説明

電解方法、装置及びシステム

本発明は、電解方法、電解電極、電解容器、電解装置、及び燃焼のための電解ガスを使用するシステム、特に、燃焼エンジン、例えば、ピストン又はタービンエンジンであって、電解電極を振動周波数で人為的に振動させ、且つ電解電極の前記電圧を前記振動周波数の低調波周波数で発振させるよう構成されたものに係る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解方法、電解装置、及び燃焼のための電解ガスを使用するシステム、特に、燃焼エンジン、例えば、ピストン又はタービンエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
水素及び酸素又はその化学量論的混合物(以下、ブラウンガス又は爆鳴気と称される)を水から電解により得ることが以前に知られている。従って、電解により得られた水素を再生可能な燃料として利用できるようにするために、この電解における再生可能なエネルギー源からの電気を利用することも以前に提案されている。これまで、これらの提案は、主として、既存の電解装置の効率が低いために、その成功性が限られている。
【0003】
中国特許出願CN1363726Aには、ある電圧下にある少なくとも1つの電解電極にわたり電解液からガスを分離するための電解方法の効率を高めるために、前記電解電極を振動周波数で人為的に振動させることが提案されている。
【0004】
電解電極の表面に生じるガス気泡は、この人為的振動の下で迅速に脱出する。従って、電極の有効表面がガス気泡によって著しく減少されることはなく、電極の表面と電解液との間に最適な電子の交換を維持することができる。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、前記効率を更に高めることである。本発明の少なくとも1つの実施形態によれば、この目的は、電解電極の前記電圧が前記共振周波数の低調波周波数で発振するという点で達成される。
【0006】
電極電圧の調波発振が振動と相互作用して電解の効率を更に高める。又、振動は、液体分子それ自体にも影響すると思われ、分子間の衝突により電解の効率を意外にも高める。
【0007】
好ましくは、前記電解電極は、共振周波数で振動される。その結果、2つの作用が更に増幅され、そして電界の効率がもっと高くなる。
【0008】
好ましくは、前記電解液は、水を含み、前記分離されたガスが可燃性の水素含有ガスになるようにする。その結果、水から高い効率で有効な燃料を得ることができる。
【0009】
好ましくは、可燃性水素含有ガスが燃焼され、この燃焼から生じる高温排気ガスが水液体及び/又は可燃性水素含有ガスを予熱する。再生熱のこの使用により、電解及び燃焼の両方の効率を高めることができる。
【0010】
又、本発明は、
a)各々導電性材料より成り電解回路へ接続するための電気接点をもつ少なくとも一対の実質的に同様の電極と、個別の振動回路へ接続するための2つの電気接点をもつピエゾ素子とを含む電解容器、
b)前記電極に接続された電解回路であって、電極対の2つの電極の各々が逆の極性で回路に接続されるような電解回路、及び
c)前記ピエゾ素子に接続された振動回路、
を備え、前記振動回路は、振動周波数で出力電圧を制御するためのレギュレータを有し、前記電解回路は、前記振動周波数の低調波周波数で電解回路の出力電圧を制御するために前記レギュレータにも接続される、電解装置に係る。
【0011】
好ましくは、前記レギュレータは、パルス巾レギュレータである。
【0012】
好ましくは、前記振動周波数は、共振周波数である。
【0013】
好ましくは、前記電解装置は、化石燃料の消費及びそれに関連した温室効果を減少するために再生可能なエネルギー源からの電気供給を備えている。
【0014】
又、本発明は、前記電解装置と、燃焼装置と、この燃焼装置へ可燃性電解ガスを供給するための電解装置と燃焼装置との間のガス管路とを含む燃焼システムにも係る。その結果、ある環境において、電気を有用な仕方で熱エネルギーに変換することができる。
【0015】
好ましくは、前記ガス管路は、安全バブラーを含む。これは、燃焼装置からのフラッシュバックが電解容器にダメージを及ぼすのを防止する。
【0016】
好ましくは、前記ガス管路は、安全バブラーの前に接続される逆止弁も含む。これは、電解容器に負圧力がある場合に、流体が安全バブラーから電解容器へ引き戻されるのを防止する。
【0017】
好ましくは、燃焼システムは、前記ガス管路に接続された電解ガス蓄積タンクも有する。その結果、電解ガスは、燃焼装置の負荷が大きい間に使用するように蓄積することができる。
【0018】
好ましくは、燃焼システムは、少なくとも1つの熱交換器がガス管路及び/又は電解タンクに接続されるようにして燃焼システムに接続された排気管路も有する。その結果、可燃性電解ガス及び/又は電解容器を燃焼ガスにより再生予熱することができる。
【0019】
好ましくは、前記燃焼装置は、燃焼エンジン、好ましくは、ピストン又はタービンエンジンである。その結果、ある環境の下では、電気を有用な仕方で機械的エネルギーに変換することができる。
【0020】
本発明は、添付図面を参照して、以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態による電解電極を示す図である。
【図2】図1のような一対の電解電極をもつ本発明の一実施形態による電解装置を示す概略図である。
【図3】図1のような電解装置及び燃焼エンジンを含む本発明の一実施形態による燃焼システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1に示す電解電極1は、ステンレススチールの薄いプレート状電極であり、電気接点2及びピエゾ素子3が絶縁接着剤により電極の表面に取り付けられる。このピエゾ素子3は、圧電セラミックディスク4を含み、その中心に第1の電気接点5が位置し、セラミックディスク4の周りには、黄銅の外側リング6が第2の電気接点7と共に設けられる。それ故、接点5と7との間の交流電圧でピエゾ素子3の振動を引き起こすことができ、この振動は、特に、電圧の周波数が電極の共振周波数である場合には、電極1全体に作用する。
【0023】
図2に示す電解装置において、電解液9、この場合は、塩水を収容する閉じた電解容器8は、図1に示した形式の本質的に同様の電極1を一対以上有している。それ故、各電極1には、ピエゾ素子3が取り付けられる。
【0024】
ピエゾ素子3の接点5及び7は、前記ピエゾ素子3を共振周波数でアクチベートするために、耐化学的ケーブルを経て制御モジュール11の振動回路10へ接続される。本発明の好ましい実施形態では、この振動回路10は、周波数をセットするための結晶と、手動調整なしに最適な共振周波数を維持するためのPLL回路と、パルス出力電圧を駆動するための自己誘導コイルとを収容している。
【0025】
電極1の接点2は、次いで、制御モジュール11の電解回路12に接続される。この電解回路12は、それ自身、各電極対の電極1間にパルス巾調整された電圧を印加するために振動回路10に接続され、このパルス巾調整された電圧の周波数は、振動回路の共振周波数と同期された低調波周波数である。
【0026】
使用中、ピエゾ素子3により、電極1の共振周波数は、これら電極1を経て周波数が水の分子に伝達されるようにセットされる。水の電解は、パルス巾調整された電圧を電極1に印加することによりサポートされる。
【0027】
テーブル1は、直径130mm厚み1mmのディスク状電極を伴うこの電解装置のテスト例のパラメータを示す。

テーブル1:電解パラメータ
【0028】
図3は、電解容器8で処理された電解ガスを、燃焼装置、この場合は、燃焼エンジン13のための燃料として使用することのできる燃焼システムを示す。本発明のこの実施形態の電解容器8は、安全性の理由で、圧力センサ14と、過圧弁15と、電解液レベルセンサ16とを収容する。圧力センサ14は、電解容器8の内圧を監視し、そして内圧が高過ぎる場合に電解を中止するためにモータ制御モジュール26を経て制御モジュール12に接続される。又、過圧弁15は、内圧が危険レベルを越えて上昇するのを防止するようにセットされる。又、電解液レベルセンサ16は、電解液レベルが特定レベルより下がった場合に供給管路17を経て電解液の供給を行うためにモータ制御モジュール26に接続される。この供給管路17は、図示されたように、電解容器8を電解液タンク18に接続することができ、そして制御モジュール26に接続されたポンプ19と、逆止弁とを有し、使用中に、電解容器8内の電解液レベルが電極1の上に維持されるようにする。
【0029】
電解容器8は、ガス管路20を経て燃焼エンジン13に接続され、燃焼エンジン13に電解ガスを供給できるようにしている。ガス管路20には、逆止弁21、電子制御弁22、安全性バブラー23、カーボンブラシのないモータにより駆動される真空ポンプ24、及び水セパレータ25が接続される。安全性バブラー23は、燃焼からのフラッシュバックを保持して、電解容器8にダメージが及ばないようにするために含まれる。又、真空ポンプ24のモータも、モータ制御モジュール26に接続され、その回転速度をモータ制御モジュール26によって調整できるようにしている。水セパレータ25の下流では、ガス管路20が3つの管路20a、20b及び20cへ分岐する。管路20aでは、このガス管路20aを通るガス流を調整するために制御弁27がモータ制御モジュール26に接続される。管路20bは、モータ制御モジュール26及びガス蓄積タンク29に接続された三方弁28を含む。このガス蓄積タンク29は、弾力性ダイヤフラム30により、三方弁28に接続されたガス部分29aと、減圧管路31を経てエンジン13の入口32に接続されると共にソレノイド弁34を経てモータ制御モジュール26によって調整される空気入口33が設けられた真空部分29bと、に分割される。減圧管路31には、一方弁41が取り付けられる。一方弁35をもつ管路20cは、管路20bを橋絡する。3つの管路20a、20b及び20cは、エンジン13の入口へと開いており、モータ制御モジュール26に接続されたガスペダル36により空気及び燃料の供給が調整される。エンジンの排気37は、2つの熱交換器38、39を通過する。第1の熱交換器38は、可燃性電解ガスを予熱するために管路20aに接続される。モータ制御モジュール26により制御される制御弁40によって調整される第2の熱交換器39は、電解容器8を予熱する。
【0030】
使用中に、電解容器8で処理された可燃性電解ガスは、管路20、逆止弁21及び電気ソレノイド弁22を経て安全性バブラー23へ送り込まれる。可燃性電解ガスは、安全性バブラー23から真空ポンプ24により送出される。次いで、可燃性電解ガスは、水セパレータ25に通されて、ガス管路20に運び込まれた水滴(カージャダー等)を分離した後に、可燃性電解ガスがエンジン13に入るようにされる。管路20a及び20bを各々経て、可燃性電解ガスは、モータ作動の制御弁27及び電気的に制御される三方弁28へ送られる。これらの弁は、エンジン13の負荷に基づいてモータ制御モジュール26により制御される。弁27の下流で、可燃性電解ガスは、熱交換器38により予熱された後に、エンジン13へ供給される。管路20bの橋絡は、一定のエンジン負荷において作用する。可燃性電解ガスは、次いで、管路20cを経てエンジン13へ供給される。
【0031】
エンジン13から加速が要求されると、ガス蓄積タンク29からの可燃性電解ガスの流れを、管路20bを経てエンジン13へ通すことができるように、三方弁28が切り換わる。ガス蓄積タンク29は、エンジン13が減速を行うときに自動的に迅速に補充され、入口32に真空が生じるために、ダイヤフラム30が減圧管路31を経て引っ張られ、ガス蓄積タンク29は、減速時にエンジン13が必要としない少量の可燃性電解ガスを取り込む。
【0032】
本発明は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲内で変更が考えられる。例えば、ここに示す実施形態では、絶縁接着剤を使用してピエゾ素子が電極に取り付けられたが、導電性接着剤を使用してもよい。このため、本発明の説明及び添付図面は、単なる例示に過ぎない。
【符号の説明】
【0033】
1:電極
2:電気接点
3:ピエゾ素子
4:圧電セラミックディスク
5:第1の電気接点
6:外側リング
7:第2の電気接点
8:電解容器
9:電解液
10:振動回路
11:制御モジュール
12:電解回路
13:燃焼エンジン
14:圧力センサ
15:過圧弁
16:電解液レベルセンサ
17:供給管路
18:電解液タンク
19:ポンプ
20:ガス管路
21:逆止弁
22:電子制御弁
23:安全性バブラー
24:真空ポンプ
25:水セパレータ
26:モータ制御モジュール
27:制御弁
28:三方弁28
29:ガス蓄積ポンプ
30:弾力性ダイヤフラム
31:減圧管路
32:エンジンの入口
33:空気入口
34:ソレノイド弁
35、41:一方弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある電圧下にある少なくとも1つの電解電極を経て電解液から電解ガスを分離するための電解方法において、前記電解電極を振動周波数で人為的に振動させ、且つ前記電解電極の前記電圧を前記振動周波数の低調波周波数で発振させることを特徴とする電解方法。
【請求項2】
前記振動周波数は、共振周波数である、請求項1に記載の電解方法。
【請求項3】
前記電解液は、水を含み、前記分離されたガスが可燃性の水素含有ガスを含むようにする、請求項1又は2に記載の電解方法。
【請求項4】
前記可燃性水素含有ガスが燃焼され、この燃焼から生じる高温排気ガスが水液体及び/又は前記可燃性水素含有ガスを予熱する、請求項3に記載の電解方法。
【請求項5】
a)各々導電性材料より成り電解回路へ接続するための電気接点をもつ少なくとも一対の実質的に同様の電極と、個別の振動回路へ接続するための2つの電気接点をもつピエゾ素子とを含む電解容器、
b)前記電極に接続された電解回路であって、電極対の2つの電極の各々が逆の極性で回路に接続されるような電解回路、及び
c)前記ピエゾ素子に接続された振動回路、
を備えた電解装置において、
前記振動回路は、振動周波数で出力電圧を制御するためのレギュレータを有し、そして前記電解回路は、前記振動周波数の低調波周波数で電解回路の出力電圧を制御するために前記レギュレータにも接続されることを特徴とする電解装置。
【請求項6】
前記レギュレータは、パルス巾レギュレータである、請求項5に記載の電解装置。
【請求項7】
前記振動周波数は、前記電極の共振周波数である、請求項5又は6のいずれかに記載の電解装置。
【請求項8】
再生可能なエネルギー源からの電気供給を備える、請求項5から7のいずれかに記載の電解装置。
【請求項9】
請求項5から8のいずれかに記載の電解装置と、燃焼装置と、この燃焼装置へ可燃性電解ガスを供給するための電解装置と燃焼装置との間のガス管路とを含む燃焼システム。
【請求項10】
前記ガス管路は、安全バブラーを含む、請求項9に記載の燃焼システム。
【請求項11】
前記ガス管路は、前記安全バブラーの前に接続された逆止弁も含む、請求項10に記載の燃焼システム。
【請求項12】
前記ガス管路に接続された電解ガス蓄積タンクも有する、請求項8から11のいずれかに記載の燃焼システム。
【請求項13】
少なくとも1つの熱交換器が前記ガス管路及び/又は電解タンクに接続されるようにして前記燃焼システムに接続された排気パイプも備えた、請求項8から12のいずれかに記載の燃焼システム。
【請求項14】
前記燃焼装置は、燃焼エンジンである、請求項8から13のいずれかに記載の燃焼システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−515845(P2012−515845A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546769(P2011−546769)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/050538
【国際公開番号】WO2010/084102
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(511176263)
【Fターム(参考)】