説明

電線カバー

【課題】電線カバーの内部に浸入した水を外部に排出しやすくする。
【解決手段】本発明は、電線Wを取り囲むカバー本体20を備えた電線カバー10であって、カバー本体20は、底壁21と、この底壁21の両側縁から上方に立ち上がる一対の側壁22と、各側壁22,22の上縁同士を連結する天井壁23とを備えて構成され、側壁22の内面には、底壁21に向けて下り勾配をなすテーパ状の案内面27が形成され、この案内面27に連なる底壁21に排水孔26が貫通して形成されている構成としたところに特徴を有する。このような構成によると、電線カバー10の内部に浸入した水が案内面27によって排水孔26に案内され、この排水孔26から外部に排出されるため、電線カバー10の内部に浸入した水を外部に排出しやすくできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電線を覆う電線カバーとして下記特許文献1に記載のものが知られている。この電線カバーは、電線を取り囲む周壁を備えており、この周壁には、排水孔が貫通して形成されている。電線カバーの内部に水が浸入した場合、排水孔から水を外部に排出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−19069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の電線カバーは排水孔を備えているものの、周壁に付着した水が排水孔に向けて流れるように構成されていないため、電線カバーの内部に水が残りやすかった。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、電線カバーの内部に浸入した水を外部に排出しやすくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、電線を取り囲む周壁を備えた電線カバーであって、周壁は、底壁と、この底壁の両側縁から上方に立ち上がる一対の側壁と、各側壁の上縁同士を連結する天井壁とを備えて構成され、側壁の内面には、底壁に向けて下り勾配をなすテーパ状の案内面が形成され、この案内面に連なる底壁に排水孔が貫通して形成されている構成としたところに特徴を有する。
【0007】
このような構成によると、電線カバーの内部に浸入した水が案内面によって排水孔に案内され、この排水孔から外部に排出されるため、電線カバーの内部に浸入した水を外部に排出しやすくできる。
【0008】
本発明の実施の態様として、以下の構成が好ましい。
周壁には、電線を挿通させてこれを保持する電線保持部が形成されており、排水孔は、電線保持部の付近に形成されている構成としてもよい。
【0009】
このような構成によると、電線を伝って電線保持部から電線カバーの内部に水が浸入しやすくなるものの、排水孔が電線保持部の付近に形成されているため、電線保持部から浸入した水を排水孔から効率よく外部へ排出することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電線カバーの内部に浸入した水を外部に排出しやすくできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】電線カバーを開いた状態におけるその内部側を示した平面図
【図2】図1におけるA−A線断面図
【図3】図1におけるB−B線断面図
【図4】電線カバーを開いた状態におけるその外部側を示した平面図
【図5】電線カバーによって電線の端末部分を覆った状態を側方から見た図
【図6】電線カバーを閉じた状態における水の排水経路を示した図
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態>
本発明の実施形態を図1ないし図6の図面を参照しながら説明する。本実施形態の電線カバー10は、図1に示すように、ベース部材11と、このカバー部材12と、ベース部材11およびカバー部材12を連結する可撓性のヒンジ13とを備えて構成されており、ヒンジ13を中心としてカバー部材12をベース部材11に対して回動させることでカバー部材12がベース部材11に組み付けられるようになっている。
【0013】
また、電線カバー10は、図5に示すように、電線Wの端末部を覆うカバー本体20と、このカバー本体20の前方に連なって設けられたボルト収容部30とを有している。カバー本体20は合成樹脂製であって、図6に示すように、底壁21と、この底壁21の両側縁から対向状態をなして立ち上がる一対の側壁22,22と、各側壁22,22の上縁同士を連結して底壁21と対向状態をなす天井壁23とを備えて構成されている。
【0014】
底壁21は、ベース部材11に設けられており、天井壁23は、カバー部材12に設けられている。また、各側壁22,22は、ベース部材11とカバー部材12の合わせ面14によって上下に分断されている。ボルト収容部30も同様に、ベース部材11とカバー部材12の合わせ面14によって上下に分断されており、ベース部材11に設けられたボルト挿通部31と、カバー部材12に設けられたボルトカバー部32とから構成されている。
【0015】
ボルトカバー部32は、一対の薄肉部34,34を介して天井壁23の前縁に連結されており、ボルト挿通部31の上端開口を開閉可能とされている。なお、ボルト挿通部31の上端開口が開いた状態におけるボルトカバー部32の位置を開き位置とし、ボルト挿通部31の上端開口が閉じた状態におけるボルトカバー部32の位置を閉じ位置とする。各薄肉部34,34の間であってボルトカバー部32と天井壁23の間には、略V字形をなす付勢部材33が架設されており、付勢部材33の弾性変形に伴ってによってボルトカバー部32が閉じ位置と開き位置の間で勢いよく回動するように構成されている。
【0016】
ボルト収容部30は、図5に示すように、バッテリ(図示せず)の上面に立設されたスタッドボルトBの先端を収容するとともに、このスタッドボルトBに螺合されたナットNを収容している。スタッドボルトBには、丸端子40が接続されており、この丸端子40は、円孔が形成された接続部41と、この接続部41の後方に連なる圧着部42とを備えて構成されている。接続部41の円孔にスタッドボルトBを挿通し、ナットNで締め込むことにより、接続部41がスタッドボルトBの台座B1とナットNの間に狭圧された状態となって、スタッドボルトBと接続部41が導通可能に接続される。
【0017】
圧着部42は、電線Wの端末において絶縁被覆を皮剥きすることで露出された芯線に圧着されるワイヤバレル42Aと、絶縁被覆の端末に圧着されるインシュレーションバレル42Bとを備えている。天井壁23には、芯線に圧着されたワイヤバレル42Aを上方から押さえ付ける押さえ部24が設けられている。この押さえ部24は、弾性変形可能とされており、弾性変形した際の弾性復帰力によってワイヤバレル42Aを押さえ付けるように構成されている。
【0018】
カバー本体20の後端には、電線保持部25が形成されている。この電線保持部25は、底壁21の後縁と各側壁22,22の後縁と、天井壁23の後縁とに連結されており、ベース部材11とカバー部材12の合わせ面14によって上下に分断されている。電線保持部25には、電線Wを挿通させる電線挿通孔28が貫通して形成されている。電線挿通孔28は、電線Wの外径よりも大径とされており、電線挿通孔28の内周面と電線Wの外周面の間には、隙間Sが形成されている。このため、電線保持部25の内側には、電線Wを伝って水が浸入しやすくなっている。
【0019】
そこで、図1に示すように、底壁21の後端には左右一対の排水孔26,26が貫通して形成されており、各排水孔26,26によって電線カバー10の内部に浸入した水を外部に排出しやすくなっている。また、各側壁22の内側には、図2に示すように、底壁21に向けて下り勾配をなすテーパ状の案内面27が形成されている。この案内面27は、下方に向かうほど底壁21の外面から遠ざかるように形成されている。したがって、案内面27に付着した水は、下方へ流れやすくなり、底壁と側壁の角部が直角をなす場合よりも水が溜まりにくくなっている。しかも、図3に示すように、案内面27に連なるようにして排水孔26が形成されているため、案内面27を伝って排水孔26から外部に水を排出しやすくなっている。
【0020】
水の排水経路の一例を図6に示す。排水経路Rは、カバー部材12側から側壁22の内面を伝ってベース部材11側に流れ、ベース部材11の案内面27を伝って底壁21側に流れる。そして、底壁21に開口された排水孔26を通して水が外部に排出されることになる。なお、案内面27は、カバー本体20の四隅、すなわち電線Wが配設されないデッドスペースを利用して形成されているため、電線Wの配設スペースを狭めることなくデッドスペースを有効に利用することができる。
【0021】
以上のように本実施形態では、カバー本体20の内部に案内面27を形成し、この案内面27に連続して排水孔26を形成したから、電線カバー10の内部に水が浸入した場合であっても、排水孔26から水を外部に排出しやすくできる。また、水が浸入しやすい電線保持部25の内側に排水孔26を形成したから、水を排水孔26から効率よく外部へ排出することができる。
【0022】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態ではスタッドボルトBに取り付けられる電線カバー10を例示しているものの、本発明によると、コネクタの背面に取り付けられる電線カバーに適用してもよい。
【0023】
(2)上記実施形態では側壁22の内側に案内面27を形成しているものの、本発明によると、カバー本体20の内側における全周に亘って案内面27を形成してもよい。
【符号の説明】
【0024】
10…電線カバー
20…カバー本体(周壁)
21…底壁
22…側壁
23…天井壁
25…電線保持部
26…排水孔
27…案内面
W…電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線を取り囲む周壁を備えた電線カバーであって、
前記周壁は、底壁と、この底壁の両側縁から上方に立ち上がる一対の側壁と、各側壁の上縁同士を連結する天井壁とを備えて構成され、前記側壁の内面には、前記底壁に向けて下り勾配をなすテーパ状の案内面が形成され、この案内面に連なる前記底壁に排水孔が貫通して形成されていることを特徴とする電線カバー。
【請求項2】
前記周壁には、前記電線を挿通させてこれを保持する電線保持部が形成されており、前記排水孔は、前記電線保持部の付近に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電線カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−62058(P2013−62058A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198188(P2011−198188)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】