説明

電線端末保護具

【課題】 電線端末に対する電線端末保護具の装脱着作業が簡単で作業能率を向上させると共に、ゴム締着部材のリサイクル性を向上させる電線端末保護具を提供する。
【解決手段】 筒形に形成され、内部に電線端末13を挿入して保護する筒体11と、前記筒体11に設けられ、電線端末13を保持する保持体15とを備え、前記保持体15が筒体11の端部11aから延出する腕部19と、その背面に突設され、電線端末13を締着するゴム締着部材23を係止する係止突起部21とを有する電線端末保護具において、前記係止突起部21が、腕部19の背面に立設された脚片25と、脚片25に横設され、両端にゴム締着部材23を係止する係止鍔29と中間にゴム締着部材23を通すスリット31を有する桁片27とを組み合わせて略π型に形成され、前記ゴム締着部材23が前記係止突起部21の脚片25間の空間部33に係止されて、保持体15に取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ワイヤハーネスの組立作業時において、電線端末を保護するための電線端末保護具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、ワイヤハーネスの組立工程においては、絶縁被覆を剥がして露出させた電線端末の芯線(導体)や、これに取り付けた端子(ターミナル)を一時的に保護するために、その電線端末に柔軟なビニール袋を被せたりしていた。ところが、使用後のビニール袋の再使用が容易でなく、廃棄処分する必要があり、手数を要する問題があった。
【0003】
そこで、図6に示すように、少なくとも一方の端部1aが開口して筒形に形成され、前記端部1aから予めゴム締着部材2によって締着されている電線端末3を挿入して保護する筒体1と、前記筒体1に設けられ、電線端末3を筒体1に保持する保持体4とを備え、前記保持体4が筒体1の前記端部1aから筒体1の軸方向に延出する腕部5と、その腕部5の背面に突設され、電線端末3を締着するゴム締着部材2を係止する係止突起部6とを有する電線端末保護具において、前記保持体4の係止突起部6が電線端末3を筒体1に挿入する方向において上流側が低くなると共に、下流側にゴム締着部材2を係止可能な肩部6aを有して略矢尻状に形成されている電線端末保護具が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
この電線端末保護具を用いて電線端末3を保護する場合には、電線端末3を束ねてゴム締着部材2で締着した後、その電線端末3を筒体1に前記端部1aから矢印方向に挿入し、その挿入動作によって、ゴム締着部材2に保持体4の略矢尻状に形成された係止突起部6を挿通し、係止突起部6の肩部6aにゴム締着部材2を係止させて筒体1に電線端末3を保持することにより行う。
【0005】
【特許文献1】特許第3430842号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の電線端末保護具によると、電線端末3のゴム締着部材2による締着と電線端末3の電線端末保護具の筒体1への保持とを別々に行う必要があるので、電線端末3に対する電線端末保護具の装脱着作業が煩雑で、作業能率が低下する問題がある。
【0007】
また、電線端末3から電線端末保護具を脱着する際、電線端末3に締着されたゴム締着部材2を除去するのが面倒で傷付き易く、ゴム締着部材2のリサイクル性が低下し、電線端末保護具の再利用が容易でない問題がある。
【0008】
本発明は上記に鑑み生まれたもので、電線端末に対する電線端末保護具の装脱着作業が簡単で作業能率を向上させると共に、ゴム締着部材のリサイクル性を向上させ、電線端末保護具の再利用を推進ことができる電線端末保護具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載された電線端末保護具は、端部が開口して筒形に形成され、前記端部から電線端末を挿入して保護する筒体と、前記筒体に設けられ、電線端末を筒体に保持する保持体とを備え、前記保持体が筒体の前記端部から延出する腕部と、その腕部の背面に突設され、電線端末を締着するゴム締着部材を係止する係止突起部とを有する電線端末保護具において、前記保持体の係止突起部が、腕部の背面に立設された脚片と、脚片に横設され、両端にゴム締着部材を係止する係止鍔と中間にゴム締着部材を通すスリットを有する桁片とを組み合わせて略π型に形成され、前記ゴム締着部材が前記係止突起部の脚片間の空間部に係止されて、前記保持体に取り付けられることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の請求項2に記載された電線端末保護具は、請求項1記載のものにおいて、前記筒体が透明又は半透明樹脂を成形して他方の端部が閉塞された有底状に形成され、筒壁に電線端末の挿入位置を示すけがき線が設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の請求項3に記載された電線端末保護具は、請求項1記載のものにおいて、前記保持体における係止突起部の桁片が筒体側とは逆方向に反った形状に形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1に記載された電線端末保護具によると、前記ゴム締着部材が電線端末側ではなく、電線端末を筒体に保持する保持体の腕部に取り付けられており、ゴム締着部材を保持体の腕部と筒体に挿入された電線端末との外周に巻き付けて係止突起部の係止鍔に係止して締着するので、電線端末のゴム締着部材による締着と電線端末の電線端末保護具の筒体への保持とを同時に行うことが可能になる。従って、電線端末に対する電線端末保護具の装脱着作業が簡単になり、作業能率を向上させることができる。
【0013】
また、電線端末から電線端末保護具を脱着する際には、ゴム締着部材を係止突起部の係止鍔から取り外してゴム締着部材の締着を解除するだけで良いので、電線端末に締着されたゴム締着部材を無傷状態で簡単に除去することが可能になるほか、ゴム締着部材が保持体に取り付けられているので、紛失することがない。従って、ゴム締着部材のリサイクル性を向上させ、電線端末保護具の再利用を推進することができる。
【0014】
本発明の請求項2に記載された電線端末保護具によると、前記透明又は半透明樹脂で形成された有底状の筒体の筒壁にけがき線が設けられているので、筒体に挿入された電線端末の挿入位置を筒体外から確認することが容易になる。従って、電線端末の挿入不足によって保護が不十分になったり、挿入過度によって電線端末の先端が筒体の底部に接触し、先端が変形、損傷等したりするのを確実に防ぐことができる。
【0015】
本発明の請求項3に記載された電線端末保護具によると、前記係止突起部の桁片が筒体側とは逆方向に反った形状に形成されているので、電線端末に電線端末保護具を装着するために、ゴム締着部材を保持体の腕部と筒体に挿入された電線端末との外周に巻き付けて自由端を係止突起部の係止鍔に引掛けて係止したり、電線端末から電線端末保護具を脱着するために、ゴム締着部材の自由端を係止鍔から取り外したりする作業性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に本発明を実施するための最良の形態を図面により詳細に説明する。図1は本発明に係る電線端末保護具の一実施形態を示すもので、(A)は正面図、(B)は左側面図、(C)は平面図、図2は図1の電線端末保護具における保持体の係止突起部を拡大して示すもので、(A)は正面図、(B)は左側面図、(C)は平面図、(D)は係止突起部にゴム締着部材が取り付けられた状態を示す平面図、図3はゴム締着部材を示す斜視図である。
【0017】
本実施形態の電線端末保護具は、図1乃至図4に示すように、硬質の樹脂、例えば、硬質の透明又は半透明樹脂を成形して、一方の端部11aが開口し、他方の端部11bが閉塞されて有底状の筒形(図示例は略円筒形)、即ち、キャップ(コップ)形に形成され、前記端部11aから複数本の電線端末13(先端に端子を有するものを含む)を束ねた状態て挿入して保護する筒体11と、前記筒体11に設けられ、電線端末13を筒体11に保持する保持体15とを備える。
【0018】
筒体11は更に一方の端部11a側(開口側)が他方の端部11b(有底側)よりも大径に形成された筒型円錐台形状(筒型截頭円錐形状)に形成されると共に、一方の端部11aにその半周縁を他方の端部11b側へ略45度の傾斜角度でカットした面取部11cが形成されている。このように、筒体11の端部11a(開口端部)に面取部11cが形成されていると、電線端末13を束ねた状態で筒体11の内部に無理なく円滑に挿入することができるので好ましい。また、筒体11の筒壁(側壁)の底部より少し上位位置及び面取部11cより少し下位位置には、周方向に沿って電線端末13の挿入位置を示すけがき線17が設けられている。けがき線17はマーカで描いたり、筒壁の外面を一部突出したり等して筒壁に設けられる。なお、本実施形態は他方の端部11bが閉塞されているが開口して無底状になっていてもよい。
【0019】
前記透明又は半透明樹脂で形成された有底状の筒体11の筒壁にけがき線17が設けられていると、筒体11に挿入された電線端末13の挿入位置を筒体11外から確認することが容易になる。従って、電線端末13の挿入不足によって保護が不十分になったり、挿入過度によって電線端末13の先端が筒体11の底部に接触し、先端が変形、損傷等したりするのを確実に防ぐことができるので好ましい。
【0020】
前記保持体15は、筒体11の前記端部11aの前記面取部11cとは180度反対側の部位から筒体11の軸方向に延出し、内面がフラット面に、外面が外にわん曲する凸状面に形成された断面矩形の条片からなる腕部19と、その腕部19の背面に突設され、電線端末13を締着するゴム締着部材23を係止する係止突起部21とを有する。なお、腕部19の内面は内側に凹状面に形成してもよいが、本実施形態のようなフラット面若しくは内側に凸状面に形成したり、内面にゴムシート等を貼り付けたりすると、電線端末13が1本の場合でもこれを容易に保持することができるので好ましい。
【0021】
係止突起部21は、図2(A)乃至(C)に示すように、腕部19の背面に幅方向に間隔をおいて立設された一対の脚片25と、脚片25の上部に横設され、両端にゴム締着部材23の自由端を係止する係止鍔29と中間(図示例は中央)にゴム締着部材23を通すスリット31を有する桁片27とを組み合わせて略π型に形成される。
【0022】
更に詳細に説明すると、桁片27は筒体11側とは逆方向に反った形状に形成されている。また、スリット31はその入口に開口側に向かって幅が広がるテーパ状案内部31aが形成され、ゴム締着部材23をスリット31に案内するようになっている。スリット31の出口側の幅はゴム締着部材23を弾性圧縮しながらスリット31に押し込んで通し、前記脚片25間に形成された空間部33に挿入し得るように、ゴム締着部材23の輪ゴム部(後記)の寸法(厚さ)よりも少し狭くなるように形成され、空間部33に挿入されたゴム締着部材23が係止突起部21からスリット31を通して容易に外れないようになっている。そして、図2(D)に示すように、前記係止突起部21の空間部33にスリット31を通して挿入されたゴム締着部材23は係止突起部21で係止され、前記保持体15に取り付けられる。
【0023】
ゴム締着部材23は、図3に示すように、自然状態では、無端環状の輪ゴム部23aと、これの外周に突設された矢じり状の引掛把持部23bとからなる。このゴム締着部材23は、図4に示すように、輪ゴム部23aを二つ折りして二重に重ね、引掛把持部23bを把持して、保持体15の腕部19と、筒体11の内部に複数本束ねた状態で挿入された電線端末13との外周に1回転又は2回転以上巻き付け(図示例は2回転巻き付け)、輪ゴム部23aの自由端のループ部分を係止突起部21の一方の係止鍔29に引掛けて係止する。これにより、電線端末13を締着(結束)する作業と、電線端末13を電線端末保護具における筒体11の保持体に保持する作業を同時に行うことが可能になる。また、係止突起部21は両端に係止鍔29を有するので、ゴム締着部材23を時計、反時計方向のいずれかの方向に巻き付けて係止鍔29に係止することが可能になり、ゴム締着部材23を係止鍔29に引掛けて係止し易くなる。
【0024】
なお、前記したように、係止突起部21の桁片27が筒体11側とは逆方向に反った形状に形成されていると、電線端末13に電線端末保護具を装着するために、ゴム締着部材23を保持体15の腕部19と筒体11に挿入された電線端末13との外周に巻き付けて自由端を係止突起部21の係止鍔29に引掛けて係止したり、電線端末13から電線端末保護具を脱着するために、ゴム締着部材23の自由端を係止鍔29から取り外したりする作業性を向上させることができるので好ましい。
【0025】
本実施形態の電線端末保護具を用いて、電線端末13を保護する場合には、電線端末13を締着(結束)せず、束ねた状態で、電線端末保護具における筒体11の内部に開口した一方の端部11aから挿入する。その後、保持体の係止突起部に取り付けられたゴム締着部材を、保持体の腕部とこれに支持された電線端末との外周に巻き付けて自由端を係止突起部の係止鍔に係止して締着(結束)すると同時に、電線端末を筒体で保持して保護する。図5は電線端末13に電線端末保護具を装着して電線端末13を保護した状態を示すもので、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は背面図である。
【0026】
本発明の電線端末保護具によると、上記実施形態の構成から明らかなように、ゴム締着部材23が電線端末13側ではなく、電線端末13を筒体11に保持する保持体15の腕部19に取り付けられており、ゴム締着部材23を保持体15の腕部19と筒体11に挿入された電線端末13との外周に巻き付けて係止突起部21の係止鍔29に係止して締着するので、電線端末13のゴム締着部材23による締着と電線端末13の電線端末保護具の筒体11への保持とを同時に行うことが可能になる。従って、電線端末13に対する電線端末保護具の装脱着作業が簡単になり、作業能率を向上させることができる。
【0027】
また、電線端末13から電線端末保護具を脱着する際には、ゴム締着部材23を係止突起部21の係止鍔29から取り外してゴム締着部材23の締着を解除するだけで良いので、電線端末13に締着されたゴム締着部材23を無傷状態で簡単に除去することが可能になるほか、ゴム締着部材23が保持体15に取り付けられているので、紛失することがない。従って、ゴム締着部材23のリサイクル性を向上させ、電線端末保護具の再利用を推進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る電線端末保護具の一実施形態を示すもので、(A)は正面図、(B)は左側面図、(C)は平面図である。
【図2】図1における保持体の係止突起部を拡大して示すもので、(A)は正面図、(B)は左側面図、(C)は平面図、(D)は係止突起部にゴム締着部材が取り付けられた状態を示す平面図である。
【図3】図1におけるゴム締着部材を示す斜視図である。
【図4】図3のゴム締着部材で電線端末の締着と電線端末保護具の筒体への保持を行う状態を示す概略図である。
【図5】電線端末に図1の電線端末保護具を装着して電線端末を保護した状態を示すもので、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は背面図である。
【図6】従来の電線端末保護具とその使用状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
11 筒体
11a 一方の端部
11b 他方の端部
11c 面取部
13 電線端末
15 保持体
17 けがき線
19 腕部
21 係止突起部
23 ゴム締着部材
23a 輪ゴム部
23b 引掛把持部
25 脚片
27 桁片
29 係止鍔
31 スリット
31a テーパ状案内部
33 空間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部が開口して筒形に形成され、前記端部から電線端末を挿入して保護する筒体と、前記筒体に設けられ、電線端末を筒体に保持する保持体とを備え、前記保持体が筒体の前記端部から延出する腕部と、その腕部の背面に突設され、電線端末を締着するゴム締着部材を係止する係止突起部とを有する電線端末保護具において、前記保持体の係止突起部が、腕部の背面に立設された脚片と、脚片に横設され、両端にゴム締着部材を係止する係止鍔と中間にゴム締着部材を通すスリットを有する桁片とを組み合わせて略π型に形成され、前記ゴム締着部材が前記係止突起部の脚片間の空間部に係止されて、前記保持体に取り付けられることを特徴とする電線端末保護具。
【請求項2】
前記筒体が透明又は半透明樹脂を成形して他方の端部が閉塞された有底状の筒形に形成され、筒壁に電線端末の挿入位置を示すけがき線が設けられていることを特徴とする請求項1記載の電線端末保護具。
【請求項3】
前記保持体における係止突起部の桁片が筒体側とは逆方向に反った形状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の電線端末保護具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−172793(P2006−172793A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−361107(P2004−361107)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河オートモーティブパーツ株式会社 (571)
【Fターム(参考)】