説明

電線交換機構付き電線調尺装置

【課題】調尺対象となる電線の交換をより簡易にすること。
【解決手段】電線交換機構付き電線調尺装置10は、調尺対象である電線2を交換可能に構成されている。本装置10は、電線2を送給経路R上で設計寸法ずつ調尺して送給可能な調尺機構部20と、電線2の一端側部分を送給経路Rに沿った形状に支持し、調尺機構部20によって送給される電線2を下流側の電線経路に案内する下流案内部34を有する複数の電線支持部材30と、複数の電線支持部材30を、支持した電線2を送給経路R上に配設するセット位置と、セット位置とは異なる待機位置との間で移動可能な移動機構部50とを備え、下流案内部34は、電線支持部材30がセット位置に配設された状態で、調尺機構部20より下流側の位置に配設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
端子付き電線の製造工程において電線を調尺する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤーハーネス等に組み込まれる端子付き電線は、電線を設計切断長に調尺して切断後、端部に端子を圧着して製造される。電線の調尺工程において用いられる電線調尺装置は、供給される連続した電線を、順次、設計切断長に調尺しつつ送給する。そして、ロット変更等の際には、端子付き電線の品番によっては電線の種類が変更されることがある。また、電線供給源における電線が次のロット単位分に満たない場合等にも電線が交換される。
【0003】
特許文献1には、供給電線を交換することが可能な電線交換機能付き電線調尺装置が開示されている。この電線交換機能付き電線調尺装置は、電線を調尺する調尺機構部と、電線の一端側部分を支持する電線支持部材と、電線支持部材を電線送給経路とは別の位置で支持する支持部材配設部と、電線支持部材を、電線を調尺するためのセット位置とセット位置とは別の待機位置との間で移動させる移動機構部とを備えている。調尺機構部は、電線支持部材に支持されて電線送給路上に一端側部分が配設された電線を送給する送給部と、該電線の線癖を除去する癖取り部を有すると共に、下流側端部に電線を下流の所定経路上に案内するための送給案内部を有している。送給案内部は、電線を挿通可能な孔部を有する構成である。
【0004】
電線の交換時には、移動機構部により、電線送給経路に直交する方向において、セット位置に支持された電線支持部材を待機位置に移動させると共に、別の待機位置に支持された電線支持部材をセット位置に移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−54391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の電線交換機能付き電線調尺装置において、セット位置に配設されている電線支持部材に支持された電線は、その下流側端部が送給案内部に挿入された状態にある。電線支持部をセット位置から待機位置に移動させる際に、移動機構部により電線送給経路に直交する方向に移動させる構成によると、電線支持部材に支持される電線を送給案内部から引き抜いておくことが望ましい。
【0007】
しかしながら、特許文献1の電線交換機能付き電線調尺装置において上記要請を満足するためには、電線の交換時に、電線を挿入案内部から引き抜く工数が増加すると共に電線引き抜き用の構成も必要となってしまう。
【0008】
そこで、本発明は、調尺対象となる電線の交換をより簡易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様は、調尺対象である電線を交換可能な電線交換機構付き電線調尺装置であって、前記電線を送給経路上で設計寸法ずつ調尺して送給可能な調尺機構部と、前記電線の一端側部分を前記送給経路に沿った形状に支持し、前記調尺機構部によって送給される前記電線を下流側の電線経路に案内する下流案内部を有する複数の電線支持部材と、前記複数の電線支持部材を、支持した前記電線を前記送給経路上に配設するセット位置と、前記セット位置とは異なる待機位置との間で移動可能な移動機構部と、を備え、前記下流案内部は、前記電線支持部材が前記セット位置に配設された状態で、前記調尺機構部より下流側の位置に配設される。
【0010】
第2の態様は、第1の態様に係る電線交換機構付き電線調尺装置であって、前記電線支持部材は、支持した前記電線の外周部に接触して前記電線の癖を除去可能な癖取り部を有する。
【0011】
第3の態様は、第1又は第2の態様に係る電線交換機構付き電線調尺装置であって、前記移動機構部は、前記複数の電線支持部材を並列に支持する移動支持体と、前記移動支持体を前記送給経路に交差する方向に移動可能に支持して、前記複数の電線支持部材を前記待機位置と前記セット位置の上流側の中継位置との間で差し替える差替駆動部と、前記電線支持部材を、前記セット位置と前記中継位置との間で前記送給経路に沿う方向に移動可能な進退駆動部と、を有する。
【0012】
第4の態様は、第1〜第3のいずれか一態様に係る電線交換機構付き電線調尺装置であって、前記電線支持部材は、本体部と、前記本体部に対して取り換え可能に保持された前記下流案内部を含む取換部とを有している。
【発明の効果】
【0013】
第1の態様に係る電線交換機構付き電線調尺装置によると、移動機構部によりセット位置と待機位置との間で移動可能にされた電線支持部材が、調尺機構部によって送給される電線を下流側の電線経路に案内する下流案内部を有しており、この下流案内部は、前記電線支持部材がセット位置に配設された状態で、調尺機構部より下流側に配設されるため、調尺機構部において電線を下流側へ案内する下流案内部が設けられる場合と比較して、電線支持部材をセット位置から待機位置に移動させる際に電線を下流案内部から引き出す作業及び構成を省略でき、調尺対象となる電線の交換をより簡易にすることができる。
【0014】
第2の態様に係る電線交換機能付き電線調尺装置によると、電線支持部材が、支持した電線の外周部に接触して電線の癖を除去可能な癖取り部を有するため、電線の交換時に癖取り部に対して電線をセットする工程を省略でき、電線の交換を効率化することができる。
【0015】
第3の態様に係る電線交換機構付き電線調尺装置によると、移動機構部が、複数の電線支持部材を並列に支持する移動支持体を送給経路に交差する方向に移動可能に支持して、複数の電線支持部材を待機位置と中継位置との間で差し替える差替駆動部と、電線支持部材を、セット位置と中継位置との間で送給経路に沿う方向に移動可能な進退駆動部とを有しているため、移動機構部における電線支持部材の移動動作をより簡単にすることができる。
【0016】
第4の態様に係る電線交換機構付き電線調尺装置によると、電線支持部が、本体部と、本体部に対して取り換え可能に保持された下流案内部を含む取換部とを有しているため、電線の直径に応じた下流案内部を用いることができ、調尺対象となる電線が異なる種類の電線に交換される場合にも、該電線を下流側に向けてばたつくのをより確実に抑制して送給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】電線交換機構付き電線調尺装置の概略全体図である。
【図2】調尺機構部の平面図である。
【図3】調尺機構部の駆動機構を示す概略図である。
【図4】電線支持部材の取換部を示す図である。
【図5】癖取り部を示す側面図である。
【図6】癖取り部を示す平面図である。
【図7】移動機構部を示す正面図である。
【図8】上側の電線支持部材と移動機構部との関係を示す平面図である。
【図9】下側の電線支持部材と移動機構部との関係を示す平面図である。
【図10】電線交換機構付き電線調尺装置の動作を示す図である。
【図11】電線交換機構付き電線調尺装置の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施形態に係る電線交換機構付き電線調尺装置10について説明する(図1参照)。
【0019】
電線交換機構付き電線調尺装置10は、端子付き電線の製造工程において、電線2を設定寸法ずつ調尺して送給するための装置である。ここで、設定寸法とは、端子付き電線に用いられる電線2の寸法であり、端子付き電線の種類ごとに配索経路等に対応して設定される。この電線交換機構付き電線調尺装置10は、切圧機に組み込まれることがあり、切断装置の上流に配設される。すなわち、切圧機では、電線交換機構付き電線調尺装置10により設定寸法ずつ調尺されて送給される電線2を、切断装置により切断すると共に、被覆除去装置により端部の被覆を剥離し、端子圧着装置により芯線露出部分に端子を圧着して、端子付き電線を製造する。
【0020】
端子付き電線の製造工程においては、一般的にロット単位で端子付き電線を製造し、ロット切り替えの際に電線2を交換することがある。なお、電線2の交換には、異種の電線2への交換、及び、同種の電線2への交換の両方の場合がある。そして、本電線交換機構付き電線調尺装置10は、調尺対象である電線2を交換可能に構成されている。
【0021】
電線交換機構付き電線調尺装置10は、調尺機構部20と、複数の電線支持部材30と、移動機構部50とを備えている。概略的には、電線交換機構付き電線調尺装置10は、電線支持部材30に支持された電線2を、設定寸法ずつ調尺して送給経路Rに沿って送給し、電線2の交換時に、これまで調尺対象であった電線2を支持する電線支持部材30を移動機構部50によって他の電線支持部材30に差し替えることにより、調尺対象である電線2を交換する。
【0022】
電線交換機構付き電線調尺装置10のうち、調尺機構部20及び移動機構部50は、床上等に設置される基部92に対して固定されている。
【0023】
調尺機構部20は、電線2を送給経路R上で設計寸法ずつ調尺して下流側に送給可能に構成された部分である(図2、図3参照)。ここでは、調尺機構部20は、送給機構部そのものであり、対の送給ローラー22と、一対のローラー支持部24と、モータ26と、伝達部27とを有している。なお、送給経路Rとは、電線交換機構付き電線調尺装置10において電線2を調尺して送給する際に該電線2が通る経路であり、ここでは直線状に設定されている。
【0024】
より具体的には、送給ローラー22は、回転軸を(ここでは上下方向に沿って)平行にする姿勢で、送給経路Rを挟んでそれぞれ一対のローラー支持部24に対して、対を成して回転可能に支持されている。ここでは、送給ローラー22は、1つのローラー支持部24に対してそれぞれ2つずつ、すなわち2組支持されている。もっとも、対の送給ローラー22は、1組だけ又は3組以上設けられていてもよい。
【0025】
また、送給ローラー22は、伝達部27を介してモータ26により間接的に回転駆動される。伝達部27は、図3に示すように、モータ26と同軸に設けられて直接回転駆動される駆動ギヤ271と、駆動ギヤ271に噛合する伝達ギヤ272と、送給ローラー22と同軸に設けられ、駆動ギヤ271及び伝達ギヤ272のいずれか一方に噛合する同軸ギヤ273とを有している。この伝達部27により、送給ローラー22は、電線2を下流側に向けて送るように、送給経路Rを挟んで対称に回転駆動される。
【0026】
一対のローラー支持部24は、送給経路Rを挟んで接離移動可能に設けられている。より具体的には、一対のローラー支持部24は、それぞれシリンダ242により支持されている。ここでは、シリンダ242は、エアシリンダであるが、油圧シリンダでよいことは言うまでもない。また、シリンダ242の代わりに、コイルばねを用いた押し付け機構とシリンダ又はモータを用いた直線駆動機構とを組み合わせた構成を採用してもよい。そして、一対のローラー支持部24が近接した位置に移動された状態では、送給ローラー22は、送給経路R上を通る電線2を挟み込む。すなわち、対の送給ローラー22が回転することにより、その間に挟まれた電線2が送給される。また、一対のローラー支持部24が離間した位置に移動された状態では、各対の送給ローラー22は、電線2の直径より大きい間隔をあけて、電線2に対する挟持状態を解除する。すなわち、対の送給ローラー22の間に電線2を出し入れ可能な状態である。
【0027】
電線支持部材30は、電線2の一端側部分を、送給経路Rに沿った形状、すなわち上流側から下流側に向かう略直線状に支持可能に構成された部材である。ここでは、電線支持部材30は、2つ設けられ、後述する移動機構部50により、支持する電線2が送給経路R上に位置するセット位置と前記セット位置とは異なる待機位置との間で交互に移動される。この電線支持部材30は、調尺案内部32と、下流案内部34と、支持部42と、癖取り部44と、経路案内部47とを有している。以下の電線支持部材30に関する説明において、電線支持部材30はセット位置に配設されているものとする。
【0028】
調尺案内部32は、調尺機構部20を通る電線2を案内する部分である(図2、図4参照)。この調尺案内部32は、電線2を内部に挿通して案内する筒状の通線部33を有している。より具体的には、通線部33は、直線状に断続的に設けられた円筒形状の部分であり、電線2の外径より大きい内径に設定されている。通線部33は、図2に示すように、送給経路Rに沿う方向において、2組の送給ローラー22の突き合わせ部分の両側方に位置するように、断続的に(ここでは3分割に)形成されている。すなわち、通線部33は、送給経路Rを挟んで対向する対の送給ローラー22に干渉しないように形成されている。通線部33のうち、各対の送給ローラー22の突き合わせ部分に近接する各端部は、該部分に近接するにつれて、送給ローラー22が送給経路Rを挟んで対向する方向において、徐々に寸法が小さくなる形状に形成されている。すなわち、通線部33は、送給経路Rに沿う方向において、調尺機構部20のより広範囲に亘って、電線2を案内可能に形成されている。これにより、調尺機構部20において、電線2の露出をより少なくして、送給時の電線2のはみ出しを抑制している。
【0029】
下流案内部34は、電線支持部材30の下流側端部に設けられ、調尺機構部20により送給される電線2を調尺機構部20より下流側の電線経路に案内する部分である(図4参照)。より具体的には、下流案内部34は、通線部33の下流側に設けられ、すなわち、電線支持部材30がセット位置に配設された状態で、調尺機構部20より下流側の位置に配設される(図1参照)。
【0030】
この下流案内部34は、電線2を挿通可能であり、少なくとも一方向において通線部33の内径より小さい間隔で対向する規制部を有している。すなわち、下流案内部34は、電線2を送給経路R上に支持する通線部33と比較して、少なくとも一方向においてより厳密な位置決めを行うことにより、ばたつくのを抑制して下流側に案内するように形成されている。また、下流案内部34は、送出される電線2を下流側の電線経路に経路規制しつつ、その電線経路に自由度を持たせる構成を採用している。すなわち、下流案内部34を通じて送出される電線2は、その下流側である程度自由度をもった電線経路上で扱われることもある。このため、前記自由度の範囲内の各電線経路上に電線2を経路規制して案内できることが好ましい。
【0031】
そこで、ここでは、下流案内部34は、先端コイルばね型に形成されている。この下流案内部34は、全体としてノズル形状を成し、基端側部分に形成された貫通孔部の先端部から、先端側にコイルばね(ここでは密なコイルばね)が延設されて構成されている。すなわち、下流案内部34は、コイルばね部分の基端部を基点として、先端部が電線2の送給経路Rに直交する方向に弾性変形可能に形成されている。また、下流案内部34は、先端部(下流側端部)に近付くにつれて徐々に細くなる形状に形成されている。下流案内部34の先端部は、電線2の外周面に沿った略円形に開口し、その開口径は、電線2の外径より僅かに大きく、ここでは通線部33の内径より小さく設定されている。好ましくは、下流案内部34の先端部の開口径は、送出される電線2を、ばたつくのを抑制して且つスムーズに下流側に送給できるような径に設定されているとよい。なお、本下流側案内部34は、全体としてコイルばねで形成されていてもよい。
【0032】
そして、下流案内部34は、その内側を通る電線2の外周部に対して送給経路Rに直交する方向(ここでは全方向)から接触する(常に接触していることまでは要さない)ことにより、該電線2を調尺機構部20より下流側の電線経路に案内する。また、下流案内部34は、先端側部分が湾曲することにより、その湾曲変形の範囲内における下流側の各電線経路上に、電線2を経路規制してばたつくのを抑制して案内することができる。
【0033】
他にも、このような下流案内部としては、上下矯正型の形状を採用することができる。上下矯正型の下流案内部は、先端コイルばね型のコイルばね部分を、対向する一対の壁部を有する部分に代替した形状に形成されている。より具体的には、一対の壁部は、上下方向に電線2より僅かに大きい間隔をあけて対向する形態で設けられている。これにより、この下流側案内部は、重力の影響を受け易い上下方向においてより厳密な位置決めをしつつ、電線2を略水平方向において自由度をもって各電線経路に案内可能にされている。
【0034】
また、短尺型の下流側案内部を採用してもよい。短尺型の下流側案内部は、先端コイルばね型からコイルばね部分を省略し、電線2を挿通可能且つ通線部33より小径な貫通孔部を有している。すなわち、短尺型の下流側案内部は、電線2を、下流側の各電線経路の基点となる一定位置に案内することにより、自由度をもたせつつ各電線経路に移動可能にするように構成されている。
【0035】
また、下流側案内部は、電線2を調尺機構部20より下流側の電線経路にばたつくのを抑制して案内可能であればよく、金属材料又は樹脂材料により金型成型された先細り筒状のノズル形状に形成されていてもよい。
【0036】
また、電線支持部材30は、全体として、本体部41に対して、取換部31が取り換え可能に保持されて構成されている。より具体的には、本体部41の下流側に取換部31が保持されることにより、電線支持部材30が構成される。ここで、本体部41とは、癖取り部44及び経路案内部47が支持部42に支持されて構成される部分である。また、取換部31は、調尺案内部32、下流案内部34及び被保持部39を有する部分である。
【0037】
支持部42は、板状の部材である。この支持部42には、癖取り部44及び経路案内部47が直接的又は間接的に支持されると共に、取換部31を保持する保持部49が設けられている。
【0038】
より具体的には、保持部49は、支持部42の下流側端部において一主面上に支持されている。この保持部49は、取換部31(調尺案内部32)の上流側端部に設けられた被保持部39を一定姿勢に保持可能に形成されている。ここで、被保持部39と保持部49との組み合わせの一例を説明する。被保持部39は、調尺案内部32の上流側端部から側方に矩形板状に突出する部分と、その上面に設けられ、該側方に向けて引張力を付与可能な面を有する返し部とを有する。また、保持部49は、被保持部39の突出部分を嵌入可能な凹部と、返し部に引掛け可能な引掛部と、引掛部を調尺案内部32の側方に引張り可能な引張レバーとを有する。そして、被保持部39の突出部分を保持部49の凹部に嵌入した状態で、引掛部を返し部に引掛けると共に引張レバーを操作することにより、本体部41に対して取換部31を保持する。なお、被保持部39と保持部49との組合せとしては、他にも、保持部が被保持部に対して凹凸係合する構成、保持部が被保持部を把持する構成等を採用することができる。
【0039】
癖取り部44は、電線支持部材30に支持された電線2の癖を除去するための部分である(図5、図6参照)。この癖取り部44は、送給される電線2の外周部に接触することにより該電線2の癖を除去可能に構成されている。ここでは、送給経路Rに沿う方向において、2つの癖取り部44が並んで支持部42に対して支持されている。もっとも、癖取り部44は、1つだけ又は3つ以上の複数設けられていてもよい。
【0040】
より具体的には、癖取り部44は、一対のローラー支持部45と、複数の癖取りローラー46とを有している。複数の癖取りローラー46は、回転軸を平行にする姿勢で、送給経路Rを挟んでそれぞれ一対のローラー支持部45に対して回転可能に支持されている。より具体的には、複数の癖取りローラー46は、各ローラー支持部45に対して、送給経路Rに沿う方向において互い違いに支持されている。ここでは、癖取りローラー46は、各ローラー支持部45に対して3つずつ支持されている。もっとも、癖取りローラー46は、各ローラー支持部45に対して3つずつ支持されている場合に限らず、少なくとも各ローラー支持部45に対して互い違いに1つ以上支持されていればよく、2つずつ又は4つ以上の数ずつ、さらには一方に3つ且つ他方に4つのようにローラー支持部45によって異なる数支持されていてもよい。
【0041】
癖取りローラー46は、外周部に、周方向に直交する断面視略V字状の溝を有する形状に形成されている。ここでは、癖取りローラー46は、外周部の溝の底部が、回転軸方向における中心に形成されている。そして、複数の癖取りローラー46の間を通る電線2は、溝の底部付近を通って送給される。もっとも、癖取りローラー46の形状は、上記形状に限られるものではなく、周方向に直交する断面視略U字状の溝を有する形状に形成されていてもよい。
【0042】
一対のローラー支持部45は、送給経路Rを挟んで接離移動可能に設けられている。より具体的には、一方のローラー支持部45が、シリンダ452により、他方のローラー支持部45に対して接離移動可能に支持されている。ここでは、シリンダ452は、エアシリンダであるが、油圧シリンダでよいことは言うまでもない。また、シリンダ242の代わりに、コイルばねを用いた押し付け機構とシリンダ又はモータを用いた直線駆動機構とを組み合わせた構成を採用してもよい。
【0043】
そして、一対のローラー支持部45が近接した状態では、送給経路Rを挟んで位置する各癖取りローラー46が、送給経路R上を通る電線2の外周部に対して接触する。ここで、各癖取りローラー46は、送給経路Rを通る電線2に接触することにより電線2の移動に伴って回転する。また、各癖取りローラー46の間を通る電線2は、送給経路Rを挟む方向において癖取りローラー46から押圧力を受けつつ、蛇行(ここでは僅かに蛇行)して送給される。なお、シリンダ452による複数の癖取りローラー46の電線2に対する押付力は、該シリンダ452に設けられた圧力調整弁により任意に調整して、各種電線2に対応した適性値に設定することができる。また、一対のローラー支持部45が離間した状態では、一方のローラー支持部45に支持されている各癖取りローラー46が、電線2の外周部に非接触となる。好ましくは、各ローラー支持部45に支持される癖取りローラー46が、送給経路Rを挟む方向において、電線2の外径より大きい間隔をあけた位置に配置されているとよい。すなわち、この位置は、各癖取りローラー46間の送給経路Rに電線2を配設しやすい位置である。
【0044】
ここでは、2つの癖取り部44は、それぞれ癖取りローラー46の回転軸が直交する姿勢で、支持部42に対して設置されている。すなわち、電線2は、各癖取り部44において、それぞれ直交する方向の押圧力を癖取りローラー46から受ける。
【0045】
経路案内部47は、調尺案内部32より上流側で電線2を送給経路R上に案内するための部分である。この経路案内部47は、電線2を挿通する貫通孔部を有し、その内周部が電線2の外周部に接触することにより該電線2の経路を規制する。そして、経路案内部47は、貫通孔部の内径が電線2の外径より大きく設定され、貫通孔部の内周部が送給経路Rを囲う位置に設けられている。また、経路案内部47は、送給経路Rに沿う方向において、調尺案内部32の通線部33の上流側端部に対して間隔をあけて設けられている。好ましくは、経路案内部47は、送給経路Rに沿う方向において、間隔をあけて複数設けられているとよい。
【0046】
ここでは、経路案内部47は、2つの癖取り部44のうち上流側の一方の両端部(送給経路Rに沿う方向の両端部)に設けられている。すなわち、経路案内部47は、癖取り部44を介して間接的に支持部42に対して支持されている。もっとも、経路案内部47は、支持部42に直接立設されていてもよいし、上記箇所とは別の箇所に、さらには1つ又は3つ以上の複数設けられていてもよい。
【0047】
以降、説明の便宜上、電線支持部材30に支持される電線2が通る経路について、調尺機構部20と直接関連せずに説明(待機位置にある電線支持部材30の説明を含む)する場合、該経路を支持経路と呼ぶことがある。
【0048】
移動機構部50は、複数(ここでは2つ)の電線支持部材30を、セット位置と待機位置との間で移動するための部分である。この移動機構部50は、2つの電線支持部材30を、送給経路Rに交差する方向(ここでは送給経路Rに直交する上下方向)及び送給経路Rに沿う方向に移動可能に構成されている。この移動機構部50は、差替駆動部52と、進退駆動部56とを有している。概略的には、移動機構部50は、差替駆動部52により、2つの電線支持部材30を、セット位置から上流側に退避した中継位置と2つの待機位置(上側待機位置及び下側待機位置)との間で上下方向に移動させると共に、進退駆動部56により、電線支持部材30をセット位置と中継位置との間で進退移動させる。
【0049】
図1及び図7に示すように、2つの電線支持部材30は、移動支持体60に対して支持されている。移動支持体60は、送給経路Rに沿う方向から見てコの字形(一辺全体が開口した矩形)に形成され、各対向片上に電線支持部材30が送給経路Rに沿う方向に移動可能に支持されている。ここでは、移動支持体60は、側方に向けて開口する姿勢で設けられ、上側の対向片上に一方の電線支持部材30(以下、上側の電線支持部材30)を支持すると共に、下側の対向片上(対向片間)に他方の電線支持部材30(以下、下側の電線支持部材30)を支持している。
【0050】
より具体的には、移動支持体60の各対向片上には、送給経路Rに沿う方向に延在する形状のガイドレール62が延設されている。このガイドレール62は、例えば、断面視矩形の長尺部材であり、長手方向に沿った両側面に長手方向に沿って延在する溝が形成された形状を採用することができる。ガイドレール62は、移動支持体60の各対向片上にネジ止め等により固定されるとよい。
【0051】
このガイドレール62には、走行部43が長手方向に沿って移動可能に嵌合されている。例えば、走行部43は、ガイドレール62に嵌合可能な凹部を有し、その対向する壁部の一部にガイドレール62の溝に嵌まり込む突部が形成されているとよい。そして、走行部43は、支持部42を支持する態様でガイドレール62に沿ってスライド移動することにより、送給経路Rに沿って移動する。
【0052】
ここでは、上側の電線支持部材30では、支持部42の底部に走行部43が設けられている(図7、図8参照)。そして、上側の電線支持部材30は、支持部42がガイドレール62に沿って移動されることにより、送給経路Rに沿った方向に移動される。なお、支持部42には、後述する進退駆動部56の進退部57の先端部が固定される。
【0053】
また、下側の電線支持部材30は、移動支持体60の一対の対向片間で一方の対向片上に支持されており、電線2のセット作業の作業性向上のため、該一対の対向片の内側から退出可能になっている。より具体的には、下側の電線支持部材30の支持部42は、移動支持体60に対して送給経路Rに沿った方向に移動可能に支持される中間支持部422に対して、送給経路Rに直交する方向(ここでは移動支持体の開口側と底側とを結ぶ方向すなわち図7の左右方向)に移動可能に支持されている(図7、図9参照)。
【0054】
中間支持部422は、板状の部材である。そして、中間支持部422の底部に走行部43が設けられている。なお、中間支持部422には、後述する進退駆動部56の進退部57の先端部が固定される。また、支持部42の底面には、送給経路Rに直交する方向に沿って延在する形状の走行レール421が延設されている。この走行レール421は、上記ガイドレール62と同様の形状を採用できる。一方、中間支持部422の上面には、走行レール421をスライド移動可能に支持するスライド支持部423が設けられている。このスライド支持部423は、走行レール421に対して、相対的にスライド移動可能に嵌合する形状に形成され、すなわち、上記走行部43と同様の形状を採用することができる。
【0055】
そして、下側の電線支持部材30は、中間支持部422がガイドレール62に沿って移動されることにより、送給経路Rに沿った方向に移動される。また、下側の電線支持部材30は、支持部42がスライド支持部423に対してスライド移動されることにより、移動支持体60の内外に移動される。なお、図7、図9に示すように、中間支持部422に対して支持部42を移動させるために、支持部42の側部に引出用取手48が設けられていてもよい。
【0056】
また、移動支持体60は、基部92に対して送給経路Rに直交する方向(ここでは上下方向)に移動可能に支持されている(図1参照)。より具体的には、移動支持体60は、基部92に固定された軸受け64に対して支持されたスライドシャフト66に対して支持されている。なお、移動支持体60は、上側の電線支持部材30が中継位置又はセット位置に配設される位置(上下方向において、調尺案内部32が調尺機構部20に干渉しない位置)で、下方への移動を制限されるとよい。例えば、図1に示すように、基部92に対して螺合されたボルト68をストッパーとして採用できる。
【0057】
差替駆動部52は、上記のように移動可能に支持される移動支持体60を、2つの電線支持部材30が中継位置に位置する位置と、各待機位置に位置する位置との間で移動させることが可能に構成されている。差替駆動部52としては、エアシリンダ、油圧シリンダ、モータを用いた直線駆動機構等(ここではエアシリンダ)を採用することができる。差替駆動部52は、基部92と移動支持体60との間に配設されている。そして、差替駆動部52は、上側の電線支持部材30が中継位置から上側の待機位置に移動、すなわち、下側の電線支持部材30が下側の待機位置から中継位置に移動する移動量分、移動支持体60を押し上げ移動可能に構成されている。
【0058】
進退駆動部56は、移動支持体60に対して移動可能に支持される電線支持部材30を、中継位置とセット位置との間で送給経路Rに沿う方向に移動させることが可能に構成されている(図8、図9参照)。進退駆動部56としては、エアシリンダ、油圧シリンダ、モータを用いた直線駆動機構等(ここではエアシリンダ)を採用することができる。進退駆動部56は、移動支持体60に対して支持され、進退部57の先端部が支持部42又は中間支持部422に対して直接的又は間接的に固定されている。ここでは、電線支持部材30は、進退駆動部56の進退部57が進出した状態で中継位置側に配設され、退避した状態でセット位置側に配設される。
【0059】
また、移動支持体60には、電線支持部材30より上流側で上流案内部67を支持する案内用支持片671が取り付けられている(図1参照)。案内用支持片671には、2つの電線支持部材30に対応して2つの上流案内部67が支持されている。より具体的には、上流案内部67は、電線2を挿通可能な貫通孔部を有し、その内周部が送給経路Rを囲う位置に設けられている。この上流案内部67は、送給経路Rに沿う方向において移動支持体60に対して一定位置に維持され、供給源から供給される電線2を初めに送給経路Rに案内する部分である。
【0060】
また、電線交換機構付き電線調尺装置10は、調尺機構部20、電線支持部材30及び移動機構部50の動作を制御可能な制御部96を備えている(図1参照)。制御部96は、図示省略のCPU、ROM及びRAM等を備える一般的なマイクロコンピュータにより構成されている。この制御部96は、調尺機構部20のシリンダ242及びモータ26、電線支持部材30の癖取り部44におけるシリンダ452、移動機構部50の差替駆動部52及び進退駆動部56それぞれに対して諸動作指令を付与可能に接続されている。そして、制御部96は、予め格納されたソフトウェアプログラム及び作業者操作用の入力部を通じて入力された諸指示に従って上記各部を総合的に制御する。入力部としては、各種動作用のスイッチを有する構成を採用することができる。
【0061】
電線2の調尺時には、制御部96は、調尺機構部20に対して、ROMに格納されている送給速度及び送給時間等の情報に基づいてモータ26を回転駆動する信号を付与する。
【0062】
電線2の交換時には、制御部96は、まず、調尺機構部20に対して、ローラー支持部24同士を離間させるようにシリンダ242を動作させる信号を付与する。また、制御部96は、移動機構部50に対して、セット位置にある電線支持部材30を中継位置に移動させると共に、該電線支持部材30を一方の待機位置に(他の電線支持部材30を他方の待機位置から中継位置に)移動させるように進退駆動部56及び差替駆動部52を動作させる信号を付与する。さらに、制御部96は、移動機構部50に対して、中継位置に移動された電線支持部材30をセット位置に移動させるように進退駆動部56を動作させる信号を付与する。
【0063】
電線2を電線支持部材30に対してセットする際には、制御部96は、各癖取り部44に対して、ローラー支持部45同士を離間させるように各シリンダ452を動作させる信号を付与する。そして、電線2が支持経路にセットされると、入力部に与えられる指示等に応じて、制御部96は、各癖取り部44に対して、ローラー支持部45同士を近接させるように各シリンダ452を動作させる信号を付与する。
【0064】
次に、電線交換機構付き電線調尺装置10の動作について説明する。
【0065】
まず、一方の電線支持部材30がセット位置に配設された状態で、電線2を調尺する動作について説明する。なお、初期状態として、上側の電線支持部材30がセット位置に配設された状態にあるものとする(図1参照)。このとき、調尺機構部20は、シリンダ242により対のローラー支持部24が近接した位置に維持され、対の送給ローラー22が送給経路R上の電線2を挟んだ状態にある。また、各癖取り部44は、各シリンダ452により対のローラー支持部45が近接した位置に維持され、複数の癖取りローラー46が送給経路R上の電線2の外周部に対して送給経路Rを挟む両側から接触した状態にある。
【0066】
モータ26が回転駆動されると、伝達部27を介して送給ローラー22が電線2を下流側に送給する向きに回転される。これにより、電線2が調尺されて設定寸法ずつ下流側に送給される。より具体的には、電線2は、上流案内部67、各経路案内部47及び各癖取り部44を通過し、さらに通線部32及び下流案内部34を通過して、下流側に送給される。すなわち、電線2は、上流案内部67、各経路案内部47を通過することにより、送給経路R上に案内される。また、電線2は、各癖取り部44の複数の癖取りローラー46間を通過することにより、該複数の癖取りローラー46によって各方向に押圧力を受けて癖を除去される。さらに、電線2は、通線部33を通過することにより対の送給ローラー22間でより正確に送給経路R上に案内され、下流案内部34を通過することによりばたつくのを抑制して下流側に送給される。
【0067】
そして、ロット単位分の電線2を送給し終えると、調尺機構部20が停止される。
【0068】
次に、セット位置の電線支持部材30を差し替えて、電線2を交換する動作について説明する。
【0069】
まず、調尺機構部20において、シリンダ242によりローラー支持部24が離間移動され、対の送給ローラー22が電線2を解放した状態となる(図2の2点鎖線参照)。この状態から、セット位置にある上側の電線支持部材30を待機位置に移動させる(図10参照)。この動作は、進退駆動部56により行われる。より具体的には、進退駆動部56は、進退部57が進出するように動作し、該進退部57の先端部に固定された支持部42を移動支持体60のガイドレール62に沿って(送給経路Rに沿う方向に沿って)上流側に移動させる。
【0070】
そして、中継位置に移動された上側の電線支持部材30を上側の待機位置に移動させる(図11参照)。換言すると、下側の待機位置に配置された下側の電線支持部材30を中継位置に移動させる。この動作は、差替駆動部52により行われる。より具体的には、差替駆動部52は、進退部が進出するように動作し、移動支持体60を上方に押し上げる。さらに、中継位置に移動された下側の電線支持部材30をセット位置に移動させる(図11参照)。この動作は、進退駆動部56により行われる。より具体的には、進退駆動部56は、進退部57が退避するように動作し、該進退部57の先端部に固定された中間支持部422を移動支持体60のガイドレール62に沿って下流側に移動させる。
【0071】
下側の電線支持部材30がセット位置に移動されると、シリンダ242によりローラー支持部24が近接移動され、対の送給ローラー22が電線2を挟みこんだ状態となる(図2の実線参照)。
【0072】
次に、待機位置の電線支持部材30に電線2をセットする作業について説明する。
【0073】
まず、待機位置に移動された上側の電線支持部材30の各癖取り部44における対のローラー支持部45が、各シリンダ452により離間するように駆動される(図5、図6の2点鎖線参照)。これにより、支持経路上の電線2に対する癖取りローラー46による押圧状態が解除される。
【0074】
この状態から、作業者は、支持経路上から電線2を上流側に引き出して、別の供給源に支持される電線2を支持経路上に通して上側の電線支持部材30にセットする。より具体的には、作業者は、電線2を、上流案内部67及び上流側の経路案内部47に通し、上流側の癖取り部44の複数の癖取りローラー46間を通すと共に下流側の経路案内部47に通し、下流側の癖取り部44の複数の癖取りローラー46の間に通す。さらに、作業者は、電線2を、通線部33に通すと共に下流案内部34に通す。
【0075】
電線支持部材30に電線2をセット後、シリンダ452を動作させるスイッチ(制御部96に接続される入力部のスイッチ等)を押すことにより、各癖取り部44におけるローラー支持部45が近接するように駆動される(図5、図6の実線参照)。これにより、各癖取り部44の複数の癖取りローラー46が、送給経路R上の電線2の外周部に対して接触した状態となる。
【0076】
なお、下側の電線支持部材30に電線2をセットする際には、支持部42に設けられた引出用取手48を引出操作して、該下側の電線支持部材30を移動支持体60の内側の位置から外側に引き出した状態で作業を行うとよい(図7の2点鎖線参照)。
【0077】
上記構成に係る電線交換機構付き電線調尺装置10によると、移動機構部50によりセット位置と待機位置との間で移動可能にされた電線支持部材30が、調尺機構部20によって送給される電線2を下流側の一定位置に案内する下流案内部34を有しており、この下流案内部34は、前記電線支持部材30がセット位置に配設された状態で、調尺機構部20より下流側に配設されるため、調尺機構部20において電線2を下流側へ案内する下流案内部34が設けられる場合と比較して、電線支持部材30をセット位置から待機位置に移動させる際に、電線2を下流案内部34から引き出す作業及び構成を省略でき、調尺対象となる電線2の交換をより簡易にすることができる。
【0078】
また、電線支持部材30が、支持した電線2の外周部に接触して電線2の癖を除去可能な癖取り部44を有する構成によると、電線2の交換時に癖取り部44に対して電線2をセットする工程を省略でき、電線2の交換を効率化することができる。
【0079】
また、移動機構部50が、複数の電線支持部材30を並列に支持する移動支持体60を送給経路Rに交差する方向に移動可能に支持して、複数の電線支持部材30を待機位置と中継位置との間で差し替える差替駆動部52と、電線支持部材30を、セット位置と中継位置との間で送給経路Rに沿う方向に移動可能な進退駆動部56とを有している構成によると、移動機構部50における電線支持部材30の移動動作をより簡単にすることができる。
【0080】
また、電線支持部材30が、本体部41と、本体部41に対して取り換え可能に保持された下流案内部34を含む取換部31とを有している構成によると、電線2の直径に応じた下流案内部34を用いることができ、調尺対象となる電線2が異なる種類の電線2に交換される場合にも、該電線2を下流側に向けてばたつくのをより確実に抑制して送給することができる。
【0081】
これまで、移動機構部50について、移動支持体60が2つの電線支持部材30を上下に並べて支持し、該移動支持体60を差替駆動部52により上下方向に移動させる例で説明してきたが、これに限られるものではない。例えば、例えば、移動機構部50は、移動支持体が2つの電線支持部材30を左右(水平方向)に並べて支持し、該移動支持体を差替駆動部により左右方向に移動させる構成であってもよい。さらに、差替駆動部は、上下方向及び左右方向に対して傾斜する斜め方向に沿って移動支持体60を移動させるように設けられていてもよい。
【0082】
また、移動機構部50について、複数の電線支持部材30が移動支持体60に支持され、移動支持体60が移動される構成を例に説明してきたが、移動機構部50の構成はこれに限られるものではない。例えば、セット位置及び待機位置に複数の電線支持部材30を支持可能な支持台がそれぞれ設けられ、移動機構部は、複数の電線支持部材30を選択的に保持してセット位置と待機位置との間で対象の電線支持部材を移動させるものであってもよい。
【0083】
また、電線支持部材30が2つ設けられた例で説明してきたが、電線支持部材30は3つ以上の複数設けられてもよい。そして、電線2の交換時には、複数の電線支持部材30のうち次の調尺対象となる電線2が支持された電線支持部材30を、中継位置、セット位置の順に移動させればよい。
【0084】
調尺機構部は、送給機構部に加えて癖取り部を含む構成であってもよい。すなわち、常に送給経路Rを挟んで癖取りローラーが配設される位置に癖取り部が配設され、電線支持部材30の癖取り部44が省略される。なお、電線支持部材30において癖取り部44が省略される場合、経路案内部47は支持部42に立設されているとよい。
【0085】
また、これまで、送給機構部としての調尺機構部20が電線2を調尺して送給する構成について説明してきたが、調尺機構部は、調尺動作と送給動作とをそれぞれ別々に行う機構を有した構成であってもよい。
【0086】
これまで、電線支持部材30について、本体部41に対して取換部31を取り換え可能にした構成を説明したが、下流案内部34のみが取り換え可能な構成であってもよい。
【符号の説明】
【0087】
2 電線
10 電線調尺装置
20 調尺機構部
30 電線支持部材
31 取換部
32 調尺案内部
34 下流案内部
41 本体部
44 癖取り部
50 移動機構部
52 差替駆動部
56 進退駆動部
60 移動支持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調尺対象である電線を交換可能な電線交換機構付き電線調尺装置であって、
前記電線を送給経路上で設計寸法ずつ調尺して送給可能な調尺機構部と、
前記電線の一端側部分を前記送給経路に沿った形状に支持し、前記調尺機構部によって送給される前記電線を下流側の電線経路に案内する下流案内部を有する複数の電線支持部材と、
前記複数の電線支持部材を、支持した前記電線を前記送給経路上に配設するセット位置と、前記セット位置とは異なる待機位置との間で移動可能な移動機構部と、
を備え、
前記下流案内部は、前記電線支持部材が前記セット位置に配設された状態で、前記調尺機構部より下流側の位置に配設される、電線交換機構付き電線調尺装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電線交換機構付き電線調尺装置であって、
前記電線支持部材は、支持した前記電線の外周部に接触して前記電線の癖を除去可能な癖取り部を有する、電線交換機構付き電線調尺装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電線交換機構付き電線調尺装置であって、
前記移動機構部は、
前記複数の電線支持部材を並列に支持する移動支持体と、
前記移動支持体を前記送給経路に交差する方向に移動可能に支持して、前記複数の電線支持部材を前記待機位置と前記セット位置の上流側の中継位置との間で差し替える差替駆動部と、
前記電線支持部材を、前記セット位置と前記中継位置との間で前記送給経路に沿う方向に移動可能な進退駆動部と、
を有する、電線交換機構付き電線調尺装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の電線交換機構付き電線調尺装置であって、
前記電線支持部材は、本体部と、前記本体部に対して取り換え可能に保持された前記下流案内部を含む取換部とを有している、電線交換機構付き電線調尺装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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