説明

電解水生成装置およびその水位計のクリーニング方法

【要 約】
【課 題】 被処理水の水位を検出するための水位計に、スケールなどのゴミが付着して堆積することを防止する。
【解決手段】 電解水生成装置は、少なくとも一対の電解水生成用の電極(1)を備え、この電極の極性を互いに異ならしめて被処理水(3)を電気分解して電解水を生成するとともに、電極式の水位計(31)で被処理水の水位を検出する。そして、前記電極および水位計に印加する電圧の極性を制御する制御手段(51)が設けられ、この制御手段は、電極の極性を互いに異ならしめるとともに、水位計に印加する電圧の極性を陰極側にする電解水生成時用極性切換手段と、水位計に印加する電圧の極性を陽極側にするとともに、前記電極の全てを陰極側に印加する水位計クリーニング時用極性切換手段とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一対の電解水生成用の電極を備え、この電極の極性を互いに異ならしめて被処理水を電気分解して電解水を生成するとともに、電極式の水位計で前記被処理水の水位を検出する電解水生成装置およびその水位計のクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電解水生成装置は、たとえば、特開平11−302886号公報(特許文献1)に記載のように、電解される被処理水の水位は、フロート式の水位計で計測されている。
【0003】
この様に、水位をフロート式の水位計で計測すると、電解水生成装置の大きさが嵩張るので、水位計を電極式にすることが検討されている。ところで、水位計を電極式にして、水位の計測時に、この水位計を陰極側に印加すると、時間の経過とともに、スケールなどのゴミが水位計に付着して堆積することがある。
【特許文献1】特開平11−302886号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする問題点は、水位計を電極式にして、水位の計測時に、この水位計を陰極側に印加すると、時間の経過とともに、スケールなどのゴミが水位計に付着して堆積するおそれがある点である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の電解水生成装置は、少なくとも一対の電解水生成用の電極(1)を備え、この電極の極性を互いに異ならしめて被処理水(3)を電気分解して電解水を生成するとともに、電極式の水位計(31)で被処理水の水位を検出する。そして、前記電極および水位計に印加する電圧の極性を制御する制御手段(51)が設けられ、この制御手段は、電極の極性を互いに異ならしめるとともに、水位計に印加する電圧の極性を陰極側にする電解水生成時用極性切換手段と、水位計に印加する電圧の極性を陽極側にするとともに、前記電極の全てを陰極側に印加する水位計クリーニング時用極性切換手段とを具備している。
【0006】
また、電解水生成装置の水位計のクリーニング方法は、電解水生成時には、水位計を陰極側に印加して、被処理水の水位を検出し、水位計のクリーニング時には、水位計を陽極側に印加するとともに、前記電極の全てを陰極側に印加して、水位計をクリーニングする。
【0007】
そして、前記水位計が、チタンの丸棒に白金メッキなどの白金系被膜層が形成されているDSE電極であることがある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、水位計を陽極側に印加するとともに、電解水生成用の電極の全てを陰極側に印加することにより、水位計をクリーニングしているので、被処理水の水位を検出するための水位計を、手作業などの掃除によらず、印加する電圧の極性を切り換えることにより、簡単にクリーニングすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
被処理水の水位を検出するための水位計に、スケールなどのゴミが付着して堆積することを防止するという目的を、水位計を陽極側に印加するとともに、電解水生成用の電極の全てを陰極側に印加することにより、水位計をクリーニングすることで実現した。
【実施例1】
【0010】
次に、本発明における電解水生成装置およびその水位計のクリーニング方法の一実施例について、図1ないし図7を用いて説明する。図1は本発明における電解水生成装置の組み立て分解斜視図である。図2は電解水生成装置の斜視図である。図3は電解水生成装置の側面図である。図4は電解水生成装置の底面図である。図5は下から見た電解水生成装置の斜視図である。図6は電解水生成装置の電気および制御回路の説明図である。図7は印加される電圧の極性の表である。なお、図2において、二点鎖線は図示しない水槽に溜められた被処理水の位置を示している。そして、図3において、図示しない水槽に溜められた被処理水の上面の位置を二点鎖線で、また、その下面の位置を一点鎖線で示している。さらに、破線で電極の位置を示している。図6において、制御系は一点鎖線で図示されている。
【0011】
電解水生成装置は、一対の電解水生成用の電極1と、この電極1を覆う樹脂製のカバー体2とを備えている。各電極1は、導電性金属であるチタン材からなる板状の基板11と、この基板11の下部の片面に、白金メッキされた導電性金属の被膜層12とで形成されている。そして、各電極1は、被処理水3に浸かる前後方向に延在する没水部1aと、この没水部1aの後端部から立ち上がる垂直板部1bと、この垂直板部1bの上端部から後方に延在するリード線取付部1cとを有している。電極1の没水部1a、垂直板部1bおよびリード線取付部1cは基板11で形成され、この電極1の没水部1aにおける基板11の片面に、被膜層12が形成されている。また、リード線取付部1cの前部および後部には各々貫通孔16,17が形成されている。
【0012】
非導電性すなわち絶縁性のカバー体2は、左側カバー21、右側カバー22、および、左側カバー21と右側カバー22との間に配置される仕切部材23で構成されている。各電極1は、被膜層12同士が対向するように、仕切部材23を挟んで配置される。仕切部材23の両側面には、電極1のリード線取付部1cを止めるための突起26およびネジ27が突出している。このネジ止め部としてのネジ27は絶縁性を具備する樹脂製であることが好ましい。なお、ネジ27を導電性金属で構成することも可能であるが、その場合には、左右のネジ27同士は絶縁されている。そして、電極1のリード線取付部1cの前側の貫通孔16が仕切部材23の突起26に嵌められて固定される。また、電極1のリード線取付部1cの後側の貫通孔17が仕切部材23のネジ27に、リード線28とともに嵌められてナット29で固定される。この様にして、仕切部材23の各側面に、電極1がリード線28とともにネジ止めされる。さらに、電極式の丸棒状の水位計31の電極が仕切部材23の側面にリード線32とともにネジ止めされる。この水位計31は、DSE(Dimensionary Stable Electrode)電極で、チタン製の一本の丸棒に白金メッキなどの白金被膜層を形成して構成されている。そして、一対の電極1および水位計31が取り付けられた仕切部材23の両側から、左右のカバー21,22が覆う状態で結合され、電解水生成装置が組み立てられる。組み立てられた状態では、電極1の没水部1aの外側の面(被膜層12が形成されていない面)に、左右のカバー21,22の内面が密着する。
【0013】
そして、左右のカバー21,22には、カバー体2の内側と外側とで水が行き来できるように通水開口36が複数形成されている。左右のカバー21,22を結合したカバー体2の下面にも、通水開口37が形成される。
【0014】
図6において、一対の電極1の各リード線28は、極性切換用のスイッチ41を介して、直流電源42の陽極(+)側または陰極(−)側の何れか一方に接続される。また、水位計31のリード線32は、電流計46を介して、極性切換用のスイッチ47に接続される。電流計46は、水位計31とともに水位検出手段を構成する。そして、スイッチ47は、水位計31からの電気回路を、直流電源42の陽極(+)側または陰極(−)側の何れか一方に接続する。
【0015】
スイッチ41,47は、制御装置51により切換制御される。また、この制御装置51には、電流計46からの信号が入力される。さらに、制御装置51は、水槽への給水を制御するために、図示しない給水手段(たとえば、給水弁など)に制御信号を出力している。
【0016】
組み立てられた電解水生成装置の下部は、図2および図3に図示するように、図示しない水槽に溜められた被処理水3に浸けられる。すると、通水開口36,37を通って、被処理水3がカバー体2の内部に流入し、電極1の没水部1aが水に浸かる。
【0017】
水槽の被処理水3を電解して電解水を生成する際(すなわち、電解水生成運転時)には、制御装置51は、スイッチ41,47を制御して、図6に図示するように、水位計31および一方の電極(第1電極)1Aを陰極側に印加し、他方の電極(第2電極)1Bを陽極側に印加する。そして、水位計31の電極の下端部が被処理水3に浸かっていると、水位計31と陽極側の電極1Bとの間で電流が流れ、電流計46がその電流を検出する(ONとなる)。一方、水位計31の電極の下端部が被処理水3に浸かっていない(すなわち、被処理水3の水位が基準値よりも低い)と、水位計31と陽極側の電極1Bとの間で電流が流れず、電流計46は電流を検出できない(OFFとなる)。制御装置51は、水位検出手段である電流計46からの信号に基づいて、水槽の被処理水3の水位が、電極1の没水部1aの上辺と略同じ高さになるように、水槽への給水を制御している。たとえば、図示しない給水弁を開閉制御している。
【0018】
そして、極性の異なる一対の電極1で、下記の様にして、水道水などの被処理水3を電気分解して電解水を生成する。
陽極側の電極1の近傍では、水酸化物イオン(OH−)が分解され、相対的に水素イオン(H+)濃度が高まることによって電解水としての強酸性水が生成されるとともに、水道水の塩素イオン(Cl−)がいったん塩素ガスとなった後、水と反応し抗菌成分である電解水としての次亜塩素酸(HClO)が生成される。
一方の陰極側の電極1の近傍では、水素イオン(H+)が水素ガスに分解され、相対的に水酸化イオン(OH−)の濃度が高められ電解水としてのアルカリイオン水が生成される。
【0019】
この様にして、電解水が生成されるが、陰極側の電極1の白金メッキの被膜層12の表面には、スケールが付着する。そのため、制御装置51は、電極1に印加される極性を反転(陽極は陰極に、一方、陰極は陽極に)させて、陰極側の電極1へのスケールの付着やその堆積を防止している。この様にして、所定時間毎に、図7に図示する電解水生成第1パターンから電解水生成第2パターンへ、また、電解水生成第2パターンから電解水生成第1パターンへ交互に変化させて、電極1へのスケールの付着やその堆積を防止している。
【0020】
さらに、電極1の被膜層12に付着するスケールは、電極1の外側の面(被膜層12が形成されていない面)に回り込んで付着しようとするが、この実施例の場合には、外側の面にはカバー体2の内面が密着しているため、スケールは電極1の外側の面側に回り込んで付着することはできない。その結果、電極1の外側の面におけるスケールの堆積を極力防止することができる。
【0021】
電解水を生成している最中は、上述のように、水位計31は、陰極側に印加されており、スケールなどのゴミが付着する。この水位計31に付着したゴミなどを除去するために、電解水生成運転が所定の時間行われると、水位計クリーニング運転が行われる。この水位計クリーニング時には、図7に図示するように、制御装置51は、スイッチ41,47を制御して、水位計31を陽極側に印加し、両電極1A,1Bを陰極側に印加する。そして、水位計クリーニングが終了すると、上述の電解水生成運転が再開される。
【0022】
この様にして、制御手段として制御装置は、1)電極の極性を互いに異ならしめるとともに、水位計に印加する電圧の極性を陰極側にする電解水生成時用極性切換手段、2)水位計に印加する電圧の極性を陽極側にするとともに、電極の全てを陰極側に印加する水位計クリーニング時用極性切換手段などを具備している。
【0023】
前述のように、一対の板状の電極1は、絶縁性を有する仕切部材23を挟んで配置されるとともに、電極1の上部が仕切部材23の側面にネジ27で各々ネジ止めされているので、電極1同士の間隔を小さくすることができるとともに、電極1の上部が仕切部材23に安定して固定され、電極1の下部の被膜層の形成された表面同士の間隔を精度良くかつ均一にすることができる。その結果、電気分解を安定して行うことができる。
【0024】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、種々の変更を行うことが可能である。本発明の変更例を下記に例示する。
(1)上記実施例では、電極1や水位計31の被膜層は、白金メッキであるが、他の被膜層(たとえば、白金族金属酸化物をコーティングした層など)であることも可能である。また、本体のチタン材の表面に白金を焼成することも可能である。
(2)被膜層は電極の片面に形成されているが、両面に形成することも可能である。
【0025】
(3)電極は少なくとも一対設けられていれば良い。ただし、コンパクトにするためには、電極は一対であることが好ましい。
(4)電解水生成装置で生成される電解水は、必ずしも次亜塩素酸である必要はない。ただし、この実施例の電解水生成装置は、次亜塩素酸の生成に適している。
【0026】
(5)カバー体は、必ずしも、設ける必要はないが、カバー体が一対の電極の略全体を覆っていると、外部からものなどが不用意に、電極に接触することが減少し、安全性が高くなる。
(6)水位計31の電極は、棒状であるが、その断面形状や構造は適宜変更可能である。ただし、丸棒であることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
水位計を陽極側に印加するとともに、電解水生成用の電極の全てを陰極側に印加することにより、水位計をクリーニングしているので、水位計に、スケールなどのゴミが付着して堆積することを防止することができる。したがって、水位計を電極式にした電解水生成装置およびその水位計のクリーニング方法に適用することが最適である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は本発明における電解水生成装置の組み立て分解斜視図である。
【図2】図2は電解水生成装置の斜視図である。
【図3】図3は電解水生成装置の側面図である。
【図4】図4は電解水生成装置の底面図である。
【図5】図5は下から見た電解水生成装置の斜視図である。
【図6】図6は電解水生成装置の電気および制御回路の説明図である。
【図7】図7は印加される電圧の極性の表である。
【符号の説明】
【0029】
1 電解水生成用の電極
3 被処理水
31 水位計
51 制御装置(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一対の電解水生成用の電極を備え、この電極の極性を互いに異ならしめて被処理水を電気分解して電解水を生成するとともに、電極式の水位計で前記被処理水の水位を検出する電解水生成装置であって、
前記電極および水位計に印加する電圧の極性を制御する制御手段が設けられ、
この制御手段は、前記電極の極性を互いに異ならしめるとともに、水位計に印加する電圧の極性を陰極側にする電解水生成時用極性切換手段と、
前記水位計に印加する電圧の極性を陽極側にするとともに、前記電極の全てを陰極側に印加する水位計クリーニング時用極性切換手段とを具備していることを特徴としている電解水生成装置。
【請求項2】
前記水位計は、チタンの丸棒に白金メッキなどの白金系被膜層が形成されているDSE電極であることを特徴としている請求項1記載の電解水生成装置。
【請求項3】
少なくとも一対の電解水生成用の電極を備え、この電極の極性を互いに異ならしめて被処理水を電気分解して電解水を生成するとともに、電極式の水位計で前記被処理水の水位を検出する電解水生成装置の水位計のクリーニング方法であって、
電解水生成時には、水位計を陰極側に印加して、被処理水の水位を検出し、
水位計のクリーニング時には、水位計を陽極側に印加するとともに、前記電極の全てを陰極側に印加して、水位計をクリーニングすることを特徴としている電解水生成装置の水位計のクリーニング方法。
【請求項4】
前記水位計は、チタンの丸棒に白金メッキなどの白金系被膜層が形成されているDSE電極であることを特徴としている請求項3記載の電解水生成装置の水位計のクリーニング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−29953(P2008−29953A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−206130(P2006−206130)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】