説明

電解装置

【課題】電極反応生成物の接触による逆反応を電極間電圧を上昇させずに低減する複極式電解装置を提供する。
【解決手段】解槽10において鉛直下方に設けられて、陰極面122s、陰極面から鉛直下方に向けて開けられた第1の流下流路122a及び第1の流下流路に連絡した第1の排出流路122b、122cを有する陰極122と、電解槽において鉛直上方に設けられて、陽極面124s、第1の上昇流路124a及び第1の上昇流路に連絡した第2の排出流路124b、124cを有する陽極124と、陰極と陽極との間に設けられて、陰極面127s、陽極面126s、陰極面から鉛直下方に向けて開けられた第2の流下流路127a、陽極面から鉛直上方に向けて開けられた第2の上昇流路126a、第2の流下流路に連絡した第3の排出流路127b、127c及び第2の上昇流路に連絡した第4の排出流路126b、126cを有する第1の中間電極126とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解装置に関し、特に、複極式の電解装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽電池用途のシリコン製造に実質的に特化したものではあるが、四塩化珪素を亜鉛により還元する亜鉛還元法と呼ばれるシリコン製造方法において、副生する塩化亜鉛の電解を組入れたクローズドシステムが提案されている。ここに、亜鉛還元法の反応式は、SiCl4+2Zn→Si+2ZnCl2で示され、塩化亜鉛の電解の反応式は、ZnCl2→Zn+Cl2で示される。
【0003】
かかる状況下で、特許文献1及び2では、亜鉛還元法を用いたシリコン製造プロセスに関連した塩化亜鉛を溶融塩電解するための複極式の電解装置に関し、比抵抗の大きい溶融塩化亜鉛を実用的な消費電力で電解するためには、電解浴の温度を亜鉛の融点よりも更に高い500℃以上の高温として、電極間の距離を狭く設計する必要があり、これを実現するためには、陰極で析出する亜鉛と陽極で生成する塩素ガスとの接触機会を減少させる必要があることについて言及されている。
【0004】
また、非特許文献1では、塩化亜鉛を溶融塩電解するための単極式の電解装置に関し、三角柱形状のグラファイト電極を組み合わせた構造を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−293181号公報
【特許文献2】特開2003−328173号公報
【非特許文献1】No.216,Vol.78 PROCESSING OF ENERGY AND METALLIC MINERALS AIChE SYMPOSIUM SERIES
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者の検討によれば、特許文献1及び2に開示される構成では、塩化亜鉛溶融塩浴よりも比重が大きい亜鉛を電解槽底部から抜くものではあるが、陰極で析出した亜鉛が陽極で生成した塩素ガスによって再溶解する逆反応を、低減するための構造を提示し得ておらず、かかる観点では改善の余地がある。
【0007】
また、特許文献1及び2に開示される構成では、複極式の電解装置に関するものであるが、かかる複極式の電解装置は、中間電極への電源供給がいらないメリットがある反面、電極側面からの漏洩電流を防ぐための工夫が必要なため構造が複雑になる。特に、高電流密度で電解する場合、電極表面で生成するガスが滞留して実質的な有効電極面積を減少させ、電極間の電圧が上昇するから、直近で対向する電極対(本来の電解室部分)を飛び越えて流れる漏洩電流が増加して、想定外の効率低下を招く可能性があり、その設計は複雑なものとならざるを得ない。また、機械的な破損による漏洩電流の発生や短絡等の現象が発生すると、1つの電極群(陰極、複数の中間極及び陽極)の全てに影響が及び、内部における原因個所の特定が困難でもあり、かかる観点では改善の余地がある。
【0008】
また、非特許文献1に開示される構成では、単極式の電解槽に関するものであるが、電解反応を行う電解室部分は、傾斜した平面同士対向する狭い間隙に過ぎず、この間におい
て亜鉛と塩素ガスとが反応してしまう逆反応を、根本的に低減するための構造を提示し得ておらず、かかる観点では改善の余地がある。
【0009】
本発明は、以上の検討を経てなされたもので、比抵抗の大きい溶融塩を、実用的な電流密度と消費電力で電解するための複極式の電解装置を提供すること、具体的には、狭い電極間距離で設計する場合に生じる陰極面及び陽極面における電極反応生成物の接触による逆反応を、電極間電圧を上昇させることなく低減し得ると共に、漏洩電流による電流効率の低下を抑制し得る複極式の電解装置を提供することを目的とする。
【0010】
併せて、本発明は、高温かつ高腐食性の電解浴や電解反応生成物を扱い得て、厳しい運転条件に耐え得る単純かつ保守の容易な構造を有し、及び工業化を前提とした大型の設備にスケールアップ可能で増産、増設が容易な構造を有する複極式の電解装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、かかる事情に鑑み、各々が導電部材である陰極、陽極及び中間電極を鉛直下方から鉛直上方へと順次積層した構成の複極式の電極を有する電解装置において、各々が内部空間を持つ陰極、陽極及び中間電極の陰極や陽極として機能する(電解反応の場となる)外表面を穴開き構造とするか、又は陰極、陽極及び中間電極のかかる外表面を残すような柱状部を有する柱状構造とし、電解反応で生成する陰極反応生成物や陽極反応生成物を電極の内部空間又は柱状部の間隙へ導いて、かかる電解反応生成物が相互に接触する機会を根本的に低減し得る構成を完成させたものである。
【0012】
併せて、かかる構成には、複極式の電極を確実に固定しつつその積層数が簡便に増減できると共に電解室への液体電解質の供給を自在とする絶縁部材である電極枠や、各電極の内部から外部へ排出する陽極反応生成物と陰極両反応生成物とを分断すると共に隣接する電極への漏洩電流を低減する絶縁部材である遮蔽板を適宜組み合わせ得るものである。かかる電極枠は、一体型でも分割型でもよく、遮蔽板は、対応する電極枠に対して、互いの凹凸部を利用した嵌合や締結部材等で組み付ければよい。
【0013】
ここで、穴開き構造とは、電解反応生成物を、その反応の場から陰極、陽極及び中間電極から成る複極式の電極の各々の内部空間へ導くための多孔的な構造を意味し、幾何学的な形状は問わない。すなわち、その形状は平板に丸や多角形等の穴を開けたものでも、網目や格子等を用いたものでもよく、電解反応生成物を電解室内に滞留させずスムースに電極内部に導入できるものであれば足りる。
【0014】
また、柱状構造とは、電解反応生成物を、その反応の場から複極式の電極の各々の電極面よりも内方へ導くための間隙部を画成する複数の柱状部を有する構造を意味し、柱状部の幾何学的な形状は問わない。すなわち、その形状は板状部に円柱や多角柱等の複数の柱状部を設けたものであればよく、柱状部間に間隙部を画成して電解反応生成物を電解室内に滞留させずスムースに間隙部に導入できるものであれば足りる。
【0015】
このように各電極の内方に導入された電解反応生成物は、各電極において鉛直方向に交差する方向に開口した排出口から各電極の外部に排出されて適宜溜められる等した後で、次工程に送られることになるが、各電極の内部空間や排出口の幾何学的な形状も、電解反応生成物を滞留させず排出できるものであれば任意に設定可能である。
【0016】
つまり、穴開き構造が適用された各電極の内部構造は、電解反応生成物が、電極として機能する外表面から多孔部に誘導された後、電極内部を通過して、各電極の外部へ所定の排出方向で排出できる構造であれば足りる。例えば、各電極の構造としては、その内部に
おいて、電解反応生成物を外方に向かって流して排出する流路が実質的に形成されるものであれば足り、流路が規定された中空の箱型、複数のL字型貫通穴を有するブロック型、溝加工した平板を貼り合わせ型等が用い得る。
【0017】
また、柱状構造が適用された各電極の内部構造は、電解反応生成物が、電極として機能する外表面から柱状部間の間隙部に誘導された後、柱状部が立設される基面で偏向されながら基面に沿って通過して、各電極の外部へ所定の排出方向で排出できる構造であれば足りる。
【0018】
また、例えば、鉛直方向と平行な電極面で電解反応を生じる平行平板型の電極を用いた電解装置の場合には、陽極反応生成物は鉛直上方向のみ、陰極反応生成物は鉛直下方向のみに集まるものであるが、以上の本発明の電解装置によれば、いずれの電解反応生成物も鉛直方向に交差する方向を適宜組み合わせて、互いの排出方向が重ならないように偏位して、例えば、互いの排出流路の排出端の位置を偏位して、電極外部に排出させることが可能であり、異種の電解反応生成物同士の接触機会を増やさずに各電極を大型化できる等の各電極のサイズ決定の自由度が高まる。
【0019】
また、かかる電解反応生成物の電極外部への排出方向と、液体電解質の電解室への供給方向と、を互いに重ならないように偏位して、例えば電解反応生成物の排出流路の排出端の位置と、液体電解質の供給流路の導入端の位置と、を偏位して設定することも、電解の結果物である電解反応生成物が、電解の原料である液体電解質に同伴して電解室に不要に侵入し、逆反応を生じることを避ける観点からは好ましい。
【0020】
また、気体である陽極反応生成物を電解室の外部に排出するためには、電解室内よりも電解室外の圧力を低く管理することが好ましい。
【0021】
また、気体である陽極反応生成物が通過する各電極の内部空間や基面は、かかる陽極反応生成物が通過しやすいようにその流れ方向に対して上り勾配に配設することが好ましく、液体である陰極反応生成物が通過する各電極の内部空間や基面は、かかる陰極反応生成物が通過しやすいようにその流れ方向に対して下り勾配に配設することが好ましい。併せて、各電極の陽極として作用する外表面も、陽極反応生成物が対応する電極の内部空間に導入されやすいようにその流れ方向に対して上り勾配に配設することが好ましく、各電極の陰極として作用する外表面も、陰極反応生成物が対応する電極の内部空間に導入されやすいようにその流れ方向に対して下り勾配に配設することが好ましい。
【0022】
ここで、かかる電解装置における漏洩電流の回路は、電解室内部において液体電解質を挟んで対向する陰極として機能する外表面と陽極として機能する外表面との間で規定される電解電流の回路に対して、電解室外の液体電解質を通じて他の電解室における陰極として機能する外表面や陽極として機能する外表面との間で形成される並列回路であると考えられる。
【0023】
よって、漏洩電流の回路の抵抗が、電解電流の回路の抵抗と比べて十分大きくなるような設定ができれば、漏洩電流による電流効率低下を無視できる程度まで低減できる。すなわち、電解室内部において液体電解質を挟んで対向する陰極として機能する外表面の面積及び陽極として機能する外表面の面積が等しくAであり、これらの外表面の距離がDである場合に、漏洩電流の流れる空間の漏洩電流の経路に直交する面積をaとし、漏洩電流の経路の長さをdとすれば、d/a>D/Aとなる構成を実現すればよいことが分かる。
【0024】
かかる観点から、漏洩電流を低減するには、電解槽内での各電極のサイズを大きくして、電解室外における液体電解質の存在する領域を狭めたり、各電極間の距離を増大するこ
とが必要になるが、本発明の電解装置の構成においては、電解反応生成物の接触機会を増やさずに各電極を大型化できる等の各電極のサイズ決定の自由度が高いものであるため、漏洩電流を低減しやすい基本構成を有するものであるともいえる。
【0025】
つまり、本発明は、第1の局面において、液体電解質を収容して鉛直方向に立設された電解槽と、前記電解槽において前記鉛直方向における下方に設けられて、陰極面、前記陰極面から前記鉛直方向における下方に向けて開けられた第1の流下流路及び前記第1の流下流路に連絡した第1の排出流路を有する陰極と、前記電解槽において前記鉛直方向における上方に設けられて、陽極面、前記陽極面から前記鉛直方向における上方に向けて開けられた第1の上昇流路及び前記第1の上昇流路に連絡した第2の排出流路を有する陽極と、前記電解槽において前記陰極と前記陽極との間に設けられて、陰極面、陽極面、前記陰極面から前記鉛直方向における下方に向けて開けられた第2の流下流路、前記陽極面から前記鉛直方向における上方に向けて開けられた第2の上昇流路、前記第2の流下流路に連絡した第3の排出流路及び前記第2の上昇流路に連絡した第4の排出流路を有する第1の中間電極と、前記陰極の前記陰極面と前記第1の中間電極の前記陽極面との間に画成される第1の電解室と、前記陽極の前記陽極面と前記第1の中間電極の前記陰極面との間に画成される第2の電解室と、を備え、前記陰極の前記第1の流下流路は、前記第1の電解室における電解で生成された前記電解生成溶融金属を、前記陰極の前記陰極面から前記鉛直方向における下方に移動自在として前記第1の排出流路に送出自在であり、前記陽極の前記第1の上昇流路は、前記第2の電解室における電解で生成された前記電解生成ガスを、前記陽極の前記陽極面から前記鉛直方向における上方に移動自在として前記第2の排出流路に送出自在であり、前記第1の中間電極の前記第2の流下流路は、前記第2の電解室における電解で生成された前記電解生成溶融金属を、前記第1の中間電極の前記陰極面から前記鉛直方向の下方に移動自在として前記第3の排出流路に送出自在であり、前記第1の中間電極の前記第2の上昇流路は、前記第1の電解室における電解で生成された前記電解生成ガスを、前記第1の中間電極の前記陽極面から前記鉛直方向における上方に移動自在として前記第4の排出流路に送出自在である構成の電解装置である。
【0026】
また本発明は、かかる第1の局面に加えて、前記陰極の前記第1の排出流路は、前記陰極の内方を前記鉛直方向に交差する方向に延在し、前記第1の電解室における液体電解質の電解で生成された電解生成溶融金属を、前記第1の電解室よりも前記鉛直方向における下方で前記陰極の外部に排出し、前記陽極の前記第2の排出流路は、前記陽極の内方を前記鉛直方向に交差する方向に延在し、前記第2の電解室における液体電解質の電解で生成された電解生成ガスを、前記第2の電解室陽よりも前記鉛直方向における上方で前記陽極の外部に排出し、前記第1の中間電極の前記第3の排出流路は、前記第1の中間電極の内方を前記鉛直方向に交差する方向に延在し、前記第2の電解室における前記液体電解質の電解で生成された電解生成溶融金属を、前記第1の中間電極の前記陰極面よりも前記鉛直方向における下方で前記第1の中間電極の外部に排出し、前記第1の中間電極の前記第4の排出流路は、前記第1の中間電極の内方を前記鉛直方向に交差する方向に延在し、前記第1の電解室における前記液体電解質の電解で生成された電解生成ガスを、前記第1の中間電極の前記陽極面よりも前記鉛直方向における上方で前記第1の中間電極の外部に排出することを第2の局面とする。
【0027】
また本発明は、かかる第1又は第2の局面に加えて、前記陰極の前記第1の排出流路から排出される前記電解生成溶融金属の排出方向及び前記第1の中間電極の前記第3の排出流路から排出される前記電解生成溶融金属の排出方向と、前記陽極の前記第2の排出流路から排出される前記電解生成ガスの排出方向及び前記第1の中間電極の前記第4の排出流路から排出される前記電解生成ガスの排出方向とは、前記鉛直方向に直交する面において互いに重ならないように偏位することを第3の局面とする。
【0028】
また本発明は、かかる第1から第3の局面に加えて、前記第1の中間電極及び前記陽極は、前記陰極に固定された電極枠を介して順次前記鉛直方向における上方に向かって積層されて、前記陰極、前記陽極及び前記第1の中間電極は、ユニット化された電極ユニットを成すことを第4の局面とする。
【0029】
また本発明は、かかる第4の局面に加えて、前記電極枠は、前記陰極に固定されて前記第1の中間電極を載置し、前記第1の電解室に前記液体電解質を供給する供給流路を有する第1の枠部材と、前記第1の中間電極に固定されて前記陽極を載置し、前記第2の電解室に前記液体電解質を供給する供給流路を有する第2の枠部材と、を含むことを第5の局面とする。
【0030】
また本発明は、かかる第4の局面に加えて、前記第1の中間電極の前記第1の排出流路から排出される前記電解生成溶融金属の排出方向と、前記第1の電解室に前記液体電解質を供給する第1の枠部材の供給流路の供給方向と、が、前記鉛直方向に直交する面において重ならないように偏位し、かつ、前記第2の中間電極の前記第2の排出流路から排出される前記電解生成ガスの排出方向と、前記第2の電解室に前記液体電解質を供給する前記第2の枠部材の供給流路の供給方向と、が、前記鉛直方向に直交する面において重ならないように偏位することを第6の局面とする。
【0031】
また本発明は、かかる第5の局面に加えて、前記第1の枠部材の前記供給流路における前記液体電解質の供給方向及び前記第2の枠部材の前記供給流路における前記液体電解質の供給方向は、前記陰極の前記第1の排出流路から排出される前記電解生成溶融金属の排出方向、前記第1の中間電極の前記第3の排出流路から排出される前記電解生成溶融金属の排出方向、前記陽極の前記第2の排出流路から排出される前記電解生成ガスの排出方向及び前記第1の中間電極の前記第4の排出流路から排出される前記電解生成ガスの排出方向に対して、前記鉛直方向に直交する面において互いに重ならないように偏位することを第6の局面とする。
【0032】
また本発明は、かかる第1から第7の局面に加えて、更に、前記第1の中間電極に対応して、前記鉛直方向における前記第3の排出流路と前記第4の排出流路の間に遮蔽板を有することを第8の局面とする。
【0033】
また本発明は、かかる第8の局面に加えて、前記遮蔽板は、前記第1の中間電極の前記第4の排出流路から排出される前記電解生成ガスを上昇させる上昇開口と、前記第1の中間電極の前記第3の排出流路から排出される前記電解生成溶融金属を流下させる流下開口と、を有することを第9の局面とする。
【0034】
また本発明は、かかる第8の局面に加えて、前記電解槽は、前記第1の中間電極の前記第4の排出流路から排出される前記電解生成ガスを外部に排出する排出開口と、前記第1の中間電極の前記第3の排出流路から排出される前記電解生成溶融金属を排出する排出開口と、を有することを第10の局面とする。
【0035】
また本発明は、かかる第1から第10のいずれかの局面に加えて、前記陰極の前記第1の排出流路の下面及び前記第1の中間電極の前記第3の排出流路の下面は、各々前記電解生成溶融金属の前記排出方向において下り勾配を有し、前記陽極の前記第2の排出流路の上面及び前記第1の中間電極の前記第4の排出流路の上面は、各々前記電解生成ガスの前記排出方向において上り勾配を有することを第11の局面とする。
【0036】
また本発明は、かかる第5の局面に加えて、更に、前記電解槽において前記第1の中間電極と前記陽極との間に設けられた第2の中間電極を有し、前記第2の中間電極は、前記
電極枠における第3の枠部材を介して前記第1の中間電極の前記鉛直方向における上方に積層されて、前記陰極、前記陽極、前記第1の中間電極及び前記第2の中間電極は、ユニット化された電極ユニットを成すことを第12の局面とする。
【0037】
また本発明は、かかる第1から12のいずれかの局面に加えて、前記第1の流下流路及び前記第2の流下流路は、各々対応して前記電解生成溶融金属を流下自在とする孔であり、前記第1の上昇流路及び第2の上昇流路は、各々対応して前記電解生成ガスを上昇自在とする孔であることを第13の局面とする。
【0038】
また本発明は、かかる第1から12のいずれかの局面に加えて、 前記第1の流下流路及び前記第2の流下流路は、各々対応して前記電解生成溶融金属を流下自在とすべく複数の柱状部の間に画成される間隙部であり、前記第1の上昇流路及び第2の上昇流路は、各々対応して前記電解生成ガスを上昇自在とすべく複数の柱状部の間に画成される間隙部であることを第14の局面とする。
【0039】
また本発明は、かかる第1から14のいずれかの局面に加えて、前記液体電解質は、前記電解槽に収容された無水溶融塩化亜鉛又は塩化亜鉛を含む無水塩化物であることを第15の局面とする。
【発明の効果】
【0040】
本発明の第1の局面における構成によれば、電解槽において鉛直方向下方から鉛直上方に向けて、陰極、第1の中間電極及び陽極を順次積層し、陰極の第1の流下流路が、第1の電解室における電解で生成された電解生成溶融金属を、陰極の陰極面から鉛直方向における下方に移動自在として、陰極の内部に形成された第1の排出流路に送出自在であり、陽極の第1の上昇流路が、第2の電解室における電解で生成された電解生成ガスを、陽極の陽極面から鉛直方向における上方に移動自在として、陽極の内部に形成された第2の排出流路に送出自在であり、第1の中間電極の第2の流下流路が、第2の電解室における電解で生成された電解生成溶融金属を、第1の中間電極の陰極面から鉛直方向の下方に移動自在として、第1の中間電極の内部に形成された第3の排出流路に送出自在であり、第1の中間電極の第2の上昇流路が、第1の電解室における電解で生成された電解生成ガスを、第1の中間電極の陽極面から鉛直方向における上方に移動自在として、第1の中間電極の内部に形成された第4の排出流路に送出自在であるため、狭い電極間距離で設計する場合に生じる陰極面及び陽極面における電極反応生成物の接触による逆反応を、電極間電圧を上昇させることなく低減し得ると共に、漏洩電流による電流効率の低下を抑制し得て、比抵抗の大きい溶融塩を、実用的な電流密度と消費電力で電解するための複極式の電解装置を提供することができる。併せて、高温かつ高腐食性の電解浴や電解反応生成物を扱い得て、厳しい運転条件に耐え得る単純かつ保守の容易な構造を有し、及び工業化を前提とした大型の設備にスケールアップ可能で増産、増設が容易な構造を実現することができる。よって、例えば、500℃以上の高温で、亜鉛還元法によるシリコン製造における副生塩化亜鉛を溶融塩電解する用途として好適な無隔膜複極式の電解装置を提供できる。
【0041】
また、本発明の第2の局面における構成によれば、陰極の第1の排出流路が、陰極の内方を鉛直方向に交差する方向に延在し、第1の電解室における液体電解質の電解で生成された電解生成溶融金属を、第1の電解室よりも鉛直方向における下方で陰極の外部に排出し、前陽極の第2の排出流路が、陽極の内方を鉛直方向に交差する方向に延在し、第2の電解室における液体電解質の電解で生成された電解生成ガスを、第2の電解室陽よりも鉛直方向における上方で陽極の外部に排出し、第1の中間電極の第3の排出流路が、第1の中間電極の内方を鉛直方向に交差する方向に延在し、第2の電解室における液体電解質の電解で生成された電解生成溶融金属を、第1の中間電極の陰極面よりも鉛直方向における下方で第1の中間電極の外部に排出し、第1の中間電極の第4の排出流路が、第1の中間
電極の内方を鉛直方向に交差する方向に延在し、第1の電解室における液体電解質の電解で生成された電解生成ガスを、第1の中間電極の陽極面よりも鉛直方向における上方で第1の中間電極の外部に排出するものであるため、装置のスケールアップが容易に実現できると共に、電極反応生成物の接触による逆反応を確実に低減できる。
【0042】
また、本発明の第3の局面における構成によれば、陰極の第1の排出流路から排出される電解生成溶融金属の排出方向及び第1の中間電極の第4の排出流路から排出される電解生成溶融金属の排出方向と、陽極の第2の排出流路から排出される電解生成ガスの排出方向及び第1の中間電極の第3の排出流路から排出される電解生成ガスの排出方向と、を鉛直方向に直交する面において互いに重ならないように偏位させることにより、各電極の部材の共通性を高めながら、電極反応生成物の接触による逆反応をより確実に低減可能である。
【0043】
また、本発明の第4の局面における構成によれば、第1の中間電極及び陽極が、陰極に固定された電極枠を介して順次鉛直方向における上方に向かって積層されて、陰極、陽極及び第1の中間電極は、ユニット化された電極ユニットを成すことにより、各電極を確実に位置決めして固定しながら各電解室に液体電解質を確実に供給できると共に、装置のスケールアップがより容易に実現可能である。
【0044】
また、本発明の第5の局面における構成によれば、電極枠が、陰極に固定されて第1の中間電極を載置し、第1の電解室に液体電解質を供給する供給流路を有する第1の枠部材と、第1の中間電極に固定されて陽極を載置し、第2の電解室に液体電解質を供給する供給流路を有する第2の枠部材と、を含むことにより、各枠部材の共通性を高めながら各電極を確実に位置決めして固定できると共に、装置のスケールアップがより容易に実現可能である。
【0045】
また、本発明の第6の局面における構成によれば、第1の中間電極の第1の排出流路から排出される電解生成溶融金属の排出方向と、第1の電解室に液体電解質を供給する第1の枠部材の供給流路の供給方向と、が、鉛直方向に直交する面において重ならないように偏位し、かつ、第2の中間電極の第2の排出流路から排出される電解生成ガスの排出方向と、第2の電解室に液体電解質を供給する第2の枠部材の供給流路の供給方向と、が、鉛直方向に直交する面において重ならないように偏位することにより、電極や電極枠の構成部材の共通性を高めながら、電極反応生成物が液体電解質に同伴して電解室に不要に侵入し、逆反応を生じることを確実に低減可能である。
【0046】
また、本発明の第7の局面における構成によれば、第1の枠部材の供給流路における液体電解質の供給方向及び第2の枠部材の供給流路における液体電解質の供給方向を、陰極の第1の排出流路から排出される電解生成溶融金属の排出方向、第1の中間電極の第3の排出流路から排出される電解生成溶融金属の排出方向、前陽極の第2の排出流路から排出される電解生成ガスの排出方向及び第1の中間電極の第4の排出流路から排出される電解生成ガスの排出方向に対して、鉛直方向に直交する面において互いに重ならないように偏位させることにより、電極や電極枠の構成部材の共通性を高めながら、電極反応生成物が液体電解質に同伴して電解室に不要に侵入し、逆反応を生じることをより確実に低減可能である。
【0047】
また、本発明の第8の局面における構成によれば、更に、第1の中間電極に対応して、鉛直方向における第3の排出流路と第4の排出流路の間に遮蔽板を有することにより、各電解室の外部の液体電解質を介して流れる漏洩電流をより確実に低減でき、電流効率の低下をより確実に抑制することができる。
【0048】
また、本発明の第9の局面における構成によれば、遮蔽板が、第1の中間電極の第4の排出流路から排出される電解生成ガスを上昇させる上昇開口と、第1の中間電極の第3の排出流路から排出される電解生成溶融金属を流下させる流下開口と、を有することにより、電解槽における電極反応生成物の接触による逆反応をより確実に低減可能である。
【0049】
また、本発明の第10の局面における構成によれば、電解槽が、第1の中間電極の第4の排出流路から排出される電解生成ガスを外部に排出する排出開口と、第1の中間電極の第3の排出流路から排出される電解生成溶融金属を排出する排出開口と、を有することにより、電解槽における電極反応生成物の接触による逆反応をより確実に低減可能である。
【0050】
また、本発明の第11の局面における構成によれば、陰極の第1の排出流路の下面及び第1の中間電極の第3の排出流路の下面が、各々電解生成溶融金属の排出方向において下り勾配を有し、陽極の第2の排出流路の上面及び第1の中間電極の第4の排出流路の上面が、各々電解生成ガスの排出方向において上り勾配を有することにより、電解生成反応物をより確実に電解室から各電極内をスムースに通過させて排出することができ、電極反応生成物の接触による逆反応をより確実に低減可能である。
【0051】
また、本発明の第12の局面における構成によれば、更に、電解槽において第1の中間電極と陽極との間に設けられた第2の中間電極を有し、第2の中間電極は、電極枠における第3の枠部材を介して第1の中間電極の鉛直方向における上方に積層されて、陰極、陽極、第1の中間電極及び第2の中間電極は、ユニット化された電極ユニットを成すことにより、装置のスケールアップがより容易に実現可能である。
【0052】
また、本発明の第13の局面における構成によれば、第1の流下流路及び第2の流下流路、並びに第1の上昇流路及び第2の上昇流路をいずれも孔として形成する穴開き構造を採用することにより、電解反応生成物を電解室から外部に向けて確実に誘導することができる。
【0053】
また、本発明の第14の局面における構成によれば、第1の流下流路及び第2の流下流路、並びに第1の上昇流路及び第2の上昇流路をいずれも柱状部の間隙部として形成する柱状構造を採用することにより、より簡便な構成で電解反応生成物を電解室から外部に向けて確実に誘導することができる。
【0054】
また、本発明の第15の局面における構成によれば、液体電解質が、電解槽に収容された無水溶融塩化亜鉛又は塩化亜鉛を含む無水塩化物であることにより、亜鉛還元法によるシリコン製造における副生塩化亜鉛を溶融塩電解する用途としてより好適に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第1の実施形態における電解装置の縦断面図であり、図2のZ−Z断面に相当する。
【図2】本実施形態における電解装置の上面図である。
【図3】本実施形態における電解装置の電極ユニット及び電極枠を示す側面図であり、図2のY矢視図である。
【図4】本実施形態における電解装置の電極ユニットの陰極についての横断面図であり、図1のA−A断面に相当する。
【図5】本実施形態における電解装置の電極ユニットの陽極についての横断面図であり、図1のB−B断面に相当する。
【図6】本実施形態における電解装置の電極ユニットの第1中間電極又は第2中間電極についての横断面図であり、図1のC−C断面又はD−D断面に相当する。
【図7】本実施形態における電解装置の電極ユニットの第1中間電極又は第2中間電極についての横断面図であり、図1のE−E断面又はF−F断面に相当する。
【図8】本実施形態における電解装置の電極枠の第1枠部材、第2枠部材又は第3枠部材についての横断面図であり、図1のG−G断面、H−H断面又はI−I断面に相当する。
【図9】本発明の第2の実施形態における電解装置の縦断面図であり、位置的には図1に相当する。
【図10】本実施形態における電解装置の上面図である。
【図11】本実施形態の変形例における電解装置の部分拡大縦断面図であり、電解で生成された溶融金属の排出流路側を示す。
【図12】本実施形態の変形例における電解装置の部分拡大縦断面図であり、電解で生成されたガスの排出流路側を示す。
【図13】本発明の第3の実施形態における電解装置の縦断面図であり、図2のZ−Z断面に相当する。
【図14】本実施形態における電解装置の上面図である。
【図15】本発明の第4の実施形態における電解装置の縦断面図であり、位置的には図1に相当する。
【図16】本実施形態における電解装置の電極ユニット及び電極枠を示す側面図であり、位置的には図3に相当する。
【図17】本実施形態における電解装置の電極ユニットの陰極についての横断面図であり、図15のJ−J断面に相当する。
【図18】本実施形態における電解装置の電極ユニットの陽極についての横断面図であり、図15のK−K断面に相当する。
【図19】本実施形態における電解装置の電極ユニットの第1中間電極又は第2中間電極についての横断面図であり、図15のL−L断面又はM−M断面に相当する。
【図20】本実施形態における電解装置の電極ユニットの第1中間電極又は第2中間電極についての横断面図であり、図15のN−N断面又はO−O断面に相当する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
以下、図面を適宜参照して、本発明の各実施形態における電解装置につき詳細に説明する。なお、図中、x、y、z軸は、3軸直交座標系をなし、z軸に平行な方向が、鉛直方向であり、適宜、z軸の正方向を上方、z軸の負方向を下方というものとする。
【0057】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態における電解装置につき、図1から図8を参照して、詳細に説明する。
【0058】
図1は、本実施形態における電解装置の縦断面図であって、図2のZ−Z断面に相当し、図2は、本実施形態における電解装置の上面図である。図3は、本実施形態における電解装置の電極ユニット及び電極枠を示す側面図であり、図2のY矢視図である。図4は、本実施形態における電解装置の電極ユニットの陰極についての横断面図であって、図1のA−A断面に相当し、図5は、本実施形態における電解装置の電極ユニットの陽極についての横断面図であって、図1のB−B断面に相当する。図6は、本実施形態における電解装置の電極ユニットの第1中間電極又は第2中間電極についての横断面図であって、図1のC−C断面又はD−D断面に相当し、図7は、本実施形態における電解装置の電極ユニットの第1中間電極又は第2中間電極についての横断面図であって、図1のE−E断面又はF−F断面に相当する。また、図8は、本実施形態における電解装置の電極枠の第1枠部材、第2枠部材又は第3枠部材についての横断面図であり、図1のG−G断面、H−H断面又はI−I断面に相当する。
【0059】
図1及び図2に示すように、本実施形態の電解装置1は、側壁部に供給口10U、取り出し口10L、挿通孔10a及び10bを有し、鉛直方向に直立して底部が閉じられ、液体電解質である溶融塩化亜鉛及び電極ユニット20を収容する角筒状でアルミナ製の電解槽10を備える。なお、電解槽10の材質としては、アルミナの他に、同様に溶融塩化亜鉛に対して耐食性の高い窒化珪素や石英が用い得る。また、液体電解質は、図示を省略する加熱ヒータにより550℃に保たれ、液体電解質としては、無水溶融塩化亜鉛や、塩化亜鉛を含む無水塩化物が使用可能である。
【0060】
具体的には、かかる電極ユニット20においては、電解槽10の底部に固定された陰極22及び鉛直上方で陰極22に対向する陽極24が設けられ、陰極22及び陽極24の間には、鉛直上方に向かって順次第1の中間電極26及び第2の中間電極28が設けられる。つまり、陰極22、第1の中間電極26、第2の中間電極28及び陽極24は、この順で典型的には第1の枠部材32、第2の枠部材34及び第3の枠部材36から成る電極枠30を介し鉛直上方に向かって積層されてユニット化され、電極ユニット20を成している。また、陰極22と第1の中間電極26との間には、第1の電解室40が画成され、第1の中間電極26と第2の中間電極28との間には、第2の電解室42が画成され、かつ、第2の中間電極28と陽極24との間には、第3の電解室44が画成される。なお、陰極22、第1の中間電極26、第2の中間電極28及び陽極24は、溶融塩化亜鉛に対する耐食性を考慮して、典型的には導電性グラファイト製である。また、電極ユニット20は、複極式の電極ユニットであるが、必要に応じて中間電極の個数は適宜設定自在であり、第1の中間電極26及び第2の中間電極28の一方を省略しても良いし、更に個数を増やして、第3の中間電極等を設けてもかまわず、対応して電解室の個数、電極枠30の高さやそれを構成する枠部材の個数も増減することになる。また、電極枠30の材質としては、溶融塩化亜鉛に対して耐食性の高い絶縁材料であるアルミナ、窒化珪素又は石英が用い得る。
【0061】
詳しくは、陰極22は、矩形板状の部材であり、電解槽10の挿通孔10bを介して陰極22に連絡する陰極電流フィーダ50の電位に対して等電位に設定される。また、陰極22においては、陰極22の上面である陰極面22sから鉛直下方に延在して陥設された複数の流下孔22aが設けられ、流下孔22aにおける陰極面22s側の角部22rは、断面円弧状のR形状を有する。更に図3及び図4にも示すように、陰極22は、流下孔22aに連絡すると共に、陰極22の内部を鉛直方向に直交する方向に延在して陰極22の外部に連通する複数の排出流路22b及び22cを有し、排出流路22bは流下孔22aからx軸の正方向に延在する一方で、排出流路22cは流下孔22aからy軸の正方向に延在する。
【0062】
第1の中間電極26は、矩形板状の部材であり、第1の中間電極26の下面に陽極部として機能する陽極面26sを有すると共に、第1の中間電極26の上面に陰極部として機能する陰極面27sを有する。また、第1の中間電極26においては、陽極面26sから鉛直上方に延在して陥設された複数の上昇孔26aが設けられ、上昇孔26aにおける陽極面26s側の角部26rは、断面円弧状のR形状を有すると共に、陰極面27sから鉛直下方に延在して陥設された複数の流下孔27aが設けられ、流下孔27aにおける陰極面27s側の角部27rは、円弧状のR形状を有する。更に、図6にも示すように、第1の中間電極26は、上昇孔26aに連絡すると共に、第1の中間電極26の内部において鉛直方向に直交する方向に延在して第1の中間電極26の外部に連通する複数の排出流路26b及び26cを有し、排出流路26bは上昇孔26aからx軸の負方向に延在する一方で、排出流路26cは上昇孔26aからy軸の負方向に延在する。また、図7にも示すように、第1の中間電極26は、流下孔27aに連絡すると共に、鉛直方向に直交する方向に延在して第1の中間電極26の外部に連通する複数の排出流路27b及び27cを有し、排出流路27bは流下孔27aからx軸の正方向に延在する一方で、排出流路27c
は流下孔27aからy軸の正方向に延在する。
【0063】
第2の中間電極28は、第1の中間電極26と同一な部材である矩形板状の部材であり、第2の中間電極28の下面に陽極部として機能する陽極面28sを有すると共に、第2の中間電極28の上面に陰極部として機能する陰極面29sを有する。また、第2の中間電極28においては、陽極面28sから鉛直上方に延在して陥設された複数の上昇孔28aが設けられ、上昇孔28aにおける陽極面28s側の角部28rは、円弧状のR形状を有すると共に、陰極面29sから鉛直下方に延在して陥設された複数の流下孔29aが設けられ、流下孔29aにおける陰極面29s側の角部29rは、断面円弧状のR形状を有する。更に、図6において括弧内の符号を用いて示すように、第2の中間電極28は、上昇孔28aに連絡すると共に、第2の中間電極28のい内部において鉛直方向に直交する方向に延在して第2の中間電極28の外部に連通する複数の排出流路28b及び28cを有し、排出流路28bは上昇孔28aからx軸の負方向に延在する一方で、排出流路28cは上昇孔28aからy軸の負方向に延在する。また、図7において括弧内の符号を用いて示すように、第2の中間電極28は、流下孔29aに連絡すると共に、鉛直方向に直交する方向に延在して第2の中間電極28の外部に連通する複数の排出流路29b及び29cを有し、排出流路29bは流下孔29aからx軸の正方向に延在する一方で、排出流路29cは流下孔29aからy軸の正方向に延在する。
【0064】
陽極24は、陰極22と同様な部材であるが、陰極22とは排出流路の配置が相違する矩形板状の部材であり、電解槽10の挿通孔10aを介して陽極24に連絡する陽極電流フィーダ60の電位に対して等電位に設定される。また、陽極24においては、陽極24の下面である陽極面24sから鉛直上方に延在して陥設された複数の上昇孔24aが設けられ、上昇孔24aにおける陽極面24s側の角部24rは、断面円弧状のR形状を有する。更に図3及び図5にも示すように、陽極24は、上昇孔24aに連絡すると共に、陽極24の内部において鉛直方向に直交する方向に延在して陽極24の外部に連通する排出流路24b及び24cを有し、排出流路24bは上昇孔24aからx軸の負方向に延在する一方で、排出流路24cは上昇孔24aからy軸の負方向に延在する。
【0065】
ここで、陰極22の複数の流下孔22a、第1の中間電極26の複数の上昇孔26a及び複数の流下孔27a、第2の中間電極28の複数の上昇孔28a及び複数の流下孔29a、並びに陽極24の複数の上昇孔24aが、電極ユニット20、つまり複極式の電極における穴開き構造である。また、陽極24の複数の排出流路24b及び複数の排出流路24c、第1の中間電極26の複数の排出流路26b及び複数の排出流路26c、並びに第2の中間電極28の複数の排出流路28b及び複数の排出流路28cと、陰極22の複数の排出流路22b及び複数の排出流路22c、第1の中間電極26の複数の排出流路27b及び複数の排出流路27c、並びに第2の中間電極28の複数の排出流路29b及び複数の排出流路29cと、のx−y平面における成す角は鋭角で90°以上180°以下の範囲内に設定され、溶融塩化亜鉛の電解により生成される溶融亜鉛及び塩素ガスの各排出方向がx−y平面において重ならず、かかる溶融亜鉛及び塩素ガスが不要に接触する機会が低減されている。
【0066】
また、陰極22の流下孔22a、第1の中間電極26の流下孔27a及び第2の中間電極28の流下孔29aが、電解質40、42及び44から溶融亜鉛を対応して流下させる流下流路に相当し、陽極24の上昇孔24a、第1の中間電極26の上昇孔26a及び第2の中間電極28の上昇孔28aが、電解質40、42及び44から塩素ガスを対応して上昇させる上昇流路に相当する。
【0067】
第1の枠部材32は、鉛直方向に直立した角筒状の部材であり、更に図3及び図8にも示すように、陰極22と第1の中間電極26との間に画成される第1の電解室40に対し
て、電解槽10内の液体電解質である溶融塩化亜鉛を供給するための供給流路32a及び32bを有し、供給流路32a、32aは、x軸の方向で対向し、供給流路32b、32bは、y軸の方向で対向する。ここで、第1の枠部材32は、第1の電解室40に向かって突出する突出部32pを有し、供給流路32a及び32bは、かかる突出部32pを貫通して設けられる。更に、第1の枠部材32は、更に図6及び図7にも示すように、第1の中間電極26の排出流路26bに連絡して第1の中間電極26の外部に連通させる排出流路32cと、第1の中間電極26の排出流路26cに連絡して第1の中間電極26の外部に連通させる排出流路32eと、第1の中間電極26の排出流路27bに連絡して第1の中間電極26の外部に連通させる排出流路32dと、第1の中間電極26の排出流路27cに連絡して第1の中間電極26の外部に連通させる排出流路32fと、を有する。
【0068】
第2の枠部材34は、第1の枠部材32と同一な部材であって、鉛直方向に直立した角筒状の部材であり、更に図3に示すと共に図8において括弧内の符号を用いて示すように、第1の中間電極26と第2の中間電極28との間に画成される第2の電解室42に対して、電解槽10内の液体電解質である溶融塩化亜鉛を供給するための供給流路34a及び34bを有し、供給流路34a、34aは、x軸の方向で対向し、供給流路34b、34bは、y軸の方向で対向する。ここで、第2の枠部材34は、第2の電解室42に向かって突出する突出部34pを有し、供給流路34a及び34bは、かかる突出部34pを貫通して設けられる。更に、第2の枠部材34は、更に図6及び図7において括弧内の符号を用いて示すように、第2の中間電極28の排出流路28bに連絡して第2の中間電極28の外部に連通させる排出流路34cと、第2の中間電極28の排出流路28cに連絡して第2の中間電極28の外部に連通させる排出流路34eと、第2の中間電極28の排出流路29bに連絡して第2の中間電極28の外部に連通させる排出流路34dと、第2の中間電極28の排出流路29cに連絡して第2の中間電極28の外部に連通させる排出流路34fと、を有する。
【0069】
第3の枠部材36は、第1の枠部材32及び第2の枠部材34における排出流路を省略した部材である鉛直方向に直立した角筒状の部材であり、更に図3に示すと共に図8において括弧内の符号を用いて示すように、第2の中間電極28と陽極24との間に画成される第3の電解室44に対して、電解槽10内の液体電解質である溶融塩化亜鉛を供給するための供給流路36a及び36bを有し、供給流路36a、36aは、x軸の方向で対向し、供給流路36b、346は、y軸の方向で対向する。ここで、第3の枠部材36は、第3の電解室44に向かって突出する突出部36pを有し、供給流路36a及び36bは、かかる突出部36pを貫通して設けられる。
【0070】
なお、例えば、電極22、24、26及び28における排出流路のうちで排出流路22b、24b、26b及び28bを残し、かつ電極枠30における供給流路のうちで供給流路32b、34b及び36bを残した構成にすれば、電解により生成される溶融亜鉛を排出する排出流路の排出端と、電解により生成される塩素ガスを排出する排出流路の排出端と、電解質である溶融塩化亜鉛を電解室へ供給する導入端と、を、電極枠30で支持された電極ユニット20の各側面において分散して配置することができ、電解により生成される溶融亜鉛の排出方向、電解により生成される塩素ガスの排出方向及び電解質である溶融塩化亜鉛の電解室への供給方向を、x−y平面上で互いに重ならないように異ならせることも可能である。
【0071】
以上の構成の電解装置1を組み立てるには、まず、陰極22の陰極面22sの端部上に第1の枠部材32の突出部32pの下面を当接しながら、陰極22上に第1の枠部材32を載置し、次いで、第1の枠部材32の突出部32pの上面上に第1の中間電極26の陽極面26sの端部を当接しながら、第1の枠部材上に第1の中間電極26を載置する。次いで、第1の枠部材32の上端部に第2の枠部材34の下端部を当接すると共に、第1の
中間電極26の陰極面27sの端部上に第2の枠部材34の突出部34pの下面を当接しながら、第1の中間電極26上に第2の枠部材34を載置する。そして、以降順次同様に、第2の枠部材34の突出部34pの上面上に第2の中間電極28の陽極面28sの端部を当接しながら、第2の枠部材34上に第2の中間電極28を載置し、第2の枠部材34の上端部に第3の枠部材36の下端部を当接すると共に、第2の中間電極26の陰極面29sの端部上に第3の枠部材36の突出部36pの下面を当接しながら、第2の中間電極26上に第3の枠部材36を載置し、最後に、第3の枠部材36の突出部36pの上面上に陽極24の陽極面24sの端部を当接しながら、第3の枠部材36上に陽極24を載置して、電極ユニット20を組み立てる。
【0072】
そして、かかる電極ユニット20の陰極22を下にして、電極ユニット20の陰極22を電解槽10の底部に固定した後、電解槽10の挿通孔10bに挿通された陰極電流フィーダ50を陰極22に連絡すると共に、電解槽10の挿通孔10aに挿通された陽極電流フィーダ60を陽極24に連絡して、電解装置1は組み上がる。なお、電極枠30は、構成要素である枠部材が分割されていない一体型とすることもでき、かかる一体型の場合には、陰極22、第1の中間電極26、第2の中間電極28及び陽極24をこの順で図示を省略する治具を用いて位置決めした後で、位置決めされた陰極22、第1の中間電極26、第2の中間電極28及び陽極24に一体型の電極枠30をセットして、電極ユニット20が得られる。また、電極ユニット20は、電解槽10内で組み立ててもかまわない。
【0073】
以上のように組み立てた電解装置1を用いて電解を行うには、電解槽10の側壁部の上部に設けられた供給口10Uから電解槽10内に液体電解質である溶融塩化亜鉛を投入して、溶融塩化亜鉛中に電極ユニット20を完全に浸漬させた状態で、図示を省略する電源から陰極電流フィーダ50及び陽極電流フィーダ60を介して電流を流す。
【0074】
ここで、陰極22の陰極面22sと第1の中間電極26の陽極面26sとの間に画成された第1の電解室40には、第1の枠部材32の供給流路32a及び32bを介して、溶融塩化亜鉛が供給され、第1の中間電極26の陰極面27sと第2の中間電極28の陽極面28sとの間に画成された第2の電解室42には、第2の枠部材34の供給流路34a及び34bを介して、溶融塩化亜鉛が供給され、かつ、第2の中間電極28の陰極面29sと陽極24の陽極面24sとの間に画成された第3の電解室44には、第3の枠部材36の供給流路36a及び36bを介して、溶融塩化亜鉛が供給されている。
【0075】
すると、第1の電解室40、第2の電解室42及び第3の電解室44において、溶融塩化亜鉛の電解が行われ、各電解室において、電解反応生成物である溶融亜鉛M及び塩素ガスGが発生する。なお、図示の便宜上、図4及び図7につき、溶融亜鉛Mの流れる方向を代表的に示し、図5及び図6につき、塩素ガスGの流れる方向を代表的に示す。
【0076】
かかる電解反応生成物である溶融亜鉛Mは、各々対応する陰極22における流下孔22a、第1の中間電極26における流下孔27a及び第2の中間電極28における流下孔29aに直ちに流下して、陰極22における排出流路22b及び22c、第1の中間電極26における排出流路27b及び27c並びにこれらに対応して連絡する第1の枠部材32における排出流路32d及び32f、並びに第2の中間電極28における排出流路29b及び29c並びにこれらに対応して連絡する第2の枠部材34における排出流路34d及び34fを介して、陰極22、第1の中間電極26及び第2の中間電極28の外部に排出されて、電解槽10内の液体電解質である溶融塩化亜鉛中を鉛直下方に流下し電解槽10の底部に溜められながら、電解槽10の側壁部の下部に設けられた取り出し口10Lから電解槽10の外部に取り出され、必要に応じて図示を省略する貯留部に収容される。
【0077】
一方で、かかる電解反応生成物である塩素ガスGは、各々対応する第1の中間電極26
における上昇孔26a、第2の中間電極28における上昇孔28a及び陽極24における上昇孔24aを直ちに上昇して、第1の中間電極26における排出流路26b及び26c並びにこれらに対応して連絡する第1の枠部材32における排出流路32c及び32e、第2の中間電極28における排出流路28b及び28c並びにこれらに対応して連絡する第2の枠部材34における排出流路34c及び34e、並びに陽極24における排出流路24b及び24cを介して、第1の中間電極26、第2の中間電極28及び陽極24の外部に排出されて、電解槽10内の液体電解質である溶融塩化亜鉛中を鉛直上方に上昇し溶融塩化亜鉛の液面から電解槽10の外部に排出され、必要に応じて図示を省略する貯留部に収容される。
【0078】
この際、第1の電解室40、第2の電解室42及び第3の電解室44において、溶融塩化亜鉛の電解により生成される溶融亜鉛M及び塩素ガスGを互いに鉛直方向に分離すると共に、その後の排出経路や電解槽10でも、互いに実質的な接触をさせずに確実に移動できる。
【0079】
なお、本実施形態の電解装置1における電解槽10は、角筒状に限らず、多角筒状や円筒状とすることももちろん可能で、その場合には、対応して陰極22、第1の中間電極26、第2の中間電極28及び陽極24を多角板状や円板状にし、第1の枠部材32、第2の枠部材34及び第3の枠部材36も、多角筒状や円筒状することが、スペース効率上の観点等から好ましい。
【0080】
また、本実施形態の電解装置1において、中間電極は、少なくとも1つ設ければ足り、例えば、中間電極として第1の中間電極26だけを設けた場合には、第1の中間電極26の上面に陰極部として機能する陰極面27sと陽極24の下面である陽極面24sとが対向し、それらの間で第2の電解室が画成される。
【0081】
以上の構成においては、電解槽において鉛直方向下方から鉛直上方に向けて、陰極、第1の中間電極及び陽極を順次積層し、陰極の第1の流下流路が、第1の電解室における電解で生成された電解生成溶融金属を、陰極の陰極面から鉛直方向における下方に移動自在として、陰極の内部に形成された第1の排出流路に送出自在であり、陽極の第1の上昇流路が、第2の電解室における電解で生成された電解生成ガスを、陽極の陽極面から鉛直方向における上方に移動自在として、陽極の内部に形成された第2の排出流路に送出自在であり、第1の中間電極の第2の流下流路が、第2の電解室における電解で生成された電解生成溶融金属を、第1の中間電極の陰極面から鉛直方向の下方に移動自在として、第1の中間電極の内部に形成された第3の排出流路に送出自在であり、第1の中間電極の第2の上昇流路が、第1の電解室における電解で生成された電解生成ガスを、第1の中間電極の陽極面から鉛直方向における上方に移動自在として、第1の中間電極の内部に形成された第4の排出流路に送出自在であるため、狭い電極間距離で設計する場合に生じる陰極面及び陽極面における電極反応生成物の接触による逆反応を、電極間電圧を上昇させることなく低減し得ると共に、漏洩電流による電流効率の低下を抑制し得て、比抵抗の大きい溶融塩を、実用的な電流密度と消費電力で電解するための複極式の電解装置を提供することができる。併せて、高温かつ高腐食性の電解浴や電解反応生成物を扱い得て、厳しい運転条件に耐え得る単純かつ保守の容易な構造を有し、及び工業化を前提とした大型の設備にスケールアップ可能で増産、増設が容易な構造を実現することができる。よって、例えば、500℃以上の高温で、亜鉛還元法によるシリコン製造における副生塩化亜鉛を溶融塩電解する用途として好適な無隔膜複極式の電解装置を提供できる。
【0082】
また、陰極の第1の排出流路が、陰極の内方を鉛直方向に交差する方向に延在し、第1の電解室における液体電解質の電解で生成された電解生成溶融金属を、第1の電解室よりも鉛直方向における下方で陰極の外部に排出し、前陽極の第2の排出流路が、陽極の内方
を鉛直方向に交差する方向に延在し、第2の電解室における液体電解質の電解で生成された電解生成ガスを、第2の電解室陽よりも鉛直方向における上方で陽極の外部に排出し、第1の中間電極の第3の排出流路が、第1の中間電極の内方を鉛直方向に交差する方向に延在し、第2の電解室における液体電解質の電解で生成された電解生成溶融金属を、第1の中間電極の陰極面よりも鉛直方向における下方で第1の中間電極の外部に排出し、第1の中間電極の第4の排出流路が、第1の中間電極の内方を鉛直方向に交差する方向に延在し、第1の電解室における液体電解質の電解で生成された電解生成ガスを、第1の中間電極の陽極面よりも鉛直方向における上方で第1の中間電極の外部に排出するものであるため、装置のスケールアップが容易に実現できると共に、電極反応生成物の接触による逆反応を確実に低減できる。
【0083】
また、陰極の第1の排出流路から排出される電解生成溶融金属の排出方向及び第1の中間電極の第4の排出流路から排出される電解生成溶融金属の排出方向と、陽極の第2の排出流路から排出される電解生成ガスの排出方向及び第1の中間電極の第3の排出流路から排出される電解生成ガスの排出方向と、を鉛直方向に直交する面において互いに重ならないように偏位させることにより、各電極の部材の共通性を高めながら、電極反応生成物の接触による逆反応をより確実に低減可能である。
【0084】
また、第1の中間電極及び陽極が、陰極に固定された電極枠を介して順次鉛直方向における上方に向かって積層されて、陰極、陽極及び第1の中間電極は、ユニット化された電極ユニットを成すことにより、各電極を確実に位置決めして固定しながら各電解室に液体電解質を確実に供給できると共に、装置のスケールアップがより容易に実現可能である。
【0085】
また、電極枠が、陰極に固定されて第1の中間電極を載置し、第1の電解室に液体電解質を供給する供給流路を有する第1の枠部材と、第1の中間電極に固定されて陽極を載置し、第2の電解室に液体電解質を供給する供給流路を有する第2の枠部材と、を含むことにより、各枠部材の共通性を高めながら各電極を確実に位置決めして固定できると共に、装置のスケールアップがより容易に実現可能である。
【0086】
また、更に、電解槽において第1の中間電極と陽極との間に設けられた第2の中間電極を有し、第2の中間電極は、電極枠における第3の枠部材を介して第1の中間電極の鉛直方向における上方に積層されて、陰極、陽極、第1の中間電極及び第2の中間電極は、ユニット化された電極ユニットを成すことにより、装置のスケールアップがより容易に実現可能である。
【0087】
また、第1の流下流路及び第2の流下流路、並びに第1の上昇流路及び第2の上昇流路をいずれも柱状部の間隙部として形成する柱状構造を採用することにより、より簡便な構成で電解反応生成物を電解室から外部に向けて確実に誘導することができる。
【0088】
また、液体電解質が、電解槽に収容された無水溶融塩化亜鉛又は塩化亜鉛を含む無水塩化物であることにより、亜鉛還元法によるシリコン製造における副生塩化亜鉛を溶融塩電解する用途としてより好適に適用可能である。
【0089】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態における電解装置につき、更に図9及び図10をも参照して、詳細に説明する。
【0090】
図9は、本実施形態における電解装置の縦断面図であり、図2のZ−Z断面に相当する。また、図10は、本実施形態における電解装置の上面図である。
【0091】
本実施形態における電解装置2は、第1の実施形態のものに対して、遮蔽板70及び80を設けたことが主たる相違点であり、残余の構成は同様である。よって、本実施形態においては、かかる相違点に着目して説明することとし、同様な構成については同一の符号を付して適宜説明を簡略化又は省略する。
【0092】
図9及び図10に示すように、本実施形態の電解装置2は、電解槽10の内壁面と第1の第1の枠部材32の外壁面との間を塞ぐ矩形板状の遮蔽板70、及び電解槽10の内壁面と第2の枠部材34の外壁面との間を塞ぐ矩形板状の遮蔽板80を有する。なお、かかる遮蔽板70及び80は、融塩化亜鉛に対して耐食性の高い絶縁材料であるアルミナ、窒化珪素又は石英が用い得る。
【0093】
具体的には、遮蔽板70は、電解槽10におけるx−y平面のx軸の正方向側及びy軸の正方向側の各内壁面に沿って遮蔽板70を貫通する流下孔70aと、電解槽10におけるx−y平面のx軸の負方向側及びy軸の負方向側の各内壁面に沿って遮蔽板70を貫通する上昇孔70bと、を有する。ここで、遮蔽板70の流下孔70aは、第1の枠部材32における全ての排出流路32d及び32fに対応して、最もy軸の負方向側の排出流路32dと同等か更にy軸の負方向側まで延在するy軸の方向の端部と、最もx軸の負方向側の排出流路32fと同等か更にx軸の負方向側まで延在するy軸の方向の端部と、を有する。また、遮蔽板70の上昇孔70bは、第1の枠部材32における全ての排出流路32c及び32eに対応して、最もy軸の正方向側の排出流路32cと同等か更にy軸の正方向側まで延在するy軸の方向の端部と、最もx軸の正方向側の排出流路32eと同等か更にx軸の正方向側まで延在するy軸の方向の端部と、を有する。また、かかる遮蔽板70の上面は、第1の枠部材32における排出流路32d及び32fの下面と面一であると共に、遮蔽板70の下面は、第1の枠部材32における排出流路32c及び32eの上面と面一である。
【0094】
また、遮蔽板80は、遮蔽板70と同一な構成を有し、電解槽10におけるx−y平面のx軸の正方向側及びy軸の正方向側の各内壁面に沿って遮蔽板80を貫通する流下孔80aと、電解槽10におけるx−y平面のx軸の負方向側及びy軸の負方向側の各内壁面に沿って遮蔽板80を貫通する上昇孔80bと、を有する。ここで、遮蔽板80の流下孔80aは、第2の枠部材34における全ての排出流路34d及び34fに対応して、最もy軸の負方向側の排出流路34dと同等か更にy軸の負方向側まで延在するy軸の方向の端部と、最もx軸の負方向側の排出流路34fと同等か更にx軸の負方向側まで延在するy軸の方向の端部と、を有する。また、遮蔽板80の上昇孔80bは、第2の枠部材34における全ての排出流路34c及び34eに対応して、最もy軸の正方向側の排出流路34cと同等か更にy軸の正方向側まで延在するy軸の方向の端部と、最もx軸の正方向側の排出流路34eと同等か更にx軸の正方向側まで延在するy軸の方向の端部と、を有する。また、かかる遮蔽板80の上面は、第2の枠部材34における排出流路34d及び34fの下面と面一であると共に、遮蔽板80の下面は、第2の枠部材34における排出流路34c及び34eの上面と面一である。
【0095】
なお、遮蔽板70の流下孔70a及び上昇孔70b、並びに遮蔽板80の流下孔80a及び上昇孔80bは、流下や上昇させる電解反応生物の流量等が少ない場合には、各々間欠的な複数の孔としてもよいし、孔の面積を小さく設定することも可能である。
【0096】
以上の構成の電解装置2を組み立てるには、第1の実施形態と同様に、電極ユニット20を組み立てた後、第1の枠部材32の外壁面に遮蔽板70を固定すると共に、第2の枠部材34の外壁面に遮蔽板80を固定する。もちろん、先に、第1の枠部材32の外壁面に遮蔽板70を固定すると共に、第2の枠部材34の外壁面に遮蔽板80を固定した状態で、電極ユニット20を組み立てもかまわない。
【0097】
そして、かかる電極ユニット20の陰極22を下にして、電極ユニット20の陰極22を電解槽10の底部に固定した後、電解槽10の挿通孔10bに挿通された陰極電流フィーダ50を陰極22に連絡すると共に、電解槽10の挿通孔10aに挿通された陽極電流フィーダ60を陽極24に連絡して、電解装置2は組み上がる。
【0098】
以上のように組み立てた電解装置2を用いて電解を行うには、第1の実施形態と同様に、電解槽10内に液体電解質である溶融塩化亜鉛を投入して、溶融塩化亜鉛中に電極ユニット20を完全に浸漬させた状態で、図示を省略する電源から陰極電流フィーダ50及び陽極電流フィーダ60を介して電流を流す。
【0099】
すると、第1の電解室40、第2の電解室42及び第3の電解室44において、溶融塩化亜鉛の電解が行われ、各電解室において、電解反応生成物である溶融亜鉛M及び塩素ガスGが発生する。
【0100】
かかる電解反応生成物である溶融亜鉛Mは、各々対応して、陰極22における流下孔22a、第1の中間電極26における流下孔27a及び第2の中間電極28における流下孔29aに直ちに流下して、陰極22における排出流路22b及び22c、第1の中間電極26における排出流路27b及び27c並びにこれらに対応して連絡する第1の枠部材32における排出流路32d及び32f、並びに第2の中間電極28における排出流路29b及び29c並びにこれらに対応して連絡する第2の枠部材34における排出流路34d及び34fを介して、陰極22、第1の中間電極26及び第2の中間電極28の外部に排出された後、直接に電解槽10内の液体電解質である溶融塩化亜鉛中を鉛直下方に流下し電解槽10の底部に向かうか、又は対応する遮蔽板70及び80の上面を電解槽10の内壁面に向かって流れて流下孔70a及び80aに到達して流れ込み、流下孔70a及び80aを介して、電解槽10内の液体電解質である溶融塩化亜鉛中を鉛直下方に流下し電解槽10の底部に向かって、電解槽10の壁面の下部に設けられた取り出し口10Lから電解槽10の外部に取り出され、必要に応じて図示を省略する貯留部に収容される。ここで、遮蔽板80の流下孔80aを介して流下する溶融亜鉛Mは、下方の遮蔽板70を通過する必要があるが、遮蔽板70には流下孔70aが設けられているため、かかる流下孔70aを介して更に下方へと流下することができる。
【0101】
一方で、かかる電解反応生成物である塩素ガスGは、各々対応して、第1の中間電極26における上昇孔26a、第2の中間電極28における上昇孔28a及び陽極24における上昇孔24aを直ちに上昇して、第1の中間電極26における排出流路26b及び26c並びにこれらに対応して連絡する第1の枠部材32における排出流路32c及び32e、第2の中間電極28における排出流路28b及び28c並びにこれらに対応して連絡する第2の枠部材34における排出流路34c及び34e、並びに陽極24における排出流路24b及び24cを介して、第1の中間電極26、第2の中間電極28及び陽極24の外部に排出された後、対応する遮蔽板70及び80の下面に沿って電解槽10の内壁面に向かって流れて上昇孔70b及び80bに到達して流れ込み、上昇孔70b及び80bを介して、電解槽10内の液体電解質である溶融塩化亜鉛中を鉛直上方に上昇し電解槽10の溶融塩化亜鉛の液面から電解槽10の外部に排出されるか、又は直接に電解槽10内の液体電解質である溶融塩化亜鉛中を鉛直上方に上昇し電解槽10の溶融塩化亜鉛の液面から電解槽10の外部に排出され、必要に応じて図示を省略する貯留部に収容される。ここで、遮蔽板70の上昇孔70bを介して上昇する塩素ガスGは、上方の遮蔽板80を通過する必要があるが、遮蔽板80には上昇孔80bが設けられているため、かかる上昇孔80bを介して更に上方へと上昇することができる。
【0102】
この際、遮蔽板70及び80を設けて、第1の中間電極26及び第2の中間電極28に
おける漏れ電流を効果的に低減しながら、第1の電解室40、第2の電解室42及び第3の電解室44において、溶融塩化亜鉛の電解により生成される溶融亜鉛M及び塩素ガスGを互いに鉛直方向に分離すると共に、その後の排出経路や電解槽10でも、互いに接触させずに確実に移動できる。
【0103】
次に、本実施形態の電解装置2における排出流路及び遮蔽板の変形例につき、更に図11及び図12をも参照して、詳細に説明する。
【0104】
図11は、本実施形態の変形例における電解装置の部分拡大縦断面図であり、電解で生成された溶融金属の排出流路側を示す。また、図12は、本実施形態の変形例における電解装置の部分拡大縦断面図であり、電解で生成されたガスの排出流路側を示す。
【0105】
本変形例の電解装置3においては、図11に示すように、第1の中間電極26の流下孔27aに連絡する排出流路27b’の下面が、電解反応生成物である溶融亜鉛Mが排出される方向である第1の中間電極26の外部に向いて、下り勾配を有すると共に、かかる排出流路27b’に連絡する第1の枠部材32の排出流路32d’の下面も、排出流路27b’の下面に連続して第1の枠部材32の外部に向いて、下り勾配を有する。更に、流下孔100aを有する遮蔽板100についても、かかる排出流路32d’の下面に連続して電解槽10の内壁面に向かって下り勾配を有する上面を有する。なお、図示は省略するが、かかる下り勾配の構造は、第1の中間電極26において溶融亜鉛Mを排出する他の排出流路の下面、それに連絡する第1の枠部材32の排出流路の下面及びそれに連絡する遮蔽板100の上面について同様である。
【0106】
同様に、図11において括弧内の符号で示すように、第2の中間電極28の流下孔29aに連絡する排出流路29b’の下面が、電解反応生成物である溶融亜鉛Mが排出される方向である第2の中間電極28の外部に向いて、下り勾配を有すると共に、かかる排出流路29b’に連絡する第2の枠部材34の排出流路34d’の下面も、排出流路29b’の下面に連続して第2の枠部材34の外部に向いて、下り勾配を有する。更に、流下孔110aを有する遮蔽板110についても、かかる排出流路34d’の下面に連続して電解槽10の内壁面に向かって下り勾配を有する上面を有する。なお、図示は省略するが、かかる下り勾配の構造は、第2の中間電極28において溶融亜鉛Mを排出する他の排出流路の下面、それに連絡する第2の枠部材34の排出流路の下面及びそれに連絡する遮蔽板110の上面について同様である。また、陰極22の排出流路22bの下面等についても、同様の下り勾配を有していてもよい。
【0107】
また、図12に示すように、第1の中間電極26の上昇孔26aに連絡する排出流路26b’の上面が、電解反応生成物である塩素ガスGが排出される方向である第1の中間電極26の外部に向いて、上り勾配を有すると共に、かかる排出流路26b’に連絡する第1の枠部材32の排出流路32c’の上面も、排出流路26b’の上面に連続して第1の枠部材32の外部に向いて、上り勾配を有する。更に、流下孔100bを有する遮蔽板100についても、かかる排出流路32c’の下面に連続して電解槽10の内壁面に向かって上り勾配を有する下面を有する。なお、図示は省略するが、かかる下り勾配の構造は、第1の中間電極26において塩素ガスGを排出する他の排出流路の上面、それに連絡する第1の枠部材32の排出流路の上面及びそれに連絡する遮蔽板100の下面について同様である。
【0108】
同様に、図12において括弧内の符号で示すように、第2の中間電極28の上昇孔28aに連絡する排出流路28b’の上面が、電解反応生成物である塩素ガスGが排出される方向である第2の中間電極28の外部に向いて、上り勾配を有すると共に、かかる排出流路28b’に連絡する第2の枠部材34の排出流路34c’の上面も、排出流路28b’
の上面に連続して第2の枠部材34の外部に向いて、上り勾配を有する。更に、流下孔110bを有する遮蔽板110についても、かかる排出流路34c’の下面に連続して電解槽10の内壁面に向かって上り勾配を有する下面を有する。なお、図示は省略するが、かかる下り勾配の構造は、第2の中間電極28において塩素ガスGを排出する他の排出流路の上面、それに連絡する第2の枠部材34の排出流路の上面及びそれに連絡する遮蔽板110の下面について同様である。また、陽極24の排出流路24bの上面等についても、同様の上り勾配を有していてもよい。
【0109】
以上の構成の電解装置3を用いて電解を行うと、代表的に第1の中間電極26の流下孔27aに連絡する排出流路27b’及び第1の中間電極26の上昇孔26aに連絡する排出流路26b’について説明すれば、電解反応生成物である溶融亜鉛Mは、第1の中間電極26の排出流路27b’の下り勾配を有する下面、第1の枠部材32の排出流路32d’の下り勾配を有する下面、及び遮蔽板100の下り勾配を有する上面に沿って流れた後、遮蔽板100の流下孔100aを介して、電解槽10内の液体電解質である溶融塩化亜鉛中を鉛直下方に流下し電解槽10の底部に溜められる一方で、電解反応生成物である塩素ガスGは、第1の中間電極26の排出流路26b’の上り勾配を有する上面、第1の枠部材32の排出流路32c’の上り勾配を有する上面、及び遮蔽板100の上り勾配を有する下面に沿って流れた後、遮蔽板100の流下孔100bを介して、電解槽10内の液体電解質である溶融塩化亜鉛中を鉛直上方に上昇し電解槽10の溶融塩化亜鉛の液面から電解槽10の外部に排出される。
【0110】
なお、本変形例で説明した勾配を有する排出流路の構成は、第1の実施形態に適用できることはもちろんである。
【0111】
以上の構成においては、更に、第1の中間電極に対応して、鉛直方向における第3の排出流路と第4の排出流路の間に遮蔽板を有することにより、各電解室の外部の液体電解質を介して流れる漏洩電流をより確実に低減でき、電流効率の低下をより確実に抑制することができる。
【0112】
また、遮蔽板が、第1の中間電極の第4の排出流路から排出される電解生成ガスを上昇させる上昇開口と、第1の中間電極の第3の排出流路から排出される電解生成溶融金属を流下させる流下開口と、を有することにより、電解槽における電極反応生成物の接触による逆反応をより確実に低減可能である。
【0113】
また、陰極の第1の排出流路の下面及び第1の中間電極の第3の排出流路の下面が、各々電解生成溶融金属の排出方向において下り勾配を有し、陽極の第2の排出流路の上面及び第1の中間電極の第4の排出流路の上面が、各々電解生成ガスの排出方向において上り勾配を有することにより、電解生成反応物をより確実に電解室から各電極内をスムースに通過させて排出することができ、電極反応生成物の接触による逆反応をより確実に低減可能である。
【0114】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態における電解装置につき、更に図13及び図14をも参照して、詳細に説明する。
【0115】
図13は、本実施形態における電解装置の縦断面図であり、図2のZ−Z断面に相当する。また、図14は、本実施形態における電解装置の上面図である。
【0116】
本実施形態における電解装置4は、第2の実施形態のものに対して、遮蔽板100’及び110’の構成が異なることが主たる相違点であり、残余の構成は同様である。よって
、本実施形態においては、かかる相違点に着目して説明することとし、同様な構成については同一の符号を付して適宜説明を簡略化又は省略する。
【0117】
図13及び図14に示すように、本実施形態の電解装置4においては、遮蔽板100’及び110’に流下孔や上昇孔が設けられておらず、電解槽10において、側壁部の上部に設けられた供給口10U及び側壁部の下部に設けられた取り出し口10Lに加え、電解室40、42及び44の位置に対応した側壁部に電解質を供給する3つの供給口10E、10E及び10Eが各々設けられ、かつ遮蔽板100’及び110’の位置に対応した側壁部に電解反応生成物を排出する排出開口10c、10d、10e及び10fが各々設けられている。
【0118】
具体的には、排出開口10cは、電解槽10の内壁面と第1の枠部材32の外壁面との間を塞ぐ矩形板状の遮蔽板100’の上面と面一な下端部を有すると共に、電解槽10におけるx軸の正方向側及びy軸の正方向側の各縦壁面を、第1の枠部材32における全ての排出流路32d及び32fに対応して、最もy軸の負方向側の排出流路32dと同等か更にy軸の負方向側まで延在するy軸の方向の端部と、最もx軸の負方向側の排出流路32fと同等か更にx軸の負方向側まで延在するy軸の方向の端部と、を有するように、所定の面積で開口する。
【0119】
同様に、排出開口10dは、電解槽10の内壁面と第2の枠部材34の外壁面との間を塞ぐ矩形板状の遮蔽板110’の上面と面一な下端部を有すると共に、電解槽10におけるx軸の正方向側及びy軸の正方向側の各縦壁面を、第2の枠部材34における全ての排出流路34d及び34fに対応して、最もy軸の負方向側の排出流路34dと同等か更にy軸の負方向側まで延在するy軸の方向の端部と、最もx軸の負方向側の排出流路34fと同等か更にx軸の負方向側まで延在するy軸の方向の端部と、を有するように、所定の面積で開口する。
【0120】
また、排出開口10eは、電解槽10の内壁面と第1の枠部材32の外壁面との間を塞ぐ矩形板状の遮蔽板100’の上面と面一な下端部を有すると共に、電解槽10におけるx軸の負方向側及びy軸の負方向側の各縦壁面を、第1の枠部材32における全ての排出流路32c及び32eに対応して、最もy軸の正方向側の排出流路32cと同等か更にy軸の正方向側まで延在するy軸の方向の端部と、最もx軸の正方向側の排出流路32eと同等か更にx軸の正方向側まで延在するy軸の方向の端部と、を有するように、所定の面積で開口する。
【0121】
同様に、排出開口10fは、電解槽10の内壁面と第2の枠部材34の外壁面との間を塞ぐ矩形板状の遮蔽板110’の上面と面一な下端部を有すると共に、電解槽10におけるx軸の負方向側及びy軸の負方向側の各縦壁面を、第2の枠部材34における全ての排出流路34c及び34eに対応して、最もy軸の正方向側の排出流路34cと同等か更にy軸の正方向側まで延在するy軸の方向の端部と、最もx軸の正方向側の排出流路34eと同等か更にx軸の正方向側まで延在するy軸の方向の端部と、を有するように、所定の面積で開口する。
【0122】
なお、電解槽10の排出開口10c、10d、10e及び10fは、排出させる電解反応生物の流量が少ない場合等には、各々間欠的な複数の開口としてもよいし、開口の面積を小さく設定することも可能である。
【0123】
以上の構成の電解装置4を用いて、各供給口10U及び10Eから溶融塩化亜鉛を供給して電解を行うと、第2の電解室42及び第3の電解室44で生成された溶融亜鉛Mは、各々対応して、第1の中間電極26における排出流路27b及び27c並びにこれらに対
応して連絡する第1の枠部材32における排出流路32d及び32f、並びに第2の中間電極28における排出流路29b及び29c並びにこれらに対応して連絡する第2の枠部材34における排出流路34d及び34fを介して、第1の中間電極26及び第2の中間電極28の外部に排出された後、対応する遮蔽板100’及び110’の上面に沿って電解槽10の内壁面に向かって流れて、電解槽10の排出開口10c及び10dに到達して流れ込み、排出開口10L、10c及び10dを介して、電解槽10の外部に排出され、必要に応じて図示を省略する貯留部に収容される。
【0124】
一方で、第1の電解室40及び第2の電解室42で生成された塩素ガスGは、各々対応して、第1の中間電極26における排出流路26b及び26c並びにこれらに対応して連絡する第1の枠部材32における排出流路32c及び32e、並びに第2の中間電極28における排出流路28b及び28c並びにこれらに対応して連絡する第2の枠部材34における排出流路34c及び34eを介して、第1の中間電極26及び第2の中間電極28の外部に排出された後、対応する遮蔽板100’及び110’の下面に沿って電解槽10の内壁面に向かって流れて、電解槽10の排出開口10e及び10fに到達して流れ込み、排出開口10e及び10fを介して、電解槽10の外部に排出され、必要に応じて図示を省略する貯留部に収容される。
【0125】
なお、第2の実施形態の変形例で説明した勾配を有する排出流路等の構成は、本実施形態に適用できることはもちろんである。
【0126】
また、本実施形態における電解槽10が、電解室40、42及び44の位置に対応した側壁部に電解質を供給する3つの供給口10E、10E及び10Eを各々有し、かつ遮蔽板100’及び110’の位置に対応した側壁部に電解反応生成物を排出する排出開口10c、10d、10e及び10fを各々有する構成は、各変形例を含む第1及び第2の実施形態にもちろん適用可能である。
【0127】
以上の構成においては、更に、第1の中間電極に対応して、鉛直方向における第3の排出流路と第4の排出流路の間に遮蔽板を有する構成に加えて、電解槽が、第1の中間電極の第4の排出流路から排出される電解生成ガスを外部に排出する排出開口と、第1の中間電極の第3の排出流路から排出される電解生成溶融金属を排出する排出開口と、を有することにより、電解槽における電極反応生成物の接触による逆反応をより確実に低減可能である。
【0128】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態における電解装置につき、更に図15から図20をも参照して、詳細に説明する。
【0129】
図15は、本実施形態における電解装置の縦断面図であり、位置的には図1に相当する。図16は、本実施形態における電解装置の電極ユニット及び電極枠を示す側面図であり、位置的には図3に相当する。図17は、本実施形態における電解装置の電極ユニットの陰極についての横断面図であり、図15のJ−J断面に相当する。図18は、本実施形態における電解装置の電極ユニットの陽極についての横断面図であり、図15のK−K断面に相当する。図19は、本実施形態における電解装置の電極ユニットの第1中間電極又は第2中間電極についての横断面図であり、図15のL−L断面又はM−M断面に相当する。また、図20は、本実施形態における電解装置の電極ユニットの第1中間電極又は第2中間電極についての横断面図であり、図15のN−N断面又はO−O断面に相当する。
【0130】
本実施形態における電解装置5においては、第1の実施形態の陰極22、陽極24、第1の中間電極26及び第2の中間電極28を有する電極ユニット20及び第1の枠部材3
2、第2の枠部材34及び第3の枠部材36を有する電極枠30が、陰極122、陽極124、第1の中間電極126及び第2の中間電極128を有する電極ユニット120及び第1の枠部材132、第2の枠部材134及び第3の枠部材136を有する電極枠130に置換されていることが主たる相違点であり、残余の構成は同様である。よって、本実施形態においては、かかる相違点に着目して説明することとし、同様な構成については同一の符号を付して適宜説明を簡略化又は省略する。
【0131】
図15から図20に示すように、本実施形態の電解装置5の電解槽10内には、電極ユニット120及び電極枠130が収容される。
【0132】
具体的には、かかる電極ユニット120においては、電解槽10の底部に固定された陰極122及び鉛直上方で陰極122に対向する陽極124が設けられ、陰極122及び陽極124の間には、鉛直上方に向かって順次第1の中間電極126及び第2の中間電極128が設けられる。つまり、陰極122、第1の中間電極126、第2の中間電極128及び陽極124は、この順で典型的には第1の枠部材132、第2の枠部材134及び第3の枠部材136から成る電極枠130を介し鉛直上方に向かって積層されてユニット化され、電極ユニット120を成している。また、陰極122と第1の中間電極126との間には、第1の電解室40が画成され、第1の中間電極126と第2の中間電極128との間には、第2の電解室42が画成され、かつ、第2の中間電極128と陽極124との間には、第3の電解室44が画成される。
【0133】
詳しくは、矩形板状の部材である陰極122は、その基面122Bから鉛直上方に向けて立設される複数の柱状部122Aを有し、かかる柱状部122Aの間では、複数の間隙部122aが画成される。柱状部122Aの上面は、陰極面122sであり、柱状部122Aの縦壁部と陰極面122sとの間は、断面円弧状のR形状を有する角部122rで連絡される。更に、陰極122は、複数の柱状部122Aを囲むように基面122Bから鉛直上方に向けて立設される壁部を貫くと共に、x軸の正方向に延在して陰極122の外部に連通する複数の排出流路122bを有する。
【0134】
矩形板状の部材である第1の中間電極126は、その鉛直下方側の基面126Bから鉛直下方に向けて立設される複数の柱状部126Aを有し、かかる柱状部126Aの間では、複数の間隙部126aが画成されると共に、その鉛直上方側の基面127Bから鉛直上方に向けて立設される複数の柱状部127Aを有し、かかる柱状部127Aの間では、複数の間隙部127aが画成される。柱状部126Aの下面は、陽極面126sであり、柱状部126Aの縦壁部と陽極面126sとの間は、断面円弧状のR形状を有する角部126rで連絡されると共に、柱状部127Aの上面は、陰極面127sであり、柱状部127Aの縦壁部と陰極面127sとの間は、断面円弧状のR形状を有する角部127rで連絡される。更に、第1の中間電極126は、複数の柱状部126Aを囲むように基面126Bから鉛直下方に向けて立設される壁部を貫くと共に、x軸の負方向に延在して第1の中間電極126の外部に連通する複数の排出流路126bを有すると共に、複数の柱状部127Aを囲むように基面127Bから鉛直上方に向けて立設される壁部を貫くと共に、x軸の正方向に延在して第1の中間電極126の外部に連通する複数の排出流路127bを有する。
【0135】
矩形板状の部材である第2の中間電極128は、第1の中間電極126と同一の部材であって、その鉛直下方側の基面128Bから鉛直下方に向けて立設される複数の柱状部128Aを有し、かかる柱状部128Aの間では、複数の間隙部128aが画成されると共に、その鉛直上方側の基面129Bから鉛直上方に向けて立設される複数の柱状部129Aを有し、かかる柱状部129Aの間では、複数の間隙部129aが画成される。柱状部128Aの下面は、陽極面128sであり、柱状部128Aの縦壁部と陽極面128sと
の間は、断面円弧状のR形状を有する角部128rで連絡されると共に、柱状部129Aの上面は、陰極面129sであり、柱状部129Aの縦壁部と陰極面129sとの間は、断面円弧状のR形状を有する角部129rで連絡される。更に、第2の中間電極128は、複数の柱状部128Aを囲むように基面128Bから鉛直下方に向けて立設される壁部を貫くと共に、x軸の負方向に延在して第2の中間電極128の外部に連通する複数の排出流路128bを有すると共に、複数の柱状部129Aを囲むように基面129Bから鉛直上方に向けて立設される壁部を貫くと共に、x軸の正方向に延在して第2の中間電極128の外部に連通する複数の排出流路129bを有する。
【0136】
矩形板状の部材である陽極124は、電流フィーダ60の取付け部を除き陰極122と同一な部材であるが、上下に反転し、かつ鉛直方向に180°回転されて配置され、その基面124Bから鉛直下方に向けて立設される複数の柱状部124Aを有し、かかる柱状部124Aの間では、複数の間隙部124aが画成される。柱状部124Aの下面は、陽極面124sであり、柱状部124Aの縦壁部と陽極面124sとの間は、断面円弧状のR形状を有する角部124rで連絡される。更に、陽極124は、複数の柱状部124Aを囲むように基面124Bから鉛直下方に向けて立設される壁部を貫くと共に、x軸の負方向に延在して陽極124の外部に連通する複数の排出流路124bを有する。
【0137】
ここで、陰極122の複数の間隙部122a、第1の中間電極126の複数の間隙部126a及び複数の間隙部127a、第2の中間電極128の複数の間隙部128a及び複数の間隙部129a、並びに陽極124の複数の間隙部124aが、電極ユニット120、つまり複極式の電極における柱状構造である。
【0138】
また、陰極122の間隙部122a、第1の中間電極126の1間隙部27a及び第2の中間電極28の間隙部129aが、電解質40、42及び44から溶融亜鉛を対応して流下させる流下流路に相当し、陽極124の間隙部124a、第1の中間電極126の間隙部126a及び第2の中間電極128の間隙部128aが、電解質40、42及び44から塩素ガスを対応して上昇させる上昇流路に相当する。
【0139】
第1の枠部材132は、鉛直方向に直立した角筒状の部材であり、陰極122と第1の中間電極126との間に画成される第1の電解室40に対して、電解槽10内の液体電解質である溶融塩化亜鉛を供給するための供給流路132bを有し、供給流路132b、132bは、y軸の方向で対向する。ここで、第1の枠部材132は、第1の電解室40に向かって突出する突出部132pを有し、供給流路132bは、かかる突出部132pを貫通して設けられる。更に、第1の枠部材132は、第1の中間電極126の排出流路126bに連絡して第1の中間電極126の外部に連通させる排出流路132cと、第1の中間電極126の排出流路127bに連絡して第1の中間電極126の外部に連通させる排出流路132dとを有する。
【0140】
第2の枠部材134は、第1の枠部材132と同一な部材であって、鉛直方向に直立した角筒状の部材であり、第1の中間電極126と第2の中間電極128との間に画成される第2の電解室42に対して、電解槽10内の液体電解質である溶融塩化亜鉛を供給するための供給流路134bを有し、供給流路134b、134bは、y軸の方向で対向する。ここで、第2の枠部材134は、第2の電解室42に向かって突出する突出部134pを有し、供給流路134bは、かかる突出部134pを貫通して設けられる。更に、第2の枠部材134は、第2の中間電極128の排出流路128bに連絡して第2の中間電極128の外部に連通させる排出流路134cと、第2の中間電極128の排出流路129bに連絡して第2の中間電極128の外部に連通させる排出流路134dとを有する。
【0141】
第3の枠部材136は、第1の枠部材132及び第2の枠部材134における排出流路
を省略した部材である鉛直方向に直立した角筒状の部材であり、第2の中間電極128と陽極124との間に画成される第3の電解室44に対して、電解槽10内の液体電解質である溶融塩化亜鉛を供給するための供給流路136bを有し、供給流路136b、1346は、y軸の方向で対向する。ここで、第3の枠部材136は、第3の電解室44に向かって突出する突出部136pを有し、は、かかる突出部136pを貫通して設けられる。
【0142】
ここで、陰極122の複数の排出流路122bは、x軸の正方向側で外部に開口し、第1の中間電極126の複数の排出流路127b及び第2の中間電極128の複数の排出流路129bは、電極枠130の排出流路132d及び排出流路134dを対応して介してx軸の正方向側で外部に開口する一方で、陽極124の複数の排出流路124bは、x軸の負方向側で外部に開口し、第1の中間電極126の複数の排出流路126b及び第2の中間電極128の複数の排出流路128bは、電極枠130の排出流路132c及び排出流路134cを対応して介してx軸の負方向側で外部に開口しているから、溶融塩化亜鉛の電解により生成される溶融亜鉛及び塩素ガスの各排出方向がx−y平面において重ならないように異なっている。
【0143】
更に、このように陰極122の複数の排出流路122b、第1の中間電極126の複数の排出流路127b及び第2の中間電極128の複数の排出流路129bが、x軸の正方向側で外部に開口すると共に、陽極124の複数の排出流路124b、第1の中間電極126の複数の排出流路126b及び第2の中間電極128の複数の排出流路128bが、x軸の負方向側で外部に開口する構成に加えて、電解室40、42及び44は、電極枠130の供給流路132b、134b及び136bを対応して介して、y軸の方向の両側で外部に開口しているから、電解により生成される溶融亜鉛を排出する排出流路の排出端と、電解により生成される塩素ガスを排出する排出流路の排出端と、電解質である溶融塩化亜鉛を電解室へ供給する導入端と、が、電極枠130で支持された電極ユニット120の各側面において分散して配置されており、電解により生成される溶融亜鉛の排出方向、電解により生成される塩素ガスの排出方向及び電解質である溶融塩化亜鉛の電解室への供給方向が、x−y平面上で互いに重ならないように異なっている。
【0144】
また、本実施形態の電解装置5においても、より簡略化した基本的な構成として、中間電極は、少なくとも1つ設ければ足り、例えば、中間電極として第1の中間電極126だけを設けた場合には、第1の中間電極126の上面に陰極部として機能する陰極面127sと陽極124の下面である陽極面124sとが対向し、それらの間で第2の電解室が画成される。
【0145】
このように、第2の中間電極128が省略されている場合には、溶融塩化亜鉛の電解により生成される溶融亜鉛を排出する陰極122の複数の排出流路122b及び第1の中間電極126の複数の排出流路127bが、x軸の正方向側及びy軸の正方向側で外部に開口すると共に、溶融塩化亜鉛の電解により生成される塩素ガスを排出する陽極124の複数の排出流路124b及び第1の中間電極126の複数の排出流路126bが、x軸の負方向側及びy軸の負方向側で外部に開口する構成を採用し、かつ、第1の電解室40に溶融亜鉛を供給する第1の枠部材132の供給流路をx軸の負方向側及びy軸の負方向側で外部に開口させ、第2の電解室42に溶融亜鉛を供給する第2の枠部材134の供給流路をx軸の正方向側及びy軸の正方向側で外部に開口させてもよい。かかる構成によれば、溶融塩化亜鉛の電解により生成される溶融亜鉛及び塩素ガスの各排出方向がx−y平面において重ならないことに加え、第1の中間電極126の複数の排出流路127bから排出される溶融亜鉛の排出方向と、第1の電解室40に溶融亜鉛を供給する第1の枠部材132の供給流路の供給方向と、がx−y平面において重ならず、かつ、第1の中間電極126の複数の排出流路127bから排出される塩素ガスの排出方向と、第2の電解室42に溶融亜鉛を供給する第2の枠部材134の供給流路の供給方向と、がx−y平面において
重ならない。
【0146】
つまり、溶融塩化亜鉛の電解により生成される溶融亜鉛及び塩素ガスの各排出方向がx−y平面において重ならない構成を採用することに加え、少なくとも、第1の中間電極126の複数の排出流路127bから排出される溶融亜鉛の排出方向と、第1の中間電極126の直下の電解室40に溶融亜鉛を供給する第1の枠部材132の供給流路の供給方向と、がx−y平面において重ならず、かつ、第1の中間電極126の複数の排出流路127bから排出される塩素ガスの排出方向と、第1の中間電極126の直上の電解室42に溶融亜鉛を供給する第2の枠部材134の供給流路の供給方向と、がx−y平面において重ならないことが、電解生成物である溶融亜鉛及び塩素ガスの排出方向と、電解質である溶融亜鉛の供給方向と、の間の関係における基本的な条件である。
【0147】
以上の構成の電解装置5を、第1の実施形態と同様に組み立てた後に電解を行うと、図17及び図20につき、溶融亜鉛Mの流れる方向を代表的に示し、図18及び図19につき、塩素ガスGの流れる方向を代表的に示すように、電解で生成された電解反応生成物である溶融亜鉛Mは、各々対応する陰極122における間隙部122a、第1の中間電極126における間隙部127a及び第2の中間電極128における間隙部129aに直ちに流下した後、陰極122における基面122B、第1の中間電極126における基面127B及び第2の中間電極128における基面129Bで対応して偏向されてそれらに沿って移動して、陰極122における排出流路122b、第1の中間電極126における排出流路127b及びそれに対応して連絡する第1の枠部材132における排出流路132d、並びに第2の中間電極128における排出流路129b及びそれに対応して連絡する第2の枠部材134における排出流路134dを対応して介して、陰極122、第1の中間電極126及び第2の中間電極128の外部に排出されて、電解槽10内の液体電解質である溶融塩化亜鉛中を鉛直下方に流下し電解槽10の底部に溜められながら、電解槽10の側壁部の下部に設けられた取り出し口10Lから電解槽10の外部に取り出され、必要に応じて図示を省略する貯留部に収容される。
【0148】
一方で、かかる電解反応生成物である塩素ガスGは、各々対応する第1の中間電極126における間隙部126a、第2の中間電極128における間隙部128a及び陽極124における間隙部124aを直ちに上昇した後、第1の中間電極126における基面126B、第2の中間電極128における基面128B及び陽極124における基面124Bで対応して偏向されてそれらに沿って移動して、第1の中間電極126における排出流路126b及びそれに対応して連絡する第1の枠部材132における排出流路132c、第2の中間電極128における排出流路128b及びそれに対応して連絡する第2の枠部材134における排出流路134c、並びに陽極124における排出流路124bを対応して介して、第1の中間電極126、第2の中間電極128及び陽極124の外部に排出されて、電解槽10内の液体電解質である溶融塩化亜鉛中を鉛直上方に上昇し溶融塩化亜鉛の液面から電解槽10の外部に排出され、必要に応じて図示を省略する貯留部に収容される。
【0149】
この際、第1の電解室40、第2の電解室42及び第3の電解室44において、溶融塩化亜鉛の電解により生成される溶融亜鉛M及び塩素ガスGを互いに鉛直方向に分離すると共に、その後の排出経路や電解槽10でも、互いに実質的な接触をさせずに確実に移動できる。併せて、第1の電解室40、第2の電解室42及び第3の電解室44に供給される溶融塩化亜鉛に、電解反応生成物である溶融亜鉛M及び塩素ガスGが、不要に混入することが避けられる。
【0150】
なお、第2の実施形態の変形例で説明した勾配を有する排出流路の構成は、本実施形態における排出流路に適用できることはもちろんであり、かかる場合、併せて、陰極122
の基面122B、第1の中間電極126の基面127B及び第2の中間電極128の基面129Bが、電解反応生成物である溶融亜鉛Mが排出される方向である第1の中間電極26の外部に向いて下り勾配を有し、陽極124の基面124B、第1の中間電極126の基面126B及び第2の中間電極128の基面128Bが、電解反応生成物である塩素ガスGが排出される方向である第1の中間電極26の外部に向いて、上り勾配を有するものである。
【0151】
また、本実施形態における電解生成物である溶融亜鉛及び塩素ガスの各排出方向間の関係や、かかる排出方向と電解質である溶融亜鉛の供給方向との間の関係は、各変形例を含む第1から第3の実施形態にもちろん適用可能である。
【0152】
以上の構成においては、第1の流下流路及び第2の流下流路、並びに第1の上昇流路及び第2の上昇流路をいずれも柱状部の間隙部として形成する柱状構造を採用することにより、より簡便な構成で電解反応生成物を電解室から外部に向けて確実に誘導することができる。
【0153】
また、第1の中間電極の第1の排出流路から排出される電解生成溶融金属の排出方向と、第1の電解室に液体電解質を供給する第1の枠部材の供給流路の供給方向と、が、鉛直方向に直交する面において重ならないように偏位し、かつ、第2の中間電極の第2の排出流路から排出される電解生成ガスの排出方向と、第2の電解室に液体電解質を供給する第2の枠部材の供給流路の供給方向と、が、鉛直方向に直交する面において重ならないように偏位することにより、電極や電極枠の構成部材の共通性を高めながら、電極反応生成物が液体電解質に同伴して電解室に不要に侵入し、逆反応を生じることを確実に低減可能である。
【0154】
また、第1の枠部材の供給流路における液体電解質の供給方向及び第2の枠部材の供給流路における液体電解質の供給方向を、陰極の第1の排出流路から排出される電解生成溶融金属の排出方向、第1の中間電極の第3の排出流路から排出される電解生成溶融金属の排出方向、前陽極の第2の排出流路から排出される電解生成ガスの排出方向及び第1の中間電極の第4の排出流路から排出される電解生成ガスの排出方向に対して、鉛直方向に直交する面において互いに重ならないように偏位させることにより、電極や電極枠の構成部材の共通性を高めながら、電極反応生成物が液体電解質に同伴して電解室に不要に侵入し、逆反応を生じることをより確実に低減可能である。
【0155】
なお、以上の各変形例を含む各実施形態においては、溶融亜鉛Mや塩素ガスGを収容する外部の貯留部には、電解槽10内の溶融塩化亜鉛も流出して溜っていくが、回収系を設けて余剰に溜まった溶融塩化亜鉛を電解槽10内に戻すことも可能である。
【0156】
また、本発明においては、部材の種類、配置、個数等は前述の実施形態に限定されるものではなく、その構成要素を同等の作用効果を奏するものに適宜置換する等、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0157】
以上のように、本発明においては、比抵抗の大きい溶融塩を、実用的な電流密度と消費電力で電解するための複極式の電解装置を提供すること、具体的には、狭い電極間距離で設計する場合に生じる陰極面及び陽極面における電極反応生成物の接触による逆反応を、電極間電圧を上昇させることなく低減し得ると共に、漏洩電流による電流効率の低下を抑制し得る複極式の電解装置を提供することができ、併せて、高温かつ高腐食性の電解浴や電解反応生成物を扱い得て、厳しい運転条件に耐え得る単純かつ保守の容易な構造を有し、及び工業化を前提とした大型の設備にスケールアップ可能で増産、増設が容易な構造を
有する複極式の電解装置を提供することができるものであり、その汎用普遍的な性格から太陽電池用シリコン等の製造分野に広範に適用され得るものと期待される。
【符号の説明】
【0158】
1、2、3、4、5…電解装置
10………電解槽
10a、10b…挿通孔
10c、10d、10e、10f…排出開口
20………電極ユニット
22………陰極
22a……流下孔
22b、22c…排出流路
22r……角部
22s……陰極面
24………陽極
24a……上昇孔
24b、24c…排出流路
24r……角部
24s……陽極面
26………第1の中間電極
26a……上昇孔
26b、26b’、26c…排出流路
26r……角部
26s……陽極面
27a……流下孔
27b、27b’、27c…排出流路
27r……角部
27s……陰極面
28………第2の中間電極
28a……上昇孔
28b、28b’、28c…排出流路
28r……角部
28s……陽極面
29a……流下孔
29b、29b’、29c…排出流路
29r……角部
29s……陰極面
30………電極枠
32………第1の枠部材
32a、32b…供給流路
32c、32c’、32d、32d’、32e、32f…排出流路
32p……突出部
34………第2の枠部材
34a、34b…供給流路
34c、34c’、34d、34d’、34e、34f…排出流路
34p……突出部
36………第3の枠部材
36a、36b…供給流路
36p……突出部
40………第1の電解室
42………第2の電解室
44………第3の電解室
50………陰極電流フィーダ
60………陽極電流フィーダ
70………第1の遮蔽部材
70a……流下孔
70b……上昇孔
80………第2の遮蔽部材
80a……流下孔
80b……上昇孔
100……第1の遮蔽部材
100、100’…第1の遮蔽部材
100a…流下孔
100b…上昇孔
110、110’…第2の遮蔽部材
110a…流下孔
110b…上昇孔
120……電極ユニット
122……陰極
122a…間隙部
122b…排出流路
122r…角部
122s…陰極面
124……陽極
124a…間隙部
124b…排出流路
124r…角部
124s…陽極面
126……第1の中間電極
126a…上昇孔
126b…排出流路
126r…角部
126s…陽極面
127a…間隙部
127b…排出流路
127r…角部
127s…陰極面
128……第2の中間電極
128a…上昇孔
128b…排出流路
128r…角部
128s…陽極面
129a…間隙部
129b…排出流路
129r…角部
129s…陰極面
130……電極枠
132……第1の枠部材
132b…供給流路
132c、132d…排出流路
132p…突出部
134……第2の枠部材
134b…供給流路
134c、134d…排出流路
134p…突出部
136……第3の枠部材
136b…供給流路
136p…突出部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体電解質を収容して鉛直方向に立設された電解槽と、
前記電解槽において前記鉛直方向における下方に設けられて、陰極面、前記陰極面から前記鉛直方向における下方に向けて開けられた第1の流下流路及び前記第1の流下流路に連絡した第1の排出流路を有する陰極と、
前記電解槽において前記鉛直方向における上方に設けられて、陽極面、前記陽極面から前記鉛直方向における上方に向けて開けられた第1の上昇流路及び前記第1の上昇流路に連絡した第2の排出流路を有する陽極と、
前記電解槽において前記陰極と前記陽極との間に設けられて、陰極面、陽極面、前記陰極面から前記鉛直方向における下方に向けて開けられた第2の流下流路、前記陽極面から前記鉛直方向における上方に向けて開けられた第2の上昇流路、前記第2の流下流路に連絡した第3の排出流路及び前記第2の上昇流路に連絡した第4の排出流路を有する第1の中間電極と、
前記陰極の前記陰極面と前記第1の中間電極の前記陽極面との間に画成される第1の電解室と、
前記陽極の前記陽極面と前記第1の中間電極の前記陰極面との間に画成される第2の電解室と、
を備え、
前記陰極の前記第1の流下流路は、前記第1の電解室における電解で生成された前記電解生成溶融金属を、前記陰極の前記陰極面から前記鉛直方向における下方に移動自在として前記第1の排出流路に送出自在であり、
前記陽極の前記第1の上昇流路は、前記第2の電解室における電解で生成された前記電解生成ガスを、前記陽極の前記陽極面から前記鉛直方向における上方に移動自在として前記第2の排出流路に送出自在であり、
前記第1の中間電極の前記第2の流下流路は、前記第2の電解室における電解で生成された前記電解生成溶融金属を、前記第1の中間電極の前記陰極面から前記鉛直方向の下方に移動自在として前記第3の排出流路に送出自在であり、
前記第1の中間電極の前記第2の上昇流路は、前記第1の電解室における電解で生成された前記電解生成ガスを、前記第1の中間電極の前記陽極面から前記鉛直方向における上方に移動自在として前記第4の排出流路に送出自在である電解装置。
【請求項2】
前記陰極の前記第1の排出流路は、前記陰極の内方を前記鉛直方向に交差する方向に延在し、前記第1の電解室における液体電解質の電解で生成された電解生成溶融金属を、前記第1の電解室よりも前記鉛直方向における下方で前記陰極の外部に排出し、
前記陽極の前記第2の排出流路は、前記陽極の内方を前記鉛直方向に交差する方向に延在し、前記第2の電解室における液体電解質の電解で生成された電解生成ガスを、前記第2の電解室陽よりも前記鉛直方向における上方で前記陽極の外部に排出し、
前記第1の中間電極の前記第3の排出流路は、前記第1の中間電極の内方を前記鉛直方向に交差する方向に延在し、前記第2の電解室における前記液体電解質の電解で生成された電解生成溶融金属を、前記第1の中間電極の前記陰極面よりも前記鉛直方向における下方で前記第1の中間電極の外部に排出し、前記第1の中間電極の前記第4の排出流路は、前記第1の中間電極の内方を前記鉛直方向に交差する方向に延在し、前記第1の電解室における前記液体電解質の電解で生成された電解生成ガスを、前記第1の中間電極の前記陽極面よりも前記鉛直方向における上方で前記第1の中間電極の外部に排出する請求項1に記載の電解装置。
【請求項3】
前記陰極の前記第1の排出流路から排出される前記電解生成溶融金属の排出方向及び前記第1の中間電極の前記第3の排出流路から排出される前記電解生成溶融金属の排出方向と、前記陽極の前記第2の排出流路から排出される前記電解生成ガスの排出方向及び前記
第1の中間電極の前記第4の排出流路から排出される前記電解生成ガスの排出方向とは、前記鉛直方向に直交する面において互いに重ならないように偏位する請求項1又は2に記載の電解装置。
【請求項4】
前記第1の中間電極及び前記陽極は、前記陰極に固定された電極枠を介して順次前記鉛直方向における上方に向かって積層されて、前記陰極、前記陽極及び前記第1の中間電極は、ユニット化された電極ユニットを成す請求項1から3のいずれかに記載の電解装置。
【請求項5】
前記電極枠は、前記陰極に固定されて前記第1の中間電極を載置し、前記第1の電解室に前記液体電解質を供給する供給流路を有する第1の枠部材と、前記第1の中間電極に固定されて前記陽極を載置し、前記第2の電解室に前記液体電解質を供給する供給流路を有する第2の枠部材と、を含む請求項4に記載の電解装置。
【請求項6】
前記第1の中間電極の前記第1の排出流路から排出される前記電解生成溶融金属の排出方向と、前記第1の電解室に前記液体電解質を供給する第1の枠部材の供給流路の供給方向と、が、前記鉛直方向に直交する面において重ならないように偏位し、かつ、前記第2の中間電極の前記第2の排出流路から排出される前記電解生成ガスの排出方向と、前記第2の電解室に前記液体電解質を供給する前記第2の枠部材の供給流路の供給方向と、が、前記鉛直方向に直交する面において重ならないように偏位する請求項5に記載の電解装置。
【請求項7】
前記第1の枠部材の前記供給流路における前記液体電解質の供給方向及び前記第2の枠部材の前記供給流路における前記液体電解質の供給方向は、前記陰極の前記第1の排出流路から排出される前記電解生成溶融金属の排出方向、前記第1の中間電極の前記第3の排出流路から排出される前記電解生成溶融金属の排出方向、前記陽極の前記第2の排出流路から排出される前記電解生成ガスの排出方向及び前記第1の中間電極の前記第4の排出流路から排出される前記電解生成ガスの排出方向に対して、前記鉛直方向に直交する面において互いに重ならないように偏位する請求項6に記載の電解装置。
【請求項8】
更に、前記第1の中間電極に対応して、前記鉛直方向における前記第3の排出流路と前記第4の排出流路の間に遮蔽板を有する請求項1から7のいずれかに記載の電解装置。
【請求項9】
前記遮蔽板は、前記第1の中間電極の前記第4の排出流路から排出される前記電解生成ガスを上昇させる上昇開口と、前記第1の中間電極の前記第3の排出流路から排出される前記電解生成溶融金属を流下させる流下開口と、を有する請求項8に記載の電解装置。
【請求項10】
前記電解槽は、前記第1の中間電極の前記第4の排出流路から排出される前記電解生成ガスを外部に排出する排出開口と、前記第1の中間電極の前記第3の排出流路から排出される前記電解生成溶融金属を排出する排出開口と、を有する請求項8に記載の電解装置。
【請求項11】
前記陰極の前記第1の排出流路の下面及び前記第1の中間電極の前記第3の排出流路の下面は、各々前記電解生成溶融金属の前記排出方向において下り勾配を有し、前記陽極の前記第2の排出流路の上面及び前記第1の中間電極の前記第4の排出流路の上面は、各々前記電解生成ガスの前記排出方向において上り勾配を有する請求項1から10のいずれかに記載の電解装置。
【請求項12】
更に、前記電解槽において前記第1の中間電極と前記陽極との間に設けられた第2の中間電極を有し、前記第2の中間電極は、前記電極枠における第3の枠部材を介して前記第1の中間電極の前記鉛直方向における上方に積層されて、前記陰極、前記陽極、前記第1の中間電極及び前記第2の中間電極は、ユニット化された電極ユニットを成す請求項5に
記載の電解装置。
【請求項13】
前記第1の流下流路及び前記第2の流下流路は、各々対応して前記電解生成溶融金属を流下自在とする孔であり、前記第1の上昇流路及び第2の上昇流路は、各々対応して前記電解生成ガスを上昇自在とする孔である請求項1から12のいずれかに記載の電解装置。
【請求項14】
前記第1の流下流路及び前記第2の流下流路は、各々対応して前記電解生成溶融金属を流下自在とすべく複数の柱状部の間に画成される間隙部であり、前記第1の上昇流路及び第2の上昇流路は、各々対応して前記電解生成ガスを上昇自在とすべく複数の柱状部の間に画成される間隙部である請求項1から12のいずれかに記載の電解装置。
【請求項15】
前記液体電解質は、前記電解槽に収容された無水溶融塩化亜鉛又は塩化亜鉛を含む無水塩化物である請求項1から14のいずれかに記載の電解装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−84755(P2011−84755A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−235965(P2009−235965)
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【出願人】(503107255)株式会社キノテック・ソーラーエナジー (18)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】