説明

電荷発生装置、帯電装置、画像形成装置、電荷発生方法、帯電方法、及び画像形成方法

【課題】オゾン及びNOx 等の放電生成物の発生を低減することができる電荷発生装置、帯電装置、画像形成装置、電荷発生方法、帯電方法、及び画像形成方法を提供する。
【解決手段】絶縁体上に形成された電極(基板電極)と、この基板電極上に形成された電子放出体層と、前記電子放出体層上に形成され、大気と連接する気体に満たされた空間に面する金属薄膜を一部とする導電体で構成される薄膜電極とにより形成された電子放出素子を用い、前記電子放出素子から放出される電子により被帯電物を帯電させることを特徴とするため、帯電によるオゾン、NOx 等の放電生成物がほとんど発生せず、従来装置に比べてオゾン、NOx等の放電生成物の低減を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間中に電荷を発生させる電荷発生装置、この電荷発生装置を用いて被帯電体を帯電する帯電装置、さらにこの帯電装置を用いた複写機やプリンタ、ファクシミリ、プロッタなど電子写真記録装置、画像形成装置、電荷発生方法、帯電方法、及び画像形成方法に関する。とくに、感光体などの像坦持体(被帯電体)を帯電させるための帯電装置に係り、オゾン等の有害生成物を発生することなく感光体等の像坦持体を帯電させる帯電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、プリンタ、ファクシミリ、プロッタ等の電子写真方式の画像形成装置に用いられ、被帯電物である感光体を帯電する帯電装置には、コロナ帯電器、ローラ帯電器、ブラシ帯電器、固体帯電器等がある。
(コロナ帯電器)
電子複写機、静電記録装置、プリンタ等に最も多く利用されている帯電方式である。しかし、非常に多くのオゾンを発生するという欠点がある。この欠点に関しては、例えば、特許文献1にオゾンの発生量を低減する手段が開示されている。例えば、非常に細い40〜50μmのワイヤを用いて放電を行うことにより50%以下に低減している。
【0003】
また、特許文献2にはワイヤの三方を囲むように配置された金属筐体と解放部近傍に金属メッシュ電極を配置し、ワイヤから発生したオゾンを閉じこめ、オゾン分子の衝突確率を高めることにより放出されるオゾン量の低減を計ることが開示されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1、2に記載の発明ではせいぜい50%程度のオゾン量の低減しか出来ず、機内ガスを排出するにはオゾン吸着剤を含むフィルタを使用するなどの処置が必要であった。
【0005】
(ローラ帯電器)
古くは、特許文献3に開示され、近年、盛んに検討されている帯電方式である。特許文献3に記載の発明は、オゾンの発生を非常に少なくできるので有望視されている。
しかしながら、特許文献3に記載の発明は、接触式ローラを用いるため高速処理ができない、帯電が不均一になりやすいなど難点があった。ローラ表面のトナー汚染、印加するバイアス交流による振動の影響、画像にモワレなどが生じやすい。また、ローラは回転体であり、ローラ表面にクリーニングが必要になるために部材が多くなるという欠点がある。他にも、感光体の感光層が絶縁破壊されてピンホールが発生しやすいことや、振動音、帯電ローラ跡(可塑剤)、ローラの永久変形等が生じやすいという欠点がある。
【0006】
(ブラシ帯電器)
古くは特許文献4などに開示されている。これらの従来技術では、筋状帯電むらが出やすかったり、環境変動に影響され、低温ストリーマ放電による白斑点が顕在化したりしていた。
さらに、感光体磨耗やブラシの抜け、感光体上の傷に対する異常放電と考えられるブラシの溶融などの欠点があった。
【0007】
(オゾン吸着剤)
発生したオゾンを活性炭などの触媒機能により酸化処理したり、表面に吸着させるなどの従来技術はあったが、経時劣化が生じるためにオゾンフィルタの交換、メンテナンスが頻繁に必要であった。
【0008】
(固体帯電器)
古くは、特許文献5に開示されている。
特許文献6には絶縁部材上に放電電極を、微小間隔を介して多数併設する装置が開示されている。
【0009】
特許文献7には、帯電器と非記録体との間隔を500〜3000μmに設定することにより、イオンの飛距離を短くしてオゾンの拡散を抑制すると共にトナーなどの付着を防止することが開示されている。
【0010】
特許文献8には板状基板上の放電電極とその外周に配設する沿面グロー放電手段と帯電器全体を覆うカバーを備えた放電装置が開示されている。
【0011】
特許文献9には平面型固体放電装置の電極材料に特定の仕事関数の材料を用いる事によるNOxの低減が開示されている。
【0012】
さらに、新規な帯電方式を用いたものとして、特許文献10には、ライン電極表面にP−N接合の半導体素子、又はエレクトロルミネッセンス材料よりなる電子放出素子層を設けた電荷発生器、及びこれを一画素単位で独立に駆動して誘電体上に潜像を形成する静電潜像形成装置が開示されている。
【0013】
これらの固体帯電器は、コロナ放電電極のような劣化・破損や汚染などが少ないと見込まれ、装置を小型化できるなどの利点はあるものの、放電に必要な面積が依然として大きく生成オゾンが拡散しやすく、期待するほどオゾンやNOxなどの不快物質の低減は出来ていない。
【0014】
また、環境意識の高まりとともに有害、不快な物質の機外排出が規制される方向にある。すなわち、UL規格、TUV規格、BAM規格など、複数の国、地域で複数の団体により電子写真方式の画像形成装置に対して、発生するオゾン量を規制するための規格が設定されており、帯電装置等においてオゾンの発生を低減することが重要な課題となっている。また、画像形成装置においては、帯電装置の放電により発生する窒素酸化物(NOx)に起因する物質が感光体に付着し吸湿することで、感光体表面電位を低下させることにより不良画像が発生するという不具合が問題になっている。
【特許文献1】特開平9−114192号公報
【特許文献2】特開平6−324556号公報
【特許文献3】特開昭56−91253号公報
【特許文献4】特公昭55−29837号公報
【特許文献5】特開昭54−53537号公報
【特許文献6】特開平5−94077号公報
【特許文献7】特開平6−75457号公報
【特許文献8】特開平9−244350号公報
【特許文献9】特開平9−115646号公報
【特許文献10】特開平8−203418号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、上述した従来の帯電装置(帯電方法)のうち、コロナ帯電器は、非常に多くのオゾン及びNOx を発生する。このため特許文献1、2に記載されているようなオゾン量を低減させるようにしたコロナ帯電器では、せいぜい50%程度のオゾン量の低減しか出来ず、オゾン吸着剤等の併用が必要であった。また、オゾン吸着剤を併用した場合、オゾン量を低減することはできるが、オゾン吸着剤は、経時劣化が生じるためにオゾンフィルタの交換やメンテナンスが必要であり、コストがかかるという問題がある。
【0016】
また、ローラ帯電器は、接触帯電方式のためオゾンの発生を非常に少なくできるが、帯電が不均一になりやすく、また、電子写真方式の画像形成装置に用いた場合、ローラ表面のトナー汚染、ローラに印加するバイアス交流による振動、画像のモワレなどが生じやすいという問題がある。
また、ローラ帯電器は回転体であり、ローラ表面のクリーニングが必要になるために部材が多く、製造コストがかかるという問題があり、その他にもローラ帯電器には、感光体の感光層が絶縁破壊されてピンホールが発生しやすくなったり、振動音、可塑剤等による帯電ローラ跡、ローラの永久変形等が生じやすくなったりするという問題がある。
【0017】
ブラシ帯電器は、接触帯電方式のためオゾンの発生を非常に少なくできるが、筋状帯電むらや環境変動による帯電むらが発生しやすく、また、低温ストリーマ放電、白斑点、感光体磨耗、磨耗感光体の蓄積、ブラシの抜け等の発生や、感光体傷に対する異常放電に起因するブラシの溶融などの欠点がある。
【0018】
さらに、固体帯電器では、装置を小型化できるなどの利点はあるものの、放電面積が広く、期待するほどオゾンやNOxなどの不快物質の低減は出来ていない。
前述の電荷発生器や、それを用いた静電潜像形成装置においては、表面が複雑な穴形状をなしているため、トナーなどの汚れが付いた場合、クリーニングが不可能である。また、局所的な電界が集中しやすいため、予期せぬ放電のために電荷発生素子が破損しやすいなどの欠点を有している。
【0019】
そこで、本発明は上記従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、オゾン及びNOx 等の放電生成物の発生を低減することができる電荷発生装置、帯電装置、画像形成装置、電荷発生方法、帯電方法、及び画像形成方法を提供することを主な目的とする。
【0020】
さらには、電荷発生装置あるいは帯電装置そのもので静電画像を形成することにより、画像を形成する電荷当りのイオン発生量を少なくし、オゾン及びNOx 等の放電生成物の発生を低減し、UL規格、TUV規格、BAM規格などの規格を満たす画像形成装置を提供することを副次的な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するため、請求項1、2、11、12に係る発明は、絶縁体上に形成された基板電極と、前記基板電極上に形成された電子放出体層と、前記電子放出体層上に形成され、大気と連接する気体に満たされた空間に面する1〜50nmの厚さを有する金属薄膜を一部とする導電体で構成される薄膜電極とにより形成された電子放出素子を用い、前記電子放出素子から放出される電子により被帯電物を帯電させることを特徴とする電荷発生装置を用いる。
【0022】
請求項1、2記載の電荷発生装置、請求項11、12記載の電荷発生方法においては、電子放出素子の表面からの電子放出を用いて被帯電物を帯電する。一般に半導体素子から放出される電子のエネルギーは、従来のコロナ放電によるものと比較すると小さく、大気中の気体分子の電離をほとんど起こさずにCO3-イオンやO2-イオンなどの負イオンを生成し、これが被帯電物に到達するか、あるいは電子が直接被帯電物に到達する。
従って、請求項1、2記載の電荷発生装置では、この現象を利用することにより帯電を行うため、帯電によるオゾン、NOx等の放電生成物がほとんど発生せず、従来装置に比べてオゾン、NOx等の放電生成物の低減を図ることができる。
【0023】
請求項3、4、14、15に係わる発明は、従来は耐熱、耐摩耗性材料として注目されていた窒化ホウ素材料が、特定条件下で作製された特定形状の電界電子放出特性が著しく優れていることを見出し、特にsp3-結合性窒化ホウ素膜体を電子放出体として用いて大気圧条件下の空間への電子放出特性が安定性、持続性、高い電子放出電流が得られることから、前述した課題を解決することが可能となる。
【0024】
請求項5、15に係る発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電荷発生装置もしくは請求項11から請求項14のいずれか1項に記載の電荷発生方法において、前記電子放出素子の金属薄膜側の電極に正の電圧を印加し、電子を引き出すことを特徴とするので、帯電効率を向上することが可能となる。
【0025】
請求項6、16に係る発明は、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電荷発生装置もしくは請求項11から請求項15のいずれか1項に記載の電荷発生方法において、前記電子放出素子から放出される電子により被帯電物を帯電させる際に、電子付着が容易な分子種として酸素ガス分子を大気圧下において優勢に存在させ、負イオン生成を容易にすることでイオン生成効率を向上することが出来る。このために電子が放出される概略閉空間には酸素富化膜を用いることで問題の解決を図ることが出来る。
【0026】
請求項7、17に係る発明は、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の電荷発生装置もしくは請求項11から16のいずれか1項に記載の電荷発生方法において、電子放出素子の二つの電極のうち、一方の電極を走査電極とした場合、他方の電極を複数の信号電極で構成し、その複数の信号電極を別々の電位とすることができることを特徴とするので、例えば被帯電物に対して単なる帯電のみならず静電画像を形成することが可能となる。また、オゾン、NOx等の放電生成物のさらなる低減が可能となる。
【0027】
請求項8、18に係る発明は、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の電荷発生装置もしくは請求項11から17のいずれか1項に記載の電荷発生方法において、電子放出素子から放出される電子により被帯電物を帯電させる際に、前記電子放出素子から放出される電子の最大エネルギーが24.3eV以下であることを特徴とするので、電荷発生装置から発生するオゾン、NOx等の放電生成物のさらなる低減が可能となる。
【0028】
請求項9、19に係る発明は、被帯電物を帯電する帯電装置もしくは帯電方法において、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の電荷発生装置を備え、該電荷発生装置の電子放出部と被帯電物との間の間隔を50μm以上開けて配置したことを特徴とするので、オゾン、NOx 等の放電生成物の発生が低減され、且つ、異常放電の発生が防止された帯電装置もしくは帯電方法の提供が可能となる。
【0029】
請求項10、20に係る発明は、被帯電物である像担持体上に静電画像を形成し、該静電画像を現像して可視像化した後、該可視像を転写材に転写し、画像を形成する画像形成装置もしくは画像形成方法において、被帯電物である像担持体を均一に帯電する手段、あるいは、該像担持体上に静電画像を形成する手段として、請求項1から7のいずれか1項に記載の電荷発生装置、あるいは、請求項8および請求項9に記載の帯電装置を具備することを特徴とするので、オゾン、NOx等の放電生成物の発生が低減された画像形成装置もしくは画像形成方法の提供が可能となる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、絶縁体上に形成された電極(基板電極)と、この基板電極上に形成された電子放出体層と、電子放出体層上に形成され、大気と連接する気体に満たされた空間に面する金属薄膜を一部とする導電体で構成される薄膜電極とにより形成された電子放出素子を用い、電子放出素子から放出される電子により被帯電物を帯電させることを特徴とするため、帯電によるオゾン、NOx等の放電生成物がほとんど発生せず、従来装置に比べてオゾン、NOx等の放電生成物の低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明に係る実施の形態の構成、動作及び作用について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態を示す電荷発生装置の概略構成説明図である。
図1において電荷発生装置は、絶縁体からなる基板(例えば、石英ガラス基板)2上に形成された一方の電極(基板電極)3と、この基板電極3の上に形成された電子放出体層4と、電子放出体層5と、電子放出体層5の上に形成され大気と連接する気体に満たされた空間10に面する1〜50nmの厚さを有する金属薄膜を一部とする導電体とで構成される他方の電極(薄膜電極層)6とで形成された電子放出素子1を用い、半導体冷電子放出素子1から放出される電子により被帯電物7を帯電させる。
【0032】
より詳しくは、図1に示す構造の電子放出素子1においては、膜状の電子放出体層4の電子放出側表面には、より多形の構造を具備した電子放出体層5が設けられており、電界電子放出特性に優れた先端の先鋭な構造が優勢となる表面となっている。
【0033】
電子放出体層4および電子放出体層5で構成される電子放出側最表面には薄膜電極層6が形成されている。この薄膜電極層6に対し電源8により正(+)の電圧を印加することにより、電子放出体層4、5に電子が注入される。
【0034】
電子放出体層5の最表面は先端が先鋭な形状を有した構造体がナノメーターサイズの間隔、密集度で分布しており高抵抗となっているため、電界強度が大きくなり、ここで電子が加速され、薄膜電極層6をトネリングして電子放出素子1の外部に電子e-が放出される。この放出された電子e-により、被帯電物7との間の空間10の大気圧の気体がイオン化する。この際、被帯電物7側にはバイアス電源9により正(+)のバイアス電圧が印加されているため、イオン化された気体のうち、負イオンが形を変えながらも負電荷を維持し、被帯電物7側に到達し、被帯電物7はマイナス(−)に帯電する。
【0035】
このように本発明に係る電荷発生装置では、冷電子放出素子1により放電を用いないで被帯電物7を帯電させるため、通常行われているスコロトロンやローラ帯電のように放電による化合物の発生が非常に少ない。
【0036】
<電子放出体 sp3-結合性窒化ホウ素膜体の作製方法>
次に、電子放出体層4および電子放出体層5の作製方法の概略について説明する。
特定の条件下で製作した窒化ホウ素の中には、これを膜状に生成した場合、電界電子放出特性に優れた表面形状を呈してなるものが生成し、強い耐電界強度を有する。
すなわち、窒化ホウ素を気相反応によって基板上に堆積させる場合、基板近傍に高エネルギーの紫外光を照射することで基板上に窒化ホウ素が膜状に形成され、且つ膜表面上には、先端が尖った形状の窒化ホウ素が適宜間隔を置いて光方向に自己組織的に生成・成長し従来の電子放出材料から考えると、極めて高いレベルの電流密度を保ちつつも、材料の劣化、損傷、脱落のない極めて安定した状態、性能を維持し得ることがわかった。
【0037】
本発明に使用した窒化ホウ素膜においては、電界電子放出特性に優れた表面形状が気相反応によって自己造形的に形成されるためには紫外光の照射が必要である。その理由については現段階では必ずしも明確ではないが次のように考えることができる。
すなわち、自己組織化による表面形態形成はイリヤ・プロゴジン氏らによって指摘された、「チューリング構造」として把握され、前駆体物質の表面拡散と表面化学反応とが競合するある種の条件において出現する。ここでは、紫外光照射がその両者の光化学的促進に関わり、初期核の規則的な分布に影響していると考えられる。
【0038】
本発明に使用した、電界電子放出特性に優れたsp3結合性窒化ホウ素膜体を得るための気相反応について条件等を説明する。
使用される反応容器は、図8に示す構造のCVD反応容器である。すなわち、図8において、反応容器1は、反応ガス及びその希釈ガスを導入するためのガス導入口2と、導入された反応ガス等を容器外へ排気するためのガス流出口3とを備え、真空ポンプに接続され、大気圧以下に減圧維持されている。容器内のガスの流路には窒化ホウ素析出基板4が設定され、その基板に面した反応容器の壁体の一部には光学窓5が取り付けられ、この窓を介して基板に紫外光が照射されるよう、エキシマ紫外光レーザー装置6が設定されている。
【0039】
反応容器に導入された反応ガスは、基板表面において照射される紫外光によって励起こされ、反応ガス中の窒素源とホウ素源とが気相反応し、基板上に、一般式;BNで示され、5H型または6H型多形構造を有してなるsp3結合型窒化ホウ素が生成し、析出し、膜状に成長する。その場合の反応容器内の圧力は、0.001〜760Torrの広い範囲において実施可能であり、また、反応空間に設置された基板の温度は、室温〜1300℃の広い範囲で実施可能であることが実験の結果明らかとなったが、圧力は低く、高温度で実施した方が好ましい。なお、基板表面ないしその近傍空間領域に対して紫外光を照射して励起する際、プラズマを併せて照射する態様も一つの実施の態様である。
【0040】
図9は、sp3−結合性窒化ホウ素膜体の作製方法の説明図である。
図9において、プラズマトーチ91は、この態様を示すものであり、反応ガス92及びプラズマ93が基板94に照射されるよう、反応ガス導入口95と、プラズマトーチ91とが基板94に向くように反応容器96に一体的に設定されている。尚、97はエキシマ紫外レーザ、98はエキシマ紫外レーザ97を反応容器96内に照射するための光学系、99は余分なガス100を排出するためのガス流出口である。
【0041】
窒化ホウ素膜体は、以上の反応容器96を用いて作製されるが、以下に具体的な実施例に基づいて説明する。ただし、以下の実施例は、あくまでも本発明を容易に理解するための一助として開示するものであって、これによって本発明は限定されるものではない。
【0042】
アルゴン流量2.54×10Torrl/s(2SLM「standard litter par minutes」)、水素流量6.35×10-1Torrl/s(50sccm)の混合希釈ガス流中にジボラン流量1.25×10-1Torrl/s(10sccm)及び、アンモニア流量2.54×10-1Torrl/s(20sccm)を導入し、同時にポンプにより排気することで圧力30Torrに保った雰囲気中にて、加熱により800℃に保持したシリコン基板上に、エキシマレーザー紫外光を照射した(図9参照)。
【0043】
60分の合成時間により、目的とする薄膜を得た。薄膜生成物をX線回折法により同定した結果、この試料の結晶系は六方晶系であり、sp3結合による5H型多形構造で、格子定数は、a=2.52Å、c=10.5Åであった。
【0044】
走査型電子顕微鏡像によって観察した結果、図10に示すとおり、この薄膜は電界集中の生じやすい先端の尖った円錐状の突起構造物(数μmから数十μmの長さ)に覆われた特異な表面形状が自己造形的に形成されていることが観察された。
尚、図10は、sp3−結合性窒化ホウ素膜体表面の電子顕微鏡写真の一例である。
【0045】
図1は、本発明に係る電荷発生装置の一実施の形態を示す概念図である。
本発明に係る電荷発生装置においては、図1に示すように、電子放出素子1の金属薄膜からなる薄膜電極6に電源8により正(+)の電圧を印加して電子を引き出している。このように絶縁体からなる基板2上に形成された基板電極3の電位に対して、電子放出素子1の表面側の薄膜電極6を正(+)の電位にすると、素子内部からトンネル効果で電子e-が外部に放出され、気体分子と反応し、負イオンを形成するので、電源9でバイアスされた被帯電物7の帯電効率を向上することができる。
【0046】
しかし、電荷発生装置の構成が同じであっても、上記構成とは逆に薄膜電極6に負(−)の電圧を印加すると、電子放出素子1からの電子の放出がなくなるため、気体をイオン化することができなくなり、被帯電物7を帯電することができなくなる。このため、電子放出素子1の表面側の薄膜電極6を正(+)の電位にすることが必要となる。
【0047】
本発明の電荷発生装置においては、電子放出素子1から放出される電子e-により被帯電物7を帯電させる際に、電子放出素子1から放出される電子の最大エネルギーは24.3eV以下となっている。この背景は以下の通りである。
【0048】
NOx の発生は、主に窒素分子の解離により開始する。つまり、e-+N2→e-+2Nの反応が起こり、N+O2→NO+Oとなり、さらに、NO+O+M→NO2+Mとなり、窒素酸化物が作成される。Mは、任意の気体分子である。
この最初の基底状態の窒素分子の解離エネルギーは24.3eVである。
【0049】
本発明では、これ以下のエネルギーにより放出された電子による電子付着のみを主に利用して負イオンを発生させるため、電荷発生装置からの放電生成物の発生の低減が可能である。また、さらに基底状態の酸素分子の解離エネルギーは5.1eVであり、これ以上のエネルギーで酸素分子は酸素原子に解離する。ここで生じた酸素原子は、酸素分子、窒素分子と結合しオゾンを始め様々な放電生成物を発生させる原因となりうるため、本発明の電子のエネルギーは望ましくは5.1eV未満である。
【0050】
本発明の電荷発生装置の電子放出素子1から放出される電子のエネルギーEのエネルギー分布についてリターディング電極を用いてエネルギー分布を測定した結果は、例えば図5で示されるようなプロファイルとなる。
図5は、電子放出素子から放出される電子のエネルギー分布の測定例を示す図である。同図において、縦軸Eは電子エネルギー分布密度N(E)を示し任意目盛りで比較したものである。
図中、特性曲線L1は電源8により印加される直流電圧VDを12Vとした場合を示し、特性曲線L2は直流電圧VDを15Vとした場合を示し、特性曲線L3は直流電圧VDを18Vとした場合を示しており、この図で見るように、電子エネルギーは印加する直流電圧でのコントロールが可能である。
【0051】
電子放出素子1の電子放出部の金属薄膜電極6の表面が平坦な形状となっている。電子放出素子1の固体内では、高々100V程度の電圧でよいが、被帯電物7が感光体等の像担持体の場合、その像担持体上に静電画像を形成してトナーを付着させるためには、数百Vの電圧が必要な場合がある。
この場合パッシェンの法則から平行平板の場合、空気中では330V以下ではコロナ放電等は発生しないが、表面が平坦出ない場合にはこれ以上の電界が素子表面の金属薄膜電極6と被帯電物7とにかかる可能性がある。
つまり、金属薄膜電極6の表面に突起物がある場合、その突起物の部分に電界集中が働いて見かけ上の放電開始電圧が低下してしまい、コロナ放電等が発生する可能性がある。そのため、半導体冷電子放出素子1の電子放出部の金属薄膜電極6の表面の部分が平坦となっている。
【0052】
次に図2は、本発明に係る電荷発生装置の他の実施の形態を示す概念図であり、図1に示した材料と同様の電子放出材料を用いたものである。図3は、図2に示した電荷発生装置の電子放出素子11の表面側の一部を拡大して示す要部平面図である。
【0053】
図2および図3において電荷発生装置は、絶縁体からなる基板(例えば、石英ガラス基板)12上に形成された一方の電極としての基板電極13と、この基板電極13の上に形成された電子放出体層14と、この上に形成された電子放出体層15と、電子放出体層15の上に形成され大気圧と連接する気体に満たされた空間10に面する1〜50nmの厚さを有する金属薄膜を一部とする導電体で構成される他方の電極(薄膜電極)16とで形成された電子放出素子11を用い、半導体冷電子放出素子11から放出される電子により被帯電物7を帯電させる。
【0054】
しかしながら、この電荷発生装置においては、図2および図3に示すように、電子放出素子11の二つの電極13、16のうち、一方の電極13を走査電極とし、他方の電極(薄膜電極)16を複数の信号電極として構成し、電源18、19により信号電極端子17を介して複数の信号電極16に印加される電圧を制御して、複数の信号電極16を別々の電位とするものである。
【0055】
すなわち、図2、図3に示す構成では、信号電極16の電位を種々にすることにより被帯電物7上に階調を持った静電画像を形成することができるようにしたものである。図4は、図3で示される素子をアレイ状に配列し電荷発生装置とし、これを用いて帯電装置を構成した一例である。
図4において、41は感光体ドラム、42は素子アレイ、43は素子印加(駆動)電源、44は共通電極、45はバイアス電源である。
【0056】
電荷発生装置を用いて画像形成装置等に具備される帯電装置を構成する場合、本発明では、電荷発生装置の電子放出部と被帯電物との間の間隔を50μm以上開けて配置した構成としている。
【0057】
図6は、本発明に係る電荷発生装置の他の実施の形態を示す概念図である。
図6に示すように、被帯電物7は円筒状の芯金(電極)7a上に感光層や誘電体層等が積層形成されたドラム状の構造からなり、電荷発生装置が図1と同様の電子放出素子1を用いた構成の場合に、大気圧下での空気の放電開始最低電圧点は、電子放出素子1の電子放出部(金属薄膜電極6の表面)と被帯電物7の間隔が10μm程度で400V程度である。
【0058】
また、被帯電物7のドラムの回転による面振れは最小で10μm程度である。従って、半導体冷電子放出素子1の電子放出部(金属薄膜電極6の表面)と被帯電物7との間に50μm以上の間隔を設けることで、400Vの電圧を電子放出素子1の電極6と、被帯電物7の電極7aとの間に印加した場合、帯電電位を大きくしてもコロナ放電などのような放電現象を伴わずに被帯電物7を帯電することができる。
この結果、オゾン、NOx 等の放電生成物の発生が低減され、且つ、異常放電の発生が防止された帯電装置を実現することができる。
【0059】
本発明の電荷発生装置や、その電荷発生装置を用いた帯電装置は、被帯電物である像担持体上に静電画像を形成し、この静電画像を現像して可視像化した後、この可視像を転写材に転写し、画像を形成する画像形成装置において、被帯電物である像担持体を均一に帯電する手段、あるいは、この像担持体上に静電画像を形成する手段として用いるのに最適であり、オゾン、NOx 等の放電生成物の発生が低減された画像形成装置の提供が可能となる。
【0060】
図7は、本発明に係る画像形成装置の一実施形態を示す概念図であり、例えば図1、図6に示す構成の電荷発生装置を、被帯電物である像担持体21を均一に帯電する帯電装置22として用いた例である。
図7において、符号21は像担持体であるドラム状の光導電性感光体であり、この感光体21の周囲には、感光体21の表面を均一に帯電する帯電装置22、帯電された感光体21にレーザ光等の書込み光LBを照射して静電画像を形成する光書込み装置23、感光体21上の静電画像をトナーで現像して顕像化する現像装置24、感光体21上のトナー画像を転写紙等の転写材に転写する転写装置25、転写後の感光体21上の残留トナーや紙粉等を除去するクリーニング装置26、感光体21上の残留電荷を除電する除電装置27等が配設されている。
【0061】
また、この画像形成装置には、感光体21と転写装置25との間の転写部に転写材Pを給紙する給紙部28と、転写材Pに転写されたトナー画像を定着する定着装置29とが設けられている。図7に示す構成の画像形成装置においては、帯電装置22として、図1、図6に示すような構成の電荷発生装置を用いているので、コロナ放電などのような放電現象を伴なわずに感光体21を均一に帯電することができ、オゾン、NOx等の放電生成物の発生を低減することができる。
【0062】
次に、図8は、本発明に係る画像形成装置の他の実施形態を示す概念図であり、例えば図2、図3に示す構成の電荷発生装置を、被帯電物である像担持体31上に直接に静電画像を形成する手段32として用いた例である。
図8において、符号31はドラム状の像担持体であり、この像担持体31の周囲には、像担持体31の表面に対して電荷発生装置を用いて選択的に帯電して静電画像を形成する静電画像形成手段32、像担持体31上の静電画像をトナーで現像して顕像化する現像装置33、像担持体31上のトナー画像を転写紙等の転写材に転写する転写装置34、転写後の像担持体31上の残留トナーや紙粉等を除去するクリーニング装置35、像担持体31上の残留電荷を除電する除電装置36等が配設されている。また、この画像形成装置には、像担持体31と転写装置34の間の転写部に転写材Pを給紙する給紙部37と、転写材Pに転写されたトナー画像を定着する定着装置38とが設けられている。
【0063】
図8に示す構成の画像形成装置においては、静電画像形成手段32として、図3、図4に示すような信号電極と走査電極を有する構成の電荷発生装置を用いることにより、コロナ放電などのような放電現象を伴わずに像担持体31上に静電画像を形成することができるので、オゾン、NOx 等の放電生成物の発生を低減することができる。
【0064】
また、電荷発生装置を用いて像担持体31の帯電と画像形成を同時に行うので、図7に示した構成よりも簡便な構成の画像形成装置を提供することができる。図8に示した構成の場合、電荷発生装置を用いて静電画像の形成を行うので、像担持体31としては、静電画像を保持できるものならよく、例えば、円筒状の芯金(電極)上に絶縁体層や誘電体層を積層したもの等を用いることができる。
【実施例1】
【0065】
次に実施例により本発明の作用効果を詳細に説明するが、各実施例は本発明を詳しく説明するためのものであり、本発明がこれらの実施例によって何らの制約も受けないことは断るまでもない。
図1に示した電子放出素子1を用いた電荷発生装置(帯電装置)の構成において、以下の条件で被帯電物7を帯電させた。この時の電荷発生装置の周辺におけるオゾン濃度およびNOx濃度の測定を行ったところ、いずれもオゾン、NOxともバックグラウンドレベル以上の値は検出されなかった。
【0066】
・基板(絶縁体)2:石英ガラス基板。
・基板電極3:タングステン(W)(石英ガラス基板上に成膜)。
・電子放出体層4および5:sp3-結合性窒化ホウ素膜体。電子放出体層5は特に5H型または6H型等多形窒化ホウ素を主として含んでいる。
・薄膜電極層6:金(Au)(厚さ約20nm)。
・被帯電物7:絶縁性ハードアルマイトコートしたアルミニウムのアルマイト側。
・電源8、9:直流電源。
・薄膜電極と被帯電物の間隔:1mm。
【実施例2】
【0067】
図1に示した電子放出素子1を用いた電荷発生装置(帯電装置)の構成において、以下の条件で被帯電物7を帯電させた。この時の帯電装置周辺におけるオゾン濃度およびNOx濃度の測定を行ったところ、いずれもオゾン、NOxともバックグラウンドレベル以上の値は検出されなかった。
【0068】
・基板(絶縁体)2:石英ガラス基板。
・基板電極3:W(石英ガラス基板上にスパッタ成膜)。
・電子放出体層4および5:sp3-結合性窒化ホウ素膜体。電子放出体層5は特に5H型または6H型等多形窒化ホウ素を主として含んでいる。
・薄膜電極層6:Au(厚さ約15nm)。
・被帯電物7:リコー製プリンタ用の感光体(OPC)。
・電源8、9:直流電源。
・薄膜電極と被帯電物の間隔:0.5mm。
【実施例3】
【0069】
図2、図3に示す構成の電荷発生装置で被帯電物7を帯電させた。尚、図2は素子構造及び走査電極と信号電極を用いた場合の電気的接合例を示し、図3は実際の電極レイアウト例を示している。
直流電源18により走査電極13と信号電極端子17との間に20Vの電圧を印加し、バイアス電源19により素子11と被帯電物7との間に400Vの電圧を印加し、信号電極(金属薄膜電極)16と被帯電体7との間を100μmの間隔に隔てたときに、300Vの帯電電圧を得ることができた。
【0070】
また、信号電極16と走査電極13との間の電圧のオン、オフにより静電画像のパターンを得ることができ、さらに電極間の電圧をコントロールすることにより帯電電位の分布を作ることができた。この場合、信号電極16が正(+)になる場合に被帯電物7を帯電できた。素子構成の材料的な条件は、実施例2と同じである。ただし、被帯電物7は、裏面をアルミニウムコートしたポリマー基板である。この時の帯電装置周辺におけるオゾン濃度およびNOx濃度の測定を行ったところ、いずれもオゾン、NOxともバックグラウンドレベル以上の値は検出されなかった。
【実施例4】
【0071】
図2、図3に示す構成の電荷発生装置で被帯電物7を帯電させた。
図2は素子構造及び走査電極と信号電極を用いた場合の電気的接合例を示し、図3は実際の電極レイアウト例を示している。図2に示される電子放出体層上に形成され大気と連接する気体に満たされた空間は、概略閉空間を構成しており大気圧のまま、酸素を多く含んでいる。
【0072】
図2では、図中の構成を省略しているが、空気を、小型ダイヤフラムポンプを用いて酸素富化膜を介して上記概略閉空間に強制的に送り、酸素成分が富化された環境となっている。
直流電源18により走査電極13と信号電極端子17との間に20Vの電圧を印加し、バイアス電源19により素子11と被帯電物7との間に400Vの電圧を印加し、信号電極(金属薄膜電極)16と被帯電体7とを100μmの間隔に隔てて配置したときに、電子放出体からの電界電子放出により電子が大気中に放出され酸素分子に付着し負イオン生成と空間への放射により370Vの帯電電圧を得ることができた。
【0073】
また、信号電極16と走査電極13との間の電圧のオン、オフにより静電画像のパターンを得ることができ、さらに電極間の電圧をコントロールすることにより帯電電位の分布を作ることができた。この場合、信号電極16が正(+)になる場合に被帯電物7を帯電できた。素子構成の材料的な条件は、実施例2と同様である。ただし、被帯電物7は、裏面をアルミニウムコートしたポリマー基板である。この時の帯電装置周辺におけるオゾン濃度およびNOx濃度の測定を行ったところ、いずれもオゾン、NOxともバックグラウンドレベル以上の値は検出されなかった。
【実施例5】
【0074】
図6に示す電子放出素子1を用いた電荷発生装置の構成において、以下の条件で被帯電物7の帯電テストを行った。バイアス電源9により素子1と被帯電物7間に400Vの電圧を印加し、金属薄膜電極6と被帯電物7との間の間隔を10、20、30、40、50、60、70、80、90、100μmの間隔にしたときの放電の発生を測定した。各部の構成は以下の通りである。
【0075】
・基板(絶縁体)2:石英ガラス基板。
・基板電極3:Cr(石英ガラス基板上にスパッタ成膜)。
・電子放出体層4および5:sp3-結合性窒化ホウ素膜体。電子放出体層5は特に5H型または6H型等多形窒化ホウ素を主として含んでいる。
・薄膜電極層6:Au(厚さ約20nm)。
・被帯電物7:絶縁性ハードアルマイト、膜厚10μm(内側電極:アルミニウム)。
・電源8、9:直流電源。
以上の帯電テストの結果、金属薄膜電極6と被帯電物7との間の間隔に対する放電発生頻度(10分間)は以下の通りである。
間隔 ;
10μm:すぐ放電が発生し帯電不能
20μm:すぐ放電が発生し帯電不能
30μm:比較的はやく放電が発生し帯電不能
40μm:2回放電が発生
50μm:0回
60μm:0回
70μm:0回
80μm:0回
90μm:0回
100μm:0回
50μmの間隔のものをこのまま50分測定し続けたが、放電は見られなかった。また、60μm、70μm、80μm、90μm、100μmの場合も同様であった。
【0076】
[比較例1]
図11に示す従来のコロナワイヤー方式の電荷発生器(帯電装置)1100を用い、実施例2と同じ条件下で電源1101により電圧を印加して被帯電物1102を帯電した。この時の帯電装置周辺におけるオゾン濃度およびNOx濃度の測定を行ったところ、オゾン:4ppm、NOx:0.6ppmが検出された。
【0077】
〔作用効果〕
請求項1、2、11、12記載の電荷発生装置においては、絶縁体上に形成された電極(基板電極)と、この基板電極上に形成された電子放出体層と、電子放出体層上に形成され、大気圧と連接する気体に満たされた空間に面する1〜50nmの厚さを有する金属薄膜を一部とする導電体で構成される薄膜電極とにより形成された電子放出素子を用い、電子放出素子から放出される電子により被帯電物を帯電させることを特徴とするため、帯電によるオゾン、NOx等の放電生成物がほとんど発生せず、従来装置に比べてオゾン、NOx等の放電生成物の低減を図ることができる。
【0078】
請求項3、4、13、14に係わる発明は、sp3-結合性窒化ホウ素膜体を電子放出体として用いて大気圧条件下の空間への電子放出特性が安定性、持続性、高い電子放出電流が得られることから、この放出電子を帯電のための電荷生成に用いることで、帯電によるオゾン、NOx等の放電生成物が発生せず、従来装置に比べてオゾン、NOx等の放電生成物の低減を図ることができる。
【0079】
請求項5、15に記載される電荷発生装置においては、電子放出素子の金属薄膜側の電極に正の電圧を印加し、電子を引き出すことを特徴とするので、オゾン、NOx等の放電生成物の低減を図れると共に、帯電効率を向上することができる。
【0080】
請求項6、16に係る発明は、電子放出素子から放出される電子により被帯電物を帯電させる際に、電子付着が容易な分子種として酸素ガス分子を大気圧下において優勢に存在させ、負イオン生成を容易にすることでイオン生成効率を向上することが出来る。大気圧中の窒素に対して酸素分子が優勢となるため、電荷生成の主体が電子付着による負イオンとなり、活性種であるオゾンや窒素酸化物であるNOxの生成を防止することが出来る。
【0081】
請求項7、17に記載される電荷発生装置においては、電子放出素子の二つの電極のうち、一方の電極を走査電極とした場合、他方の電極を複数の信号電極で構成し、その複数の信号電極を別々の電位とすることができることを特徴とするので、例えば被帯電物に対して単なる帯電のみならず微細な画素からなる静電画像を形成することができるうえ、オゾン、NOx等の放電生成物の低減が可能となる。
【0082】
請求項8、18記載に記載される電荷発生装置においては、電子放出素子から放出される電子により被帯電物を帯電させる際に、電子放出素子から放出される電子の最大エネルギーが24.3eV以下であることを特徴とするので、電荷発生装置から発生するオゾン、NOx等の放電生成物を極限まで低減することができる。
【0083】
請求項9、19に記載される帯電装置においては、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の電荷発生装置を備え、電荷発生装置の電子放出部と被帯電物との間の間隔を50μm以上開けて配置したことを特徴とするので、オゾン、NOx等の放電生成物の発生が低減され、且つ、異常な放電を伴うことがなく、大気環境下の気体の電離を生じることなく帯電に必要な電荷を発生し帯電に用いる帯電装置を実現することができる。
【0084】
請求項10、20に記載される画像形成装置においては、被帯電物である像担持体を均一に帯電する手段、あるいは、像担持体上に静電画像を形成する手段として、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の電荷発生装置、あるいは、請求項8または請求項9に記載の帯電装置を具備することを特徴とするので、オゾン、NOx等の放電生成物の発生が低減され、UL規格、TUV規格、BAM規格などの規格を満たすことができる。また、電荷発生装置を静電画像形成手段として用いた場合には、装置構成を簡素化でき、低コスト化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、電荷発生装置、帯電装置、ファクシミリや複写機等の画像形成装置、電荷発生方法、帯電方法、及び画像形成方法に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の一実施形態を示す電荷発生装置の概略構成説明図である。
【図2】本発明に係る電荷発生装置の他の実施の形態を示す概念図である。
【図3】図2に示した電荷発生装置の電子放出素子11の表面側の一部を拡大して示す要部平面図である。
【図4】図3で示される素子をアレイ状に配列し電荷発生装置とし、これを用いて帯電装置を構成した一例である。
【図5】電子放出素子から放出される電子のエネルギー分布の測定例を示す図である。
【図6】本発明に係る電荷発生装置の他の実施の形態を示す概念図である。
【図7】本発明に係る画像形成装置の一実施形態を示す概念図である。
【図8】本発明に係る画像形成装置の他の実施形態を示す概念図である。
【図9】sp3−結合性窒化ホウ素膜体の作製方法の説明図である。
【図10】sp3−結合性窒化ホウ素膜体表面の電子顕微鏡写真の一例である。
【図11】従来のコロナワイヤー方式の電荷発生器(帯電装置)の概念図である。
【符号の説明】
【0087】
1 電子放出素子
2 基板
3 電極(基板電極)
4 sp3-結合性窒化ホウ素膜体からなる電子放出体層
5 sp3-結合性窒化ホウ素膜体のうち5H型または6H型多形窒化ホウ素を主として含む電子放出体層
6 薄膜電極層
7 被帯電物
8 電源
9 バイアス電源
11 電子放出素子
12 絶縁体からなる基板
13 走査電極端子
14 sp3-結合性窒化ホウ素膜体からなる電子放出体層
15 sp3-結合性窒化ホウ素膜体のうち5H型または6H型多形窒化ホウ素を主として含む電子放出体層
16 信号電極(薄膜電極層)
17 信号電極端子
18 電源
19 バイアス電源
21、31 像担持体(被帯電物)
22 帯電装置(電荷発生装置)
23 光書込み装置
24、33 現像装置
25、34 転写装置
26、35 クリーニング装置
27、36 除電装置
28、37 給紙部
29、38 定着装置
32 静電画像形成手段(電荷発生装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基体上に形成された基板電極と、前記基板電極上に形成された電子放出体層と、前記電子放出体層上に形成され大気と連接する気体に満たされた空間に面する薄膜電極とで形成された電子放出素子を備え、前記電子放出素子から前記空間に電子を放出するようにしたことを特徴とする電荷発生装置。
【請求項2】
絶縁基体上に形成された基板電極と、前記基板電極上に形成された電子放出体層と、前記電子放出体層上に形成され大気と連接する気体に満たされた空間に面する1〜50nmの厚さを有する金属薄膜を一部とする導電体で構成される薄膜電極とで形成された電子放出素子を備え、前記電子放出素子から前記空間に電子を放出するようにしたことを特徴とする電荷発生装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の電荷発生装置において、前記電子放出体層としてsp3−結合性窒化ホウ素膜体を用いたことを特徴とする電荷発生装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電荷発生装置において、前記電子放出体層として用いるsp3−結合性窒化ホウ素膜体が5H型または6H型等の多形窒化ホウ素を含むことを特徴とする電荷発生装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電荷発生装置において、前記電子放出素子の金属薄膜側の電極に正の電圧を印加し、前記空間に電子を引き出すようにしたことを特徴とする電荷発生装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電荷発生装置において、前記電子放出素子の金属薄膜側の電極に正の電圧を印加し、前記空間が酸素富化膜を介して酸素を優勢に含むようにしたことを特徴とする電荷発生装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の電荷発生装置において、前記電子放出素子の基板電極と薄膜電極との二つの電極のうち、いずれか一方の電極を走査電極とし、他方の電極を複数の異なる電位の信号電極としたことを特徴とする電荷発生装置。
【請求項8】
前記電子放出素子から前記空間に放出される電子により被帯電物を帯電させる帯電装置であって、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の前記電子放出素子から放出される電子の最大エネルギーが24.3eV以下であることを特徴とする帯電装置。
【請求項9】
前記電子放出素子から前記空間に放出される電子により被帯電物を帯電させる帯電装置であって、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の電荷発生装置を備え、該電荷発生装置の電子放出部と前記被帯電物との間の間隔を50μm以上設けて配置したことを特徴とする帯電装置。
【請求項10】
被帯電物である像担持体上に静電画像を形成し、該静電画像を現像して可視像化した後、該可視像を転写材に転写し、画像を形成する画像形成装置において、
前記像担持体を均一に帯電する手段、あるいは、該像担持体上に静電画像を形成する手段として、請求項1から7のいずれか1項に記載の電荷発生装置、あるいは、請求項8または請求項9に記載の帯電装置を具備したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
基板電極と、前記基板電極上に形成された電子放出体層と、前記電子放出体層上に形成され大気と連接する気体に満たされた空間に面する薄膜電極とで形成された電子放出素子から前記空間に電子を放出することを特徴とする電荷発生方法。
【請求項12】
基板電極と、前記基板電極上に形成された電子放出体層と、前記電子放出体層上に形成され大気と連接する気体に満たされた空間に面する1〜50nmの厚さを有する金属薄膜を一部とする導電体で構成される薄膜電極とで形成された電子放出素子から前記空間に電子を放出することを特徴とする電荷発生方法。
【請求項13】
請求項11または12記載の電荷発生方法において、前記電子放出体層としてsp3−結合性窒化ホウ素膜体を用いることを特徴とする電荷発生方法。
【請求項14】
請求項13に記載の電荷発生方法において、前記電子放出体層として用いるsp3−結合性窒化ホウ素膜体が5H型または6H型等の多形窒化ホウ素を含むことを特徴とする電荷発生方法。
【請求項15】
請求項11から請求項14のいずれか1項に記載の電荷発生方法において、前記電子放出素子の金属薄膜側の電極に正の電圧を印加し、前記空間に電子を引き出すことを特徴とする電荷発生方法。
【請求項16】
請求項11から請求項15のいずれか1項に記載の電荷発生方法において、前記電子放出素子の金属薄膜側の電極に正の電圧を印加し、前記空間が酸素富化膜を介して酸素を優勢に含むことを特徴とする電荷発生方法。
【請求項17】
請求項11から請求項16のいずれか1項に記載の電荷発生方法において、前記電子放出素子の基板電極と薄膜電極との二つの電極のうち、いずれか一方の電極を走査電極とし、他方の電極を複数の異なる電位の信号電極とすることを特徴とする電荷発生方法。
【請求項18】
前記電子放出素子から大気と連接する気体に満たされた空間に放出される電子により被帯電物を帯電させる帯電方法であって、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の前記電子放出素子から放出される電子の最大エネルギーを24.3eV以下とすることを特徴とする帯電方法。
【請求項19】
前記電子放出素子から前記空間に放出される電子により被帯電物を帯電させる帯電方法であって、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の電荷発生装置を備え、該電荷発生装置の電子放出部と前記被帯電物との間の間隔を50μm以上設けて配置することを特徴とする帯電方法。
【請求項20】
被帯電物である像担持体上に静電画像を形成し、該静電画像を現像して可視像化した後、該可視像を転写材に転写し、画像を形成する画像形成方法において、
前記像担持体を均一に帯電する手段、あるいは、該像担持体上に静電画像を形成する手段として、請求項1から7のいずれか1項に記載の電荷発生装置、あるいは、請求項8または請求項9に記載の帯電装置を具備することを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−233068(P2007−233068A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−55141(P2006−55141)
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】