説明

電線位置決め治具、圧着機および電線位置決め方法

【課題】圧着端子に電気絶縁処理を施しても電線の芯線の先端部が電気絶縁処理部分を突き破ってしまうことのないように電線の芯線出代寸法を短く規制することができ、圧着端子において電気絶縁性を確保できる電線位置決め治具を提供する。
【解決手段】電線位置決め治具10は、第1電線としての枝線201,202,203の被覆230を皮剥ぎして露出させた第1芯線220と、第2電線である幹線300の被覆240を皮剥ぎして露出させた第2芯線250とを、圧着端子100に対して位置決めし、この電線位置決め治具10は、枝線201,202,203の第1芯線220の先端部225を突き当てて第1芯線220の先端部225の位置を揃える第1電線突き当て面51を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線位置決め治具、圧着機および電線位置決め方法に関し、特に電線の幹線の芯線と枝線の芯線を突き当てて位置決めすることで、芯線の先端部が電気絶縁処理部分を突き破ってしまうのを防ぐことができる電線位置決め治具、圧着機および電線位置決め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電線の幹線と複数本の枝線が圧着端子を用いて電気的に接続される場合には、次のように行っている。幹線の中間部分の被覆を皮剥ぎして幹線の芯線を露出させ、枝線の端部の被覆を皮剥ぎして枝線の芯線を露出させる。そして、幹線の中間部分の被覆の皮剥ぎ端部と、各枝線の被覆の皮剥ぎ端部だけが、ストッパーに対して突き当てられることで、幹線の中間部分の露出した芯線と各枝線の露出した芯線を圧着端子に対して位置決めされる。(例えば、特許文献1の図4を参照)。
【特許文献1】実開平6−5175号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、各枝線の被覆の皮剥ぎ部分の寸法精度が悪いと各枝線の露出された芯線の長さが規定の値にはならず、各枝線の芯線出代寸法(圧着端子からの芯線先端部の飛び出し長さ)が規制できなくなる。このため、各枝線の芯線出代寸法が長いと、枝線を圧着端子により圧着すると各枝線の芯線の先端部が圧着端子からはみ出てしまうおそれがある。従って、幹線の芯線と各枝線の芯線を圧着端子により圧着後に、圧着端子に対してテープやチューブを用いて電気絶縁処理をすると、各枝線の芯線の先端部が電気絶縁処理部分を突き破ってしまうという不都合が生じることから、幹線の芯線と複数本の枝線の芯線が圧着端子において電気絶縁不良を生じるおそれがある。
そこで、本発明は上記課題を解消するために、圧着端子に電気絶縁処理を施しても電線の芯線の先端部が電気絶縁処理部分を突き破ってしまうことのないように電線の芯線出代寸法を短く規制することができ、圧着端子において電気絶縁性を確保できる電線位置決め治具、圧着機および電線位置決め方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解消するために、本発明の電線位置決め治具は、第1電線の被覆を皮剥ぎして露出させた第1芯線と第2電線の被覆を皮剥ぎして露出させた第2芯線とを、圧着端子に対して位置決めするための電線位置決め治具であって、
前記第1電線の前記第1芯線の先端部を突き当てて前記第1芯線の先端部の位置を揃える第1電線突き当て面を有することを特徴とする。
本発明の電線位置決め治具は、好ましくは前記第2電線の前記第2芯線の先端部を突き当てる第2電線突き当て面を有することを特徴とする。
本発明の電線位置決め治具は、好ましくは前記第2電線の前記被覆の中間部分が皮剥ぎされて前記第2芯線が露出されており前記第2電線の皮剥ぎされた前記被覆の端部を突き当てる第3電線突き当て面を有することを特徴とする。
本発明の電線位置決め治具は、好ましくは前記圧着端子をキャリア部分から切断するスライドカッターの収容部に着脱可能に位置決めして配置されることを特徴とする。
本発明の電線位置決め治具は、好ましくは前記第1電線は複数本の枝線であり、前記第2電線は幹線であることを特徴とする。
【0005】
本発明の圧着機は、第1電線の被覆を皮剥ぎして露出させた第1芯線と第2電線の被覆を皮剥ぎして露出させた第2芯線とを、圧着端子に対して位置決めするための電線位置決め治具を備え、前記圧着端子に対して前記第1芯線と前記第2芯線を圧着する圧着機であって、
前記第1電線の前記第1芯線の先端部を突き当てて前記第1芯線の先端部の位置を揃える第1電線突き当て面を有する電線位置決め治具を備えることを特徴とする。
本発明の圧着機は、好ましくは前記第2電線の前記第2芯線の先端部を突き当てる第2電線突き当て面を有することを特徴とする。
本発明の圧着機は、好ましくは前記第2電線の前記被覆の中間部分が皮剥ぎされて前記第2芯線が露出されており前記第2電線の皮剥ぎされた前記被覆の端部を突き当てる第3電線突き当て面を有することを特徴とする。
【0006】
本発明の圧着機は、好ましくは前記圧着端子を送るための送り部材であって、前記電線位置決め治具が連結されており前記電線位置決め治具を前記圧着端子から退避させる前記送り部材を備えることを特徴とする。
本発明の圧着機は、好ましくは前記電線位置決め治具は、前記圧着端子をキャリア部分から切断するスライドカッターの収容部に着脱可能に位置決めして配置されることを特徴とする。
本発明の圧着機は、好ましくは前記第1電線は複数本の枝線であり、前記第2電線は幹線であることを特徴とする。
本発明の電線位置決め方法は、第1電線の被覆を皮剥ぎして露出させた第1芯線と第2電線の被覆を皮剥ぎして露出させた第2芯線とを、電線位置決め治具を用いて圧着端子に対して位置決めするための電線位置決め方法であって、
前記第1電線の前記第1芯線の先端部を、前記電線位置決め治具の第1電線突き当て面に突き当てることで、前記第1芯線の先端部の位置を揃えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、圧着端子に電気絶縁処理を施しても電線の芯線の先端部が電気絶縁処理部分を突き破ってしまうことのないように電線の芯線出代寸法を短く規制することができ、圧着端子において電気絶縁性を確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の電線位置決め治具の好ましい実施形態を備えるスプライスジョイント圧着機(以下、圧着機という)の一例を示す斜視図である。図2は、図1の圧着機をD方向から示す斜視図である。
まず、図1と図2を参照して、スプライスジョイント圧着機10の構造について簡単に説明する。
【0009】
図1と図2に示す圧着機10は、電線である幹線の芯線と電線である枝線の芯線を圧着端子100に対して位置決めして、圧着端子100を加圧することで幹線の芯線と枝線の芯線の電気的なジョイントを製造する。
圧着機10は、ベース11、シャンク12、ガイド13、送りツメ14、送りカム15、スプリング16、クランパー17、スライドカッター20、アンビル21、電線位置決め治具30などを有している。ガイド13はベース11の上に配置され、シャンク12は電線位置決め治具30とスライドカッター20およびアンビル21の上部に配置されている。
【0010】
図2に示すように、送りツメ14は圧着端子100を送るための送り部材の一例である。送りツメ14の途中部分は、送りカム15の下部に対してシャフト25により連結されており、送りツメ14の後端部22と送りカム15の上端部の間にはスプリング16が掛けてあり、送りツメ14の先端部23はガイド13側に向けて付勢されている。
図2に示すように、送りシャフト26Cを回転することで、送りカム15は回転軸26Bを中心にしてJ方向に揺動可能である。送りツメ14の先端部23は、例えば圧着端子のキャリア部分に形成されている孔にはまり込み、送りカム15が揺動することで送りツメ14がT方向に移動でき、圧着端子のキャリア部分はガイド13に沿ってT方向に向けて所定ストローク分送ることができる。
【0011】
図2に示すように、シャンク12はクランパー17を保持しており、アンビル21の上には図1に示す圧着端子100が着脱可能に置かれる。シャンク12がZ1方向に下がることにより、クランパー17はこの圧着端子100を圧着する。
【0012】
図1と図2に示すように、電線位置決め治具30は、治具先端部31と連結部32を有している。連結部32の一端部は治具先端部31に接続されており、連結部32の他端部は送りツメ14のシャフト25に連結されている。従って、電線位置決め治具30は、送りツメ14のS方向への後退移動にともなってS方向に所定ストローク分退避可能であるので、電線位置決め治具30の治具先端部31は、スライドカッター20に位置された状態からS方向に沿って退避することができる。
【0013】
次に、図3を参照して、上記電線位置決め治具30の形状例を説明する。
図3に示す電線位置決め治具30は金属またはプラスチックにより作られており、電線位置決め治具30の連結部32の端部は、シャフト25を通すための孔26を有している。連結部32は断面矩形状の部材であり、図1と図2に示す送りツメ14の形状に合わせるために連結部32の途中部分はわずかに角度を有する屈曲部33になっている。
【0014】
図3に示すように、電線位置決め治具30の治具先端部31は、第1突出部41と第2突出部42を有する。第1突出部41は、連結部32からT方向に沿って突出して形成されている。第2突出部42は、連結部32からT方向とは直交するW方向に沿って突出して形成されている。第1突出部41と第2突出部42は、Z方向に沿って段差Nだけ位置がずれている。なお、Z方向はW方向とT方向に対して直交する方向である。
【0015】
図3に示すように、治具先端部31の第1突出部41には、第1電線突き当て面51が形成されている。この第1電線突き当て面51には、後で説明する第1電線としての複数の枝線の芯線の先端部が突き当てられる。第1電線突き当て面51は、T方向とZ方向で形成される平面である。
【0016】
治具先端部31の第2突出部42は、図3のF方向から見てほぼL字型に形成されている。第2突出部42には、位置決め部分53が形成されており、この位置決め部分53の内側には第2電線突き当て面52が形成されており、外側には第3電線突き当て面52Bが形成されている。この第2電線突き当て面52には、後で説明する第2電線としての幹線の芯線の先端部が突き当てられる。第2電線突き当て面52は、同様にT方向とZ方向で形成される平面であるが、第1電線突き当て面51と第2電線突き当て面52は、W方向に関して距離Lだけ離れておりしかもZ方向に関して段差Nだけ離れている。
【0017】
第3電線突き当て面52Bには、後で説明する第2電線としての幹線の中間部分の皮剥ぎ端部が突き当てられる。第3電線突き当て面52Bは、同様にT方向とZ方向で形成される平面である。第1電線突き当て面51と第2電線突き当て面52と第3電線突き当て面52Bは、平行である。
【0018】
次に、図4を参照して、上記スライドカッター20およびアンビル21の形状例を説明する。
図4に示すスライドカッター20は、ほぼ直方体形状を有しており、上部59、基部60、収容部61、溝部62を有している。溝部62は、T方向に沿って形成されている。収容部61は、図5に示すように電線位置決め治具30の治具先端部31の一部分を着脱可能に収容して位置決めする。すなわち、図3に示す第1突出部41の下部41Bと第2突出部42の下部42Bが、図4に示す収容部61内にはめ込まれるとともに、図3に示す第1突出部41の先端部分41Cが、図4に示す収容部61の突き当て内面61B、61Cに対して突き当てられる。
【0019】
これにより、図3に示す電線位置決め治具30の治具先端部31は、図4のスライドカッター20の上部59に対して図4のF方向から容易にはめ込んで、W方向、T方向に関して位置決めして固定できる。スライドカッター20の溝部62には、図5に示す圧着端子100のキャリア部分101がT方向に沿って挿入される。これにより、圧着端子100のキャリア部分101はスライドカッター20に対して位置決めできる。
一方、図4に示すように、アンビル21は、直方形状の基部70と受け部71を有する。この受け部71は、図5に示すように圧着端子100を受けて保持するために円弧状に形成されている。
【0020】
次に、上述した電線位置決め治具30を用いて、図6に示す幹線300と複数の枝線201,292,203を圧着端子100に対して位置決めして圧着端子100により電気的に機械的に接続をする動作例について説明する。
図6に示す例は、幹線300と各枝線201,202,203は、それぞれ芯線の先端部を突き合わせることで位置決めされる突き合わせジョイントタイプの例である。
まず、図4に示すスライドカッター20の収容部61には、図5に示すように電線位置決め治具30の治具先端部31が配置されて位置決めされる。一方、図4に示すアンビル21の受け部72には、図5に示すように圧着端子100が配置されて位置決めされる。
【0021】
この際には、図5に示すように圧着端子100のキャリア部分101が、スライドカッター20の溝部62内に配置される。圧着端子100の断面はほぼ半円弧状に形成されており、圧着端子100の開口側はZ2方向に沿って治具先端部31の第2突出部42に向いていて、圧着端子100は第1電線突き当て面51と第2電線突き当て面52と第3電線突き当て面52Bの付近に位置されている。このように、電線位置決め治具30の治具先端部31はスライドカッター20にセットされ、圧着端子100はアンビル21の受け部72にセットされる。
【0022】
次に、図6に示すように、作業者は、例えば3本の枝線201,202,203と1本の幹線300を用意する。枝線201,202,203の被覆230の端部は皮剥ぎされており、それぞれ芯線220が露出されている。枝線201,202,203の芯線220の芯線寸法はGで表している。同様にして、幹線300の被覆240の端部は皮剥ぎされており、芯線250が露出されている。幹線300の芯線250の芯線寸法はHで表している。
【0023】
図6に示すように、作業者は、3本の枝線201,202,203を手で持ってZ1方向に沿って配列した状態で圧着治具100内に入れる。そして、作業者は、例えば1本の幹線300を手でもってZ1方向に沿って入れる。これにより、図7に示すように、1本の幹線300と3本の枝線201,202,203は、Z1方向に積み重ねられた状態になる。1本の幹線300の芯線250の先端部270の向きと3本の枝線201,202,203の芯線220の先端部225の向きは、W方向に関して反対方向である。
【0024】
図8は、図7に示すF方向から見た枝線201,202,203と幹線300の位置決め状態を示す図である。図9は、図7に示すK方向から見た枝線201,202,203と幹線300の位置決め状態を示す図である。
【0025】
図7,図8及び図9に示すように、作業者は、3本の枝線201,202,203の芯線220の先端部225を、第1電線突き当て面51に対して突き当てて、3本の枝線201,202,203の芯線220の先端部225のW方向に関する位置決めを行う。また、作業者は、幹線300の芯線250の先端部270を、第2電線突き当て面52に対して突き当てて、幹線300の芯線250の先端部270のW方向に関する位置決めを行う。
【0026】
これにより、各枝線201,202,203の芯線220の先端部225は、第1電線突き当て面51により位置を揃えることができる。そして、幹線300の芯線250の先端部270も第2電線突き当て面52により位置を揃えることができる。
【0027】
その後、図10(A)に示すように、シャンク12がZ1方向に下がることによりクランパー17が圧着端子100を圧着する。この圧着端子100の圧着動作に移る際には、図1と図2の送りカム15が動作して送りツメ14に連動して電線位置決め治具30がS方向に後退する。スライドカッター20が圧着端子100のキャリア部分101をカットする。
【0028】
シャンク12が下死点まで下がると、圧着端子100は図10(B)に示すように圧着完了となるので、シャンク12は上昇する。
そして、図2の送りツメ14が、T方向に移動して次に圧着するための新たな圧着端子100をアンビル21の受け部72に送り出す。送りツメ14が新たな圧着端子100をアンビル21の受け部72に送り出すと同時に、電線位置決め治具30の治具先端部31はスライドカッター20側に位置決めされる。
【0029】
図11は、複数の圧着端子100とキャリア部分101の一例を示している。キャリア部分101には各圧着端子100に対応して孔199が形成されており、送りツメ14の先端部23がこの孔199にはまり込んでT方向に移動することで、圧着端子100はアンビル21の受け部72に送り出して位置決めできるようになっている。
【0030】
図1〜図11に示す本発明の実施形態では、電線位置決め治具10は、第1電線としての枝線201,202,203の被覆230を皮剥ぎして露出させた第1芯線220と、第2電線である幹線300の被覆240を皮剥ぎして露出させた第2芯線250とを、圧着端子100に対して位置決めする。この電線位置決め治具10は、枝線201,202,203の第1芯線220の先端部225を突き当てて第1芯線220の先端部225の位置を揃える第1電線突き当て面51を有する。これにより、枝線201,202,203の第1芯線220の先端部225は、第1電線突き当て面51を用いて容易にかつ確実に位置決めすることができる。従って、全ての枝線201,202,203の圧着位置は、均一にすることができる。
【0031】
しかも、圧着端子100に対してチューブやテープなどの電気絶縁処理を施しても、枝線201,202,203の第1芯線220の先端部225が電気絶縁処理部分を突き破ってしまうことがない。このため、枝線201,202,203の第1芯線220の芯線出代寸法(圧着端子100からの先端部225の飛び出し長さ)を短く規制することができ、第1芯線220の先端部225が圧着端子100から飛び出さないので、圧着端子100における電気絶縁性を確保できる。
【0032】
また、この電線位置決め治具10は、第2電線である幹線300の第2芯線250の先端部270を突き当てる第2電線突き当て面52を有する。これにより、圧着端子100に対してチューブやテープなどの電気絶縁処理を施しても、幹線300の第2芯線250の先端部270が電気絶縁処理部分を突き破ってしまうことがない。このため、幹線300の第2芯線250の先端部270は、第2電線突き当て面52を用いて容易にかつ確実に位置決めすることができる。従って、全ての幹線300と枝線201,202,203の圧着位置は、均一にすることができる。
【0033】
しかも、幹線300の第2芯線250の芯線出代寸法(圧着端子100からの先端部270の飛び出し長さ)を短く規制することができ、幹線300の第2芯線250の先端部270が圧着端子100から飛び出さないので、圧着端子100における電気絶縁性を確保できる。
【0034】
さらに、電線位置決め治具10は、圧着端子100を送るための送り部材としての送りツメ14と接続されている連結部32を備え、電線位置決め治具10は、圧着端子100を圧着する際に送りツメ14の動きに連動して、圧着端子100から退避されるようになっている。これにより、圧着端子100が圧着される際には、圧着端子100を送るための送りツメ14のS方向への後退動作と連動して、電線位置決め治具10を圧着端子100側から退避させることができる。従って、電線位置決め治具10が残ってしまうことが無く、電線位置決め治具10が圧着端子100と干渉したり、電線位置決め治具10が電線に干渉して損傷を与えたり変形などを与えるといった悪影響を防ぐことができる。
また、電線位置決め治具10は、圧着端子100をキャリア部分101から切断するスライドカッター20の収容部61に着脱可能に位置決めして配置される。これにより、電線位置決め治具10は、確実に位置決めすることができる。
【0035】
次に、本発明の電線位置決め治具30が使用できる幹線の別の例を説明する。
図6と図7に示した幹線300では、幹線300の被覆240の端部が皮剥ぎされて芯線250が露出され、芯線250の先端部270が第2突き当て面52に突き当てられている。すなわち、幹線300と各枝線201,202,203はそれぞれ芯線の先端部を突き合わせることで位置決めされる突き合わせジョイントタイプの例である。
【0036】
これに対して、図12と図13に示す別の例では、幹線300の中間部分400の被覆240が皮剥ぎされている中間ジョイントタイプの例である。従って、この中間部分400には芯線250が露出されていて、被覆240の2つの皮剥ぎ端部390,391を有する。そして、幹線300の一方の皮剥ぎ端部391が、第3突き合わせ面52Bに突き当てることで、幹線300は第3突き合わせ面52Bに対して位置決めされている。
【0037】
この第3突き合わせ面52Bは、位置決め部分53に形成されており、図6と図7に示した第2突き合わせ面52とは、反対側に位置している。図12と図13に示す実施形態においても、図1〜図11に示す実施形態と同様に、各枝線201,202,203の芯線220の先端部225は、第1突き合わせ面51に対して突き当てることで位置決めされている。
【0038】
図12と図13に示す本発明の実施形態の中間ジョイントタイプでは、第2電線である幹線300の被覆240の中間部分400が皮剥ぎされて第2芯線250が露出されている。電線位置決め治具10は、この幹線300の皮剥ぎされた被覆240の皮剥ぎ端部391を突き当てる第3電線突き当て面52Bを有する。これにより、中間ジョイントタイプであっても、枝線201,202,203の第1芯線220の先端部225は、第1電線突き当て面51を用いて容易にかつ確実に位置決めすることができる。従って、全ての枝線201,202,203の圧着位置は、均一にすることができる。
【0039】
しかも、圧着端子100に対してチューブやテープなどの電気絶縁処理を施しても、枝線201,202,203の第1芯線220の先端部225が電気絶縁処理部分を突き破ってしまうことがない。このため、枝線201,202,203の第1芯線220の芯線出代寸法(圧着端子100からの先端部225の飛び出し長さ)を短く規制することができ、第1芯線220の先端部225が圧着端子100から飛び出さないので、圧着端子100における電気絶縁性を確保できる。従って、全ての幹線300と枝線201,202,203の圧着位置は、均一にすることができる。
【0040】
本発明の実施形態の電線位置決め治具30は、第1電線である第1枝線201,202,203の被覆230を皮剥ぎして露出させた第1芯線220と、第2電線である幹線300の被覆240を皮剥ぎして露出させた第2芯線250とを、圧着端子100に対して位置決めする。この電線位置決め治具30は、第1枝線201,202,203の第1芯線220の先端部225を突き当てて第1芯線220の先端部225の位置を揃える第1電線突き当て面51を有する。
【0041】
これにより、第1芯線220の先端部225は、第1電線突き当て面51を用いて容易にかつ確実に位置決めすることができ、全ての枝線201,202,203の圧着位置は、均一にすることができる。圧着端子100に対してチューブやテープなどの電気絶縁処理を施しても、第1芯線220の先端部225が電気絶縁処理部分を突き破ってしまうことがない。このため、第1芯線220の芯線出代寸法(圧着端子100からの先端部225の飛び出し長さ)を短く規制することができ、圧着端子100における電気絶縁性を確保できる。
【0042】
電線位置決め治具30は、第2電線である幹線300の第2芯線250の先端部270を突き当てる第2電線突き当て面52を有する。これにより、第2芯線250の先端部270は、第2電線突き当て面52を用いて容易にかつ確実に位置決めすることができ、幹線300と全ての枝線201,202,203の圧着位置は、均一にすることができる。圧着端子100に対してチューブやテープなどの電気絶縁処理を施しても、第1芯線220の先端部225と第2芯線250の先端部270が電気絶縁処理部分を突き破ってしまうことがない。このため、第1芯線220の芯線出代寸法(圧着端子100からの先端部225の飛び出し長さ)と第2芯線250の芯線出代寸法を短く規制することができ、圧着端子100における電気絶縁性を確保できる。
【0043】
電線位置決め治具30は、第2電線としての幹線300の被覆240の中間部分が皮剥ぎされて第2芯線250が露出されており、皮剥ぎされた被覆240の皮剥ぎ端部391を突き当てる第3電線突き当て面52Bを有する。これにより、幹線300の被覆の中間位置が皮剥ぎされる中間ジョイント型のものであっても、幹線300の第2芯線250と全ての枝線201,202,203の圧着位置は、均一にすることができる。
【0044】
電線位置決め治具30は、圧着端子100を送るための送り部材としての送りツメ14と接続されている連結部32を備え、圧着端子100を圧着する際に送りツメ14の動きに連動して、圧着端子100から退避される。これにより、電線位置決め治具10が残ってしまうことが無く、電線位置決め治具10が圧着端子100と干渉したり、電線位置決め治具10が電線に干渉して損傷を与えたり変形などを与えるといった悪影響を防ぐことができる。
【0045】
電線位置決め治具30は、圧着端子100をキャリア部分101から切断するスライドカッター20の収容部61に着脱可能に位置決めして配置される。これにより、電線位置決め治具30はスライドカッターを用いて着脱可能に位置決めをすることができる。
【0046】
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されず種々の変形例を採用できる。
例えば、第1電線としての枝線は図示例では3本であるが、これに限らず1本、2本あるいは4本以上用いても良い。また、第2電線としての幹線(本線ともいう)は図示例では1本であるが、これに限らず2本以上用いても良い。
【0047】
図示の実施形態では、幹線300と複数本の枝線201,202,203が上下方向であるZ方向にほぼ配列されているが、これに限らず例えば枝線はT方向に沿って配列されていても良い。いずれにしても、複数の枝線の芯線の先端部が、第1突き当て面に対して突き当てられれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の電線位置決め治具の好ましい実施形態を備えるスプライスジョイント圧着機の一例を示す斜視図である。
【図2】図1の圧着機をD方向から示す斜視図である。
【図3】電線位置決め治具の形状例を示す斜視図である。
【図4】スライドカッターとアンビルの形状例を示す図である。
【図5】スライドカッターに電線位置決め治具がセットされアンビルに圧着端子がセットされた状態を示す斜視図である。
【図6】幹線と枝線が配置される前の状態を示す斜視図である。
【図7】幹線と枝線が配置された状態を示す斜視図である。
【図8】図7をF方向から見た平面図である。
【図9】図7をK方向から見た側面図である。
【図10】圧着端子が圧着される前と後の状態を示す図である。
【図11】圧着端子とキャリア部分の形状例を示す斜視図である。
【図12】本発明の別の例を示す図である。
【図13】図12のK方向から見た側面図である。
【符号の説明】
【0049】
10 圧着機
12 シャンク
14 送りツメ(送り部材)
17 クランパー
20 スライドカッター
21 アンビル
30 電線位置決め治具
31 治具先端部
32 連結部
51 第1電線突き当て面
52 第2電線突き当て面
52B 第3電線突き当て面
100 圧着端子
101 キャリア部分
201,202,203 枝線(第1電線)
220 枝線の芯線(第1芯線)
225 芯線の先端部
230,240 被覆
250 幹線の芯線(第2芯線)
270 芯線の先端部
300 幹線(第2電線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電線の被覆を皮剥ぎして露出させた第1芯線と第2電線の被覆を皮剥ぎして露出させた第2芯線とを、圧着端子に対して位置決めするための電線位置決め治具であって、
前記第1電線の前記第1芯線の先端部を突き当てて前記第1芯線の先端部の位置を揃える第1電線突き当て面を有することを特徴とする電線位置決め治具。
【請求項2】
前記第2電線の前記第2芯線の先端部を突き当てる第2電線突き当て面を有することを特徴とする請求項1に記載の電線位置決め治具。
【請求項3】
前記第2電線の前記被覆の中間部分が皮剥ぎされて前記第2芯線が露出されており前記第2電線の皮剥ぎされた前記被覆の端部を突き当てる第3電線突き当て面を有することを特徴とする請求項1に記載の電線位置決め治具。
【請求項4】
前記圧着端子をキャリア部分から切断するスライドカッターの収容部に着脱可能に位置決めして配置されることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つの項に記載の電線位置決め治具。
【請求項5】
前記第1電線は複数本の枝線であり、前記第2電線は幹線であることを特徴とする請求項4に記載の電線位置決め治具。
【請求項6】
第1電線の被覆を皮剥ぎして露出させた第1芯線と第2電線の被覆を皮剥ぎして露出させた第2芯線とを、圧着端子に対して位置決めするための電線位置決め治具を備え、前記圧着端子に対して前記第1芯線と前記第2芯線を圧着する圧着機であって、
前記第1電線の前記第1芯線の先端部を突き当てて前記第1芯線の先端部の位置を揃える第1電線突き当て面を有する電線位置決め治具を備えることを特徴とする圧着機。
【請求項7】
前記第2電線の前記第2芯線の先端部を突き当てる第2電線突き当て面を有することを特徴とする請求項6に記載の圧着機。
【請求項8】
前記第2電線の前記被覆の中間部分が皮剥ぎされて前記第2芯線が露出されており前記第2電線の皮剥ぎされた前記被覆の端部を突き当てる第3電線突き当て面を有することを特徴とする請求項6に記載の圧着機。
【請求項9】
前記圧着端子を送るための送り部材であって、前記電線位置決め治具が連結されており前記電線位置決め治具を前記圧着端子から退避させる前記送り部材を備えることを特徴とする請求項6〜請求項8のいずれか1つの項に記載の圧着機。
【請求項10】
前記電線位置決め治具は、前記圧着端子をキャリア部分から切断するスライドカッターの収容部に着脱可能に位置決めして配置されることを特徴とする請求項9に記載の圧着機。
【請求項11】
前記第1電線は複数本の枝線であり、前記第2電線は幹線であることを特徴とする請求項10に記載の圧着機。
【請求項12】
第1電線の被覆を皮剥ぎして露出させた第1芯線と第2電線の被覆を皮剥ぎして露出させた第2芯線とを、電線位置決め治具を用いて圧着端子に対して位置決めするための電線位置決め方法であって、
前記第1電線の前記第1芯線の先端部を、前記電線位置決め治具の第1電線突き当て面に突き当てることで、前記第1芯線の先端部の位置を揃えることを特徴とする電線位置決め方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−282596(P2008−282596A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−124066(P2007−124066)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】