電解水を用いた加湿器
【課題】水を電気分解して得られる次亜塩素酸を含む電解水を利用する加湿装置において、加湿量と関係なく常に電解水濃度を一定に保つ。
【解決手段】電極1を対向して設置し、電極1面を水面下に配置すると共に、対向する電極1の表面に摺動するように絶縁体2を配置し、絶縁体2の位置の移動によって電極1を覆う面積を変更することによって、加湿量に見合った量の電解水を生成するように制御する。
【解決手段】電極1を対向して設置し、電極1面を水面下に配置すると共に、対向する電極1の表面に摺動するように絶縁体2を配置し、絶縁体2の位置の移動によって電極1を覆う面積を変更することによって、加湿量に見合った量の電解水を生成するように制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電解水の利用に関わる技術であり、電解水生成のための制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塩素を含む水を電気分解すると、次亜塩素酸が含まれる水が生成され一般に電解水と呼ばれている。電解水は含有する次亜塩素酸、次亜塩素酸イオン等による化学作用により、殺菌等の効果を有しており、食品製造にも利用されるほど安全性も高いものである。
電解水を工業用の洗浄液として使用する場合、電解水を生成する処理装置では電気分解の効率、電解水の生成率、電解水生成の制御性の向上のために以下の手段を備えることがある。(1)電極間距離を可変手段、(2)電極表面積を可変手段、(3)隔膜材料にイオン交換膜とガス透過性膜を使用、(4)電解時、清浄時の温度制御機構、(5)電解槽圧力可変構造、(6)超音波発振機構、(7)電解槽外部磁場発生機構。
【0003】
特に(2)の手段において、電解水生成の際に、印加電圧を変えることなく必要量の電解水を確保するためには、電極位置を変更することによって水に浸る電極面積を変化させて、生成量を変化させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−256259
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Wikipedia「電解水」(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%BB%E8%A7%A3%E6%B0%B4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
加湿器に電解水を使用すると、周囲の温度、湿度や加湿器の運転モードによって加湿量が変化し、電解水の使用量が異なって来る。このため、次亜塩素酸等の濃度を保とうとすると加湿容量に見合った電解水の生成機構が必要となるが、従来の方法では、水に浸る電極の面積を電極の浸漬深さで調整していたため、通電部分を上下動する安全性に課題が残る。また、常に電極の先端部から水に浸漬される構造であったため、電極先端部から電極が摩耗するために電極の位置制御だけでは性能が確保できないという欠点があった。また、電解水の生成量を電圧変更で対応しようとしても、加湿手段駆動回路の電圧を簡単に変更できるような構成にはなっていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る、電解水生成装置は、水の電気分解を行って生成した電解水を含む水から加湿手段によって微細な水滴を発生させて、室内に送出する加湿装置において、電気分解を行う電極は対をなす導電体であって、その電極面を水面下に配置するとともに、導電体の間に絶縁体を摺動可能に挟み、絶縁体位置の移動によって電極の露出面積を変更することによって電解水の生成量を制御することを特徴とする。
【0008】
また、電極は、電解水生成に関わる面を全て水面下に配置することが好ましい。
【0009】
また、絶縁体の移動量は、加湿量の増減に対応して、電極の露出部分を増減するように制御されることが好ましい。
【0010】
また、絶縁体の移動量は、加湿手段への電気入力の増減に対応して、電極の露出部分を増減するように制御されることが好ましい。
【0011】
また、絶縁体の移動量は、微細な水滴を送出するためにさらに設けた送風装置への電気入力の増減に対応して、電極の露出部分を増減するように制御されることが好ましい。
【0012】
また、絶縁体の移動量は、前記電極の上下方向もしくは左右方向の一端を始点として露出面積を増減するように制御され、前記始点は予め定める期間で上下方向もしくは左右方向の他端に変更されることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
加湿量に応じて電解水を生成する電極の面積を変更するので、運転モ−ドや送風量に対応して適切な電解水生成量とすることが出来、送出する電解水の濃度を必要な濃度とすることが出来る。
【0014】
また、電極を常に水没させる構造とすると、加湿のための水を蓄える水槽の水面の上下動によって電極面積が変化しない。
【0015】
また、絶縁物の初期位置設定を変えることで能動となる電極の位置も変化せることが出来、電極の消耗を均一にできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】電解水生成に関わる電極面積と電流値の関係を示すグラフ
【図2】電解水生成に関わる電流値と次亜塩素酸の生成量の関係を示すグラフ
【図3】本発明の実施形態1に関わる加湿装置の模式図
【図4a】本発明の実施形態に関わる電極と絶縁体の位置関係を示す模式図(能動電極面積を100%とする制御例)
【図4b】本発明の実施形態に関わる電極と絶縁体の位置関係を示す模式図(能動電極面積を75%とする制御例)
【図5a】本発明の実施形態に関わる電極と絶縁体の位置関係を示す模式図(電極上端を起点とする制御例)
【図5b】本発明の実施形態に関わる電極と絶縁体の位置関係を示す模式図(電極下端を起点とする制御例)
【図6a】超音波式加湿手段の回路ブロック
【図6b】駆動制御信号の例を示す模式図
【図7】本発明の実施形態2に関わる加湿装置の模式図
【図8】本発明の実施形態3に関わる加湿装置の模式図
【図9】従来の加湿装置の模式図
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施形態1)
図1に電極面積と電流の関係を示す。電極間距離3mm、電圧15Vを電気伝導率200μS/cmの標準的な水道水に印加した際の特性である。ここから分かるように対向電極の面積と電極間に流れる電流値はほぼ比例関係にある。このことから対向電極の面積の制御により電流の値を制御できることが理解できる。
【0018】
図2に電流と生成する次亜塩素酸の量を示す。100mlの水で5分間、次亜塩素酸を生成した際の電流と濃度の関係である。電流値と次亜塩素酸の生成量は、直線関係にあることが分かる。上記二つのデータより、対向電極の面積と次亜塩素酸の生成量が直線関係にあることがわかる。
【0019】
図3に本発明による加湿装置の模式図を示す。図3において、電極1は、ステンレス板やチタン板等の腐食に強い金属体を一対で対向させて使用し、水槽に全没する配置としている。対向する電極1の間に電極面積を調整するための絶縁体2を各々の電極に対して摺動可能に設置し、駆動装置3によって上下動可能にしている。本実施形態では、絶縁体2の大きさは電極1の対向する面を全て覆う大きさとしているが、絶縁体の大きさを電極の大きさよりも小さくして制御範囲を小さくすることも可能であり実用される。本実施形態では、対抗する電極1の一方を正、他方を負として15V の電圧を印加している。
【0020】
また、加湿のための水を貯蔵する水槽4は、図示しない給水タンクによって常に一定の水位を保つように給水される。
【0021】
本実施形態においては、加湿手段を超音波式加湿手段7aとしたので、超音波振動子を水槽底部に備え、超音波によって水槽中の水に振動を加えて微細な水粒子8aを水面から発生させる。水面に発生した微細な水粒子8aは送風装置5によって空気と共に送出され室内の加湿に寄与する。
また、発生した次亜塩素酸の濃度は用途によっても必要量が異なるが、0.1ppmから数十ppmとなるように設定する。表1に、細菌等に対する電解水の殺菌効果の一覧表を示す。ここで、表に示す各時間は、電解水によって各微生物が殺菌又は失活するまでの時間である。
【0022】
【表1】
【0023】
このような加湿装置では、送風量が同じであれば、加湿量は、超音波振動子に加える電力によって最大加湿量が決まるので、予め実験によって加湿装置を調整して最大加湿量時に必要な電極寸法を設定するとともに、加湿量と加湿手段に加える電力との関係を求めることが必要である。このようなデータに基づいて、電極面積と加湿量との関係を求めてデータベースとして使用する。
【0024】
絶縁体駆動装置3は、制御装置6aに収納した前記データベースに基づいて絶縁体2の移動量を決定する。図1、図2から理解されるように電極面積と次亜塩素酸の生成量との間にはほぼ直線関係が成立するので、加湿モードによって加湿量を変化する場合は、その加湿量に応じて比例的に電極面積を調整することで、電圧を調整することなく所望する次亜塩素酸の生成量が得られる。
【0025】
また、本発明の実施形態1では、超音波加湿手段7aに送り出す制御信号のデューティ比に応じて面積を調整することを例にしているが、駆動電圧が可変である超音波加湿手段では、振動子の電圧フィードバック等で制御してもよい。また、制御範囲は狭くなるが超音波振動子の入力が同じであれば、送風量によっても加湿量が変化するので、送風装置モータの回転数フィードバック値から、電極面積を調整するような制御も可能である。
【0026】
図4に電極面積の制御例を示す。図4aはこのような加湿装置において加湿量が最大の場合の絶縁体2の位置を示す。電極1の間に絶縁体2を挟まずに最大の面積を使用して次亜塩素酸を含む電解水を生成する。図4bは加湿量が最大加湿量から75%の場合の絶縁体位置を示す。電極面積の25%を絶縁体2で遮蔽することで、加湿量75%時でも最大加湿時と同等の濃度を保つことができる。
【0027】
また、絶縁体2の上下移動が可能なため、加湿量が少なく常に電極1の一部を遮蔽している際には、図5a、図5bの様に遮蔽している電極部分を定期的もしくは不定期的に変化させることで電極1の劣化の偏りを低減させることが可能となる。この場合は、制御装置に記憶されている絶縁体2の初期位置を電極1の上端部を「0」とする場合と下端部を「0」とする場合を予め定める期間で切換えて制御する。同様に左右方向で初期位置「0」を切換えてもよい。
【0028】
図6aに超音波式加湿器の駆動回路ブロックを示す。また、図6bに駆動制御信号の例を示す。この場合は、基本となるパルスは40kHzであり、パルスを入力する時間と休止する時間との比率(デューティ比)を変化させることによって全電力を変化させる回路である。このデューティ比に対応して能動となる電極面積が決定される。即ち、デューティ比が高い時は加湿量が多く能動となる電極面積も多くするように制御が行われ、逆の場合には能動となる電極面積も小さくするように制御が行われる。
【0029】
また、絶縁体2によって覆われる電極面の反対側の面は塗装等によって被覆されることも好ましい。このようにすることによって、絶縁体2による制御性を高めることが出来る。被覆は塗装や絶縁膜の貼り付けや樹脂ケースで覆うことが一般的である。
【0030】
(実施形態2)
図7に本発明の第2の実施形態に関わる模式図を示す。第2の実施形態は、加湿手段7として第1の実施形態の超音波振動子7aの代わりに、遠心式加湿手段7bを用いた。遠心式加湿手段7bは、緩やかに半径が拡がる円錐体b1の頂点を下にして設置し、頂点を水中に浸漬しながら円錐体b1を高速で回転させた時に水の粘性と円錐体b1の遠心力によって円錐体側面表面を上がってきた水を円錐体b1の周縁部から飛ばして、円錐体b1を囲むように設置された壁面b2に激突させることによって微細水滴8bを生成する。このようにして発生させた微細水滴8bは、送風装置5によって室内に送出されて加湿を行う。そのため、加湿量は円錐体b1を回転させる速度によって決定されるので、予め実験によって加湿量と円錐体b1を駆動するモータb3の回転数または電力との関係を求めることによって制御が可能になる。加湿すべき水量と次亜塩素酸を含む電解水を生成するのに必要な電極面積との関係も実施形態1と同様に求められる。この後の制御については実施形態1と同様であるので説明は省略する。
【0031】
(実施形態3)
図8に本発明の第3の実施形態に関わる模式図を示す。第3の実施形態は加湿手段7として第1の実施形態の超音波振動子7aの代わりに、噴霧式加湿手段7cを用いた。噴霧式加湿手段7cはポンプc1によって吸い上げた水に高圧を加えてノズルc2で微細水滴8cを生成する。このようにして発生させた微細水滴8cは、直接または送風装置によって室内に送出されて加湿を行う。そのため、加湿量はポンプの吸水量によって決定される。本実施形態では、ポンプは電磁式ポンプであって、パルス電源によって駆動され単位時間のパルスの数によって吸水量を制御する。予め実験によって加湿量とパルス数またはポンプの消費電力との関係を求めることによって制御が可能になる。加湿すべき水量と次亜塩素酸を含む電解水を生成するのに必要な電極面積との関係も実施形態1と同様に求められる。この後の制御については実施形態1と同様であるので説明は省略する。
【産業上の利用可能性】
【0032】
水の電気分解を行って生成した電解水を含む水から加湿手段によって微細な水滴を発生させて、室内に送出する加湿装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 電極。(a)および(b)は劣化部分
2 絶縁体
3 絶縁体を移動する駆動装置
4 水槽
5 送風装置
6 制御装置。(a)超音波式加湿手段用、(b)遠心式加湿手段用、(c)噴霧式加湿手段用
7 加湿手段。(a)超音波式加湿手段、(b)遠心式加湿手段、(c)噴霧式加湿手段
8 微小水粒子。(a)超音波式加湿手段によるもの、(b)遠心式加湿手段によるもの、(c)噴霧式加湿手段によるもの
b1 円錐体
b2 壁体
b3 モータ
c1 ポンプ
c2 ノズル
c3 吸水管
【技術分野】
【0001】
電解水の利用に関わる技術であり、電解水生成のための制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塩素を含む水を電気分解すると、次亜塩素酸が含まれる水が生成され一般に電解水と呼ばれている。電解水は含有する次亜塩素酸、次亜塩素酸イオン等による化学作用により、殺菌等の効果を有しており、食品製造にも利用されるほど安全性も高いものである。
電解水を工業用の洗浄液として使用する場合、電解水を生成する処理装置では電気分解の効率、電解水の生成率、電解水生成の制御性の向上のために以下の手段を備えることがある。(1)電極間距離を可変手段、(2)電極表面積を可変手段、(3)隔膜材料にイオン交換膜とガス透過性膜を使用、(4)電解時、清浄時の温度制御機構、(5)電解槽圧力可変構造、(6)超音波発振機構、(7)電解槽外部磁場発生機構。
【0003】
特に(2)の手段において、電解水生成の際に、印加電圧を変えることなく必要量の電解水を確保するためには、電極位置を変更することによって水に浸る電極面積を変化させて、生成量を変化させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−256259
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Wikipedia「電解水」(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%BB%E8%A7%A3%E6%B0%B4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
加湿器に電解水を使用すると、周囲の温度、湿度や加湿器の運転モードによって加湿量が変化し、電解水の使用量が異なって来る。このため、次亜塩素酸等の濃度を保とうとすると加湿容量に見合った電解水の生成機構が必要となるが、従来の方法では、水に浸る電極の面積を電極の浸漬深さで調整していたため、通電部分を上下動する安全性に課題が残る。また、常に電極の先端部から水に浸漬される構造であったため、電極先端部から電極が摩耗するために電極の位置制御だけでは性能が確保できないという欠点があった。また、電解水の生成量を電圧変更で対応しようとしても、加湿手段駆動回路の電圧を簡単に変更できるような構成にはなっていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る、電解水生成装置は、水の電気分解を行って生成した電解水を含む水から加湿手段によって微細な水滴を発生させて、室内に送出する加湿装置において、電気分解を行う電極は対をなす導電体であって、その電極面を水面下に配置するとともに、導電体の間に絶縁体を摺動可能に挟み、絶縁体位置の移動によって電極の露出面積を変更することによって電解水の生成量を制御することを特徴とする。
【0008】
また、電極は、電解水生成に関わる面を全て水面下に配置することが好ましい。
【0009】
また、絶縁体の移動量は、加湿量の増減に対応して、電極の露出部分を増減するように制御されることが好ましい。
【0010】
また、絶縁体の移動量は、加湿手段への電気入力の増減に対応して、電極の露出部分を増減するように制御されることが好ましい。
【0011】
また、絶縁体の移動量は、微細な水滴を送出するためにさらに設けた送風装置への電気入力の増減に対応して、電極の露出部分を増減するように制御されることが好ましい。
【0012】
また、絶縁体の移動量は、前記電極の上下方向もしくは左右方向の一端を始点として露出面積を増減するように制御され、前記始点は予め定める期間で上下方向もしくは左右方向の他端に変更されることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
加湿量に応じて電解水を生成する電極の面積を変更するので、運転モ−ドや送風量に対応して適切な電解水生成量とすることが出来、送出する電解水の濃度を必要な濃度とすることが出来る。
【0014】
また、電極を常に水没させる構造とすると、加湿のための水を蓄える水槽の水面の上下動によって電極面積が変化しない。
【0015】
また、絶縁物の初期位置設定を変えることで能動となる電極の位置も変化せることが出来、電極の消耗を均一にできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】電解水生成に関わる電極面積と電流値の関係を示すグラフ
【図2】電解水生成に関わる電流値と次亜塩素酸の生成量の関係を示すグラフ
【図3】本発明の実施形態1に関わる加湿装置の模式図
【図4a】本発明の実施形態に関わる電極と絶縁体の位置関係を示す模式図(能動電極面積を100%とする制御例)
【図4b】本発明の実施形態に関わる電極と絶縁体の位置関係を示す模式図(能動電極面積を75%とする制御例)
【図5a】本発明の実施形態に関わる電極と絶縁体の位置関係を示す模式図(電極上端を起点とする制御例)
【図5b】本発明の実施形態に関わる電極と絶縁体の位置関係を示す模式図(電極下端を起点とする制御例)
【図6a】超音波式加湿手段の回路ブロック
【図6b】駆動制御信号の例を示す模式図
【図7】本発明の実施形態2に関わる加湿装置の模式図
【図8】本発明の実施形態3に関わる加湿装置の模式図
【図9】従来の加湿装置の模式図
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施形態1)
図1に電極面積と電流の関係を示す。電極間距離3mm、電圧15Vを電気伝導率200μS/cmの標準的な水道水に印加した際の特性である。ここから分かるように対向電極の面積と電極間に流れる電流値はほぼ比例関係にある。このことから対向電極の面積の制御により電流の値を制御できることが理解できる。
【0018】
図2に電流と生成する次亜塩素酸の量を示す。100mlの水で5分間、次亜塩素酸を生成した際の電流と濃度の関係である。電流値と次亜塩素酸の生成量は、直線関係にあることが分かる。上記二つのデータより、対向電極の面積と次亜塩素酸の生成量が直線関係にあることがわかる。
【0019】
図3に本発明による加湿装置の模式図を示す。図3において、電極1は、ステンレス板やチタン板等の腐食に強い金属体を一対で対向させて使用し、水槽に全没する配置としている。対向する電極1の間に電極面積を調整するための絶縁体2を各々の電極に対して摺動可能に設置し、駆動装置3によって上下動可能にしている。本実施形態では、絶縁体2の大きさは電極1の対向する面を全て覆う大きさとしているが、絶縁体の大きさを電極の大きさよりも小さくして制御範囲を小さくすることも可能であり実用される。本実施形態では、対抗する電極1の一方を正、他方を負として15V の電圧を印加している。
【0020】
また、加湿のための水を貯蔵する水槽4は、図示しない給水タンクによって常に一定の水位を保つように給水される。
【0021】
本実施形態においては、加湿手段を超音波式加湿手段7aとしたので、超音波振動子を水槽底部に備え、超音波によって水槽中の水に振動を加えて微細な水粒子8aを水面から発生させる。水面に発生した微細な水粒子8aは送風装置5によって空気と共に送出され室内の加湿に寄与する。
また、発生した次亜塩素酸の濃度は用途によっても必要量が異なるが、0.1ppmから数十ppmとなるように設定する。表1に、細菌等に対する電解水の殺菌効果の一覧表を示す。ここで、表に示す各時間は、電解水によって各微生物が殺菌又は失活するまでの時間である。
【0022】
【表1】
【0023】
このような加湿装置では、送風量が同じであれば、加湿量は、超音波振動子に加える電力によって最大加湿量が決まるので、予め実験によって加湿装置を調整して最大加湿量時に必要な電極寸法を設定するとともに、加湿量と加湿手段に加える電力との関係を求めることが必要である。このようなデータに基づいて、電極面積と加湿量との関係を求めてデータベースとして使用する。
【0024】
絶縁体駆動装置3は、制御装置6aに収納した前記データベースに基づいて絶縁体2の移動量を決定する。図1、図2から理解されるように電極面積と次亜塩素酸の生成量との間にはほぼ直線関係が成立するので、加湿モードによって加湿量を変化する場合は、その加湿量に応じて比例的に電極面積を調整することで、電圧を調整することなく所望する次亜塩素酸の生成量が得られる。
【0025】
また、本発明の実施形態1では、超音波加湿手段7aに送り出す制御信号のデューティ比に応じて面積を調整することを例にしているが、駆動電圧が可変である超音波加湿手段では、振動子の電圧フィードバック等で制御してもよい。また、制御範囲は狭くなるが超音波振動子の入力が同じであれば、送風量によっても加湿量が変化するので、送風装置モータの回転数フィードバック値から、電極面積を調整するような制御も可能である。
【0026】
図4に電極面積の制御例を示す。図4aはこのような加湿装置において加湿量が最大の場合の絶縁体2の位置を示す。電極1の間に絶縁体2を挟まずに最大の面積を使用して次亜塩素酸を含む電解水を生成する。図4bは加湿量が最大加湿量から75%の場合の絶縁体位置を示す。電極面積の25%を絶縁体2で遮蔽することで、加湿量75%時でも最大加湿時と同等の濃度を保つことができる。
【0027】
また、絶縁体2の上下移動が可能なため、加湿量が少なく常に電極1の一部を遮蔽している際には、図5a、図5bの様に遮蔽している電極部分を定期的もしくは不定期的に変化させることで電極1の劣化の偏りを低減させることが可能となる。この場合は、制御装置に記憶されている絶縁体2の初期位置を電極1の上端部を「0」とする場合と下端部を「0」とする場合を予め定める期間で切換えて制御する。同様に左右方向で初期位置「0」を切換えてもよい。
【0028】
図6aに超音波式加湿器の駆動回路ブロックを示す。また、図6bに駆動制御信号の例を示す。この場合は、基本となるパルスは40kHzであり、パルスを入力する時間と休止する時間との比率(デューティ比)を変化させることによって全電力を変化させる回路である。このデューティ比に対応して能動となる電極面積が決定される。即ち、デューティ比が高い時は加湿量が多く能動となる電極面積も多くするように制御が行われ、逆の場合には能動となる電極面積も小さくするように制御が行われる。
【0029】
また、絶縁体2によって覆われる電極面の反対側の面は塗装等によって被覆されることも好ましい。このようにすることによって、絶縁体2による制御性を高めることが出来る。被覆は塗装や絶縁膜の貼り付けや樹脂ケースで覆うことが一般的である。
【0030】
(実施形態2)
図7に本発明の第2の実施形態に関わる模式図を示す。第2の実施形態は、加湿手段7として第1の実施形態の超音波振動子7aの代わりに、遠心式加湿手段7bを用いた。遠心式加湿手段7bは、緩やかに半径が拡がる円錐体b1の頂点を下にして設置し、頂点を水中に浸漬しながら円錐体b1を高速で回転させた時に水の粘性と円錐体b1の遠心力によって円錐体側面表面を上がってきた水を円錐体b1の周縁部から飛ばして、円錐体b1を囲むように設置された壁面b2に激突させることによって微細水滴8bを生成する。このようにして発生させた微細水滴8bは、送風装置5によって室内に送出されて加湿を行う。そのため、加湿量は円錐体b1を回転させる速度によって決定されるので、予め実験によって加湿量と円錐体b1を駆動するモータb3の回転数または電力との関係を求めることによって制御が可能になる。加湿すべき水量と次亜塩素酸を含む電解水を生成するのに必要な電極面積との関係も実施形態1と同様に求められる。この後の制御については実施形態1と同様であるので説明は省略する。
【0031】
(実施形態3)
図8に本発明の第3の実施形態に関わる模式図を示す。第3の実施形態は加湿手段7として第1の実施形態の超音波振動子7aの代わりに、噴霧式加湿手段7cを用いた。噴霧式加湿手段7cはポンプc1によって吸い上げた水に高圧を加えてノズルc2で微細水滴8cを生成する。このようにして発生させた微細水滴8cは、直接または送風装置によって室内に送出されて加湿を行う。そのため、加湿量はポンプの吸水量によって決定される。本実施形態では、ポンプは電磁式ポンプであって、パルス電源によって駆動され単位時間のパルスの数によって吸水量を制御する。予め実験によって加湿量とパルス数またはポンプの消費電力との関係を求めることによって制御が可能になる。加湿すべき水量と次亜塩素酸を含む電解水を生成するのに必要な電極面積との関係も実施形態1と同様に求められる。この後の制御については実施形態1と同様であるので説明は省略する。
【産業上の利用可能性】
【0032】
水の電気分解を行って生成した電解水を含む水から加湿手段によって微細な水滴を発生させて、室内に送出する加湿装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 電極。(a)および(b)は劣化部分
2 絶縁体
3 絶縁体を移動する駆動装置
4 水槽
5 送風装置
6 制御装置。(a)超音波式加湿手段用、(b)遠心式加湿手段用、(c)噴霧式加湿手段用
7 加湿手段。(a)超音波式加湿手段、(b)遠心式加湿手段、(c)噴霧式加湿手段
8 微小水粒子。(a)超音波式加湿手段によるもの、(b)遠心式加湿手段によるもの、(c)噴霧式加湿手段によるもの
b1 円錐体
b2 壁体
b3 モータ
c1 ポンプ
c2 ノズル
c3 吸水管
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水の電気分解を行って生成した電解水を含む水から加湿手段によって微細な水滴を発生させて、室内に送出する加湿装置において、
電気分解を行う電極は対をなす導電体であって、その電極面を水面下に配置するとともに、前記導電体の間に絶縁体を摺動可能に挟み、前記絶縁体位置の移動によって前記電極の露出面積を変更することによって電解水の生成量を制御する加湿装置。
【請求項2】
前記電極は、電解水生成に関わる面を全て水面下に配置することを特徴とする請求項1に記載の加湿装置。
【請求項3】
前記絶縁体の移動量は、加湿量の増減に対応して、前記電極の露出部分を増減するように制御されることを特徴とする請求項1及び2に記載の加湿装置。
【請求項4】
前記絶縁体の移動量は、前記加湿手段への電気入力の増減に対応して、前記電極の露出部分を増減するように制御されることを特徴とする請求項1から3に記載の加湿装置。
【請求項5】
前記絶縁体の移動量は、前記微細な水滴を送出するためにさらに設けた送風装置への電気入力の増減に対応して、前記電極の露出部分を増減するように制御されることを特徴とする請求項1から3に記載の加湿装置。
【請求項6】
前記絶縁体の移動量は、前記電極の上下方向もしくは左右方向の一端を始点として露出面積を増減するように制御され、前記始点は予め定める期間で上下方向もしくは左右方向の他端に変更されることを特徴とする請求項1から5に記載の加湿装置。
【請求項1】
水の電気分解を行って生成した電解水を含む水から加湿手段によって微細な水滴を発生させて、室内に送出する加湿装置において、
電気分解を行う電極は対をなす導電体であって、その電極面を水面下に配置するとともに、前記導電体の間に絶縁体を摺動可能に挟み、前記絶縁体位置の移動によって前記電極の露出面積を変更することによって電解水の生成量を制御する加湿装置。
【請求項2】
前記電極は、電解水生成に関わる面を全て水面下に配置することを特徴とする請求項1に記載の加湿装置。
【請求項3】
前記絶縁体の移動量は、加湿量の増減に対応して、前記電極の露出部分を増減するように制御されることを特徴とする請求項1及び2に記載の加湿装置。
【請求項4】
前記絶縁体の移動量は、前記加湿手段への電気入力の増減に対応して、前記電極の露出部分を増減するように制御されることを特徴とする請求項1から3に記載の加湿装置。
【請求項5】
前記絶縁体の移動量は、前記微細な水滴を送出するためにさらに設けた送風装置への電気入力の増減に対応して、前記電極の露出部分を増減するように制御されることを特徴とする請求項1から3に記載の加湿装置。
【請求項6】
前記絶縁体の移動量は、前記電極の上下方向もしくは左右方向の一端を始点として露出面積を増減するように制御され、前記始点は予め定める期間で上下方向もしくは左右方向の他端に変更されることを特徴とする請求項1から5に記載の加湿装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5a】
【図5b】
【図6a】
【図6b】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5a】
【図5b】
【図6a】
【図6b】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2012−172923(P2012−172923A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35873(P2011−35873)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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