説明

電線皮剥き刃構造

【課題】使用する電線の最小径の制限をなくし、加えて、電線の絶縁被覆のみならず導電性の編組や箔部を引っ掛かりなくスムーズ且つ確実に切断する。
【解決手段】先端に刃部3を有する三枚ないしそれ以上の皮剥き刃2を等角度で放射状に配置し、電線8を中心に各皮剥き刃を回転させる電線皮剥き刃構造1であって、各皮剥き刃2の刃部3の刃先角αを(360°/皮剥き刃の枚数)として、各皮剥き刃の閉じ時に各刃部3の刃先線4a,5aを相互に合わせ可能とした。刃部3を幅広の刃部分4と幅狭の刃部分5とで構成し、刃部の最先端6を皮剥き刃2の中心線mに対して幅狭の刃部分側に偏心させ、幅広の刃部分の刃先線4aを電線8の外周部8aに線接触可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮剥き刃を回転させて電線の絶縁被覆や導電編組等を切断させる電線皮剥き刃構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電線の絶縁被覆を周方向に切断して軸方向に抜き取るために、電線を中心として複数の皮剥き刃を回転させて絶縁被覆等を切断するようにした電線皮剥き刃構造が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、180°方向に対向する一対の皮剥き刃と、皮剥き刃とは90°位相ずれして配置された一対の対向する心出し刃とを備え、各皮剥き刃は先端の傾斜状の刃部を有し、各皮剥き刃と各心出し刃とはそれぞれアームの先端に設けられ、アームはテーパカムの進退動作で開閉され、アームが閉じて各刃が電線に接した状態で、モータの駆動で各皮剥き刃が心出し刃と共に電線を中心に回転して、電線の絶縁被覆を切断し、テーパカムと一体に後退して絶縁被覆を芯線から抜き取ることが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、三枚の皮剥き刃を放射状に配置し、各皮剥き刃は先端側の細幅部の内側に突出した刃部し、各皮剥き刃を円板の放射状の溝内に配置し、同様の複数の心出し刃と共に電線を中心に回転して、刃部で電線の絶縁被覆を切断することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3995250号公報(図2)
【特許文献2】特開2007−511198号公報(図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の電線皮剥き刃構造に類似した構造として、例えば、図6(a)に示す如く、三枚の皮剥き刃41の先端の刃部42が斜めではなく皮剥き刃41の中心線mに対して直交して形成された場合に、図6(b)の如く電線8の絶縁被覆等を切断する際に、各刃部42の両端42aが相互に干渉してしまうために、使用する電線8の最小径が制限されてしまうという懸念があった。
【0007】
また、図7に示す如く、各皮剥き刃43の刃部44を鋭利な傾斜状に形成した場合には、電線8の最小径の制限は解消されるが、特に電線8の導電性の編組や箔部(銅箔等)を切断する場合に、刃部44の先端44aが編組や箔部に引っ掛かって、上手く切断することができないという懸念があった。
【0008】
本発明は、上記した点に鑑み、使用する電線の最小径の制限をなくすことができ、それに加えて、電線の絶縁被覆のみならず、導電性の編組や箔部を引っ掛かりなくスムーズ且つ確実に切断することのできる電線皮剥き刃構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る電線皮剥き刃構造は、先端に刃部を有する三枚ないしそれ以上の皮剥き刃を等角度で放射状に配置し、電線を中心に各皮剥き刃を回転させる電線皮剥き刃構造であって、前記各皮剥き刃の刃部の刃先角を(360°/皮剥き刃の枚数)として、各皮剥き刃の閉じ時に各刃部の刃先線を相互に合わせ可能とたことを特徴とする。
【0010】
上記構成により、例えば皮剥き刃の数を三枚とした場合、各刃部の刃先角は360°/3=120°となり、各皮剥き刃を電線径方向に閉じた(接近させた)際に、各刃部の刃先線が相互に隙間なく接触する。これにより、電線の最小径の制限が解除される。
【0011】
請求項2に係る電線皮剥き刃構造は、請求項1記載の電線皮剥き刃構造において、前記刃部を幅広の刃部分と幅狭の刃部分とで構成し、該刃部の最先端を前記皮剥き刃の中心線に対して該幅狭の刃部分側に偏心させ、該幅広の刃部分の刃先線を前記電線の外周部に線接触可能としたことを特徴とする。
【0012】
上記構成により、各刃部の最先端(尖端)の位置が皮剥き刃全体の中心線に対して幅狭の刃部分側に偏心しているので、刃部の最先端が電線に突き当たって引っ掛かることがなく、しかも幅広の刃部分が幅狭の刃部分よりも長い刃先線を有するので、幅広の刃部分の刃先線が電線の外周部に線接触し、その状態で各皮剥き刃が電線周方向に回転して電線の絶縁被覆又は導電性の編組や箔部をスムーズ且つ綺麗に切断する。各皮剥き刃は駆動手段で回転と同時に閉じ方向に移動する。
【0013】
請求項3に係る電線皮剥き刃構造は、請求項2記載の電線皮剥き刃構造において、前記刃部の最先端を通る軸線に対する前記幅広の刃部分と幅狭の刃部分との刃先線の傾斜角が同一であることを特徴とする。
【0014】
上記構成により、各皮剥き刃の閉じ時に一の皮剥き刃の幅広の刃部分の刃先線と隣接の他の皮剥き刃の幅狭の刃部分の刃先線とが隙間なく相互に接触し、刃先線同士の干渉が確実に防止される。
【0015】
請求項4に係る電線皮剥き刃構造は、請求項2又は3記載の電線皮剥き刃構造において、隣接する一の前記皮剥き刃の前記幅広の刃部分と他の前記皮剥き刃の前記幅狭の刃部分との刃先線とが平行であることを特徴とする。
【0016】
上記構成により、各皮剥き刃の閉じ時に一の皮剥き刃の幅広の刃部分の刃先線と隣接の他の皮剥き刃の幅狭の刃部分の刃先線とが隙間なく相互に接触し、刃先線同士の干渉が確実に防止される。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の発明によれば、各皮剥き刃の先端の刃部を干渉することなく電線径方向に閉じることができるから、使用する電線の最小径の制限をなくすことができ、電線径の変更に伴う皮剥き刃の段取り替えを不要として、例えば一本の電線の絶縁外皮と絶縁内皮と導電性の編組や箔部を一種類の皮剥き刃で順次効率的に切断皮剥きすることができると共に、各種径の電線の皮剥き作業を効率的に行わせることができる。
【0018】
請求項2記載の発明によれば、各刃部の最先端を電線の外周部に引っ掛けることなく、各刃部の幅広の刃部分の傾斜状の刃先線を電線の外周部に線接触させて、電線の絶縁被覆のみならず、導電性の編組や箔部を引っ掛かりなくスムーズに且つ綺麗に且つ確実に切断することができ、シールド電線等の端末加工品質を高めることができる。
【0019】
請求項3記載の発明によれば、各皮剥き刃の閉じ時における隣接する一の皮剥き刃の幅広の刃部分の刃先線と他の皮剥き刃の幅狭の刃部分の刃先線との干渉を確実に防止して、小径の電線の外周部(絶縁被覆や編組等)の切断をスムーズ且つ確実に行わせることができる。
【0020】
請求項4記載の発明によれば、各皮剥き刃の閉じ時における隣接する一の皮剥き刃の幅広の刃部分の刃先線と他の皮剥き刃の幅狭の刃部分の刃先線との干渉を確実に防止して、小径の電線の外周部(絶縁被覆や編組等)の切断をスムーズ且つ確実に行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る電線皮剥き刃構造の一実施形態を示す正面図である。
【図2】皮剥き刃の要部を示す正面図である。
【図3】(a)は皮剥き刃の左側面図、(b)は同じく右側面図、(c)は同じく平面図である。
【図4】各皮剥き刃を閉じた状態の正面図(枠内は要部拡大図)である。
【図5】各皮剥き刃で電線の皮剥きを行う状態の正面図である。
【図6】従来の電線皮剥き刃構造の一形態を示す、(a)は各皮剥き刃を開いた状態の正面図、(b)は各皮剥き刃を閉じた状態の正面図である。
【図7】従来の電線皮剥き刃構造の他の形態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1〜図5は、本発明に係る電線皮剥き刃構造の一実施形態を示すものである。
【0023】
この電線皮剥き刃構造1は、図1の如く、三枚の電線皮剥き刃(以下皮剥き刃と言う)2を120°間隔で放射状に配置し、各皮剥き刃2は長手方向先端部に刃部3を有し、各刃部3は幅広の刃部分4と幅狭の刃部分5とで成り、各刃部分4,5は略への字状に傾斜した刃先線4a,5aを有し、図2の如く、各皮剥き刃2の刃部3の最先端(尖端)6を皮剥き刃本体(刃部3を除いた柄の部分)7の中心線mよりも幅方向に偏心させ(刃部3の最先端6を通る軸線を符号wで示す)、図4の如く、各皮剥き刃2の隣接する刃部分4,5の刃先線4a,5aを互いに当接させて各皮剥き刃2の最先端6を電線8のほぼ中心に配置可能とし、図5の如く、各皮剥き刃2の幅広の刃部分4の刃先線4aを刃部3の最先端6の近傍で電線8の外周部8aに線接触可能としたものである。
【0024】
図1の如く、各皮剥き刃2は同一の大きさ形状のものであり、120°間隔で配置された各皮剥き刃2の開き状態(中心線mの方向に後退した状態)で、幅広の刃部分4は隣接の皮剥き刃2の幅狭の刃部分5に対向(隣接)し、幅広の刃部分4の刃先線4aは隣接の幅狭の刃部分5の刃先線5aと平行に位置する。120°間隔とは各皮剥き刃本体7の中心線m間の角度θである。各皮剥き刃本体7の中心線mは電線8の中心点8bを通る。皮剥き刃本体7に例えば円形の位置決めピン(図示せず)を挿入するための電線径方向の長孔9が設けられている。
【0025】
例えば各皮剥き刃2は位置決めピン(図示せず)に沿って中心線mの方向すなわち電線8の径方向に進退自在に配置され、各皮剥き刃2の前進動作と電線周方向への回転動作とで電線8の外周部8aの絶縁被覆や導電性の編組・箔部の周方向の切断が行われ、切断状態で各皮剥き刃2を電線長手方向に移動させることで、絶縁被覆や編組・箔部の除去(皮剥き)が行われ、各皮剥き刃2を電線径方向に後退させて、電線皮剥き装置(図示せず)からの電線8の離脱や装着が行われる。電線皮剥き装置は、各皮剥き刃2と、各皮剥き刃2を電線軸方向と電線径方向へ進退させる駆動部と、各皮剥き刃2を回転させる駆動部とを含むものである。
【0026】
図2の如く、皮剥き刃2の幅広の刃部分4は正面視で略台形状に形成され、皮剥き刃本体7の一側面7aと同一面に続く側面4b(図3(b)参照)の傾斜辺部4cと、傾斜辺部4cの先端(前端)4c1から刃部3の最先端6にかけて傾斜状に延びる刃先線4aと、傾斜辺部4cの基端(後端)4c2から刃先線4aと平行に刃先線4aよりも長く刃部3の稜線(幅狭の刃部分5との境界線)10まで延びる基端辺部4dとを有している。
【0027】
幅狭の刃部分5は正面視で略逆台形状に形成され、皮剥き刃本体7の他側面7bと同一面に続く側面5b(図3(a)参照)の傾斜辺部5cと、傾斜辺部5cの先端5c1から刃部3の最先端6にかけて傾斜状に延びる刃先線5aと、傾斜辺部5cの基端5c2から刃先線5aと平行に刃先線5aよりも短く刃部3の稜線(幅広の刃部分4との境界線)10まで延びる基端辺部5dとを有している。
【0028】
図2で刃部3の最先端6すなわち左右の刃先線4a,5aの交点は皮剥き刃本体7の中心線mよりも左側すなわち幅狭の刃部分5側に少し偏心して位置し、最先端6と左右の基端辺部4d,5dの交点10aとを結ぶ稜線10は少し皮剥き刃本体7の中心線mよりも左側すなわち幅狭の刃部分5側に正面視で大きく傾斜して位置する。一例として刃部3の最先端6の偏心量は皮剥き刃本体7の幅を6mmとした場合に0.2mm程度であることが好ましい。特許請求の範囲では皮剥き刃本体7を皮剥き刃2として表現している。
【0029】
幅広の刃部分4の刃先線4aは幅狭の刃部分5の刃先線5aよりも長く、刃部3の最先端6を通る仮想の軸線wに対する両刃先線4a,5aの傾斜角度α1,α2は同一である。各刃先線4a,5aの傾斜角度α1,α2は60°であり、両刃先線4a,5aの傾斜角度α1,α2を合わせた角度すなわち刃部3の刃先角(開角度)αは120°である。
【0030】
図3(a)の幅狭の刃部分5の側面5bの傾斜辺部5cの傾斜角度β2は、図3(b)の幅広の刃部分4の側面4bの傾斜辺部4cの傾斜角度β1よりも大きい。図3の稜線10の傾斜角度は図3(a)の幅狭の刃部分5の側面の傾斜辺部5cの傾斜角度β2よりも小さく、図3(b)の幅広の刃部分4の側面の傾斜辺部4cの傾斜角度β1よりも大きい。
【0031】
図3(a)(b)の如く皮剥き刃本体7の左右両側において長手方向のリブ11が設けられ、リブ11の前端11aから刃部3(幅広の刃部分4と幅狭の刃部分5)の前半部分が前方に突出している。図3(c)の如く、正面視で皮剥き刃2の先端に稜線10を境に幅狭の刃部分5と幅広の刃部分4とが左右に並んで位置する。符号11はリブ、12は、皮剥き刃本体7の後端壁をそれぞれ示している。
【0032】
図1の如く、三枚の皮剥き刃2が120°等配に放射状に配置され、各皮剥き刃2の刃部3が電線8の外周面8aに接した状態で、第一の皮剥き刃21の幅広の刃部分4の刃先線4aと、反時計回りに隣接する第二の皮剥き刃22の幅狭の刃部分5の刃先線5aとが平行に位置し、第二の皮剥き刃22の幅広の刃部分4の刃先線4aと、反時計回りに隣接する第三の皮剥き刃23の幅狭の刃部分5の刃先線5aとが平行に位置し、第三の皮剥き刃23の幅広の刃部分4の刃先線4aと、反時計回りに隣接する第一の皮剥き刃21の幅狭の刃部分5の刃先線5aとが平行に位置し、図2の如く、各皮剥き刃2の幅広の刃部分4と幅狭の刃部分5との刃先線4a,5aの傾斜角α1,α2が60°と等しく、刃部3の刃先角αが120°であることで、図4の如く、各皮剥き刃2を中心線m(軸線w)の方向すなわち電線径方向に閉じた(前進させた)際に、各皮剥き刃2の刃先線4a,5aが相互に隙間なく接して刃合わせされる。
【0033】
第一の皮剥き刃21の幅広の刃部分4の刃先線4aが第二の皮剥き刃22の幅狭の刃部分5の刃先線5aに接し、第二の皮剥き刃22の幅広の刃部分4の刃先線4aが第三の皮剥き刃23の幅狭の刃部分5の刃先線5aに接し、第三の皮剥き刃23の幅広の刃部分4の刃先線4aが第一の皮剥き刃21の幅狭の刃部分5の刃先線5aに接する。第一〜第三は説明の便宜上のものである。
【0034】
このように、各皮剥き刃2を電線切断方向に前進させた際に、電線8の径がどんなに小さくとも、各刃部3が相互に干渉することがなく、電線8の最小径の制限が解消され、小径の電線8においても絶縁被覆や編組や箔部を確実に切断皮剥き可能である。外径の小さい電線8から大きい電線8まで皮剥き刃2を替えることなく一種類の皮剥き刃2で絶縁被覆や編組等を良好に切断することができる。
【0035】
図4において、各皮剥き刃2の中心線mと刃部3の最先端6とは偏心しているので、隣接の各皮剥き刃2の幅広の刃部分4の刃先線4aと幅狭の刃部分5の刃先線5aとが相互に接した際に、各皮剥き刃2の刃部3の最先端6は皮剥き刃本体7の幅方向に若干離間して位置し、三つの刃部3の最先端6の間に三角形の微細な空間が形成される。各刃部3の最先端6同士が相互に当接しないから、最先端6の欠けや刃こぼれ等が防止される。
【0036】
図5(図1の要部拡大図)の如く、電線8の外周面8aには各皮剥き刃2の幅広の刃部分4の刃先線4aが線接触ないし面接触で接触する(刃部3が電線8に軽く接した際に線接触となり、電線8に少し食い込んだ際に面接触となる)。線接触部分を符号13で示す。各刃部3の最先端6ではなく、幅広の刃部分4の傾斜状の刃先線4aが電線8の外周部8aに接触することで、電線8の絶縁被覆のみならず導電性の編組や箔部をも引っ掛かりなくスムーズ且つ綺麗に且つ確実に切断することができる。
【0037】
図5で各皮剥き刃2は電線8を中心として反時計回り(左回り)に回転し、それと同時に各皮剥き刃2は電線8の中心8bに向けて皮剥き刃本体7の中心線mに沿って前進する。各皮剥き刃2には反時計回りの方向に幅広の刃部分4が位置しているので、幅広の刃部分4による電線8の編組や箔部の切断や、刃部3の最先端6から幅広の刃部分4にかけての電線8の編組や箔部の切断(電線8に少し食い込んだ場合)がスムーズ且つ綺麗に且つ確実に行われる。
【0038】
例えば各皮剥き刃2を図5で時計回り(右回り)に回転させた場合は、刃部3の最先端6が電線8の外周部8aに深く食い込んで引っ掛かりやすく、スムーズな切断を行いにくい。幅広の刃部分4の刃先線4aで電線8の外周部8aを引くように切る(例えば包丁を手前に引いて物を切るようにする)ことで、電線8の編組や箔部を引っ掛かりなくスムーズに且つ綺麗に切断することができる。刃部3が電線8に少し食い込んだ際に、幅広の刃部分4から刃部3の最先端6を経て幅狭の刃部分5に電線8の外周部8aをスムーズに摺接させるべく、幅狭の刃部分5も必要である。少なくとも刃部3の最先端6から幅広と幅狭の各刃部分4,5の2/3程度の長さの範囲の刃先線4a,5aはシャープエッジである必要がある。
【0039】
電線(シールド電線)8の編組は絶縁外皮の内側に位置し、編組の内側に絶縁内皮が位置し、絶縁内皮の内側に導電芯線が位置するが、外皮を皮剥きして編組を露出させ、さらに編組を外皮に沿って折り返した状態で、編組の皮剥き(切断による長さ揃え)を各皮剥き刃2の回転で行わせる。この際の編組の折り返しは、三つの爪を用いた編組開き機構(図示せず)を用いて行い、編組開き機構と同軸上に三枚の皮剥き刃2の中心(電線8の中心8b)が配置される。折り返した編組にはシールド端子(図示せず)が加締め接続される。編組は折り返す前に各皮剥き刃2の回転で切断することも可能である。箔部は折り返さずに各皮剥き刃2の回転で切断する。
【0040】
なお、上記実施形態においては、三枚の皮剥き刃2を用いたが、例えば四枚の皮剥き刃(2)を用いる場合には、各皮剥き刃(2)の刃先角度α(図2)を120°ではなく90°に設定し、各刃部3の幅広の刃部分4と幅狭の刃部分5との角度α1,α2をそれぞれ45°に設定することで、各皮剥き刃(2)を図4のように完全に閉じることができる。各皮剥き刃(2)の刃部3の最先端6の位置は皮剥き刃本体7の中心線mに対して幅狭の刃部分5の方向に偏心させる。皮剥き刃(2)を五枚とした場合は、同様に各皮剥き刃(2)の刃先角度αを72°とし、幅広の刃部分4と幅狭の刃部分5との角度α1,α2をそれぞれ36°とする。但し、四枚以上になると、電線8の外周面8aに対する刃部3の接触角度が急勾配になるので、スムーズに且つ綺麗に電線8の特に編組や箔部を切断するためには、刃数は三枚であることがベストである。
【0041】
また、上記実施形態においては、各皮剥き刃2の刃部3の刃先角αを(360°/皮剥き刃2の枚数)として、各皮剥き刃2の閉じ時に各刃部3の刃先線4a,5aを相互に合わせ可能とした構成と、刃部3を幅広の刃部分4と幅狭の刃部分5とで構成し、刃部3の最先端6を皮剥き刃本体7の中心線mに対して幅狭の刃部分5側に偏心させ、幅広の刃部分4の刃先線4aを電線8の外周部8aに線接触可能とした構成とを併せ持った電線皮剥き刃構造1の例で説明したが、例えば、各皮剥き刃2の刃部3の刃先角αを(360°/皮剥き刃2の枚数)として、各皮剥き刃2の閉じ時に各刃部3の刃先線4a,5aを相互に合わせ可能とした構成のみを有する電線皮剥き刃構造や、刃部3を幅広の刃部分4と幅狭の刃部分5とで構成し、刃部3の最先端6を皮剥き刃本体7の中心線mに対して幅狭の刃部分5側に偏心させ、幅広の刃部分4の刃先線4aを電線8の外周部8aに線接触可能とした構成のみを有する電線皮剥き刃構造を採用することも有効である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係る電線皮剥き刃構造は、電線皮剥き装置に使用して、例えば自動車用のシールド電線の絶縁外皮や絶縁内皮のみならず導電金属製の編組(編組線)や銅箔やアルミ箔といった箔部を電線外径の大小に関係なく一種類の皮剥き刃でスムーズに切断して確実に皮剥きさせるために利用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 電線皮剥き刃構造
2 皮剥き刃
3 刃部
4 幅広の刃部分
4a,4b 刃先線
5 幅狭の刃部分
6 最先端
8 電線
8a 外周部
α 刃先角
α1,α2 傾斜角
m 中心線
w 軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に刃部を有する三枚ないしそれ以上の皮剥き刃を等角度で放射状に配置し、電線を中心に各皮剥き刃を回転させる電線皮剥き刃構造であって、前記各皮剥き刃の刃部の刃先角を(360°/皮剥き刃の枚数)として、各皮剥き刃の閉じ時に各刃部の刃先線を相互に合わせ可能としたことを特徴とする電線皮剥き刃構造。
【請求項2】
前記刃部を幅広の刃部分と幅狭の刃部分とで構成し、該刃部の最先端を前記皮剥き刃の中心線に対して該幅狭の刃部分側に偏心させ、該幅広の刃部分の刃先線を前記電線の外周部に線接触可能としたことを特徴とする請求項1記載の電線皮剥き刃構造。
【請求項3】
前記刃部の最先端を通る軸線に対する前記幅広の刃部分と幅狭の刃部分との刃先線の傾斜角が同一であることを特徴とする請求項2記載の電線皮剥き刃構造。
【請求項4】
隣接する一の前記皮剥き刃の前記幅広の刃部分と他の前記皮剥き刃の前記幅狭の刃部分との刃先線とが平行であることを特徴とする請求項2又は3記載の電線皮剥き刃構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−39705(P2012−39705A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175898(P2010−175898)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】