説明

電解水生成装置

【課題】 電解電圧を低く抑えると共に排水量を少なくしても所望のpH値とした電解水を効率良く提供することのできる電解水生成装置を提供する。
【解決手段】 陰極1と、陰極1に対して所定距離を置いて対向配置された陽極2と、陰極1と陽極2の間に設けられた隔膜3と、陰極1と隔膜3との間に設けられ、原水を入口から出口へと流通させる陰極流路6とを備え、陰極1と陽極2間に電圧を印加して電解水を生成する電解水生成装置であって、陽極2と隔膜3の間にそれぞれ接するように原水を通過させる通水性部材7を設け、陰極流路6を流れる原水の一部を、隔膜3を通過させ、さらに通水性部材7を通過させて、前記陽極2表面で生成された水素イオンと共に前記原水の一部を系外へと排水させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリイオン整水器などに使用される電解水生成装置に関し、詳細には、所望するpHの電解水を低電圧且つ少排水量で生成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電解槽を用いて水の電解を行う方法には、例えば特許文献1等に記載される技術があり、これらは水道水を直接、または水道水からの水を活性炭などの吸着浄化部や、中空糸膜等のろ材部を通過させ水中の不純物を取り除いた後、対向する陰陽電極とその間に不織布、イオン交換膜などを配置した構造を有する電解槽に導き入れ、電気的エネルギーの付加を行うことによりイオン種、ガス成分、活性種等の生成を行い水の改質を行う。
【0003】
電解槽に用いられる膜には、不織布のような電気的に中性の膜が主に使用されるが、陽イオン交換膜や陰イオン交換膜のようにイオン種によっては膜の通過を阻害する膜も用いられる。
【0004】
膜として中性膜を用いる目的は、水の電解により生じた水素イオン、水酸化物イオン等が水の拡散、水流により混じってしまい所望する電解水が得られないことを防止するためである。イオン交換膜を用いる目的は、さらに陽イオン、または陰イオンの移動をも防ぐことにより、さらに効率よく所望する生成水を得ることを目的とする。
【0005】
水道水、河川水、井戸水等の電解質濃度の希薄な水の電解においては、電解電圧を下げるために、陽極と陰極の電極間距離を狭くすることが重要である。通常、一対の電極とその間に隔膜を挟むような電解槽の場合、電極間距離は小さくすればする程、良く、より電解電圧を下げることができる。
【0006】
しかしながら実際には、電極間に水を流すために、ある程度の電極間距離を取る必要があり、水中のカルシウムなどの析出による水路詰まりも考慮すると陽極と陰極の距離は2mm〜10mmとなっており、中間に隔膜を設けるのが常である。
【0007】
電極間距離を小さくするため、電極と隔膜を接触させた電解槽の構成としては、特許文献2等に記載される技術があり、どちらかまたは双方の電極と隔膜を接触して配列し、隔膜と接する面と反対側の電極表面に水を通過させて電解している。この場合には、隔膜に主にイオン交換膜を用い、水のpHを変化させないのが主たる目的である。
【特許文献1】特開昭55−1822号公報
【特許文献2】特開2003−245669号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
また、陰極側からの吐水を利用するためには、陽極側からの排水量を極力減らすことが必要であり、陽極側からの吐水を利用するためには、陰極側からの排水量を極力減らすことが必要である。
【0009】
例えば、陰極水(アルカリ水)を所望する時に、陽極側の排水量を減らすことは、陽極槽への入水量をコントロールすることにより達成することができる。しかしながら、陽極槽への入水量を極端に減らした場合には、水が陽極槽を通過する速度が下がるため、陽極槽での滞在時間が長くなる。すると、電解により生成される水素イオン濃度が陽極槽内で高くなり、隔膜を通過して陰極槽内へと入り込む水素イオンの割合が高くなる。これによって、陰極水(または陽極水)は、そのpH上昇が低く抑えられてしまう。
【0010】
そこで本発明は、このような従来の課題を解決するために、電解電圧を低く抑えると共に排水量を少なくしても所望のpH値とした電解水を効率良く提供することのできる電解水生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
通常、一対の電極とその間に隔膜を設けた電解槽による水の電気分解反応では陽極表面で水の電解分解により水素イオンおよび酸素が発生し、陰極表面では水酸化物イオンおよび水素が発生する。結果として陽極側が水素イオンリッチな酸性酸素溶存水、陰極側が水酸化物イオンリッチなアルカリ性の溶存水素水になる。
【0012】
ここで、陽極を隔膜と接触させ、隔膜のもう一方の面と陰極との間に水を通過させる構造を有した場合に電解をかけると、陰極では同じように水酸化物イオンおよび水素が発生する。陽極では膜を浸透してきた水がその膜と陽極との接触面近傍において電解反応を受け酸素と水素イオンを生成する。この時、陰極と隔膜の間だけに水の抵抗があり、電解電圧は小さくなる。しかし、陽極との接触面近傍では水が少ないため水素イオンの濃度が高く、膜を通過し陰極槽内に流入してしまい、陰極で発生した水酸化物イオンと互いに打ち消しあう結果となる。
【0013】
これを防ぐため、まず、隔膜に通水性部材を接触させ、次に、この通水性部材を前記隔膜とで挟み込むようにして陽極を通水性部材に接触させる。この通水性部材を設けることで、原水を陰極流路から隔膜へと通過させる水の流れを強制的に作り出し、さらに通水性部材を通過させて陽極表面で電解させる。また、通水性部材を通過させた原水をさらに陽極をも通水させて電解することもできる。つまり、本発明では、陽極表面で生成される水素イオン濃度が上昇して隔膜を逆流しないように強制水流を設け、排水として系外に取り除くようにする。
【0014】
なお、陰極を通水性部材と接触させた場合には、陽極流路側から隔膜、さらに通水性部材を通過する水の流れ、加えて陰極を通水する水の流れを強制的に作り出し、陰極表面で生成される水酸化物イオン濃度が上昇しないように系外へ取り除く。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、陽極と隔膜との間にそれぞれ接するように設けた通水性部材により陰極流路を流れる原水の一部が隔膜を通して通水性部材へと流れる水の流れが作り出されるため、陽極表面で生成された水素イオンが、この通水性部材を通して原水の一部と共に系外へ排水される。その結果、隔膜の両側でイオン濃度の差が無くなり、電解時に特異なイオン(水素イオン)のみが隔膜を行き来するのを防止することができ、陰極水のpHを効率良く変化させることができる。
【0016】
また、本発明によれば、同様に、陰極と隔膜との間にそれぞれ接するように設けた通水性部材により陽極流路を流れる原水の一部が隔膜を通して通水性部材へと流れる水の流れが作り出されるため、陰極表面で生成された水酸化物イオンが、この通水性部材を通して原水の一部と共に系外へ排水される。その結果、隔膜の両側でイオン濃度の差が無くなり、電解時に特異なイオン(水酸化物イオン)のみが隔膜を行き来するのを防止することができ、陽極水のpHを効率良く変化させることができる。
【0017】
したがって、本発明によれば、所望する陰極水または陽極水を、低電圧且つ少排水量で作成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
「実施の形態1」
図1は、実施の形態1の電解水生成装置の断面図である。
【0020】
本実施の形態の電解水生成装置は、図1に示すように、陰極1と、この陰極1に対して所定距離を置いて対向配置された陽極2と、前記陰極1と前記陽極2の間に設けられた隔膜3と、陰極1と隔膜3との間に設けられ、原水を入口管4から出口管5へと流通させる陰極流路6とを備え、これら陰極1と陽極2間に電圧を印加して電解水を生成する整水器である。
【0021】
隔膜3には、例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン等の如き不織布、セラミック膜のような通水性を有した膜が用いられる。この隔膜3は、陰極1と陽極2の間に配置される。
【0022】
陰極1と陽極2には、例えばPt(白金)メッキしたチタン平板電極が使用される。隔膜3と陰極1との間には、例えば水道水、河川水、井戸水等の原水が流通する陰極流路6が設けられる。一方、隔膜3と陽極2の間には、陰極流路6を流れる原水の一部を通水させる通水性部材7が設けられる。通水性部材7は、一面が陽極2に接し他面が隔膜3に接するように、これら陽極2と隔膜3の間に挟み込まれるようにして設けられる。
【0023】
通水性部材7には、排水がスムーズに行えるように水の通水を妨げないようにすることが重要であり、例えばテフロン(デュポン株式会社の登録商標名)、フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートなどが使用される。隔膜3と通水性部材7は接触させておくことが必要であるが、予め隔膜3と通水性部材7を一体化しておいてもよい。また、陽極2と通水性部材7とは、同様に接触していることから、陽極2と隔膜3間の水路を減少させ、電解電圧の低減を図ることが可能となる。
【0024】
通水性部材7は、排水路として機能し、陽極2の表面で生成された水素イオンを、陰極流路6を流れる原水(水)の一部と共に流し系外へと排水する。そのため、通水性部材7の一端側には、系外へと排水するための配水管8が接続されている。
【0025】
このように構成された電解水生成装置では、原水は入口管4を通って陰極流路6に入れられる。陰極流路6内で原水は、隔膜3を一部通水し、さらに通水性部材7を通過して排水として流れる。このとき、陽極2の表面では、次式(1)のような水の電気分解反応が起き、水素イオンと酸素が生成される。
【0026】
2H2 O→4H+ +O2 +4e- ・・・(1)式
生成された水素イオン及び酸素は、隔膜3から通水性部材7を通過して流れる水によって陽極2の表面から除去され、当該通水性部材7を介して配水管8へと排出される。
【0027】
陰極流路6では、陰極1の表面で、次式(2)のような反応によって水が電気分解される。
【0028】
4H2 O+4e- →4OH- +2H2 ・・・(2)式
このとき生成した水素は、陰極流路6を流れる水に部分的に溶解する。また、水素の生成と同時に、水酸化物イオンも生成される。本実施の形態の場合は、陽極2の表面で水素イオン濃度が上昇しないため、隔膜3の両側でイオン濃度の差が無く、電解時に特異なイオン(例えば水素イオン)のみが膜を行き来することが無い。このため、本実施の形態の電解水生成装置によれば、陰極水のpHを効率よく変化させることができる。つまり、陰極水のpHを、低アルカリから高アルカリの範囲で所望のpH値とすることができる。
【0029】
通常、アルカリイオン整水器の電解の場合は、陽極と陰極の間には中性の隔膜が設けられており、陽極、陰極共に隔膜に接しておらず、電解電圧は陽極と隔膜間の水、陰極と隔膜間の水の抵抗分だけ余分に必要となるが、本実施の形態の場合には、陽極と隔膜間の距離が小さいので無視でき、抵抗は陰極と隔膜間の水の抵抗のみとなる。
【0030】
また、通常のアルカリイオン整水器の電解の場合は、排水である陽極水量を絞り、減少させると隔膜の陽極側の面の水の滞在時間が長く、特異なイオン(例えば水素イオン)が多くなるため膜を移動し陰極側に行きやすくなる。これによって、陰極水のpH変化が小さくなってしまう。図2は、従来例である通常のアルカリイオン整水器の電解槽(図2中点線で示す)と本実施の形態の電解槽(図2中実線で示す)とにおいて、吐水量が同じである場合に排水量を減少させた場合の陰極流路を流れる水のpHを示す。
【0031】
従来のアルカリイオン水の電解槽では、排水量を減少させていくと、排水量500ml/min以下では陰極側からの吐水pHが大きく下がる。したがって、この排水量以下では、電解効率が悪くなる。一方、本実施の形態の電解槽では、排水量300ml/min以下でようやく下がり始めることとなる。
【0032】
本実施の形態の電解水生成装置によれば、陽極2と隔膜3との間にそれぞれ接するように設けた通水性部材7により陰極流路6を流れる原水の一部が隔膜3を通して通水性部材7へと流れる水の流れが作り出されるため、陽極表面で生成された水素イオンを、この通水性部材7を通して原水の一部と共に系外へと排水させることができる。その結果、隔膜3の両側でイオン濃度の差が無くなり、電解時に特異なイオン(水素イオン)のみが隔膜3を行き来するのを防止することができ、陰極水のpHを効率良く変化させることができる。つまり、本実施の形態の電解水生成装置によれば、陰極水のpHを、低アルカリから高アルカリの範囲で所望のpH値とすることができる。
【0033】
なお、上記した例では、通水性部材7を間に挟んでこれら陽極2、通水性部材7、隔膜3を接触させる構造としたがこの限りではなく、通水性部材7を間に挟んで陰極1、通水性部材7、隔膜3を接触させ、陽極2と隔膜3との間に原水を流通させる陽極流路を形成し、陰極表面で生成された水酸化物イオンを、陽極流路を流れる原水の一部と共に通水性部材7を通過させて系外へと排水させるようにしてもよい。また、排水量については吐水量によって変化するものであり、この限りではない
このようにすれば、上記した実施の形態と同様、陰極1の表面に生成された水酸化物イオンを、陽極流路へ流出させることなく系外へと強制的に排水させることができ、陽極水のpHを効率良く変化させることができる。
【0034】
「実施の形態2」
図3は、実施の形態2の電解水生成装置の断面図である。
【0035】
実施の形態2においては、通水性部材7に接する陽極2または陰極1を通水性を有した電極構造とし、隔膜3及び通水性部材7を通過させた原水とイオンとを、この通水性を有した陽極2または陰極1を通過させて系外へと排水させる。
【0036】
具体的には、電極自身を通水できるような形状のものを選択する。通水できる電極としては、例えばメッシュ電極、メッキ電極、ハニカム電極、パンチングメタル電極、多孔質電極等が使用できる。本実施の形態では、Ptメッキしたチタンメッシュ電極を通水性部材7に接触させることにより、陽極2と隔膜3間の水路を減少させ、電解電圧の低減を図ることができる。
【0037】
陽極2または陰極1を通過する原水とイオンは、通水性部材7と接する陽極2または陰極1の裏面側に設けた排水路9に排水させ、その排水路9に接続した配水管8から系外へと排水させる。
【0038】
本実施の形態の電解水生成装置によれば、陰極流路6内を流れた原水の一部が隔膜3及び通水性部材7を通水し、さらに陽極2を通過して排水路9へと排水される水の流れが作られるので、生成された水素イオン及び酸素を、隔膜3から陽極2を通過して流れる水によって電極表面から系外へと排水させることができる。このように、本実施の形態によれば、通水性部材7のみを通過して陽極2の表面から水素イオンが取り除かれる場合に比べて、陽極2を通過する場合は、陽極表面で生成した水素イオンが確実に当該陽極2を通過して取り除かれるため効率がよい。
【0039】
したがって、本実施の形態によれば、陽極面で水素イオン濃度が上昇しないため、隔膜3の両側でイオン濃度の差が無く、電解時に特異なイオン(例えば水素イオン)のみが膜を行き来することが無い。このため、本実施の形態の電解水生成装置によれば、陰極水のpHを効率よく変化(陰極水のpHを低アルカリから高アルカリの範囲で所望のpH値とする)させることができる。
【0040】
なお、図3では、通水性部材7を間に挟んでこれら陽極2、通水性部材7、隔膜3を接触させる構造としたがこの限りではなく、通水性部材7を間に挟んで陰極1、通水性部材7、隔膜3を接触させ、陽極2と隔膜3との間に原水を流通させる陽極流路を形成し、陰極表面で生成された水酸化物イオンを、陽極流路を流れる原水の一部と共に隔膜3、通水性部材7及び陰極1を通過させて系外へと排水させるようにしてもよい。
【0041】
このようにすれば、図3の構造と同様、陰極1の表面に生成された水酸化物イオンを、陽極流路へ流出させることなく系外へと強制的に排水させることができ、陽極水のpHを効率良く変化させることができる。
【0042】
「実施の形態3」
図4は、実施の形態3の電解水生成装置の断面図である。
【0043】
実施の形態3では、通水性部材7に接する電極の構造を実施の形態2の構造(図3の構造)に変えて、通水性部材7の隔膜3と接する面とは反対側の面に、貴金属をメッキまたは塗布することによって電極としたものである。その他の構成は、実施の形態2の構造と同様であるため、共通部分についてはその説明は省略するものとする。
【0044】
具体的には、通水性部材7にTi(チタン)など水電解の電極として作用しない金属を用い、その通水性部材7の前記隔膜3と反対の面にPt(白金)、Au(金)などの貴金属をメッキまたは塗布することにより電極としての機能を持たせる。例えば、金属チタンなどは表面に酸化皮膜を形成するため、それら単体では水電解の電極としては用いられることは少ない。しかし、チタンにPtをメッキしたものは、水電解用の電極として広く用いられている。本実施の形態では、チタンからなるメッシュの片面にPt、Auなどの貴金属をメッキまたは塗布することにより、通水性を持たせながら片側のみ電極としての特性を有する通水性部材と電極との複合体を形成する。
【0045】
図4では、チタンメッシュからなる通水性部材7の裏面に貴金属をメッキまたは塗布することにより陽極2を形成している。
【0046】
本実施の形態の電解水生成装置によれば、陰極流路6内を流れた原水の一部が隔膜3及び通水性部材7を通水し、さらに通水性部材7の裏面に貴金属をメッキまたは塗布して形成された陽極2を通過して排水路9へと排水される水の流れが作られるので、生成された水素イオン及び酸素を、隔膜3から陽極2を通過して流れる水によって電極表面から系外へと排水させることができる。
【0047】
これを詳細に説明すると、陰極流路6内の原水の一部は、隔膜3を一部通水し複合化された通水性部材7及び陽極2を通過して排水路8へと排水される。通水性部材7では、水を通過するが、基材がTiであるため電極反応が起こらない。しかし、通水性部材7の裏面側に形成された部分(陽極2)では、水の電気分解が起こり生成された水素イオン及び酸素は電極表面から排水として除去される。通水性部材7の片面をメッキまたは塗布を行った場合の電極面は、陰極1側を向いていないため、水素イオン及び酸素は陰極1と正反対の面(排水路8側の面)で生成されることとなり、陰極1から最遠位置で生成されることとなる。このため、隔膜3を通って陰極1側に流れ出る水素イオン量は一層少なくなる。
【0048】
したがって、本実施の形態によれば、陽極面で水素イオン濃度が上昇しないため、隔膜3の両側でイオン濃度の差が無く、電解時に特異なイオン(例えば水素イオン)のみが膜を行き来することが無い。このため、本実施の形態の電解水生成装置によれば、陰極水のpHを効率よく変化(陰極水のpHを低アルカリから高アルカリの範囲で所望のpH値とする)させることができる。
【0049】
なお、図4では、チタンメッシュからなる通水性部材7の裏面(隔膜3と接する面とは反対側の面)に金属をメッキまたは塗布して陽極2を形成したが、陽極2ではなく陰極1を通水性部材7と複合化させ、陽極2と隔膜3との間に原水を流通させる陽極流路を形成し、陰極表面で生成された水酸化物イオンを、陽極流路を流れる原水の一部と共に隔膜3、通水性部材7及び陰極1を通過させて系外へと排水させるようにしてもよい。
【0050】
このようにすれば、図4の構造と同様、陰極1の表面に生成された水酸化物イオンを、陽極流路へ流出させることなく系外へと強制的に排水させることができ、陽極水のpHを効率良く変化させることができる。
【0051】
「実施の形態4」
図5は、実施の形態4の電解水生成装置の断面図である。
【0052】
実施の形態4では、通水性部材7に接する電極の構造を実施の形態2の構造(図3の構造)に変えて、貴金属メッシュ電極、または貴金属を通水性部材7の片面若しくは両面にメッキまたは塗布することによって電極としたものである。その他の構成は、実施の形態2の構造と同様であるため、共通部分についてはその説明は省略するものとする。
【0053】
具体的には、通水性部材7にTi(チタン)など水電解の電極として作用しないチタンメッシュからなる金属を用い、電極(陽極2)にはチタンメッシュにPt、Auなどの貴金属をメッキしたチタン平板電極を使用する。または、通水性部材7にチタンメッシュからなる金属を用い、電極にはこれとは別のチタンメッシュ(メッシュ金属)の片面若しくは両面にPt、Auなどの貴金属をメッキまたは塗布した電極を使用する。例えば、金属チタンなどは表面に酸化皮膜を形成するため、それら単体では水電解の電極としては用いられることは少ない。しかし、チタンにPtをメッキしたものは、水電解用の電極として広く用いられている。
【0054】
図5では、隔膜3とチタンメッシュからなる通水性部材7を接触させ、さらにそのチタンメッシュからなる通水性部材7にPtメッキチタンメッシュ電極を接触させることで陽極2を形成している。
【0055】
本実施の形態の電解水生成装置によれば、陰極流路6内を流れた原水の一部が隔膜3及び通水性部材7を通水し、さらに陽極2を通過して排水路9へと排水される水の流れが作られるので、生成された水素イオン及び酸素を、隔膜3から陽極2を通過して流れる水によって電極表面から系外へと排水させることができる。したがって、本実施の形態によれば、陽極面で水素イオン濃度が上昇しないため、隔膜3の両側でイオン濃度の差が無く、電解時に特異なイオン(例えば水素イオン)のみが膜を行き来することが無い。このため、本実施の形態の電解水生成装置によれば、陰極水のpHを効率よく変化(陰極水のpHを低アルカリから高アルカリの範囲で所望のpH値とする)させることができる。
【0056】
また、本実施の形態のように、通水性部材7にTiなど水電解の電極として作用しない金属を用いた場合、その通水部材7の導電性が活用される。つまり、陽極2として目の細かいメッシュ、薄電極などは電流を流す場合に電流密度の分布ができる恐れがある。その場合、電流密度の高い部分では水の電解が頻度高く起こり、水素イオン濃度が高くなり十分に流水で排水できなくなる恐れがある。また、電極表面の劣化が著しくなる恐れがある。このため、水電解の電極としては成立しないが、十分に導電性を有する金属を通水性部材7として用いることができる。
【0057】
なお、図5では、チタンメッシュからなる通水性部材7に接して陽極2を形成したが、陽極2ではなく陰極1を通水性部材7と接触させ、陽極2と隔膜3との間に原水を流通させる陽極流路を形成し、陰極表面で生成された水酸化物イオンを、陽極流路を流れる原水の一部と共に隔膜3、通水性部材7及び陰極1を通過させて系外へと排水させるようにしてもよい。
【0058】
このようにすれば、図5の構造と同様、陰極1の表面に生成された水酸化物イオンを、陽極流路へ流出させることなく系外へと強制的に排水させることができ、陽極水のpHを効率良く変化させることができる。
【0059】
「実施の形態5」
図6は、実施の形態5の電解水生成装置の断面図である。
【0060】
実施の形態5では、通水性部材7を実施の形態4の構造(図5の構造)に変えて、絶縁体としたものである。その他の構成は、実施の形態4の構造と同様であるため、共通部分についてはその説明は省略するものとする。
【0061】
具体的には、電極に接触しても劣化のない素材を使用することが好ましいことから、例えばABS(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンの共重合物)やフッ素系樹脂等の有機系樹脂、或いはセラミックス等の無機系物質からなる絶縁体を、通水性部材7として使用する。もちろん、この絶縁体からなる通水性部材7は、水及びイオンを通す通水性を有している。
【0062】
図6では、隔膜3とABSからなる通水性部材7を接触させ、さらにそのABSからなる通水性部材7にPtメッキチタンメッシュ電極を接触させることで陽極2を形成している。
【0063】
本実施の形態の電解水生成装置によれば、陰極流路6内を流れた原水の一部が隔膜3及び通水性部材7を通水し、さらに陽極2を通過して排水路9へと排水される水の流れが作られるので、生成された水素イオン及び酸素を、隔膜3から陽極2を通過して流れる水によって電極表面から系外へと排水させることができる。したがって、本実施の形態によれば、陽極面で水素イオン濃度が上昇しないため、隔膜3の両側でイオン濃度の差が無く、電解時に特異なイオン(例えば水素イオン)のみが膜を行き来することが無い。このため、本実施の形態の電解水生成装置によれば、陰極水のpHを効率よく変化(陰極水のpHを低アルカリから高アルカリの範囲で所望のpH値とする)させることができる。
【0064】
ところで、水の電解時には、電極表面に電位が掛かっていることから材質によっては電位により、電極表面に焼付けを起こす場合がある。しかしながら、本実施の形態では、絶縁体からなる通水性部材7を陽極2と隔膜3の間に設置しているため、この通水性部材7で電位を絶縁して陽極2表面の焼き付けを防止することができる。
【0065】
特に、通水性部材7としてABSやフッ素系樹脂等の有機系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートなどを用いた場合には、水の電解時に水素や酸素などのガス成分の他にオゾンや活性酸素等の水質や電解効率に影響を及ぼす活性種が生成されるが、この活性種による影響を抑制することができる。また、通水性部材7にセラミックス等の無機系物質を使用した場合には、水の電解時に電極表面が局部的に温度上昇して通水性部材7を劣化させたり水質や電解効率に影響を及ぼすが、耐熱性に優れるセラミックスで熱の影響を抑制できる。
【0066】
なお、図6では、絶縁体からなる通水性部材7に接して陽極2を形成したが、陽極2ではなく陰極1を通水性部材7と接触させ、陽極2と隔膜3との間に原水を流通させる陽極流路を形成し、陰極表面で生成された水酸化物イオンを、陽極流路を流れる原水の一部と共に隔膜3、通水性部材7及び陰極1を通過させて系外へと排水させるようにしてもよい。
【0067】
このようにすれば、図6の構造と同様、陰極1の表面に生成された水酸化物イオンを、陽極流路へ流出させることなく系外へと強制的に排水させることができ、陽極水のpHを効率良く変化させることができる。
【0068】
「実施の形態6」
図7は、実施の形態6の電解水生成装置の断面図である。
【0069】
実施の形態6では、電極をメッシュ構造とし、通水性部材7と接する側とは反対側の前記電極のメッシュ部に、より線径の太いメッシュやパンチングメタル、多孔質体などの補強部を重ねた構造としている。その他の構成は、実施の形態5の構造と同様であるため、共通部分についてはその説明は省略するものとする。
【0070】
通水性部材7に接触させる電極は、その径孔を小さくすると電流密度が小さくなり電解効率がよくなると考えられるが、メッシュ電極の場合に孔径を小さくすると、用いる線の径を細くする必要がある。そのため、メッシュ電極は剛性が無く、水の抵抗により大きく変形してしまう。そこで、本実施の形態では、Ptメッキしたチタンメッシュからなる陽極2の前記通水性部材7に接触する面と反対側に金属導体、有機導電体の線経の太いメッシュやパンチングメタル、多孔質体等の補強部10を接触させて、電極自体を補強すると同時にメッシュ電極に均一に電流を流すことを可能とする。なお、補強部10は、通水性部材7と陽極2との間に設けるようにしてもよい。
【0071】
本実施の形態の電解水生成装置によれば、陰極流路6内を流れた原水の一部が隔膜3及び絶縁体からなる通水性部材7を通水し、さらに補強部10で補強された陽極2を通過して排水路9へと排水される水の流れが作られるので、生成された水素イオン及び酸素を、隔膜3から陽極2を通過して流れる水によって電極表面から系外へと排水させることができる。したがって、本実施の形態によれば、陽極面で水素イオン濃度が上昇しないため、隔膜3の両側でイオン濃度の差が無く、電解時に特異なイオン(例えば水素イオン)のみが膜を行き来することが無い。このため、本実施の形態の電解水生成装置によれば、陰極水のpHを効率よく変化(陰極水のpHを低アルカリから高アルカリの範囲で所望のpH値とする)させることができる。
【0072】
なお、図7では、通水性部材7に接して陽極2を形成したが、陽極2ではなく陰極1を通水性部材7と接触させ、陽極2と隔膜3との間に原水を流通させる陽極流路を形成し、陰極表面で生成された水酸化物イオンを、陽極流路を流れる原水の一部と共に隔膜3、通水性部材7及び補強部10で補強された陰極1を通過させて系外へと排水させるようにしてもよい。
【0073】
このようにすれば、図6の構造と同様、陰極1の表面に生成された水酸化物イオンを、陽極流路へ流出させることなく系外へと強制的に排水させることができ、陽極水のpHを効率良く変化させることができる。
【0074】
「実施の形態7」
図8は、実施の形態7の電解水生成装置の断面図である。
【0075】
実施の形態7では、陰極流路6または陽極流路の入口或いは出口に、陰極流路6内または陽極流路内を流れる原水の流量を調整する流量調整手段を設け、この流量調整手段によって流路内の内圧を制御して、系外へ排水される排水量を調整するようにしたものである。その他の構成は、実施の形態5の構造と同様であるため、共通部分についてはその説明は省略するものとする。
【0076】
具体的には、陰極流路6の出口に流量調整手段として固定オリフィス11或いは流量調整弁(図示は省略する)を設け、この固定オリフィス11または流量調整弁を調整することによって陰極流路6の内圧を調整し、所望の排水量を排水するように制御する。
【0077】
電解水生成装置では、陰極流路6を原水が流れ、その原水の一部が隔膜3を通水し、さらに通水性部材7を介して陽極2を通過した後に排水路9へと流れるが、排水の量は隔膜3の孔径により決定される。このため、隔膜3によっては、所望する排水量が得られない場合がある。
【0078】
これを防ぐため、実施の形態7では、陰極流路6の出口に固定オリフィス11または流量調整弁を設けて、陰極流路6内の内圧を制御し、排水量を所望する値にする。例えば、固定オリフィス11を調整して陰極流路6内の内圧を高めれば、隔膜3から通水性部材7を介して陽極2を通して原水が流れ易くなり、隔膜3の両側でイオン濃度の差が無くなり、電解時に特異なイオン(例えば水素イオン)のみが膜を行き来するのを防止することができる。
【0079】
図8では、陰極流路6の出口に固定オリフィス11を設けたが、この陰極流路6の入口に固定オリフィス11を設けても同様の作用効果が得られる。固定オリフィス11を陰極流路6の出口に設ければ、陰極流路6からの吐水量を調整でき、固定オリフィス11を陰極流路6の入口に設ければ、陰極流路6への流入量を調整できることから、当該陰極流路6内の内圧を可変することができる。
【0080】
また、図8では、陽極2を絶縁体からなる通水性部材7を介して隔膜3と接触させ、陰極水を吐水させたがこの限りではなく、陰極1を通水性部材7を介して隔膜3と接触させても良い。陰極1を隔膜3に接触させた場合は、隔膜3と陽極2間の陽極流路の入口または出口に固定オリフィス11或いは流量調整弁等の流量調整手段を設ける。
【0081】
また、図8では、吐水量を決定する手段として固定オリフィス、流量調整弁等としたがその限りではなく、別途吐水路を設けたり、別の手段にて陰極流路6または陽極流路への流入量を変化させたりしても同様の効果がある。
【0082】
「実施の形態8」
図9は、実施の形態8の電解水生成装置の断面図である。
【0083】
実施の形態8では、系外へと排水される量を検出する排水量検出手段を設け、制御部でその排水量をモニターし、その測定値に応じて流量調整手段を制御して流路内の内圧を制御するようにしたものである。その他の構成は、実施の形態5の構造と同様であるため、共通部分についてはその説明は省略するものとする。
【0084】
具体的には、排水路9に接続される排水管8に、該排水管8を流れる排水量を検出する排水量検出手段としての流量センサー12を設けると共に陰極流路6の出口に流量調整手段である可変オリフィス13を設け、陰極流路6内の内圧を制御する調整部であるコントローラ14にて、該流量センサー12でモニターした排水量(測定値)に応じて前記可変オリフィス13を制御し、前記陰極流路6への流入水量または吐水量をコントロールして該陰極流路6の内圧を調整し、所望の排水量となるように調整を行う。
【0085】
例えば、一般的な水道水では、蛇口の高低差や配管の太さ、浄水場からの距離によって動水圧、静水圧が大きく異なり、これにより陰極流路6内の内圧も違うため、陰極流路6から隔膜3及び陽極2を順次通過する排水量も地域により異なる。これを防ぐため、本実施の形態では、排水管8に取付けた流量センサー12により排水量をモニターし、測定値によってはコントローラ14で可変オリフィス13をコントロールし、陰極流路6内の内圧を制御して排水量を所望する値にする。可変オリフィス13の調整は、コントローラ14にて手動で行ってもよく、或いは自動で行ってもよい。
【0086】
本実施の形態によれば、流量センサー12で排水量をモニターしながら陰極流路6への流入水量または吐水量を可変オリフィス13にてコントロールすることで、陰極流路6の内圧を調整して所望の排水量とすることができる。したがって、本実施の形態によれば、図2で示したように排水量の大小によって変動する吐水のpH値を容易且つ任意にコントロールすることができる。
【0087】
図9では、陰極流路6の出口に可変オリフィス13を設けたが、この陰極流路6の入口に可変オリフィス13を設けても同様の作用効果が得られる。
【0088】
また、図9では、陽極2を絶縁体からなる通水性部材7を介して隔膜3と接触させ、陰極水を吐水させたがこの限りではなく、陰極1を通水性部材7を介して隔膜3と接触させても良い。陰極1を隔膜3に接触させた場合は、隔膜3と陽極2間の陽極流路の入口または出口に可変オリフィス13或いは流量調整弁等の流量調整手段を設ける。
【0089】
また、図9では、吐水量をコントロールする手段として可変オリフィス13、流量調整弁等としたがその限りではなく、別途吐水路を設けたり、その他の手段によって陰極流路6または陽極流路への流入量をコントロールしたり、別途信号部を用いて使用者に状況表示して流入量をコントロールさせたりしても同様の効果がある。
【0090】
「実施の形態9」
図10は、実施の形態9の電解水生成装置の断面図である。
【0091】
実施の形態9では、実施の形態5の構成に加えて、排水路9に原水を流通させる入水管15と排水管8を設けたものである。その他の構成は、実施の形態5の構造と同様であるため、共通部分についてはその説明は省略するものとする。
【0092】
具体的には、通水性部材7を挟んで隔膜3と接している陽極2を通過した排水を効率よく系外へ取り除くために、陽極2の裏面側(隔膜3との接触面とは反対側)に水道水、河川水、井戸水等を連続的に供給するための入水管15と排水管8を、前記排水路9に接続し、その入水管15から水道水などを入水させる。
【0093】
なお、本実施の形態では、排水路9に下から上へと流水を流すため、図10中下側に入水管15を設けると共に上側に排水管8を設けている。
【0094】
本実施の形態によれば、陽極2を通して排水路9へと排出された水素イオンは、入水管15より流入された流水によって排水管8へと排水されるため、効率良くpHを変化させた陰極水を吐水することができる。
【0095】
図10では、陽極2を絶縁体からなる通水性部材7を介して隔膜3と接触させ、陰極水を吐水させたがこの限りではなく、陰極1を通水性部材7を介して隔膜3と接触させても良い。陰極1を隔膜3に接触させた場合は、陰極1の裏面に設けられる排水路9に原水を流通させる入水管15と排水管8を設ける。このようにすることで、陰極1を通して排水路9へと排出された水酸化物イオンは、入水管15より流入された流水によって排水管8へと排出される。
【0096】
また、図10では、排水路9に下から上へと水道水などを流水させたがこの限りではなく、上から下、下から真ん中、真ん中から上下、手前から奥、奥から手前などの流水経路が考えられる。
【0097】
また、図10では、排水路9に水道水などを流水させたが、水素イオン、酸素の濃度が高いと考えられる通水性部材7に水を流すようにしても同様の作用効果が得られる。通水性部材7に水を流す場合は、電極は通水性を有した電極構造である必要はなく、平板電極であってもよい。
【0098】
「実施の形態10」
図11は、実施の形態10の電解水生成装置の断面図である。
【0099】
実施の形態10においては、実施の形態5の構成に加えて陰極流路6の出口から吐水された電解水の一部を排水路9へと供給する分岐管16を設ける。具体的には、隔膜3と接触している陽極2を通過した水素イオンを効率よく系外へ取り除くために、陰極流路6で電解され吐水された電解水(陰極水)の一部を、排水路9の上部に設けられた入水管15と接続する分岐管16を通して当該排水路9に供給する。
【0100】
本実施の形態によれば、電解時には陰極流路6で電解された電解水が分岐管16を通って排水路9に流れ、当該排水路9を上部から下部へと流れるので、陽極2の表面に生成された水素イオンはこの流水(電解水)と一緒に排水管8から系外へ排水される。したがって、本実施の形態によれば、効率良くpHを変化させた電解水(陰極水)を吐水することができる。
【0101】
図11では、陽極2を絶縁体からなる通水性部材7を介して隔膜3と接触させ、陰極水を吐水させがこの限りではなく、陰極1を通水性部材7を介して隔膜3と接触させても良い。陰極1を隔膜3に接触させた場合は、陽極流路の出口から吐水された電解水の一部を、分岐管16を通して排水路9に供給する。このようにすることで、陰極1を通して排水路9へと排出された水酸化物イオンは、分岐管16より流入された電解水(陽極水)によって排水管8へと排出される。
【0102】
また、図11では、排水路9に上から下へと電解水を流水させたがこの限りではなく、下から上、上下から真ん中、真ん中から上下、手前から奥、奥から手前などの流水経路が考えられる。
【0103】
また、図11では、排水路9に吐水された電解水を流水させたが、水素イオン、酸素の濃度が高いと考えられる通水性部材7に水を流すようにしても同様の作用効果が得られる。通水性部材7に水を流す場合は、電極は通水性を有した電極構造である必要はなく、平板電極であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】実施の形態1の電解水生成装置の断面図である。
【図2】従来例である通常のアルカリイオン整水器の電解槽と本実施の形態の電解槽とにおいて、吐水量が同じである場合に排水量を減少させた場合の陰極流路を流れる水のpHを示す特性図である。
【図3】実施の形態2の電解水生成装置の断面図である。
【図4】実施の形態3の電解水生成装置の断面図である。
【図5】実施の形態4の電解水生成装置の断面図である。
【図6】実施の形態5の電解水生成装置の断面図である。
【図7】実施の形態6の電解水生成装置の断面図である。
【図8】実施の形態7の電解水生成装置の断面図である。
【図9】実施の形態8の電解水生成装置の断面図である。
【図10】実施の形態9の電解水生成装置の断面図である。
【図11】実施の形態10の電解水生成装置の断面図である。
【符号の説明】
【0105】
1…陰極(電極)
2…陽極(電極)
3…隔膜
4…入口管
5…出口管
6…陰極流路
7…通水性部材
8…排水管
9…排水路
10…補強部
11…固定オリフィス(流量調整手段)
12…流量センサー(排水量検出手段)
13…可変オリフィス(流量調整手段)
14…コントローラ(調整部)
15…入水管
16…分岐管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極と、前記陰極に対して所定距離を置いて対向配置された陽極と、前記陰極と前記陽極の間に設けられた隔膜と、前記陰極と前記隔膜との間に設けられ、原水を入口から出口へと流通させる陰極流路とを備え、前記陰極と前記陽極間に電圧を印加して電解水を生成する電解水生成装置であって、
前記陽極と前記隔膜の間にそれぞれ接するように前記原水を通過させる通水性部材を設け、前記陰極流路を流れる原水の一部を、前記隔膜を通過させ、さらに通水性部材を通過させて、前記陽極表面で生成された水素イオンと共に前記原水の一部を系外へと排水させる
ことを特徴とする電解水生成装置。
【請求項2】
陽極と、前記陽極に対して所定距離を置いて対向配置された陰極と、前記陽極と前記陰極の間に設けられた隔膜と、前記陽極と前記隔膜との間に設けられ、原水を入口から出口へと流通させる陽極流路とを備え、前記陽極と前記陰極間に電圧を印加して電解水を生成する電解水生成装置であって、
前記陰極と前記隔膜の間にそれぞれ接するように前記原水を通過させる通水性部材を設け、前記陽極流路を流れる原水の一部を、前記隔膜を通過させ、さらに通水性部材を通過させて、前記陰極表面で生成された水酸化物イオンと共に前記原水の一部を系外へと排水させる
ことを特徴とする電解水生成装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電解水生成装置であって、
前記通水性部材に接する前記陽極または前記陰極を通水性を有した電極構造とし、前記隔膜及び前記通水性部材を通過させた原水とイオンとを、この通水性を有した前記陽極または前記陰極を通過させて系外へと排水させる
ことを特徴とする電解水生成装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電解水生成装置であって、
前記通水性部材と接する前記陽極または前記陰極は、前記通水性部材の前記隔膜と接する面とは反対側の面に貴金属をメッキまたは塗布して電極とされた
ことを特徴とする電解水生成装置。
【請求項5】
請求項3に記載の電解水生成装置であって、
前記通水性部材と接する前記陽極または前記陰極は、貴金属メッシュ電極からなる電極とされ、または貴金属をメッシュ金属の片面若しくは両面にメッキまたは塗布して電極とされた
ことを特徴とする電解水生成装置。
【請求項6】
請求項3から請求項5の何れか一つに記載の電解水生成装置であって、
前記通水性部材を絶縁体から形成した
ことを特徴とする電解水生成装置。
【請求項7】
請求項3から請求項6の何れか一つに記載の電解水生成装置であって、
前記通水性部材に接する前記陽極または前記陰極は、メッシュ構造とされ且つ前記通水性部材と接する側とは反対側に補強部が設けられた構造からなる
ことを特徴とする電解水生成装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7の何れか一つに記載の電解水生成装置であって、
前記陰極流路または前記陽極流路の入口或いは出口に、陰極流路内または陽極流路内を流れる原水の流量を調整する流量調整手段を設け、この流量調整手段によって流路内の内圧を制御して、系外へ排水される排水量を調整する
ことを特徴とする電解水生成装置。
【請求項9】
請求項8に記載の電解水生成装置であって、
前記系外へと排水される量を検出する排水量検出手段と、
排水量をモニターし、その測定値に応じて前記流量調整手段を制御して流路内の内圧を制御する調整部とを備えた
ことを特徴とする電解水生成装置。
【請求項10】
請求項3から請求項9の何れか一つに記載の電解水生成装置であって、
前記通水性部材と接する前記陽極または前記陰極の裏面側に排水路を設け、その排水路に原水を流通させる入水管と配水管を設けた
ことを特徴とする電解水生成装置。
【請求項11】
請求項10に記載の電解水生成装置であって、
前記陰極流路または前記陽極流路の出口から吐水された電解水の一部を、前記排水路に供給する分岐管を設けた
ことを特徴とする電解水生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−75730(P2007−75730A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−266827(P2005−266827)
【出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】