。プローブユニットが、材料表面と接触し、相対移動中にそこで摺動することも可能である。材料表面が平坦でない場合、可撓性であり、磁化ユニットに対して移動することができるため、プローブユニットは、磁化ユニットの位置が変化しないとしても、上記表面に沿うことができる。
【0026】
本発明に従って構成された電磁音響変換器を使用して、種々の測定作業を行うことができる。これらの測定作業は、検査物体の表面または内部における、(1次元の)点欠陥、(2次元の)領域欠陥または気泡、および3次元の体積欠陥の欠陥検出を含む。さらに、検査材料において、材料厚さ、管の壁厚および/または距離等の複数の幾何学的パラメータを決定することができる。最後に、硬度定数または弾性定数等の特定の材料特性を決定することも可能である。全て十分に導電性の材料、例えば、ニッケルまたはコバルトを含む種々の鋼または材料、さもなければ、アルミニウム、銅等の非鉄金属、ならびに他の多くの金属が、検査物体用の材料として考慮され得る。変換器を種々の検査形態で使用して、例えば、丸い面または未加工品面を有するロッドまたは管、プレートあるいは他の半製品等の細長い物体を連続的に測定するか、さもなければ、種々の形状を有する完成構成要素を測定することができる。
【0027】
さらに、本発明は、実質的に導電性材料からなる検査物体の超音波検査用の検査装置に関する。この検査装置は、本発明による少なくとも1つの電磁音響変換器を有するという事実によって特徴付けられる。
【0028】
これらおよび別の特徴は、請求項からだけでなく、明細書および図面からも明らかとなり、この場合、個々の特徴は、本発明の実施形態のサブコンビネーションの形で、または他の分野で、それら自体または複数でそれぞれ実現することが可能であり、有利な実施形態を表すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】検査物体としての円形ロッドの円筒面と摺動接触する電磁音響変換器の一実施形態の断面図を示している。
【図2】機械的損傷から測定構造を保護するための保護装置を有する、図1に示されている構造の縦断面図を示している。
【図3】コイル構造の一実施形態の平面図を示している。
【図4】コイル構造の直接隣接する個々のコイルの逆位相の励磁を説明するための概略図を示している。
【図5】検査装置の回転ヘッドに設置するための、保持装置が取り付けられた電磁音響変換器を示している。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、強磁性鋼からなる円筒状ロッドの形態の検査物体160の円筒面161と摺動接触する電磁音響変換器(EMAT)100の一実施形態の断面図を示している。EMATは磁化ユニット110とプローブユニット120とを有し、このプローブユニット120は、磁化ユニット110とは別個であり、ベローズ130を介して磁化ユニットに移動することができるように接続され、ベローズ130は両端で閉じられ、弾性プラスチック材料からなり、その結果、磁化ユニットに対するプローブユニットの位置は、ベローズが変形し、これに関連して、プローブユニットと磁化ユニットとの間の距離が長くなるかまたは短くなることによって連続的に可変する。この場合、プローブユニットは、常に、磁石システムから形成される磁界領域に配置される。中間空間125は磁化ユニットとプローブユニット120との間に配置され、このプローブユニットは、磁化ユニットから離間して配置され、この中間空間125は、材料を有さず、可変容積を有し、ベローズ130によって側面全体が円形に囲まれ、したがって、外部からのダストまたは他の汚染物質の侵入から保護される。
【0031】
磁化ユニット110は、EMATの動作中に表面に近接する検査物体160の領域に侵入する一定の磁界を発生させるための磁石システム115を備える。実施例において、磁石システム115は、異なる極性の立方体の永久磁石115A、115B、115Cからなり、この場合、中央の永久磁石115Bは検査物体の表面に対してほぼ半径方向にまたはそれに対して直角に分極され、一方、外側に直接隣接する外側の磁石115A、115Cは、互いに直角に、および検査物体の表面に対して平行に分極される。強磁性プレート116は、磁界を磁気的にシールドするために、プローブユニットの反対側の永久磁石の側面に取り付けられる。永久磁石およびシールドプレートは、検査物体の反対側の側面で磁化ユニットを囲むハウジング117に永久的に設置される。
【0032】
磁石システムの磁石の数および形状は、図示したものと異なってもよい。特に、電磁石を使用して磁界を発生させることもできる。一般に、磁石システムによって発生した磁界は一定の磁界であるが、電磁石を使用して、低周波数または高周波数の交流磁界を発生させることも可能である。交流磁界の周波数を制御することによって、検査物体の表面への磁束密度の集中を設定して変更することができる。
【0033】
プローブユニット120は誘導コイル構造140を含み、この一実施形態について、図3および図4を参照して以下により詳細に説明する。この構造140は、種々の方法で配置することができる種々の設計のコイルを備え得る。コイルを保護するために、薄い保護プレート122は、検査物体に対面する側のコイル構造の前部に配置され、この保護プレート122は、高い機械的摩耗抵抗を有する非導電性または低導電性の材料からなる。実施例において、保護プレートは、セラミック繊維がセラミックマトリックスに結合される複合セラミックからなる。コイル構造および保護プレートは取付フレーム124の平坦な凹部に共に取り付けられ、この取付フレームは耐ねじれ性を有し、非導電性材料からなり、そして取付フレームをベローズ130の可撓性収容部に取り付けるために、図示されている狭い側面にあり継ぎ溝を有する。プローブユニット120はベローズの外側に取り付けられるので、ベローズ材料のセクションは、プローブユニットと磁化ユニットとの間に配置され、弾性的に可撓性の中間層を形成し、この中間層は、スペーサとして、プローブユニット120の取付フレームと磁化ユニット110との直接接触を防止し、衝撃を減衰させることができる。コイル構造140は、電気接続ライン142によって、検査装置用の図示されていない電子制御装置に接続される。
【0034】
EMATの使用中、磁化ユニット110は、プローブユニット120の領域に、および表面に近接する検査物体160の領域に、強い磁界を発生させる。コイル構造は、高周波数のAC電圧で適切に動作されるときに高周波数の電磁励磁交流磁界を発生させる励磁コイルを含み、この磁界は、磁石システム115の磁界に重畳され、さらに、表面に近接する検査物体の領域に侵入する。励磁コイルは、適切な電子装置に接続され、したがって、短い超音波パルスを検査物体の材料に発生させることができ、その短い超音波パルスの周波数は例えばMHzの範囲にあり得る。この場合、超音波パルスを形成することを可能にするために、検査物体の材料(検査材料)は、移動している電荷キャリアが検査材料に発生するように少なくとも導電性を有しなければならず、上記電荷キャリアは、磁化ユニットの磁界で移動し、ローレンツ力の影響下で検査物体の材料の格子構造に作用し、したがって、検査物体の材料に超音波を直接発生させる。検査物体の材料は好ましくは強磁性である。検査物体の材料に発生する超音波の種類(周波数、向き)は、磁石システムによって発生した磁界の方向に、ならびに誘導コイル構造の励磁コイル、および電子装置の形態に依存する。
【0035】
さらに、検査物体の材料から放射される交流信号磁界を検出するためのコイルがコイル構造に配置される。これらのコイルは、適切な電子装置に同様に接続されかつ検査物体の材料からの反射された超音波信号を受信するのに適切であるコイルである。これらの受信コイルは送信コイル(励磁コイル)と同一であり得るが、互いに異なるコイルを設けることも可能である。検査物体の材料内の欠陥に関する通知、必要に応じて、検査材料の幾何学的パラメータ(例えば直径、厚さまたは壁厚)に関する通知は、受信された信号を評価することによって行うことができる。発信された信号から検査材料の種々の弾性パラメータを決定することも可能である。
【0036】
本出願において、励磁および超音波信号受信の工程は検査とも呼ばれる。検査中、一般にEMATと検査物体との間で相対移動が行われる。さらに、例えば管の壁厚測定では、EMATと検査物体との間における相対移動を省略することが可能である。所望の相対移動を行うために、例えば、(固定された)検査物体に対してEMATのみを移動させることが可能である。さらに、EMATを固定すること、および検査物体のみを例えば回転移動させおよび/または平行移動させることが可能である。両方の構成要素を移動させることも可能である。相対移動中、EMATのプローブユニット120が検査物体160の表面161に対して移動される。この場合、検査された表面が(完全にまたは間隙のある状態で)カバーされる範囲は検査作業の要求に依存する。
【0037】
この移動中に、弾性的に可撓性であるようなベローズ130によって取り付けられるプローブユニット120は、検査材料の表面に沿うことができる。この場合、プローブユニットは、一般に、ベローズによる弾力によりあるいは遠心力により、検査物体の表面に僅かに押し付けられ、さらに、この場合、圧力は、検査物体の表面161と保護プレート122との摺動接触が行われるときに、ほんの僅かな摩耗が生じる程度に十分に小さい。さらに、作業は位相毎に接触なしに行うことができる。例えば、カバーされている検査経路に表面突出部が存在する場合に、比較的低質量のプローブユニットは、磁化ユニットの方向への移動によって突出部に沿うことができ、この場合、次に、空隙125が一時的に小さくなる。したがって、表面の状態に応じて、磁化ユニットとEMATのプローブユニットとの間の空隙のサイズがより大きくまたはより小さく変化することが可能である。この場合、図示されていない通気路は、ベローズ内の容積が変化するときに、汚れた粒子がベローズの内部領域に入ることができない状態で、構造全体が「呼吸する」ことができることを保証する。
【0038】
一方では磁化ユニットが、他方ではプローブユニットが、異なるホルダに、すなわち、互いに独立して移動することができるホルダに取り付けられる場合に、磁化ユニットに対して有利に移動するプローブユニットの能力が補助される。さらに、図5を参照して、一変形例について説明する。図1に示した実施例において、磁化ユニット110は、図示していないホルダに取り付けられ、一方、プローブユニット120は、ホルダとして機能するベローズ130を介して磁化ユニットに直接保持される。したがって、2つのホルダの一方(この場合プローブユニット用のホルダ)を他方のホルダ(磁化ユニット用のホルダ)に取り付けることが可能である。1つのみのホルダを使用することも可能である。いずれにしろ、プローブユニット用のおよび磁化ユニット用の保持装置は、磁化ユニット110と強磁性検査材料との間の強い磁気引力がプローブユニット120と材料表面との間の力に影響を与えないことを保証するように適切に構成することができる。したがって、磁石システムの強い磁界における強磁性材料の検査時でも、非常に小さな接触圧力がプローブユニットと検査物体の表面との間に生じ、このように、従来のシステムと比較して、プローブユニットの寿命をかなり延ばすことが可能になる。
【0039】
検査が行われている間に磁気スケーリングまたは他の不純物が生じる場合、このことが、図示した実施形態の変換器の動作に悪影響を与えないが、その理由は、磁化ユニット110とプローブユニット120との間の中間空間125がベローズ130によって防塵シールされるからである。
【0040】
実施例によれば、電磁音響変換器は、製造に関連する産業環境で使用される場合に、大きな機械的負荷、熱負荷および他の負荷を受ける可能性があり、これらの負荷は、変換器の寿命に悪影響を与え、損傷から生じる早期摩耗または故障の事象による製造遅延を引き起こすことがある。次に、厳しい測定環境においても変換器が確実に動作することができることを保証するためにその変換器に個々にまたは組み合わせて設けることができる複数の保護機構について、図2を参照して説明する。図1を参照して既に説明した機能要素および機能群は、図1の断面図と同様の図2の縦断面図の同じ参照番号によって識別される。
【0041】
コイル構造140、およびそれを保護するために設けられる保護プレート122は取付フレーム124の平坦な凹部に配置され、この取付フレームは、電気絶縁材料または低導電性材料からなり、図示した長手方向において、前方および後方の両方に、コイル構造の領域を越えて、磁化ユニットの方向に斜めに、すなわち検査物体から延びる。耐摩耗性材料、例えば金属またはセラミックからなる比較的平坦な第1の保護要素170は、プローブ構造および保護プレート用の凹部に直接隣接して配置され、検査物体に対面する第1の保護要素170の平坦な外面は、保護プレート122の外部にほぼ面一に配置されるが、検査物体に向かってやや突出している。これらの要素は保護プレートの上方に最小限に突出するので、摺動接触は、一般に、これらの要素を介してのみ、さらに、検査物体の表面が比較的鋭い湾曲部を有する場合には保護プレートを介してのみ行われる。スキッド175は外部の保護要素の各々に接続され、これらのスキッド175は、耐摩耗性材料、例えばセラミックからなり、検査物体に対面する、フレーム124の前面の適切な凹部に取り付けられ、そして傾斜面176を有し、これらの傾斜面は、各々が外側に向かって上昇するように、保護プレートの外面によって規定される変換器の作用面まで鋭角に延びる。ここで、EMATが、検査物体の長手方向軸線162に平行な移動構成要素を有する検査物体の表面161に対して移動される場合、および検査物体のこの表面が、突出部の形態の平坦でない局部領域を有する場合、これらのEMATおよび検査物体は、保護プレートを通過するときに、その保護プレート、おそらくはコイル構造を損傷することがある。このことは、スキッド175および保護要素170によって防止されるが、その理由は、突出部が検査物体の表面に生じる場合に、これらの突出部が最初にスキッドの傾斜面に衝突し、移動の経過として、プローブユニット120全体が磁化ユニットの方向に隆起し、平坦でない領域がプローブ構造の領域に至る前に中間空間125の厚さが減少するからである。したがって、これにより、例えば、検査物体が回転ヘッドに至るかまたはそこから移動するときに生じることがあるような、高感度の保護プレートに対する衝撃等の負荷が確実に防止される。
【0042】
さらに、図2の変形例は、ベローズ130を介してプローブユニット120を磁化ユニットに取り付けることが可能であることのみならず、(その代わりにまたはそれに加えて)別個の保持装置をプローブユニットのために設けることもできることを示している。この目的のために、上方に、すなわち検査物体から方向付けられるねじ付き孔182が、長手方向に配置されるフレーム124の端部領域でフレームに設けられ、図5を参照してより詳細に説明するプローブユニット用の保持装置187が、取付ねじ183を用いて取り付けられることが可能になる。
【0043】
既述した構成要素に加えて、図2は、機械的損傷からEMATを保護するための別の保護機構を示している。長手方向において前方および後方に各々突出するブラケット192は、ねじ191を使用して、プローブユニットの反対側の、磁化ユニットのハウジング117の上面に取り付けられ、このブラケット192の自由端の各々にはスキッド193がねじ込まれ、これらのスキッドは下方に、すなわち検査物体の方向に突出する。長手方向に見て、これらのスキッドの各々は、プローブユニットに取り付けられたスキッド175の前方および後方にそれぞれ配置され、外側でこれらのスキッド175に差し掛かる。外側が丸くなっている支持セクション195は、検査物体に対面する端部セクションに形成される。スキッド193が取り付けられたブラケット192は、磁化ユニットを検査物体の表面に直接支持するためのスペーサ190として機能し、支持セクション195が検査物体の表面161と接触するときに、磁化ユニットとプローブユニットとの間に有限の最小間隔が残存するように、プローブユニットを磁化ユニットの方向にのみ移動させることができる程度の、支持高さに対するサイズであり、磁化ユニットとプローブユニットは互いに接触することができない。接触が生じている場合、磁化ユニットと、この領域で弾性的に可撓性の中間層を形成する弾性ベローズ材料の内面との接触が行われ、衝撃を減衰させることができる。したがって、完全に直線でなくてもよい検査物体において、EMATに対する損傷の危険性なしに、EMATを使用して、検査物体のあまり平坦ではない表面をさらに検査することが可能である。
【0044】
既述したように、検査材料の表面の走査中、プローブユニット120と磁化ユニット110との間の空隙125が、検査材料の表面の状態と、検査されているアイテムの直線性とに基づいて変化し得る。ここで、直線性からの偏差が大きい場合、空隙125を完全に消滅させることが可能であり、このようにして、プローブユニットを磁化ユニットに押し付ける。磁化ユニット用のホルダが、一定の範囲にわたって可撓性であるように構成される場合、本例では、さらなる移動がなお可能であるが、上記のように、プローブユニット120および磁化ユニット110が共に移動され、ここで、磁化ユニットと検査材料との間の大きな磁気引力がプローブユニットにさらに作用し、これにより、プローブユニットの寿命がかなり短くなるであろう。このことはスペーサ190によって防止される。このことは、スキッド193がブラケット192の端部に取り付けられ、空隙125が完全に消滅する前に、スキッド193が検査材料の表面と接触する程度のサイズであることによるものである。これにより、非常に大きく湾曲した検査材料の場合に、大幅に増大した力がプローブユニットに作用することが防止され、このようにして、長寿命が保証される。
【0045】
図3は、誘導コイル構造の設計に関する多数の選択肢の1つを示している。コイル構造300は、プリント導体トラックの形態で、電気絶縁プラスチックからなる可撓性取付部302に取り付けられる。図面は、直線に配置される8つのコイルを有する構造を示している。例示目的のために、左側から2番目のコイル(NO.2)の形状が太線で強調されている。コイルの各々は、導体トラックが平行に同じ方向に延びる中央領域Bを有する対称構造を有する。戻りラインは中央領域Bの右側の部分と左側の部分とに分かれる。そこで、電流は導体トラックを介して反対方向に流れる。直接隣接するコイルの戻りライン領域は重畳領域Aで互いに重畳する。例示目的のために、図4は、直接隣接する2つの誘導コイルを簡単な形態で概略的に示している。この場合、図面は、直接隣接する中央領域Bにおける、およびそれらの間の中央に配置されかつ重畳領域Aに物理的に重畳する戻りラインにおける隣接する2つのコイルの電流方向を示している。電流方向の矢印は、直接隣接するプローブが逆位相のAC電圧で、すなわち、180°の位相シフトで励磁され、その結果、隣接する2つの誘導コイルの重畳領域Aに配置される戻りラインが、隣接する2つの誘導コイルを介して反対方向に流れる電流を有することを示している。隣接するコイルの戻りラインが上下に正確に配置されるように、複数のコイルが重畳して配置される場合、誘導コイルが、同じ時間に、しかし、1つのコイルから次のコイルへの交互の位相で励起されるときに、戻りラインの寄与が互いに相殺し合う。
【0046】
特にこれらの状態下では、磁化ユニットの磁石システムとプローブユニットのコイル構造との間に磁界コンセントレータを設ける必要がない。従来の電磁音響変換器では、磁石システムによって発生する磁束を、(図4の領域Bに一致する)コイル構造のコイルの中央領域にその都度集中させるために、および戻りラインを磁界にできるだけ小さく当てるために、いわゆる磁界コンセントレータが磁石システムとコイル構造との間に設けられる。対照的に、磁界コンセントレータは、戻りラインが重畳するように誘導コイルが配置される場合に不要であるが、その理由は、戻りラインの寄与が互いに相殺し合うからである。他の形態のコイル構造も可能であるが、磁界コンセントレータには不要である。ここで、検査物体の材料に形成された音場は、一般に、コンセントレータを有するシステムにおけるものとは異なるように延びる。
【0047】
複数の個々の巻回コイルを設けることによっても、単一の構成要素の絶縁取付部への、対応する導体構造の図示した実装によっても、図3に示した構造と同様のコイル構造を実現することができる。
【0048】
さらに、磁界コンセントレータを使用しない動作は、誘導コイルのこの構造によってまたは同相励磁によって可能である。例えば、全てのコイルが位相で動作されるように、図3に示したコイル構造が動作される場合、電流は、直接隣接するコイルの間の、上下に配置される2つの戻りライン領域を介して、隣接するコイルの中央部Bの方向に対して反対方向に流れる。この結果は、コイル構造の2つのコイルの間に、それぞれ隣接する2つのコイルに対して逆位相で動作される別の層が存在しているかのように生じる。
【0049】
複数の実施例を参照して本明細書で説明してきた種類の電磁音響変換器は、大きく異なる検査作業のために使用することができ、大きく異なる設計を有する検査装置で実現することができる。図5は、例えば、ロッド材料のコア欠陥について検査するために使用することができるような手段を示している。検査物体160はその長手方向軸線162に沿って検査装置を介して高速(例えば数m/s)で移動される。検査装置は回転ヘッドを有し、この回転ヘッドには、複数の電磁音響変換器が、旋回することができるレバー構造を使用して配置され、その結果、変換器は検査物体の表面161と摺動接触し(他の実施形態では、変換器と検査物体の表面161との間に小さな空隙が存在し)、これらの変換器は回転ヘッドの回転中に螺旋経路に沿って走査を行い、これらの変換器の部分は、回転ヘッドの回転速度が検査物体の通過速度に適切に適合される場合に、互いに当接するかまたは重畳し、検査物体が間隙なしに検査されることを保証することができる。回転ヘッドの基本設計はそれ自体公知であり、したがって、この場合より詳細には説明しない。図5は、検査物体の長手方向軸線162と同軸に回転する回転ヘッドのロータ200の一部のみを示している。
【0050】
電磁音響変換器100は、旋回することができるような旋回レバー構造189を使用してロータ200に取り付けられる。EMATは、動作中に検査物体の表面と摺動接触するプローブユニット120と、そこから半径方向距離に配置される磁化ユニット110と、互いに別個でありかつ互いに移動することができる、これらのアセンブリの間の可撓性接続部としての可撓性ベローズ130とを備える。磁化ユニット110は旋回レバーの形態の第1の保持装置185に取り付けられ、この第1の保持装置は、回転軸線186を中心に回転することができるようにロータ200に取り付けられ、この軸線を中心に僅かに移動することができる。プローブユニット120は旋回レバーの形態の第2の保持装置187に取り付けられ、この第2の保持装置は、旋回することができるように旋回レバー185に、すなわち第1の保持装置に取り付けられ、これに対して回転軸線188を中心に僅かに回転することができる。第1の保持装置185が旋回するときに、EMAT全体が検査物体の方向に移動されて、そこから離れる。対照的に、磁化ユニットに向かうまたはそこから離れるプローブユニットのあらゆる相対移動は、第1の保持装置185に対する第2の保持装置187の旋回に関連しており、保持装置は、軸方向に傾斜または回転されず、磁化ユニットに向かうまたはそこから離れる平行移動のみを本質的に行うようにプローブユニットの移動を案内する。この場合、第2の保持装置は受動ガイドを意味する。磁化ユニットに対するプローブユニットの相対移動は、検査物体の表面状態によってのみ制御され、この検査物体の表面状態は、適切ならば、磁化ユニットに対する、検査物体で摺動するプローブユニットの偏差をもたらす。
【0051】
機械的理由および検査理由のために、一般に、図示した構造と同一であるが、ロータの図示した構造に対して180°だけずらされる構造をロータに取り付けることが有利であり、このようにして、通過時に、高い回転速度で検査物体を中心に回転することができるバランスされた検査構造が全体的に形成される。
【符号の説明】
【0052】
100 電磁音響変換器(EMAT)
110 磁化ユニット
115 磁石システム
115A 外側の永久磁石
115B 中央の永久磁石
115C 外側の永久磁石
116 強磁性プレート
117 ハウジング
120 プローブユニット
122 薄い保護プレート
124 取付フレーム
125 空隙
130 ベローズ
140 誘導コイル構造
142 電気接続ライン
160 検査物体
161 検査物体160の円筒面
162 検査物体の長手方向軸線
170 比較的平坦な第1の保護要素
175 スキッド
176 傾斜面
182 ねじ付き孔
183 取付ねじ
185 第1の保持装置
186 回転軸線
187 保持装置
188 回転軸線
189 旋回レバー構造
190 スペーサ
191 ねじ
192 ブラケット
193 スキッド
195 支持セクション
200 回転ヘッドのロータ
300 コイル構造
302 可撓性取付部
A 重畳領域
B 中央領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に導電性材料からなる検査物体の超音波検査用の電磁音響変換器であって、
前記検査物体(160)に侵入するように意図される磁界を発生させるための磁石システム(115)と、
前記検査物体の前記磁界に重畳される交流電磁界を発生させるための、および前記検査物体から放射される交流電磁界を検出するための誘導コイル構造(140、300)と、
を有する電磁音響変換器において、
前記磁石システム(115)が磁化ユニット(110)に配置され、前記コイル構造が、前記磁化ユニットとは別個であるプローブユニット(120)に配置され、および前記プローブユニット(120)が前記磁界の領域の前記磁化ユニット(110)に対して移動することができるように取り付けられることを特徴とする電磁音響変換器。
【請求項2】
可変サイズの中間空間(125)が前記磁化ユニット(110)と前記プローブユニット(120)との間に配置され、前記中間空間が、可撓性ケース(130)を使用して、汚染されないようにカプセル化される請求項1に記載の変換器。
【請求項3】
前記可撓性ケースが、可撓性材料からなるベローズ(130)を有し、前記ベローズが、特に、プラスチック製ベローズまたは革製ベローズの形態である請求項2に記載の変換器。
【請求項4】
前記プローブユニット(120)が、弾性的に可撓性のホルダ(130)を使用して前記磁化ユニット(110)に取り付けられ、前記弾性的に可撓性のホルダが、好ましくは、前記磁化ユニット(110)と前記プローブユニット(120)との間の中間空間(125)を汚染されないようにシールするベローズ(130)を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の変換器。
【請求項5】
前記磁化ユニット(110)が第1の保持装置(185)に取り付けられ、前記プローブユニット(120)が、前記第1の保持装置とは別個である第2の保持装置(187)に取り付けられ、前記プローブユニット(120)を保持する前記第2の保持装置(187)が、好ましくは、前記第1の保持装置(185)に関節接続される請求項1〜4のいずれか1項に記載の変換器。
【請求項6】
前記磁石システム(115)と前記コイル構造(140)との間の中間空間(125)には磁界コンセントレータが存在しない請求項1の上位概念に記載の、特に請求項1〜5のいずれか1項に記載の変換器。
【請求項7】
前記磁石システム(115)と前記コイル構造(140)との間の公称距離が8mm未満、特に5mm未満である請求項1〜6のいずれか1項に記載の変換器。
【請求項8】
少なくとも1つのスペーサ装置が、前記磁化ユニット(110)と前記プローブユニット(120)との相互偏差を有限の最小間隔に制限するために設けられる請求項1〜7のいずれか1項に記載の変換器。
【請求項9】
衝撃減衰装置、特に、弾性的に可撓性の材料からなる層が前記磁化ユニット(110)と前記プローブユニット(120)との間に配置される請求項1〜8のいずれか1項に記載の変換器。
【請求項10】
前記スペーサを前記検査物体(160)の前記表面(161)に直接支持するための支持セクション(193)を有するスペーサ(190)が、前記磁化ユニットのハウジングに取り付けられ、前記スペーサが前記検査物体の前記表面に衝突するときに、前記スペーサは、有限の間隔が前記磁化ユニット(110)と、前記磁化ユニットの方向に最大に偏向されているプローブユニット(120)との間に残存するようなサイズである請求項1〜9のいずれか1項に記載の変換器。
【請求項11】
前記コイル構造(140、300)が、互いに並んで配置される複数の個々のコイルを有し、直接隣接する個々のコイルのラインセクションが重畳領域(A)に互いに重畳する請求項1〜10のいずれか1項に記載の変換器。
【請求項12】
前記コイル構造(140、300)が、互いに並んで配置される複数の個々のコイルを有し、前記コイル構造の直接隣接する個々のコイルが逆位相に切り換えられる請求項1〜11のいずれか1項に記載の変換器。
【請求項13】
前記コイル構造(300)が、電気絶縁材料からなる取付部(302)に取り付けられる導体トラックを有する請求項1〜12のいずれか1項に記載の変換器。
【請求項14】
実質的に導電性材料からなる検査物体の超音波検査用の検査装置において、前記検査装置が、請求項1〜13のいずれか1項に記載の少なくとも1つの電磁音響変換器を有することを特徴とする検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−506540(P2012−506540A)
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532520(P2011−532520)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【国際出願番号】PCT/EP2009/007251
【国際公開番号】WO2010/046036
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(510273466)インスティトゥート ドクター フェルスター ゲーエムベーハー ウント コー カーゲー (3)
【Fターム(参考)】