説明

電線被覆剥離工具

【課題】作業効率に優れた電線被覆剥離工具を提供する。
【解決手段】剥離工具10は、本体フレーム1、移動台2、及び一対の回転板3・3を備える。本体フレーム1は、電線Wに当接可能な円弧溝11aを形成した保持部11と、保持部11と離隔して対向配置された台部12を有する。移動台2は、円弧溝11aと対向して配置され、電線Wを受け入れ可能な凹溝21aに第1刃体41を固定した刃体ホルダー21を端部に有し、台部12に設けた雌ねじ部12sとねじ結合する送りねじ22を有し、刃体ホルダー21を保持部11に対して進退できる。回転板3は、電線Wの外周方向から導入可能な切り欠き部32を遠心方向に設け、本体フレーム1と一体になって回転できる。回転板3は、電線Wの周りを回動するように、ループ状の先端工具を有する絶縁操作棒92hで操作容易な複数の鉤状の係止歯33を外周に有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線被覆剥離工具に関する。特に、間接活線作業に好適な絶縁操作棒を用いて、架空配電線の被覆を剥離する電線被覆剥離工具の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電柱に架設された架空配電線(以下、電線という)の被覆を剥離する電気工事が必要な場合がある。この場合、電線が通電状態(活線状態)で、電線の被覆を剥離するので、作業員の安全を確保するために、絶縁操作棒(いわゆる、ホットスティック)を用いて電線被覆剥離工具が操作されている。
【0003】
このような電線被覆剥離工具としては、電線の締め付け作業及び電線からの取り外し作業を簡単に実行でき、作業者の疲労度の軽減及び作業時間の短縮化を図ることができる電線被覆剥離工具が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1による電線被覆剥離工具は、絶縁操作棒を用いて電線に装着し、電線の周りに回転させて、電線の被覆を所定の幅で一括して剥離除去する工具であって、互いに直交する方向に第1アーム及び第2アームを突出すると共に、電線の上部外周面に当接可能な円弧溝を形成した保持部を上部に有するC字状の本体フレームと、保持部と対向するように配置され、電線の外周方向から受け入れ可能な凹溝を形成した刃体ホルダーを基端部に有し、本体フレームの下部に設けられた台部とねじ結合する送りねじを有する移動台と、を備えている。
【0005】
特許文献1による電線被覆剥離工具は、送りねじを操作して、保持部と刃体ホルダーで電線を挟持した状態で、電線の周りに一回転(略360度)させると、刃体ホルダーに固定された単一刃体で、電線の被覆を所定の幅で一括して剥離除去できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−22182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1による電線被覆剥離工具は、第1アーム、第2アーム、及び送りねじを電線から互いに略直交する3方向に放射状に配置している。又、第1アーム、第2アーム、及び送りねじは、リングを先端部にそれぞれ設けている。特許文献1による電線被覆剥離工具は、フック工具を先端部に固定した絶縁操作棒(いわゆる、バインド打ち器)を用いて、フック工具を各リングに差し込んで、電線被覆剥離工具の回転を分担することができ、作業の効率が従来と比べて向上できると、している。
【0008】
しかしながら、特許文献1による電線被覆剥離工具は、把持工具を先端部に固定した絶縁操作棒(いわゆる、ヤットコ)を用いて、第1アームの軸部を把持し、送りねじの先端部に設けたリングにフック工具を差し込み、送りねじを回転することで、電線を挟持又は解放している。つまり、特許文献1による電線被覆剥離工具は、種類の異なる先端工具を有する二本の絶縁操作棒を操作して、電線を挟持又は解放しているで、作業効率がよくないという問題がある。作業効率に優れた電線被覆剥離工具が求められている。
【0009】
又、特許文献1による電線被覆剥離工具は、いわゆるヤットコを用いて、電線被覆剥離工具の回転(一周)を分担することができるが、各リングの穴に遠隔からフック工具を差し込むことは、容易でないという問題がある。電線被覆剥離工具を容易に回転操作できる構造を有する電線被覆剥離工具が求められている。
【0010】
更に、特許文献1による電線被覆剥離工具は、各リングの穴にフック工具を差し込み、電線被覆剥離工具を回転しようとするが、電線の遠心方向に引っ張ることがある。このため、電線が直線状態を維持できないまま、電線被覆剥離工具を回転すると、単一刃体が電線の被覆に食い込まず、電線の被覆を上手、剥離できないという問題があった。このように、従来技術による電線被覆剥離工具は、熟練を必要とされ、初心者であっても確実に電線の被覆を剥離する工具が求められていた。そして、以上のことが本発明の課題といってよい。
【0011】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、絶縁操作棒を用いて、電線の被覆を剥離する電線被覆剥離工具であって、作業効率に優れた電線被覆剥離工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、電線の被覆を軸方向に所定の幅で剥離する刃体を一対に対向配置すると共に、これらの刃体が電線の周りを所定のステップ角度で回動するように、ループ状の先端工具を有する絶縁操作棒で操作容易な鉤状の係止歯を外周に有する回転板を備えることにより、これらの課題が解決できると考え、これに基づいて、以下のような新たな電線被覆剥離工具を発明するに至った。
【0013】
(1)本発明による電線被覆剥離工具は、絶縁操作棒を用いて電線に装着し、第1刃体を電線の周りに回転させて、電線の被覆を軸方向に所定の幅で剥離する電線被覆剥離工具であって、電線の外周面に部分的に当接可能な円弧溝を形成した保持部を一方の端部に有し、この保持部と離隔して対向配置された台部を他方の端部に有するC字状の本体フレームと、前記円弧溝と対向するように配置され、電線を外周方向から受け入れ可能な凹溝に前記第1刃体を固定した刃体ホルダーを端部に有し、前記台部に設けた雌ねじ部とねじ結合する送りねじを有し、前記刃体ホルダーを前記保持部に対して進退可能な移動台と、電線をその外周方向から導入可能な切り欠き部を遠心方向に設ける円形状の開口を中心部に有し、この開口の略中心に電線が位置するように、前記本体フレームの両翼に配置され、当該本体フレームと一体になって回転可能な一対の回転板と、を備え、これらの回転板は、電線の周りを所定のステップ角度で回動するように、ループ状の先端工具を有する絶縁操作棒で操作容易な複数の鉤状の係止歯を外周に有する。
【0014】
(2)前記回転板の切り欠き部は、電線にスライドして前記円弧溝に電線を案内する略平坦な端縁を一方の辺に有することが好ましい。
【0015】
(3)前記回転板は、透明板からなることが好ましい。
【0016】
(4)前記本体フレームは、刃先が前記第1刃体の刃先に対向すると共に、切断面が電線の導線の直径より僅かに広い間隔を設けるように、前記第1刃体の切断面と対向配置された第2刃体を前記保持部に更に有することが好ましい。
【0017】
(5)前記移動台は、電線を外周方向から受けて電線の外周を転動可能に案内する一対の第1分割ベアリングを前記刃体ホルダーの両側面に備え、前記本体フレームは、電線を外周方向から押さえて電線の外周を転動可能に案内すると共に、一対の前記第1分割ベアリングと相対的に近接可能な一対の第2分割ベアリングを備えることが好ましい。
【0018】
(6)前記送りねじは、共用型の絶縁操作棒の先端部に取り付けられ、相反する向きに突出した一対の係止ピンに連結可能なツイストロック式の円筒状の接続金具を末端部に備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明による電線被覆剥離工具は、電線の外周面に当接可能な円弧溝を形成した保持部を有する本体フレームと、第1刃体を固定した刃体ホルダーを保持部に対して進退可能な移動台と、本体フレームと一体になって回転可能な一対の回転板と、を備え、これらの回転板は、ループ状の先端工具を有する絶縁操作棒で操作容易な複数の鉤状の係止歯を外周に有するので、電線被覆剥離工具を容易に回転操作できる。
【0020】
又、本発明による電線被覆剥離工具は、刃先が第1刃体の刃先に対向すると共に、第1刃体の切断面と対向配置された第2刃体を保持部に有するので、絶縁操作棒を用いて、電線被覆剥離工具を半回転(略180度)させることで、電線の被覆を剥離でき、作業効率が優れている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態による電線被覆剥離工具の構成を示す正面図である。
【図2】前記実施形態による電線被覆剥離工具の構成を示す左側面図であり、一方の回転板の図示を省略している。
【図3】前記実施形態による電線被覆剥離工具の構成を示す背面図である。
【図4】前記実施形態による電線被覆剥離工具の構成を示す縦断面図であり、図1のX−X矢視断面図であって、一方の回転板の図示を省略している。
【図5】前記実施形態による電線被覆剥離工具の構成を示す斜視分解組立図である。
【図6】前記実施形態による電線被覆剥離工具の構成を示す縦断面図であり、図1のX−X矢視断面図である。
【図7】前記実施形態による電線被覆剥離工具の構成を示す左側面図である。
【図8】実施形態による電線被覆剥離工具の正面図であり、ループ状の先端工具を有する絶縁操作棒を用いて、電線被覆剥離工具を操作している状態図である。
【図9】実施形態による電線被覆剥離工具の左側面図であり、ループ状の先端工具を有する絶縁操作棒を用いて、電線被覆剥離工具を操作している状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
[電線被覆剥離工具の構成]
最初に、本発明の一実施形態による間接活線用照明装置の取付け具の構成を説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態による電線被覆剥離工具の構成を示す正面図である。図2は、前記実施形態による電線被覆剥離工具の構成を示す左側面図であり、一方の回転板の図示を省略している。図3は、前記実施形態による電線被覆剥離工具の構成を示す背面図である。図4は、前記実施形態による電線被覆剥離工具の構成を示す縦断面図であり、図1のX−X矢視断面図であって、一方の回転板の図示を省略している。
【0024】
図5は、前記実施形態による電線被覆剥離工具の構成を示す斜視分解組立図である。図6は、前記実施形態による電線被覆剥離工具の構成を示す縦断面図であり、図1のX−X矢視断面図である。図7は、前記実施形態による電線被覆剥離工具の構成を示す左側面図である。
【0025】
(全体構成)
図1から図5を参照すると、本発明の一実施形態による電線被覆剥離工具(以下、剥離工具と略称する)10は、縦断面がC字状の本体フレーム1と移動台2を備えている。本体フレーム1は、円弧溝11aを形成した保持部11を一方の端部に形成している。円弧溝11aには、電線Wの外周面を部分的に当接できる。又、本体フレーム1は、保持部11と離隔して対向配置された台部12を他方の端部に形成している。
【0026】
(本体フレームの構成)
図1から図5を参照すると、本体フレーム1は、保持部11と台部12をそれぞれ片持ち状に結合する胴部13を形成している。例えば、本体フレーム1は、アルミニウム合金が成形されて、保持部11、台部12、及び胴部13を構成している。そして、本体フレーム1は、成形後に所定の箇所に開口が切削加工され、又は、所定の箇所に貫通穴及びねじ穴が加工されている。
【0027】
(刃体ホルダーの構成)
図1から図5を参照すると、移動台2は、刃体ホルダー21、送りねじ22、及び円筒状の接続金具23を備えている。刃体ホルダー21は、円弧溝11aと対向するように配置された凹溝21aを形成している(図4又は図5参照)。凹溝21aは、電線Wを外周方向から受け入れることができる(図2又は図4参照)。そして、円弧溝11aと凹溝21aの間に、電線Wを導入することができる。
【0028】
図1から図5を参照すると、刃体ホルダー21は、その前面に片刃の第1刃体41を固定している。第1刃体41は、その刃先が円弧溝11aに向かうように刃体ホルダー21に固定されている。図1又は図5に示されるように、第1刃体41は帯状に形成され、その長手方向の長さによって、電線Wの被覆の剥離幅が規定される。なお、第1刃体41は、凹溝21aの一部を構成している(図4参照)。
【0029】
図1又は図5を参照すると、第1刃体41の両側には、一対の横刃41a・41bを配置している。これらの横刃41a・41bの刃先は、円弧溝11aに向かって配置されている。後述するように剥離工具10を回転すると、一対の横刃41a・41bは、第1刃体41と共働して、電線Wの被覆を所定の幅で外周方向から切断できる。なお、一対の横刃41a・41bは、後述する一対のガイド板21g・21gによって、刃体ホルダー21の両側面に共締めされている。又、図4及び図6では、横刃41bの図示を省略している。
【0030】
図1から図5を参照すると、刃体ホルダー21は、その両側面に一対のガイド板21g・21gを取り付けている。一対のガイド板21g・21gの一部は、胴部13の両側面を囲うように、胴部13を越えて突出している。そして、一対のガイド板21gの突出部の末端部に支持棒21bを取り付けている。例えば、ガイド板21gは、ステンレス又はステンレス合金で形成されている。
【0031】
図1又は図2及び図4を参照すると、一対のガイド板21g・21gの一部は、刃体ホルダー21の前面側に突出し、更に、保持部11に向かって部分的に突出している。そして、これらのガイド板21g・21gの突出部には、一対の被覆ガイド21c・21cを保持している。被覆ガイド21cの基端部は、ねじ21dを介して、圧縮コイルばね21dを取り付けている。これらの圧縮コイルばね21d・21dは、一対の被覆ガイド21c・21cが互いに近づく力を付勢しており、第1刃体41で剥離された電線Wの被覆片を保持できる。
【0032】
(送りねじの構成)
図1から図5を参照すると、送りねじ22は、そのねじ部が台部12に設けた雌ねじ部12sとねじ結合している。送りねじ22の一方の端部は、刃体ホルダー21と回転可能に連結しているが、送りねじ22の軸方向には離間が困難に連結している(図4参照)。したがって、送りねじ22を一方の方向に回転すると、刃体ホルダー21を円弧溝11aに向かって進出できる。一方、送りねじ22を他方の方向に回転すると、刃体ホルダー21を円弧溝11aから後退でき、電線Wを導入できる。
【0033】
図1から図5を参照すると、送りねじ22には、ナット部材22nが螺合している。送りねじ22を一方の方向に回転すると、ナット部材22nが台部12の底面に当接して、刃体ホルダー21の進出を停止できる。
【0034】
(接続金具の構成)
図1から図5を参照すると、送りねじ22は、円筒状の接続金具23を末端部に取り付けている。図2又は図4を参照すると、接続金具23は、底面が開口された円筒状に形成している。接続金具23には、後述する軸部91aが嵌合する軸穴23aが穿設されている。又、接続金具23には、軸穴23aに連通する一対の鉤状の係合溝23b・23bを設けている。
【0035】
(共用型の絶縁操作棒の構成)
図1又は図2を参照すると、接続金具23は、共用型の絶縁操作棒91の先端部に設けた工具部90に連結できる。工具部90は、軸部91a、一対の係止ピン91b・91b、及び突起91cを有している。軸部91aは、絶縁操作棒91の上部に突出している。一対の係止ピン91b・91bは、相反する向きに軸部91aの外周から突出している。突起91cは、軸部91aの先端面から突出するように、工具部90に内蔵された圧縮コイルばね(図示せず)によって、力を付勢されている。
【0036】
図1又は図2を参照して、軸部91aを軸穴23aに挿入して、一方の方向に回動すると、一対の係止ピン91b・91bを係合溝23b・23bに係合できる。そして、工具部90と接続金具23が嵌合した状態では、突起91cが軸穴23aの上壁を弾圧して、接続金具23が工具部90に確実に固定される。そして、このような連結方式は、ツイストロック式と呼ばれている。
【0037】
(第2刃体の構成)
図2から図5を参照すると、剥離工具10は、片刃の第2刃体42を更に備えている。第2刃体42は、保持部11の背面から穿設された矩形の開口111の内壁に固定されている。開口111の一部は、円弧溝11aに連通しており、第2刃体42の刃先が円弧溝11aから突出するように配置されている。
【0038】
図2又は図3を参照すると、第2刃体42は、その刃先が第1刃体41の刃先に対向するように配置されている。又、第2刃体42は、その切断面が電線Wの導線の直径より僅かに広い間隔を設けるように、第1刃体41の切断面と対向配置されている。保持部11と刃体ホルダー21で電線Wを保持した状態で、剥離工具10を反時計方向に半回転(略180度)すると、電線Wの被覆を所定の幅に剥離できる。なお、第1刃体41と第2刃体42は、同じものであるが説明の便宜上、順位数と符号を変えて区別した。
【0039】
図3又は図5を参照すると、第2刃体42の両側には、一対の横刃42a・42bを配置している。これらの横刃42a・42bの刃先は、一対の横刃41a・41bの刃先に対向するように配置されている。後述するように剥離工具10を回転すると、一対の横刃42a・42bは、第2刃体42と共働して、電線Wの被覆を所定の幅で外周方向から切断できる。なお、一対の横刃42a・42bは、後述する一対のガイド板11g・11gの側面にそれぞれ固定されている。又、図4及び図6では、横刃42bの図示を省略している。
【0040】
図1から図5を参照すると、保持部11は、その外壁から段差をもって窪んだ両側面に一対のガイド板11g・11gを取り付けている。一対のガイド板11g・11gの一部は、第2刃体42の両側面を囲うように、開口111の内部に延びている(図3及び図4参照)。例えば、ガイド板11gは、ステンレス又はステンレス合金で形成されている。
【0041】
(分割ベアリングの構成)
図1から図5を参照すると、剥離工具10は、一対の第1分割ベアリング51・51と一対の第2分割ベアリング52・52を更に備えている。第1分割ベアリング51は、ハウジング51hに保持されている。第2分割ベアリング52は、ハウジング52hに保持されている。
【0042】
図1から図5を参照すると、第1分割ベアリング51と第2分割ベアリング52は、同じものであるが説明の便宜上、順位数と符号を変えて区別した。同様に、ハウジング51hとハウジング52hは、同じものであるが説明の便宜上、符号を変えて区別した。又、第1分割ベアリング51及びハウジング51hを代表して、以下に説明する場合がある。
【0043】
図2又は図5を参照すると、例えば、第1分割ベアリング51は、複数の円柱体(ころ)を保持する内輪、内輪を囲う外輪、及び内輪と外輪を連結するリテーナで構成されたころ軸受を用いている。第1分割ベアリング51は、市販の分割型のころ軸受を使用することができる。
【0044】
図1から図3を参照すると、一対のハウジング51h・51hは、一対のガイド板21g・21gの外壁に固定されている。つまり、一対の第1分割ベアリング51・51は、刃体ホルダー21の両側面に固定されている。そして、一対の第1分割ベアリング51・51は、電線Wを外周方向から受けて電線Wの外周を転動可能に案内できる。
【0045】
又、図1から図3を参照すると、一対のハウジング52h・52hは、一対のガイド板11g・11gの外壁に固定されている。つまり、一対の第2分割ベアリング52・52は、保持部11の両側面に固定されている。そして、一対の第2分割ベアリング52・52は、電線Wを外周方向から押さえて電線Wの外周を転動可能に案内できる。
【0046】
引き続き、実施形態による剥離工具10の構成を説明する。図6は、前記実施形態による電線被覆剥離工具の構成を示す縦断面図であり、図1のX−X矢視断面図である。図7は、前記実施形態による電線被覆剥離工具の構成を示す左側面図である。
【0047】
(回転板の構成)
図1又は図3及び図6又は図7を参照すると、実施形態による剥離工具10は、一対の回転板3・3を備えている。回転板3は、円形状の開口31を中心部に有している(図7参照)。又、回転板3は、開口31から遠心方向に向かって開角した切り欠き部32を設けている(図6又は図7参照)。切り欠き部32は、電線Wをその外周方向から開口31に向けて導入できる。
【0048】
図1又は図3及び図6又は図7を参照すると、一対の回転板3・3は、開口31の略中心に電線Wが位置するように、本体フレーム1の両翼に配置されている。本体フレーム1は、水平方向に延びる一対の支持アーム14・14を上部に設けている(図5参照)。図5を参照すると、これらの支持アーム14の両端部には、支柱3aを固定している。支柱3aには、ビスなどで回転板3を固定している。又、一対の回転板3・3は、二本のステイ3b・3bで結合されている。これにより、一対の回転板3・3は、本体フレーム1と一体になって回転できる(図3参照)。
【0049】
図6又は図7を参照すると、回転板3は、複数の鉤状の係止歯33を外周に形成している。これらの係止歯33には、ループ状の先端工具921を係止することが容易であり(図8参照)、先端工具921を有する絶縁操作棒92hを操作して(図9参照)、電線の周りを所定のステップ角度で回動できる(図9参照)。
【0050】
又、図6又は図7を参照すると、回転板3の切り欠き部32は、一方の辺が略平坦な端縁321に形成されている。又、回転板3の切り欠き部32は、他方の辺が端縁321に対して下り傾斜する端縁322に形成されている。端縁321に電線Wをスライドして、円弧溝11aに電線Wを案内することができる。
【0051】
図6又は図7を参照すると、一対の回転板3・3は、透明な合成樹脂板で形成されることが好ましく、内部の様子が観察できて便利である。又、一対の回転板3・3の間には、剥離工具10を囲うように、透明なカバー3cを配置することが好ましく、内部の様子が観察できると共に、剥離された電線Wの被覆の脱落を防止できる。
【0052】
[電線被覆剥離工具の作用]
次に、実施形態による剥離工具10の構成を補足すると共に、操作手順を説明しながら、剥離工具10の作用及び効果を説明する。
【0053】
図8は、実施形態による電線被覆剥離工具の正面図であり、ループ状の先端工具を有する絶縁操作棒を用いて、電線被覆剥離工具を操作している状態図である。図9は、実施形態による電線被覆剥離工具の左側面図であり、ループ状の先端工具を有する絶縁操作棒を用いて、電線被覆剥離工具を操作している状態図である。
【0054】
最初に、図1又は図2を参照して、接続金具23を共用型の絶縁操作棒91の先端部に連結しておく。なお、円弧溝11aと凹溝21aの間に、電線Wが導入できように、保持部11と刃体ホルダー21は、予め離隔しておくことが好ましい(図4参照)。
【0055】
次に、図1又は図2に示された絶縁操作棒91を把持して、電線Wに向けて剥離工具10を移動する。次に、図7に示されるように、端縁321に電線Wをスライドして、円弧溝11aに電線Wを案内する。
【0056】
次に、絶縁操作棒91を回転して、刃体ホルダー21を保持部11に近づける(図4参照)。そして、第1分割ベアリング51と第2分割ベアリング52が電線Wを挟持した段階で(図2参照)、絶縁操作棒91の回転を停止し、絶縁操作棒91を剥離工具10から切り離す。そして、次の作業に移る。なお、絶縁操作棒91は、再び、接続金具23に連結することができ、剥離工具10を電線Wから解放することもできる。
【0057】
実施形態による剥離工具10は、従来のように、二本の絶縁操作棒を操作することなく、共用型の絶縁操作棒91を用いて、電線Wを挟持又は解放できるので、便利であり、作業効率を向上できる。
【0058】
図2を参照して、第1分割ベアリング51と第2分割ベアリング52が電線Wを挟持した状態では、図4に示されるように、第1刃体41と第2刃体42の各刃先が電線Wの被覆に食い込んでいる。そして、次に、図8又は図9に示された絶縁操作棒92hを用いて、剥離工具10を反時計方向に半回転(略180度)することにより、電線Wの被覆を所定の幅で剥離できる。
【0059】
次に、絶縁操作棒92hの操作を説明する前に、絶縁操作棒92hの構成を説明する。図8又は図9を参照すると、絶縁操作棒92hは、その先端部に備えた工具部92に菊座部92mを有している。一方、先端工具921は、菊座部92mに着脱自在に連結される菊座アダプタを基端部に備えている。菊座アダプタに開口されたU字状の切り欠きを菊座部92mの中央部に突出した雄ねじに嵌合し、蝶ナット92nを締結することにより、先端工具921を絶縁操作棒92hの先端部に固定できる。
【0060】
図8を参照すると、先端工具921は、その基端部から開角するように延びた後に、略平行に延びる一対の棒状部材92a・92aと、これらの棒状部材92a・92aの先端部に結合された係止棒92bとで、ループ状に構成されている。
【0061】
図8を参照すると、係止棒92bは、一対の回転板3・3に形成した係止歯33に係合することできる。図9に示されるように、係止棒92bを係止歯33に係合して引っ張ることにより、電線Wを中心にして、剥離工具10を反時計方向に所定のステップ角度で回転できる。又、図9に示されるように、係止棒92bを係止歯33に係合して押すことにより、電線Wを中心にして、剥離工具10を反時計方向に所定のステップ角度で回転することもできる。なお、係止棒92bの両端部には、遠方から視認容易な一対の球状部材92c・92cを設けている(図8参照)。
【0062】
このように、実施形態による剥離工具10は、電線Wの外周面に当接可能な円弧溝11aを形成した保持部11を有する本体フレーム1と、少なくとも第1刃体41を固定した刃体ホルダー21を保持部11に対して進退可能な移動台2と、本体フレーム1と一体になって回転可能な一対の回転板3・3と、を備え、これらの回転板3・3は、ループ状の先端工具921を有する絶縁操作棒92hで操作容易な複数の鉤状の係止歯33を外周に有するので、剥離工具10を容易に回転操作できる。
【0063】
又、実施形態による剥離工具10は、刃先が第1刃体41の刃先に対向すると共に、第1刃体41の切断面と対向配置された第2刃体42を保持部11に有するので、絶縁操作棒92hを用いて、覆剥離工具10を半回転(略180度)させることで、電線Wの被覆を剥離でき、従来と比べて、作業効率が優れている。
【0064】
本発明による電線被覆剥離工具は、以下の効果が期待できる。
(1)回転板は、ループ状の先端工具を有する絶縁操作棒で操作容易な複数の鉤状の係止歯を外周に有するので、回転操作が従来と比べて容易である。
(2)回転板には、大きな切り欠きを開口しているので、電線を導入にすることが容易である。
(3)回転板は透明板からなり、電線被覆剥離工具の確認が容易であるので、電線被覆剥離工具を脱落させる確率を減少できる。
(4)電線被覆剥離工具は、対向する一対の刃体を備えるので、電線を剥離するための回転角度が従来と比べて半分になり、作業時間を短縮できる。
(5)電線被覆剥離工具を支持する場合、共用の絶縁操作棒のみを用いて、電線被覆剥離工具を電線に取り付けることができる。
(6)遠方に存在する直径2cmのリングの穴にフック工具の先端を差し込む細かい作業が不要となり、作業効率を向上できる。
(7)電線被覆剥離工具を安定的に回転できるので、作業時に電線が揺れることを減少できる。
(8)一対の回転板の間には、電線被覆剥離工具を囲うように、透明なカバーを配置しており、剥離された電線の被覆の脱落を防止できる。
【符号の説明】
【0065】
1 本体フレーム
2 移動台
3・3 一対の回転板
10 剥離工具(電線被覆剥離工具)
11 保持部
11a 円弧溝
12 台部
12s 雌ねじ部
21 刃体ホルダー
21a 凹溝
22 送りねじ
31 開口(円形状の開口)
32 切り欠き部
33 係止歯
41 第1刃体
92h 絶縁操作棒
921 先端工具(ループ状の先端工具)
W 電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁操作棒を用いて電線に装着し、第1刃体を電線の周りに回転させて、電線の被覆を軸方向に所定の幅で剥離する電線被覆剥離工具であって、
電線の外周面に部分的に当接可能な円弧溝を形成した保持部を一方の端部に有し、この保持部と離隔して対向配置された台部を他方の端部に有するC字状の本体フレームと、
前記円弧溝と対向するように配置され、電線を外周方向から受け入れ可能な凹溝に前記第1刃体を固定した刃体ホルダーを端部に有し、前記台部に設けた雌ねじ部とねじ結合する送りねじを有し、前記刃体ホルダーを前記保持部に対して進退可能な移動台と、
電線をその外周方向から導入可能な切り欠き部を遠心方向に設ける円形状の開口を中心部に有し、この開口の略中心に電線が位置するように、前記本体フレームの両翼に配置され、当該本体フレームと一体になって回転可能な一対の回転板と、を備え、
これらの回転板は、電線の周りを所定のステップ角度で回動するように、ループ状の先端工具を有する絶縁操作棒で操作容易な複数の鉤状の係止歯を外周に有する電線被覆剥離工具。
【請求項2】
前記回転板の切り欠き部は、電線にスライドして前記円弧溝に電線を案内する略平坦な端縁を一方の辺に有する請求項1記載の電線被覆剥離工具。
【請求項3】
前記回転板は、透明板からなる請求項1又は2記載の電線被覆剥離工具。
【請求項4】
前記本体フレームは、刃先が前記第1刃体の刃先に対向すると共に、切断面が電線の導線の直径より僅かに広い間隔を設けるように、前記第1刃体の切断面と対向配置された第2刃体を前記保持部に更に有する請求項1から3のいずれかに記載の電線被覆剥離工具。
【請求項5】
前記移動台は、電線を外周方向から受けて電線の外周を転動可能に案内する一対の第1分割ベアリングを前記刃体ホルダーの両側面に備え、
前記本体フレームは、電線を外周方向から押さえて電線の外周を転動可能に案内すると共に、一対の前記第1分割ベアリングと相対的に近接可能な一対の第2分割ベアリングを備える請求項1から4のいずれかに記載の電線被覆剥離工具。
【請求項6】
前記送りねじは、共用型の絶縁操作棒の先端部に取り付けられ、相反する向きに突出した一対の係止ピンに連結可能なツイストロック式の円筒状の接続金具を末端部に備える請求項1から5のいずれかに記載の電線被覆剥離工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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