説明

電解質・電極接合体及びその製造方法

【課題】アパタイト型複合酸化物からなる電解質を具備する固体酸化物形燃料電池の発電性能を向上させる。
【解決手段】電解質・電極接合体10を構成するカソード側電極16は、固体電解質20に臨んで等方性伝導層22に隣接する第1層16aと、該第1層16aに隣接する第2層16bとを有する。この中の第2層16bは、柱状形状粒38からなるために第1層16aに比して疎らである。一方、第1層16aは緻密体であり、このため、第2層16b及び等方性伝導層22に対して大きな接触面積で接触する。好適には、第1層16a及び第2層16bは、双方とも白金からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アノード側電極とカソード側電極との間に、アパタイト型複合酸化物からなる固体電解質が介装された電解質・電極接合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物形燃料電池の単位セルは、アノード側電極とカソード側電極とで固体電解質を挟んだ電解質・電極接合体を、1組のセパレータで挟持することで構成される。固体電解質としては酸化物イオン(O2−)伝導体が採用され、特に、安定化ジルコニアが周知である。しかしながら、安定化ジルコニアには、十分な酸化物イオン伝導性を得るためには高温としなければならず、このために固体酸化物形燃料電池の運転温度を高く設定する必要があるという不具合が顕在化している。
【0003】
このような観点から、アパタイト型複合酸化物が着目されている。特許文献1に記載されるように、アパタイト型複合酸化物は結晶構造のc軸方向に優れたイオン伝導性を示す。このため、特許文献2に提案されるように、アパタイト型複合酸化物で固体電解質を構成するとともに、アノード側電極とカソード側電極に挟まれた固体電解質の厚み方向をc軸方向とすれば、酸化物イオンが迅速に伝導するために優れた発電性能を示す固体酸化物形燃料電池が得られると考えられるからである。
【0004】
しかしながら、この場合、電解質・電極接合体全体の発電性能はさほど向上しない。本出願人は、この理由につき、カソード側電極が多孔質体であるので固体電解質との接触面積が小さく、このため、酸化物イオンの伝導経路が十分に確保されないからであると推察している(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
そこで、カソード側電極における酸化剤ガスの拡散速度を向上させることが想起される。この場合、多くの酸化剤ガスが電極反応に関与し、一層多くの酸化物イオンが生成すると考えられるからである。
【0006】
酸化剤ガスの拡散速度を大きくするには、カソード側電極における流通経路の容積を大きくすればよい。この観点から、特許文献4に記載されるように、カソード側電極を柱状形状粒で形成することが有効であるように考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3997365号公報
【特許文献2】特許第3934750号公報
【特許文献3】特許第4390530号公報
【特許文献4】特許第4517589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献4に記載された柱状形状粒からなるカソード側電極は、該特許文献4の図2や図3等から諒解されるように、粒同士の間が離間しているために疎らである。従って、このような構成のカソード側電極を作製した場合、アパタイト型複合酸化物からなる固体電解質との接触面積が一層低下することになる。
【0009】
すなわち、この場合、カソード側電極と固体電解質との間で酸化物イオンを授受することが困難となる。
【0010】
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、カソード側電極と、アパタイト型複合酸化物からなる固体電解質との間で酸化物イオンの伝導経路が十分に確保され、このため、固体酸化物形燃料電池を構成したときにその発電性能を向上し得る電解質・電極接合体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するために、本発明は、
アノード側電極とカソード側電極との間に、そのc軸方向が厚み方向に配向したアパタイト型複合酸化物の単結晶、又は各結晶粒のc軸方向が厚み方向に配向したアパタイト型複合酸化物の多結晶体からなる固体電解質が介装された電解質・電極接合体であって、
前記カソード側電極は、前記固体電解質に臨み且つ厚みが20〜50nmである第1層と、前記第1層に隣接して厚みが100〜800nmである第2層とを有し、
前記第1層は、前記第2層に比して緻密であり、
且つ前記第2層が柱状形状粒で構成されることを特徴とする。
【0012】
このカソード側電極では、第2層が柱状形状粒で構成されるために疎らであるので、酸化剤ガスが流通(拡散)することが容易である。従って、多量の酸化剤ガスを供給することができる。
【0013】
酸化剤ガス中に含まれる酸素が電子と結合することにより、酸化物イオンが生成する。上記したように、本発明においては多量の酸化剤ガスを供給することが可能であるので、多量の酸化物イオンを得ることができる。
【0014】
そして、第2層に隣接する第1層が緻密であるので、該第1層は、第2層と、固体電解質又は中間層に対して大きな接触面積で接触する。このため、第2層で生成した酸化物イオンが、第1層を介して固体電解質に容易に到達するようになる。さらに、第1層が緻密であることから、より多くの酸化物イオンを固体電解質に供給することもできる。
【0015】
このように、本発明においては、多量の酸化物イオンを生成させることができるとともに、生成した酸化物イオンをアノード側電極に向けて容易に且つ迅速に移動させることができる。従って、酸化物イオン伝導が向上するので、優れた発電特性を示す固体酸化物形燃料電池を得ることができる。
【0016】
以上の構成において、第1層と固体電解質との間に、酸化物イオン伝導が等方性を示す中間層を介装することが好ましい。
【0017】
本発明において、固体電解質はアパタイト型複合酸化物からなり、且つその厚み方向は、アパタイト型複合酸化物の結晶のc軸方向である。従って、このc軸上に第1層の構成粒子やアノード側電極の構成粒子が存在しないときには、酸化物イオンを授受することができない。
【0018】
これに対し、上記したような特性を示す中間層が存在する場合、電極を構成する粒子は、アパタイト型複合酸化物の結晶のc軸上であるか否かに関わらず、酸化物イオンを授受することが可能である。該中間層における酸化物イオン伝導が等方性であるからである。
【0019】
従って、この場合、第1層から固体電解質、又は固体電解質からアノード側電極への酸化物イオンの伝導経路が確保される。このため、酸化物イオンが移動することが一層容易となるので、固体酸化物形燃料電池の発電特性を一層向上させることが可能となる。
【0020】
中間層の材質の好適な例としては、酸化セリウム、又はドープされた酸化セリウムを挙げることができる。この場合、アノード側電極又はカソード側電極での電極反応が促進されるという利点もある。
【0021】
なお、ドープされた酸化セリウムにおけるドーパントの好適な例としては、サマリウム、イットリウム、ガドリニウム、ランタンのいずれかを挙げることができ、一方、固体電解質をなすアパタイト型複合酸化物の好適な例としては、LaSi1.5X+12(ただし、8≦X≦10)を挙げることができる。
【0022】
さらに、カソード側電極の材料としては、成膜が容易であり且つ触媒活性が高い等の利点があることから、白金(Pt)が好適である。
【0023】
また、本発明は、アノード側電極とカソード側電極との間に、単結晶で存在するとき、そのc軸方向が厚み方向に配向したアパタイト型複合酸化物の単結晶、又は各結晶粒のc軸方向が厚み方向に配向したアパタイト型複合酸化物の多結晶体からなる固体電解質が介装された電解質・電極接合体を得る電解質・電極接合体の製造方法であって、
そのc軸方向が厚み方向に配向したアパタイト型複合酸化物の単結晶、又は各結晶粒のc軸方向が厚み方向に配向したアパタイト型複合酸化物の多結晶体からなる固体電解質を得る工程と、
前記固体電解質の厚み方向に直交する方向に延在する一端面上、又は該一端面に形成されて酸化物イオン伝導が等方性を示す中間層上のいずれかに、0.2〜1Paでのスパッタリング、蒸着又はパルスレーザデポジションによって、20〜50nmの厚みの第1層を形成する工程と、
前記第1層上に、10〜40Paでのスパッタリング、蒸着又はパルスレーザデポジションによって、100〜800nmの厚みであり、且つ柱状形状粒で構成されるとともに、前記第1層に比して疎な第2層を形成し、前記第1層及び前記第2層からなるカソード側電極を得る工程と、
前記第1層を形成する前、又は前記第2層を形成した後に、前記固体電解質の厚み方向に直交する方向に延在する残余の一端面上、又は該一端面に形成されて酸化物イオン伝導が等方性を示す中間層上のいずれかに、アノード側電極を形成する工程と、
を有する。
【0024】
このような過程を経ることで、緻密な第1層と、柱状形状粒からなり前記第1層に比して疎らな第2層とを具備するカソード側電極を含んだ電解質・電極接合体を容易に得ることができる。
【0025】
上記の場合は、電解質を成膜基板としているが、アノード側電極を成膜基板とするようにしてもよい。すなわち、本発明は、アノード側電極とカソード側電極との間に、単結晶で存在するとき、その結晶内に酸化物イオンが移動する面又は方向を有することによって酸化物イオン伝導が異方性を示すアパタイト型複合酸化物からなる固体電解質が介装された電解質・電極接合体を得る電解質・電極接合体の製造方法であって、
前記アノード側電極を形成する工程と、
前記アノード側電極上、又は該アノード側電極上に形成されて酸化物イオン伝導が等方性を示す中間層上のいずれかに、アパタイト型複合酸化物からなる固体電解質を形成する工程と、
前記固体電解質上、又は該固体電解質上に形成されて酸化物イオン伝導が等方性を示す中間層上のいずれかに、0.2〜1Paでのスパッタリング、蒸着又はパルスレーザデポジションによって、20〜50nmの厚みの第1層を形成する工程と、
前記第1層上に、10〜40Paでのスパッタリング、蒸着又はパルスレーザデポジションによって、100〜800nmの厚みであり、且つ柱状形状粒で構成されるとともに、前記第1層に比して疎な第2層を形成し、前記第1層及び前記第2層からなるカソード側電極を得る工程と、
を有することを特徴とする。
【0026】
このような過程を経ることによっても、緻密な第1層と、柱状形状粒からなり前記第1層に比して疎らな第2層とを具備するカソード側電極を含んだ電解質・電極接合体を容易に得ることができる。
【0027】
いずれにおいても、中間層は、酸化セリウム、又はドープされた酸化セリウムから形成することができる。ここで、ドープされた酸化セリウムで中間層を形成するときには、ドーパントとして、サマリウム、イットリウム、ガドリニウム、ランタンのいずれかを選定すればよい。
【0028】
また、固体電解質は、例えば、LaSi1.5X+12(ただし、8≦X≦10)から形成することができ、第1層及び第2層は、例えば、白金から形成することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明におけるカソード側電極は、緻密な第1層と、柱状形状粒で構成されて疎らな第2層とから構成される。疎らな第2層によれば、多量の酸化剤ガスを容易に拡散させることができるので、多量の酸化物イオンを生成させることができる。一方、緻密な第1層は、第2層と、固体電解質又は中間層に対して大きな接触面積で接触する。このため、第2層で生成した酸化物イオンが、第1層を介して固体電解質に容易に到達するようになるとともに、緻密な第1層から、より多くの酸化物イオンを固体電解質に供給することができる。
【0030】
以上のように、本発明によれば、多量の酸化物イオンを生成させることができるとともに、生成した酸化物イオンをアノード側電極に向けて容易に且つ迅速に移動させることができるようになり、結局、酸化物イオン伝導を向上させることができる。このため、固体酸化物形燃料電池の発電特性を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態に係る電解質・電極接合体を具備する固体酸化物形燃料電池の単位セルの概略縦断面図である。
【図2】アパタイト型複合酸化物の単位格子の模式的構成図である。
【図3】前記電解質・電極接合体を構成するカソード側電極の構成の詳細を示した模式的構成図である。
【図4】前記電解質・電極接合体の要部を模式的に示した要部拡大図である。
【図5】第1層を具備しない電解質・電極接合体の要部を模式的に示した要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係る電解質・電極接合体及びその製造方法につき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0033】
図1は、本実施の形態に係る電解質・電極接合体10を具備する固体酸化物形燃料電池の単位セル12の概略縦断面図である。この単位セル12においては、アノード側電極14とカソード側電極16との間に、等方性伝導層18(中間層)、固体電解質20、等方性伝導層22(中間層)がこの順序で介装されることによって電解質・電極接合体10が構成されている。
【0034】
アノード側電極14の材料の好適な例としては、白金(Pt)やパラジウム(Pd)等の金属、又はPtやPdのサーメットが挙げられる。サーメットの具体例は、白金又はパラジウムとイットリア安定化ジルコニアのサーメット(Pt−YSZサーメット又はPd−YSZサーメット)、白金又はパラジウムとスカンジア安定化ジルコニアのサーメット(Pt−SSZサーメット又はPd−SSZサーメット)、白金又はパラジウムとイットリアドープセリアのサーメット(Pt−YDCサーメット又はPd−YDCサーメット)、白金又はパラジウムとスカンジアドープセリアのサーメット(Pt−SDCサーメット又はPd−SDCサーメット)、白金又はパラジウムとガドリニアドープセリアのサーメット(Pt−GDCサーメット又はPd−GDCサーメット)等である。
【0035】
又は、固体酸化物形燃料電池において一般的に採用される材料を採用するようにしてもよい。具体的には、ニッケルとイットリア安定化ジルコニアのサーメット(Ni−YSZサーメット)、ニッケルとスカンジア安定化ジルコニアのサーメット(Ni−SSZサーメット)、ニッケルとイットリアドープセリアのサーメット(Ni−YDCサーメット)、ニッケルとスカンジアドープセリアのサーメット(Ni−SDCサーメット)、ニッケルとガドリニアドープセリアのサーメット(Ni−GDCサーメット)等が例示される。
【0036】
等方性伝導層18は、酸化セリウム(CeO;セリア)を基材とする。すなわち、セリアそれ自体であってもよいが、ドーパントがドープされたセリアであってもよい。好適なドーパントとしては、サマリア(Sm)、イットリア(Y)、ガドリニア(Gd)、ランタニア(La)等を挙げることができる。なお、SmドープCeO、YドープCeO、GdドープCeO、LaドープCeOの各々は、一般的にはSDC、YDC、GDC、LDCと呼称されている。また、好適なドープ量は、5〜20モル%程度である。以下においては、セリア、及び上記したようなドープされたセリアを総称してセリア系酸化物と表記することもある。
【0037】
後述するように、等方性伝導層18、22は、積層方向である矢印C方向と、面内方向である矢印Y方向との酸化物イオン伝導に差がない。すなわち、酸化物イオン伝導において等方性を示す。
【0038】
本実施の形態において、固体電解質20はアパタイト型複合酸化物からなる。好適なアパタイト型複合酸化物としては、3価元素であるLaと、4価元素であるSiと、Oとを含有し、その組成がLaSi1.5X+12(8≦X≦10、以下同じ)で表されるランタンとシリコンとの複合酸化物が例示される。
【0039】
LaSi1.5X+12の単位格子の構造を、視点をc軸方向として図2に示す。この単位格子30は、6個のSiO四面体32と、2aサイトを占有するO2−34と、4fサイト又は6hサイトをそれぞれ占有するLa3+36a、36bとを含むアパタイト型構造である。なお、SiO四面体32におけるSi4+及びO2−は図示していない。
【0040】
この単位格子30は、六方晶系に属する。すなわち、図2において、単位格子30のa軸方向の辺ABとc軸方向の辺BFとが互いに交わる角度α、b軸方向の辺BCと辺BFとが互いに交わる角度β、辺ABと辺BCとが交わる角度γは、それぞれ、90°、90°、120゜である。そして、辺ABと辺BCとは互いに長さが等しく、且つこれら辺AB、BCの長さは辺BFと異なる。
【0041】
このようなアパタイト型構造であるLaSi1.5X+12が酸化物イオン伝導体となる理由は、2aサイトを占有するO2−34がSiO四面体32又はLa3+36aとの結合に関与していないためであると考えられる。O2−34に作用する力は強力ではなく、従って、O2−34は2aサイトに束縛されることなくc軸方向に沿って比較的自由に移動することができるからである。
【0042】
すなわち、この単位格子30においては、酸化物イオンは、c軸方向、換言すれば、[001]方向に沿って移動する。このため、酸化物イオン伝導度は、c軸に沿う方向で大きくなり、a軸やb軸に沿う方向では小さくなる。換言すれば、酸化物イオン伝導に異方性が生じる。
【0043】
そして、図1に矢印Cとして示すように、本実施の形態においては、c軸方向が固体電解質20の厚み方向とされている。すなわち、アノード側電極14及びカソード側電極16は、固体電解質20において酸化物イオン伝導度が最も高くなる方向に対して垂直に配設されており、従って、酸化物イオンは、カソード側電極16からアノード側電極14へ速やかに移動することができる。
【0044】
最も好ましい組成は、La9.33Si26である。この場合、c軸に沿う酸化物イオン伝導が最大値を示すからである。
【0045】
アパタイト型複合酸化物は、単結晶であってもよいし、各結晶粒のc軸方向が矢印C方向に向くように配向された多結晶体であってもよい。
【0046】
以上のように構成される固体電解質20の厚みは、50nm〜8μmであることが好ましく、50nm〜5μmであることがより好ましい。
【0047】
等方性伝導層22は、等方性伝導層18と同様に構成されている。すなわち、該等方性伝導層22は、好適にはセリア系酸化物からなる。
【0048】
ここで、SDC、YDCをはじめとするセリア系酸化物の酸化物イオン伝導度は、積層方向(矢印C方向)と面内方向(矢印Y方向)とで同等である。また、酸化物イオン伝導度は、固体電解質20をなすアパタイト型複合酸化物(LaSi1.5X+12)における酸化物イオン伝導度に比して小さい。すなわち、等方性伝導層18、22における酸化物イオン伝導度は、固体電解質20の厚み方向に比して小さい。
【0049】
例えば、YSZからなる電解質と電極との間にSDC等のセリア系酸化物からなる中間層を介在させることは従来から行われているが、この従来技術は、単結晶であっても酸化物イオン伝導が等方性である物質であるYSZと、電極の構成材料とが互いに反応することを防止するものである。そして、電池の発電性能を低下させないために、中間層の材質として、YSZに比して伝導性が優れるセリア系酸化物を採用するものである。
【0050】
これに対し、本実施の形態に係る電解質・電極接合体10では、アノード側電極14と固体電解質20との間に介装される等方性伝導層18、固体電解質20とカソード側電極16との間に介装される等方性伝導層22の酸化物イオン伝導度が、固体電解質20に比して小さい。また、固体電解質20を構成するアパタイト型複合酸化物は、単結晶として存在する場合には酸化物イオン伝導に異方性を示す物質である。以上の2点の相違点に基づき、本実施の形態によれば、酸化物イオン伝導度が固体電解質20に比して小さい物質であっても等方性伝導層18、22の材質として採用することができる。このため、等方性伝導層18、22の構成材料の選択肢が増加するという利点が得られる。
【0051】
等方性伝導層18、22の厚みは、例えば、200nm程度に設定すればよいが、固体電解質20の厚みに応じて適宜設定するようにしてもよい。すなわち、固体電解質20の厚みが極めて小さい場合には、等方性伝導層18、22の厚みを固体電解質20の厚みと同程度としてもよいし、固体電解質20の厚みを大きくする場合には、等方性伝導層18、22の厚みを固体電解質20の厚みの1/1000程度としてもよい。
【0052】
なお、等方性伝導層18、22の気孔率は小さくすることが好ましい。気孔率が過度に大きい場合、等方性イオン伝導による効果が消失したり、又は酸化物イオン伝導性が低下したりするからである。具体的には、20体積%以下であることが好ましく、10体積%以下であることがより好ましい。
【0053】
カソード側電極16は、図3に示すように、等方性伝導層22に隣接する(換言すれば、固体電解質20に臨む)第1層16aと、該第1層16aに隣接する第2層16bとを有する。
【0054】
第1層16aは、第2層16bに比して緻密である。従って、第1層16aを構成する粒子は、互いに密に充填して連なっている。このため、第1層16a内に、電子が伝導する経路や、酸化物イオンが電極反応を生起するサイトが多数形成される。すなわち、第1層16aは、等方性伝導層22及び第2層16bの双方に対して大きな接触面積で接しており、このため、より多くの酸化物イオンを固体電解質20へ供給することができるようになる。
【0055】
第1層16aの厚みは、20〜50nmの範囲内に設定される。厚みが20nm未満で且つ緻密な層を得ることは、容易ではない。従って、固体電解質20及び第2層16bに対する接触面積を大きくし得ないため、酸化物イオン及び電子の伝導経路を確保することが容易でなくなる。また、緻密な層が50nmを超える厚みで形成されると、酸化剤ガスが流通することが容易でなくなる。なお、ここでいう「緻密な層」とは、上記したように、層内において粒子が互いに連なり(繋がり)、電子が伝導するための経路や、酸化物イオンが電極反応を生起するためのサイトを多数形成する膜である。
【0056】
一方の第2層16bは、第1層16aから起立するように延在する複数個の柱状形状粒38から構成されている。柱状形状粒38、38同士の間には間隙が存在しており、このため、第2層16bの嵩密度は第1層16aに比して小さい。すなわち、第2層16bは、第1層16aに比して疎らである。
【0057】
第2層16bの厚みは、100〜800nmの範囲内に設定される。100nm未満であると、層内における電子伝導、換言すれば、集電性が良好でなくなる。また、厚みを800nm超とする場合、作製時間が長くなるとともに、酸化剤ガスが流通することが容易でなくなり、電極反応が進行することが容易でなくなる。
【0058】
本実施の形態において、第1層16a及び第2層16bは、双方とも白金(Pt)からなる。すなわち、第1層16a及び第2層16bは、同一の材料で形成されるものの、その嵩密度が互いに相違する。
【0059】
このように構成された電解質・電極接合体10は、図1に示すように、1対のセパレータ40a、40bの間に介装される。また、該セパレータ40a、40bの外側には集電用電極42a、42bがそれぞれ配置され、さらに該集電用電極42a、42bの外側にはエンドプレート44a、44bがそれぞれ配置される(図1参照)。これらエンドプレート44a、44b同士が図示しないタイロッド等で互いに緊締されて電解質・電極接合体10、セパレータ40a、40b及び集電用電極42a、42bがエンドプレート44a、44bで挟持され、これにより単位セル12が構成されている。なお、セパレータ40a、40bには、燃料ガス又は酸化剤ガスをアノード側電極14又はカソード側電極16に供給するためのガス流路46a、46bがそれぞれ形成されている。
【0060】
通常、固体酸化物形燃料電池は、上記した単位セル12が複数個積層されることにより、スタックとして構成される。
【0061】
本実施の形態に係る電解質・電極接合体10を含む固体酸化物形燃料電池(単位セル12)は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその作用効果について説明する。
【0062】
上記したように構成された単位セル12を運転するに際しては、該単位セル12を200〜500℃程度まで昇温する。その後、セパレータ40bに設けられたガス流路46bに酸素を含有する酸化剤ガスを流通させ、その一方で、セパレータ40aに設けられたガス流路46aに水素を含有する燃料ガスを流通させる。酸化剤ガス、燃料ガスの各々は、カソード側電極16の第2層16b、アノード側電極14に供給される。
【0063】
酸化剤ガスは、図3に示される柱状形状粒38、38同士の間の間隙を介して第2層16bを拡散する。第2層16bが疎らであるので、多量の酸化剤ガスを供給した場合であっても、この拡散は容易である。
【0064】
酸化剤ガス中の酸素は、第2層16bにおいて電子と結合し、酸化物イオン(O2−)を生成する。生成した酸化物イオンは、第2層16bから第1層16aに移動する。さらに、第1層16aから等方性伝導層22、固体電解質20及び等方性伝導層18を経由してアノード側電極14に到達する。
【0065】
そして、アノード側電極14に移動した酸化物イオンと、該アノード側電極14に供給された燃料ガス中の水素とが結合し、その結果、水及び電子が放出される。放出された電子は、集電用電極42a、42bに電気的に接続された外部回路に取り出され、該外部回路を付勢するための直流の電気エネルギとして利用された後、カソード側電極16へと至り、該カソード側電極16に供給された酸化剤ガス中の酸素と結合する。
【0066】
この過程につき、一層詳述する。
【0067】
電解質・電極接合体10におけるカソード側電極16の近傍を模式的に図4に示すとともに、第1層16aが存在しないことを除いて電解質・電極接合体10と同様に構成された電解質・電極接合体10Aのカソード側電極16の近傍を模式的に図5に示す。なお、理解を容易にするため、等方性伝導層22及び第2層16bを球形状の粒体として簡素化している。
【0068】
電解質・電極接合体10(図4参照)では、第1層16aが緻密であるので、該第1層16aを構成する触媒の微粒子が高密度に分散した充填層として近似し得る。従って、第1層16aにおいては、等方性伝導層22又は第2層16bに対して接触する箇所が多数形成される。このことは、第1層16aと、等方性伝導層22及び第2層16bとの接触面積が大きいことを意味する。
【0069】
第2層16bにおいて生成した酸化物イオンは、上記したように、第1層16aを介して等方性伝導層22に到達する。第1層16aが緻密であるために第2層16bと第1層16aとの接触面積、及び第1層16aと等方性伝導層22との接触面積が大きいので、酸化物イオンは、第2層16bから等方性伝導層22へ容易に移動することができる。さらに、緻密な第1層16aから固体電解質20へ酸化物イオンを供給することも容易となる。
【0070】
これに対し、第1層16aが存在しない電解質・電極接合体10A(図5参照)では、等方性伝導層22と、第2層16bとが直接接触することになる。第2層16bが疎らであるため、第2層16bと等方性伝導層22との接触面積はさほど大きくはない。このため、第1層16aが存在する電解質・電極接合体10(図4参照)に比して、酸化物イオンの伝導経路が少なくなる。
【0071】
以上の対比から諒解されるように、第1層16aが存在しない場合(図5参照)には、第2層16bから等方性伝導層22への酸化物イオンの伝導経路は、等方性伝導層22と第2層16bとの接触箇所に限られることになるが、第2層16bに対して緻密な第1層16aを隣接することにより(図4参照)、一層多くの伝導経路を形成することができる。
【0072】
その結果、多量の酸化物イオンが、第2層16bから等方性伝導層22へ容易に移動することができるようになる。すなわち、カソード側電極16における電極反応が促進される。
【0073】
酸化物イオンは、次に、等方性伝導層22の内部を移動して、該等方性伝導層22が固体電解質20に接触する部位に向かう。等方性伝導層22の酸化物イオン伝導が等方性であるため、この際の酸化物イオンの移動方向はランダムである。従って、等方性伝導層22においては、厚み方向(図1及び図4におけるC方向)、及び厚み方向に直交する面内方向(図1及び図4におけるY方向)の双方で酸化物イオン伝導度が略同等である。
【0074】
従って、等方性伝導層22中を直進移動した酸化物イオンのみならず、斜行移動した酸化物イオンが固体電解質20に入り込む。すなわち、固体電解質20に入り込む酸化物イオンの個数が著しく増加する。勿論、等方性伝導層18においても同様である。
【0075】
しかも、等方性伝導層18、22が存在する場合、固体電解質20と両電極14、16との間の界面抵抗が小さくなるので、過電圧が小さくなる。加えて、等方性伝導層18、22がセリア系酸化物からなる場合、セリア系酸化物は、酸化物イオン伝導と電子伝導の双方が生じる混同伝導体である。このような混合伝導体からなる等方性伝導層22は、カソード側電極16における酸素の電離反応を促進し、一方、等方性伝導層18は、アノード側電極14における酸化物イオンと水素との結合に伴う水と電子との生成反応を促進する。すなわち、両電極14、16で電極反応が促進される。
【0076】
固体電解質20に到達した酸化物イオンは、アノード側電極14に向かって移動する。ここで、固体電解質20は、酸化物イオン伝導が大きなc軸方向が積層方向(矢印C方向)に一致している。従って、酸化物イオンは、容易に且つ迅速にアノード側電極14に向かって移動する。
【0077】
以上のような理由から、優れた発電性能を示す電解質・電極接合体10、ひいては単位セル12(固体酸化物形燃料電池)を得ることができる。
【0078】
上記した電解質・電極接合体10は、以下のようにして作製することができる。
【0079】
はじめに、固体電解質20となるLaSi1.5X+12等のアパタイト型複合酸化物の単結晶を、結晶成長方向をc軸方向に配向させて成長させることによって得る。このように配向させるには、例えば、チョクラルスキー法や、特開平11−130595号公報に記載されたような公知の手法を採用すればよい。
【0080】
次に、得られた単結晶のc軸方向に対して垂直に交わる両端面に、鏡面研磨処理、微細研磨処理、砥石研磨処理等の各種研磨処理を施し、該端面の算術平均高さRaを所定の値とする。
【0081】
次に、研磨処理を施した各端面上に等方性伝導層18ないし等方性伝導層22を成膜するべく、スパッタリングを行う。
【0082】
スパッタリングは、既存のスパッタ装置を用いて実施することができる。また、等方性伝導層18、22としてセリア系酸化物を形成する場合には、SDCターゲット、YDCターゲット、GDCターゲット又はLDCターゲット等を用いるようにすればよい。
【0083】
このスパッタリングは、成膜基板である固体電解質20を加熱して300〜500℃の範囲内に予め昇温し、該温度を保持しながらスパッタリングを行うようにしてもよい。後者の場合、表面積が大きく、このために固体電解質20や第1層16a、アノード側電極14に対して大きな接触面積で接触する等方性伝導層18、22が得られる。なお、スパッタリングを行うチャンバ内の真空度は、0.5〜2Pa程度とすればよい。
【0084】
次に、等方性伝導層18に対してペーストをスクリーン印刷法等によって塗布する。このペーストを焼き付ければ、アノード側電極14が形成される。
【0085】
次に、等方性伝導層22上に第1層16a、第2層16bをこの順序で形成する。
【0086】
第1層16aは、スパッタリング、蒸着又はパルスレーザデポジションによって、例えば、Ptを成膜することで形成することができる。この際には、真空度を0.2〜1Paとすることにより、緻密な第1層16aが得られる。成膜は、第1層16aの厚みが20〜50nmの範囲内となるまで継続する。
【0087】
次に、第2層16bを形成する。第2層16bは、第1層16aと同一の手法によって成膜することが好ましい。この場合、成膜条件を変更した上で、第1層16aに引き続いて成膜を行えばよく、第1層16aが形成された固体電解質20を成膜装置から取り出す必要がないからである。すなわち、カソード側電極16を効率よく作製することができるからである。
【0088】
すなわち、第2層16bも、スパッタリング、蒸着又はパルスレーザデポジションによって形成することができるが、柱状形状粒38(図3参照)を得るべく、成膜条件を変更する。具体的には、真空度を10〜40Paとする。これにより第1層16a上に柱状形状粒38が成長し、該柱状形状粒38からなる疎らな第2層16bが得られる。成膜は、第2層16bの厚みが100〜800nmの範囲内となるまで継続すればよい。
【0089】
以上のようにして、電解質・電極接合体10が得られるに至る。この電解質・電極接合体10から単位セル12を構成するには、さらに、アノード側電極14及びカソード側電極16の各一端面にセパレータ40a、40b、集電用電極42a、42b及びエンドプレート44a、44bを配置すればよい。
【0090】
なお、固体電解質20は、単結晶からなるものに特に限定されるものではなく、各粉末の結晶をc軸方向に配向させた焼結体からなるものであってもよい。このような焼結体は、例えば、アパタイト型複合酸化物の粉末を溶媒に添加してスラリーとした後、10T(テスラ)程度の強磁場の存在下で該スラリーを固化させた成形体とし、さらに、該成形体を焼結することによって得ることができる。
【0091】
以降は、上記と同様にして、この焼結体の両端面に等方性伝導層18、22を形成した後、アノード側電極14、カソード側電極16(第1層16a、第2層16b)をさらに積層すればよい。これにより、電解質・電極接合体10が得られるに至る。
【0092】
なお、アノード側電極14又はカソード側電極16を成膜基板とすることもできる。
【0093】
アノード側電極14を成膜基板とする場合を例示して説明すると、はじめに、アノード側電極14を得るためのスラリーを調製する。例えば、NiO粒子とYSZ粒子とが体積比で1:1の割合で混合された混合粒子を溶媒に分散し、さらに、該溶媒に対し、ポリビニルブチラール系やアクリル系等のバインダを添加する。必要に応じ、造孔材を添加するようにしてもよい。
【0094】
そして、このスラリーを用い、ドクターブレード法によってシート状成形体を形成する。なお、ドクターブレード法に代え、押出し成形法やロール塗工法等を行うようにしてもよい。
【0095】
造孔材を添加したときには、シート状成形体に対して脱脂処理を行う。この脱脂処理によって造孔材が消失し、その消失跡に、造孔材の平均粒径に応じた気孔が形成される。
【0096】
次に、このシート状成形体(アノード側電極14)を成膜基板とし、等方性伝導層18を形成するためのスパッタリングを行う。この際には、上記と同様に、成膜基板であるアノード側電極14を加熱して300〜500℃に予め昇温し、その後、この温度を保持しながらスパッタリングを開始することが好ましい。チャンバ内の真空度は、上記同様に0.5〜2Pa程度とすればよい。
【0097】
アパタイト型複合酸化物の単結晶を固体電解質20とする場合、上記したような公知の手法によって単結晶を別途作製する。次に、この単結晶を、そのc軸方向が厚み方向に合致するようにして等方性伝導層18の上端面側に接合する。この接合に際しては、例えば、接合面をプラズマ照射する常温接合や加熱による拡散接合、又は電圧を印加する陽極接合等を行えばよい。
【0098】
次に、前記単結晶を所定の厚みとなるまで研磨を行う。これにより、アパタイト型複合酸化物の単結晶からなり、しかも、c軸方向と積層方向(厚み方向)とが合致した固体電解質20が得られる。
【0099】
アパタイト型酸化物の多結晶体を固体電解質20とする場合には、例えば、アトミックレイヤデポジション(ALD)やイオンプレーティング、パルスレーザデポジション(PLD)を行う。これにより、各結晶粒のc軸方向が厚み方向に配向した固体電解質20を形成することができる。
【0100】
次に、この固体電解質20の上端面上に、等方性伝導層22を形成する。この際にも、成膜基板、すなわち、アノード側電極14、等方性伝導層18及び固体電解質20の積層物を加熱して300〜500℃に予め昇温し、その後、この温度を保持しながらスパッタリングを開始することが好ましい。チャンバ内の真空度は、上記同様に0.5〜2Pa程度とすればよい。
【0101】
次に、等方性伝導層22の上端面上に、カソード側電極16を形成する。この場合、上記に準拠した作業を行えばよい。すなわち、真空度を0.5〜3Paとするスパッタリング、蒸着又はパルスレーザデポジションによって、例えば、Ptを成膜することで、厚みが20〜50nmである緻密な第1層16aを形成する。
【0102】
その後、真空度を10〜40Paとするスパッタリング、蒸着又はパルスレーザデポジションによって、第1層16a上に柱状形状粒38を100〜800nmの範囲内となるまで成長させる。これにより、該柱状形状粒38からなり、厚みが100〜800nmである疎らな第2層16bが得られる。
【0103】
以上により、電解質・電極接合体10が得られるに至る。
【0104】
本発明は、上記した実施の形態に特に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0105】
例えば、上記した実施の形態では、アノード側電極14と固体電解質20の間、固体電解質20とカソード側電極16の間の双方に等方性伝導層18、22を介装するようにしているが、等方性伝導層18、22のいずれか一方を省略するようにしてもよいし、双方を省略するようにしてもよい。
【0106】
また、カソード側電極16の材料は、Ptに特に限定されるものではなく、銀(Ag)であってもよい。さらに、La−Sr−Co−O(LSC)系ペロブスカイト型酸化物、La−Sr−Co−Fe−O(LSCF)系ペロブスカイト型酸化物、La−Sr−Mn−O(LSM)系ペロブスカイト型酸化物、Ba−Sr−Co−Fe−O(BSCF)系ペロブスカイト型酸化物のいずれか、又は、Pt−LSCサーメット、Pt−LSCFサーメット、Pt−LSMサーメット、Pt−BSCFサーメット、Ag−LSCサーメット、Ag−LSCFサーメット、Ag−LSMサーメット、Ag−BSCFサーメットのいずれかから選定することもできる。
【符号の説明】
【0107】
10…電解質・電極接合体 12…単位セル
14…アノード側電極 16…カソード側電極
16a…第1層 16b…第2層
18、22…等方性伝導層 20…固体電解質
30…単位格子 32…SiO四面体
34…O2− 36a、36b…La3+
38…柱状形状粒 40a、40b…セパレータ
46a、46b…ガス流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード側電極とカソード側電極との間に、そのc軸方向が厚み方向に配向したアパタイト型複合酸化物の単結晶、又は各結晶粒のc軸方向が厚み方向に配向したアパタイト型複合酸化物の多結晶体からなる固体電解質が介装された電解質・電極接合体であって、
前記カソード側電極は、前記固体電解質に臨み且つ厚みが20〜50nmである第1層と、前記第1層に隣接して厚みが100〜800nmである第2層とを有し、
前記第1層は、前記第2層に比して緻密であり、
且つ前記第2層が柱状形状粒で構成されることを特徴とする電解質・電極接合体。
【請求項2】
請求項1記載の接合体において、前記第1層と前記固体電解質との間に、酸化物イオン伝導が等方性を示す中間層が介装されていることを特徴とする電解質・電極接合体。
【請求項3】
請求項2記載の接合体において、前記中間層が酸化セリウム、又はドープされた酸化セリウムであることを特徴とする電解質・電極接合体。
【請求項4】
請求項3記載の接合体において、前記中間層がドープされた酸化セリウムであるとき、ドーパントはサマリウム、イットリウム、ガドリニウム、ランタンのいずれかであることを特徴とする電解質・電極接合体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の接合体において、前記固体電解質が、LaSi1.5X+12(ただし、8≦X≦10)からなることを特徴とする電解質・電極接合体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の接合体において、前記第1層及び前記第2層がともに白金からなることを特徴とする電解質・電極接合体。
【請求項7】
アノード側電極とカソード側電極との間に、単結晶で存在するとき、そのc軸方向が厚み方向に配向したアパタイト型複合酸化物の単結晶、又は各結晶粒のc軸方向が厚み方向に配向したアパタイト型複合酸化物の多結晶体からなる固体電解質が介装された電解質・電極接合体を得る電解質・電極接合体の製造方法であって、
そのc軸方向が厚み方向に配向したアパタイト型複合酸化物の単結晶、又は各結晶粒のc軸方向が厚み方向に配向したアパタイト型複合酸化物の多結晶体からなる固体電解質を得る工程と、
前記固体電解質の厚み方向に直交する方向に延在する一端面上、又は該一端面に形成されて酸化物イオン伝導が等方性を示す中間層上のいずれかに、0.2〜1Paでのスパッタリング、蒸着又はパルスレーザデポジションによって、20〜50nmの厚みの第1層を形成する工程と、
前記第1層上に、10〜40Paでのスパッタリング、蒸着又はパルスレーザデポジションによって、100〜800nmの厚みであり、且つ柱状形状粒で構成されるとともに、前記第1層に比して疎な第2層を形成し、前記第1層及び前記第2層からなるカソード側電極を得る工程と、
前記第1層を形成する前、又は前記第2層を形成した後に、前記固体電解質の厚み方向に直交する方向に延在する残余の一端面上、又は該一端面に形成されて酸化物イオン伝導が等方性を示す中間層上のいずれかに、アノード側電極を形成する工程と、
を有することを特徴とする電解質・電極接合体の製造方法。
【請求項8】
アノード側電極とカソード側電極との間に、単結晶で存在するとき、その結晶内に酸化物イオンが移動する面又は方向を有することによって酸化物イオン伝導が異方性を示すアパタイト型複合酸化物からなる固体電解質が介装された電解質・電極接合体を得る電解質・電極接合体の製造方法であって、
前記アノード側電極を形成する工程と、
前記アノード側電極上、又は該アノード側電極上に形成されて酸化物イオン伝導が等方性を示す中間層上のいずれかに、アパタイト型複合酸化物からなる固体電解質を形成する工程と、
前記固体電解質上、又は該固体電解質上に形成されて酸化物イオン伝導が等方性を示す中間層上のいずれかに、0.2〜1Paでのスパッタリング、蒸着又はパルスレーザデポジションによって、20〜50nmの厚みの第1層を形成する工程と、
前記第1層上に、10〜40Paでのスパッタリング、蒸着又はパルスレーザデポジションによって、100〜800nmの厚みであり、且つ柱状形状粒で構成されるとともに、前記第1層に比して疎な第2層を形成し、前記第1層及び前記第2層からなるカソード側電極を得る工程と、
を有することを特徴とする電解質・電極接合体の製造方法。
【請求項9】
請求項7又は8記載の製造方法において、前記中間層を形成するとき、該中間層を、酸化セリウム、又はドープされた酸化セリウムからなるものとして形成することを特徴とする電解質・電極接合体の製造方法。
【請求項10】
請求項9記載の製造方法において、前記中間層をドープされた酸化セリウムで形成するとき、ドーパントをサマリウム、イットリウム、ガドリニウム、ランタンのいずれかとすることを特徴とする電解質・電極接合体の製造方法。
【請求項11】
請求項7〜10のいずれか1項に記載の製造方法において、前記固体電解質を、LaSi1.5X+12(ただし、8≦X≦10)からなるものとして形成することを特徴とする電解質・電極接合体の製造方法。
【請求項12】
請求項7〜11のいずれか1項に記載の製造方法において、前記第1層及び前記第2層の双方を、白金からなるものとして形成することを特徴とする電解質・電極接合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−51101(P2013−51101A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188134(P2011−188134)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】